説明

人孔内部の腐食防止方法

【課題】人孔内部に水が流入することを防止するとともに、人孔内部に水が流入した場合であっても金属の腐食を抑制できる人孔内の腐食防止方法を提供する。
【解決手段】人孔内部の管路口を遮水部材で止水する工程と、人孔内部に少なくとも2以上の異なる金属からなる部材が配置される場合において、人孔内部の異なる金属からなる部材が接触する部分、およびイオン化傾向の相対的に小さい方の部材間、のうち少なくとも一方を縁切りする工程とを備えている。また、人孔内部に少なくとも2以上の異なる金属からなる部材が配置される場合において、異なる金属からなる部材において、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材に、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材よりもイオン化傾向の大きい材料からなる擬餌電極26を配置する工程をさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人孔内部の腐食防止方法に関し、たとえば人孔内部の異種金属接触腐食を防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中送電線路の人孔は、外部から水が流入して、内部に水が滞留することが頻繁に起こる。この場合、流入した水により、いわゆる金物腐食が生じてしまう。
【0003】
外部からの水の流入を防止するために、たとえば特開2004−76539号公報(特許文献1)では、マンホール内の下水の流れる水面上に、上下管を遮断するフロート式の主遮蔽部材を浮設し、同部材が上下遮蔽状態を保ちながら水位追従可能に上下するようにして案内して装備してなるマンホール内腐食防止装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−76539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のマンホール内腐食防止装置では、水の流入をある程度防止することはできるが、完全に水の流入を防止することはできない。そのため、マンホール内に水が流入した場合には、マンホール内での腐食は進行してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、人孔内部に水が流入することを防止するとともに、人孔内部に水が流入した場合であっても金属の腐食を抑制できる人孔内部の腐食防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の局面における人孔内部の腐食防止方法は、人孔内部の管路口を遮水部材で止水する工程と、人孔内部に少なくとも2以上の異なる金属からなる部材が配置される場合において、人孔内部の異なる金属からなる部材が接触する部分、およびイオン化傾向の相対的に小さい方の部材間、のうち少なくとも一方を縁切りする工程とを備えている。
【0007】
本発明の人孔内部の腐食防止方法によれば、止水する工程により、人孔内部に水が流入することを防止できる。また、人孔内部に水が流入した場合であっても、縁切りする工程により、異なる金属からなる部材の接触を絶つこと、およびイオン化傾向の相対的に小さい方の部材の面積を小さくすること、の少なくとも一方が可能となるので、腐食を抑制できる。
【0008】
なお、「人孔内部」とは、人孔内において地中における管路と接続され、ケーブルを収容している部分を意味する。また、「管路口」とは、人孔内部において、人孔外部の地中に埋設されているケーブルを保持する管路から人孔内部にケーブルが接続される部分を意味する。
【0009】
上記人孔内部の腐食防止方法において好ましくは、異なる金属からなる部材において、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材に、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材よりもイオン化傾向の大きい材料からなる擬餌電極を配置する工程をさらに備えている。
【0010】
擬餌電極を配置する工程により、イオン化傾向の大きい方の材料よりも擬餌電極を先に腐食させることができるので、異種金属接触腐食が進行しやすいイオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材について、さらに異種金属接触腐食を抑制できる。
【0011】
本発明の他の局面における人孔内部の腐食防止方法は、人孔内部の管路口を遮水部材で止水する工程と、人孔内部に少なくとも2以上の異なる金属からなる部材が配置される場合において、人孔内部の異なる金属からなる部材において、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材に、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材よりもイオン化傾向の大きい材料からなる擬餌電極を配置する工程を備えている。
【0012】
本発明の人孔内部の腐食防止方法によれば、止水する工程により、人孔内部に水が流入することを防止できる。また、人孔内部に水が流入した場合であっても、擬餌電極を配置する工程により、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料よりも擬餌電極を先に腐食させて、異種金属接触腐食が進行しやすいイオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材について、腐食を抑制できる。
【0013】
上記人孔内部の腐食防止方法において好ましくは、人孔内部の異なる金属からなる部材が接触する部分、およびイオン化傾向の相対的に小さい方の部材間、のうち少なくとも一方を縁切りする工程をさらに備えている。
【0014】
縁切りする工程により、異なる金属からなる部材の接触を絶つことができるので、異種金属接触腐食をさらに抑制できる。
【0015】
上記人孔内部の腐食防止方法において好ましくは、異なる金属からなる部材において、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材を、イオン化傾向の相対的に小さい方の材料からなる材料のイオン化傾向と実質的に同一の材料からなる部材に変更する工程をさらに備えている。
【0016】
これにより、イオン化傾向が実質的に同一の材料であれば異種金属接触腐食が進行しないので、異種金属接触腐食の進行を抑制できる。
【0017】
本発明のさらに他の局面における人孔内部の腐食防止方法は、支柱と、ケーブルを支持するケーブル支持部材と、ケーブル支持部材を支持する支持架台とを内部に配置する人孔であって、以下の工程を備えている。人孔内部の管路口を遮水部材で止水する工程を実施する。人孔内部において、支柱とケーブル支持部材との間、およびケーブル支持部材と支持架台との間、の少なくとも一方を絶縁部材で縁切りする工程を実施する。
【0018】
本発明の人孔内部の腐食防止方法によれば、止水する工程により、人孔内部に水が流入することを抑制できる。また、人孔内部に水が流入した場合であっても、縁切りする工程により、腐食を抑制できる。
【0019】
上記人孔内部の腐食防止方法において好ましくは、支柱、ケーブル支持部材、および支持架台のうち、かつ最もイオン化傾向の大きい材料からなる部材がケーブル支持部材であって、ケーブル支持部材にケーブル支持部材の材料よりもイオン化傾向の大きい材料からなる擬餌電極を配置する工程をさらに備えている。
【0020】
これにより、擬餌電極をケーブル支持部材よりも先に腐食させることができるので、ケーブル支持部材の腐食をより抑制できる。
【0021】
なお、支柱、ケーブル支持部材、および支持架台のうち、金属からなるものについてイオン化傾向を考慮する。
【0022】
上記人孔内部の腐食防止方法において好ましくは、ケーブル支持部材の材料を、支柱および支持架台の少なくとも一方の材料と同じ材料に変更する工程をさらに備えている。これにより、ケーブル支持部材の異種金属接触腐食を抑制できる。
【0023】
上記人孔内部の腐食防止方法において好ましくは、ケーブル支持部材がアルミニウムからなる。
【0024】
これにより、相対的にイオン化傾向の低いアルミニウムをケーブル支持部材に用いても、ケーブル支持部材の腐食を抑制できる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明の人孔内部の腐食防止方法によれば、止水工程により人孔内部に水が流入することを防止できる。縁切りする工程および擬餌電極を配置する工程のうち少なくとも一方を備えることにより、人孔内部に水が流入した場合であっても金属の腐食を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0027】
(実施の形態1)
図1(A)は、本発明の実施の形態1における人孔を示す概略断面図であり、(B)は、本発明の実施の形態1における人孔内部を示す概略上面図である。図2は、本発明の実施の形態1における人孔内部における異種金属接触腐食を防止する方法を示す概略図である。図3は、本発明の実施の形態1における人孔内部の管路口近傍の拡大図である。図1〜3を参照して、本発明の実施の形態1における人孔内部の腐食防止方法を説明する。実施の形態1における人孔内部の腐食防止方法は、人孔内部の管路口を遮水部材で止水する工程と、人孔内部に少なくとも2以上の異なる金属からなる部材が配置される場合において、人孔内部の異なる金属からなる部材が接触する部分、およびイオン化傾向の相対的に小さい方の部材間、のうち少なくとも一方を縁切りする工程、および異なる金属からなる部材において、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材に、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材よりもイオン化傾向の大きい材料からなる擬餌電極を配置する工程のうちの少なくとも一方とを備えている。
【0028】
人孔は、電力ケーブルの引き入れ、接続を行なうために設けてられている。具体的には、図1(A)に示すように、人孔は、入口部11と、侵入部12と、人孔内部13とを有している。入口部11は、地上に向けて開口し、開閉部材(図示せず)により地上と地中とを区切る部分である。侵入部12は、地中に配置され、人孔内部13に通じる部分である。人孔内部13は、人孔内において地中における管路14と接続され、ケーブル15を収容している部分である。
【0029】
ケーブル15は、地中に埋設されており、詳細には管路14内部と、管路14と接続される人孔内部13とに連続して配置されている。
【0030】
図1(A)および図1(B)に示すように、人孔内部13には、支柱21と、支持架台22と、ケーブル支持部材23とを備えている。支柱21は、人孔内部13を支えている部材である。ケーブル支持部材23は、ケーブル15を保持している。支持架台22は、ケーブル支持部材23を支持している。
【0031】
詳細には、図2に示すように、実施の形態1における人孔内部13では、ケーブル15の周囲を取り囲むようにしてケーブル15を支持しているケーブル支持部材23が配置されている。そして、ケーブル15およびケーブル支持部材23を固定するために、ケーブル支持部材23は、ボルト24によって支柱21と接続されている支持架台22の上に固定されている。支柱21はコンクリートからなり、支持架台22およびボルト27は鉄からなり、ケーブル支持部材23はアルミニウムからなり、ボルト24はステンレスからなる。
【0032】
人孔内部13の腐食防止方法として、まず、図3に示すように、人孔内部13の管路口14aを遮水部材16で止水する工程を実施する。この工程では、人孔内部13において、人孔外部の地中に埋設されているケーブル15を保持する管路14から人孔内部13にケーブル15が接続される部分である管路口14aに、遮水部材16によりシールしている。これにより、人孔内部13に水が流入することを防止できる。遮水部材16は、たとえば発泡ウレタン、黄土、または止水金具などを用いることができる。
【0033】
止水する工程は、たとえば、ウォータマジック工法やブロックシート工法などにより行なうことができる。なお、ウォータマジック工法とは、ケーブル入線管路から漏水している箇所に、ウォータマジック(水と反応し、発泡・凝固したウレタン樹脂)を注入して止水する方法である。ブロックシート工法とは、ケーブル入線管路から漏水している箇所においてケーブルにブロックシート(水と反応してふくらむ部材)を巻くことにより止水する方法である。
【0034】
人孔内部13の腐食は、たとえば1または複数の部材において複数の金属からなり、複数の金属が接触する状態で同時に使用する場合に生じる。実施の形態1では、ケーブル支持部材23はアルミニウムからなり、支持架台22は鉄からなるため、イオン化傾向の相対的に小さい鉄とイオン化傾向の相対的に大きいアルミニウムとが接触している部分に、水が触れることにより腐食(異種金属接触腐食)が生じる。そのため、止水する工程を実施することにより、人孔内部13に外部から水が流入することを防止できると、水による電位の低い金属(実施の形態1ではアルミニウム)が腐食することを防止できる。すなわち、ケーブル保持部材23の腐食を防止できる。ケーブル保持部材23の腐食を抑制できると、ケーブル保持部材23の内部に配置されているケーブルを保護することができる。
【0035】
しかし、止水する工程により人孔内部13に外部から水が流入することをある程度防止できるが、完全に防止することはできない。一定の条件において、雨水や地下水が人孔内部13に流入する場合が発生する。この場合には、たとえば図1(A)に示すように、人孔内部13に水が滞留する。すると、ケーブル15を支持するケーブル支持部材23は、滞留する水により腐食が発生する。そのため、実施の形態1では、以下の工程を実施することにより、人孔内部13に水が流入した場合であっても人孔内部13に配置される部材の腐食を抑制している。
【0036】
人孔内部13に水が流入した場合の一の腐食防止方法として、人孔内部13の異なる金属からなる部材が接触する部分、およびイオン化傾向の相対的に大きい方の部材間のうち少なくとも一方を縁切りする工程を実施する。実施の形態1における縁切りする工程では、人孔内部13の異なる金属からなる部材が接触する部分を縁切りしている。具体的には、図2に示すように、支持架台22とケーブル支持部材23との接触する部分に絶縁部材25を配置している。絶縁部材25は、特に限定されないが、たとえばゴム製品やプラスチック製品などを用いている。
【0037】
実施の形態1における縁切りする工程では、ゴムからなる絶縁部材25を用いて、鉄からなる支持架台22とアルミニウムからなるケーブル支持部材23との間を縁切りしている。これにより、イオン化傾向の相対的に大きいアルミニウムと、イオン化傾向の相対的に小さい鉄との接触を絶つことができる。そのため、イオン化傾向の相対的に大きいケーブル支持部材23の腐食を抑制できる。すなわち、縁切りする工程を実施することによって、腐食する環境を遮断することができる。
【0038】
人孔内部13に水が流入した場合の他の腐食防止方法として、異なる金属からなる部材において、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材に、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材よりもイオン化傾向の大きい材料からなる擬餌電極26を配置する工程を実施する。実施の形態1における擬餌電極を配置する工程では、図2に示すように、擬餌電極26は、支持架台22においてケーブル支持部材23と接触する面22aと反対の面22bに配置され、ボルト24により固定されている。擬餌電極26は、粗悪アルミニウムからなる。擬餌電極26は、ボルト27と接続されていれば特にこの構成に限定されず、たとえばボルト27に取り付けるように、またはぶらさげるように配置すること(金属的に継がっている機能)もでき、リング形状や棒状態のような形状のものを用いることができる。
【0039】
実施の形態1における擬餌電極26を配置する工程では、ケーブル支持部材23の材料であるアルミニウムよりもイオン化傾向の高い粗悪アルミニウムからなる擬餌電極26を配置している。これにより、イオン化傾向の相対的に小さいアルミニウムからなるケーブル支持部材23よりも、イオン化傾向の相対的に大きい粗悪アルミニウムからなる擬餌電極26を先に腐食させることができる。そのため、ケーブ支持部材23の材質のイオン化傾向を相対的に小さくすることができる。すなわち、擬餌電極26を配置することによって、腐食環境を制御することができる。
【0040】
人孔内部13に水が流入した場合のさらに他の方法として、異なる金属からなる部材において、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材を、イオン化傾向の相対的に小さい方の材料からなる材料のイオン化傾向と実質的に同一の材料からなる部材に変更する工程を実施することが好ましい。実施の形態1における変更する工程では、アルミニウムからなるケーブル支持部材23を、たとえばステンレスからなるケーブル支持部材に変更している。変更する材料は、特にこれに限定されず、たとえばイオン化傾向が同一である材料に変更することもできる。
【0041】
実施の形態1では、ケーブル支持部材23は支持架台22の材質である鉄よりもイオン化傾向の大きいアルミニウムからなるので、人孔内部13に水が流入するとケーブル支持部材23は腐食してしまう。そのため、実施の形態1における変更する工程では、鉄と実質的に同一のイオン化傾向(または標準単極電位)であるステンレスに変更することによって、ケーブル支持部材23は腐食を抑制することができる。また、ステンレスは一般的に腐食に強いため、ケーブル支持部材23の材質をステンレスに変更することにより、ケーブル支持部材23により支持されるケーブルの損傷をより防ぐことができる。
【0042】
なお、ステンレスと鉄とは鉄の方がイオン化傾向が大きいため、鉄からなる支持架台22が腐食するおそれがあるが、鉄とステンレスとの電位差は、アルミニウムと鉄との電位差よりも小さいため、人孔内部13においてアルミニウムと鉄とを用いている場合よりも腐食を抑制できる。
【0043】
変更する工程は、人孔内部13に水が流入し、さらに水による腐食が生じた場合に、腐食が生じた部材を取り替える際に材質を上記のように変更した部材を取り付けることが、経済性・作業性の観点から好ましい。
【0044】
なお、実施の形態1における人孔内部13の腐食防止方法は、人孔内部13の管路口14aを遮水部材16で止水する工程と、人孔内部13に少なくとも2以上の異なる金属からなる部材が配置される場合において、人孔内部13の異なる金属からなる部材が接触する部分、およびイオン化傾向の相対的に小さい方の部材間、のうち少なくとも一方を縁切りする工程、および異なる金属からなる部材において、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材に、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材よりもイオン化傾向の大きい材料からなる擬餌電極26を配置する工程のうちの少なくとも一方とを備えていれば特に限定されない。人孔内部13の腐食防止方法として、止水工程と、縁切り工程と、擬餌電極26を配置する工程とを備えていることが人孔内部13の腐食防止方法の効果をさらに高めるため好ましい。さらには、異なる金属からなる部材において、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材を、イオン化傾向の相対的に小さい方の材料からなる材料のイオン化傾向と実質的に同一の材料からなる部材に変更する工程をさらに備えることが、人孔内部13の腐食防止方法の効果をさらに一層高めるため好ましい。
【0045】
以上説明したように、本発明の実施の形態1によれば、人孔内部13の管路口14aを遮水部材16で止水する工程と、人孔内部13に少なくとも2以上の異なる金属からなる部材が配置される場合において、人孔内部13の異なる金属からなる部材が接触する部分、およびイオン化傾向の相対的に小さい方の部材間のうち少なくとも一方を縁切りする工程とを備えている。止水する工程により、人孔内部13に水が流入することを防止できる。また、人孔内部13に水が流入した場合であっても、縁切りする工程により、異種金属接触腐食が発生する環境を遮断することにより、人孔内部13の腐食を抑制できる。
【0046】
また、本発明の実施の形態1によれば、人孔内部13の管路口14aを遮水部材16で止水する工程と、人孔内部13に少なくとも2以上の異なる金属からなる部材が配置される場合において、人孔内部13の異なる金属からなる部材において、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材に、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材よりもイオン化傾向の大きい材料からなる擬餌電極26を配置する工程を備えている。止水する工程により、人孔内部13に水が流入することを防止できる。また、人孔内部13に水が流入した場合であっても、擬餌電極26を配置する工程により、異種金属接触腐食が発生する環境を制御することにより、人孔内部の腐食を抑制できる。
【0047】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における人孔内部の異種金属接触腐食を防止する方法を示す概略図である。図4を参照して、本発明の実施の形態2における人孔内部の腐食を防止する方法について説明する。本発明の実施の形態2による人孔内部の異種金属接触腐食防止方法は、基本的には本発明の実施の形態1における人孔内部の異種金属接触腐食防止方法と同様の構成を備えるが、人孔内部における支柱の材質が異なることに伴う縁切りする工程において、図2に示した人孔内部の腐食防止方法と異なる。
【0048】
実施の形態2における人孔内部における支柱21は、鉄からなる。そのため、実施の形態2における縁切りする工程は、人孔内部13の異なる金属からなる部材が接触する部分、およびイオン化傾向の相対的に小さい方の部材間を縁切りする。これにより、人孔内部13の異種金属接触腐食を防止できる。
【0049】
具体的には、図4に示すように、支柱21と支持架台22との間に絶縁部材25aを、ケーブル支持部材23と支持架台22との間に絶縁部材25bを配置している。ケーブル支持部材23と支持架台22との間に配置された絶縁部材25bは、実施の形態1における縁切りする工程と同様であるため、その説明は繰り返さない。
【0050】
ケーブル支持部材23と支持架台22との間に配置された絶縁部材25bは、ケーブル支持部材23の材質であるアルミニウムよりもイオン化傾向の小さい鉄の面積を減らすために配置されている。すなわち、異なる金属からなる部材の接触面積を少なくするために、鉄からなる支柱21と鉄からなる支持架台22との接触する部分に絶縁部材25aを配置している。これにより、ケーブル支持部材23と接触する鉄からなる部材は、支持架台22のみとなり、支柱21の表面積の分の接触面積を減少できる。
【0051】
詳細には、異種金属接触腐食は、下記の式(1)による腐食速度で進行する。
P=P0(1+B/A) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(1)
なお、式(1)において、Pは、貴な金属に接触後の卑な金属の腐食速度、P0は、卑な金属の単独での腐食速度、Bは、貴な金属の表面積、Aは、卑な金属の表面積を示す。
【0052】
上記式(1)から、卑な金属(アルミニウム)からなるケーブル支持部材23が接触する貴な金属(鉄)からなる支柱21分の表面積を減少することにより、腐食速度を遅くすることができる。そのため、縁切り工程を実施することにより、人孔内部13の腐食を抑制することができる。
【0053】
その他の腐食防止方法については、実施の形態1と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0054】
以上説明したように、実施の形態2における腐食防止方法によれば、人孔内部13に少なくとも2以上の異なる金属からなる部材が配置される場合において、人孔内部13の異なる金属からなる部材が接触する部分、およびイオン化傾向の相対的に小さい方の部材間、のうち少なくとも一方を縁切りする工程を備えている。イオン化傾向の相対的に小さい方の部材間を縁切りすることにより、異種金属接触腐食速度を遅くすることができる。よって、人孔内部13の腐食を抑制することができる。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1における人孔を示し、(A)は概略断面図であり、(B)は概略上面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における異種金属接触腐食を防止する方法を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態1における人孔内部の管路口近傍の拡大図である。
【図4】本発明の実施の形態2における人孔内部における異種金属接触腐食を防止する方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0057】
11 入口部、12 侵入部、13 人孔内部、14 管路、14a 管路口、15 ケーブル、16 遮水部材、21 支柱、22 支持架台、22a,22b 面、23 ケーブル支持部材、24,27 ボルト、25,25a,25b 絶縁部材、26 擬餌電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人孔内部の管路口を遮水部材で止水する工程と、
前記人孔内部に少なくとも2以上の異なる金属からなる部材が配置される場合において、
前記異なる金属からなる部材同士が接触する部分、および前記異なる金属からなる部材のうちイオン化傾向の相対的に小さい方の部材の間、のうち少なくとも一方を縁切りする工程とを備える、人孔内部の腐食防止方法。
【請求項2】
前記異なる金属からなる部材において、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材に、前記イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材よりもイオン化傾向の大きい材料からなる擬餌電極を配置する工程をさらに備える、請求項1に記載の人孔内部の腐食防止方法。
【請求項3】
人孔内部の管路口を遮水部材で止水する工程と、
前記人孔内部に少なくとも2以上の異なる金属からなる部材が配置される場合において、
前記人孔内部の異なる金属からなる部材において、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材に、前記イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材よりもイオン化傾向の大きい材料からなる擬餌電極を配置する工程を備える、人孔内部の腐食防止方法。
【請求項4】
前記人孔内部の異なる金属からなる部材が接触する部分、およびイオン化傾向の相対的に小さい方の部材間、のうち少なくとも一方を縁切りする工程をさらに備える、請求項3に記載の人孔内部の腐食防止方法。
【請求項5】
前記異なる金属からなる部材において、イオン化傾向の相対的に大きい方の材料からなる部材を、イオン化傾向の相対的に小さい方の材料からなる材料のイオン化傾向と実質的に同一の材料からなる部材に変更する工程をさらに備える、請求項1〜4のいずれかに記載の人孔内部の腐食防止方法。
【請求項6】
支柱と、ケーブルを支持するケーブル支持部材と、前記ケーブル支持部材を支持する支持架台とを内部に配置する人孔であって、
人孔内部の管路口を遮水部材で止水する工程と、
前記人孔内部において、前記支柱と前記ケーブル支持部材との間、および前記ケーブル支持部材と前記支持架台との間の少なくとも一方を絶縁部材で縁切りする工程とを備える、人孔内部の腐食防止方法。
【請求項7】
前記支柱、前記ケーブル支持部材、および前記支持架台のうち、かつ最もイオン化傾向の大きい材料からなる部材が前記ケーブル支持部材であって、
前記ケーブル支持部材に前記ケーブル支持部材の材料よりもイオン化傾向の大きい材料からなる擬餌電極を配置する工程をさらに備える、請求項6に記載の人孔内部の腐食防止方法。
【請求項8】
前記ケーブル支持部材の材料を、前記支柱および前記支持架台の少なくとも一方の材料と同じ材料に変更する工程をさらに備える、請求項6または7に記載の人孔内部の腐食防止方法。
【請求項9】
前記ケーブル支持部材がアルミニウムからなる、請求項6〜8のいずれか1項に記載の人孔内部の腐食防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−205026(P2007−205026A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24722(P2006−24722)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】