説明

人工呼吸装置および/または麻酔装置

本発明は、内部センサ(9,10)と、患者(1)用の少なくとも1つの人工呼吸装置コネクタ(6)と、出力装置(ディスプレイ)(3)とを備えた人工呼吸装置および/または麻酔装置(2)に関する。人工呼吸装置および/または麻酔装置(2)は、患者(1)への取り付けが可能な少なくとも1つの外部センサ(11,12,13,14,15)を備え、外部センサ(11,12,13,14,15)の測定値は、内部センサ(9,10)の測定値との相関関係において評価され、表示されることが可能なものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力装置もしくはディスプレイと、コンピュータと、制御プログラムと、内部センサと、少なくとも1つの患者用人工呼吸装置コネクタとを備えた人工呼吸装置および/または麻酔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、特に在宅での人工呼吸および集中治療病棟で用いられる人工呼吸装置は、主に、当該人工呼吸装置の内部または患者に取り付けられた圧力センサ、流量センサ、および/または空気量センサに基づいて、患者への圧力および/またはガス流量を適切に配分している。これらのセンサを制御することにより、通例、呼吸数や分時拍出量等の追加的な特定の患者パラメータも算出される。そして、算出された患者パラメータの一部は、患者への圧力および/またはガス流量を配分するための制御因子としても利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第92/11054号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした人工呼吸装置の問題点は、医師または治療者が気付かずに、あるいは看護師が気付かずに、患者が不適切な人工呼吸を施され得る点にある。このような不適切な人工呼吸が発生するのは、人工呼吸そのもの、もしくは人工呼吸に対する肺の反応が、患者が今現在の人工呼吸時間に必要としているものとは異なり得るためである。
【0005】
不適切な人工呼吸を察知するために、例えば心電図、脳波図、機械的な胸郭および横隔膜の拡張、血液中/呼吸気中の酸素含有量、血液中および/または呼吸気中のCO2(二酸化炭素)含有量などの追加的な患者パラメータを測定することが提案された。これらの患者パラメータを医師または治療者が利用できるのは、追加的な測定装置、いわゆる「患者モニタ装置」を使用する場合である。こうした装置には、追加的なコストのみならず、示された値から正確な結論を引き出すための、操作者のさらなる診断能力も必要となる。もう一つの重大な短所は、これらの追加的な患者パラメータは様々であり、たとえ経験豊富な医師であっても、主要な問題、すなわち正しく人工呼吸が行われているか否かという点について、これらの様々な値が意味するところを適切に解釈することは困難であるという点である。
【0006】
個別に測定され示された値と、人工呼吸装置の圧力、流量、空気量等の標準測定値とがどのような相関関係を有するのかは周知ではない。したがって、本発明の第一の理念は、人工呼吸装置の測定値と追加的な患者パラメータとが相関して同時に表示される場合にのみ、確実な診断が行われる、というものである。
【0007】
よって、本発明によれば、互いに相関し、正確に評価されて表された追加的な患者パラメータを勘案した場合にのみ、患者の効果的かつ確実な人工呼吸が実現される。
【0008】
病院では、今日、これらのパラメータは、部分的に、追加的な装置、いわゆる患者モニタ監視装置によって、患者の枕元で測定および表示される。ところが、こうした患者モニタ装置の測定値は、人工呼吸装置における測定値とは何ら相関しない。そのため、不適切に調整された人工呼吸により患者がストレスを受けているか否か、あるいは患者が人工呼吸装置と同期せずに呼吸しているか否かは、少なくとも自動的には、診断することができない。
【0009】
したがって、病院では、患者の呼吸状態の変化を従来周知の装置により限定的にしか把握することができず、患者の呼吸状態の変化が直接的に人工呼吸装置の制御に用いられることはほとんどない。
【0010】
そこで、本発明の目的は、患者にとって最適な人工呼吸を実現するとともに、健康状態の変化をも把握し、人工呼吸の変調が必要であるか否か、および/または専門家による警告を実行するか否かを判定する、人工呼吸装置および/または麻酔装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、上記の目的は、少なくとも1つの外部センサを備えることにより達成される。この外部センサの測定値は、内部センサの測定値と相関、すなわち相互に関係しており、上記相関関係にある前記内部センサの測定値と共に、ディスプレイに表示され、評価可能となっている。
【0012】
したがって、本発明によれば、内部センサの測定値と外部センサの測定値とは互いに相関し、同期して同時に表示され、および/または上記装置の制御に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】患者およびその患者の人工呼吸のための装置を、患者に取り付けられた追加的なセンサを含めて象徴的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
患者に対する最適な、監視および人工呼吸のためには、外部センサの少なくとも1つが患者に取り付け可能であるのが有利である。外部センサは、例えば、血液中のCO2含有量を測定するためのセンサ、心電図電極、および/または胸郭の拡張を測定するための伸縮性の胸帯である。
【0015】
これらの手段はそれ自体周知であり、従来、患者の現在の容態の把握に使用されてはいるが、いずれにしても、これらの周知のセンサで示された測定値に基づいて人工呼吸装置を(手動で)調整することのできる診断医を必要とする。
【0016】
出力装置は、1つの装置(いわゆる「アーチファクト検知器」)を備えるのが有利である。この装置は、前述の相関する測定値と、記憶装置に表の形で格納されている値とを常に比較し、明らかに一致する場合には、表中の対応する値に割り当てられた説明を自動的にディスプレイに表示する。ここで、明らかな一致とは、値として完全にぴったり同一である場合でもよいし、または所定の許容範囲内にある場合でもよい。
【0017】
人工呼吸装置および麻酔装置の人工呼吸機能は、有利には、いわゆる「アーチファクト検知器」の相関するデータに基づき、制御プログラムによって自動的に制御される。これにより、患者の健康状態の変化が即座に把握され、上記装置はその変化に対応して直ちに反応することができる。
【0018】
従来の方法では、現在の患者データは主にセンサにより把握され、ケーブル接続を介して測定装置に送信される。送信されたデータを医師が評価し、それに基づいて、通例は医師が、手動で人工呼吸装置の調整を行う。
【0019】
一方、本発明による解決方法では、一日中、すなわち24時間体制での監視および制御が可能となる。よって、患者への取り付けが可能なセンサのうち少なくとも1つが、人工呼吸装置とのワイヤレス接続を有するのが有利である。ワイヤレス接続は、たとえば無線、超音波、あるいは「ブルートゥース(Bluetooth(登録商標))」により実現される。ワイヤレス接続では、患者は、人工呼吸装置のそばにいても比較的自由に動くことができる。
【0020】
集中治療室にいる時を除けば、通常、患者は絶えず看護師に監視されているわけではない。そこで、完全な監視を可能にするためには、不規則性(アーチファクト)を自動的に察知し、常に報告し、および/またはデータを検索可能な記憶装置に格納する監視装置を備えるのが有利である。これによって、特別な事態の場合にも、その事態を引き起こす原因を感知し、対応して反応することが可能である。
【0021】
監視装置は、所定の閾値を上回るまたは下回る場合に、警報機能を作動させるのが有利である。この警報機能は、例えば視覚的に、聴覚的に、または装置の振動によって実行できる。
【0022】
人工呼吸が施され監視される患者が、例えば自宅や、あるいは病院の本部から場所的に離れた所にいる場合には、警報機能の作動は、電話、インターネット、またはネットワークの連絡線により直ちに自動的に本部に転送される。したがって、有益な期間内に救助者が介入し、必要な処置をとることが可能となる。
【0023】
本発明の特別な実施形態によれば、「アーチファクト検知器」は、患者に対し継続的かつ視聴覚的に、患者の現在の健康状態を通知する。これにより、患者に不安やストレス感情を起こさせないようにすることができる。これは、従来の装置では警告音の作動がしばしば極度のストレス状態を引き起こすことに鑑みれば、非常に有利である。
【0024】
以下、例示の図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。図面および符号リストは開示内容の一部である。
【0025】
図1は、人工呼吸を施される患者1と、象徴的に表された人工呼吸装置2を示す。人工呼吸装置2は、ディスプレイ3と、コンピュータ4と、制御プログラム5と、少なくとも1つの人工呼吸装置コネクタ6とを備える。人工呼吸装置コネクタ6は、吸気7用および呼気8用の弾性の管と接続されている。吸気7用の管の出口には、人工呼吸装置からの空気の酸素含有量を測定するためのセンサ9が取り付けられている。二酸化炭素センサ10は常に呼気8中のCO2含有量を測定する。
【0026】
患者1自身には、自由選択で様々なセンサが取り付けられる。例えば、指には、血液中の二酸化炭素(CO2)含有量を連続的に測定するためのセンサ11が取り付けられる。また、別のセンサ12は、血液中の酸素(O2)含有量を測定する。
【0027】
患者1の胸郭および腹部の領域には、上部(胸部)胸帯13および下部胸帯14が取り付けられる。これらの各胸帯13、14を使って、患者1の呼吸動作を監視することができる。
【0028】
心臓の周辺には、さらに心電図電極が取り付けられる。この電極を使って、患者1の心臓の動作を監視することができる。
【0029】
各外部センサ11,12,13,14,15の測定値は、各内部センサ9,10の測定値と、相関付けられ、すなわち互いに相互関係が形成されており、人工呼吸装置2の(例えば適応的な)制御に用いられる。
【符号の説明】
【0030】
1 患者、2 人工呼吸装置、3 ディスプレイ、4 コンピュータ、5 制御プログラム、6 人工呼吸装置コネクタ、7 吸気、8 呼気、9 酸素(O2)センサ、10 二酸化炭素(CO2)センサ、11 血液中二酸化炭素(CO2)センサ、12 血液中酸素(O2)センサ、13 上部胸帯(胸部)、14 下部胸帯(腹部)15 心電図電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力装置もしくはディスプレイ(3)と、コンピュータ(4)と、制御プログラム(5)と、内部センサ(9,10)と、患者(1)のための少なくとも1つの人工呼吸装置コネクタ(6)とを備えた人工呼吸装置および/または麻酔装置(2)であって、
少なくとも1つの外部センサ(11,12,13,14,15)を備え、
前記内部センサ(9,10)の測定値と相関関係にある、前記外部センサ(11,12,13,14,15)の測定値は、上記相関関係にある前記内部センサ(9,10)の測定値と共に、前記ディスプレイ(3)に表示され、評価可能となっている、
ことを特徴とする人工呼吸装置および/または麻酔装置。
【請求項2】
前記外部センサ(11,12,13,14,15)の少なくとも1つは、前記患者(1)に取り付け可能なものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記出力装置は、1つの装置(いわゆる「アーチファクト検知器」)を備え、
前記アーチファクト検知器は、前記相関する測定値と、記憶装置に表の形で格納されている値とを常に比較し、明らかに一致する場合には、前記表中の対応する値に割り当てられた説明あるいは診断を自動的に前記ディスプレイ(3)に表示する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御プログラム(5)は、前記「アーチファクト検知器」の相関するデータに基づいて、人工呼吸機能を自動的に制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記患者(1)に取り付け可能な前記外部センサ(11,12,13,14,15)のうち少なくとも1つが、前記人工呼吸装置(2)とのワイヤレス接続を有する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記測定値の不規則性を自動的に察知し、常に報告し、および/または察知および報告したデータを検索可能な記憶装置に格納する監視装置を備える、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記監視装置は、所定の閾値を上回るまたは下回る場合に、警報機能を作動させるものである、
ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記制御プログラム(5)は、前記警報機能の作動時に、変換器を介して電話、インターネット、またはネットワークの連絡線に接続されるとともに、前記警報機能作動時に直ちに自動的に本部と連絡をとり、警報情報を前記本部に転送するようになっている、
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記「アーチファクト検知器」は、人工呼吸状態において、前記患者(1)に対し信号を前記ディスプレイ(3)に送信し、前記患者(1)に継続的かつ視聴覚的に、前記患者(1)の現在の健康状態を通知する、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2011−504119(P2011−504119A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532701(P2010−532701)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/IB2008/054728
【国際公開番号】WO2009/063405
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(508146743)アイエムティ インフォメーション マネージメント テクノロジー アーゲー (3)