説明

人工呼吸器のセンサを駆動する装置及び方法

人工呼吸器は、被験者に供給する気体に関連する圧力等の特性を監視するセンサを備える。センサ給電手段(100,130)は、ホイートストンブリッジ回路の形態でセンサに電力を供給する。ホイートストンブリッジ回路の第1の端部(104)は、第1正電圧源(112,140)に接続され、第2の端部(106)は、第2の正電圧源(118,156,180)に接続される。コンデンサ(120)は、ホイートストンブリッジ回路(102)の第2の端部に接続される。コントローラは(50)は、(a)第1の正電圧源によりホイートストンブリッジ回路の第1の端部に実質的に零電圧を印加すると共に、第2の正電圧源によりコンデンサの第2の端部に正電圧を印加することによりセンサを消勢し、(b)第1の正電圧源によりホイートストンブリッジ回路の第1の端部に正電圧を印加しかつ第2の正電圧源によりコンデンサの第2の端部に減少する電圧を印加することによりセンサを付勢するように、第1の正電圧源と第2の正電圧源とを制御する。

【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本願は、2004年9月3日に出願したスェーデン特許出願第0402119−2号に基づく優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、人工呼吸器に設けられる単一又は複数のセンサ、特に測定が必要になるまでセンサを消勢状態に保持し、測定が必要な場合に迅速かつ一時的にセンサを付勢状態に切り換えて測定を行うセンサシステムに電力を供給する技術に属する。
【背景技術】
【0003】
患者(被験者)の気道に酸素、空気又は他の呼吸用気体若しくは混合気体等の流体を供給する人工呼吸器、麻酔器、圧力支援装置又は他のシステムを利用して、患者自身の呼吸作用を増大し、補助し若しくは代用しかつ/又は圧力支援治療法で患者を治療することは周知である。このような状態を使用する重要性は、患者に供給する気体の圧力、流量及び/又は流量体積を正確に規制し又は制御する能力にある。これは、人工呼吸器の気体の圧力及び/又は流量等の人工呼吸器の動作要因(パラメータ)を正確に監視できることが要求される。この目的のため、用語「人工呼吸器」は、侵襲性か非侵襲性かを問わず単独で又は他のシステムと組み合わせてユーザの気道に気体流又は加圧気体を供給する全てのシステム又は装置を意味する。
【0004】
図1に示すように、従来の人工呼吸器20の呼吸関連構成要素は、空気等の第1の気体源30と、酸素等の第2の気体源32とを備える。第1の気体源30は、周辺の圧力より高い圧力で加圧された空気を供給する加圧型貯蔵タンク、送風機(ブロア)、送風器(ベロー)、圧縮機、換気扇、ピストン、圧力発生器等を通常備える。酸素源は、通常加圧型酸素貯蔵タンク、集中壁式酸素供給装置(通常病院に設置される)又は酸素濃縮装置である。要するに、第1及び第2の気体の供給源30,32は、例えば病院の集中気体供給装置により利用できる人工呼吸器、独立型気体供給装置又はこれらを組み合わせた装置を制御して作動される圧力発生器でよい。
【0005】
第1の弁34は、第1の気体(例えば、空気)の供給を制御し、第2の弁36は、第2の気体(例えば、酸素)の供給を制御する。個別に供給される気体は、通常混合要素又は蓄圧器を使用して、第1の弁34と第2の弁36の下流で混合された後に、患者回路の呼吸アームを通じて患者に供給される。混合気体流は、1次導管42を通じて人工呼吸器ハウジングに設けられた外部連結器に搬送される。可撓性の配気管又は患者回路(図示せず)は、患者の気道を外部接続装置に接続する。第1の弁34と第2の弁36は、弁に印加される電圧の関数でありかつ弁を流れる電流の方向に基づいて開放され又は閉鎖される通常の比例弁である。
【0006】
図示の従来の人工呼吸器は、第1の気体の流量を測定する第1の流量センサ44と、第2の気体の流量を測定する第2の流量センサ46とを備える。圧力センサ48は、患者回路を経て患者に供給される導管42内の気体の圧力を測定する。また、酸素濃度監視装置49は、患者に供給される気体中の酸素濃度を測定する。流量センサ44と46、圧力センサ48及び酸素濃度監視装置49の出力は、コントローラ50に付与される。通常の動作では、コントローラ50は、少なくともある換気モードで前記出力に含まれる情報を使用して、第1の弁34と第2の弁36及び/又は第1の気体源30及び/又は第2の気体源32の作動を制御することにより、患者に供給される気体の流量、流量体積及び/又は圧力を制御して、所望の酸素濃度の気体の所望の流量、圧力又は流量体積を患者に与えることができる。
【0007】
従来の人工呼吸器の呼気搬送装置は、患者回路の呼気アームに接続される呼気導管60を供える。従来の構成では、吸気アームと呼気アームは、患者の近くでY型連結器(図示せず)に接続される。呼気アームは、患者から人工呼吸器に戻る気体を搬送する。コントローラ50の制御により作動される呼気弁62は、導管60に接続されて導管60からの気体を大気中に放出する放出量を制御する。呼気用の導管60内の気体の圧力及び/又は流量を測定する圧力センサ64及び/又は流量センサ66等のセンサが設けられる。
【0008】
従来の人工呼吸器に伴い頻繁に発生する問題は、緊急時に患者に人工呼吸器を装着しなければならないとき、人工呼吸器の始動後一定時間の間、人工呼吸器の精度が低下する場合のある点である。動作性能が低下し又は機能が下がる期間は、処理を開始した後30分間継続する。この問題は、子供を換気する場合に特に重要であり、最悪の場合、不適切な流量及び/又は圧力で気体を患者に供給する換気のため、患者に障害を与えることがある。始動時に低性能又は低機能で人工換気装置が作動される一つの理由は、患者に供給される気体又は患者から受ける気体の流量に伴う1つ又はそれ以上の特性を監視するのに使用される圧力センサ、流量センサ、酸素濃度センサ、温度センサ等の人工呼吸器のセンサ要素に固有の関連特性が加熱されるためである。
【0009】
複数の弁が異なる所要電力を有し、同一の電圧レベル又は同一の電流レベルで作動しない流量調整器(弁)、センサ(圧力センサ、流量センサ、気体濃度センサ、温度センサ)、プロセッサ等多数の電子機器が従来の人工呼吸器に通常使用される。図2は、通常の12ボルト電力源を有する従来の人工呼吸器のブロック図である。図2の例に示すように、弁70と72は、±12ボルトで作動する。弁70,72は、例えば、図1に示す人工呼吸器に使用する単一又は複数の弁34、36及び62に相当する。弁70,72に電圧±12ボルトを印加するため、切替式(スイッチング)電圧変換器(コンバータ)74と76を使用して、12ボルトを+12ボルトと−12ボルトとの間の電圧を弁70,72に印加しなければならない。人工呼吸器の他の構成機器は、他の所要電力を有する。例えば、プロセッサ、即ちコントローラ50は、3.3ボルトの電圧レベルで作動する。電圧変換器78は、コントローラ50により使用できるように、12ボルトを3.3ボルトに変換する。この例では、センサ82と84は、±5ボルトの電圧で作動する。例えば、センサ82,84は、流量センサ44、46及び66、圧力センサ48及び64並びに酸素濃度監視センサ49等の人工呼吸器で使用されるセンサのいずれか1つに相当する。電圧変換器90と92は、電圧+12ボルトを+5ボルトに変換し、+5ボルトと−5ボルトの両方を前記センサに利用できるように、インバータ94と96とが設けられる。勿論、単一の電圧変換器と単一のインバータとを使用して、±5ボルトを供給してもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
人工呼吸器が多電圧を要求するとき、種々の電源の信号対ノイズ比を確実に許容可能な低レベルに保持する必要がある。切替変換器の構成機器が電源システム内に電圧スパイクと他の一過性ノイズを誘発する可能性のある迅速作動スイッチを備えるため、切替型変換器を使用する場合の環境では電源の信号対ノイズ比を確実に許容可能な低レベルに保持することは特に困難である。例えば、電源のノイズは、弁の制御に使用するパルス幅制御される信号に干渉し又はセンサにより供給される信号に干渉することがある。最悪の状況では、信号への干渉により患者への気体の供給を制御するのに使用さる人工呼吸器の弁に不測の作動又は不測の作動停止を生ずる可能性がある。
【0011】
多電圧を必要とする人工呼吸器の他の問題は、各電圧源が特定の許容範囲内にある正しい電圧を確実に発生していることを個別に検査しかつ監視しなければならない事実にある。不完全な電圧の供給が患者の健康に影響を与える場合に、電圧の検査と正確性は、医療装置では極めて重大である。多電圧を使用することが必要な場合の別の問題は、予め決められた不可欠の順序で人工呼吸器の種々の構成機器に対して、始動時に電力を供給し又は動作停止時にこれらの構成機器から電力を除去しなければならない。これは、電源投入時又は電源オフ時に構成機器に確実に損傷を与えないために必要である。人工呼吸器のどの電子機器に電力を供給し又はどの電子機器から電力を除去するかの順序を制御しかつ/監視する必要性は、人工呼吸器の設計に費用を要する上、操作が複雑化することが理解されよう。
【0012】
電圧の数を減らす一方法は、電圧数を減少するため特に設けられる交換可能な構成要素(モジュール)で人工呼吸器の内部からこれらの電圧を発生することである。例えば、負電圧を発生する場合に、複数の電源で誘導的に又は静電容量上有害な外乱を生ずる或るスイッチング形態の回路が必要となる場合もある。前記のように、前記の有害な外乱により人工呼吸器の種々の電子構成要素に印加される正確な電圧が劣化することがある。
そこで、本発明は、従来の人工呼吸器の欠陥を克服する人工呼吸器を提供することを一目的とする。
また、本発明は、従来のシステムに付随する欠陥のない方法を提供することを他の一目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施の形態では、患者に供給する気体に伴う特性を監視する圧力センサ又は流量センサ等のセンサを備える人工呼吸器を設けることにより前記目的を達成する。このセンサは、ホイートストンブリッジ回路の形態を構成し、ホイートストンブリッジ回路の第1の端部と第2の端部は、それぞれ第1の正電圧源と第2の正電圧源に接続される。ホイートストンブリッジ回路の第2の端部にコンデンサが接続される。コントローラは、(a)第1の正電圧源によりホイートストンブリッジ回路の第1の端部に実質的に零電圧を印加すると共に、第2の正電圧源によりコンデンサの第2の端部に正電圧を印加することによりセンサを消勢し、(b)第1の正電圧源によりホイートストンブリッジ回路の第1の端部に正電圧を印加しかつ第2の正電圧源によりコンデンサの第2の端部に減少する電圧を印加することによりセンサを付勢するように第1の正電圧源と第2の正電圧源とを制御する。
【0014】
前記装置と下記の過程を含む技術を使用する人工呼吸器に設けるセンサに電力を供給するシステム及び方法を提供することにより、前記目的を達成し、この技術は、ホイートストンブリッジ回路の第2の端部に接続される第1の端部を有するコンデンサを設ける過程と、(a)ホイートストンブリッジ回路の第1の端部にほぼ零電圧を印加し、(b)コンデンサの第2の端部に正電圧を印加することによりセンサを消勢する過程と、(a)ホイートストンブリッジ回路の第1の端部に正電圧を印加すると共に、(b)コンデンサの第2の端部に減少する電圧を印加することによりセンサを付勢する過程とを含む。
【0015】
本発明の前記目的及び他の目的、特徴及び特性、構造の関連要素の操作法及び機能、部品の組み合わせ並びに製造経済性は、参照符号により各図の対応する部分を示す添付図面に関する以下の説明、特許請求の範囲及び本明細書の全構成部分により明らかとなろう。しかしながら、図面は、図示及び説明の目的に過ぎず、発明の範囲を制限しないものであることは明確に理解できよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、人工呼吸器に使用される単一又は複数のセンサに電力を供給する装置及び方法に関連する。このように、本発明のセンサ電源システムは、前記従来の人工呼吸器及び図1及び図2に示すいずれの人工呼吸器にも使用することができる。そのようなものとして、人工呼吸器の種々の特徴を本発明に適用することができる。このように、センサ駆動装置の作動環境に関する人工呼吸器の詳細な説明は、簡略化のため省略する。本発明の電力供給装置が関連する人工呼吸器に使用されるセンサの例は、圧力センサ、流量センサ、温度センサ、湿度センサ(絶対湿度又は相対湿度)、酸素濃度センサ、又は二酸化炭素センサ及び人工呼吸器、麻酔機械及び患者の気道に気体流を供給する他の医療装置での使用に適する他の全てのセンサを含むが、これらのセンサに限定されない。
【0017】
多くのセンサをホイートストンブリッジ回路に使用することができる。通常の装置では、ホイートストンブリッジ回路の複数の端部に電圧源が横断して接続され、ホイートストンブリッジ回路の一端は、電圧源の正端子に接続され、他端は、電圧源の負端子に接続される。本発明は、負電力供給の必要性なく、ホイートストンブリッジ回路を横切って電力を供給する。
【0018】
本発明の原則によるセンサ機器100を図3について説明する。センサ機器100は、第1の端部104と第2の端部106を有するホイートストンブリッジ回路102を備える。抵抗R1とR2とを有する第1のアーム108は、第1の端部104と第2の端部106との間に接続される。検知抵抗Rxと抵抗R3とを有する第2のアーム110は、第1のアーム108に並列に第1の端部104と第2の端部106との間に接続される。第1の端部104は、第1の正電圧源112に接続される。抵抗R1〜R3の何れか又は抵抗の何れかの組み合わせは、センサがどのように設計するかに基づいてホイートストンブリッジ回路102内の検知要素として動作することもできる。
【0019】
ホイートストンブリッジ回路102の電圧平衡は、単一又は複数のセンサにより検出される媒介変数によって変化する。測定点114と116でこの電圧平衡を監視することができる。これらの測定点は、ホイートストンブリッジ回路102で最大の電圧降下を生ずるので、これらの測定点での電圧測定値を得るとき、測定信号を最大化することができる。しかしながら、測定点114と116間の電圧を測定すると、他の如何なる測定点にも検出されない信号を取り出すことができる。このように、この信号は、相対的な信号が必要な場合に最も有用である。検出信号が必要なとき、本発明は、グランドに対して測定点116の電圧を監視することを企図する。
【0020】
センサ機器100は、ホイートストンブリッジ102の第2の端部106に接続される第1の端部を有するコンデンサ120を備える。第2の正電圧源118は、コンデンサ120の第2の端部に接続される。第1の正電圧源112と第2の正電圧源118は、コントローラ50等の制御回路により制御されて、図4に示す電力をホイートストンブリッジ回路102に供給する。即ち、測定を行うときにのみホイートストンブリッジ回路102の第1の端部104と第2の端部とを通じて電力が供給されるように第1の正電圧源112と第2の正電圧源118がコントローラ50により制御される。それ以外の全時間では、ホイートストンブリッジ回路102に沿う電圧降下は発生しないから、測定点114又は116から信号は発生しない。図示の例示的実施の形態では、第1の正電圧源112と第2の正電圧源118は、制御された正出力を発生することができる演算増幅器(オペアンプ)である。最高出力は、オペアンプに設けられる電圧V+に相当し、最低出力は、零(0)ボルトに相当する。
【0021】
これは、時点t0で、第1の正電圧源112の出力を低レベルに保持して、図3に示す回路の測定点Aでの電圧VAを低レベル(0ボルト)に保持すると共に、第2の正電圧源118の出力を高レベルに保持するように第1の正電圧源112と第2の正電圧源118とを作動することにより達成される。これにより、コンデンサ120を充電するが、コンデンサ120が充電され、充電電流が停止すると、図3の回路の測定点Bの電圧VBは、低電圧(0ボルト)である。時刻t0がt1に進んだとき、コンデンサ120は、充電され、図3の回路の測定点Cの電圧も、低レベル(0ボルト)である。ホイートストンブリッジ回路102に沿う電圧降下がないので、測定値、即ちV114-V116又はV116-VGNDを取り出すことができない。
【0022】
時刻t1では、第2の正電圧源118の出力は、高電圧V+を発生するように制御される。このように、電圧VBは、V+となり、コンデンサ120は、時刻t1からt2までの間に電圧V+で充電される。電圧VBまでの高電圧を印加することにより、コンデンサ120は、正電圧で充電され、これと同時に、ホイートストンブリッジ回路102を通りコンデンサ120への電流が停止する。
【0023】
時刻t2では、第2の正電圧源118の出力は、コンデンサ120を流れる一定の電流は、センサ回路にも流れる。通常の電流は、1.5ミリアンペアである。これは、ホイートストンブリッジ回路102の第1の端部104に高電圧V+を印加するように第1の正電圧源112を制御し、第2の正電圧源118の出力電圧をグランドレベルに向かうように制御して、コンデンサ120に一定の電流が流れるように制御することにより達成される。換言すれば、測定点Bの電圧は、零ボルト値に向かって減少される。時刻t2からt3まで直線状(線形状)に傾斜して減少する電圧VBにより測定点Bの電圧を図4に示す。電圧VBを直線状傾斜形状で示すが、電圧の減少形状は、如何なる形状でもよく、また持続時間も制御可能であることは理解されよう。
【0024】
時刻t2でこれらの変化が発生するため、電圧VCは、負電圧V-となる。従って、時刻t2からt3までの時間にホイートストンブリッジ回路102を通じてV+からV-に変化する電圧が形成される。このように、センサ回路及びホイートストンブリッジ回路102には、正電圧と負電圧とが印加される。この時間の間に、電圧V114-V116又はV116-VGNDが測定される。この制御動作は、電圧VAが時刻t3に0ボルトに達するまで継続する。このように、ホイートストンブリッジ回路102は、測定される単位、例えば圧力を表示する出力信号を発生するので、センサは、時刻t2からt3までの時間に有効に付勢され、センサの出力が得られる。他の時間では、センサは、事実上完全に消勢される。
【0025】
前記説明から、コントローラ(50)は、(a)第1の正電圧源によりホイートストンブリッジ回路の第1の端部に実質的に零電圧を印加すると共に、第2の正電圧源によりコンデンサの第2の端部に正電圧を印加することによりセンサを消勢し、(b)第1の正電圧源によりホイートストンブリッジ回路の第1の端部に正電圧を印加しかつ第2の正電圧源によりコンデンサの第2の端部に減少する電圧を印加することによりセンサを付勢するように第1の正電圧源と第2の正電圧源とを制御することは理解できよう。
【0026】
コンデンサ120を経てホイートストンブリッジ回路102の第2の端部106に負電圧を印加する前記技術により、負電圧を供給する必要性を除去する。人工呼吸器の全電子パッケージを唯一の単一で固有の供給電圧で設計できるので、これは、重要な利点である。また、前記のように、この回路構成により、電源供給システムにノイズを誘発する傾向のある切替式電圧変換器の必要性を排除する。
【0027】
本発明の原理によるセンサ電力供給回路130の第2の実施の形態を図5に示す。センサ電力供給回路130は、図3の回路に全体的に類似し、同一の方法で駆動される。例えば、センサ電力供給回路130は、ホイートストンブリッジ回路102とコンデンサ120とを備える。しかしながら、本実施の形態では、第1のアームの中心点114とホイートストンブリッジ回路102の第1の端部104との間に帰還ライン140が接続される。帰還ライン140には演算増幅器142が接続される。帰還ライン140により、ホイートストンブリッジ回路102の第1の端部104は、第1のアームの中心をグランドに対して制御し、測定点114が事実上グランドレベルとなるようなレベルに設定する電圧で駆動される。
【0028】
センサ電力供給回路130は、またコンデンサ120の第1の端部とグランドに接続されるスイッチ152との間に接続される電流調整器150を備える。測定を行う際に、ホイートストンブリッジ回路102に一定の電流を供給する場合に、電流調整器150が付勢される。電流調整器150は、極めて高い出力インピーダンスを有するので、この電圧調整は、ホイートストンブリッジ回路102の第1のアームの中心、即ち測定点114での電圧に悪影響を与えない。
【0029】
センサ電力供給回路130が消勢されると、スイッチ152が開離して、電流調整器150は、消勢され、抵抗154を通じて電源156に電流が漏出し、回生される。この方法では、コンデンサ120の第1の端部に正電圧が印加される。
【0030】
ホイートストンブリッジ回路102の出力電圧は、測定点116に発生して、増幅回路160に印加される。この回路構成は、増幅回路160の出力164がグランドと比較され、校正して、単なる相対的測定値ではなく、監視される媒介変数の量的測定値を与える点で有利である。
【0031】
図6は、図5に示すセンサ電力供給回路130を実施する場合の更に詳細な電気回路図である。この実施の形態では、出力増幅器160内の利得を設定する圧力測定抵抗172を備える集積回路170としてホイートストンブリッジ回路102が設けられる。
【0032】
この実施の形態では、定電流回路180を設けて、ホイートストンブリッジ回路102に一定電流を供給する。センサ電力供給回路130が付勢されるとき、スイッチ152は、グランドに接続され、電流調整器150が付勢され、コンデンサ120に電流が流れて、ホイートストンブリッジ回路102は、測定点106に負電流を供給する。端子182を経て供給される信号は、演算増幅器184に供給される。この信号は、電流調整器150が消勢されるとき、演算増幅器184が高電圧レベルの出力を発生するか又は電流調整器が付勢されるとき、コンデンサ120に制御電圧が印加されるか否かを制御する。
【0033】
定電流回路180は、演算増幅器(オペアンプ)の技術分野で当業者に周知のハウランド(Howland)電流発生器である。信号ライン184が接続されないとき、電流調整器180は、電流調整器状態で作動している。信号ライン180がグランドに接続されると、増幅器184は、正固定出力電圧レベルにコンデンサ120の第2の端部を充電する正固定出力電圧を有する。
【0034】
本発明のセンサ電力供給法を使用して、測定時にのみセンサ回路に電力を供給するので、センサの内部加熱を回避し又は少なくとも加熱を最小化できる。センサを作動して、センサから信号を読み出すので、電子データ収集ユニットにより測定信号を同時に読み出しながら、1回に1つのセンサにのみ短時間、例えば数マイクロ秒間だけ電力を供給する。読み出すべきセンサに僅かに瞬間的に電力を付与することにより、温度ドリフト等のセンサの加熱による悪影響を最小化することができる。
【0035】
本明細書に記載する電源は、DC−DCコンバータ等の比較的大きなノイズ等を発生する電子構成要素を使用しないが、センサを付勢するときに、ホイートストンブリッジ回路に供給される電力にある程度の外乱若しくは雑音が発生し又は存在することもあり得る。例えば、患者に供給する気体流又は患者から受ける気体流を制御するのに使用する電磁弁に電圧パルスを供給する結果、電源システムにノイズが発生することがある。本発明は、センサで測定する目的に適ってセンサを付勢する順序又はパターンを制御することによりこのノイズの悪影響を軽減し減衰する手段を考慮する。例えば、本発明は、電力切替動作(スイッチング)による大きなノイズが発生する可能性があるときに、圧力センサを付勢しないように同期させて圧力センサを付勢しかつ複数の弁に電圧パルスを付与することを企図する。制御されるセンサ内の回転するプロペラの刃を通じて機関銃の発射を制御して、弁の作動に伴うノイズが最小状態のときにのみ測定を行うのと同様である。
【0036】
また、本発明は、制御システムが予め決められたパターンでセンサを付勢して、何らかのノイズが常に測定値に含ませることを企図する。従って、これらの外乱は、測定される信号内で一定となり測定システムにより除去し又は従来の方法を使用して補正し又は補償することができる。前記の技術を使用して測定システム内でノイズを最小化することにより、測定システムの大きな作動範囲(ダイナミックレンジ)を達成することができる。このように、信号対ノイズ比を向上することができる。
【0037】
最も実用的でかつ好適な実施の形態と現在考えるものに基づいて図示の目的で詳細に本発明を説明したが、図面は、詳細に説明する場合の単に図示の目的に過ぎず、本発明は、開示する実施の形態に限定されないのみならず、更に、特許請求の範囲及びその意図に包含される修正及び均等な装置を包含するものであることは理解されよう。例えば、本発明は、全ての実施の形態の単一又は複数の特徴を他の全ての実施の形態の単一又は複数の特徴と可能な範囲まで組み合わせられることを企図するものであることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来の人工呼吸器の例示的な実施例を示す略示ブロック図
【図2】従来の人工呼吸器の電源システムの略示ブロック図
【図3】本発明の原理によりホイートストンブリッジ回路を備えるセンサ回路の第1の実施の形態を示す略示ブロック回路図
【図4】電源回路の動作間に図3に示す回路の各部での電圧変化を示すタイムチャート
【図5】本発明の原理によりセンサ回路の第2の実施の形態を示す略示ブロック回路図
【図6】図5に示すセンサ回路の詳細な回路図
【符号の説明】
【0039】
20・・人工呼吸器、 30・・第1の気体源、 32・・第2の気体源、 34・・第1の弁、 36・・第2の弁、 42・・1次導管、 44・・第1の流量センサ、 46・・第2の流量センサ、 48・・圧力センサ、 49・・酸素濃度監視装置、 50・・コントローラ、 60・・導管、 62・・呼気弁、 64・・圧力センサ、 66・・流量センサ、 70,72・・弁、 74,76・・切替式電圧変換器、 78,90,92・・電圧変換器、 82,84・・センサ、 94,96・・インバータ、 100,130・・センサ給電手段、 102・・ホイートストンブリッジ回路、 104・・第1の端部、 106・・第2の端部、 108・・第1のアーム、 110・・第2のアーム、 112,140・・第1の正電圧源、 114,116・・測定点、 118,156,180・・第2の正電圧源、 120・・コンデンサ、 140・・帰還ライン、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に供給する気体に関連する特性を監視するセンサと、センサに電力を供給するセンサ給電手段(100,130)とを備え、
センサ給電手段は、第1の端部(104)、第2の端部(106)、第1の端部と第2の端部との間を接続する第1のアーム(108)及び第1のアームに並列に第1の端部と第2の端部との間を接続する第2のアーム(110)を有するホイートストンブリッジ回路(102)と、
ホイートストンブリッジ回路(102)の第1の端部に接続された第1の正電圧源(112,140)と、
ホイートストンブリッジ回路(102)の第2の端部に接続された第1の端部を有するコンデンサ(120)と、
コンデンサの第2の端部に接続された第2の正電圧源(118,156,180)とを備え、
(a)第1の正電圧源によりホイートストンブリッジ回路の第1の端部に実質的に零電圧を印加すると共に、第2の正電圧源によりコンデンサの第2の端部に正電圧を印加することによりセンサを消勢し、(b)第1の正電圧源によりホイートストンブリッジ回路の第1の端部に正電圧を印加しかつ第2の正電圧源によりコンデンサの第2の端部に減少する電圧を印加することによりセンサを付勢するように第1の正電圧源と第2の正電圧源とを制御するコントローラ(50)とを備えることを特徴とする被験者の気道に気体流を供給する人工呼吸器。
【請求項2】
ホイートストンブリッジ回路の第1のアームの中央と第1の端部との間に帰還ライン(140)を接続した請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項3】
ホイートストンブリッジ回路の第2のアームの中央から又はホイートストンブリッジ回路の第1のアームの中央と第2のアームの中央との間から出力信号(116)を取出す請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項4】
ホイートストンブリッジ回路の第2の端部とコンデンサの第1の端部との間に電流調整器を接続した請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項5】
コントローラは、センサを消勢状態に保持し、センサを使用して測定するときにのみセンサを付勢し、測定を行った後にセンサを消勢状態に戻す請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項6】
コントローラは、人工呼吸器の他の構成要素の作動に対する所定のパターンでセンサを付勢する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項7】
センサは、圧力センサ、流量センサ、温度センサ、湿度センサ又は気体濃度センサである請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項8】
気体流を制御する複数の弁を備え、コントローラは、所定のパターンで弁を作動する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項9】
人工呼吸器のセンサに電力を供給する方法において、
人工呼吸器は、被験者に気体流を供給し、センサは、被験者への気体の供給に付随する特性を監視し、電力供給は、センサに電力を供給し、センサ給電手段は、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間を接続する第1のアームと、第1のアームに並列に第1の端部と第2の端部との間を接続する第2のアームとを有するホイートストンブリッジ回路を備え、前記方法は、
コンデンサの第1の端部をホイートストンブリッジ回路の第2の端部に接続する過程と、
(a)ホイートストンブリッジ回路の第1の端部に実質的に零電圧を印加すると共に、(b)コンデンサの第2の端部に正電圧を印加することによりセンサを消勢する過程と、
(a)ホイートストンブリッジ回路の第1の端部に正電圧を印加すると共に、(b)コンデンサの第2の端部に減少する電圧を印加することによりセンサを付勢することを特徴とする電力供給方法。
【請求項10】
付勢されるセンサに対応して、センサから測定値を取出す過程を含む請求項9に記載の電力供給方法。
【請求項11】
測定は、圧力測定、流量測定、温度測定、湿度測定又は気体濃度測定である請求項10に記載の電力供給方法。
【請求項12】
センサは、センサを使用して測定値を取り出すときにのみ付勢され、それ以外は、センサは、消勢される請求項9に記載の電力供給方法。
【請求項13】
センサは、所定のパターンで付勢される請求項9に記載の電力供給方法。
【請求項14】
所定のパターンで複数の弁を作動することにより気体流を制御する過程を含む請求項9に記載の電力供給方法。
【請求項15】
第1のアームの中央とホイートストンブリッジ回路の第1の端部との間を帰還ラインで接続する過程を含む請求項9に記載の電力供給方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−511357(P2008−511357A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528779(P2007−528779)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009437
【国際公開番号】WO2006/024531
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(505338497)アールアイシー・インベストメンツ・エルエルシー (81)