説明

人体検知装置

【課題】マイクロ波を送信することなく、人体の存在を簡易かつ確実に検知することができる人体検知装置を提供する。
【解決手段】
人体検知装置は、マイクロ波を受信するアンテナ1a,1bと、アンテナを選択する切換スイッチ2と、所定の周波数帯域のマイクロ波を取り出す帯域制限フィルタ3と、マイクロ波の波形を電圧波形に変換する二乗検波器5、変換された電圧値が所定の電圧範囲内となっているか否か判定する上限値比較回路7aおよび下限値比較回路7bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
人体から放出されるマイクロ波熱雑音に基づいて、人体の存在を検知する人体検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の人体検知装置としては、特許文献1に示すように、乗員が着座するシートクッション内に送信素子と受信素子とを備えたセンサ部を設け、送信素子からマイクロ波を着座面に向けて送信し、その反射波を受信素子で受信することにより、シートクッションの沈み込み量(着座面までの距離)から人体の存在の有無を検知するものが知られている。
【特許文献1】特開2006−208236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、現在、比較的高周波の電波であるマイクロ波は、その照射物に熱を生じ得るため、生体への影響が懸念されている。然るに、従来の人体検知装置では、送信素子からマイクロ波を乗員へ向けて送信するため、人体に及ぼす影響の観点から問題がある。
【0004】
また、送信素子から送信されたマイクロ波が他の電子機器へ影響を与えることも懸念される。例えば、車両においてマイクロ波が送信された場合には、電子機器にノイズ等を生じ、計器類に異常を生じ得る点でも問題がある。
【0005】
さらに、従来の人体検知装置では、シートクッションの沈み込み量から、人体の有無を検知している。そのため、乗員の着座以外にシートクッションが沈み込んだ場合(例えば、重量のある荷物をシートクッションに載置した場合)に、乗員が存在すると誤検知してしまうという不都合を生じる。
【0006】
以上の事情に鑑みて、本発明は、マイクロ波を送信することなく、人体の存在を簡易かつ確実に検知することができる人体検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、人体の体温が35℃〜40℃の一定の熱源であることに着目し、かかる熱源からも所定のマイクロ波熱雑音が放出され、空間の中での該マイクロ波の特徴的な変化を捉えることで人体の存在を検知できるとの知見を得た。熱雑音は、マイクロ波帯だけでなく広域の周波数帯域に出ているが、信号の取り扱い易さでマイクロ波帯を使用した。
【0008】
そこで、上記課題を解決するため、本発明は、人体から放出されるマイクロ波熱雑音に基づいて、人体の存在を検知する人体検知装置であって、前記マイクロ波を受信する受信部と、前記受信部で受信したマイクロ波から所定の周波数帯域のマイクロ波を取り出すフィルタ部と、前記フィルタ部を介して切り出されたマイクロ波の波形を電圧波形に変換する電圧変換部と、前記電圧変換部によって変換された電圧波形に基づいて人体の存在を検知する信号処理部とを備えることを特徴とする。
【0009】
かかる本発明の人体検知装置によれば、受信部で受信したマイクロ波熱雑音から、人体から放出されるマイクロ波熱雑音が特徴的な変化となる所定の周波数帯域を取り出し、これを電圧波形に変化した上で、該電圧波形の変化に基づいて人体の有無を検知する。そのため、マイクロ波を送信する必要がなく、装置構成を簡易とすることができ、人体や他の電子機器に影響を与えることもない。
【0010】
さらに、人体の有無は、人体から放出されるマイクロ波熱雑音を直接受信するため、シートの沈み込みといった周辺環境の物理変化に左右されず、人体の有無を確実に検知することができる。
【0011】
このように、本発明の人体検知装置によれば、マイクロ波を送信することなく、人体の存在を確実に検知することができる。
【0012】
本発明の好ましい態様において、前記周波数帯域は、気体分子の吸収により空間減衰する帯域であることを特徴とする。
【0013】
かかる態様によれば、マイクロ波から水蒸気分子等の気体分子により空間減衰する帯域を取り出すことで、周辺に人体に近い熱源が存在する場合にもその影響を低減することができ、空間の中での該マイクロ波の特徴的な変化を確実に捉えることができる。これにより、人体の存在を簡易かつ確実に検知することができる。
【0014】
また、本発明の好ましい態様において、前記信号処理部は、前記電圧波形が人体から放出されるマイクロ波熱雑音に対応した上限値と下限値とのいずれか一方または両方で規定される範囲内にある場合に、人体の存在を検知することを特徴とする。
【0015】
かかる態様によれば、人体から放出されるマイクロ波熱雑音の特徴的な変化を電圧波形の上限値や下限値により捉えることで、閾値の設定という簡易な構成で人体の存在を検知することができる。
【0016】
さらに、本発明の好ましい態様において、前記受信部は指向性を有するアンテナからなり、前記信号処理部は、前記アンテナの指向範囲の人体の存在を検知することを特徴とする。
【0017】
かかる態様によれば、受信部に指向性のあるアンテナを採用することにより、指向範囲というエリア別に人体の存在を検知することができ、例えば、エリア別に不審者の侵入を検知させることで、当該人体検知装置を進入検知装置として利用することができる。
【0018】
さらにまた、本発明の好ましい態様において、前記アンテナが車両のシート内に指向範囲を着座者に向けて設けられてなり、前記信号処理部は、前記シートにおける着座者の存在を検知することを特徴とする。
【0019】
かかる態様によれば、アンテナをシート内に設けた場合にも、着座者から放出されるマイクロ波熱雑音を直接受信するため、シートの沈み込みといった周辺環境の物理変化に左右されず、人体の有無を確実に検知することができる。また、マイクロ波を送信しているわけではないため、車両に搭載された場合に電子機器にノイズ等が発生することを回避することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1を参照して、本発明の一実施形態として、人体検知装置が車両に搭載される場合について説明する。
【0021】
人体検知装置は、マイクロ波を受信する受信部としての複数のアンテナ1a,1bと、複数のアンテナ1a,1bから1つのアンテナを選択する切換スイッチ2と、切換スイッチに接続されて、所定の周波数帯域のマイクロ波熱雑音を取り出す帯域制限フィルタ3(本発明のフィルタ部に相当する)と、帯域制限フィルタ3に接続されて、マイクロ波を増幅するマイクロ波増幅器4と、マイクロ波増幅器4に接続されて、マイクロ波の波形を電圧波形に変換する二乗検波器5(本発明の電圧変換部に相当する)、二乗検波器5により変換された電圧値を増幅する電圧増幅器6と、電圧増幅器6にそれぞれ接続された上限値比較回路7aおよび下限値比較回路7bと、上限値比較回路7aおよび下限値比較回路7bに接続されて、人体の存在を検知する信号処理部8と、前記切換スイッチ2の選択を制御する制御部9と、制御部9および信号処理部8に接続された判定部10とを備える。
【0022】
アンテナ1a,1bは、例えばホーンアンテナやパッチアンテナ等からなる指向性アンテナであって、それぞれ各シート11a,11bの内部に指向範囲に着座者が入るように設置される。具体的には、図1に示すように、アンテナ1a,1bは、指向範囲の中心が着座者の腰位置となるようにシート11a,11bの背もたれの低い位置に設置される。なお、実施形態におけるアンテナ1a,1bの利得は、シート部分による損失を含めて3[dB]となっている。
【0023】
切換スイッチ2は、制御部9の制御信号に基づいて、複数のアンテナアンテナ1a,1bから1つのアンテナを選択し、選択したアンテナの出力を帯域制限フィルタ3に出力する。
【0024】
帯域制限フィルタ3は、入力されたマイクロ波の帯域(バンド域)を気体分子の吸収により空間減衰する帯域に制限する。本実施形態において、帯域制限フィルタ3は、水蒸気分子による吸収減衰が大きい22.24GHzに制限する。なお、22.24GHzの他に、帯域制限フィルタ3は、酸素分子による吸収減衰が大きい周波数帯として60GHzや120GHz、水蒸気分子による吸収減衰が大きい周波数帯として183.3GHzを採用してもよい。マイクロ波熱雑音をこれらの帯域に制限することにより、車内に人体と同等またそれ以上の温度を示す物体が存在する場合にも、これらの影響を低減して、空間の中での人体から放出されたマイクロ波熱雑音の特徴的な変化を確実に捉えることができる。
【0025】
マイクロ波増幅器4は、ゲイン調整を目的とする増幅器であって、増幅後のマイクロ波を二乗検波器5へ送出する。本実施形態において、マイクロ波増幅器4の利得は、65.8dBであり、雑音指数は5dBとなっている。
【0026】
二乗検波器5は、例えば、ショットキーダイオードにより構成され、入力値であるマイクロ波(電力値)を、その二乗に比例した直流電圧値に変換する特性を有する。そして、変換後の電圧値が電圧増幅器6に送出され、電圧増幅器6で増幅される。本実施形態において、二乗検波器5は、入力レベルが−30dBm〜−10dBmで、検波特性が、2乗:±0.1乗となっている。また、電圧増幅器6の増幅倍率は8倍となっている。
【0027】
なお、二乗検波器5と電圧増幅器6との代わりに、これらの機能を一体とした対数増幅器を用いてもよい。
【0028】
上限値比較回路7aは、予め設定された電圧の上限値VMaxと、電圧増幅器6で増幅された電圧値とを比較してその差分に応じた出力を逐次実行する差動増幅器であり、下限値比較回路7bは、予め設定された電圧の下限値Vminと、電圧増幅器6で増幅された電圧値とを比較してその差分に応じた出力を逐次実行する差動増幅器である。
【0029】
具体的に、上限値比較回路7aは、電源7cにより得られる基準電圧を前記電圧の上限値VMaxとして、これを+入力端子に接続し、電圧増幅器6で増幅された電圧を−入力端子に接続し、該電圧が上限値VMaxを下回っている場合には、正常値を示すHレベルの電圧信号を出力し、上限値VMaxを上回っている場合には異常を示すLレベルの電圧信号を出力する。
【0030】
一方、下限値比較回路7bは、電源7dにより得られる基準電圧を前記電圧の下限値Vminとして、これを−入力端子に接続し、電圧増幅器6で増幅された電圧を+入力端子に接続し、該電圧が下限値Vminを上回っている場合には、正常値を示すHレベルの電圧信号を出力し、下限値Vminを下回っている場合には、異常値を示すLレベルの電圧信号を出力する。
【0031】
ここで、上限値比較回路7aの上限値VMaxおよび下限値比較回路7bの下限値Vminの設定値について、説明する。
【0032】
まず、マイクロ波P[W]は、温度Tの関数として下式(1)のように表される。
【0033】
P=K×T×B ・・・・・(1)
ここで、K:ボルツマン定数(1.38×10−23[J/K])
T:絶対温度[K]
B:マイクロ波電力帯域
人体として検知し得る温度範囲を30℃〜50℃とすると、まず、30℃の物体から放出されるマイクロ波P30[W]を、上式(1)に基づいて、マイクロ波電力帯域を100[MHz]として算出すると、下式(2)のように求められる。
【0034】
30[W]=1.38×10−23×(273.5+30)×100
=4.188×10−13[W]=−93.8[dBm] ・・・・・(2)
ただし、Q[W]=10×10log10(Q×1000)[dBm]
上式(2)より、30℃の人体から放出されるマイクロ波電力は、−93.8[dBm]となるが、アンテナ1a,1bの出力値としては、−90.8[dBm]となる。ここから、帯域制限フィルタ3およびマイクロ波増幅器4における総合利得60.8[dB]およびその総合雑音指数10[dB]を加味すると、二乗検波器5への入力時のマイクロ波電力は、−20[dBm]となる。これを二乗検波器5で電圧値に変換すると0.25[V]となり、さらに、電圧増幅器で8倍に増幅することにより2.0[V]となる。
【0035】
このように、30℃の人体から放出されるマイクロ波の検出電圧は、理論的には2.0[V]となる。
【0036】
同様にして、50℃の物体から放出されるマイクロ波P50[W]を、上式(1)に基づいて、マイクロ波電力帯域を100[MHz]として算出すると、下式(3)のように求められる。
【0037】
50[W]=1.38×10−23×(273.5+50)×100
=4.464×10−13[W]=−93.5[dBm] ・・・・・(3)
上式(3)より、50℃の人体から放出されるマイクロ波電力は、−93.5[dBm]となるが、アンテナ1a,1bの出力値としては、−90.5[dBm]となる。ここから、帯域制限フィルタ3およびマイクロ波増幅器4における総合利得60.8[dB]およびその総合雑音指数10[dB]を加味すると、二乗検波器5への入力時のマイクロ波電力は、−19.7[dBm]となる。これを二乗検波器5で電圧値に変換すると0.2675[V]となり、さらに、電圧増幅器で8倍に増幅することにより2.14[V]となる。
【0038】
このように、50℃の人体から放出されるマイクロ波の検出電圧は、理論的には2.14[V]となる。
【0039】
以上の理論的計算結果に基づいて、上限値比較回路7aの上限値VMaxは、2.14[V]に設定され、下限値比較回路7bの下限値Vminは、2.0[V]に設定される。
【0040】
信号処理部8は、判定回路であって、上限値比較回路7aおよび下限値比較回路7bの出力値から、電圧増幅器6で増幅された電圧波形が予め設定された電圧の上限値VMaxおよび下限値Vminの範囲内にあるか否かを判定し、判定結果を判定部10へ出力する。
【0041】
具体的に、信号処理部8は、上限値比較回路7aおよび下限値比較回路7bからの出力値がいずれも正常値を示すHレベルの電圧信号である場合には、正常値を示す電圧信号を判定部10へ出力し、上限値比較回路7aおよび下限値比較回路7bからの出力値のいずれか一方または両方が異常値である場合には、異常値を示す電圧信号を判定部10へ出力する。
【0042】
判定部10は、例えば、マルチプレクサ等により構成され、制御部9による切換スイッチの動作信号と、信号処理部8が出力された判定結果とを入力として、各シート11a,11bの乗員の有無を判定する。
【0043】
具体的に判定部10は、切換スイッチによって選択されたアンテナ1a(シート11a)と同期させて、信号処理部から出力された出力結果を参照し、該出力結果が乗員の存在を示す正常値である場合には、アンテナ1a(シート11a)に対応した出力端子10aからの出力を行う。一方、出力結果が乗員の存在を示さない異常値である場合には、出力端子10aからの出力を行わない。
【0044】
同様に、切換スイッチによって選択されたアンテナ1b(シート11b)と同期させて、信号処理部から出力された出力結果を参照し、該出力結果が乗員の存在を示す正常値である場合には、アンテナ1b(シート11b)に対応した出力端子10bからの出力を行う。一方、出力結果が乗員の存在を示さない異常値である場合には、出力端子10bからの出力を行わない。以下、アンテナ(シート)の数だけ、これらの処理を繰り返し、各アンテナ(シート)について乗員の有無の出力を行う。
【0045】
なお、本実施形態において、判定部10は、タイマー機能を有し、一定時間出力が変動しない場合に、その出力を出力端子から出力するように構成されている。
【0046】
次に図2を参照して、本実施形態の人体検知装置による乗員の検知方法について説明する。図2は、横軸が経過時間[t]であり、縦軸は、電圧増幅器6の出力電圧[V]である。
【0047】
まず、図2(a)を参照して車内およびシートが低温の場合について説明する。
【0048】
この場合、シート11a,11bに対して、乗員が近くに存在しない場合には、電圧増幅器6の出力電圧は、低電圧域でランダムに振れている。このとき、電圧増幅器6の出力電圧は、上限値VMaxと下限値Vminとによって規定される範囲内にないため、判定部10から乗員の存在を示す出力が行われることはない。
【0049】
この状態から、乗員がシート11a,11bに着座すべく接近すると、次第に高電圧域に移行する。このときも、基本的には電圧増幅器6の出力電圧が、下限値Vminを下回っており、判定部10から乗員の存在を示す出力が行われることはない。
【0050】
そして、乗員がシート11a,11bに着座すると、シート11a,11bに設置されたアンテナ1a,1bと乗員の腰の部分とが近接して、出力電圧がほぼ一定の値に収束する。このとき、電圧増幅器6の出力電圧は、上限値VMaxと下限値Vminとによって規定される範囲内となり、判定部10から乗員の存在を示す出力が行われる。
【0051】
次に、図2(b)を参照して車内およびシートが高温の場合について説明する。
【0052】
この場合、シート11a,11bに対して、乗員が近くに存在しない場合には、電圧増幅器6の出力電圧は、高電圧域でランダムに振れている。このとき、電圧増幅器6の出力電圧は、上限値VMaxと下限値Vminとによって規定される範囲を逸脱しており、判定部10から乗員の存在を示す出力が行われることはない。
【0053】
この状態から、乗員がシート11a,11bに着座すべく接近すると、人体から放出されるマイクロ波が加算されて、一時的に電圧増幅器6の出力電圧が上昇する。このときも、基本的には電圧増幅器6の出力電圧が、上限値VMaxを上回っており、判定部10から乗員の存在を示す出力が行われることはない。
【0054】
そして、乗員がシート11a,11bに着座すると、シート11a,11bに設置されたアンテナ1a,1bと乗員の腰の部分とが近接して、その周辺温度が一定となるため、出力電圧がほぼ一定の値に収束する。このとき、電圧増幅器6の出力電圧は、上限値VMaxと下限値Vminとによって規定される範囲内となり、判定部10から乗員の存在を示す出力が行われる。
【0055】
次に、図3を参照して、本実施形態の変更例について説明する。なお、前記実施形態と同一の構成要素についてはこれと同一の参照符号を用いて説明を省略する。
【0056】
本実施形態では、アンテナ1a´,1b´が、その指向範囲をエリア12a,12bに向けて設置されている。ここで、エリア12a,12bは、例えば、侵入者等の人を検知すべき位置または領域である。
【0057】
また、上限値比較回路7aおよび下限値比較回路7bには、周囲温度の影響を補償するためのサーミスタ7eおよび7fが設けられている。
【0058】
かかる構成の人体検知装置によれば、上限値比較回路7aの上限値VMaxおよび下限値比較回路7bの下限値Vminを、周辺温度を加味してサーミスタ7eおよび7fにより変更可能とすることができる。そのため、前記実施形態と同様に、電圧増幅器6の出力電圧が上限値VMaxおよび下限値Vminにより規定される範囲内となっているか否かに基づいて、エリア12a,12b内の人を簡易かつ確実に検出することができる。
【0059】
以上説明したように、前記各実施形態によれば、人体から放出されるマイクロ波熱雑音が特徴的な変化となる所定の周波数帯域を取り出して人体の有無を検知する。そのため、マイクロ波を送信する必要がなく、装置構成を簡易とすることができ、人体や他の電子機器に影響を与えることもない。さらに、人体の有無は、人体から放出されるマイクロ波を直接受信するため、シートの沈み込みといった周辺環境の物理変化に左右されず、人体の有無を確実に検知することができる。このように、本実施形態の人体検知装置によれば、マイクロ波を送信することなく、人体の存在を確実に検知することができる。
【0060】
また、本実施形態の人体検知装置の検知結果(判定部10の出力端子10a,10bの出力)を用いることにより、例えば、車両における乗員へのエアーコンディショナーの制御やエアバック等の安全装置の起動等や、警報エリアにおける不審者を検知して、これを外部へ通報すること等が可能となる。
【0061】
なお、本実施形態において、図面上、アンテナ1a,1bのみが記載されているが、これに限定されるものではなく、シート11a,11b以外のシートにも複数設置されてもよい。同様に、アンテナ1a´,1b´の他、エリア12a,12b以外の複数のエリアに設置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態の人体検知装置構成を示す図。
【図2】本実施形態の人体検知装置による人体の検知方法を示す説明図。
【図3】図1の人体検知装置の変更例を示す図。
【符号の説明】
【0063】
1a,1b,1a´,1b´…アンテナ、2…切換スイッチ、3…帯域制限フィルタ、4…マイクロ波増幅器、5…二乗検波器、6…電圧増幅器、7a…上限値比較回路,7b…下限値比較回路、7c,7d…電源、8…信号処理部、9…制御部、10…判定部、10a,10b…出力端子、11a,11b…シート、12a,12b…エリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体から放出されるマイクロ波熱雑音に基づいて、人体の存在を検知する人体検知装置であって、
前記マイクロ波を受信する受信部と、
前記受信部で受信したマイクロ波から所定の周波数帯域のマイクロ波を取り出すフィルタ部と、
前記フィルタ部を介して切り出されたマイクロ波の波形を電圧波形に変換する電圧変換部と、
前記電圧変換部によって変換された電圧波形に基づいて人体の存在を検知する信号処理部と
を備えることを特徴とする人体検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の人体検知装置において、
前記周波数帯域は、気体分子の吸収により空間減衰する帯域であることを特徴とする人体検知装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の人体検知装置において、
前記信号処理部は、前記電圧波形が人体から放出されるマイクロ波熱雑音に対応した上限値と下限値とのいずれか一方または両方で規定される範囲内にある場合に、人体の存在を検知することを特徴とする人体検知装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の人体検知装置において、
前記受信部は指向性を有するアンテナからなり、
前記信号処理部は、前記アンテナの指向範囲の人体の存在を検知することを特徴とする人体検知装置。
【請求項5】
請求項4記載の人体検知装置において、
前記アンテナが車両のシート内に指向範囲を着座者に向けて設けられてなり、
前記信号処理部は、前記シートにおける着座者の存在を検知することを特徴とする人体検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−101829(P2010−101829A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275468(P2008−275468)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】