説明

人工呼吸器用呼吸振動発生装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、人工呼吸器用呼吸振動発生装置に係り、特に適正且つ効率の良い脈動を生成する場合に好適な人工呼吸器用呼吸振動発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば特願昭63−283915号公報,特願昭63−283916号公報等に記載された如く、ブロア及びロータリ弁機構により呼吸振動発生装置を構成し,当該ブロアと呼吸系路との間に接続したロータリ弁機構により,呼吸経路をブロアの与圧発生口と陰圧発生口とに対し交互に連通させ,呼吸経路に比較的早い呼吸振動を与える人工呼吸器が提案されている。
【0003】従来のロータリ弁機構は、図7に示す如く、回転子51を,モータ(図示略)の出力軸52の軸方向へ互いに離間するように延びる1対の弁体部53,54からロータリ弁機構50を構成し、弁体部53,54を,出力軸52と同軸状を成す一部を切欠いた円筒状部材とした構造となっている。当該呼吸振動発生装置では、モータにより回転子51を回転させ,ブロアへ連通した与圧ポートP1または陰圧ポートP2を,外気ポートP3,呼吸ポートP4に対して交互に連通させることにより、与圧発生口または陰圧発生口に与圧または陰圧を発生させ,与圧または陰圧を呼吸系路へ交互に与えるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述した従来の呼吸振動発生装置を構成するロータリ弁機構においては、下記の問題があった。
■回転子51の弁体部53,54及び各ポートP1〜P4の構造的な面から空気流路(図7矢印Ya,Yb,Yc参照)に極端な曲がりが多くなると共に,出力軸52と空気流路とが交差するという構造的な面から出力軸52により空気流路が乱されるため、空気の圧力損失が大きくなり,空気の流通効率が悪化する。
■与圧ポートP1と陰圧ポートP2とが連通した構造となっているため、空気漏れが多くなると共に,与圧ポートP1及び陰圧ポートP2の切換えにより生成される呼吸振動の脈動波の最大圧と最小圧との差圧が小さくなり、脈動波の生成効率が悪化する。この場合、図8は、正常状態時の吸気相(患者の肺へ空気を人工的に送り込むモード)及び呼気相(患者の肺から空気を人工的に抜出すモード)における圧力波形を示している。
■与圧または陰圧の発生時に与圧ポートP1または陰圧ポートP2を遮断した場合でも、空気が遮断ポート側の弁体部の外側面をすり抜けて漏れていくため(図7矢印Yd参照)、このような空気漏れが原因で,与圧モードと陰圧モードとを確実に切換えることができない。また、弁体部53,54との間にはシールが無いため、両弁体部53,54の隙間を通じて空気漏れが生じ易く、前記の不具合が発生する。
■ロータリ弁機構を構成する円筒状の弁体部53,54は切削加工または鋳造により製造しているため、切削加工時や鋳造時における工数が多くなるために大量生産に適さず,製造コストも高くつく。
【0005】
【発明の目的】本発明は、上記従来例の有する不都合を改善し、特に空気の流れを円滑化して圧力損失を抑制すると共に空気漏れを防止することにより、適正且つ効率の良い脈動を生成することを達成した人工呼吸器用呼吸振動発生装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、与圧発生口及び陰圧発生口を有する圧力発生手段と患者の口元へ接続される呼吸系路との間に接続される圧力切換機構により,前記呼吸系路を前記与圧発生口と前記陰圧発生口とへ交互に連通させ,前記呼吸系路へ比較的早い呼吸振動を与える人工呼吸器用呼吸振動発生装置において、前記圧力切換機構が、前記呼吸系路へ接続される呼吸ポートと、前記与圧発生口へ接続される与圧ポートと、前記陰圧発生口へ接続される陰圧ポートと、両端部に開口部を有すると共に当該両端部の間が前記呼吸ポートへ連通した共通空気流路と、該共通空気流路の一方の開口部へ連通すると共に前記与圧ポートへ連通した与圧空気流路と、前記共通空気流路の他方の開口部へ連通すると共に前記陰圧ポートへ連通した陰圧空気流路とを備え、前記共通空気流路,与圧空気流路及び陰圧空気流路の共通軸線に略平行に所定間隔を置いて配設されると共に,駆動手段により回転駆動される駆動軸と、前記共通空気流路の一方の開口部に対応して前記駆動軸の外周部に固定されると共に,当該駆動軸の所定角度回転時に前記共通空気流路の一方の開口部を密閉する与圧側スリット板と、前記共通空気流路の他方の開口部に対応して前記駆動軸の外周部に固定されると共に,当該駆動軸の所定角度回転時に前記共通空気流路の他方の開口部を密閉する陰圧側スリット板とを具備し、前記与圧側スリット板と前記陰圧側スリット板とを、当該両スリット板の位相関係を前記駆動軸の回転方向に沿って所定角度ずらした状態に配置した構成としている。これにより、前述した目的を達成しようとするものである。
【0007】
【作用】本発明によれば、駆動手段により駆動軸を所定角度回転させると、駆動軸と共に与圧側スリット板及び陰圧側スリット板が所定角度回転する。駆動軸の所定回転に伴い、与圧側スリット板が共通空気流路の一方の開口部を密閉する位置にくると、両スリット板の位相が駆動軸の回転方向に沿って所定角度ずれた状態となっているため、陰圧側スリット板は共通空気流路の他方の開口部とは離間した位置にくる。これにより、共通空気流路の一方の開口部が密閉されるため、共通空気流路と与圧空気流路とが遮断状態となり、共通空気流路と陰圧空気流路とが連通状態となる。この結果、呼吸ポートから共通空気流路及び陰圧空気流路を通り陰圧ポートへ空気が流通する。次に、駆動手段により駆動軸を前述の状態から更に所定角度回転させると、駆動軸と共に与圧側スリット板及び陰圧側スリット板が所定角度回転する。駆動軸の所定回転に伴い、陰圧側スリット板が共通空気流路の他方の開口部を密閉する位置にくると、両スリット板の位相が駆動軸の回転方向に沿って所定角度ずれた状態となっているため、与圧側スリット板は共通空気流路の一方の開口部とは離間した位置にくる。これにより、共通空気流路の他方の開口部が密閉されるため、共通空気流路と陰圧空気流路とが遮断状態となり、共通空気流路と与圧空気流路とが連通状態となる。この結果、与圧ポートから与圧空気流路及び共通空気流路を通り呼吸ポートへ空気が流通する。そして、圧力切換機構により以上の動作を交互に繰返すことにより、患者へ与える人工的な呼吸振動の脈動が発生する。
【0008】
【実施例】以下、本発明の人工呼吸器用呼吸振動発生装置を適用してなる実施例を図面に基づいて説明する。
【0009】先ず、本実施例の人工呼吸器の全体系統を図6により説明すると、人工呼吸器の呼吸系統Aは、共通回路51と吸気回路52と呼気回路53とを備えており、共通回路51の一端側は患者の口元へ気密に接続される一方、他端側は吸気回路52及び呼気回路53へ接続されている。吸気回路52は患者へ供給する清浄空気を貯留した酸素源54へ接続され、その途中には既知の流量計55及び加湿器56が接続されている。呼気回路53は大気に開放されており、その開放度合が大気開放調整弁57により調整されるようになっている。
【0010】呼吸系統Aには、比較的早い呼吸振動を発生する呼吸振動発生装置Bが接続されている。呼吸振動発生装置Bは、圧力発生手段としてのブロア58と,後で詳述するロータリ式の圧力切換機構1とを備えており、ブロア58の与圧発生口58aで発生した与圧と陰圧発生口58bで発生した陰圧とを,圧力切換機構1により振動回路60へ交互に与えるようになっている。
【0011】振動回路60は、共通回路51,吸気回路52,呼気回路53の各接続部分付近で呼吸系統Aへ接続されており、呼吸系統A即ち患者の肺Hは、振動回路60での振動数に応じた呼吸数で強制的に呼吸されるようになっている。また、振動回路60には、圧力切換機構1側から順次,電磁式の可変絞り61,規制機構62が接続されている。図中符号64はブロア駆動用モータ、符号65は圧力切換機構駆動用モータである。
【0012】この場合、自然呼吸が出来ない患者に対して人工呼吸器により吸気を行わせる時は、大気開放調整弁57を閉じることにより,呼吸振動発生装置で発生した呼吸振動に基づき,酸素源54から供給されてくる酸素を患者の肺へ送り込むようになっている。他方、自然呼吸が出来ない患者に対して人工呼吸器により呼気動作を行わせる時は、大気開放調整弁57を開くことにより,呼吸振動発生装置で発生した呼吸振動に基づき,患者の肺から排出された空気を大気へ送り出すようになっている。
【0013】制御部66は、患者の実際の呼吸量を計測する圧力・流量センサ67,ブロア駆動用モータ54の回転状態を検出する回転センサ68,圧力切換機構駆動用モータ55の回転状態を検出する回転センサ69,呼吸系統Aに与える呼吸数を設定するスイッチ70,呼吸系統Aに与える高周波振動の平均圧力の大きさを設定するスイッチ71,患者への呼吸容量を設定するスイッチ72から信号を各々入力し、大気開放調整弁57,警報器73へ制御信号を各々出力するようになっている。この場合、各スイッチ70〜72は、人工呼吸器の操作部に配設されている。
【0014】次に、本実施例の人工呼吸器用呼吸振動発生装置を構成する圧力切換機構の構造を図1乃至図5に基づき説明すると、圧力切換機構1は、第1ケース部2A,第2ケース部2B,第3ケース部2Cから成るケース2と,呼吸ポート3と,与圧ポート4と,陰圧ポート5と,呼吸ポート3へ連通した共通室6と,与圧ポート4へ連通した与圧室7と,陰圧ポート5へ連通した陰圧室8と,モータ65を取付けるためのモータ取付軸9と,モータ取付軸9に固定された1対のギヤ10,11と,各ギヤ10,11の外周部に各々固定された1対のスリット板12,13等から大略構成されている。
【0015】圧力切換機構1の構造を詳述すると、第1ケース部2Aの上方部分の一方の端部側には、患者の口元へ装着する呼吸系統Aの振動回路60へ接続される円筒状の呼吸ポート3がケース外方へ突出状態に配設されており、共通室6へ連通している。第2ケース部2Bの上方部分の一方の端部側には、ブロア58の与圧発生口58aへ接続される円筒状の与圧ポート4がケース外方へ突出状態に配設されており、与圧室7へ連通している。
【0016】第3ケース部2Cの上方部分の一方の端部側には、ブロア58の陰圧発生口58bへ接続される円筒状の陰圧ポート5がケース外方へ突出状態に配設されており、陰圧室8へ連通している。与圧ポート4及び陰圧ポート5はケース2に対して同一側に配設されると共に、呼吸ポート3はケース2に対して与圧ポート4及び陰圧ポート5とは反対側に配設されており、与圧ポート4及び陰圧ポート5は、呼吸ポート3に対して対称に配置されている。
【0017】共通室6は、第1ケース部2Aの上方部分の内部に配設された蒲鉾状の空間部として構成され、与圧室7は、第2ケース部2Bの上方部分の内部に配設された直方体状の空間部として構成され、陰圧室8は、第3ケース部2Cの上方部分の内部に配設された直方体状の空間部として構成されている。共通室6の両端部(与圧室7及び陰圧室8との境界部分)には、開口部が形成されており、後述のスリット板により当該開口部が適宜遮断されるようになっている。
【0018】共通室6は、流路3Aを介して呼吸ポート3へ連通すると共に,与圧室7を介して与圧ポート4へ又は陰圧室8を介して陰圧ポート4へ適宜連通されるようになっている。与圧室7は、与圧ポート4へ連通すると共に,共通室6を介して呼吸ポート3へ適宜連通されるようになっている。陰圧室8は、陰圧ポート5へ連通すると共に,共通室6を介して呼吸ポート3へ適宜連通されるようになっている。
【0019】第1ケース部2A,第2ケース部2B,第3ケース部2Cの中央部分には、モータ65により回転駆動されるモータ取付軸9が貫通状態に配設されており、モータ取付軸9は、第1ケース部2A,第2ケース部2B,第3ケース部2Cの各内周壁部分に対して各々オイルシール14,軸受15,軸受16を介し回転自在に支持されている。図3中符号9Aは取付軸カバー、符号9B,9Cはスペーサである。
【0020】モータ取付軸9の第1ケース部2A及び第2ケース部2Bの境界部分には、ギヤ10が固定されており、ギヤ10の外周部には、型打ち抜きにより製造されたスリット板12が着脱自在に固定されている。モータ取付軸9の第1ケース部2A及び第3ケース部2Cの境界部分には、ギヤ11が固定されており、ギヤ11の外周部には、型打ち抜きにより製造されたスリット板13が着脱自在に固定されている。ギヤ10,11は、モータ取付軸9の回転に伴いスリット板12,13と共に回転するようになっている。
【0021】スリット板12は、共通室6における与圧室7側の開口部を密閉可能な大きさを有する略半円板状に形成されており、スリット板12の中心部には、ギヤ10と嵌合する形状の穴部12Aが形成されると共に、穴部12Aの内周部には、ギヤ10の歯と係合する形状の歯(図示略)が形成されている。スリット板12は、ギヤ10の外周部に両者の歯を介して固定されている。
【0022】スリット板13は、共通室6における陰圧室8側の開口部を密閉可能な大きさを有する略半円板状に形成されており、スリット板13の中心部には、ギヤ11と嵌合する形状の穴部13Aが形成されると共に、穴部13Aの内周部には、ギヤ11の歯と係合する形状の歯(図示略)が形成されている。スリット板13は、ギヤ11の外周部に両者の歯を介して固定されている。この場合、スリット板12,13は、位相が互いに180度ずらされた状態で配設されている。
【0023】第1ケース部2Aと第2ケース部2Bとの境界部分,及び第1ケース部2Aと第3ケース部2Cとの境界部分には、回転時のスリット板12,13の通過が可能な空間部17,18が各々形成されている。また、第1ケース部2Aと第2ケース部2Bとの境界部分,及び第1ケース部2Aと第3ケース部2Cとの境界部分には、各ケース部間のシール性を高めるOリング19,20が配設されている。更に、第1ケース部2A端部とモータ取付軸9との取付部分には、モータ取付軸9の回転時のシール性を高めるオイルシール21及びOリング22が配設されている。図3中符号23は取付板を示す。
【0024】圧力切換機構1の作動時において、モータ65の駆動によりモータ取付軸9が回転するとギヤ10,11が回転し、これに伴いスリット板12,13も回転するようになっている。スリット板12,13が位相を互いに180度ずらされた状態で配設されているため、スリット板12が第1ケース部2Aの下方部分の空間部17に位置した時は、スリット板13は第2ケース部2Aの上方部分の空間部18に位置して共通室6の陰圧室8側の開口部を密閉するようになっている(図3参照)。これにより、共通室6と陰圧室8とが遮断状態となり、共通室6と与圧室7とが連通状態となるようになっている。
【0025】他方、スリット板12,13が位相を互いに180度ずらされた状態で配設されているため、スリット板12が第1ケース部2Aの上方部分の空間部17に位置した時は、スリット板13は第2ケース部2Aの下方部分の空間部18に位置して共通室6の与圧室7側の開口部を密閉するようになっている。これにより、共通室6と与圧室7とが遮断状態となり、共通室6と陰圧室8とが連通状態となるようになっている。
【0026】共通室6と与圧室7とが連通状態,共通室6と陰圧室8とが遮断状態となった時は、与圧ポート4から与圧室7及び共通室6を通り呼吸ポート3へ空気が流通するようになっている。これにより、吸気相(患者の肺へ空気を人工的に送り込むモード)における脈動が発生するようになっている。他方、共通室6と陰圧室8とが連通状態,共通室6と与圧室7とが遮断状態となった時は、呼吸ポート3から共通室6及び陰圧室8を通り陰圧ポート5へ空気が流通するようになっている。これにより、呼気相(患者の肺から空気を人工的に抜出すモード)における脈動が発生するようになっている。
【0027】次に、上記の如く構成した本実施例の人工呼吸器用呼吸振動発生装置を構成する圧力切換機構の動作を説明する。
【0028】圧力切換機構1で発生すべき呼吸振動に対応した回転数でモータ65を駆動すると、モータ取付軸9が回転し、これに伴いギヤ10,11がスリット板12,13と共に回転する。ギヤ10,11の回転に伴い、例えばスリット板12が第1ケース部2Aの下方部分の空間部17に位置すると、スリット板12,13は位相が互いに180度ずらされた状態で配設されているため、スリット板13は第2ケース部2Aの上方部分の空間部18に位置する(図3参照)。
【0029】これにより、スリット板13が共通室6の陰圧室8側の開口部を密閉するため、共通室6と陰圧室8とが遮断状態となり、共通室6と与圧室7とが連通状態となる。この結果、与圧ポート4から与圧室7及び共通室6を通り呼吸ポート3へ空気が流通するため、吸気相(患者の肺へ空気を人工的に送り込むモード)における脈動が発生する。
【0030】次に、モータ取付軸9が図3の状態から半回転すると、これに伴いギヤ10,11がスリット板12,13と共に半回転する。ギヤ10,11の回転に伴い、スリット板12が第1ケース部2Aの上方部分の空間部17に位置すると、スリット板12,13は位相が互いに180度ずらされた状態で配設されているため、スリット板13は第2ケース部2Aの下方部分の空間部18に位置する。
【0031】これにより、スリット板12が共通室6の与圧室7側の開口部を密閉するため、共通室6と与圧室7とが遮断状態となり、共通室6と陰圧室8とが連通状態となる。この結果、呼吸ポート3から共通室6及び陰圧室8を通り陰圧ポート5へ空気が流通するため、呼気相(患者の肺から空気を人工的に抜出すモード)における脈動が発生する。
【0032】即ち、モータ65によりモータ取付軸9を適宜回転させて上述した動作を繰返し、呼吸ポート3と与圧ポート4とを連通させる状態と,呼吸ポート3と陰圧ポート5とを連通させる状態とを交互に切換えることにより、患者の肺に対する人工的な呼吸振動の脈動が形成される。
【0033】上述したように、本実施例によれば、共通室6の与圧室7側の開口部を適宜密閉するスリット板12と,共通室6の陰圧室8側の開口部を適宜密閉するスリット板13とを設けると共に,各スリット板12,13の位相を互いに180度ずらした状態に設定し,各スリット板12,13をモータ取付軸9及びギヤ10,11を介して回転させるため、共通室6に対して与圧室7及び陰圧室8を的確に交互に連通させる(切換える)ことができる。これにより、圧力切換機構1で発生する呼吸振動の脈動波の最大圧と最小圧との差圧を図7に示す如く大きくすることができるため、適正な脈動を生成することができる。
【0034】また、本実施例によれば、与圧室7と陰圧室8とをスリット板12,13及びオイルシール14を介して完全に隔離した構造としているため、従来のような空気漏れを確実に防止することが可能となり、この結果、脈動の生成効率を向上させることができる。
【0035】また、本実施例によれば、共通室6,与圧室7,陰圧室8により形成される空気の流路とモータ取付軸9とを完全に切り離した構造としているため、従来のように空気流路内にモータ取付軸を配置した場合と比較し,モータ取付軸により空気流路が乱されることなく円滑な空気流路を形成することが可能となり、この結果、空気の圧力損失を抑制でき,空気の流通効率を向上させることができる。更に、与圧ポート4,与圧室7,共通室6及び呼吸ポート3で形成される空気流路,呼吸ポート3,共通室6,陰圧室8及び陰圧ポート5で形成される空気流路の曲がりを少なくすることができるため、従来のように空気流路に極端な曲がりが無くなり、空気を円滑に流通させることができる。
【0036】更に、本実施例によれば、スリット板12,13は型打ち抜きにより製造するため、従来のように切削加工または鋳造により弁体部(スリット板12,13に相当)を製造する場合と比較し,大量生産に適すると共に製造コストを低減することができる。
【0037】更にまた、本実施例によれば、ギヤ10,11に対しスリット板12,13を着脱自在に取付ける構造であるため、ギヤ10,11とスリット板12,13との噛み合い位置を適宜ずらせば、呼吸ポート3と与圧ポート4とを連通させる状態と,呼吸ポート3と陰圧ポート5とを連通させる状態とを交互に切換えるタイミング(脈動のサイクル)を可変することが可能となる。
【0038】この場合、本実施例では、共通室6の与圧室7側の開口部及び陰圧室8側の開口部を適宜密閉するスリット板12,13の面積を変えれば、呼吸ポート3に対する与圧ポート4及び陰圧ポート5の開閉時間を適宜可変することが可能である。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の人工呼吸器用呼吸振動発生装置によれば、呼吸ポートへ連通した共通空気流路と,共通空気流路の一方の開口部及び与圧ポートへ連通した与圧空気流路と,共通空気流路の他方の開口部及び陰圧ポートへ連通した陰圧空気流路とを備え,共通空気流路,与圧空気流路及び陰圧空気流路の共通軸線に略平行に所定間隔を置いて駆動軸を配置し,共通空気流路の一方の開口部を密閉する与圧側スリット板,及び共通空気流路の他方の開口部を密閉する陰圧側スリット板を駆動軸に固定し,両スリット板の位相関係を駆動軸の回転方向に沿って所定角度ずらした構造であるため、共通空気流路に対して与圧空気流路及び陰圧空気流路を的確に交互に連通させることができると共に,空気流路が駆動軸の回転により乱されることなく円滑な空気流路を形成することが可能となり、この結果、空気の圧力損失を抑制し得て空気の流通効率を向上させることができるため,適正な呼吸振動の脈動を生成することができる、という効果を奏することができる。また、与圧側スリット板と陰圧側スリット板とをギヤを介して駆動軸に着脱自在に固定した場合には、両スリット板とギヤの噛み合い位置を適宜ずらせば、呼吸ポート及び与圧ポートを連通させる状態と呼吸ポート及び陰圧ポートを連通させる状態とを交互に切換えるタイミング(脈動のサイクル)を可変することができる、という効果がある。更に、与圧ポート及び陰圧ポートを共通空気流路に対して同一側に配置すると共に,呼吸ポートを共通空気流路に対して与圧ポート及び陰圧ポートとは反対側に配置した場合には、与圧ポート,与圧空気流路,共通空気流路及び呼吸ポートで形成される空気流路,呼吸ポート,共通空気流路,陰圧空気流路及び陰圧ポートで形成される空気流路に曲がりを少なくすることができるため,空気を円滑に流通させることができる、という効果がある。更にまた、与圧空気流路及び陰圧空気流路における共通空気流路の両開口部へ連通した箇所を外部に対して密封構造とした場合には、両空気流路からの空気漏れを防止することができるため,呼吸振動の脈動の生成効率を向上させることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した本実施例における圧力切換機構の正面図である。
【図2】図1に示す圧力切換機構の右側面図である。
【図3】図1の矢視A−A線に沿う断面図である。
【図4】図2の矢視B−B線に沿う断面図である。
【図5】図1に示す圧力切換機構の概略斜視図である。
【図6】本実施例における人工呼吸器の全体系統を示す概略ブロック図である。
【図7】従来例の圧力切換機構の概略斜視図である。
【図8】吸気相及び呼気相における圧力波形の説明図である。
【符号の説明】
1 圧力切換機構
2 ケース
2A 第1ケース部
2B 第2ケース部
2C 第3ケース部
3 呼吸ポート
4 与圧ポート
5 陰圧ポート
6 共通空気流路としての共通室
7 与圧空気流路としての与圧室
8 陰圧空気流路としての陰圧室
9 駆動軸としてのモータ取付軸
10,11 ギヤ
12 与圧側スリット板としてのスリット板
13 陰圧側スリット板としてのスリット板
14 オイルシール
58 圧力発生手段としてのブロア
58a 与圧発生口
58b 陰圧発生口
65 駆動手段としての圧力切換機構駆動用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 与圧発生口及び陰圧発生口を有する圧力発生手段と患者の口元へ接続される呼吸系路との間に接続される圧力切換機構により,前記呼吸系路を前記与圧発生口と前記陰圧発生口とへ交互に連通させ,前記呼吸系路へ比較的早い呼吸振動を与える人工呼吸器用呼吸振動発生装置において、前記圧力切換機構が、前記呼吸系路へ接続される呼吸ポートと、前記与圧発生口へ接続される与圧ポートと、前記陰圧発生口へ接続される陰圧ポートと、両端部に開口部を有すると共に当該両端部の間が前記呼吸ポートへ連通した共通空気流路と、該共通空気流路の一方の開口部へ連通すると共に前記与圧ポートへ連通した与圧空気流路と、前記共通空気流路の他方の開口部へ連通すると共に前記陰圧ポートへ連通した陰圧空気流路とを備え、前記共通空気流路,与圧空気流路及び陰圧空気流路の共通軸線に略平行に所定間隔を置いて配設されると共に,駆動手段により回転駆動される駆動軸と、前記共通空気流路の一方の開口部に対応して前記駆動軸の外周部に固定されると共に,当該駆動軸の所定角度回転時に前記共通空気流路の一方の開口部を密閉する与圧側スリット板と、前記共通空気流路の他方の開口部に対応して前記駆動軸の外周部に固定されると共に,当該駆動軸の所定角度回転時に前記共通空気流路の他方の開口部を密閉する陰圧側スリット板とを具備し、前記与圧側スリット板と前記陰圧側スリット板とを、当該両スリット板の位相関係を前記駆動軸の回転方向に沿って所定角度ずらした状態に配置したことを特徴とする人工呼吸器用呼吸振動発生装置。
【請求項2】 前記与圧側スリット板と前記陰圧側スリット板とを、当該両スリット板の位相関係を前記駆動軸の回転方向に沿って180度ずらした状態に配置したことを特徴とする請求項1記載の人工呼吸器用呼吸振動発生装置。
【請求項3】 前記与圧側スリット板と前記陰圧側スリット板とを、ギヤを介して前記駆動軸に着脱自在に固定したことを特徴とする請求項1又は2記載の人工呼吸器用呼吸振動発生装置。
【請求項4】 前記与圧ポート及び陰圧ポートを前記共通空気流路に対して同一側に配置すると共に、前記呼吸ポートを前記共通空気流路に対して前記与圧ポート及び陰圧ポートとは反対側に配置したことを特徴とする請求項1,2又は3記載の人工呼吸器用呼吸振動発生装置。
【請求項5】 前記与圧空気流路と前記陰圧空気流路とを、前記共通空気流路の両開口部へ連通した箇所を外部に対して密封構造としたことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の人工呼吸器用呼吸振動発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【特許番号】特許第3269178号(P3269178)
【登録日】平成14年1月18日(2002.1.18)
【発行日】平成14年3月25日(2002.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−125213
【出願日】平成5年4月28日(1993.4.28)
【公開番号】特開平6−312021
【公開日】平成6年11月8日(1994.11.8)
【審査請求日】平成11年3月19日(1999.3.19)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【参考文献】
【文献】特開 平5−337184(JP,A)
【文献】特許2798256(JP,B2)
【文献】特許2798257(JP,B2)