説明

人体局部洗浄装置

【課題】 ベースプレートとベースカバーとで形成される内部空間に通じる配線通し穴の封止作業が従来と比べて容易で、袖部の裏側に露出した配線を引っ張ることに起因する断線や、封止機能の毀損を防止する人体局部洗浄装置を提供すること。
【解決手段】
人体局部洗浄装置1は、人体局部を洗浄する洗浄ノズル11が設けられるベースプレート10と、ベースプレート10と組み合わされて洗浄ノズル11を覆い、袖部21を有するベースカバー20と、袖部21の表面に貼り付けられ、配線32を有するメンブレンスイッチ30と、メンブレンスイッチ30が貼り付けられる袖部21の表面でメンブレンスイッチ30に覆い隠されて、配線32を袖部21の裏側に露出しないで、ベースプレート10とベースカバー20とで形成される内部空間12に導く配線通し穴40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体局部の洗浄等の機能を操作する操作部をベースカバーの袖部に備える人体局部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、図7の人体局部洗浄装置60がある。人体局部洗浄装置60は、ベースカバー61と、ベースプレート62と、操作部63と、を備える。ベースカバー61は、袖部64を備え、袖部64には操作部63が設けられる。操作部63は、袖部64の内部に設けられスイッチを有する操作基板65と、袖部64の表面に貼り付けられる操作銘板66と、を備える構成である。操作基板65は、ネジ67によりベースカバー61の袖部64の内部に取り付けられる。人体局部洗浄装置60は、ベースカバー61の袖部64の内部に操作基板65を備えるため、操作基板65への水、洗剤、ゴミ等の浸入防止、使用者等の操作基板65への接触防止、を目的に、ベースカバー61の袖部64の裏側をベースプレート62の袖部68で蓋をする構成である。
【0003】
また、便器と、便器上に載置される便座と、人体局部を洗浄する洗浄手段と、洗浄手段を備えたベースカバーとベースプレートとを有する本体と、本体の操作部近傍に開口された開口部と、開口部に係合可能なスイッチカバーと、操作部下方にはスイッチが配設された操作基板と、本体と一体成形されたキートップと、を備え、キートップの押圧によりスイッチが切換可能とする人体局部洗浄装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−129750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の人体局部洗浄装置60では、人体局部洗浄装置60の操作部を組み立てるのに、ベースカバー61の袖部64内部に操作基板65を取り付けて、ベースカバー61の袖部64の表面に操作銘板66であるフィルムを貼り、ベースプレート62の袖部68でベースカバー61の袖部64の裏側を蓋する必要があり、部品点数が多く組み立て工数がかかる問題があった。また、ベースカバー61の操作部63の有り/無しに応じて、ベースプレート62も袖部68の有り/無しの2種類を用意する必要があった。
【0006】
この問題に対して、本願発明者は鋭意研究の結果、図8、9のベースカバーの袖部の表面にメンブレンスイッチを貼り付ける人体局部洗浄装置70を発明した。人体局部洗浄装置70は、人体局部を洗浄する洗浄ノズル71が設けられるベースプレート72と、ベースプレート72と組み合わされて洗浄ノズル71を覆い、袖部73を有するベースカバー74と、ベースカバー74の袖部73の表面の貼り付け面75に貼り付けられ、操作部を有するメンブレンスイッチ76とから構成される。この人体局部洗浄装置70では、従来と比べて部品点数と操作部の組み立て工数とが少なく、ベースカバー74の操作部の有り/無しに係わらずベースカバー74の袖部73の裏側をベースプレート72で蓋をする必要がなく、ベースプレート72は袖部無しの1種類で対応可能である。
【0007】
しかしながら、図8、9の人体局部洗浄装置70では、メンブレンスイッチ76の配線77は、第1配線通し穴78を通り袖部73の表側から袖部73の裏側へ導かれ、袖部73の裏側に露出して、第2配線通し穴79を通り袖部73の裏側からベースプレート72とベースカバー74とで形成される内部空間80へと導かれる。内部空間80には洗浄ノズル71を制御する制御基板が設けられるため、袖部73の裏側から内部空間80へ配線77を導く第2配線通し穴79の配線77の周囲を防水等のために封止部材81で封止する必要がある。第2配線通し穴79の封止作業は、袖部73の裏側から行う必要があり、作業に手間が掛かる問題がある。また、袖部73の裏側に露出した配線77に手を引っ掛けたりして配線77を引っ張ると、配線77の断線や、第2配線通し穴の封止部材81が破損して封止機能を毀損する問題がある。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みて成されたものであり、ベースプレートとベースカバーとで形成される内部空間に通じる配線通し穴の封止作業が従来と比べて容易で、袖部の裏側に露出した配線を引っ張ることに起因する断線や、封止機能の毀損を防止する人体局部洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の課題解決手段は、人体局部を洗浄する洗浄手段が設けられるベースプレートと、前記ベースプレートと組み合わされて前記洗浄手段を覆い、袖部を有するベースカバーと、前記袖部の表面に貼り付けられ、配線を有するメンブレンスイッチと、前記メンブレンスイッチが貼り付けられる前記袖部の前記表面で前記メンブレンスイッチに覆い隠されて、前記配線を前記袖部の裏側に露出しないで、前記ベースプレートと前記ベースカバーとで形成される内部空間に導く配線通し穴とから構成される。
【0010】
また、本発明の第2の課題解決手段は、前記配線通し穴は、前記メンブレンスイッチが貼り付けられる前記袖部の前記表面で、前記配線を前記内部空間に導く長さが短い位置に設けられる。
【0011】
また、本発明の第3の課題解決手段は、前記配線通し穴は、ダクトにより前記内部空間と連通する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の人体局部洗浄装置では、配線通し穴は、メンブレンスイッチが貼り付けられる袖部の表面でメンブレンスイッチに覆い隠されて、配線を袖部の裏側に露出しないで、ベースプレートとベースカバーとで形成される内部空間に導く構成である。メンブレンスイッチで配線通し穴を覆い隠すように袖部の表面に貼り付けると、メンブレンスイッチが封止部材として機能する。よって、配線通し穴の封止作業に手間が掛からない。また、配線は袖部の裏側には露出しないで、配線通し穴により直接内部空間に導かれるため、袖部の裏側に露出した配線を引っ張ることに起因する断線や、封止機能の毀損を防止できる。
【0013】
また、配線通し穴は、メンブレンスイッチが貼り付けられる袖部の表面で、配線を内部空間に導く長さが短い位置に設けられるため、配線の組み付け性、配線通し穴を備えるベースカバーの成形加工性が向上する。
【0014】
また、配線通し穴は、ダクトにより内部空間と連通するため、配線通し穴がメンブレンスイッチが貼り付けられる袖部の表面で、配線を内部空間に導く長さが長い位置に設けられる場合でも、袖部の裏側に配線を露出することなく内部空間に導くことができる。よって、エンブレンスイッチの配線の取り付け位置の自由度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の人体局部洗浄装置の組立図である。
【図2】本発明のベースカバーの袖部の表側からの斜視図である。
【図3】本発明のベースカバーの袖部の裏側からの斜視図である。
【図4】本発明のメンブレンスイッチの操作部の構成を示す断面図である。
【図5】本発明の変形例のベースカバーの袖部の表側からの斜視図である。
【図6】本発明の変形例のベースカバーの袖部の裏側からの斜視図である。
【図7】従来の人体局部洗浄装置の組立図である。
【図8】メンブレンスイッチを備えた人体局部洗浄装置の組立図である。
【図9】メンブレンスイッチを備えた人体局部洗浄装置の袖部の裏側からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の人体局部洗浄装置1の組立図である。人体局部洗浄装置1は、図示しない便器本体に載置されるベースプレート10と、ベースプレート10と組み合わされ袖部21を有するベースカバー20と、ベースカバー20の袖部21の表面の貼り付け面22に貼り付けられるメンブレンスイッチ30とから構成される。ベースプレート10には、人体局部を洗浄する洗浄ノズル11(洗浄手段)と、洗浄ノズル11を制御する図示しない制御基板が設けられる。ベースカバー20は、洗浄ノズル11と制御基板を覆うようにベースプレート10と一体に組み合わされ、内部空間12を形成する。メンブレンスイッチ30は、洗浄、乾燥、脱臭等を操作する操作部31が設けられ、ベースカバー20の袖部21の表面の貼り付け面22に袖部21の表側から貼り付けられる。メンブレンスイッチ30は、内部空間12の制御基板と接続する配線32を備える。
【0018】
図2は、本発明のベースカバー20の袖部21の表側からの斜視図である。ベースカバー20は、袖部21の表面に貼り付け面22を有する。貼り付け面22には、配線32を内部空間12に導く長さが短くなる袖部21の根元23近傍に、メンブレンスイッチ30からの配線32を制御基板が設けられる内部空間12と連通する配線通し穴40が設けられる。配線通し穴40は、メンブレンスイッチ30が貼り付け面22に張り付いた状態では、メンブレンスイッチ30に覆い隠されて、使用者から視認できない構成である。
【0019】
図3は、本発明のベースカバー20の袖部21の裏側からの斜視図である。ベースカバー20の袖部21の裏面には、格子状の補強リブ24が設けられている。ベースカバー20は樹脂製で、配線通し穴40と補強リブ24はベースカバー20が樹脂成形される際に一体で設けられる。袖部21の裏側は、スイッチが配設された操作基板等を備えない構成である。ベースカバー20の裏側は常に開放された状態で、袖部21の裏側からは補強リブ24が視認可能である。配線通し穴40は、配線32をベースプレート10とベースカバー20とで形成される内部空間12に導き、袖部21の裏側から配線32を露出しない構成である。
【0020】
図4は、本発明のメンブレンスイッチ30の構成を示す断面図である。メンブレンスイッチ30は、上部接点シート33と下部接点シート34との間にスペーサー35を挟んで貼り合わせた構成である。上部接点シート33の全面は、ポリエステル製でエンボス加工され、使用者が洗浄、乾燥、脱臭等の操作を行う操作銘板シート36が貼り合わされる。また、下部接点シート34の全面は、粘着シート37が貼り合わされる。上部接点シート33には接点38が設けられ、下部接点シート34には接点38と接触して導通状態とする接点39が設けられる。
【0021】
次に人体局部洗浄装置1の操作部31の組み立て手順について説明する。メンブレンスイッチ30に設けられた配線32は、配線通し穴40を通り、袖部21の裏側に露出しないで、内部空間12に導かれ制御基板と接続する。メンブレンスイッチ30は、粘着のシート37によりベースカバー20の貼り付け面22に袖部21の表側から配線通し穴40を覆い隠すように貼り付けられる。そしてベースカバー20は、洗浄ノズル11を覆うようにベースプレート10に一体に組み付けられる。
【0022】
次にメンブレンスイッチ30の動作について説明する。使用者がエンボス加工された洗浄、乾燥、脱臭が表示された操作銘板シート36を押圧すると、操作銘板シート36は弾性変形して上部接点シート33を下部接点シート34方向に変位する。そして上部接点シート33の接点38と下部接点シート34の接点39が接触して導通状態になる。使用者が操作銘板シート36から手を離すと、操作銘板シート36は押圧前の形状に戻り、上部接点シート33の接点38と下部接点シート34の接点39が離れて絶縁状態になる。このときの導通/絶縁状態の信号が配線32により制御基板に送られる。
【0023】
本発明の人体局部洗浄装置1では、配線通し穴40は、メンブレンスイッチ30が貼り付けられる袖部21の貼り付け面22でメンブレンスイッチ30に覆い隠されて、配線32を袖部21の裏側に露出しないで、ベースプレート10とベースカバー20とで形成される内部空間12に導く構成である。メンブレンスイッチ30で配線通し穴40を覆い隠すように袖部21の貼り付け面22に貼り付けると、メンブレンスイッチ30が封止部材として機能する。よって、配線通し穴40の封止作業に手間が掛からない。また、配線32は袖部21の裏側には露出しないで、配線通し穴40により直接内部空間12に導かれるため、袖部21の裏側に露出した配線32を引っ張ることに起因する断線や、封止機能の毀損を防止できる。また、配線通し穴40は、メンブレンスイッチ30が貼り付けられる袖部21の貼り付け面22で、配線32を内部空間12に導く長さが短い袖部21の根元23近傍に設けられるため、配線32の組み付け性、配線通し穴40を備えるベースカバー20の成形加工性が向上する。
【0024】
図5、6は本発明の変形例で、配線通し穴をダクトとして内部空間と連通したものである。同一の構成、機能については、同一の符号を用いて説明する。
【0025】
図5はベースカバー20の袖部21の表側からの斜視図で、袖部21の貼り付け面22にメンブレンスイッチ30を貼り付ける前の状態である。配線通し穴40aは、貼り付け面22の付根23近傍から少し離れた位置に設けられる。メンブレンスイッチ30を貼り付け面22に貼り付けた状態では、配線通し穴40aはメンブレンスイッチ30に覆い隠されて、使用者からは視認できない構成である。
【0026】
図6はベースカバー20の袖部21の裏側からの斜視図である。ベースカバー20の裏側は常に開放された状態で、袖部21の裏側からは補強リブ24が視認可能である。配線32は、配線通し穴40aのダクト41を通り内部空間12へと導かれる。配線32は、ダクト41内を通るため、袖部21の裏側から露出しない。
【0027】
本発明の変形例の組み立て手順について説明する。メンブレンスイッチ30に設けられた配線32は、貼り付け面22に設けられた配線通し穴40aから、ダクト41を通り、内部空間12へと導かれ制御基板と接続する。メンブレンスイッチ30は、粘着のシート37によりベースカバー20の貼り付け面22に袖部21の表側から配線通し穴40aを覆い隠すように貼り付けられる。そしてベースカバー20は、洗浄ノズル11を覆うようにベースプレート10に一体に組み付けられる。
【0028】
本発明の変形例では、配線通し穴40aは、ダクト41により内部空間12と連通するため、配線通し穴40がメンブレンスイッチ30が貼り付けられる袖部21の表面の貼り付け面22で、配線32を内部空間12に導く長さが長くなる位置に設けられた場合でも、袖部21の裏側に配線32を露出することなく内部空間12に導くことができる。よって、配線32の取り回しの自由度が高まる。
【符号の説明】
【0029】
1 人体局部洗浄装置
10 ベースプレート
11 洗浄ノズル(洗浄手段)
12 内部空間
20 ベースカバー
21 袖部
30 メンブレンスイッチ
32 配線
40 配線通し穴
40a 配線通し穴
41 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体局部を洗浄する洗浄手段が設けられるベースプレートと、
前記ベースプレートと組み合わされて前記洗浄手段を覆い、袖部を有するベースカバーと、
前記袖部の表面に貼り付けられ、配線を有するメンブレンスイッチと、
前記メンブレンスイッチが貼り付けられる前記袖部の前記表面で前記メンブレンスイッチに覆い隠されて、前記配線を前記袖部の裏側に露出しないで、前記ベースプレートと前記ベースカバーとで形成される内部空間に導く配線通し穴と、
を備える人体局部洗浄装置。
【請求項2】
前記配線通し穴は、前記メンブレンスイッチが貼り付けられる前記袖部の前記表面で、前記配線を前記内部空間に導く長さが短い位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項3】
前記配線通し穴は、ダクトにより前記内部空間と連通することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の人体局部洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−72582(P2012−72582A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217140(P2010−217140)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】