説明

人体通信装置

【課題】人体通信を通じて電子機器の機能制限を改善できる人体通信装置を提供する。
【解決手段】人体通信装置10は、人体通信媒体11が接触することにより信号を送信可能な人体接触媒体12と、人体通信媒体11が接触することにより信号を受信可能な電子機器13と、人体接触媒体12に接触している人体通信媒体11が移動中に、電子機器13の機能を制限可能な制御部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体通信を介して携帯電話等の電子機器を制御する人体通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、運転中を示す運転中信号を検出しているときに通話を抑制する携帯電話を、車両を運転する運転者が自身の身体に触れて操作したときに、この身体から携帯電話に運転中信号が流れる人体通信装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1は、運転席に運転者が座っているか否かを検出するシートセンサと、運転者がハンドルを握っているかどうかを検出するハンドルセンサと、車速を検出する速度センサとを備える。
特許文献1は、シートセンサの検出信号とハンドルセンサの検出信号とをそれぞれ受け速度センサの検出する車速が予め定めた速度以上を示すときに運転者が運転席に座って車両を運転中であることを示す運転中信号を運転者の身体に流す車載装置制御部を備える。
特許文献1は、車両のすべての同乗者の携帯電話の発着信を停止するのでなく車両の運転者が操作する携帯電話の通話を抑制できる。
【0003】
また、従来より、携帯電話とハンズフリー装置とを備え、携帯電話に設けられた第1の人体通信送受信手段と、ハンズフリー装置に接続された第2の人体通信送受信手段とを備える人体通信装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2は、第1および第2の人体通信送受信手段の間で人体通信が可能である場合、携帯電話による通話を、人体通信で信号の送受信を行うことで、ハンズフリー装置での音声入出力により行うよう制御する通話制御手段を備える。
特許文献2は、携帯電話とハンズフリー装置との接続のために特別な手間を必要とせず、またハンズフリー通話のためにモード切り替えといった設定の手間も必要なく、利便性に優れる。
【0004】
そして、従来より、テレマティック装置と、潜在的に危険な状態を検出し、そのような状態を検出したときテレマティック装置を自動的に使用不能にする検出手段とを備える人体通信装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3は、検出手段が車両の運転者の二つの手で握られる操舵部上に取付けられ、車両が動作中で運転者の二つの手が操舵部を握っているのを検知されないとき、テレマティック装置を一時停止するかあるいは使用不能にするのに有効な二つのセンサを備える。
特許文献3は、事故の危険性を減少させ、車両を操作中の危険な状態の可能性を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4030753号公報
【特許文献2】特開2010−87624号公報
【特許文献3】特表2005−507125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、日本国の改正道路交通法では、運転中に携帯電話等の電子機器を手に持つ等して会話をすること、電子機器を使ってメールの送受信等で画面を注視すること、のいずれも禁止されている。
【0007】
しかし、特許文献1は、速度センサの検出する車速があらかじめ定めた速度以上を示すときに運転者が運転席に座って車両を運転中であることを示す運転中信号が運転者の身体に流れる。
そして、特許文献1は、車両の運転者が操作する携帯電話の通話を抑制する。
従って、特許文献1は、車両があらかじめ定めた速度以下の場合、運転中信号が運転者の身体に流れず、車両の運転者が操作する携帯電話の通話を抑制できないので、車両が走行中に携帯電話で通話を行えてしまう。
さらに、特許文献1は、走行中における携帯電話の運転者のみの通話を制限できない。
【0008】
一方、特許文献2は、人体通信が可能である場合、携帯電話による通話を、人体通信で信号の送受信を行うことにより、ハンズフリー装置での音声入出力により行う。
従って、車両が走行中に携帯電話等の電子機器を手に持つ等して会話をすることに対して制限できない。
さらに、特許文献2は、走行中における携帯電話の運転者のみの通話を制限できない。
【0009】
加えて、特許文献3は、車両が動作中で運転者の二つの手が操舵部を握っているのが検知されないときに、テレマティック装置を一時停止するかあるいは使用不能にする。
従って、特許文献3は、運転者の二つの手が操舵部を握っていることの論理が条件であるために、例えば、ステアリングホイールを一方の片手で握って、他方の片手でシフトノブを握っている場合に、テレマティック装置を所定動作できない。
さらに、特許文献3は、走行中における携帯電話の運転者のみの通話を制限できない。
そのため、特許文献1、特許文献2および特許文献3は、いずれも改善の余地を有する。
【0010】
本発明は、前述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、人体通信を通じて電子機器の機能制限を改善できる人体通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る人体通信装置は、人体通信媒体が接触することにより信号を送信可能な人体接触媒体と、前記人体通信媒体が接触することにより信号を受信可能な電子機器と、前記人体接触媒体に接触している前記人体通信媒体が移動中に、前記電子機器の機能を制限可能な制御部とを備える。
【0012】
本発明に係る人体通信装置は、人体が接触することにより信号を送信可能な車両補機と、前記人体が接触することにより信号を受信可能な携帯電話と、前記人体が前記車両補機に接触している際に車両が移動する場合、前記携帯電話の機能を制限可能な制御部とを備える。
【0013】
本発明に係る人体通信装置は、人体が接触することにより信号を送信可能な車両補機と、前記人体が近接することにより信号を受信可能な携帯電話と、前記人体が前記車両補機に接触している際に車両が移動する場合、前記携帯電話の機能を制限可能な制御部とを備える。
【0014】
本発明に係る人体通信装置は、制御部が、さらに、ブレーキを制動制御する。
【0015】
本発明に係る人体通信装置は、前記車両補機が、ステアリングホイール、シート、シートマット、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルのうちの少なくともいずれかである。
【0016】
本発明に係る人体通信装置は、前記制御部は、前記車両が停止中である場合またはサイドブレーキが動作中である場合を除いて前記携帯電話の機能を制限する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る人体通信装置によれば、人体通信を通じて電子機器の機能制限を改善できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第1実施形態の人体通信装置のブロック構成図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態の人体通信装置の人体接触媒体の外観斜視図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態の人体通信装置の電子機器の一部破断外観斜視図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態の人体通信装置の車両搭載状態の縦断面図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態の人体通信装置の使用状態の縦断面図である。
【図6】本発明に係る第2実施形態の人体通信装置の電子機器の一部破断外観斜視図である。
【図7】本発明に係る第3実施形態の人体通信装置の電子機器の一部破断外観斜視図である。
【図8】本発明に係る第3実施形態の人体通信装置の車両搭載状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る複数の実施形態の人体通信装置について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明に係る第1実施形態の人体通信装置10は、人体通信媒体である人体11が接触することにより信号を送信可能な人体接触媒体であるステアリングホイール12を構成要件の一つとする。
また、人体通信装置10は、人体11が接触することにより信号を受信可能な電子機器である携帯電話13を構成要件の一つとする。
そして、人体通信装置10は、ステアリングホイール12に接触している人体11が移動中に、携帯電話13の機能を制限可能な制御部14を構成要件の一つとする。
なお、人体接触媒体としては、ステアリングホイール12に代えて、それぞれ不図示のシート、シートマット、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルのうちの少なくとも一つまたはこれらの組み合わせでよい。
【0020】
ステアリングホイール12は、車両15の車両補機の一つであり、人体通信用電極16が内蔵されている。
人体通信用電極16は、人体11が接触することにより、人体11を通じて通電回路を形成する。
車両15は、人体通信用電極16に電気的に接続された信号送信部17と、信号送信部17に電気的に接続された信号発信部18とを備える。
信号発信部18は、不図示の車速検出手段に電気的に接続されているために、車両15が始動されて走行しているときに、走行信号を信号送信部17に与える。信号送信部17は、車両15が走行していないときに、走行信号を発生しない。
信号送信部17は、信号発信部18から与えられた走行信号に基づき、人体通信用電極16に微弱電流の制限信号を与える。
なお、人体通信用電極16に与えられる制限信号は、車両15の助手席側などへ漏れない程度の送信電力に設定されている。
【0021】
携帯電話13は、人体通信用電極19と、信号受信部20と、制御部14とを備える。
人体通信用電極19は、ステアリングホイール12に人体11の手が接触した際に、人体11内を通じて、ステアリングホイール12の人体通信用電極16から制限信号を受信する。
信号受信部20は、人体通信用電極19に電気的に接続されている。信号受信部20は、人体通信用電極16から受信した制限信号を制御部14に与える。
制御部14は、信号受信部20に与えられた信号を処理する。
具体的に、制御部14は、ステアリングホイール12の人体通信用電極16から信号受信部20に制限信号が与えられた時に、携帯電話13の通話を不可能としたり通話を保留にしたりするとともに画像の表示を停止させる制限処理を行う。
【0022】
制御部14は、車両15が停止中である場合およびサイドブレーキが動作中である場合に、ステアリングホイール12の人体通信用電極16から信号受信部20に制限信号が与えられない。
従って、制御部14は、携帯電話13の通話を不可能としたり通話を保留にしたりせずに、画像の表示を停止させない。
【0023】
図2に示すように、ステアリングホイール12は、人体11の手で握るリム部21内の全周に人体通信電極16が内蔵されている。
ステアリングホイール12は、リム部21内の全周に人体通信電極16が内蔵されているために、例えば、運転者の人体11の一方の片手がステアリングホイール12を握り、他方の片手がシフトノブを握ったとしても、制限信号を人体11に与えることができる。
【0024】
図3に示すように、携帯電話13は、筐体22の上面に複数のキースイッチ23を有し、筐体22の上端部の通話時に人体11に接触しやすい位置に人体通信用電極19を装備する。
携帯電話13は、信号受信部20と、制御部14とを内部に収容している。
携帯電話13は、通話の電波受信時やキースイッチ23を押したときに、人体通信用の信号受信部20が起動して人体通信用電極19からの入力待ち状態となる。
【0025】
図4に示すように、車両15は、運転席24に対面する位置に、人体通信用電極16を内蔵したステアリングホイール12が配置されている。
そして、人体通信用電極16が、例えば、ダッシュパネル等の下方に取り付けられている信号送信部17および信号発信部18に電気的に接続されている。
【0026】
次に、人体通信装置10の制御動作について説明する。
図5に示すように、車両15の運転席24に運転者が着座し、運転者の人体11がステアリングホイール12に接触されて車両15が走行を開始する。
このとき、携帯電話13は、人体通信用電極19からの入力待ち状態となっている。
そして、ステアリングホイール12の人体通信用電極16から人体通信用電極19に制限信号が与えられている。
【0027】
そこで、携帯電話13が受信された場合、制御部14により、通話を不可能としたり通話を保留にしたりするとともに画像の表示を停止させる制限処理が実行されているために、通話を行えないとともに画像を確認できないことになる。
このとき、運転者以外の乗員は、ステアリングホイール12に接触していないために、車両15内において、制限処理を受けることなく、通常の通話および画像の確認を行える。
【0028】
以上、説明したように第1実施形態の人体通信装置10によれば、人体接触媒体12に接触している人体通信媒体11が移動中に、電子機器13の通話を不可能としたり通話を保留にしたりするとともに画像の表示を停止させる制限処理が実行される。
従って、人体通信装置10によれば、人体通信媒体11以外の人体には、制限処理を与えることなく、人体通信媒体11のみに電子機器13の機能制限を与えて機能制限を改善できる。
【0029】
また、第1実施形態の人体通信装置10によれば、ステアリングホイール12に接触している人体11の乗車している車両15が移動中に、携帯電話13の通話を不可能としたり通話を保留にしたりするとともに画像の表示を停止させる制限処理が実行される。
従って、人体通信装置10によれば、運転者以外の乗員には、制限処理を与えることなく、運転者のみに携帯電話13の機能制限を与えることができる。
【0030】
そして、第1実施形態の人体通信装置10によれば、人体接触媒体12に相当する車両15の補機として、ステアリングホイール12、シート、シートマット、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルのうちの少なくともいずれかを選べる。
従って、ステアリングホイール12に人体通信電極16を内蔵することが高コストになる場合に他の補機を活用できる。
【0031】
さらに、第1実施形態の人体通信装置10によれば、車両15が停止中である場合およびサイドブレーキが動作中である場合に、ステアリングホイール12の人体通信用電極16から信号受信部20に制限信号が与えられない。
従って、人体通信装置10によれば、制御部14が、携帯電話13の通話を不可能としたり通話を保留にしたりせずに、画像の表示を停止させない。
【0032】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の人体通信装置について説明する。
なお、以下の各実施形態において、前述した第1実施形態と重複する構成要素や機能的に同様な構成要素については、図中に同一符号あるいは相当符号を付することによって説明を簡略化あるいは省略する。
【0033】
図6に示すように、本発明に係る第2実施形態の人体通信装置30は、人体11が近づいたことを感知する人感センサ32を備える携帯電話31を構成要件の一つとする。
人感センサ32は、近接センサであって、携帯電話31に人体11が近接した際に、人体通信用の信号受信部20が起動して人体通信用電極19からの入力待ち状態となる。
なお、人感センサ32としては、近接センサに代えて、携帯電話31が頭に押し付けられたことを感知する圧力センサなどのセンサを用いることもできる。
【0034】
第2実施形態の人体通信装置30によれば、通話の電波受信時やキースイッチを押す必要がなく、スマートに使用できる。
【0035】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態の人体通信装置について説明する。
図7に示すように、本発明に係る第3実施形態の人体通信装置40は、人体通信用電極19と、信号受信部42と、制御部43と、信号送信部44と、信号発信部45とを備える携帯電話41が適用される。
図8に示すように、車両15は、人体通信用電極16と、信号送信部46と、信号発信部47と、信号受信部48と、制御部49とを備える。
【0036】
制御部49は、不図示の車両制御コントローラに電気的に接続されているために、ステアリングホイール12を通じて制限信号が携帯電話41から与えられることにより、ブレーキを制動制御する。
【0037】
第3実施形態の人体通信装置40によれば、安全にブレーキをかけることができる。
【0038】
なお、本発明の人体通信装置は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形や改良等が可能である。
例えば、携帯電話の電極や、ステアリングホイールの電極の形・個数・配置は任意であり人体通信に影響のない範囲で自由に配置可能である。
また、人体接触媒体としてシートを適用する場合、右座席ならば特に左側に、エアバックでの子供の圧迫死を防止するために大人/子供検知手段としての静電電極が入っている背もたれの影響を少しでも取り除くようにする必要がある。
【0039】
以上述べたように、本発明の人体通信装置によれば、人体通信を通じて電子機器の機能制限を改善できるものである。
以上の結果として、人体通信の可能性を飛躍的に拡大でき、本発明の産業上の利用可能性は大といえる。
【符号の説明】
【0040】
10 人体通信装置
11 人体(人体通信媒体)
12 ステアリングホイール(人体接触媒体)(車両補機)
13 携帯電話(電子機器)
14 制御部
30 人体通信装置
31 携帯電話(電子機器)
40 人体通信装置
41 携帯電話(電子機器)
43 制御部
49 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体通信媒体が接触することにより信号を送信可能な人体接触媒体と、
前記人体通信媒体が接触することにより信号を受信可能な電子機器と、
前記人体接触媒体に接触している前記人体通信媒体が移動中に、前記電子機器の機能を制限可能な制御部とを備える人体通信装置。
【請求項2】
人体が接触することにより信号を送信可能な車両補機と、
前記人体が接触することにより信号を受信可能な携帯電話と、
前記人体が前記車両補機に接触している際に車両が移動する場合、前記携帯電話の機能を制限可能な制御部とを備える人体通信装置。
【請求項3】
人体が接触することにより信号を送信可能な車両補機と、
前記人体が近接することにより信号を受信可能な携帯電話と、
前記人体が前記車両補機に接触している際に車両が移動する場合、前記携帯電話の機能を制限可能な制御部とを備える人体通信装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の人体通信装置において、
制御部が、さらに、ブレーキを制動制御する人体通信装置。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載の人体通信装置において、
前記車両補機が、ステアリングホイール、シート、シートマット、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルのうちの少なくともいずれかである人体通信装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のうちのいずれか1項に記載の人体通信装置において、
前記制御部は、前記車両が停止中である場合またはサイドブレーキが動作中である場合を除いて前記携帯電話の機能を制限する人体通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−55574(P2013−55574A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193611(P2011−193611)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】