説明

人体洗浄装置

【課題】 一定の流量感を伴った広範囲で人体の局部を洗浄する人体洗浄装置を提供する。
【解決手段】 流体を吐出する洗浄ノズル30を移動させて人体の局部洗浄を行う人体洗浄装置1において、洗浄ノズル30を収納する本体部20に対して洗浄ノズル30を進退自在に移動させる駆動手段50と、洗浄ノズル30の移動方向上に配設された洗浄口31と、洗浄ノズル30の内を摺動し、一方に洗浄口31へ流体を排出する排出部41と他方に流体を供給する供給部42を有する洗浄範囲調節部40と、洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40との間に配設されたシール部60と、洗浄範囲調節部40の供給部42側に形成された突部43と、本体部20の洗浄範囲調節部40の移動方向に形成された突状の係止部23aとを備える構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の局部洗浄を広範囲で行うことができる人体洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の便器に取り付けられた人体洗浄装置は、人体の局部洗浄を広範囲に行う際、洗浄ノズルを振動させることによって洗浄範囲の拡大を行う装置や水圧の強弱を制御することによって広範囲の洗浄を行う装置が、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0003】
この特許文献1で人体洗浄装置は、先端の噴出孔から洗浄水を噴出して人体の局部を洗浄するノズル装置と、このノズル装置を振動させる振動手段及び振動手段の振動パターンを制御する制御装置とで構成されている。このノズル装置は、振動手段により生じるノズルの振動の振幅を可変することで洗浄面積を可変することが可能となっている。このノズルの振幅を可変することによって、人体の局部洗浄を広範囲で行うことができる。
【0004】
また、特許文献2で人体洗浄装置は、洗浄水の吐水孔から吐水するノズルにおいて、前記吐水孔から洗浄水を吐水する吐水手段と、洗浄水が当たる面積、位置等の吐水態様を洗浄水の水勢を設定する水勢設定手段によって設定された洗浄水の水勢に応じて前記吐水手段を制御することで吐水態様を時間的に変動する構成となっている。さらに、前記吐水手段によって吐水態様の時間的変動を人体が認識しないように洗浄水が吐水されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−180078号公報
【特許文献2】特開2001−140323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1及び特許文献2で人体洗浄装置は、ノズルの振動や水圧の制御によって擬似的に人体局部の広範囲に洗浄を行っている。このように擬似的に広範囲へ洗浄を行っているため、使用者は一度に局部全体を洗浄することは困難である。また、洗浄部では、断続的に洗浄水が人体局部に当たることで断続的に流量感が変化する。このため、使用者にとっては満足できる流量感を得られないおそれがある。よって、使用者は、人体の局部洗浄時に一定の流量感を伴った広範囲洗浄を切替えて選択することができない。
【0007】
そこで、本発明は、使用者が一定の流量感を伴い広範囲で人体の局部を洗浄することができる人体洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために講じた手段は、流体を吐出する洗浄ノズルを移動させて行う人体局部の洗浄について通常洗浄と広範囲洗浄を切替える人体洗浄装置において、洗浄ノズルを収納する本体部と、本体部に対して洗浄ノズルを進退自在に移動させる駆動手段と、洗浄ノズルの移動方向上で洗浄ノズルの先端部に配設された複数の吐出孔からなる洗浄口と、洗浄ノズルの内部を摺動することにより前記洗浄口の面積を可変し、一方に洗浄口へ流体を排出する排出部を有し、他方に流体を供給する供給部を有する洗浄範囲調節部と、洗浄ノズルと洗浄範囲調節部との間に配設されたシール部と、洗浄範囲調節部の供給部側に形成され、本体部に対して平行な突部と、本体部の洗浄範囲調節部の移動方向に形成され、突部の前進方向側の移動を規制する係止部とを備え、通常洗浄は、シール部の摩擦によって洗浄ノズル及び洗浄範囲調節部を一体で洗浄位置まで移動して人体局部の洗浄を行い、広範囲洗浄は、突部が係止部に係止されることで洗浄範囲調節部を係止し、洗浄ノズルのみを更に移動させることで洗浄口の流体を吐出できる吐出孔の数を増加させて吐出面積を拡大させて洗浄範囲を定め、シール部によって洗浄ノズルと洗浄範囲調節部とが一体となって移動することで、定めた吐出面積を保ちながら前記洗浄ノズルが洗浄位置へ後退して、洗浄範囲を変化することなく一定の洗浄状態で人体局部の広範囲洗浄を行う構成となっている。
【0009】
また、駆動手段は、洗浄ノズルに取り付けられたラックと、本体部に取り付けられたモータによって回転するピニオンとが噛合して洗浄ノズルを移動させる構造となっている。
【0010】
これらの場合、洗浄範囲調節部の排出部と供給部との間に絞り部を設け、絞り部の排出部側でシール部の後方に位置し、流体に空気を取り込む吸気孔と、洗浄ノズルと洗浄範囲調節部の相対移動時に吸気孔へ空気の供給可能な移動方向で洗浄ノズルに設けられた空気供給口とを備えているとよい。
【0011】
そして、洗浄口は、洗浄ノズルの移動方向上に第1洗浄口及び第2洗浄口を有し、各洗浄口は複数の吐出孔により形成されているとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、この人体洗浄装置は、洗浄ノズルの内部に配設された洗浄範囲調節部が、洗浄ノズルに対して摺動することによって、流体を吐出できる吐出孔の数を増やすことで洗浄ノズルの洗浄口の洗浄範囲を広げることができる。このように洗浄範囲を広げることで、一定の流量を伴って広範囲に洗浄することができ、使用者は流量感を得ることができる。この時、広範囲の洗浄によって洗浄口の吐出面積を増加させると、洗浄口から吐出される流体の圧力が弱くなるため洗浄の強さは弱くなる。また、広範囲の洗浄であるため、洗浄ノズルは使用者に与える流量感を増すことができる。これにより、人体洗浄装置は、広範囲で弱い圧力及び流量感を一定に保ったまま優しい洗浄を行うことが可能である。更に、断続的な局部洗浄でないために、使用者は不快感を感じることなく洗浄が可能である。また、洗浄範囲調節部と洗浄ノズルとの間のシール部は、洗浄口付近の流体が逆流して洗浄範囲調節部と洗浄ノズルの隙間に進入することを防ぐことが可能である。このシール部は、洗浄ノズルと洗浄範囲調節部との間で摩擦を発生させるため、駆動手段によって洗浄ノズルを移動させると、一体となって洗浄範囲調節部も移動させることが可能となっている。また、人体洗浄装置は、シール部によって洗浄ノズルと洗浄範囲調節部とが一体となって移動するので、洗浄ノズルと洗浄範囲調節部の相対位置がずれることがないため、洗浄範囲及び流量が変わることなく洗浄位置の調整が可能となっている。
【0013】
この人体洗浄装置は、洗浄ノズルに取り付けられたラックと、本体部に取り付けられたモータによって回転するピニオンとが噛み合うことで洗浄ノズルを進退方向へ移動させることができ、ラックとピニオンの組合せにより細かな洗浄ノズルの位置調整ができる。
【0014】
更に、吸気孔の直前に絞り部を設けている人体洗浄装置は、吸気孔付近での流速を増加させて洗浄範囲調節部内の流体に空気を容易に吸気することで泡沫効果をもたらす事ができる。また、洗浄範囲の変更時は、空気供給口と吸気孔の位置関係を利用しているので、流体の吐出する吐出面積を変更しても流路の切替え等がないため、絞り部周辺での泡沫生成のみで洗浄口から吐出される流体に十分な泡沫効果を持たせることが可能である。加えて、洗浄時に使用者が感じる流量感は、泡沫効果によって流体に吸気されたことで空気を含むため増すことが可能となる。
【0015】
また、洗浄口に第1洗浄口と第2洗浄口を設けることで、洗浄範囲と流量感を明確にし、使用者が洗浄の違いを体感できる。更に、洗浄口が2種類の切替えであるため、人体洗浄装置は、簡易な洗浄口の切替え構造で良く、複雑な制御を用いなくとも良い。また、上記記載のように第1洗浄口及び第2洗浄口から吐出される流体は同じ流路を通過しているため、同時に泡沫効果を発生することができ、また維持もできる。さらに、第1洗浄口と第2洗浄口は複数の吐出孔によって形成されている。また、モータを制御することで洗浄ノズルの移動を任意に制御できる。これにより、洗浄に使用する吐出孔の数を調整することによって、人体洗浄装置は、多段階の洗浄範囲を持つ洗浄が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態における洗浄時の人体洗浄装置の側面図。
【図2】図1に示す人体洗浄装置の洗浄ノズルの(a)上視図、(b)側面図、(c)A−A断面図。
【図3】図1に示す人体洗浄装置の洗浄範囲調節部の(a)上視図、(b)側面図、(c)B−B断面図。
【図4】通常洗浄時の洗浄ノズル及び洗浄範囲調節部の位置関係の(a)上視図、(b)側面図、(c)C−C断面図。
【図5】広範囲洗浄時の洗浄ノズル及び洗浄範囲調節部の位置関係の(a)上視図、(b)側面図、(c)D−D断面図。
【図6】人体洗浄装置の収納時で洗浄ノズルの第1突部及び洗浄範囲調節部の第2突部と本体部との関係の断面図。
【図7】人体洗浄装置の最大ずらし位置での洗浄ノズルの第1突部及び洗浄範囲調節部の第2突部と本体部との関係の断面図。
【図8】洗浄ノズルと洗浄範囲調節部との動作(最大の位置で局部の洗浄を行う場合)を示す説明図
【0017】
【図9】洗浄ノズルと洗浄範囲調節部との動作(任意の位置で局部の洗浄を行う場合)を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係わる人体洗浄装置1の構成について図1を参照にして説明する。図1は、洗浄時の人体洗浄装置1の側面図を示している。
【0019】
この人体洗浄装置1は、図1で示すとおり、便器(図示せず)に取り付ける本体部20と、局部の洗浄を行う洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40と、この洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40を駆動する駆動手段とで構成されている。この駆動手段50は、洗浄ノズル30に取り付けられたラック51と本体部20に取り付けられたモータ52によって回転するピニオン53とが噛み合うことで洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40を洗浄位置まで前進させる。この洗浄位置は、人体の局部洗浄に適した位置であり、洗浄ノズル30が到達すると洗浄が行なわれる。更に、このモータ52は、パルス波による制御によって前進方向及び後退方向の両方向に回転可能であるため、洗浄ノズル30は進退方向のどちらにおいても移動可能である。また、洗浄範囲は、駆動手段50によって洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40との位置調整を行うことで調整している。
【実施例】
【0020】
次に、本発明の実施形態の洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40について図2〜図3を参照して説明する。図2は、洗浄ノズル30の(a)上視図、(b)側面図、(c)A−A断面図を示しており、図3は、洗浄範囲調節部40の(a)上視図、(b)側面図、(c)B−B断面図を示している。
【0021】
図2(a)より、洗浄ノズル30は筒形状となっており、一方は洗浄口31が形成され、他方が洗浄範囲調節部40を挿入するための開口部32となっている。図2(a)及び(b)より、この開口部32側には、移動方向に対して水平に突部33が両側面に形成されている。この洗浄口31は、移動方向上に複数の吐出孔34を有しており、通常の洗浄範囲の洗浄口31を第1洗浄口31a、広範囲の洗浄を行うための洗浄口31を第2洗浄口31bとする。この時、通常範囲の洗浄は第1洗浄口31aを使用し、広範囲の洗浄は第1洗浄口31a及び第2洗浄口31bを使用する。また、この洗浄ノズル30には、洗浄ノズル30の下面で移動方向に平行な溝を持つラック51が形成されている。更に、図2(c)より、ラック51上には、2つの空気供給口35が洗浄ノズル30の移動方向で内部に向けて鉛直方向に形成されている。
【0022】
図3(a)に示された洗浄範囲調節部40は、筒形状になっており、一方は、開口している排出部41で、他方は移動方向に対して水平方向に延びる流体供給部42aを備えた供給部42が形成されている。また、図3(b)より洗浄範囲調節部40は、移動方向と水平方向に突部43を形成している。排出部41側には、洗浄ノズル30との間にシール部60を配設するためのシール溝44が周方向に形成されている。図3(c)よりこの洗浄範囲調節部40では、排出部41と供給部42の間に絞り部45が形成されている。更に、この絞り部45とシール溝44との間には、移動方向に対して鉛直に吸気孔46が設けられている。そして、この吸気孔46は、絞り部45に近接しており、供給部42から排出部41へ流体が流れる際に、絞り部45を通過することで流速が増し、吸気孔46からの空気の取り込みが容易となっている。また、この絞りの構造から、洗浄範囲調節部40の内部は、供給部42から絞り部45よりも絞り部45から排出部41までの口径の面積が狭くなっているので、流体は泡沫効果を得易くなっている。
【0023】
図2及び図3より、上記した洗浄ノズル30の突部33を第1突部33、洗浄範囲調節部40の突部43を第2突部43とする。洗浄ノズル30には、第2突部43が摺動するための摺動溝36が洗浄範囲調節部40の移動方向に形成されている。更に、洗浄範囲調節部40が移動すると共に流体供給部42aも移動するため、洗浄ノズル30の開口部32では流体供給部42aが移動できるように移動経路37が設けられている。また、図2に示された洗浄ノズル30の内部38は、第1洗浄口31aを有し、洗浄範囲調節部40の挿入が不可能な第1内部38a、第2洗浄口31bを有し、洗浄範囲調節部40の排出部41が挿入可能な領域を第2内部38b、洗浄範囲調節部40の供給部の挿入可能な領域を第3内部38cとする。第2内部38bは、排出部41の形状と類似しているため、排出部41を挿入できる領域を限定している。
【0024】
次に、本発明の実施形態の洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40の組付け後の通常洗浄時と広範囲洗浄時について図4〜図5を参照して説明する。図4は、通常洗浄時の洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40の位置関係の(a)上視図、(b)側面図、(c)C−C断面図を示している。図5は、広範囲洗浄時の洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40の位置関係の(a)上視図、(b)側面図、(c)D−D断面図を示している。
【0025】
図4より、通常洗浄時の洗浄ノズル30に対して洗浄範囲調節部40は、第2洗浄口31bを塞ぐようにして排出部41が挿入可能な最深の位置まで挿入されている。また、図4(c)に示されているように、洗浄範囲調節部40の吸気孔46と洗浄ノズル30の空気供給口35とが同軸上にあるため空気を十分に取り込むことが可能となっている。また、シール部60は、洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40との間に設けられ、洗浄範囲調節部40のシール溝44に沿って環状になっており、洗浄範囲調節部40の先端から所定距離に位置している。
図5より、広範囲洗浄時の洗浄範囲調節部40は、通常洗浄時の位置よりも洗浄ノズル30に対して相対的に後退している。この状態で、第1洗浄口31a及び第2洗浄口31bが開放されることで広範囲の洗浄が可能となっている。また、洗浄範囲調節部40の吸気孔46と通常洗浄時とは異なる洗浄ノズル30の空気供給口35とが同軸上にあるため空気を取り込むことが可能である。
【0026】
次に、本発明の実施形態で人体洗浄装置1の収納時及び広範囲洗浄時で洗浄ノズル30の第1突部33及び洗浄範囲調節部40の第2突部43と本体部20との関係について、図6、図7を参照して説明する。図6は、人体洗浄装置1の収納時で洗浄ノズル30の第1突部33及び洗浄範囲調節部40の第2突部43と本体部20との関係を示しており、図7は、人体洗浄装置1の最大ずらし位置での洗浄ノズル30の第1突部33及び洗浄範囲調節部40の第2突部43と本体部20との関係を示している。
【0027】
図6、図7より、本体部20は、洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40の移動することで、上記した第1突部33及び第2突部43が本体部20を摺動するための第1摺動部21及び第2摺動部22を設けている。第1突部33が洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40の移動方向に摺動するための第1摺動部21は、本体部20に第1突部33の摺動軌跡上に形成された溝である。また、第2突部43が洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40の移動方向に摺動するための第2摺動部22は、摺動軌跡上の前後方向に形成された2つの突状の係止部23a、23bによって形成されており、摺動軌跡上の前方の係止部23aを第1係止部23a、後方の係止部23bを第2係止部23bとする。第1摺動部21は、摺動軌跡上に形成されたの溝の両端によって第1突部33を係止し、第2摺動部22は、前方の第1係止部23aでは第2突部43を係止し、後方の第2係止部23bで流体供給部42aを係止する。摺動距離は、第2突部43に比べて第1突部33の摺動距離が長いために、洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40との間に移動に差が生じるので通常洗浄と広範囲洗浄を行うことができる。図6では、収納時の人体洗浄装置1の状態を示している。この時、洗浄ノズル30は、第1突部33が第1摺動部21の摺動軌跡上の後退側で係止されていることで収納される位置を定めることができる。一方、洗浄範囲調節部40は、流体供給部42aの洗浄範囲調節部40に対して水平部分が第2係止部23bに係止されることによって位置が定められている。図7の最大ずらし位置において、洗浄ノズル30は、第1突部33が第1摺動部21の摺動軌跡上の前進側で係止されており、一方、洗浄範囲調節部40は、第2突部43が第1係止部23aに係止される。これにより、洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40の位置が広範囲洗浄の位置に定められている。なお、通常洗浄時は、洗浄ノズル30の第1突部33が第1摺動部21の摺動軌跡上の前進側で係止される前に、洗浄範囲調節部40の第2突部43が第1係止部23aに係止されたところで通常洗浄時の位置が定められている。
【0028】
次に、本発明の動作について図8を参照に説明する。図8は洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40の動作(最大の位置で局部の洗浄を行うの場合)説明図を示している。
【0029】
図8(a)は、洗浄ノズル30が収納されている状態である。この時、洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40は、上記した図6のように突部33、43及び流体供給部42aと本体部20の摺動部21、22及び係止部23a、23bによって定められた位置に収納されている。洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40の位置関係から、第1洗浄口31aは常に流体を吐出可能にし、第2洗浄口31bが塞がれた通常の洗浄範囲の状態を保っている。図8(b)は、洗浄位置での洗浄ノズル30を示している。この時、洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40が駆動手段50及びシール部60によって、洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40は洗浄位置まで一体となって前進する。この洗浄位置まで前進させるとき、モータ52に取り付けられたピニオン53が、洗浄ノズル30のラック51と噛合することで洗浄ノズル30が移動する。そして、シール部60の摩擦によって、洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40が一体となって移動する。これにより、洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40との位置関係がずれないために、通常の洗浄範囲を保って前進できる。また、通常時の洗浄位置は、第1洗浄口31aの中心と同軸とし、洗浄範囲調節部40の第2突部43が本体部20の第2摺動部22である第1係止部23aに係止されることで定められている。図8(c)は、通常洗浄から広範囲の洗浄への調節(最大位置)を示している。通常の洗浄から広範囲の洗浄を行うには、図8(b)の状態から、駆動手段50によって洗浄ノズル30を前進させる。この時、洗浄範囲調節部40は、第2突部43が第1係止部23aと係止しているために移動することができない。これにより、洗浄ノズル30のみが前進するので、洗浄範囲調節部40によって塞がれていた第2洗浄口31bからも流体を吐出できるようになり、広範囲の洗浄が可能となる。図8(d)は、広範囲洗浄の場合の洗浄位置を示している。図8(c)で洗浄範囲を広範囲にすることができたが、洗浄ノズル30のみが前進するので、第1洗浄口31a及び第2洗浄口31bから成る洗浄口31の洗浄位置がずれることとなる。このため、駆動手段50は、洗浄ノズル30の洗浄口31の中心位置が洗浄位置まで到達するように洗浄ノズル30を後退させることで位置の調整を行う。この時、シール部60によって洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40が一体となって後退するために、洗浄口31は、広範囲の洗浄範囲を保って洗浄位置まで移動が可能となる。図8(e)は、収納が完了する前の状態を示している。広範囲の洗浄終了後に、駆動手段50は洗浄ノズル30を収納位置まで後退させる。この時、シール部60によって洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40が一体となって後退するが、洗浄範囲調節部40の流体供給部42aが、第2摺動部22の第2係止部23bに係止されるので、洗浄ノズル30よりも先に洗浄範囲調節部40が収納位置に到達する。そして、図8(f)より、洗浄範囲調節部40が係止された後、駆動手段50によって洗浄ノズル30のみを後退させることで、洗浄口31は、第2洗浄口31bを洗浄範囲調節部40によって塞がれる。これにより、洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40は、洗浄口31を通常洗浄可能な状態で収納される。
【0030】
次に、本発明の動作について図9を参照に説明する。図9は洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40の動作(任意の位置で局部の洗浄を行うの場合)の説明図を示している。
図9(a)は、洗浄ノズル30が収納されている状態である。この時、洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40は、上記した図6のように突部33、43及び流体供給部42aと本体部20の摺動部21、22及び係止部23a、23bによって定められた位置に収納されている。洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40の位置関係から、第1洗浄口31aは常に流体を吐出可能にし、第2洗浄口31bが塞がれた通常の洗浄範囲の状態を保っている。図9(b)は、洗浄位置での洗浄ノズル30を示している。この時、洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40が駆動手段50及びシール部60によって、洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40は洗浄位置まで一体となって前進する。この洗浄位置まで前進させるとき、モータ52に取り付けられたピニオン53が、洗浄ノズル30のラック51と噛合することで洗浄ノズル30が移動する。そして、シール部60の摩擦によって、洗浄ノズル30及び洗浄範囲調節部40が一体となって移動する。これにより、洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40との位置関係がずれないために、通常の洗浄範囲を保って前進できる。また、通常時の洗浄位置は、第1洗浄口31aの中心と同軸とし、洗浄範囲調節部40の第2突部43が本体部20の第2摺動部22である第1係止部23aに係止されることで定められている。図9(c)は、通常洗浄から広範囲の洗浄への調節(任意の位置)を示している。通常の洗浄から広範囲の洗浄を行うには、図9(b)の状態から、駆動手段50によって洗浄ノズル30を前進させる。この時、洗浄範囲調節部40は、第2突部43が第1係止部23aと係止しているために移動することができない。これにより、洗浄ノズル30のみが前進するので、洗浄範囲調節部40によって塞がれていた第2洗浄口31bからも流体を吐出できるようになり、広範囲の洗浄が可能となる。このとき、第2洗浄口31bの先浄水を吐出する面積は、駆動手段50のラック51と噛み合うピニオン53を回転させるモータ52の回転数等を調整することで、洗浄ノズル30の前進を任意の位置で停止させることが可能である。これにより、複数の吐出孔34からなる第2洗浄口31bは、洗浄に使用する吐出孔34の数を任意で調整することができる。さらに、第2洗浄口31bは、最大ずらし位置での吐出孔34の数よりも少ない吐出孔34の数で洗浄口31を形成するため、最大ずらし位置の洗浄範囲に比べて、狭い洗浄範囲での洗浄が可能となる。図9(d)は、広範囲洗浄の場合の洗浄位置を示している。図9(c)で洗浄範囲を広範囲にすることができたが、洗浄ノズル30のみが前進するので、第1洗浄口31a及び第2洗浄口31bから成る洗浄口31の洗浄位置がずれることとなる。このため、駆動手段50は、洗浄ノズル30の洗浄口31の中心位置が洗浄位置まで到達するように洗浄ノズル30を後退させることで位置の調整を行う。この時、シール部60によって洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40が一体となって後退するために、洗浄口31は、広範囲の洗浄範囲を保って洗浄位置まで移動が可能となる。図9(e)は、収納が完了する前の状態を示している。広範囲の洗浄終了後に、駆動手段50は洗浄ノズル30を収納位置まで後退させる。この時、シール部60によって洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40が一体となって後退するが、洗浄範囲調節部40の流体供給部42aが、第2摺動部22の第2係止部23bに係止されるので、洗浄ノズル30よりも先に洗浄範囲調節部40が収納位置に到達する。そして、図9(f)より、洗浄範囲調節部40が係止された後、駆動手段50によって洗浄ノズル30のみを後退させることで、洗浄口31は、第2洗浄口31bを洗浄範囲調節部40によって塞がれる。これにより、洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40は、洗浄口31を通常洗浄可能な状態で収納される。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、以下に示す態様に変更してもよい。
【0031】
・空気供給口35は、移動方向に長軸を持ち、吸気孔46の移動範囲と同様な1つの口が設けられていても良い。
【0032】
・人体洗浄装置1の洗浄範囲は、駆動手段50のモータ52の回転方向と回転数を制御することによって、洗浄ノズル30と洗浄範囲調節部40を細かく多段階の洗浄範囲に切り替えることが可能な構造でも良い。
【符号の説明】
【0033】
1 人体洗浄装置
20 本体部
23a 第1係止部(係止部)
30 洗浄ノズル
31 洗浄口
31a 第1洗浄口
31b 第2洗浄口
35 空気供給口
40 洗浄範囲調節部
41 排出部
42 供給部
43 第2突部(突部)
45 絞り部
46 吸気孔
50 駆動手段
51 ラック
52 モータ
53 ピニオン
60 シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を吐出する洗浄ノズルを移動させて行う人体局部の洗浄について通常洗浄と広範囲洗浄を切替える人体洗浄装置において、
前記洗浄ノズルを収納する本体部と、
前記本体部に対して前記洗浄ノズルを進退自在に移動させる駆動手段と、
前記洗浄ノズルの移動方向上で前記洗浄ノズルの先端部に配設された複数の吐出孔からなる洗浄口と、
前記洗浄ノズルの内部を摺動することにより前記洗浄口の面積を可変し、一方に前記洗浄口へ流体を排出する排出部を有し、他方に流体を供給する供給部を有する洗浄範囲調節部と、
前記洗浄ノズルと前記洗浄範囲調節部との間に配設されたシール部と、
前記洗浄範囲調節部の前記供給部側に形成され、前記本体部に対して平行な突部と、
前記本体部の前記洗浄範囲調節部の移動方向に形成され、前記突部の前進方向側の移動を規制する係止部とを備え、
通常洗浄は、前記シール部の摩擦によって前記洗浄ノズル及び前記洗浄範囲調節部を一体で洗浄位置まで移動して人体局部の洗浄を行い、
広範囲洗浄は、前記突部が前記係止部に係止されることで前記洗浄範囲調節部を係止し、前記洗浄ノズルのみを更に移動させることで前記洗浄口の流体を吐出できる前記吐出孔の数を増加させて吐出面積を拡大させて洗浄範囲を定め、前記シール部によって前記洗浄ノズルと前記洗浄範囲調節部とが一体となって移動することで、定めた吐出面積を保ちながら前記洗浄ノズルが洗浄位置へ後退して、洗浄範囲を変化することなく一定の洗浄状態で広範囲洗浄を行うことを特徴とした人体洗浄装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記洗浄ノズルに取り付けられたラックと、前記本体部に取り付けられたモータによって回転するピニオンとが噛合して前記洗浄ノズルを移動させることを特徴とした請求項1に記載の人体洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄範囲調節部の前記排出部と前記供給部との間に絞り部を設け、絞り部の排出部側で前記シール部の後方に位置し、流体に空気を取り込む吸気孔と、前記洗浄ノズルと前記洗浄範囲調節部の相対移動時に前記吸気孔へ空気の供給可能な移動方向で前記洗浄ノズルに設けられた空気供給口とを備えていることを特徴とした請求項1または請求項2に記載の人体洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄口は、前記洗浄ノズルの移動方向上に第1洗浄口及び第2洗浄口を有し、前記各洗浄口は複数の吐出孔により形成されていることを特徴とした請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の人体洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−117263(P2011−117263A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70958(P2010−70958)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】