説明

人工巣

【課題】 鳥が営巣する確率が高い人工巣を提供する。
【解決手段】 人工巣1は、長尺な巣材10をランダムに湾曲させて、底部2と、この底部2の周辺から立ち上がる側面部3とを有する略籠形状に形成されている。また、側面部3は、底部2の周辺に沿って複数形成され、底部2の周辺から上方に向かって立ち上がる複数の基部30を有し、また、底部2の周辺部に沿って基部30に対して編み込み可能な2本の編込部32とを備えている。この人工巣1では、従来の固定化された営巣カゴと異なり、いくつかの基部30を選んで編込部32を編み込ませれば、鳥は、その好みや体型に会わせて巣の大きさや形を自由に変えることができる。そのため、この人工巣1を鉄塔および配電柱に取り付ければ、鳥が巣を作っても安全な場所に鳥を誘導して営巣させることができるので、巣が崩れることによって発生する地絡事故や短絡事故等を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔および配電柱などの構造物に設置される鳥の人工巣に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄塔および配電柱上に鳥が巣を作ってしまうことが問題となっていた。この鳥の巣が崩れると、崩れた巣材が電線と鉄塔および配電柱の骨材とに触れる地絡事故や、相の異なる2種類の電線に触れる短絡事故が発生する恐れがあったからである。
【0003】
このような事故の対策として、鳥が巣を作っても安全な場所に営巣カゴを予め鉄塔および配電柱に設置し、この営巣カゴに鳥を誘導して営巣させるようにしていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の営巣カゴ100は、図4に示すようなメッシュ状の素材をカップ型に形成したものなど人工的な色彩が強いためか、この従来の営巣カゴ100に鳥が営巣する確率は低かった。そのため、せっかく営巣カゴ100を鉄塔および配電柱に設置しても、鳥は営巣カゴ100を設置した場所以外の場所で営巣してしまうので、上述した地絡事故や短絡事故を有効に防止することができない懸念があった。
【0005】
そこで本発明では、上述した問題点を解決し、鳥が営巣する確率が高い人工巣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した問題を解決するためになされた発明である請求項1に記載の人工巣は、長尺な巣材をランダムに湾曲させて、底部と、この底部の周辺部から立ち上がる側面部とを有する略籠形状に形成したことを特徴とする。
【0007】
従来の営巣カゴは、直線や曲線などにより幾何学な模様を施され、人工的に見えるので鳥が営巣することを避けたことが考えられるが、本発明の人工巣は、長尺な巣材をランダムに湾曲させて略籠状に形成し、見た目に自然に見えるので、鳥が営巣する確率を上げることができる。
【0008】
そのため、この人工巣を鉄塔および配電柱に取り付ければ、人工巣が設置された場所以外の場所で鳥が営巣することを防止できるので、鳥が鉄塔および配電柱上に作った巣が崩れることにより発生する地絡事故や短絡事故等を、従来の営巣カゴを取り付けた場合に比べ、高い確率で防止することができる。
【0009】
また、この人工巣を用いると、鳥が感電死しないように鉄塔および配電柱上の安全な場所に誘導して営巣させることができる。
【0010】
次に、請求項2に記載したように、底部については、隣接する巣材同士を互いに固定し、側面部については、底部の周辺部に沿って複数形成され、底部の周辺部から上方に向かって立ち上がる複数の基部と、底部の周辺部に沿って基部に対して編み込み可能な少なくとも一つ以上の編込部とを備える形状に形成してもよい。
【0011】
従来の営巣カゴは、型崩れを防止するため営巣カゴの形状が固定されていた。しかし、この請求項2に記載された発明では、複数ある基部のうちいくつかの基部を選んで編込部を基部に編み込ませれば、鳥の好みや体型に会わせて巣の大きさや形を自由に変えることができる。
【0012】
そのため、この人工巣を鉄塔および配電柱に取り付ければ、人工巣が設置された場所以外の場所で鳥が営巣することを防止できるので、鳥が鉄塔および配電柱上に作った巣が崩れることにより発生する地絡事故や短絡事故等を、従来の営巣カゴを取り付けた場合に比べ、高い確率で防止することができる。
【0013】
尚、上述した人工巣は、複数の巣材で形成してもよいが、請求項3に記載したように、一本の長尺な巣材で形成してもよいことはもちろんである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本願発明が適用された実施形態について説明する。
[第1実施形態]
ここで図1及び図2は、第1実施形態の人工巣の斜視図で、図1は、基部に編込部を編み込んだ状態を説明するための図、図2は基部から編込部を外した状態を説明するための図である。
【0015】
本実施形態の人工巣1は、図1に示すように、長尺な巣材10をランダムに湾曲させて、底部2と、この底部2の周辺部から立ち上がる側面部3とを有する略籠形状に形成されている。
【0016】
また、底部2は、隣接する巣材10同士が互いに固定されている。
【0017】
さらに、側面部3は、底部2の周辺部に沿って複数形成され、底部2の周辺部から上方に向かって立ち上がる複数の基部30を有し、また、底部2の周辺部に沿って基部30に対して編み込み可能な2本の編込部32とを備えている。
【0018】
この人工巣1は、具体的には、次のように作成する。
【0019】
略円錐台状に形成された型の表面上にポリエチレン系樹脂からなる巣材10を順次射出して送り出すと共に、送り出された巣材10が型の上でランダムに湾曲しながら載るように送り出す。
【0020】
このとき、底部2については、巣材10の間隔を詰めて型の上に載せ、一方、底部2からは、複数の基部30が立ち上がるように、巣材10を型の上に載せる。また、底部2の周辺に沿って、基部30に編み込むための編込部32が形成されるように、巣材10を型の上に載せる。
【0021】
そして、巣材10の射出が終了したら、巣の底部2を形成する巣材10が互いに接着されるように軽く押しつぶし、所定時間冷却する。
【0022】
最後に、図2に示すように、基部30と編込部32とが接着されてしまっている部分があるので、それを引きはがすことで、本実施形態の人工巣1は完成する。
【0023】
このようにして製造された本実施形態の人工巣1では、底部2が、隣接する巣材同士が互いに固定され、側面部3は、編込部32が複数の基部30に対して自由に編み込むことができるようになっている。
【0024】
そのため、本実施形態の人工巣1では、鳥が、その好みや体型に会わせて巣の大きさや形を自由に変えることができるので、この人工巣1を鉄塔および配電柱に取り付ければ、この自由さがない従来の営巣カゴを取り付けた場合に比べ、人工巣1が設置された安全な場所に鳥を誘導できる確率が上がる。するとこの人工巣1が設置された場所で鳥が営巣する確率が上がるので、人工巣1が設置された場所以外の場所で鳥が巣を作ることを、従来の営巣カゴを用いた場合に比べ、高い確率で防止することができる。
【0025】
また、本実施形態の人工巣1は、長尺な巣材10をランダムに湾曲させた自然な形状であり、また、基部30に編込部32を編込可能な点でも自然な形状なので、従来の営巣カゴのような人工的なものと比較して、鳥がこの人工巣1で営巣する確率が上がる。
【0026】
その結果、この人工巣1を用いると、鳥が鉄塔および配電柱上に作った巣が崩れることにより発生する地絡事故や短絡事故等を、従来の営巣カゴを取り付けた場合に比べ、高い確率で防止することができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
【0027】
ここで図3は、第2実施形態の人工巣の斜視図である。
【0028】
尚、以下の説明では、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を用いて説明する。
【0029】
本実施形態の人工巣1は、図3に示すように、長尺な巣材10をランダムに湾曲させて、底部2と、この底部2の周辺部から立ち上がる側面部3とを有する略籠形状に形成されている。
【0030】
この人工巣1は、具体的には、次のように作成する。
【0031】
略円錐台状に形成された型の表面上にポリエチレン系樹脂からなる巣材10を順次射出して送り出すと共に、送り出された巣材10が型の上でランダムに湾曲しながら載るように送り出す。
【0032】
このとき、底部2については、巣材10の間隔を詰めて型の上に載せ、一方、底部2からは、複数の基部30が立ち上がるように、巣材10を型の上に載せる。また、基部30の間を縫いながら底部2の周辺に沿って編込部32が形成されるように、巣材10を型の上に載せる。
【0033】
そして、巣材10の射出が終了したら、巣材10が互いに接着されるように全体を軽く押しつぶし、所定時間冷却することで、本実施形態の人工巣1は完成する。
【0034】
このようにして製造された本実施形態の人工巣1は、長尺な巣材10をランダムに湾曲させた自然な形状であり、また、基部30に編込部32が編み込まれた自然な形状なので、従来の営巣カゴのような人工的なものと比較して、鳥がこの人工巣1で営巣する確率が上がる。
【0035】
その結果、この人工巣1を用いると、鳥が鉄塔および配電柱上に作った巣が崩れることにより発生する地絡事故や短絡事故等を、従来の営巣カゴを取り付けた場合に比べ、高い確率で防止することができる。
(その他の実施形態)
上述した第1実施形態では、編込部32を2本有する人工巣1について説明したが、編込部32は1本でもよいし、3本以上形成してもよいことはもちろんである。
【0036】
また、上記実施形態では、巣材10としてポリエチレン系樹脂を用いたが、柔軟性のある絶縁プラスチックであればどのようなものでもよい。
【0037】
本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1実施形態の人工巣の斜視図で、基部に編込部を編み込んだ状態を説明するための図である。
【図2】第1実施形態の人工巣の斜視図で、基部から編込部を外した状態を説明するための図である。
【図3】第2実施形態の人工巣の斜視図である。
【図4】従来の営巣カゴの斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1…人工巣、2…底部、3…側面部、10…巣材、30…基部、32…編込部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な巣材をランダムに湾曲させて、底部と、この底部の周辺部から立ち上がる側面部とを有する略籠形状に形成したことを特徴とする人工巣。
【請求項2】
請求項1に記載の人工巣において、
前記底部は、
隣接する前記巣材同士を互いに固定し、
前記側面部は、
前記底部の周辺部に沿って複数形成され、前記底部の周辺部から上方に向かって立ち上がる複数の基部と、
前記底部の周辺部に沿って前記基部に対して編み込み可能な少なくとも一つ以上の編込部と
を備える形状に形成したことを特徴とする人工巣。
【請求項3】
一本の長尺な巣材で形成されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の人工巣。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−110299(P2010−110299A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287743(P2008−287743)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000139573)株式会社愛洋産業 (23)
【Fターム(参考)】