説明

人体局部洗浄装置

【課題】洗浄水を噴出するノズルを覆うシャッターが取り付けられた部材と装置の本体との係合を解除する際に、シャッターおよびそれが取り付けられた部材に接触する必要のない人体局部洗浄装置を提供する。
【解決手段】シャッター30が取り付けられた着脱ベース50を本体ベース40から取り外す際には、制御手段により第一のノズル本体10および第二のノズル本体20の両方を前進させることで、本体ベース40と着脱ベース50の係合を解除する。これにより、着脱ベース50を本体ベース40から取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水を噴出するノズルの汚れを防止するためのシャッターが設けられた人体局部洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、上記シャッターが簡単に取り外し可能な人体局部洗浄装置が記載されている。シャッターを取り外す際、シャッターが取り付けられた着脱ベースの操作部を操作することにより、着脱ベースと本体ベースの係合を解除する。これにより、着脱ベースが本体ベースから取り外すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−239248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の人体局部洗浄装置は、洗浄水や汚水の飛び散りや跳ね返りによってシャッターやそれが取り付けられた着脱ベースが汚れてしまう。したがって、装置を定期的に手入れ(清掃)する際、このシャッターが取り付けられた汚れた着脱ベースと本体ベースの係合を直接手で解除しなければならず、使用者にとって負担が大きいという問題があった。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、洗浄水を噴出するノズルを覆うシャッターが取り付けられた部材と装置の本体との係合を解除する際に、シャッターおよびそれが取り付けられた部材に接触する必要のない人体局部洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明にかかる人体局部洗浄装置は、少なくとも原位置と局部洗浄位置との間を進退動自在に設けられた第一のノズル本体および第二のノズル本体と、原位置に位置する前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の少なくとも先端部を覆うシャッターと、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体が取り付けられた本体ベースと、前記シャッターが開閉自在に取り付けられた前記本体ベースに対して着脱自在である着脱ベースと、局部洗浄時には、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体のいずれか一方を、その先端部により前記シャッターを押し開かせつつ局部洗浄位置まで前進させる制御手段と、を備え、前記シャッターが取り付けられた前記着脱ベースを前記本体ベースから取り外す際には、前記制御手段により前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の両方を前進させることで、前記本体ベースと前記着脱ベースとの係合が解除され、前記着脱ベースが前記本体ベースから取り外されることを要旨とする。
【0007】
この場合、前記本体ベースには、第一の被係合部および第二の被係合部が形成されるとともに、前記着脱ベースには、前記第一の被係合部と係合される第一の係合部および前記第二の被係合部に係合される第二の係合部が形成され、前記着脱ベースは、前記両係合部が前記両被係合部に係合されることにより本体ベースに装着されていればよい。
【0008】
また、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の両方を前進させ、前記第一のノズル本体に設けられた第一の係合解除部により前記第一の係合部と前記第一の被係合部の係合を解除させるとともに、前記第二のノズル本体に設けられた第二の係合解除部により前記第二の係合部と前記第二の被係合部の係合を解除させることにより、前記着脱ベースが前記本体ベースから取り外されるものであればよい。
【0009】
この場合、前記着脱ベースには、前記第一の係合部が形成された弾性変形可能である第一の壁体および前記第二の係合部が形成された弾性変形可能である第二の壁体を有する操作部が設けられ、前記第一の壁体には、前記第一のノズル本体が前進したとき前記第一の係合解除部に接触する第一の接触突起が形成されるとともに、前記第二の壁体には、前記第二のノズル本体が前進したとき、前記第二の係合解除部に接触する前記第二の接触突起が形成され、局部洗浄時には、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の一方は、その係合解除部が前記第一の接触突起および前記第二の接触突起の一方と接触することによりその接触突起が形成された壁体を弾性変形させつつ当該接触突起を乗り越え局部洗浄位置まで前進する一方、前記シャッターが取り付けられた前記着脱ベースを前記本体ベースから取り外す際には、前記第一の接触突起に前記第一の係合解除部が接触することにより前記第一の壁体が弾性変形して前記第一の係合部と前記第一の被係合部の係合が解除されるとともに、前記第二の接触突起に前記第二の係合解除部が接触することにより前記第二の壁体が弾性変形して前記第二の係合部と前記第二の被係合部の係合が解除される構成であればよい。
【0010】
また、前記第一の係合解除部により前記第一の係合部と前記第二の係合部の係合が解除され、かつ、前記第二の係合解除部により前記係合部と前記被係合部の係合が解除されたときには、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の先端は、前記着脱ベースの先端面よりも前方に位置するものであればよい。
【0011】
また、前記第一の接触突起および前記第二の接触突起は、それぞれ、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の外面に近づく方向に突出した突起であり、前記第一の係合解除部および第二の係合解除部は、それぞれ、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の外面から前記操作部に近づく方向に突出した突起であればよい。
【0012】
またこの場合、前記着脱ベースの本体部分および前記操作部の一方には、ノズル本体の進退方向と交差する方向に延びるスライドガイドが形成されるとともに、他方には、このスライドガイドに係合するスライド部が形成され、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の一方が前進し当該一方のノズル本体の前記係合解除部が前記接触突起に接触したときには、前記スライドガイドに係合する前記スライド部によって前記操作部が案内されて他方のノズル本体側にスライドするものであればよい。
【0013】
また、前記第一の係合解除部および前記第二の係合解除部のそれぞれにおける突起の頂部よりも前側の部分には、前記壁体を弾性変形させ前記係合部と前記被係合部の係合を解除させる、突起の頂部に向かって傾斜した押圧部分と、この前記係合部と前記被係合部の係合が解除された状態において、前記接触突起に引っ掛かり、前記操作部を介して前記着脱ベースおよびそれに取り付けられた前記シャッターを前記ノズル本体とともに手前側に引き出す、突起の頂部に向かって傾斜した引掛部分と、が形成され、前記押圧部分の傾斜角度の方が前記引掛部分の傾斜角度よりもなだらかであればよい。
【0014】
前記第一の係合解除部および前記第二の係合解除部のそれぞれにおける突起の頂部よりも後側の部分は、当該突起の頂部に向かって傾斜していればよい。
【0015】
一方、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体は、原位置と前記局部洗浄位置よりもさらに前方である前進端位置との間を進退動自在に設けられており、前記シャッターが取り付けられた前記着脱ベースを前記本体ベースから取り外す際には、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の両方を前記局部洗浄位置よりもさらに前進させることにより、前記第一のノズル本体に設けられた第一の係合解除部により前記第一の係合部と前記第一の被係合部の係合が解除され、前記第二のノズル本体に設けられた第二の係合解除部により前記第二の係合部と前記第二の被係合部の係合が解除される構成であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明にかかる人体局部洗浄装置によれば、シャッターが取り付けられた着脱ベースを本体ベースから取り外す際に、第一のノズル本体および第二のノズル本体の両方を一度に前進させることにより、シャッターが取り付けられた着脱ベースと本体ベースの係合を解除することができるから、シャッターや着脱ベースに触れる必要がない。なお、局部洗浄時(通常動作時)には、第一のノズル本体および第二のノズル本体のいずれか一方を前進させるため、局部洗浄時に本体ベースから着脱ベースが外れることことはない。
【0017】
上記効果を発揮するより具体的な構成としては、本体ベースに第一の被係合部および第二の被係合部が形成され、着脱ベースに第一の被係合部と係合される第一の係合部および第二の被係合部に係合される第二の係合部が形成され、両係合部が両被係合部に係合されることにより着脱ベースが本体ベースに装着されている構成が例示できる。また、この場合において、第一のノズル本体および第二のノズル本体(例えば肛門用ノズル本体およびビデ用ノズル本体)に第一の係合解除部および第二の係合解除部を設け、両ノズル本体を前進させたとき両係合解除部により、第一の係合部と第一の被係合部および第二の係合部と第二の被係合部の係合を解除する構成が例示できる。かかる構成を採用すれば、上記効果を発揮する人体局部洗浄装置を簡易な構造で構築できる。
【0018】
また、第一の壁体および第二の壁体に係合部を形成しておき、これら壁体に形成された接触突起にノズル本体の係合解除部が接触することにより、第一の壁体および第二の壁体が弾性変形して係合部と被係合部の係合が解除される構成とすれば、両ノズル本体によって着脱ベースと本体ベースの係合が解除される機構を簡易な構造で構築できる。また、局部洗浄時において、一方のノズル本体の係合解除部は、一方の壁体を弾性変形させつつ接触突起を乗り越えることができるから、ノズル本体のスムーズな(従来と変わらない)進退動作が発現される。
【0019】
また、第一の係合解除部および第二の係合解除部により第一の係合部と第一の被係合部の係合および第二の係合部と第二の被係合部の係合が解除されたときに、両ノズル本体の先端が着脱ベースの先端面よりも前方に位置するように設定すれば、本体ベースから外れた着脱ベースは両ノズル本体に支持されるため、着脱ベースおよびそれに取り付けられたシャッターが便鉢内に落下してしまうことを防止できる。
【0020】
また、第一の接触突起および第二の接触突起、第一の係合解除部および第二の係合解除部を、互いに近づく方向に突出した突起とすれば、両ノズル本体によって着脱ベースと本体ベースの係合が解除される機構をより簡易な構造で構築できる。
【0021】
また、上記スライドガイドとスライド部の係合により、操作部がノズル本体の進退方向と交差する方向にスライド自在である構成とすれば、ノズル本体の一方が前進しその係合解除部が一方の壁体の接触突起に接触したとき、その接触によって操作部に加わる力を、操作部全体のスライドによって逃がすことができる。つまり、局部洗浄時において、一方のノズル本体の係合解除部が一方の壁体の接触突起を乗り越えようとする際、操作部全体が他方のノズル本体側にスライドするから、係合解除部が接触突起を乗り越える際における一方の壁体の弾性変形量が小さくて済む。したがって、局部洗浄時におけるノズル本体の進退動作がよりスムーズなものとなる。
【0022】
また、突起である係合解除部の頂部より前側の部分に、頂部に向かう傾斜が相対的に急である壁体を弾性変形させる押圧部分と、頂部に向かう傾斜が相対的になだらかである接触突起に引っ掛かる引掛部分と、を形成しておくことにより、押圧部分によって本体ベースとの係合が解除された着脱ベースを引掛部分によってそのままノズル本体とともに手前側に引き出すことができるから、ノズル本体に引っ掛かった着脱ベースを取り上げる作業が容易となる。また、接触突起に引っ掛けられる引掛部分にも傾斜を設けておくことにより、局部洗浄時に係合解除部が接触突起をスムーズに乗り越える。すなわち、局部洗浄時におけるノズル本体の前進動作がさらにスムーズなものとなる。
【0023】
また、突起である係合解除部の頂部より後側の部分が突起の頂部に向かって傾斜していれば、局部洗浄時にノズル本体が局部洗浄位置から原位置に戻る際(ノズル本体が後退動作する際)、上記後側の部分の傾斜により、係合解除部が接触突起をスムーズに乗り越える。すなわち、局部洗浄時におけるノズル本体の後退動作がさらにスムーズなものとなる。
【0024】
一方、原位置と前記局部洗浄位置よりもさらに前方である前進端位置との間を進退動自在となるようにノズル本体を構成し、局部洗浄位置と前進端位置との間で係合部と被係合部の係合が解除されるようにすれば、局部洗浄時においては、第一の係合解除部および第二の係合解除部の両方ともが作用しない構成となる。つまり、局部洗浄時には、第一の係合部と第一の被係合部の係合、および第二の係合部と第二の被係合部の係合のいずれも解除されることがないから、局部洗浄時に本体ベースから着脱ベースが完全に外れてしまうことが確実に防止される。また、局部洗浄時にノズル本体の進退動作を妨げるような部材が存在しないため、ノズル本体の進退動作がスムーズである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態にかかる人体局部洗浄装置の分解者視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる人体局部洗浄装置の外観斜視図である。
【図3】図3(a)はノズル本体が原位置に位置している状態における人体局部洗浄装置の側面図であり、図3(b)はノズル本体がシャッターを押し開いて前進した状態における人体局部洗浄装置の側面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる人体局部洗浄装置が有するノズル本体の断面図である。
【図5】図5(a)は本発明の実施形態にかかる人体局部洗浄装置における本体ベースと着脱ベースの係合部分(スライド部)を切断した断面図であり、図5(b)は図5(a)に示したB部拡大図である。
【図6】図6(a)は第一の実施形態にかかる人体局部洗浄装置の局部洗浄時における動作を説明するための図であって一方の係合解除部によって一方の壁体が幅方向内側に弾性変形した状態を示した図(底面図)であり、図6(b)は図6(a)に示したC1部拡大図である。
【図7】第一の実施形態にかかる人体局部洗浄装置の局部洗浄時における動作を説明するための図であり、一方の係合解除部が一方の接触突起を乗り越えた状態を示した図(底面図)である。
【図8】図8(a)は第一の実施形態にかかる人体局部洗浄装置のシャッターを取り外す際における動作を説明するための図であって第一の係合解除部および第二の係合解除部が第一の接触突起および第二の接触突起に接触する前の状態を示した図(底面図)であり、図8(b)は図8(a)に示したC2部拡大図である。
【図9】図9(a)は第一の実施形態にかかる人体局部洗浄装置のシャッターを取り外す際における動作を説明するための図であって第一の係合解除部および第二の係合解除部によって第一の壁体および第二の壁体が幅方向内側に弾性変形した状態を示した図(底面図)であり、図9(b)は図9(a)に示したC3部拡大図である。
【図10】図10(a)は第一の実施形態にかかる人体局部洗浄装置のシャッターを取り外す際における動作を説明するための図であって本体ベースとの係合が解除された着脱ベースがノズル本体によって手前側に引き出された状態を示した図(底面図)であり、図10(b)は図10(a)に示したC4部拡大図である。
【図11】第一の実施形態にかかる人体局部洗浄装置のシャッターを取り外す際における動作を説明するための図であり、本体ベースとの係合が解除された着脱ベースがノズル本体にぶら下がっている状態を示した図(底面図)である。
【図12】第二の実施形態にかかる人体局部洗浄装置において一方のノズル本体が局部洗浄位置に位置している状態を示した図(底面図)である。
【図13】図13(a)は第二の実施形態にかかる人体局部洗浄装置において第一のノズル本体および第二のノズル本体が局部洗浄位置と前進端位置との間に位置している状態を示した図(底面図)であり、図13(b)は第二の実施形態にかかる人体局部洗浄装置において第一のノズル本体および第二のノズル本体が前進端位置に位置している状態を示した図(底面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、左右方向(幅方向)とは図1および図2に示したX軸方向をいい、前後方向とは図1および図2に示したY軸方向をいい、上下方向(高さ方向)とは図1および図2に示したZ軸方向をいうものとする。
【0027】
(人体局部洗浄装置の構成)
図1から図11を参照して本発明の第一の実施形態にかかる人体局部洗浄装置1について説明する。本発明の第一の実施形態にかかる人体局部洗浄装置1は、人体の局部を洗浄するシャワーノズルである第一のノズル本体10および第二のノズル本体20と、これらノズル本体10,20の少なくとも先端部を覆うシャッター30と、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20が取り付けられた本体ベース40と、この本体ベース40に対して所定位置に装着される着脱ベース50と、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20が所定の動作を行うように制御する制御手段60と、を備える。以下、各構成について詳細に説明する。
【0028】
第一のノズル本体10(例えば、肛門洗浄用ノズル本体)および第二のノズル本体20(例えば、ビデ洗浄用ノズル本体)は、最後方位置である原位置と、原位置よりも前方の人体の局部を洗浄する位置である局部洗浄位置との間を進退動自在に設けられたシャワーノズルである。なお、局部洗浄位置(洗浄水の噴出位置)は複数の位置から使用者が任意に選択することができるように構成されていればよい。第一のノズル本体10および第二のノズル本体20の外周面には、その長さ方向(前後方向)に延びるラック11,12が形成されている。このラック11,12には、駆動源であるモータ91,92によって回転する駆動歯車911,921が噛合されている(図3参照)。つまり、モータ91,92を駆動させ、駆動歯車911,921を回転させることにより、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20は、その長さ方向に進退動作する。本実施形態では、第一のノズル本体10の動作速度と第二のノズル本体20の動作速度は略同じに設定されている。
【0029】
図4に示すように、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20の内部には、流体管12,22などの洗浄水を供給するための機構が設けられている。この機構は、洗浄水による洗浄面積や、洗浄水の噴出高さ(水圧)を調整する構成を備える。なお、この第一のノズル本体10と第二のノズル本体20は、同じの機構を備えた構成としてもよいし、目的(洗浄位置)に応じてそれぞれが別の機構を有した構成としてもよい。局部洗浄時には、流体管12,22を通った洗浄水が各ノズル本体10,20の先端側上部に形成された噴出口13,23より噴出される。このノズル本体10,20内部の洗浄水供給機構については、周知の構成が適用できる(例えば、特開2007−239248号公報に記載の構成を採用することができる)から詳細な説明は省略する。
【0030】
この第一のノズル本体10および第二のノズル本体20のそれぞれの外周面には、第一の係合解除部14および第二の係合解除部24が形成されている。第一の係合解除部14および第二の係合解除部24は、互いに近づく方向(詳細を後述する操作部53に近づく方向)である幅方向内側に向かって突出した突起であり、本実施形態では両係合解除部14,24の前後方向位置は略同じである。すなわち、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20の前後方向位置が同じである場合、両係合解除部14,24は幅方向における中央線(装置を幅方向に二分する中央線)を対称軸として互いに線対称に位置する。
【0031】
図6から図11に示すように、上下方向から見て、第一の係合解除部14および第二の係合解除部24の突起の頂部14t,24t(最も幅方向内側に位置する部分)よりも前側の部分には、頂部14t,24tに向かって傾斜した押圧部分141,241および引掛部分142,242が形成されている。本実施形態では、押圧部分141,241の傾斜角度は引掛部分142,242の傾斜角度よりもなだらかである。つまり、頂部14t,24tよりも前側の部分には、押圧部分141,241と引掛部分142,242との境界に段差が生じている。また、第一の係合解除部14および第二の係合解除部24の突起の頂部14t,24tよりも後側の部分143,243(以下単に後側部分と称する)も頂部14t,24tに向かって傾斜した形状となっている。なお、ここでいう「傾斜」した引掛部分142,242、押圧部分141,241、および後側部分143,243には、頂部14t,24tに向かって直線状に傾斜したものだけでなく、曲線状に傾斜したものを含む。すなわち、上下方向から見たとき、突起の外側の面(縁)が段々と頂部14t,24tに近づくような形状であるもの全てを含む。
【0032】
シャッター30は、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20に汚水や汚物が付着しないように、少なくともこれらノズル本体10,20の先端部を覆う略四角形の板状の部材である。シャッター30の幅方向両側には、外側に向かって突出した突起である支持軸31が形成されている。この支持軸31が、着脱ベース50の前側上部に設けられた軸受部51に回転自在に支持されている。つまり、シャッター30は、原位置において着脱ベース50の前面を覆い、この状態から着脱ベース50に対して前方に回動自在となるように取り付けられている。原位置に位置する第一のノズル本体10および第二のノズル本体20のうち少なくともいずれか一方が前進する(局部洗浄位置向かって移動しはじめる)と、その前進したノズル本体の先端部に押され、シャッター30は前方に回動する。すなわち、ノズル本体は、シャッター30を押し開かせつつ、局部洗浄位置まで移動する。
【0033】
本体ベース40は、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20を保持するベース部材である。本体ベース40の内側には、所定の大きさの内部空間が形成されており、この内部空間内に原位置に位置する第一のノズル本体10および第二のノズル本体20が収容された状態となる。かかる本体ベース40には、駆動源であるモータ91,92が支持されている。なお、本発明における「本体ベース」は、図示される本体ベース40だけでなく、この本体ベース40を支持する(本体ベース40が固定された)ハウジングなどと称される部材(洗浄水を貯めるタンクなど、人体局部洗浄装置1を構成する各種部材が収納・固定されるケース)を含む概念である。
【0034】
原位置と局部洗浄位置との間を進退動作する第一のノズル本体10および第二のノズル本体20は、真っ直ぐ動作するように本体ベース40に案内される。また、本体ベース40の前側下部の中央には、第一の被係合部411および第二の被係合部412が形成されている。具体的には、第一の被係合部411および第二の被係合部412は、断面略「U」字状に形成された受容部41の幅方向両側壁に形成された貫通孔である。かかる第一の被係合部411および第二の被係合部412には、着脱ベース50に設けられた後述する第一の係合部531aおよび第二の係合部532aが係合される。この第一の被係合部411と第二の被係合部412とは、幅方向における中央線を対称軸として線対称に位置する。
【0035】
着脱ベース50は、シャッター30を保持するベース部材である。上述したように、シャッター30は、着脱ベース50の前側上部に設けられた軸受部51に回動自在に支持されている。着脱ベース50には、前後方向に貫く貫通孔52が形成されており、この貫通孔52は、本体ベース40の内側の内部空間と連なる。したがって、進退動作する第一のノズル本体10および第二のノズル本体20は、この着脱ベース50の貫通孔52から出没する。つまり、着脱ベース50には、進退動作する第一のノズル本体10および第二のノズル本体20が通る空間として貫通孔52が形成されている。この着脱ベース50の下面の中央には、着脱ベース50を本体ベース40に装着するために用いる操作部53が取り付けられている。
【0036】
操作部53は、断面略「U」字状に形成された弾性変形可能な第一の壁体531および第二の壁体532を有する部分である。第一の壁体531および第二の壁体532は、外面から幅方向外側に向かって突出する爪部である第一の係合部531aおよび第二の係合部532aを有する。また、第一の壁体531および第二の壁体532の先端には、幅方向外側に向かって延びる(第一の壁体531および第二の壁体532とともに断面略「L」字状の構造物を構成する)第一の接触突起531bおよび第二の接触突起532bを有する。この第一の壁体531(第一の係合部531aおよび第一の接触突起531bを含む)と第二の壁体532(第二の係合部532aおよび第二の接触突起532bを含む)は、幅方向における中央線を対称軸として線対称に位置する。
【0037】
着脱ベース50を本体ベース40に装着する際には、着脱ベース50の操作部53を本体ベース40の受容部41に挿入する。そうすると、受容部41の内面(前後方向に平行な面)によって第一の係合部531aおよび第二の係合部532aが押され、第一の壁体531および第二の壁体532が内側に弾性変形する。そのまま操作部53を受容部41に挿入していくと、第一の係合部531aが第一の被係合部411に係合する(第一の係合部531aが第一の被係合部411に嵌り込む(嵌合する)・引っ掛かる(係止する))とともに、第二の係合部532aが第二の被係合部412に係合し(第二の係合部532aが第一の被係合部412に嵌り込み(嵌合し)・引っ掛かり(係止し))、これと同時に第一の壁体531および第二の壁体532の弾性変形が解消される。これにより、着脱ベース50が本体ベース40に装着された状態となる。なお、上述したように、本発明における「本体ベース」には、図示される本体ベース40だけでなく、この本体ベース40を支持するハウジングが含まれる。したがって、当該ハウジングに受容部41が形成され、着脱ベース50がハウジングに着脱自在に装着される構成であってもよい。
【0038】
かかる状態では、第一の接触突起531bおよび第二の接触突起532bの先端は、受容部41の外面(前後方向に平行な面)よりも幅方向外側に突出している。したがって、第一のノズル本体10または第二のノズル本体20が所定長さ前進すると、これらが有する第一の係合解除部14または第二の係合解除部24は、第一の接触突起531bまたは第二の接触突起532bに接触する。そのため、第一の接触突起531bを有する第一の壁体531または第二の接触突起532bを有する第二の壁体532が内側に弾性変形する。第一の壁体531が内側に弾性変形すると第一の係合部531aと第一の被係合部411の係合(嵌合・係止)が解除され、第二の壁体532が内側に弾性変形すると第二の係合部532aと第二の被係合部412の係合(嵌合・係止)が解除される。つまり、本実施形態では、第一のノズル本体10が所定距離前進すれば、第一の係合部531aと第一の被係合部411の係合が解除され、第二のノズル本体20が所定距離前進すれば、第二の係合部532aと第二の被係合部412の係合が解除されることとなる。
【0039】
また、この操作部53は、着脱ベース50の本体部分(着脱ベース50の操作部53以外の部分)に対して次のように取り付けられている。着脱ベース50の本体部分には、その下面から下方に突出する軸であるスライド部54が形成されている。スライド部54は、先端に少なくとも前後方向に延びる鍔部541が形成された断面略「T」字状の軸である。一方、操作部53の上面には、貫通孔であるスライドガイド533が形成されている。このスライドガイド533は、幅方向(すなわちノズル本体10,20の進退方向(前後方向)に直交する方向)に長い長孔である。スライド部54はスライドガイド533に挿通されている。スライド部54には少なくとも前後方向に延びる鍔部541が形成されているから、その鍔部541が長孔の周縁に引っ掛かった状態となる。つまり、この鍔部541によって操作部53が着脱ベース50の本体部分から外れないように支持された状態となる。操作部53は、このように着脱ベース50の本体部分に取り付けられているため、長孔であるスライドガイド533の長手方向、すなわちノズル本体10,20の進退方向に直交する方向に着脱ベース50の本体部分に対してスライド可能である。このように着脱ベース50の本体部分に取り付けられた操作部53が上記受容部41に係合されることにより、着脱ベース50は本体ベース40に装着されている。
【0040】
なお、操作部53がスライドする方向は、本実施形態のようにノズル本体10,20の進退方向に直交する方向である方が好ましいが、少なくとも交差する方向であればよい。また、着脱ベース50の本体部分に上記スライドガイド533(長孔)に相当する部分を形成し、操作部53に上記スライド部54(鍔部541を有する軸)を形成した構成としてもよい。また、ノズル本体10,20の進退方向に対して少なくとも交差する方向に操作部53がスライド可能であれば、上記構成とは異なる構成を採用してもよい。
【0041】
制御手段60は、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20が所定の動作(以下の動作説明参照)を行うように、これらの駆動源であるモータ91,92を制御する。第一のノズル本体10および第二のノズル本体20が以下の動作を行うことができるように構築されたものであれば、どのような構成であってもよい。
【0042】
(人体局部洗浄装置の動作)
このような構成を備える人体局部洗浄装置1の動作について、一部上記説明と重複するが以下詳細に説明する。なお、以下の動作説明は、第一のノズル本体10または第二のノズル本体20によって人体の局部を洗浄する際の動作である「1.局部洗浄時における動作」と、使用者が装置を清掃しようとする際に、シャッター30を着脱ベース50とともに取り外す際の動作である「2.シャッターを取り外す際における動作」に分けて説明する。
【0043】
1.局部洗浄時における動作
局部洗浄時(すなわち通常動作時)には、制御手段60は、第一のノズル本体10または第二のノズル本体20を前進させる。つまり、使用者の目的(洗浄箇所)に応じた一方のノズル本体を前進させ、他方はそのまま原位置に位置させておく(両方を一度に前進させることはない)。使用者が図示されないスイッチ等を操作し、その操作目的に対応したノズル(洗浄動作させるべきノズル)が例えば第一のノズル本体10である場合、制御手段60は第一のノズル本体10と機械的に連繋されたモータ91を駆動する(駆動歯車911を正転させる)。これにより、第一のノズル本体10は、局部洗浄位置に向けてシャッター30を押し開かせつつ前進し始める。
【0044】
第一のノズル本体10の外周面には、第一の係合解除部14が形成されている。したがって、第一のノズル本体10が所定距離前進すると、第一の係合解除部14が第一の壁体531が有する第一の接触突起531bに接触する。つまり、第一の接触突起531bが第一の係合解除部14の頂部14tに向かって傾斜した押圧部分141や引掛部分142に乗り上がる。これにより、第一の接触突起531bが第一の係合解除部14の押圧部分141や引掛部分142に押され、第一の壁体531が幅方向内側に弾性変形する(図6参照)。なお、押圧部分141や引掛部分142は頂部14tに向かって傾斜しているから、かかる弾性変形量は徐々に大きくなる。また、スライド部54とスライドベースの係合により操作部53全体が着脱ベース50の本体部分に対して幅方向にスライド可能であるから、上記のように第一の接触突起531bが第一の係合解除部14の押圧部分141や引掛部分142に押されると、第二のノズル本体20側に操作部53全体がスライドする。
【0045】
このように、第一の壁体531が幅方向内側に弾性変形しつつ、操作部53全体が第二のノズル本体20側に移動する(第二の壁体532が受容部41の内壁によって弾性変形した状態となる)。第一の壁体531が幅方向内側に弾性変形し、操作部53全体が第二のノズル本体20側に移動すると、第一の壁体531の第一の係合部531aと受容部41の第一の被係合部411との係合が解除される。しかし、第二の壁体532の第二の係合部532aと受容部41の第二の被係合部412との係合は解除されないから、操作部53と受容部41の係合は完全に解除されない。つまり、第一のノズル本体10のみが前進動作しても、操作部53が受容部41から外れてしまうこと、すなわち着脱ベース50が本体ベース40から外れてしまうことはない。
【0046】
第一のノズル本体10がさらに前進すると、第一の係合解除部14が第一の接触突起531bを乗り越える(図7参照)。このように第一の係合解除部14が第一の接触突起531bを乗り越えると、第一の接触突起531bが第一の係合解除部14の押圧部分141や引掛部分142に押された状態が解消されるから、第一の壁体531の弾性変形が解消される。また、第二のノズル本体20側に移動していた操作部53は、第二の壁体532の弾性変形を解消する方向に移動する。つまり、操作部53全体が第一のノズル本体10側に移動し、中央位置に戻る。このように第一の係合部531aが第一の接触突起531bを乗り越えてから、さらに所定距離前進することにより、第一のノズル本体10が局部洗浄位置に到達する。
【0047】
局部洗浄動作終了後、制御手段60は、第一のノズル本体10を前進させたときとは反対方向にモータ91を駆動させ(駆動歯車911を逆転させ)、第一のノズル本体10を後退させる。第一のノズル本体10が所定距離後退すると、第一の係合解除部14が第一の壁体531が有する第一の接触突起531bに接触する。つまり、第一の接触突起531bが第一の係合解除部14の頂部14tに向かって傾斜した後側部分143に乗り上がる。これにより、第一の接触突起531bが第一の係合解除部14の後側部分143に押され、第一の壁体531が幅方向内側に弾性変形する。なお、後側部分143は頂部14tに向かって傾斜しているから、かかる弾性変形量は徐々に大きくなる。また、操作部53全体が着脱ベース50の本体部分に対して幅方向にスライド可能であるから、第一の接触突起531bが第一の係合解除部14の後側部分143に押されると、第二のノズル本体20側に操作部53全体がスライドする。
【0048】
この場合においても、第一のノズル本体10が前進動作した場合と同様に、第一の壁体531の第一の係合部531aと受容部41の第一の被係合部411との係合が解除されるが、第二の壁体532の第二の係合部532aと受容部41の第二の被係合部412との係合は解除されないから、操作部53と受容部41の係合は完全に解除されない。つまり、第一のノズル本体10のみが後退動作しても、操作部53が受容部41から外れてしまうこと、すなわち着脱ベース50が本体ベース40から外れてしまうことはない。
【0049】
第一のノズル本体10がさらに後退すると、第一の係合解除部14が第一の接触突起531bを乗り越える。このように第一の係合解除部14が第一の接触突起531bを乗り越えると、第一の接触突起531bが第一の係合解除部14の押圧部分141や引掛部分142に押された状態が解消されるから、第一の壁体531の弾性変形が解消される。また、第二のノズル本体20側に移動していた操作部53は、第二の壁体532の弾性変形を解消する方向に移動する。つまり、操作部53全体が第一のノズル本体10側に移動し、中央位置に戻る。このように第一の係合部531aが第一の接触突起531bを乗り越えてから、さらに所定距離後退することにより、第一のノズル本体10は原位置に戻る。
【0050】
このように、本実施形態にかかる人体局部洗浄装置1では、第一のノズル本体10のみが進退動作を行った場合、第一の係合部531aと第一の被係合部411の係合は解除されるものの、第二の係合部532aと第二の被係合部412の係合は解除されないから、操作部53と受容部41の係合は完全に解除されない。したがって、シャッター30を保持する着脱ベース50が本体ベース40から外れてしまうことはない。なお、上記動作説明では、第一のノズル本体10のみが進退動作した場合を説明したが、第二のノズル本体20のみが進退動作を行った場合も同様に考えればよい。すなわち、第二のノズル本体20のみが進退動作を行った場合、第二の係合部532aと第二の被係合部412の係合は解除されるものの、第一の係合部531aと第一の被係合部411の係合は解除されないから、操作部53と受容部41の係合は完全に解除されない。したがって、シャッター30を保持する着脱ベース50が本体ベース40から外れてしまうことはない。
【0051】
2.シャッターを取り外す際における動作
シャッター30を取り外す際には、制御手段60は、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20の両方を一緒に前進させる。これにより、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20は、シャッター30を押し開かせつつ前進し始める(図8参照)。
【0052】
上述したように、第一のノズル本体10の動作速度と第二のノズル本体20の動作速度は略同じに設定されている。また、第一のノズル本体10の外周面には第一の係合解除部14が、第二のノズル本体20の外周面には第二の係合解除部24が形成され、両係合解除部14,24の前後方向位置は同じである。したがって、第一のノズル本体10が所定距離前進することによって第一の係合解除部14が第一の壁体531が有する第一の接触突起531bに接触すると、それと略同時に第二の係合解除部24が第二の壁体532が有する第二の接触突起532bに接触する。したがって、第一の接触突起531bが第一の係合解除部14の押圧部分141に押され、第一の壁体531が幅方向内側に弾性変形すると同時に、第二の接触突起532bが第二の係合解除部24の押圧部分241に押され、第二の壁体532が幅方向内側に弾性変形する(図9参照)。つまり、断面略「U」字状である操作部53を幅方向両側から両係合解除部14,24が挟み込むような状態となるため、第一の壁体531および第二の壁体532の両方が幅方向内側に弾性変形する。
【0053】
このように第一の壁体531および第二の壁体532の両方が幅方向内側に弾性変形すると、第一の壁体531の第一の係合部531aと受容部41の第一の被係合部411との係合が解除されると同時に、第二の壁体532の第二の係合部532aと受容部41の第二の被係合部412との係合が解除される。つまり、操作部53と受容部41の係合が完全に解除され、着脱ベース50が本体ベース40から外れた状態となる。
【0054】
この第一の係合部531aと第一の被係合部411の係合および第二の係合部532aと第二の被係合部412の係合が解除されたとき、第一の接触突起531bは第一の係合解除部14の引掛部分142に引っ掛かり、第二の接触突起532bは第二の係合解除部24の引掛部分242に引っ掛かった状態となっている。したがって、さらにそのまま第一のノズル本体10および第二のノズル本体20を前進させると、両係合解除部14,24の引掛部分142,242に引っ掛かった両接触突起531b,532bを有する操作部53は、そのままノズル本体10,20に引き出されて前進する(図10参照)。つまり、操作部53を有する着脱ベース50およびそれに保持されたシャッター30がノズル本体10,20に引き出されて前進する。ここで、図9からわかるように、第一の係合部531aと第一の被係合部411の係合および第二の係合部532aと第二の被係合部412の係合が解除されたとき、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20の先端S1は、着脱ベース50の先端面S2よりも前方に位置する。したがって、本体ベース40から外れた着脱ベース50は、その貫通孔52を貫く第一のノズル本体10および第二のノズル本体20に支持された状態(第一のノズル本体10および第二のノズル本体20にぶら下がった状態)で、手前側に引き出される。したがって、着脱ベース50およびシャッター30が便鉢内に落下してしまうことはない。
【0055】
制御手段60は、所定位置(例えば局部洗浄位置)まで第一のノズル本体10および第二のノズル本体20が前進したことをもってモータ91,92を停止する。使用者は、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20にぶら下がった状態で手前側に引き出された着脱ベース50を取り上げる。そして、着脱ベース50からシャッター30を取り外す(図11参照)。これにより、着脱ベース50およびシャッター30を個別に清掃等することができる。清掃後は、着脱ベース50にシャッター30を取り付け、操作部53を受容部41に係合することにより着脱ベース50を本体ベース40に装着する。そして、所定の操作を行うことにより、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20の両方を後退させ、原位置に戻せばよい。
【0056】
このように、本実施形態にかかる人体局部洗浄装置1では、第一のノズル本体10と第二のノズル本体20の両方を前進させることにより、第一の係合部531aと第一の被係合部411の係合および第二の係合部532aと第二の被係合部412の係合の両方を同時に解除する。これにより、着脱ベース50が本体ベース40から取り外される。すなわち、本実施形態にかかる人体局部洗浄装置1は、通常時には局部洗浄動作を行うノズル本体10,20を、着脱ベース50およびそれに取り付けられたシャッター30を取り外すための要素として巧みに利用したものである。
【0057】
(第一の実施形態の主な作用効果)
以上説明した本発明の第一の本実施形態にかかる人体局部洗浄装置1は、シャッター30が取り付けられた着脱ベース50を本体ベース40から取り外す際には、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20の両方を前進させ、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20の第一の係合解除部14および第二の係合解除部24により、第一の係合部531aと第一の被係合部411および第二の係合部532aと第二の被係合部412の係合を解除する。つまり、二つのノズル本体10,20を一度に前進動作させるだけで、シャッター30が取り付けられた着脱ベース50と本体ベース40の係合を解除することができ、シャッター30や着脱ベース50に触れることなく着脱ベース50を取り外すことができる。
【0058】
なお、局部洗浄時(通常動作時)には、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20のいずれか一方を前進させる構成であるため、第一の係合部531aと第一の被係合部411および第二の係合部532aと第二の被係合部412の係合の両方が解除されることはない。つまり、局部洗浄時に本体ベース40から着脱ベース50が外れることことはない。
【0059】
また、第一の壁体531および第二の壁体532に形成された接触突起531b,532bに、第一のノズル本体10の第一の係合解除部14および第二のノズル本体20の第二の係合解除部24が接触することにより、第一の壁体531および第二の壁体532が弾性変形して係合部531a,532aと被係合部411,412の係合が解除される構成であるため、両ノズル本体10,20によって着脱ベース50と本体ベース40の係合が解除される機構が簡易な構造で構築される。また、局部洗浄時において、一方のノズル本体(洗浄動作を行うノズル本体)の係合解除部は、一方の壁体を弾性変形させつつ接触突起を乗り越えることができるから、ノズル本体のスムーズな(従来と変わらない)進退動作が発現される。
【0060】
また、第一の係合解除部14および第二の係合解除部24により第一の係合部531aと第一の被係合部411の係合および第二の係合部532aと第二の被係合部412の係合が解除されたときに、両ノズル本体10,20の先端S1が着脱ベース50の先端面S2よりも前方に位置するように設定されているため、本体ベース40から外れた着脱ベース50は、貫通孔52を貫く両ノズル本体10,20に支持される。したがって、着脱ベース50およびそれに取り付けられたシャッター30が便鉢内に落下してしまうことが防止される。
【0061】
また、第一の接触突起531bおよび第二の接触突起532b、第一の係合解除部14および第二の係合解除部24は、互いに近づく方向に突出した単純な突起であるため、両ノズル本体10,20によって着脱ベース50と本体ベース40の係合が解除される機構の構築が簡単である。
【0062】
また、スライドガイド533とスライド部54の係合により、操作部53がノズル本体10,20の進退方向と交差する方向にスライド自在であるため、ノズル本体の一方が前進しその係合解除部が一方の壁体の接触突起に接触したとき、その接触によって操作部53に加わる力を、操作部53全体のスライドによって逃がすことができる。つまり、局部洗浄時において、一方のノズル本体の係合解除部が一方の壁体の接触突起を乗り越えようとする際、操作部53全体が他方のノズル本体側にスライドするから、係合解除部が接触突起を乗り越える際における一方の壁体の弾性変形量が小さくて済む。したがって、局部洗浄時におけるノズル本体10,20のよりスムーズな進退動作が発現される。
【0063】
また、突起である係合解除部14,24の頂部14t,24tより前側の部分に、頂部14t,24tに向かう傾斜が相対的に急である壁体を弾性変形させる押圧部分141,241と、頂部14t,24tに向かう傾斜が相対的になだらかである接触突起531b,532bに引っ掛かる引掛部分142,242と、が形成されているため、押圧部分141,241によって本体ベース40との係合が解除された着脱ベース50を引掛部分142,242によってそのままノズル本体10,20とともに手前側に引き出すことができる。そのため、ノズル本体10,20に引っ掛かった着脱ベース50を取り上げる作業が容易となる。また、接触突起531b,532bに引っ掛けられる引掛部分142,242も頂部14t,24tに向かって傾斜しているから、局部洗浄時に係合解除部14,24が接触突起531b,532bをスムーズに乗り越える。すなわち、局部洗浄時におけるノズル本体10,20のよりスムーズな前進動作が発現される。
【0064】
また、突起である係合解除部14,24の頂部14t,24tより後側部分143が突起の頂部14t,24tに向かって傾斜しているため、局部洗浄時にノズル本体10,20が局部洗浄位置から原位置に戻る際(ノズル本体10,20が後退動作する際)、係合解除部14,24が接触突起531b,532bをスムーズに乗り越える。すなわち、局部洗浄時におけるノズル本体10,20のよりスムーズな後退動作が発現される。
【0065】
(第二の実施形態)
以下、本発明の第二の実施形態にかかる人体局部洗浄装置2について説明する。なお、第一の実施形態にかかる人体局部洗浄装置1と同一の構成については説明を省略する。
【0066】
第二の実施形態にかかる人体局部洗浄装置2は、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20は、原位置と前進端位置との間を進退動自在に設けられている。ここで、「前進端位置」とは、洗浄水を噴出する局部洗浄位置(局部洗浄位置が複数設定される場合は、最も前方の局部洗浄位置のことをいう。以下同じ)よりもさらに前方の所定位置のことである。すなわち、本実施形態におけるノズル本体は、第一の実施形態におけるノズル本体よりも「局部洗浄位置と前進端位置との間」の距離分さらに前進することができる。
【0067】
また、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20の外周面のそれぞれには、第一の係合解除部14および第二の係合解除部24が形成されている。かかる係合解除部14,24は、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20が原位置から局部洗浄位置まで前進するまでの間に、第一の接触突起531bおよび第二の接触突起532bに接触せず、局部洗浄位置から前進端位置まで前進するまでの間に、第一の接触突起531bおよび第二の接触突起532bに接触するように設定されている。
【0068】
つまり、局部洗浄時(すなわち通常動作時)には、制御手段60は、第一のノズル本体10または第二のノズル本体20を「原位置と局部洗浄位置との間」を進退動作させる。「原位置と局部洗浄位置との間」を進退動作しているときには、第一の係合解除部14が第一の接触突起531bに接触したり、第二の係合解除部24が第二の接触突起532bに接触したりすることはない(図12参照)。
【0069】
一方、シャッター30を取り外す際には、制御手段60は、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20の両方を、前進端位置まで前進させる。第一のノズル本体10および第二のノズル本体20が「局部洗浄位置と前進端位置との間」の所定位置まで前進すると、第一の係合解除部14が第一の接触突起531bに接触するとともに第二の係合解除部24が第二の接触突起532bに接触する。すなわち、当該地点まで第一のノズル本体10および第二のノズル本体20が前進することによって、第一の係合部531aと第一の被係合部411の係合および第二の係合部532aと第二の被係合部412の係合が解除され、着脱ベース50が本体ベース40から外れる(図13(a)参照)。そこから、第一のノズル本体10および第二のノズル本体20がさらに前進することにより、本体ベース40から外れた着脱ベース50が手前側に引き出される(図13(b)参照)。第一のノズル本体10および第二のノズル本体20が前進端位置まで移動するとモータ91,92が停止する。このモータ91,92が停止した後、本体ベース40から外れた着脱ベース50を、それに支持されたシャッター30とともに取り上げればよい。
【0070】
このように、本実施形態にかかる人体局部洗浄装置2では、原位置と局部洗浄位置よりもさらに前方である前進端位置との間を進退動自在となるように第一のノズル本体10および第二のノズル本体20を構成した上で、「局部洗浄位置と前進端位置との間」で係合部531a,532aと被係合部411,412の係合が解除されるように設定される。すなわち、局部洗浄時(通常動作時)におけるノズル本体10,20の動作範囲ではない部分を利用して、当該係合が解除される構成である。
【0071】
そのため、局部洗浄時においては、第一の係合解除部14または第二の係合解除部24は、第一の接触突起531bまたは第二の接触突起532bに接触しない(両係合解除部14,24が作用しない)。つまり、局部洗浄時には、第一の係合部531aと第一の被係合部411の係合、および第二の係合部532aと第二の被係合部412の係合のいずれも解除されることがないから、局部洗浄時に本体ベース40から着脱ベース50が完全に外れてしまうことが確実に防止される。また、局部洗浄時には、ノズル本体10,20に対しその進退方向と交差する方向に作用する部材が存在しないため(係合解除部14,24が作用しないため)、ノズル本体10,20の進退動作がスムーズである。
【0072】
なお、本実施形態では、第一の係合解除部14や第二の係合解除部24が、第一の接触突起531bや第二の接触突起532bを乗り越えることはない。したがって、図12や図13に示すように、第一の係合解除部14や第二の係合解除部24には、少なくとも着脱ベース50を手前側に引き出すための引掛代(第一の実施形態における引掛部分142,242に相当する構成)が設けられていればよい。また、操作部53全体をスライドさせるための構成(第一の実施形態におけるスライド部54やスライドガイド533に相当する構成)は必要ない。つまり、第一の係合解除部14や第二の係合解除部24が、第一の接触突起531bや第二の接触突起532bを乗り越える動作をスムーズにするための構成(傾斜面)を設けなくともよい。
【0073】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0074】
1(2) 人体局部洗浄装置
10,20 第一のノズル本体,第二のノズル本体
14,23 第一の係合解除部,第二の係合解除部
14t,24t 頂部
141,241 押圧部分
142,242 引掛部分
143,243 後側部分
30 シャッター
40 本体ベース
411 第一の被係合部
412 第二の被係合部
50 着脱ベース
52 貫通孔
53 操作部
531,532 第一の壁体,第二の壁体
531a,532a 第一の係合部,第二の係合部
531b,532b 第一の接触突起,第二の接触突起
533 スライドガイド
54 スライド部
60 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも原位置と局部洗浄位置との間を進退動自在に設けられた第一のノズル本体および第二のノズル本体と、
原位置に位置する前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の少なくとも先端部を覆うシャッターと、
前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体が取り付けられた本体ベースと、
前記シャッターが開閉自在に取り付けられた前記本体ベースに対して着脱自在である着脱ベースと、
局部洗浄時には、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体のいずれか一方を、その先端部により前記シャッターを押し開かせつつ局部洗浄位置まで前進させる制御手段と、を備え、
前記シャッターが取り付けられた前記着脱ベースを前記本体ベースから取り外す際には、前記制御手段により前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の両方を前進させることで、前記本体ベースと前記着脱ベースとの係合が解除され、前記着脱ベースが前記本体ベースから取り外されることを特徴とする人体局部洗浄装置。
【請求項2】
前記本体ベースには、第一の被係合部および第二の被係合部が形成されるとともに、前記着脱ベースには、前記第一の被係合部と係合される第一の係合部および前記第二の被係合部に係合される第二の係合部が形成され、
前記着脱ベースは、前記両係合部が前記両被係合部に係合されることにより本体ベースに装着されていることを特徴とする請求項1に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項3】
前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の両方を前進させ、前記第一のノズル本体に設けられた第一の係合解除部により前記第一の係合部と前記第一の被係合部の係合を解除させるとともに、前記第二のノズル本体に設けられた第二の係合解除部により前記第二の係合部と前記第二の被係合部の係合を解除させることにより、前記着脱ベースが前記本体ベースから取り外されることを特徴とする請求項2に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項4】
前記着脱ベースには、前記第一の係合部が形成された弾性変形可能である第一の壁体および前記第二の係合部が形成された弾性変形可能である第二の壁体を有する操作部が設けられ、
前記第一の壁体には、前記第一のノズル本体が前進したとき前記第一の係合解除部に接触する第一の接触突起が形成されるとともに、前記第二の壁体には、前記第二のノズル本体が前進したとき、前記第二の係合解除部に接触する前記第二の接触突起が形成され、
局部洗浄時には、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の一方は、その係合解除部が前記第一の接触突起および前記第二の接触突起の一方と接触することによりその接触突起が形成された壁体を弾性変形させつつ当該接触突起を乗り越え局部洗浄位置まで前進する一方、
前記シャッターが取り付けられた前記着脱ベースを前記本体ベースから取り外す際には、前記第一の接触突起に前記第一の係合解除部が接触することにより前記第一の壁体が弾性変形して前記第一の係合部と前記第一の被係合部の係合が解除されるとともに、前記第二の接触突起に前記第二の係合解除部が接触することにより前記第二の壁体が弾性変形して前記第二の係合部と前記第二の被係合部の係合が解除されることを特徴とする請求項3に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項5】
前記第一の係合解除部により前記第一の係合部と前記第一の被係合部の係合が解除され、かつ、前記第二の係合解除部により前記第二の係合部と前記第二の被係合部の係合が解除されたときには、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の先端は、前記着脱ベースの先端面よりも前方に位置することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項6】
前記第一の接触突起および前記第二の接触突起は、それぞれ、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の外面に近づく方向に突出した突起であり、
前記第一の係合解除部および前記第二の係合解除部は、それぞれ、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の外面から前記操作部に近づく方向に突出した突起であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項7】
前記着脱ベースの本体部分および前記操作部の一方には、ノズル本体の進退方向と交差する方向に延びるスライドガイドが形成されるとともに、他方には、このスライドガイドに係合するスライド部が形成され、
前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の一方が前進し当該一方のノズル本体の前記係合解除部が前記接触突起に接触したときには、前記スライドガイドに係合する前記スライド部によって前記操作部が案内されて他方のノズル本体側にスライドすることを特徴とする請求項6に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項8】
前記第一の係合解除部および前記第二の係合解除部のそれぞれにおける突起の頂部よりも前側の部分には、
前記壁体を弾性変形させ前記係合部と前記被係合部の係合を解除させる、突起の頂部に向かって傾斜した押圧部分と、
この前記係合部と前記被係合部の係合が解除された状態において、前記接触突起に引っ掛かり、前記操作部を介して前記着脱ベースおよびそれに取り付けられた前記シャッターを前記ノズル本体とともに手前側に引き出す、突起の頂部に向かって傾斜した引掛部分と、が形成され、
前記押圧部分の傾斜角度の方が前記引掛部分の傾斜角度よりもなだらかであることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項9】
前記第一の係合解除部および前記第二の係合解除部のそれぞれにおける突起の頂部よりも後側の部分は、当該突起の頂部に向かって傾斜していることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の人体局部洗浄装置。
【請求項10】
前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体は、原位置と前記局部洗浄位置よりもさらに前方である前進端位置との間を進退動自在に設けられており、
前記シャッターが取り付けられた前記着脱ベースを前記本体ベースから取り外す際には、前記第一のノズル本体および前記第二のノズル本体の両方を前記局部洗浄位置よりもさらに前進させることにより、前記第一のノズル本体に設けられた第一の係合解除部により前記第一の係合部と前記第一の被係合部の係合が解除され、前記第二のノズル本体に設けられた第二の係合解除部により前記第二の係合部と前記第二の被係合部の係合が解除されることを特徴とする請求項3に記載の人体局部洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−67982(P2013−67982A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206683(P2011−206683)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】