説明

人工呼吸器の気体流制御法

使用者の気道に気体流を供給する人工呼吸器又は気体流供給装置。人工呼吸器は、気体供給源(30,32)と、患者の気道に気体流を供給する導管(63,65,42)と、気体流の圧力、流量又は流量容量を制御する第1の弁(38,40)と、弁と患者との間の導管に動作連結されかつ導管内の気体の圧力を監視する圧力センサ(46)と、圧力センサの出力に基づいて弁を制御する制御部(50)とを備える。人工呼吸器は、圧力センサと患者との間の導管内に設けられる流量制限器(62)を更に備える。流量制限器は、流体供給装置を本質的に分割して、弁と流量制限器との間の導管に第1の容量を形成すると共に、患者と流量制限器との間の導管に第2の容量を形成し、第1の容量は、第2の容量未満である。制御装置は、第1の容量に対して、患者に供給される気体の圧力、流量又は流量容量を制御することにより、圧力、流量又は流量容量の正確で、迅速かつ安定した制御を達成できる。

【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
本特許出願は、2004年9月3日に出願したスウェーデン特許出願第0402120−0号に基づく優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、使用者(患者、被験者)の気道に気体流を供給するのに適する人工呼吸器、特に、吸気間の圧力制御を改善できる人工呼吸器に関する。
【背景技術】
【0003】
人工呼吸器、麻酔装置又は圧力支援装置を利用して、酸素、空気若しくは他の呼吸用気体又は混合気体等の流体を患者の気道に供給し、患者自身の換気動作を増大させ、補充し又は代替させかつ/又は患者を圧力支持療法で治療することは、周知である。前記の状態では、呼吸周期の吸気段階に患者に供給される気体を正確に調整するか又は圧力、流量及び/若しくは流量体積を制御する性能が重要である。用語「人工呼吸器」は、使用者の気道に気体流又は加圧気体を供給するあらゆる装置又は器具を指称する。
【0004】
図1は、従来の人工呼吸器の吸気支援装置である。吸気支援装置は、空気等の第1の気体の供給源30及び酸素等の第2の気体の供給源32を備える。第1の気体の供給源30は、通常、加圧貯蔵タンク、送風装置(ブロワ)、送風器(ベローズ)、回転翼(インペラ)、扇風機、ピストン、圧力発生器又は周囲圧力を超える圧力に加圧された空気を供給する同様の装置を備える。酸素の供給源32は、通常、加圧酸素貯蔵タンク、主要な壁式酸素供給装置(通常病院に設置される)又は酸素濃縮装置である。要するに、第1及び第2の気体の供給源30,32は、例えば、病院の集中気体供給装置により利用できる人工呼吸器、独立型気体供給装置又はこれらの組み合わせを制御して作動される圧力発生器でよい。
【0005】
図1の実施の形態では、第1の弁34は、第1の気体と第2の気体との混合を制御し、第2の弁36は、矢印Aに示すように、患者に供給される混合気体の圧力及び/又は流量を制御する。第1及び第2の弁34,36は、多数の型式で市販される通常型比例弁である。比例弁は、通常、電磁石、ゴムにより通常形成される薄膜及び弁座を備える。弁の開弁量又は開弁率は、電磁石に流れる電流により決定される。得られる気体流は、電流にほぼ比例する。
【0006】
人工呼吸器の他の従来の吸気支援装置を図2に示す。本実施の形態では、弁38,40は、第1の気体(例えば、空気)の供給と第2の気体(例えば、酸素)の供給とを個別に制御する。通常、混合装置又は蓄圧器(アキュムレータ)を使用して、個別に供給される気体を弁の下流で混合した後、患者に供給する。各実施の形態では、混合された気体流は、主要導管42を通じて人工呼吸器のハウジングに設けられる外部連結部に搬送される。可撓性ホース又は患者回路(図示せず)は、外部連結部と患者の気道とを連結する。
【0007】
従来の人工呼吸器は、通常、患者回路を通じて患者に供給される気体の流量及び圧力をそれぞれ測定する流量センサ44及び圧力センサ46を備える。流量センサ44及び圧力センサ46からの出力信号は、制御部50に付与され、これらの出力信号の情報を使用して、患者に供給する気体の流量、流量体積及び/又は圧力を制御する換気法もある。例えば、処理装置は、この情報を使用して、弁34,36,38又は40の駆動を制御し、所望の流量、圧力又は流量体積に患者への気体を制御する。
【特許文献1】米国特許第5,400,777号公報
【特許文献2】米国特許第5,265,594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
「閉回路」又は帰還型構造で流量センサ44及び/又は圧力センサ46を使用して、患者に供給される気体の流量、流量体積又は圧力が制御される。即ち、センサ44,46からの出力信号を制御部50に付与し、制御部50は、出力信号としてセンサ44,46により測定される実際の流量、圧力又は流量体積を設定される又は所望の数値と比較する。その後、制御部50は、弁38,40を制御して、測定値と目標値との誤差を減少させる。通常、制御部50は、測定値を目標値と比較し、比較結果に基いて弁38,40を制御する比例積分(PI)制御部又は比例積分微分(PID)制御部を備える。圧力又は流量体積の制御に前記制御技術を使用する従来の人工呼吸器は、例えば、上記特許文献1及び特許文献2に開示される。後に詳述するが、圧力/流量/流量体積を制御する従来技術の欠陥は、前記技術を使用して、気体の圧力、流量又は流量体積を迅速に、正確にかつ高度の安定性で調整できる制御装置を提供できない点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の目的は、従来の人工呼吸器の欠点を解決する人工呼吸器を提供することである。気体供給源と、患者の気道に気体流を供給する導管と、気体流の圧力、流量又は流量体積を制御する第1の弁と、弁と患者との間の導管に動作連結されて導管の気体流の圧力を監視する圧力センサと、圧力センサの出力に基づいて弁を制御する制御部とを備える人工呼吸器を提供する本発明の一実施の形態により、前記目的が達成される。人工呼吸器は、圧力センサと患者との間の導管に設けられる流量制限器(絞り弁、リストリクタ)を更に備える。本質的には、流量制限器は、弁と流量制限器との間の導管に第1の体積を形成すると共に、患者と流量制限器との間の導管に患者の呼吸気体体積を含む第2の体積を形成し、第1の体積が第2の体積未満となるように流体供給装置を分割する。制御装置は、第1の体積への圧力、流量又は流量体積を制御して、患者に供給される気体の圧力、流量又は流量体積の正確、迅速かつ安定な制御を達成する。
【0010】
参照符号により各図の対応する部分を示す添付図面に関する以下の説明、特許請求の範囲及び本明細書の全構成部分により、本発明の前記目的及び他の目的、特徴及び特性、構造の関連要素の操作法及び機能、部品の組み合わせ並びに製造経済性は、明らかとなろう。しかしながら、図面は、図示及び説明の目的に過ぎず、発明の範囲を制限しないものであることは、明確に理解できよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図3は、本発明の原理による人工呼吸器60の第1の実施の形態の概略図である。人工呼吸器の呼吸周期の吸気段階に患者に気体流を供給する吸気支援装置のみを図3が示す点に留意すべきである。呼気装置は、省略する。持続気道陽圧(CPAP)装置又は2段階(バイレベル)装置等の圧力支援装置を人工呼吸器60に使用できることを本発明が企図する点を更に理解すべきである。圧力支援装置は、単一アーム装置である。排気口は、呼気アームではなく、患者又はその付近の吸気アームに設けられる。圧力支援装置は、呼気に関連する部材を備えない。
【0012】
本発明の人工呼吸器が多くの点で従来の人工呼吸器に類似することは、図1及び図3での検討から理解できよう。主相違点は、人工呼吸器60が圧力/流量制御弁36の下流で導管42に設けられる流量制限器(レストリクタ)62を備えることである。従って、第1の気体の供給源30は、加圧貯蔵タンク、送風装置、送風器、回転翼、扇風機、ピストン、圧力発生器、圧縮装置又は周辺の圧力を超える圧力で気体を供給できるあらゆる装置を備える。送風器、ピストン、圧縮装置、送風装置等を第1の気体の供給源30に使用するときに、第1の気体の供給源30は、通常人工呼吸器60と一体であり、人工呼吸器ハウジング内に配置される。第1の気体の供給源30が病院の壁式酸素供給装置のときに、本発明は、通常の人工呼吸器60の外部に第1の気体の供給源30を配置することも企図する。人工呼吸器60の外部に第1の気体の供給源30を配置するとき、人工呼吸器60に気体流を導入する入力連結部が人工呼吸器60に設けられる。酸素等の第2の気体の供給源32は、通常、加圧酸素貯蔵タンク、壁式酸素供給装置、酸素濃縮装置又は補充気体を供給できるあらゆる装置である。
【0013】
本発明は、人工呼吸器60に通常設けられる装置、部材、ソフトウェア及び通信リンク等を本発明の人工呼吸器60に設けることを企図する。人工呼吸器60に通常使用される装置の例は、加湿機、噴霧器及び濾過器等である。図示しないが、使用者が手動で人工呼吸器60を設定しかつ/又は制御できる使用者界面装置を設けてもよい。キーパッド、タッチスクリーン、摘み、目盛盤若しくはその他の形式で使用者界面装置の制御装置を人工呼吸器60に直接設け又は人工呼吸器60から遠隔して配置した使用者界面装置の制御装置を配線接続若しくは無線通信接続により接続して、制御装置から人工呼吸器60を設定しかつ/又は制御してもよい。
【0014】
従来の換気装置の圧力/流量体積/流量の制御法を最初に説明して、流量制限器62の機能を十分に理解する必要がある。図5に示すように、圧力/流量制御弁36の下流に容量(体積)VAとして示す比較的大きな物理的容積が存在する。容量VAは、人工呼吸器60内の複数の導管と、人工呼吸器60の外部連結部に接続される可撓性の患者回路と、口、上部気道、気管及び肺を含む患者の気道に患者回路を接続する患者界面装置との容量(体積)を含む。従来の人工呼吸器では、この比較的大きな容量VAは、圧力センサ46により監視される。制御部50及び制御弁36を備える制御装置は、監視する媒介変数(パラメータ)に基づいて制御装置を正確に制御するように作動される。例えば、10cmH2Oの目標圧力の気体流が患者に供給される場合、圧力センサ46は、実際の圧力を測定し、制御装置は、制御弁36を調整して、その目標圧力で気体流を給付するように作動される。
【0015】
しかしながら、固有の不安定性を生ずる比較的大きな容量を制御装置が制御するため、この種の制御装置では、実効圧力の調整が困難である。例えば、大容量の流体では、流体の容量が大きいほど、圧力変化の伝達時間が長くなる圧力伝達時間特性のため、圧力制御性能が悪化する。換言すれば、制御装置により制御する容量が大きい程、制御装置は、より緩慢に圧力変化に対応する。また、制御弁36による圧力変更性能を変化させて、換気装置全体に影響を及ぼす内部抵抗と容量とを患者回路(患者管)及び患者自身が備えている。管及び患者の呼吸器官は、弾性(エラスタンス)と称する一定の固有可撓性も備えるため、圧力変化により容量が膨張し又は収縮して、制御装置での容量が変化する。制御部50により圧力が増加し又は減少する際の容量変動により、制御装置がその容量を特定の圧力レベルに正確に制御することが困難になることは、理解できよう。また、流体自体は、圧縮性である。流体の圧縮性は、制御弁36と圧電変換器(圧力センサ46)との間に発生する圧力変動の低周波数成分のみを通過させる濾波作用を生じる。このように、圧電変換器(圧力センサ)46により測定して発生する信号を使用して、制御装置により、正確、迅速かつ安定に圧力を制御することは困難である。
【0016】
図6に示すように、現実には、容量VAは、流量制限器62により、2つの小さな容量VB及び容量VCに分割される。圧力センサ46は、制御弁36に近い小さい容量VBの圧力を測定し、制御装置(制御部50及び制御弁36を備える)は、小さい容量VBの圧力を制御する。本発明の例示的な実施の形態では、容量VCは、容量VBの少なくとも2倍である。しかしながら、本発明は、容量VCが容量VBの10倍又はそれ以上でもよいことを企図する。制御装置は、容量VBの圧力を制御する。容量VBは、例えば、流量抵抗が小さく、内部弾性(エラスタンス)が低く、加速する気体質量が小さくかつ含まれる流体容量が比較的小さい等、固有不安定性の低い比較的小さい容量であるから、制御装置は、容量VAより安定、正確かつ迅速に容量VBの圧力を良好に制御することができる。このように、小さな容量の圧力を容易かつ正確に制御装置が制御するように、流量制限器62は、大きな容量から圧力制御閉回路を部分的に分離する。
【0017】
容量VBとVCとの間は、流量制限器62により流体接続される。従って、僅かな時差又は遅延で、容量VBへの圧力制御を容量VCに伝播させることができる。しかしながら、流量制限器62の大きさを適宜選択して、遅延を最小限に抑制し、容量VBとVCとに有効な個別の容量を更に与えながら、制御装置を所望の精度で動作させることは、当業者に理解されよう。例えば、最大分時容量(呼吸に消費される1分間の空気量)等の予め決められた特定気体容量で患者の適切な換気に十分な気体流が流量制限器62を通るように流量制限器62を構成できることも留意すべきである。本発明の例示的な実施の形態では、流量制限器62により生ずる流量制限は、制御弁36から患者までの導管に沿う流量抵抗の少なくとも2倍大きい。
【0018】
圧力/流量制御弁36の下流で気体流量を意図的に制限することは、従来の人工呼吸器本来の機能から直観では理解し難いであろう。圧力制御部(弁)と患者との間に最小量の圧力降下を発生させるように、可能な限り小さい流量抵抗で既存の弁を通る気体流を患者に供給するのが従来の知見である。従来の人工呼吸器では、弁の下流の流量を制限することは、適切に気体流を患者に供給する性能に悪影響を与える。
【0019】
本発明の例示的な実施の形態では、予め決められた圧力流量曲線を生ずるように流量制限器62が構成される。この圧力流量曲線は、例えば、線形又は非線形等の様々な形状のいずれか1つでよい。本発明は、所望の圧力流量曲線を生ずる流量制限器62の様々な形態を企図する。流量制限器62は、例えば、導管42の流路中に配置される網部材、篩部材、濾膜又は空気力学的に形成される単一若しくは複数の固定部材である。流量制限器62は、開口部又は形状を変形させて、圧力又は流量を変更する開閉弁、薄板又は羽根等の1つ又は2つ以上の可動部材を備える。本発明は、導管42に流量制限器62を着脱可能に取り付けて、異なる範疇の患者に異なる寸法、形状又は構造の流量制限器62を選択することも企図する。これにより、流量制限器62を容易に清浄することができる。また、手動で又は自動的に流量制限率を制御するように、調節可能な流量制限構造を流量制限器62に設けることもできる。例えば、本発明は、制御装置及び/又は患者を監視する状態に基づき、制御部50が流量制限器62による制限量を調整して、適切な制限量を付与して、前記の複数の対象の調和を図ることを企図する。
【0020】
更なる例示的な実施の形態では、流量制限器62による流量制限を可変にして、容量VBとVCとの間の液体接続量を力学的に調整し、例えば、低い分時容量には流量制限を最大値に調整して、可能な限り迅速に容量VCでの圧力を制御することができる。これは、高精度で迅速に圧力を制御して、小さな分時容量を制御する可能性のある児童又は新生児の換気に特に好都合である。同様に、大きい分時換気量が必要なとき、未だ流量を制限する状態であるが、人工呼吸器60の吸気部から瞬間的な高流量を発生するように、流量制限を解除することができる。例えば、ネット又は空気力学的に形成される部材を着脱自在に流路に挿入できるように、種々の方法で、流量制限器62の前記可変流量制御機能を実施することができる。
【0021】
図3に示す実施の形態では、容量VBは、弁34と流量制限器62との間の管、導管及び他の中空部材の容量に相当する。本発明は、容量VBが圧力を制御する目的に適うように、例えば、弁34と流量制限器62との間の導管42に空気室を連結して容量を追加することも企図する。
【0022】
本発明は、可変容量の容量VBも企図する。例えば、ピストン、折り畳み式管又は選択的に容量を変更する他のあらゆる装置を容量VBに連結(例えば、弁34と流量制限器62との間の導管42に調節可能な容量を連結)して、容量VBを調節しかつ制御することができる。例えば、容量VBとVCとの間に特定の比率を保持することが望ましい場合に、これは有効である。
【0023】
本発明の原理による人工呼吸器30'の第2の実施の形態を図4に略示する。本実施の形態では、図2に示す従来の人工呼吸器と同様に、気体流路63を通じて第1の供給源30から供給される第1の気体流と、気体流路65を通じて第2の供給源32から供給される第2の気体流とを制御する2つの弁38,40が設けられる。矢印B及びCにより図示する2つの気体流は、合流して使用者に供給される気体流Aを形成する。この実施の形態では、気体流路に配置される流量センサ64,66は、混合前の各気体流の方向及び/又は流速を監視する。前記のように、弁64,66の下流に流量制限器62が設けられ、弁64,66と流量制限器62との間の気体流路に圧力センサ46が設けられる。
【0024】
図示しないが、本発明は、換気装置の制御を微調整する複数の他のセンサを換気装置に設けることを企図する。例えば、患者回路に沿って設ける圧力センサ46により患者回路に沿う特定の位置で圧力を監視してもよい。圧力センサ46は、圧力降下の動的特徴を測定して圧力調整器を補正し、より正確な圧力調整を達成するのに有効である。本発明は、患者の気道、その付近又はその内部に圧力センサを配置して、患者が体験する実際の圧力の正確な測定値を取得することも企図する。また、この気道圧力を使用して、圧力制御装置をより良好に制御することができる。
【0025】
本発明は、流量制限器62の下流に任意で一方向型逆止弁68を設けることも企図する。逆止弁68は、患者への気体流Aの流れを許容するが、気体流の逆流を防止する。逆止弁68により、その下流に発生する圧力振動/流量振動が逆止弁68の上流の制御装置に与える影響を阻止するか又は最小化する。
【0026】
本発明は、導管を通過する気体流を測定し又は単に監視のみに使用するのに適する如何なる流量センサ64,66でもよいことを企図する。流量を測定する通常の技術は、管容器型又は細密網目ネット型の流量制限器を使用して、気体流路に沿う圧力降下を発生させることである。差圧センサ(差圧電変換器)46は、流量制限器62に沿う圧力降下を測定する。差圧センサ46からの出力信号は、気体流路での流量測定値である。管容器型流量制限器は、圧力と流量との間の良好な線形流量特性を有するが、大きい容量を必要する。細密網目ネット型流量制限器は、線形流量特性に劣るが、それ自体の容量が小さい。広流量範囲にわたる良好な線形流量特性を得るには、比較的大きいネット面が必要となる。円形流路の断面に配置されるネットに良好な線形流量特性を要求すれば、ネットは、大きい容量になる。
【0027】
図7〜図9に示すように、本発明は、弁38,40、流量センサ64,66、流量制限器62及び関連する導管の構成要素を空動ブロック100内で組み合わせることも企図する。例示的な図示の実施の形態では、空動ブロック100は、いわゆる「サンドイッチ技術」により構成される3つのブロック部材102,104,106を備える。ガスケット107は、ブロック部材102とブロック部材104との間に配置される。ブロック部材102,104内に形成される空洞部は、弁38,40から流量制限器62までの気体流路63,65を形成し、また、この空洞部は、空動ブロック100により形成され又は空動ブロック100内に収容される。気体供給源30等の第1のガス供給源は、第1の入口108に連結され、気体供給源32等の第2のガス供給源は、第2の入口110に連結される。第1の入口108内の第1の通路112は、第1の弁38に気体を伝達し、第2の入口110内の第2の通路114は、第2の弁40に気体を伝達する。
【0028】
第1の弁38及び第2の弁40からの気体流は、一対の流量制限網部材又は篩部材120,122により形成される流量制限器118に搬送される。後述のように、流量制限器118は、気体流量を測定する圧力降下を気体流路に沿って形成する。図示の実施の形態では、篩部材120及び122は、ブロック部材102の橋脚部材124とガスケット107に形成される横断材126との間に挟持される。多数の微細な網目を有する網部材の単一又は複数の層により形成される流量制限器118の効果は、流量制限器118の占有容量が最小になる点である。気体流B及びCは、個別に篩部材120,122を通過した後、合流して気体流Aとなり、排出口129を通じて空動ブロック100から排出される。
【0029】
図9に図示しないが、圧力センサ46は、第1の弁38及び第2の弁40と流量制限器62との間に形成される空洞部128内の気体流路42に動作接続される。従って、空洞部128は、前記容量VBに相当する。前記のように、本発明は、圧力制御閉回路内に形成される容量の所望の大きさに応じて、空洞部128をより大きく又はより小さく形成することを企図する。第1の弁38及び第2の弁40と流量制限器62との間に形成される気体の容量VBを増大する必要があるとき、例えば、空洞部128に選択的に連絡する第2の容量を有する第2の空洞部を形成して、前記のように、空洞部128の容量を可変に形成することができる。
【0030】
回路基板130は、空動ブロック100にも配置される。差圧センサである流量センサ64,66は、回路基板130上に設けられる。回路基板130上に設けられ接続端子132は、外部の制御部50に接続される。圧力センサ、即ち流量センサ64,66の複数の接続口は、それぞれ導管132a,132bを通じて流量制限器62の上流側に接続されると共に、導管134a,134bを通じて流量制限器62の下流側に接続される。従って、流量制限器118は、流量検出に必要な圧力降下を形成し、流量センサ64,66からの出力信号は、各気体流の測定値となる。流量制限器118は、比較的大きな網部材であるが、大きな流量は、流量センサ64,66からの出力信号に非線形流量特性を与える。この非線形流量特性は、測定装置の電子回路ユニット、即ち、制御部50により、調整されかつ補正される。
【0031】
本発明が他の構造の流量制限器118も企図することは、理解すべきである。例えば、一方の流量検出器を気体流路63に配置して、圧力採取点132a,134aの間に圧力降下を発生し、他方の流量検出器を気体流路65に配置して、圧力採取点132b,134bの間に圧力降下を発生することができる。前記流量検出器は、あらゆる従来の形態を有するものでよい。例えば、圧力降下を発生する幅狭部又は先細部を気体流路63及び/又は気体流路65に設けてもよい。
【0032】
本発明は、第1の弁38と流量制限器118との間の流路に第1の温度センサ140を配置し、第2の弁40と流量制限器118との間の流路に第2の温度センサ142を配置することを更に企図する。温度センサ140,142は、弁38,40から外へ流れる気体の温度を測定する。例えば、外気温度、患者の肺温度又は21℃等の任意の固定温度等の所望温度に関連付けて、温度センサ140, 142の出力信号により、気体容量値を補正することができる。温度センサ140,142は、サーミスタ、熱電温度計又は内蔵型シリコンセンサ等のあらゆる適切な温度測定装置である。
【0033】
前記のように、本発明は、空洞部128の下流でかつ圧力センサ46の測定点の背後に流量制限器62を配置することも企図する。図示の実施の形態では、空洞部128から出口129までの気体流路の断面積が先細になるように、流量制限器62が構成される。本発明は、気体流路に篩部材、網部材、スクリーン又は他の流量制限器を単独で又は気体流路の先細り断面と組み合わせて配置することにより、流量制限構造を形成することも企図する。更に、流量制限器62による第2の流量制限は、第1の気体流Bと第2の気体流Cとの混合を増進させる。
【0034】
上記のように、第1の弁38と第2の弁40の各出口は、最低限の容量で接続される対応する流量センサ64,66を有する。流量センサ64,66は、第1の弁38と第2の弁40の各々の流量調節装置への入力信号を発生する。第1の弁38と第2の弁40の出口は、その後、小型でかつ共通の空洞部128に接続される。圧力センサ46は、空洞部128に接続され、比較的小さい容量を有する圧力制御装置内の圧力測定点を形成する。この実施の形態では、比較的短い気体流路を有する空動ブロック100が設けられる。その結果、2つの第1の弁38と第2の弁40とを組み合わせて使用しても、空動管路を小容量に形成すると共に、第1の弁38と第2の弁40の高速安定制御を達成できる。
【0035】
入口108,110の圧力を監視する圧力センサ160,162を回路基板130に配置して、導管164,166を通じてそれぞれ第1の通路112と第2の通路114の入口108,110に流体接続してもよい。第1の弁38と第2の弁40の圧力/流量特性の補正に入口108,110の圧力値を使用することができる。換言すれば、第1の弁38と第2の弁40から排出される気体流量は、入口108,110での圧力に依存する。入口108,110の圧力を監視する圧力センサ160,162の出力信号を利用して、第1の弁38と第2の弁40からの気体排出量を厳密に維持することができる。
【0036】
電磁弁38,40の動作を制御する技術を図10A〜図10Cについて以下説明する。図10A〜図10Cは、複数の第1の弁38と第2の弁40の一方のみの動作を制御する概略回路図の第1の実施の形態を示すことに留意すべきである。従って、例えば、第1の弁38と第2の弁40の各々に図10Aに示す回路を設けることができる。
【0037】
本発明は、第1の弁38と第2の弁40の定格電圧より高い電圧のパルス幅変調電圧を使用して、第1の弁38と第2の弁40とを駆動して、第1の弁38と第2の弁40の開弁に要する時間を減少することを企図する。前記方法では、第1の弁38と第2の弁40とを流れる所望電流が迅速に発生する。よって、高電圧により、第1の弁38と第2の弁40とに流れる電流が所期値に急激に増大する。その後、電圧は、パルス幅変調信号となり、電流は、所望の設定数値となる。電圧パルスのオフ間に、環流ダイオード(フリーホイールダイオード)が第1の弁38又は第2の弁40に接続される。電圧パルスのオフ間に、環流ダイオードは、第1の弁38又は第2の弁40を流れる弁電流として、電磁弁の電磁石に蓄積されたエネルギを循環させる。このように、高い電力効率が達成される第1の弁38又は第2の弁40を迅速に閉弁する必要があるとき、第1の弁38又は第2の弁40の電磁石に蓄積されたエネルギを除去しなければならない。通常の電圧パルスに対して逆極性を有する電圧源に直列に環流ダイオードを接続することにより、蓄積されたエネルギを除去することができる。この駆動形態は、電流の設定値によるパルス幅変調でも同様に達成できる。
【0038】
前記方法に適する回路170は、電源VとコンデンサCとの接続点に接続される2つの能動スイッチSA,SB及び2つのダイオードDA,DBを備えるH型ブリッジ回路である。図10A〜図10Cは、回路170の種々の動作状態を示す。スイッチSA,SBは、制御部50の制御に従って作動される。
【0039】
図10Aに示すように、極力急速に弁38,40を開弁するように、スイッチSA,SBが閉成される。その結果、電源Vから第1の弁38又第2の弁40に電流が流れ、同様にコンデンサCから電流が流れる。第1の弁38又は第2の弁40を流れる電流が所望の値(例えば、電流測定抵抗器を通じて測定する)に達したとき、スイッチSAは、開離し、スイッチSBは、閉成状態が維持される。その結果、図10Bに示すように、ダイオードDA及びスイッチSBを通じて弁電流が流れる。次に、第1の弁38又は第2の弁40の電圧UVは、極性を切り換えて、スイッチSBの抵抗電圧降下に加えて、導通するダイオードDA内のダイオード電圧に一致する。その後、第1の弁38又は第2の弁40を流れる所望の電流は、パルス幅変調を行うスイッチSAにより制御される。スイッチSAを通じて電圧パルスがH型ブリッジ回路に付与されていないとき、ダイオードDAは、環流ダイオードとして作用する。
【0040】
第1の弁38又は第2の弁40の急速な閉弁が必要なとき、即ち、第1の弁38又は第2の弁40に過電流が流れるとき、スイッチSBも開離しなければならない。図10Cに示すように、スイッチSA,SBが開離すると、ダイオードDA,DBは、供給電圧Vに相当する逆電圧UVに直列に接続される。その結果、第1の弁38又は第2の弁40からエネルギが急速に除去され、このエネルギは、コンデンサC及び電源供給ラインに還流される。
【0041】
本発明は、電気制御されるスイッチSD,SEにダイオードDA,DBを置換することも企図する。この別の実施の形態を図11に示す。この実施の形態では、H型ブリッジ回路に直列に接続されるスイッチSA,SBの制御とは反対にスイッチSD,SEへの制御信号が制御される。
【0042】
作動する電磁石のエネルギが直接かつ調和して電力供給コンデンサCに回生されるので、本発明の原理は、更に有利である。このように、コンデンサCから他のコンデンサにエネルギを放出する場合に発生する損失(50%)を防止すると共に、放電過程の際に発生することがあるサージ電流も防止でき、電気的干渉を低減しかつ電力供給コンデンサCの有効寿命を延長することができる。
【0043】
第1の弁38と第2の弁40の異なる制御法を以下の表1にまとめて示す。
【0044】
【表1】

【0045】
使用者に供給される気体の圧力、流量及び/又は流量容量を制御する手段として弁を説明したが、本発明は、圧力発生器の動作速度を制御して、気体の圧力、流量又は流量容量を制御することを企図することも理解されよう。単独で又は弁と組み合わせてこれを実施することができる。即ち、一実施の形態では、送風装置による送風速度等の圧縮装置の動作速度を使用して、専ら患者への圧力を制御すれば、弁を完全に省略できよう。他の実施の形態では、圧力発生器の動作と1つ又は2つ以上の弁とを組み合わせて使用して、患者に供給される気体の圧力を制御することができる。
【0046】
換気装置内の変化に迅速に応答して、患者に供給される気体流の圧力を制御する制御装置を本発明が提供するものであることは、先の説明及び添付図面から理解できよう。流量/圧力調整器として動作する弁と、弁と換気装置の出口との間に流量制限装置とを設ける例示的な実施の形態により、これを実施できる。流量制限装置より上流の気体通路の容量及び寸法は、患者の気道を含む換気装置全体に対して小さく形成される。
【0047】
現在最も実用的で及び好適と思われる実施の形態を図示して詳述したが、前記記載は単に説明の便宜に過ぎず、本発明を開示した実施の形態に限定されず、本発明は、特許請求の範囲内に該当すると共に、特許請求の範囲と同趣旨の変更態様並びに同等の装置を包含すること企図する。例えば、何れかの実施の形態の1つ又は2つ以上の特徴を何れかの他の実施の形態の1つ又は2つ以上の特徴に可能な範囲内で組み合わせることができることを本発明が企図することは、理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】従来の人工呼吸器の一実施の形態の概略図
【図2】従来の人工呼吸器の他の実施の形態の概略図
【図3】本発明の原理による人工呼吸器の第1の実施の形態の概略図
【図4】本発明の原理による人工呼吸器の第2の実施の形態の概略図
【図5】従来の人工呼吸器の制御装置を示す概略図
【図6】本発明の原理による人工呼吸器の制御装置を示す概略図
【図7】図4の人工呼吸器に使用される弁組立体の斜視図
【図8】図7の弁組立体の分解図
【図9】図7の弁組立体の断面図
【図10】パルス変調を使用して弁組立体の動作を制御する第1の実施の形態の概略回路図(図10A〜図10C)
【図11】パルス変調を使用して弁組立体の動作を制御する第2の実施の形態の概略回路図
【符号の説明】
【0049】
(30)・・気体供給源、 (32)・・補充気体供給源、 (36,38)・・第1の弁、 (40)・・第2の弁、 (42,63)・・導管、 (46)・・圧力センサ、 (50)・・制御部、 (62)・・流量制限器、 (64,66)・・流量センサ、 (65)・・第2の導管、 (68)・・一方向型逆止弁、 (100)・・空動ブロック、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体流を供給する気体供給源(30)と、患者の気道に気体流を供給する導管(63,42)と、導管に動作連結されかつ人工呼吸器により患者に供給される気体流の圧力又は速度を制御する第1の弁(36,38)と、弁と患者との間の導管に動作連結されかつ導管内の気体の圧力を監視する圧力センサ(46)と、圧力センサの出力に基づいて弁を制御する制御部(50)とを備え、
圧力センサと患者との間の導管内に流量制限器(62)が設けられ、弁と流量制限器との間の導管内に第1の容量が形成され、患者と流量制限器との間の導管内に第2の容量が形成され、第1の容量が第2の容量未満であることを特徴とする使用者の気道に気体流を供給する人工呼吸器。
【請求項2】
流量制限器により生ずる流量制限は、弁から患者までの導管に生じる抵抗の少なくとも2倍大きい請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項3】
第2の容量は、第1の容量よりも少なくとも2倍大きい請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項4】
導管内の気体流の速度を測定する流量センサ(64,66)を更に備え、
弁と流量制限器との間の導管に流量センサを動作連結した請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項5】
流量制限器は、固定形状又は可変形状を有する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項6】
流量制限器は、線形の圧力/流量特性又は非線形の圧力/流量特性を有する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項7】
流量制限器は、流量制限度を調節可能であり、
制御部は、流量制限器により付与される流量制限度を制御する請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項8】
第1の容量の下流に一方向型逆止弁(68)を配置した請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項9】
補充気体供給源(32)と、
導管に補充気体供給源を連絡する第2の導管(65)と、
第2の導管に動作連結されかつ導管に供給される補充気体流の圧力又は速度を制御する第2の弁(40)とを更に備える請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項10】
第2の導管を導管に連結する位置の下流の導管内に流体混合装置を更に設けた請求項9に記載の人工呼吸器。
【請求項11】
共通の空動ブロック(100)上に第1の弁及び第2の弁を配置し、
空動ブロック内に第1の導管及び第2の導管を形成した請求項9に記載の人工呼吸器。
【請求項12】
空動ブロック内に流量制限器を配置した請求項11に記載の人工呼吸器。
【請求項13】
第1の弁は、H型ブリッジ回路を通じて作動され、
H型ブリッジ回路は、対角線上に接続された逆向きの第1及び第2のダイオードと、対角線上に接続された第1及び第2のスイッチとを備え、
第1の弁は、H型ブリッジ回路の中心点の間に接続され、
H型ブリッジ回路の上側接続端子に電源の第1の電極を接続し、H型ブリッジ回路の下側接続端子に電源の第2の電極を接続して、H型ブリッジ回路を電源電圧に接続した請求項1に記載の人工呼吸器。
【請求項14】
H型ブリッジ回路の第1の電極及び第2の電極との間にコンデンサを更に接続した請求項13に記載の人工呼吸器。
【請求項15】
第1のスイッチ及び第2のスイッチは、制御部の制御により作動され、
(a)弁は、第1のスイッチ及び第2のスイッチの閉成動作に応答して開弁し、
(b)弁は、第1のスイッチ及び第2のスイッチの開離動作に応答して閉弁する請求項13に記載の人工呼吸器。
【請求項16】
第1のスイッチ及び第2のスイッチの一方の閉成動作と、第1のスイッチ及び第2のスイッチの残りの他方のパルス幅調整とにより、弁の開閉を制御する請求項13に記載の人工呼吸器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−511358(P2008−511358A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528780(P2007−528780)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009438
【国際公開番号】WO2006/024532
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(505338497)アールアイシー・インベストメンツ・エルエルシー (81)