説明

人体洗浄装置及びそれを備えた衛生洗浄装置

【課題】人体を洗浄する人体洗浄装置において、洗浄後の洗浄ノズルが紫外線殺菌できて清潔で、かつ、それが人体に何らかの影響を及ぼさないような人体洗浄装置を実現する。
【解決手段】人体を洗浄する洗浄ノズル4と、洗浄動作後に前記洗浄ノズルを紫外線で殺菌する紫外線照射手段8と、前記洗浄ノズル4を収納するノズル収納室6を備え、前記紫外線照射手段8を前記ノズル収納室6に備えることにより、洗浄ノズル4が紫外線で殺菌できるので清潔でありまた、洗浄ノズル4は、ノズル収納室6内で紫外線殺菌されるため、紫外線が人体に照射される恐れはなく、使用者が安心して機器を使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体を洗浄する人体洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の装置では、リモコンや便器に紫外線ランプを備え、必要に応じてこれを用いて殺菌を行うものがあった(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図10は、特許文献1に記載された従来の人体洗浄装置を示すものである。図10に示すように、人体の局部を洗浄するための洗浄水を噴射する噴射孔を備えたノズルと、紫外線を発光する殺菌灯とを備え、殺菌灯の紫外線を噴射孔に照射することで、噴射孔に対して殺菌することができた。
【特許文献1】特開2001−65035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記従来の構成では、紫外線を噴射孔に照射している間に、使用者が誤ってその紫外線に近づいたり、あるいは紫外線を覗き込んだり、あるいは洗浄ノズルを手で触れるなどして紫外線が人体に照射され、人体に何らかの影響を及ぼす可能性があった。
【0005】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、紫外線により人体洗浄用の洗浄ノズルを殺菌できる上に、紫外線照射中にその紫外線が誤って使用者に照射されないようにした人体洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために本発明の人体洗浄装置は、人体を洗浄する洗浄ノズルと、洗浄動作後に前記洗浄ノズルを紫外線で殺菌する紫外線照射手段と、前記洗浄ノズルを収納するノズル収納室を備え、前記紫外線照射手段は前記ノズル収納室に備えたことを特徴としたものである。
【0007】
これによって、洗浄ノズルは紫外線で殺菌できるので清潔となる。特に、病院、駅等の公共施設や、ホテル、デパート、会社など、不特定多数の使用者が利用する温水洗浄便座に対して、洗浄ノズルを殺菌することが可能なことから、使用者は清潔感とこれに伴う安心感を得ることができる。
【0008】
また洗浄ノズルは、紫外線が外部に漏れ出ないようにノズル収納室内で紫外線殺菌されるため、紫外線が人体に照射される恐れはなく、使用者は安心して機器を使用することができる。さらにノズル収納室という閉じた空間で紫外線殺菌を行うため、紫外線照射が効率的に行え、短時間で効果的な殺菌が行える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の人体洗浄装置は、人体を洗浄するための洗浄ノズルが紫外線で殺菌できるので清潔である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、人体を洗浄する洗浄ノズルと、洗浄動作後に前記洗浄ノズルを紫外線で殺菌する紫外線照射手段と、前記洗浄ノズルを収納するノズル収納室を備え、前記紫外線照射手段を前記ノズル収納室に備えることにより、洗浄ノズルや洗浄水を吐水する吐水口が紫外線で殺菌できるので清潔である。特に、病院、駅等の公共施設や、ホテル、デパート、会社など、不特定多数の使用者が利用する温水洗浄便座に対して、洗浄ノズルを殺菌することが可能なことから、使用者には清潔感とこれに伴う安心感を与えることができる。
【0011】
また洗浄ノズルは、紫外線が外に漏れ出ないようにノズル収納室内で紫外線殺菌されるため、紫外線が人体に照射される恐れはなく、使用者は安心して機器を使用することができる。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明の洗浄ノズル本体外装部を金属とするもので、洗浄ノズル本体外装部が金属であるので、樹脂など他の材質の場合に比べ紫外線を照射させても、洗浄ノズルの劣化が少ない。また、洗浄ノズル清掃時に洗浄ノズル表面を拭き取る場合も拭き取りやすい。
【0013】
第3の発明は、特に、第2の発明の金属はステンレスとするもので、洗浄ノズル本体外装部がステンレスであるので、樹脂や他の一般的な金属に比べ紫外線を照射させても洗浄ノズルの劣化が少ない上、他の一般的な金属と比べて表面に凹凸が少ないので汚れにくく、汚れが付いてもより拭き取りやすい。また、ステンレスは水に対する耐食性が強いので、長期間、水に濡れるような環境下で使用する際も劣化が少ない。
【0014】
第4の発明は、第1から第3の発明の人体洗浄装置を備えた衛生洗浄装置で、特に、人がトイレ室に入室したこと、もしくは便器に近づいたことを検知する人体検知手段を備え、人体検知手段が人体を検知すると、第1〜3のいずれか1つの発明の紫外線照射手段の照射を停止するもので、紫外線照射中に使用者がトイレ室もしくは便器に近づいても、紫外線照射が停止されるので、使用者が紫外線の影響を受けることはなく、安全である。
【0015】
第5の発明は、特に、人が便座に着座したことを検知する着座検知手段を備え、前記着座検知手段が使用者の着座を検知すると、第1〜4のいずれか1つの発明の人体洗浄装置を備えた衛生洗浄装置の紫外線照射手段の照射を停止するもので、紫外線照射中に使用者が便座に着座しても紫外線の照射が停止されるので、使用者が紫外線の影響を受けることなく、着座した使用者のノズルの使用に際して支障をきたさない。
【0016】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明の人体洗浄装置を備えた衛生洗浄装置の紫外線照射手段が紫外線照射中は、紫外線照射中であることを使用者に知らせる報知手段が働くもので、紫外線照射中に人が誤って紫外線に近づくのを防止することができる。
【0017】
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明の人体洗浄装置を備えた衛生洗浄装置のノズル収納室は開閉可能な開閉扉を備え、洗浄ノズルが人体を洗浄するために、前記ノズル収納室の前記開閉扉から外に伸びて出る時以外は、前記洗浄ノズルは前記ノズル収納室内に収まっていて開閉扉は閉じるもので、洗浄ノズルがノズル収納室で紫外線照射される場合に、たとえ近くに人がいたとしても、紫外線がノズル収納室から漏れて人体に影響を及ぼすことはない。
【0018】
第8の発明は、特に、第7の発明の紫外線照射手段が紫外線照射中に、使用者によって開閉扉が開けられると紫外線の照射が停止するもので、使用者が誤って紫外線照射中にノズル収納室の開閉扉を開けた場合でも、紫外線が漏れ出て、使用者に影響を及ぼすことはない。
【0019】
第9の発明は、特に、第1〜8のいずれか1つの発明の人体洗浄装置を備えた衛生洗浄装置の紫外線照射手段は、発光ダイオードとするもので、安価なので有益であり、また耐久性が長いためこれを交換する必要がないか、もしくは交換する頻度が少ないので、頻繁に紫外線照射手段を交換することを前提とした複雑な設計を検討する必要がない上に、消費電力が小さいので省エネルギーである。
【0020】
第10の発明は、特に、第1〜9のいずれか1つの発明の人体洗浄装置を備えた衛生洗浄装置の洗浄ノズルおよびもしくはノズル収納室は少なくともその表面に光触媒を有するもので、簡単な構成で洗浄ノズルおよびもしくはノズル収納室の防汚効果あるいは殺菌効果あるいは防臭効果を得ることができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における人体洗浄装置の洗浄ノズルとこれを収納すするノズル収納室とを示す外観斜視図である。図2は人体洗浄装置が便器に取り付けられた状態を示す斜視図である。
【0023】
図1において、人体局部を洗浄するための洗浄ノズル4は本実施例では局部洗浄用とビデ用の2本を備えた構成で、それぞれ洗浄水を被洗浄部に向けて吐水するための吐水口5を有しており、洗浄ノズル4上流側から通水した洗浄水を、吐水口5から吐水して人体局部を洗浄する。洗浄ノズル4は、通常、ノズル収納室6に収納されており、必要に応じてノズル収納室6から出て洗浄動作を行う。ノズル収納室6に設けられた開閉扉7は、洗浄ノズル4がノズル収納室6から出ているときは開き、洗浄ノズル4が再びノズル収納室6に収納されたときには閉まる。そしてノズル収納室6の内面には、収納している洗浄ノズル4の表面を殺菌するための紫外線照射手段8が備えられている。
【0024】
図2において人体洗浄装置11は、便器12や便座13を覆うための便蓋14および、便座13と、一体となって便器12に備えられており、使用者がトイレ室に入室したことを検知する人体検知手段15や、使用者が便座13に着座したことを検知する着座検知手段16、それにノズル収納室6内で紫外線照射手段8が紫外線照射を行っている場合に、これを使用者に報知するための報知手段17を備えている。報知手段17は、トイレ室に備えられた人体洗浄装置11を操作するためのリモコン20にも備えられている。また、人体洗浄装置11は電源18よりコード19を通して電力の供給を受け、使用者がリモコン20を操作することで洗浄動作を行う。洗浄ノズル4は、ノズル収納室6に納められていて、開閉扉7は閉じられている。
【0025】
以上のように構成された人体洗浄装置について、以下その動作、作用を説明する。
初めに、図3に示すフローチャートに沿って説明する。まず、使用者がトイレ室に入室するまでの間、ノズル収納室6では収納されている洗浄ノズル4に対し、紫外線照射手段8が、紫外線照射を行っている。これによって、洗浄ノズル4の使用後、ノズル収納室6内で洗浄ノズル4表面および吐水口5付近は紫外線殺菌が施されるので、使用者は清潔感とこの清潔感に伴う安心感とを得ることができる。この間、報知手段17である報知用ランプは点灯表示した状態で、紫外線照射手段8が働いて照射を行っていることを使用者に報知する。
【0026】
次に使用者がトイレ室に入室するか、もしくは使用者が便器12あるいは人体洗浄装置11に近づくと、人体検知手段15がこれを検知すると同時に便蓋14が自動で開き、かつ、紫外線照射手段8が紫外線の照射を停止する。もともと紫外線照射手段8はノズル収納室6内部にあって、そのノズル収納室6の開閉扉7も洗浄ノズル4が収納されている間は閉じられているので、紫外線がノズル収納室6から漏れ出ることはないが、このようにトイレ室に入室した人体、もしくは便器12あるいは人体洗浄装置11に近づいた人体を検知して紫外線の照射を停止することで、万が一、紫外線がノズル収納室6から漏れ出ることがあった場合でも、紫外線の影響が人体に及ぶのを防止することができる。
【0027】
そして使用者が用を足した後、局部の洗浄を行うべく図2のリモコン20を操作すると、洗浄ノズル4はモーターなどの駆動手段(図示せず)によって、ノズル収納室6から出る。ここで、洗浄ノズル4が伸び出ようとするのに従って、その洗浄ノズル4の先端が図1の開閉扉7に当たり、やがて洗浄ノズル4が前方向に出る力を受けて開閉扉7が開く。開閉扉7には、もしくは、開閉扉7が開閉する回転中心軸にはばねが取り付けられており、開閉扉7が開くことでばねが伸ばされて(場合によっては縮められて)力を蓄える構成となっている。洗浄ノズル4がノズル収納室6から押し出されると、上流側より洗浄水が供給され、洗浄ノズル4に設けられた吐水口5より洗浄水が吐水され局部を洗浄する。使用者は紫外線により殺菌された洗浄ノズル4およびその吐水口5から吐水される洗浄水で局部を洗浄できるので、清潔感を得ながら快適に洗浄動作を行うことができる。続いて使用者がリモコン20で洗浄停止の操作をすると、洗浄水の供給が停止され、洗浄ノズル4は再びノズル収納室6に収納される。そして、洗浄ノズル4に押されて開いていた開閉扉7が、伸び出た洗浄ノズル4の収納に伴って、伸びたばねが縮もうとする力を利用して閉じる。
【0028】
人体検知手段15が、使用者がトイレ室を退室したのを、あるいは、使用者が便器もしくは人体洗浄装置11から離れたのを検知すると、紫外線照射手段8が紫外線照射を開始し、人体洗浄装置11本体やリモコン20に備えられた報知手段17もランプを再び点灯させて、紫外線が照射されていることを次にトイレ室に入室する、あるいは次に便器もしくは人体洗浄装置11に近づく使用者に対して報知する。これによって万が一、人体検知手段15が故障して人体検知ができなくなった場合でも、この報知手段17によってそのことを使用者に伝えられると共に、使用者が紫外線に対して注意を払うことが可能となる。
【0029】
報知手段17の具体的構成としては、図2に示すように、人体洗浄装置11やリモコン20に設けられたランプを点灯させて報知する方法の他、“ピー”などと鳴る電子音をうるさくないながらもトイレ室に入室した使用者に確実に聞こえる程度の音量で鳴らすなどの方法がある。この報知手段17の報知動作によって使用者は紫外線が照射中であるのか否かを知ることができると共に、照射中の場合、必要に応じて紫外線に対して注意を払うことが可能となる。
【0030】
また、使用者がトイレ室に入室中にも関わらず紫外線照射が行われていたり、あるいは、報知手段17による報知が行われている場合、使用者が紫外線照射を強制的に停止できる強制停止スイッチを備えておけば、何らかの故障によって必要以上に紫外線照射が成されるのを防ぐべく、紫外線照射機能を停止することができる。
【0031】
ここで、ノズル収納室6の開閉扉7は、上記のようにノズル収納室6から洗浄ノズル4が駆動手段によって押し出されるのに伴って開き、洗浄ノズル4が引っ込められると、再び、伸びたばねが縮む力を利用して開閉扉7が閉じられるような構成の他に、洗浄ノズル4がノズル収納室6から出ようとする場合にこれと連動して開閉扉7も別に設けられたモーターなどのアクチュエータによって自力で開き、洗浄ノズル4がノズル収納室6に再び収納される場合には、やはりそのアクチュエータが連動して駆動し、閉じるといった構成も考えられる。
【0032】
ばねが縮む力を利用して開閉扉7を閉じる具体的な構成としては、引っ張りコイルばねをノズル収納室6と、開閉扉7とのそれぞれ適した位置、例えば、開閉扉7の開閉する回転中心軸がノズル収納室6の開口部下側に設けられている場合は、開閉扉7の上側とノズル収納室6の上側部分とにそれぞればねが取り付けるなどして、開閉扉7が開くとばねが伸びた状態となり、洗浄ノズルが引っ込むとばねの張力が働いて開閉扉7が閉じるといった構成が考えられる。この他、開閉扉7の回転中心軸を軸中心としてねじりコイルばねが備えられ、開閉扉7開けられると、ねじりコイルばねの開き角が大きくなって力を蓄え、洗浄ノズル4が収納されるとばねが元の状態に戻ろうとして開閉扉7が閉じるといった構成などがある。
【0033】
なお、使用者がトイレ室を退室後に紫外線照射を再開するタイミングとしては図3のように人体検知手段15が、使用者がトイレ室から退室したのを、あるいは便器12や人体洗浄装置11から離れたのを検知して紫外線照射を再開する例の他、図4のように人体洗浄装置の制御手段が時間を計測するタイマー機能を有していて、使用者がトイレ室を退室した一定時間後に紫外線照射を開始するという場合もあり、加えて、紫外線の照射を、殺菌に有効な一定時間だけ行ってその後は紫外線照射を実施しないとすることもでき、これによって必要上の紫外線照射をしなくて済むので省エネである。この場合、前回のトイレ室の使用時から十分な時間が経過していれば、次に使用者がトイレ室に入室する直前には、あるいは使用者が便器12もしくは人体洗浄装置11に近づく直前には、既に、紫外線照射は終了している。
【0034】
さらにこの図4の例のように、紫外線照射が開始されると同時に報知手段17が報知を行い、紫外線照射を停止すると同時に報知を停止する例の他に、図5のように紫外線照射を行う少し前に報知を開始し、紫外線照射終了の後しばらくしてから報知を終了することで、使用者が何らかの誤りで紫外線にさらされることを防止することをさらに確実に行うこともできる。
【0035】
また、紫外線照射を停止するタイミングとしては、上記の他、使用者が局部洗浄を行うためにリモコン20を操作した際や、開閉扉7が開く際に紫外線照射が停止されるものでも良い。
【0036】
紫外線照射手段8は、約400nm以下の波長の光を光源とするもので、特に260nm前後の波長のものが一般に殺菌用として用いられる。代表的なものとして水銀ランプが紫外線殺菌用に用いられる。
【0037】
この他、太陽光、キセノンランプ、ブラックライト、ケミカルライトの他、発光ダイオードなどが紫外線殺菌用の光源として紫外線照射手段8に使用できる。発光ダイオードを用いた場合、通常の殺菌灯の寿命が数千時間であるのに比べ約10万時間と大変長く、交換する必要がないか、もしくは、交換の頻度が少なくて済むため、ノズル収納室6に備える場合に、頻繁にこれを交換することを前提とした複雑な設計を検討する必要がなく、大変有用である。人体洗浄装置11の使用限度年数よりも発光ダイオードの寿命の方が十分に長いなど発光ダイオード交換する必要がなければ、交換を前提とした設計をする必要がなくなり設計の手間が少なくて済む。また、交換する頻度が少ない場合も、紫外線照射手段8を含むユニット全体が交換できるとする方法が、本来はユニット全体では高価になる故に頻繁に交換する場合には不適切で考えられないような構成でも、それが検討できたり、あるいは交換するために必要な機構部分の耐久性を厳しく考えなくても良くなったりするなど、設計の自由度が広くなり、設計者が比較的楽に設計でき、コストも安く済む。また、発光ダイオードは、電気から光への変換効率も高いため、消費電力が低く、省エネであり電気代も安く済む。
【0038】
紫外線を所定時間照射した場合、被照射部に存在する菌やかびなどの微生物を死滅させることができ、その結果、被照射部を清潔で衛生的に保つことができる。そこで、紫外線照射手段8をノズル収納室6内壁のしかるべき位置、つまり、洗浄ノズル4やその吐水口5、およびノズル収納室6内壁にまんべんなく照射されるように配置すれば、被照射部に付着した微生物を殺菌することができ、衛生的で、使用者も心地よく、故に不衛生に対して安心して機器を使用することが可能となる。
【0039】
このように洗浄ノズル4を殺菌することが可能なことから、特に、病院、駅等の公共施設や、ホテル、デパート、会社など、不特定多数の使用者が利用する温水洗浄便座にこの人体洗浄装置を応用することで、これを利用する使用者は、清潔感とこれに伴う安心感を得ることができる。
【0040】
その一方で、紫外線が人体に照射されると人体の細胞や皮膚組織にも何らかの影響を及ぼす可能性があり、人体に照射せぬよう十分に注意を払う必要があるが、上記のように紫外線照射手段8をノズル収納室6内に備え、洗浄ノズル4は、紫外線が外に漏れ出ないようにノズル収納室6内で紫外線殺菌されたり、あるいは紫外線照射のタイミングをコントロールしたりすることで、使用者に紫外線が直接照射されるのを防止することができるので、使用者は安心して機器を使用することができる。
【0041】
このように使用者が安心して使用できる機器なので、公共施設やホテル、デパートなど、不特定多数の人が使用するカ所に設置して、使用者が誤った使い方をしても何らの心配が要らない。
【0042】
また、洗浄ノズル4の他、ノズル収納室6も殺菌できるので、ノズル収納室6が不衛生状態となりその結果洗浄ノズル4も不衛生になるといったことも防げるので、より衛生的である。さらにノズル収納室6という閉じた空間で紫外線殺菌を行うため効率的な紫外線照射が可能となり、短時間で効果的な殺菌が行える。
【0043】
ここで、洗浄ノズル4はその本体外装部は金属で覆われているので、樹脂で構成された場合と異なり、紫外線を照射されても劣化が少なく、清掃時に洗浄ノズル表面を拭き取る場合も拭き取りやすい。そして、特にステンレスの場合は、水に濡れても腐食の心配がなく、さらに、清掃時に洗浄ノズル4表面を拭き取る場合も他の一般的な金属と比べて表面に凹凸が少ないのでより拭き取りやすく、かつ汚れにくい。
【0044】
また、人体検知手段15の具体的な手段としては赤外線を用いて人体を検知する方法が挙げられる。
【0045】
図6において、ノズル収納室6や開閉扉7の内側、および洗浄ノズル4の少なくともその表面には光触媒30が備えられている。
【0046】
光触媒30は約420nm以下の波長の光で照射すれば、光触媒30が持つ強い酸化力を利用して、分解や消毒それに殺菌などの効果を得ることができ、よって、ノズル収納室6や洗浄ノズル4の殺菌や防汚の効果が得られる。しかも何らかの装置を新たに取り付けるなどとは異なり、簡単な構成で実施できる。光触媒反応用の光源としては効果的な光の波長が、上記の紫外線照射手段8の光の波長と一致することから、紫外線照射手段8の光を光触媒用光源として兼ねることができる。このように紫外線と光触媒による相乗効果でより効果的に殺菌、防汚、防臭を実施することができる。特に公共施設など、不特定多数の使用者が利用するトイレ室に設置する場合に、その相乗効果がより効果的に発揮できる。
【0047】
光触媒30の具体例としては酸化チタンの他、酸化鉄、ガリウム砒素などの物質が挙げられる。
【0048】
なお、光触媒30は、上記のノズル収納室6や開閉扉7、および洗浄ノズル4のそれぞれを構成する各材料に混ぜ合わせた後、本来の形状に加工して作製することもできるし、あるいは、でき上がったノズル収納室6や開閉扉7の内側、および洗浄ノズル4表面の各所に塗布したり、もしくは張り付けたりすることも可能で、いずれも簡単な構成で実現できる。
【0049】
(実施の形態2)
図7は、本発明の第2の実施の形態における人体洗浄装置の洗浄ノズルに紫外線照射を行う場合のタイムチャートを示す図である。実施の形態1と同様の部分は省略するとし、異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
使用者がトイレ室に入室し、便座13に着座すると、図2に示す着座検知手段16が働いて使用者の着座を検知する。と同時に、人体洗浄装置11に備えられている脱臭装置が運転を開始し、かつ、紫外線照射手段8は紫外線の照射を停止する。これによって、人が紫外線照射手段8近くに着座しているにもかかわらず、誤ってその紫外線がノズル収納室6から漏れ出て、結果として人体に何らかの影響を及ぼすということが防止できる。
【0051】
図8は、実施の形態1における図4に対応する図で、人体洗浄装置11の制御手段が時間を計測するタイマー機能有しており、使用者が便座から起立して便座13から立ち上がった一定時間後に紫外線照射を開始するという場合を示す。加えて、紫外線の照射を、殺菌に有効な一定時間だけ行った後、その後は紫外線照射を実施しないということもでき、これによって必要上の紫外線照射をしなくて済むので省エネである。さらに実施の形態1における図5のように、紫外線照射よりも少し早めに報知手段17による報知を開始して、紫外線照射の終了よりも少し後に報知を終了することも使用者に報知を行うという点で有効である。
【0052】
また、図9に示すように、開閉扉7が使用者によって開けられた場合は、直ちに紫外線照射を停止する。これによって、万が一、紫外線照射中に使用者がノズル収納室6を覗き込んだり、あるいは、開閉扉7を開けてノズル収納室6に人体を入れるようなことがあっても、紫外線が人体に人体に照射されて人体に何らかの影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0053】
その具体的な構成としては、ノズル収納室6が開閉扉7の開閉動作に伴ってON、OFFをするリミットスイッチを備えていて、開閉扉7が閉じている間はスイッチがONしていて、開閉扉7が開かれるとスイッチがOFFするようになっていて、このON、OFFの動作と連動して紫外線照射を実施、停止することができれれば、万が一、使用者が開閉扉7を開けた場合でも、紫外線照射を停止することができる。
【0054】
この他、紫外線照射中は、機械的あるいは電気的に開閉扉7が開かないようにロックさせるようにすれば、誤って使用者が開閉扉7を開けてしまって、紫外線の照射を受けることもなく、また、何らかの原因で開閉扉7が開いたまま紫外線照射が成されることもない。
【0055】
また、使用者が便座に着座しているにも関わらず紫外線照射が行われていたり、あるいは、報知手段17による報知が行われている場合、使用者が紫外線照射を強制的に停止できる強制停止スイッチを備えておけば、何らかの故障によって必要以上に紫外線照射が成されるのを防ぐべく、紫外線照射機能を停止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明にかかる人体洗浄装置は、特に、病院、駅等の公共施設や、ホテル、デパート、会社など、不特定多数の使用者が利用する温水洗浄便座に取り付けられた人体洗浄装置などの場合、その洗浄ノズルを殺菌することが可能なことから、使用者は清潔感とこれに伴う安心感を得ることができる。また洗浄ノズルは、紫外線が外に漏れ出ないようにノズル収納室内で紫外線殺菌されるため、紫外線が人体に照射される恐れはなく、使用者が安心して機器を使用することができる。さらに、使用者が安心して使用できる機器なので、公共施設やホテル、デパートなど、不特定多数の人が使用するカ所に設置して、使用者が誤った使い方をしても何らの心配が要らない。また、洗浄ノズルの他、ノズル収納室も殺菌できるのでより衛生的である。
【0057】
また、本発明の殺菌技術は、使用者が用便後に局部を洗浄した後に、洗浄に用いた洗浄ノズルを紫外線で殺菌でき、使用者が清潔感とこれに伴う安心感を得ることができる上に、その紫外線が人体に誤って照射されないようにすることができるので、駅や病院など公共性の高いベンチのシート部分や、便座や便器あるいは、レストランなど不特定多数の使用者が使用する椅子などの一部を殺菌する装置としてなどの用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態1における人体洗浄装置の人体を洗浄するのに用いる洗浄ノズルおよびこれを収納するノズル収納室の外観斜視図
【図2】本発明の実施の形態1における人体洗浄装置を便器に取り付けた状態を示すとともに、人体洗浄装置を操作するためのリモコン(遠隔操作手段)をトイレ室内に取り付けた状態を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における人体洗浄装置の洗浄ノズルに紫外線を照射する際のタイムチャート
【図4】本発明の実施の形態1における人体洗浄装置の洗浄ノズルに紫外線を照射する際のタイムチャートの他の例を示す図
【図5】本発明の実施の形態1における人体洗浄装置の洗浄ノズルに紫外線を照射する際のタイムチャートのさらに他の例を示す図
【図6】本発明の実施の形態1における人体洗浄装置の洗浄ノズルがノズル収納室に収納された状態を示す側面断面図
【図7】本発明の実施の形態2における人体洗浄装置の洗浄ノズルに紫外線を照射する際のタイムチャート
【図8】本発明の実施の形態2における人体洗浄装置の洗浄ノズルに紫外線を照射する際のタイムチャートの他の例を示す図
【図9】本発明の実施の形態2における人体洗浄装置の洗浄ノズルに紫外線を照射する際のタイムチャートのさらに他の例を示す図
【図10】従来の人体洗浄装置の概略を示す斜視図
【符号の説明】
【0059】
4 洗浄ノズル
6 ノズル収納室
7 開閉扉
8 紫外線照射手段
11 人体洗浄装置
13 便座
15 人体検知手段
16 着座検知手段
17 報知手段
30 報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を洗浄する洗浄ノズルと、洗浄動作後に前記洗浄ノズルを紫外線で殺菌する紫外線照射手段と、前記洗浄ノズルを収納するノズル収納室を備え、前記紫外線照射手段を前記ノズル収納室に備えた人体洗浄装置。
【請求項2】
洗浄ノズル本体外装部は金属とする請求項1に記載の人体洗浄装置。
【請求項3】
金属は、ステンレスとする請求項2に記載の人体洗浄装置。
【請求項4】
人がトイレ室に入室したこと、もしくは便器に近づいたことを検知する人体検知手段と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の人体洗浄装置とを備え、前記人体検知手段が人体を検知すると紫外線照射手段の照射を停止するようにした人体洗浄装置を備えた衛生洗浄装置。
【請求項5】
人が便座に着座したことを検知する着座検知手段を備え、前記着座検知手段が使用者の着座を検知すると紫外線照射手段の照射を停止する請求項1〜4のいずれか1項に記載の人体洗浄装置を備えた衛生洗浄装置。
【請求項6】
紫外線照射手段が紫外線照射中は、紫外線照射中であることを使用者に知らせる報知手段が働く請求項1〜5のいずれか1項に記載の人体洗浄装置を備えた衛生洗浄装置。
【請求項7】
ノズル収納室は開閉可能な開閉扉を備え、洗浄ノズルが前記ノズル納室の前記開閉扉から外に出る時以外は、前記洗浄ノズルは前記ノズル収納室にあって、開閉扉は閉じる請求項1〜6のいずれか1項に記載の人体洗浄装置を備えた衛生洗浄装置。
【請求項8】
紫外線照射手段が紫外線照射中に、使用者によって開閉扉が開けられると紫外線の照射が停止する請求7に記載の人体洗浄装置を備えた衛生洗浄装置。
【請求項9】
紫外線照射手段は、発光ダイオードとする請求項1〜8のいずれか1項に記載の人体洗浄装置を備えた衛生洗浄装置。
【請求項10】
洗浄ノズルおよびもしくはノズル収納室は少なくともその表面に光触媒を有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の人体洗浄装置を備えた衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−274641(P2006−274641A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94223(P2005−94223)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】