説明

人工歯科補装具

ポリマー材料及びこのポリマー材料内に混合されたセラミック材料を含む複合材料からなる人工歯科補装具である。一実施形態では、セラミックファイバーが実質的に均一にポリマー材料内に分散している。一実施形態では、セラミック材料はポリマー材料にカップリング剤を介して結合される。加えて、人工歯科補装具は異なる複合材料からなり得る。この複合材料は、細孔を有するセラミック材料と、細孔に浸透した有機材料とを含んでいる。セラミックマトリックス、セラミック粒子、バインダー材料及びポロゲン材料が混合されて複合材料を生成し、次に成型され加熱されて実質的に剛体のセラミック構造を生成する。バインダー材料及びポロゲン材料の少なくとも幾らかは、加熱ステップの間に蒸発してマトリックス内に細孔を生成し、これは有機材料によって満たされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工歯科補装具に関する。また、本発明は、人工歯科補装具を作製するために使用される方法及び材料に関する。
【背景技術】
【0002】
失われ、欠損し、損傷し、発病した歯を人工歯科補装具を用いて置き換えることは、しばしば望ましいことである。人工歯科補装具には、患者の上顎又は下顎に挿入されるインプラント、歯肉カフス、治療用スクリュウ、治療用カラー、治癒過程でインプラントに取り付けられる治療用キャップ、人工歯のマウントとして機能するようにインプラントに取り付けられる支台歯(abutment)、及び治癒の過程で使用される仮の一時的な装具が含まれる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一実施形態では、人工歯科補装具は、複合材料を有する本体を備えている。一実施形態では、複合材料はポリマー材料とセラミックフィラー材料とを含んでいる。本体はその中にセラミックフィラー材料を含有するポリマー材料を備えている。実施形態を構成するには、セラミックフィラー材料をポリマー材料に混合して複合材料を生成し、その複合材料を加熱し、金型にその複合材料を注入する一つの方法が使用される。一実施形態では、セラミックフィラー材料は、ポリマー材料中に実質的に均一に分散している。他の実施形態では、ポリマー材料とセラミックフィラー材料との間の化学結合を容易にするために、複合材料にカップリング剤が適用される。他の実施形態では、カップリング剤は、セラミックフィラー材料がポリマー材料と混合される前にセラミックフィラー材料に塗工される。
【0004】
本発明のもう一つの形式では、人工歯科補装具は、他の複合材料を有する本体を備えている。このような実施形態では、複合材料は細孔とこの細孔に含まれた有機材料とを有するセラミックマトリックスを含んでいる。セラミックマトリックスを構成するために、セラミック粒子とバインダー材料とを混合して流動体を生成すること、その流動体の一定量を金型に注入すること、及びその流動体を加熱して実質的に硬いセラミック構造の人工歯科補装具を生成すること、を含む方法が使用される。一実施形態では、この流動体は粘性がある。セラミックマトリックス中に細孔を生成するために、加熱ステップの間に一定量のバインダー材料を揮発させ又は蒸発させ、これによりセラミック材料に細孔が残る。他の実施形態では、ワックス粒子のようなポロゲン(porogen)材料が複合材料に混合され、そしてこれが加熱の間に揮発して付加的に細孔を生成する。その後、熱硬化性モノマー樹脂のような有機材料がセラミックマトリックスの細孔に導入され得る。セラミックマトリックス及び/又は熱硬化性モノマーは、加熱によりモノマーを重合させてセラミックマトリックスに固定される。一実施形態では、モノマーの重合を容易にするために開始剤が複合材料に加えられる。他の実施形態では、有機材料とセラミック材料との間の化学結合を容易にするために、カップリング剤が使用される。
【0005】
これらの材料を用いた歯科装具は、セラミック材料成分により強化され、有機又はポリマー材料成分により硬化が図られている。
【0006】
本発明の一実施形態では、人工歯科補装具は複合材料により形成される本体を有し、この複合材料は、ポリマー材料と、ポリマー材料内に混合されたセラミック材料とを含み、この複合材料は、630ksi以上の引張弾性係数を有している。
【0007】
本発明の一実施形態では、人工歯科補装具は複合材料により形成される本体を有し、この複合材料は、ポリマー材料と、ポリマー材料内に混合されたセラミック材料とを含み、このセラミック材料は、複数のファイバーを含み、各ファイバーは長手方向の軸とこの軸を横切る変化する断面を規定し、比較的狭い第2の部分に接続される比較的広い第1の部分と、隣接する第1及び第2の部分の中間部分に規定されるポケットとを規定し、ポリマー材料はそのポケット内に受容される。
【0008】
本発明の一実施形態では、整形外科補装具の製造方法は、複合材料組成の所望の比率を決定すること、複合材料組成の一つを含むセラミック粒子の一定量を提供すること、一定量のポロゲン粒子を提供すること、セラミック粒子をポロゲン粒子と混合してセラミック及びポロゲン粒子の混合物を形成すること、ポロゲン粒子の少なくともいくらかを蒸発させるのに十分な温度に混合物を加熱し、それによって加熱ステップが十分な大きさ及び数の細孔を混合物内に生成して、少なくとも一つの追加の有機材料がその細孔に導入されたときに所望の複合材料組成の比率を達成するようにすること、及び追加の有機材料成分を含む有機材料を細孔に導入すること、を含んでいる。
【0009】
本発明の一実施形態では、人工歯科補装具は、歯科装具をインプラントに接続するように構成されたインプラントカップリング構造と、ポリマー材料及びポリマー材料中に分散したセラミックナノ粒子を含む複合材料を有する本体とを備えている。
【0010】
本発明の一実施形態では、人工歯科補装具は、歯科装具をインプラントに接続するように構成されたインプラントカップリング構造を備え、ポリマー材料及びポリマー材料内に分散したセラミック材料を含む複合材料を有する本体によって特徴付けられる。
【0011】
本発明の一実施形態では、人工歯科補装具は、強化要素と強化要素の周りに注入されて歯科補装具を形成する複合材料とを備え、複合材料は、ポリマー材料及びポリマー材料内に分散したセラミック材料を含んでいる。
【0012】
本発明の上述した特徴及び他の特徴、並びにそれらを達成する方法は、以下の本発明の実施形態を添付の図面に沿って辿り参照すれば、より明らかになり、より良く理解されるであろう。
【0013】
対応する参照符号は、幾つかの図を通じて対応する部材である。個々における例示は、本発明の好ましい実施形態であり、このような例示はそのような方法で本発明の範囲の限定を構成するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記のように、人工歯科補装具は、失われ、損傷し、又は疾病を負った歯を置き換えるために使用される。図1に例示されている装具は、歯科用インプラント20である。インプラント20は、この技術分野でよく知られた外科的手術の間又は抜歯に続いて設けられる下顎26の穴24に螺合する螺設部22を含んでいる。穴24は、同様に患者の上顎にも設けられ得る。図1には、治療用スクリュウ28も図示されている。治療用スクリュウ28はヘッド32から伸びる螺設シャフト30を備えている。螺設シャフト30はインプラント20の螺設穴33に螺合する。治療用スクリュウ28は、ゴミが入るのを防ぎ、インプラント20が下顎26と骨結合して歯肉組織が治癒する間に穴33に生長するのを防ぐ。治療キャップを含む歯科用具若しくは歯肉縁、又は支台歯のような人工装具の部品も、通常の方法によりインプラント20に結合される。治療キャップは治療用スクリュウと同様であるが、ワンピースのインプラントとして又は手術のときに支台歯がインプラントに設置されるときに使用される。支台歯はインプラントと人工歯との間のアダプタとして機能する。典型的な人工歯は、支台歯を受容するように設計された内側キャビティと、天然の歯の外観と硬さを複製する外側部分とを備えている。幾つかの実施形態では、人工歯は支台歯にセメントで固定される。他の実施形態では、人工歯は支台歯に締結される。仮の人工装具のような他の人工歯科補装具は、インプラントと骨との間の骨結合の間、一時的に又は仮に使用される。仮の装具は、修復が行われている間、しばしば用いられる。例えば、一時的な支台歯は、歯の形状の、即ちその上のクラウンを含む一時的なコーピング(coping)を支持するためにインプラントに取り付けられる。最終的に修復が行われた後、一時的な支台歯及びクラウン除去され、最終的な修復物がインプラントに取り付けられる。最終的な修復物は、支台歯上に適合した特別注文の支台歯及び特別注文のクラウン若しくはコーピングを含む。ここに記載した器具は、例示のインプラント(図1)及び例示の支台歯(図8及び9)に関連して記載し、ここに開示した器具もまた、他の広汎な人工歯科補装具を製造するのに使用され得る。
【0015】
本発明の一実施形態では、インプラント20、治療用スクリュウ28又は支台歯を含む歯科装具は、例えば、複合材料から構成される。複合材料には、ポリマー材料及びセラミックフィラー材料が含まれる。一実施形態では、歯科装具の本体は、図2及び図3に示すように、ポリマー材料とポリマー材料内に混合されたセラミック材料とからなるマトリックスを含んでいる。ポリマー材料としては、特に限定されるものではないが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、及び/又はポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSu)、及びポリフェニルスルホン(PPSu)などの芳香族ポリエーテルケトンを含む熱可塑性樹脂、又は熱可塑性樹脂の組み合わせを挙げることができる。一つの適切なポリエーテルイミドは、マサチューセッツ州ピッツフィールドに本部を置くGeneral Electric Plasticsから入手し得るUltem(R)のポリエーテルイミド(Ultem(R)は、General Electric Companyの登録商標である)である。一つの適切なポリフェニルスルホンは、ジョージア州のアルファレッタに本部を置くSolvay Advanced Polymersから入手し得るRadel(R)のポリフェニルスルホン(Radel(R)は、Solvay Advanced Polymers, LLCの登録商標である)である。セラミックフィラー材料は、ポリマー材料に混合されて、ポリマー材料を強化し補強する。
【0016】
セラミックフィラー材料としては、特に限定されるものではないが、イットリア安定化ジルコニア、マグネシウム安定化ジルコニア、アルミナ、酸化チタン、ヒドロキシアパタイト又はヒドロキシアパタイト及びリン酸三カルシウムからなる二相性リン酸カルシウムのようなリン酸カルシウムが挙げられる。リン酸カルシウムは、歯科装具の骨への骨結合を改善するのに使用され得る。複合材料におけるセラミックフィラー材料の割合として、下限は複合材料の約7重量%、10重量%、14重量%、20重量%、又は30重量%、上限は複合材料の約40重量%、50重量%、60重量%、又は70重量%である。一実施形態では、セラミックフィラー材料は、適当なガラス材料を含み得る。他の実施形態では、適当な有機、無機及び/又は非金属材料を含み得る。
【0017】
セラミックフィラー材料は、特に限定されるものではないが、球形、細長形状又は他の形状のものを含み得る。セラミック粒子は、約1nm〜約100nmの範囲の、即ちナノ粒子であり得、及び/又は約100nm〜約100μmのマイクロ粒子であり得る。ファイバー34(図2)のような細長形状のファイバーは、実質的に一定の厚さと直径を有し得る。一実施形態では、ファイバーの直径は、ナノメーターからミリメーターの大きさの範囲であり得、ファイバーの直径に対するファイバーの長さの比率は、約10〜約1000の間である。他の実施形態では、この比率は、下限が約10,20,又は25であり得、上限が約100、150又は1000である。本実施形態では、ファイバーの長さは約1mmである。他の実施形態では、ファイバーの長さは、下限が約0.25mmであり得、上限が約1mmであり得る。
【0018】
図10における一実施形態では、細長ファイバーは、ファイバーの長さに沿って厚さと直径が変化するものであってもよい。図10及び図11のファイバー60ようなこれらの変化する厚さ及び変化する直径を有するファイバーは、ファイバーの長さに沿って、部分62及び64のようなより大きい部分とより小さい部分とが交互に現れる部分又はセグメントの実質的な繰り返しパターンを有し得る。結果として、これらのファイバーがポリマー材料に混合されたとき、ポリマー材料は、より大きい断面を有する部分の間のより小さい断面を有する部分によって規定される「ポケット」に充填されて、ファイバーはポリマーマトリックスに機械的に噛み合い、これにより、複合材料の耐応力及び耐摩耗性が向上する。別の言い方をすれば、これらのファイバーは、比較的広い部分と比較的狭い部分によって規定される起伏の側面を有し得て、プラスチック材料が広い部分の間を満たすことになる。
【0019】
他の実施形態では、粒子36(図3)のような粒子とファイバー34(図2)との組み合わせも使用され得る。一実施形態では、セラミックフィラー材料がポリマー材料に実質的に均一に分布され又は分散され、これにより、複合材料の性質と性能の信頼性及び予測性が改善される。もう一つの実施形態では、セラミックフィラー材料は、熱的プロセスによってファイバーの表面に融着又は結合されるナノ粒子を有するファイバーを含んでいてもよい。これらの融着セラミック材料は、例えば、複合材料の破壊靱性を改善し得る。一実施形態では、ジルコニア粒子は加熱されてジルコニアファイバー上に融着し得る。更なる実施形態においては、例えば、酸化チタン粒子又は他の顔料は、例えば、ジルコニアファイバー上に融着され得る。これらの実施形態では、複合材料は、高い材料特性と所望の色を有し得る。
【0020】
上記の歯科装具は、射出成型プロセスを使用して作製することができる。射出成型プロセスに先だって、混練プロセスで複合材料が製造される。この混練プロセスでは、図6に示すように、ポリマー材料とセラミックフィラー材料の混合物が粘稠な状態まで加熱され、そして複合材料となるまで機械的に混合される。一つの例示の実施形態では、混合はシグマタイプミキサーのような適当なミキサーを用いて行われる。一実施形態では、ポリマー材料は、実質的に室温で望ましい粘稠状態を有し、加熱される必要がない。上記のように、セラミックフィラー材料がポリマー材料に実質的に均一に分布するまで複合材料を混合することが好ましい。続いて、複合材料はオリフィス又はダイを介して射出又はプレスされる。複合材料がオリフィスを出るとき、小さく切断され、半円柱状の断片、又はペレットにされる。この混練プロセスは、通常、二軸押出機を用いて行われる。あるいは、幾つかの実施形態では、複合材料は直接金型に導入される。他の予定されている実施形態では、複合材料は少なくとも一つのブロックに成型され、これは続いて所望の形状に変えられる。一実施形態では、上記の混練プロセスに先だち、又はこれと同時に、セラミックフィラー材料又は複合材料は、これらに限定されるものではないが、シラン、金属アルコキサイド、及びアルコキシジルコネートの少なくとも一つを含むカップリング剤で処理され得る。カップリング剤は、一般的には、これらに限定されるものではないが、有機材料と無機材料との間に水素結合、共有結合及びイオン結合を含む化学結合を形成し得るものである。カップリング剤は、また、有機及び無機材料の間に物理的結合を形成し得る。一実施形態では、シランがセラミックフィラー材料に塗工される。N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びトリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートのようなシランは、珪素元素と、加水分解性の官能基と、非加水分解性の有機官能基とを含んでいる。有機官能基は、複合材料のポリマー材料のような有機材料と共有結合を形成する。加水分解性の官能基は、無機材料、即ち複合材料のセラミックフィラー材料と共有結合を形成する。他の実施形態では、Kenrich Petrochemicals, Inc. (Bayonne, NJ 07002)から入手し得るKen-React(R) KZ TPP (PEEK又はPAEK用)又は Ken-React(R) NZ 12 (PMMA用)のようなジルコネートカップリング剤が、混練プロセスの間に添加される。これらのジルコネートカップリング剤は、特に高温複合材料処理のために設計されている。これらのジルコネートカップリング剤は、複合材料の重量に対して、下限約0.1重量%若しくは0.2重量%、又は上限約0.5重量%、1.0重量%若しくは10重量%で使用される。もう一つの実施形態では、チタニュウムメトキサイド、Ti(OCH34のようなチタニュウムアルコキサイドが複合材料用のセラミックフィラー材料の処理に使用され得、混練プロセスの間に添加される。
【0021】
一実施形態では、シランは上記のように混練プロセスの間に複合材料に加えられる。一般的には、アルコールキャリア中のシランが、セラミックフィラー材料とポリマー材料との予備混合物にその溶液をスプレーすることによって分散される。シランカップリング剤は、下限約0.2重量%若しくは0.5重量%、又は上限約1.0重量%、5.0重量%若しくは10重量%の濃度でアルコールキャリア中に混合され得る。セラミックフィラー材料とポリマー材料とのシラン反応の副反応物の真空脱揮発は必須である。
【0022】
もう一つの実施形態では、シラン材料は、混練プロセスに先だってセラミックフィラー材料に添加される。シラン材料は、アルコール溶液でセラミックフィラー材料に直接スプレーされ得る。セラミックフィラー材料は、次にミキサー中で乾燥される。もう一つの実施形態では、セラミックフィラー材料はシランのエタノール溶液中に置かれて撹拌される。続いて、シラン溶液は注ぎ出されて、後にコーティングされたセラミックフィラー材料の沈降物が残る。セラミックフィラー材料は、次にエタノールで洗浄され、乾燥され、室温で硬化される。
【0023】
カップリング剤が適用される方法に関係なく、一度複合材料がペレット化されると、ペレットは射出成型機に移送され、ここで複合材料、特にポリマー材料は加熱されて所望の粘度を得、次に金型に注入される。一実施形態では、複合材料は、実質的に室温で望ましい粘稠状態を有し、加熱される必要はない。このプロセスの間、セラミックフィラー材料は実質的にポリマー材料内に懸濁している。十分な時間が経過した後は、歯科装具は実質的に固化状態にあり、金型から除くことができる。射出成型プロセスに続いて、歯科装具は機械加工され、望ましくない変形部と表面の粗さを除くために磨かれる。加えて、歯科装具の表面は、必要に応じてガスプラズマクリーニングプロセスによって処理され、歯科装具と接着剤との間の接着が高められる。
【0024】
幾つかの実施形態では、チタニュウム歯科装具のような他の部品の上、中又は周囲に成型され得る。これらの実施形態では、その部品は射出プロセスに先だって金型キャビティ内に設置される。射出プロセスの間、複合材料はその部品の少なくとも一部の周りに注入される。複合材料はその部品と化学結合を形成し、又はその部品と機械的に連結して一体の装具を生成する。これらの実施形態は、一体化された歯科装具の一部の特定の材料特性と、その装具の他の部分の他の材料特性とを必要とする応用において有利である。
【0025】
例示の挿入成型された支台歯が図8及び図9に示されている。この実施形態では、複合材料は、ここに記述したように、チタニュウム取付スクリュウ52上に挿入成型されて、支台歯本体50を形成する。取付スクリュウ52は、延伸シャンク部58から径方向に伸びるフランジ54及び56を有している。射出成型プロセスの間、複合材料はフランジ54及び56の間を流れて、複合材料が固化した後に本体50を取付スクリュウ52に連結し、これにより、それらの間の相対的な動きが妨げられる。他の実施形態では、本体50と取付スクリュウ52との間の相対的な回転運動が可能である。図8及び9に示す実施形態では、支台歯本体50は歯の解剖学的な形状に成型される。しかしながら、他の実施形態では、本体50は、これに限定されるものではないが、実質的に円柱体を含む形状を有するように成型され得る。挿入成型プロセスは、金属又はファイバー強化挿入物、又は人工補装具の部品における要素を取り付けるためにも使用され得る。挿入部は、歯科装具部品における薄い断面が患者の組織によって影響される歯科装具部品に取り付けられる。挿入部はまた、噛み合わせの負荷が歯科装具部品における特に高い応力を誘発するところに取り付けられる。幾つかの実施形態では、射出成型プロセスはポリマー材料中のフィラー材料のファイバーを、テスト及び有限要素解析によって予想される応力を含む最良の応力抵抗を与える方向に配向させるのに使用される。少なくとも一つの実施形態では、挿入物は実質的に複合材料によって封入される。
【0026】
ポリマー材料は、その色が所望の色に近くなるように選択され得る。更に、セラミックフィラー材料は、歯科装具の色を調節するためにも使用され得る。例えば、酸化チタンは複合材料に白又は実質的に白色を与えるセラミックフィラー材料として使用され得る。一実施形態では、着色剤又は顔料が、歯科装具の色を調整するために複合材料に加えられる。一実施形態では、着色剤は少なくとも一つの金属酸化物と無機金属とを含み得る。もう一つの実施形態では、歯科装具は一連の射出成型プロセスから製造され得る。この実施形態では、幾つかの異なる複合材料が連続して注入されて、一体の歯科装具が形成される。これらの複合材料の色は、同一装具における色が変化し又は勾配を与えるように選択され得る。更に、異なる複合材料は、歯科装具の異なる範囲における異なる構造又は化学的性質を提供するように選択され得る。例えば、共成型プロセスは、2つの異なるプラスチックを使用した部品を成型するのに使用され得る。一実施形態では、機械的に強靱な炭素強化材料が歯科装具部品の内部を形成するのに使用され、一方、TiO2充填した材料が外側層を形成するのに使用され得る。炭素強化材料は黒ずんだ色であり、歯科用途では美しくないが、白色、特に心地よいTiO2充填材料でカバーされ得る。他の実施形態では、特に限定されるものではないが、反射率、不透明性及び鏡面性を含む他の光学的特性が、ポリマー材料、セラミックフィラー材料及び添加物の選択により調整される。歯科装具の表面仕上げも、ポリマー材料、セラミックフィラー材料及び添加物の選択により調整される。
【実施例】
【0027】
以下は例示の複合材料の処方を示している。歯の支台歯の幾つかの実施形態が以下に開示されているけれども、ここに開示されている材料は、他の歯科補装具にも使用することができる。以下のパーセンテージは、特に示さない限り重量%である。
【0028】
実施例1−9
実施例1.この実施例では、ポリマー材料はポリエーテルエーテルケトン(PEEK))であり、セラミック材料はアルミナファイバー、即ち、Al23である。アルミナファイバーは直径約120μmであり、長さが約1−2mmである。アルミナファイバーをシランで処理するために、エタノール及び水が混合されて、95重量%エタノールと5重量%水の溶液が調製される。その後、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのようなシランがそのエタノール溶液の約5重量%でその溶液に加えられる。次に、Al23ファイバーがセラミックに対するシランの重量比率が約1:100でその溶液に加えられる。その後、その溶液は約20〜30分撹拌され、セラミックフィラーはデカンテーションされ、次に約110℃で約10〜30分乾燥される。PEEKは粉体に粉砕され、200メッシュの篩で篩過される。処理されたアルミナファイバーは、次に、約30重量%のアルミナファイバーを含む混合物となるように、PEEKポリマーに加えられる。より詳細には、アルミナファイバーは、アルミナファイバーとPEEK粉体とを互いに混合した合計の約30重量%で含まれる。PEEK粉体及びアルミナファイバーは、ZSK−25二軸押出機で混練される。その後、その複合材料は加熱されて金型キャビティ内に注入されて、歯の支台歯を形成する。これを冷却し、支台歯が金型から取り出され、必要に応じて機械加工され及び/又は清浄化される。
【0029】
実施例2.この実施例では、支台歯の作製方法は、PEEKポリマー材料が、Ultem 1010に置き換えられる点を除いて、実施例1に記載した方法と同様である。粉体化のプロセスの間、Ultem 1010は平均粒子サイズ約2mmまで粉砕される。
【0030】
実施例3.この実施例では、支台歯の作製方法は、PEEKポリマー材料が、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)に置き換えられる点を除いて、実施例1に記載した方法と同様である。
【0031】
実施例4.この実施例では、ポリマー材料はポリエーテルケトンケトン(PEKK)であり、セラミック材料はジルコニアファイバー(ZrO2)である。ジルコニアファイバーは約120μmの直径と、約1−2mmの長さを有している。実施例1と異なり、本実施例におけるジルコニアファイバーは、シランで処理されない。実施例1と同様に、PEKKは粉砕されて粉体となり200メッシュの篩で篩過される。次に、ジルコニアファイバーは、混合物が30重量%のジルコニアファイバーを含むように、PEKKポリマーの粉体に加えられる。PEKK及びジルコニアファイバーは、シグマタイプのミキサーを使用して約10分間混合され、ZSK−25二軸押出機で混練される。その後、その混合物は加熱されて金型キャビティ内に注入されて、歯の支台歯を形成する。
【0032】
実施例5.この実施例では、支台歯の作製方法は、PEEKポリマー材料が、PEKKポリマーに置き換えられ、アルミナファイバーがリン酸カルシウムに置き換えられる点を除いて、実施例1に記載した方法と同様である。本実施例では、リン酸カルシウムは約70%のヒドロキシアパタイト粒子と、約30%のリン酸三カルシウム粒子とを含んでいる。更に、シグマタイプのミキサーで混合している間、リン酸カルシウム粒子は、実施例1に記載されている10分間の混合に代えて、PEKKポリマーと約20分間混合される。
【0033】
実施例6.この実施例では、ポリマー材料はポリエーテルケトンケトン(PEKK)であり、セラミック材料はジルコニアナノ粒子(ZrO2)である。ジルコニアナノ粒子の平均粒子サイズ約70nmである。実施例1と異なり、本実施例におけるジルコニアナノ粒子は、シランで処理されない。実施例1と同様に、PEKKは粉砕されて粉体となり200メッシュの篩で篩過される。次に、ジルコニアナノ粒子は、混合物が30重量%のジルコニアナノ粒子を含むように、PEKKポリマーの粉体に加えられる。PEKK及びジルコニアナノ粒子は、シグマタイプのミキサーを使用して約20分間混合され、ZSK−25二軸押出機で混練される。その後、その混合物は加熱されて金型キャビティ内に注入されて、歯の支台歯を形成する。
【0034】
実施例7.この実施例では、支台歯の作製方法は、PEEKポリマー材料が、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)に置き換えられ、アルミナファイバーがジルコニアファイバー(ZrO2)及び酸化チタン(TiO2)微小粒子に置き換えられる点を除いて、実施例1に記載した方法と同様である。ジルコニアファイバーは、シランが約95重量%のエタノールと約5重量%の水とを含有するエタノール溶液に混合されることを除いて、実施例1と同様にシラン化される。酸化チタン粒子は、本実施例ではシラン化されないが、他の実施例ではシラン化され得る。混合プロセスの間、ジルコニアファイバーは約30重量%で、酸化チタン粒子は約7重量%で、PEKK粉体に加えられる。
【0035】
実施例8.この実施例では、支台歯の作製方法は、アルミナファイバーがジルコニアファイバー(ZrO2)に置き換えられる点を除いて、実施例1に記載した方法と同様である。ジルコニアファイバーは、約120μmの直径と、約1−2mmの長さを有している。ジルコニアファイバーは、シランが約95重量%のエタノールと約5重量%の水とを含有するエタノール溶液に混合されることを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法でシラン化される。
【0036】
実施例9.この実施例では、支台歯の作製方法は、PEEKポリマー材料が、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)に置き換えられ、アルミナファイバーが酸化チタン(TiO2)微小粒子に置き換えられる点を除いて、実施例1に記載した方法と同様である。本実施形態では、酸化チタン粒子はシラン化されない。更に、シグマタイプのミキサーを使用した混合の間、酸化チタン粒子はPEKK粉体と、約90重量%のPEKK粉体に対して約10重量%酸化チタン粒子の比率で混合され、これは実施例1に概説した10分に代えて約20分間混合される。
【0037】
【表1】

【0038】
表1を参照すれば、実施例1に開示した方法によって生成される複合材料は、平均値からの±1以内の標準偏差の値を含む約749ksiの弾性係数又は引張係数を有している。このように、本実施形態では、約749ksiの平均弾性係数の範囲は、最小値688ksiから最大値804ksiの値を含むであろう。弾性係数又は引張弾性係数を決定するために、複合材料を有する公知の試料が張力の下に置かれ、結果として生じる偏位が記録される。弾性係数はまた、複合材料の試料を圧縮状態に置いて偏位を記録することにより、決定することもできる。実施例2に開示した方法により調製される複合材料は、最小値630ksi及び最大値784ksiを含む約712ksiの引張係数又は平均弾性係数を有している。同様に、実施例1を参照して、平均値から±1以内の標準偏差の値を含む約12.5ksiの平均応力を有している。このように、この実施例では、この範囲は最小値12.4ksi及び最大値12.6ksiを含むであろう。更に、均値から±1以内の標準偏差の値を含む約8.3%の平均最大歪みを有している。このように、この実施例では、この範囲は最小値6.7%及び最大値9.9%を含むであろう。他の実施例において、複合材料は0.5%以上の平均最大歪みを有している。
【0039】
補装具の実施例10−12
実施例10.この実施例では、支台歯の作製方法は、アルミナファイバーが約70nmの平均サイズを有するアルミナナノ粒子に置き換えられる点を除いて、実施例1に記載した方法と同様である。アルミナファイバーは、シランが約95重量%のエタノールと約5重量%の水とを含有するエタノール溶液に混合されることを除いて、実施例1に記載したのと同様の方法でシラン化される。シラン化されると、アルミナ粒子はPEEKポリマー粉体と、約14重量%アルミナ粒子で混合される。
【0040】
実施例11.この実施例では、支台歯の作製方法は、アルミナナノ粒子が、シランの代わりに、Ken-React from Kenrich Petrochemicals, Incのジルコネートカップリング剤で処理される点を除いて、実施例10に記載した方法と同様である。ジルコネートカップリング剤は、PEEKポリマー粉体及びアルミナファイバーの合計の重量に対して約0.3重量%でPEEK粉体及びアルミナファイバーと混合される。
【0041】
実施例12.この実施例では、支台歯の作製方法は、酸化チタン粒子が例えばシランのようなカップリング剤で処理される点を除いて、実施例9に記載した方法と同様である。
【0042】
表1から分かるように、複合材料の弾性係数はポリマー材料と、ポリマー材料に混合されるセラミック材料のタイプ及び量と、シランのようなカップリング剤が使用されたかどうかに依存する。また、弾性係数は、連続的な又は非連続的なファイバーを含んでいるかと、そのファイバーが負荷の方向に配向しているかに依存している。連続するファイバー強化複合材料、即ち、ファイバーの長さが臨界的ファイバー長よりずっと大きく、ファイバーが負荷と同じ方向に整列しているような複合材料については、複合材料の弾性係数Ecは、下記の式(1)によって決定される。
【0043】
【数1】

【0044】
ここで、Em及びEfは、それぞれポリマーマトリックスとセラミックファイバーの弾性率であり、Vm及びVfは、それぞれVm+Vf=1となるポリマーマトリックスとセラミックファイバーの体積である。ファイバーの臨界的ファイバー長は、ファイバーの直径、ファイバーの極限強度、及びファイバーとプラスチックマトリックスとの間の結合強度 に依存する。多くの組み合わせについて、この臨界長は約1mmのオーダーである。負荷の方向を横切る方向にファイバーが整列して連続ファイバー強化複合材料に対しては、複合材料の弾性係数は、以下の式(2)によって決定される。
【0045】
【数2】

【0046】
不連続でランダムに配向しているファイバーに対しては、複合材料の弾性係数は、以下の式(3)によって決定される。
【0047】
【数3】

【0048】
ここで、KはVfとEf/Emとの比に依存する効率パラメータである。Kは、通常、0.1〜0.6の範囲である。何れにしても、微粒子フィラーを含有する複合材料に対する弾性係数の上限及び下限は、式(4)及び(5)によって決定される。
【0049】
【数4】

【0050】
【数5】

【0051】
表1を参照すれば、実施例1〜9で開発された複合材料の弾性係数は約512ksiから約962ksiの範囲内にあるけれども、弾性係数は約1000ksi、約2000ksi、又は約3000ksiにまで高めることができ、幾つかの実施形態では、約6000ksiにまで高めることができる。このような改良は、複合材料におけるセラミック材料を30%から50%又は70%にまで増加させることにより、例えばファイバーのアスペクト比、即ち、ファイバーの直径に対する長さの比を約10から約100又はそれ以上に高めることにより、例えばセラミックとポリマー材料との間の結合をカップリング剤を介して改善することにより、並びに、例えば混練及び成型プロセスを改良してポリマー材料内のセラミック材料をより良く混合してより均一な分布を得て、複合材料中の不純物及び空隙率を減少させることにより、達成され得る。
【0052】
本発明の他の形態では、インプラント、支台歯、治療用スクリュウを含む人工歯科補装具は、他の複合材料から構築され得る。一実施形態では、図4に示した細孔38のような細孔を有するセラミックマトリックスを含む複合材料と、図5に示す材料40のような細孔に含まれる熱硬化性樹脂のような有機材料とを含む。セラミックマトリックスは、イットリア安定化ジルコニア、マグネシウム安定化ジルコニア、アルミナ、リン酸カルシウム、又はセラミック材料の組み合わせを含むセラミック材料を含み得る。
【0053】
有機材料は、これに限定されるものではないが、ビスフェノールグリシジルメタクリレート(Bis−GMA)、メチルメタクリレート(MMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、又は熱硬化性樹脂の組み合わせを含む熱硬化性樹脂材料を含み得る。加えて、これに限定されるものではないが、アクリル樹脂、スチレン樹脂、他のビニル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、放射線不透過性ポリマー、及び生体材料を含む、モノマー、オリゴマー及びポリマーの多くから構成され得る。
【0054】
更に、有機材料には、これに限定されるものではないが、以下お化合物の一又はそれ以上が挙げられる:アセナフチレン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ジグリシジルエーテルビスフェノール、3−グリシジルプロピルトリメトキシシラン、テトラブロモビスフェノール−A−ジメタクリレート、ポリアクチド、ポリグリコリド、1,6−ヘキサメチレンジメタクリレート、1,10−デカメチレンジメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート(1,3−ブチレングリコールジアクリレート)、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート)、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、2−エトキシエトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、エトキシ化ビスフェノール−A−ジアクリレート、エトキシl化ビスフェノール−A−ジメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エチルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、グリセリルプロポキシトリアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート(ブタンジオールモノアクリレート)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、イソブチルビニルエーテル、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、無水マレイン酸、無水メタクリル酸、2−メトキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、ネオペンチルアクリレート、ネオペンチルメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、n−オクタデシルアクリレート(ステアリルアクリレート)、n−オクタデシルメタクリレート(ステアリルメタクリレート)、n−オクチルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ポリブタジエンジアクリレートオリゴマー、ポリエチレングリコール 200 ジアクリレート、ポリエチレングリコール 400 ジアクリレート、ポリエチレングリコール 200 ジメタクリレート、ポリエチレングリコール 400 ジメタクリレート、ポリエチレングリコール 600 ジメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、n−トリデシルメタクリレート、メチレングリコールジアクリレート、メチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシリルメタクリレート、(トリメチルシリルメチル)メタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ビニルアセテート、ビニルカプロラクタム、n−ビニル−2−ピロリドン、ジアクリル酸亜鉛、及びジメタクリル酸亜鉛。
【0055】
図7を参照すれば、本発明の歯科インプラント又は支台歯は、射出成型プロセス及び加熱プロセス含む一連のプロセスから構築され得る。流動物はスラリーに似、又はそれは粘稠なペーストに似ている。複合材料は、次に、加熱されてバインダー材料の十分な量が蒸散させられて、人工歯科補装具の硬化したセラミック構造が生成する。蒸散させたバインダー材料は、細孔を後に残し、これは次に有機材料によって浸透される。本実施形態では、セラミック構造物とその中に含まれる有機材料は、再加熱されてセラミックマトリックスと有機材料との間の結合を促進する。一実施形態では、カップリング剤がセラミックマトリックスに適用されて、セラミックマトリックスと有機材料との間の結合を更に促進する。これらのプロセスは、以下に更に詳細に議論される。
【0056】
本発明の一実施形態では、粘稠な複合材料はセラミック粒子と水とを含んでいる。水はセラミック粒子を水素結合を介して結合する。幾つかの実施形態では、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールのような追加のバインダー材料が複合材料に混合され、更にセラミック粒子を互いに接着する。これらの実施形態では、バインダーは、これらに限定されるものではないが、水素結合、共有結合、及びイオン結合を含んで、セラミック粒子と化学結合する。他の実施形態では、少なくとも一つのバインダーが、水の代わりに使用される。幾つかの実施形態では、バインダー材料及びセラミック粒子は、一貫した一様な複合材料が得られるまで混合されて、最終的な歯科装具における一貫しない材料特性が避けられる。解膠剤を複合材料に加えることも有用である。例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム及びクエン酸アンモニウムなどの解膠剤は、セラミック粒子の凝集を減少させ、セラミック粒子を複合材料内に実質的に均一に分散させるように機能する。
【0057】
一実施形態では、複合材料が調製された後、射出成形機に移される。一般的には、射出成形機は、望ましくない又は過剰な水を複合材料から除くために乾燥機構を有している。この実施形態では、ドライヤーは、一定量の水を蒸発させることにより、複合材料の粘度を増加させるのに使用される。更に、複合材料は射出成型機の射出バレルでも加熱されて水が蒸発され、複合材料の粘度が増大する。幾つかの実施形態では、複合材料は、キャビティに注入される前には一貫性のあるほぼペースト状を有している。他の実施形態では、その流動物はより低い粘度を有している。十分な時間が経過した後、流動物は実質的にセラミック構造物又はマトリックスに冷却される。金型から取り出されると、その構造物は次の加熱プロセスに送られる。
【0058】
この実施形態では、セラミック構造物は次に約1000℃に加熱され、上記で議論した成型プロセスに引き続く。このプロセスの間、セラミック構造物内に残っているかなりの量の水が蒸発して、セラミック構造物内に細孔を残す。同様に、複合材料に加えられる追加のバインダー材料と解膠剤は、加熱プロセスの間に蒸発させることができ、マトリックス内に追加の細孔を残す。セラミックマトリックス内の細孔の量は、一つには、加熱プロセスの継続時間と温度とに依存するであろう。幾つかの実施形態では、細孔の量は、セラミックマトリックスの調製に使用されたプロセスにも依存するであろう。特に、上記で議論した射出成型プロセスの高充填圧により、セラミックマトリックスは互いに固く押し込まれ、ある環境では不十分な空隙率を生じる。この問題を改善するために、ポロゲン材料が複合材料に混合され得る。ワックス粒子のようなポロゲン材料は、セラミックマトリックス内で空間を占める。幾つかの実施形態では、ワックス粒子は、ナフタレン及びパラフィンの少なくとも一つを含み得る。ポロゲン材料は、加熱プロセスまでマトリックス内に残り、揮発蒸散してマトリックス内に追加の細孔を残す。例えばスリップキャスティングのような他のプロセスでは、射出成型されたマトリックスより僅かに低く押し固められたセラミックマトリックスを生成し、従って、追加のポロゲン材料を必要としない。空隙率を増大させる他の方法には、複合材料にガスを発生させる化学反応を誘発してその内部に細孔を生成することが含まれる。
【0059】
一実施形態では、セラミック構造物に残される細孔の量及び/又はサイズは、使用するポロゲン材料のタイプ及び/又は量とによってコントロールすることができる。例えば、もし比較的多量のポロゲン材料が使用されるなら、上述のように加熱プロセスの間に、より多くのセラミック構造物に残されて大きな全体の細孔容量をもたらし、逆もまた同様である。追加の及び/又はより大きい細孔を有するセラミック構造物は、より多くの有機又はプラスチック材料をその細孔の内部に受容することができる。有機又はプラスチック材料は、細孔に浸透する際に、セラミック材料の強靱性及び弾力性のような他の特性を改善する。従って、歯科装具の材料的な特性は、セラミック粒子に混合されるポロゲンの量、そして上述の加熱プロセスの間の蒸発をコントロールすることによりコントロールされ得る。一実施形態では、以下に詳細に述べるように、プロトタイピング技術が細孔の生成とセラミック本体の空隙率をコントロールするのに使用され得る。
【0060】
一実施形態では、複合成分の所望の比率が決定された後、セラミック粒子の所定量が供給され、セラミック粒子は複合成分の一つを有する。ポロゲン粒子の所定量も供給されセラミック粒子と混合されて、セラミック及びポロゲン粒子の混合物が形成される。その後、この混合物は、ポロゲン粒子の少なくとも幾らかを蒸発させるのに十分な温度に加熱され、これにより、加熱ステップは十分なサイズと数の細孔をその混合物に生成し、その細孔に少なくとも一つの追加の成分が導入されたときに複合成分の所望の比率を達成する。その後、追加の複合成分を含む有機材料が細孔に導入される。
【0061】
上記で議論したように、セラミックマトリックスの強靱性を改善するために、上述の細孔に有機材料が浸透され又は導入される。一実施形態では、有機材料は熱硬化性プラスチック樹脂である。本実施形態では、樹脂が細孔に導入される前に、セラミックマトリックスは、最低約50℃若しくは70℃又は最高約140℃若しくは200℃、典型的には約100℃に予備加熱される。続いて、加熱されたセラミックマトリックスは熱硬化性プラスチック樹脂を含むバスに浸漬される。幾つかの実施形態では、セラミックマトリックスと樹脂のバスとの間の温度勾配を与えることは、樹脂の浸透を容易にする。もし熱硬化性樹脂がMMAであれば、浸漬は一般的に室温で行われる。しかし、もし樹脂がBis−GMA又はBis−GMAとTEGDMAとの混合物であれば、その樹脂の粘度を下げるために、最低約50℃若しくは60℃又は最高約80℃若しくは100℃、典型的には約70℃にバスを加熱する必要があり得る。本実施形態では、セラミックマトリックスはバスに約8時間から24時間の間で浸漬される。
【0062】
上記で議論した熱可塑性又はポリマー材料とは異なり、熱硬化性樹脂は非リンクモノマーである。一実施形態では、熱可塑性モノマー樹脂の重合を促進するために、ベンゾイルパーオキサイド及びジクミルパーオキサイドのような開始剤が上記バスに含まれ得る。開始剤は、モノマーをポリマーの繰り返し単位に変える重合を開始する有機分子である。一実施形態では、開始剤は樹脂モノマーの約2%又は5%までの量で加えられ得るが、典型的には樹脂モノマーの約1%までの量で加えられる。熱硬化性樹脂とセラミックマトリックスとの間の結合を促進するために、上記の浸漬プロセスに先だってカップリング剤がセラミックマトリックスに適用され得る。一実施形態では、カップリング剤は、セラミック構造物をシランのアルコール溶液に浸漬し、次に、室温より高い温度、典型的には一実施形態における約100℃、最高で約110℃で乾燥することにより、適用されて、セラミックマトリックスへのシランの結合が促進される。一実施形態では、セラミック構造物は、最低約25℃若しくは50℃又は最高約150℃若しくは200℃に加熱される。上記で議論したように、セラミックマトリックスのような無機材料と有機材料との間で共有結合し得る。従って、上記の浸漬プロセスの間、有機熱硬化性樹脂はシランと結合し、これはセラミック構造物と結合し、これにより、セラミック構造物と樹脂との間の結合が改善される。
【0063】
浸漬プロセスの後、本実施形態では、熱硬化性樹脂は、最低50℃、60℃若しくは80℃又は最高約120℃、若しくは150℃、典型的には約100℃で、開始剤の濃度、モノマーの選択及びオーブンの温度に依存して約4及び24時間の間、オーブン中で硬化される。この硬化プロセスの間、熱硬化性樹脂モノマーとカップリング剤との間の結合が促進される。硬化プロセスの後、歯科装具は機械加工され研磨されて、好ましくない不整と表面の粗さとが除かれる。歯科装具の表面は、歯科装具と接着剤との間の結合を高めるために、ガスプラズマクリーニングにより処理され得る。
【0064】
本発明の実施形態のプロセスは、複合材料が金型キャビティ内の他の部品の内部又は周りにオーバーフローするオーバーモルディングプロセスとしても使用することができる。加えて、有機及びセラミック材料は、それらの色が所望の歯の色に近い色となるように選択され得る。歯科装具の色を調整するために、複合材料に着色剤を加えることができる。他の実施形態では、これらに限定されるものではないが、不透明性及び鏡面性を含む他の光学的性質が、ポリマー材料、セラミックフィラー材料及び添加剤の選択により、調整され得る。歯科装具の表面仕上がりも、ポリマー材料、セラミックフィラー材料及び添加剤の選択により、調整され得る。
【0065】
本発明の他の形態では、人工歯科補装具は溶融堆積法(fused deposition)、即ち、ラピッドプロトタイピングプロセスを使用して構築することもできる。このプロセスの間、一実施形態では、ポリマー材料とセラミックフィラー材料とが互いに混合される。続いて、その混合物は層状にデポジット(deposit)されて、ポリマー材料とセラミックフィラー材料とを含む複合材料を有する人工歯科補装具を形成する。一実施形態では、この混合物は、コンピュータ、コンピュータからの指令で動作するバルブ、及びコンピュータからの指令で位置決めされるノズルを備えた装置により、層状に塗布される。この実施形態では、ノズルは予め決められた経路に沿って駆動される。同時に、その混合物は、コンピュータからの指令に従ってバルブが開いたときに、ワークの表面にノズルから流れ出る。続いて、コンピュータによる指令に従って、ノズルはその経路又は他の予め決められた経路に沿って更なる層を塗布する。これらの層は互いに溶融して人工歯科補装具を形成する。臨床医がその臨床医のオフィスで上記プロセスを使用して誂えの支台歯を作製することができ、これによって誂えの支台歯を入手する時間を削減することが検討される。
【0066】
本発明は、例示のデザインを有するものとして記載されているが、本発明は本開示の思想及び範囲を逸脱することなく更に改変され得る。本願は、従って、一般的な原理を使用する本発明のいかなる変形、使用、応用をもカバーすることを意図している。更に、、本願は、本発明が関連する技術分野における周知又は慣用の範囲内として、本開示からのこのような逸脱をもカバーすることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】歯科インプラント、治療スクリュウ、及び患者の下顎の部分の破断分解斜視図である。
【図2】インプラントの本体内にセラミックファイバーが混合された第1の組成物を示す、図1の歯科インプラントの部分の破断断面図である。
【図3】インプラントの本体内に半球状粒子が分散した第2の組成物を示す、図1の歯科インプラントの部分の破断断面図である。
【図4】細孔がインプラントに存在する第3の組成物を示す、図1の歯科インプラントの部分の破断断面図である。
【図5】細孔内の有機材料を有する図4の歯科インプラントの部分の破断断面図である。
【図6】本発明の人工歯科補装具を製造するための第1の例示のプロセスをステップを表すブロックダイヤグラムである。
【図7】本発明の人工歯科補装具を製造するための第2の例示のプロセスをステップを表すブロックダイヤグラムである。
【図8】本発明に従う支台歯の斜視図である。
【図9】9−9線に沿った図8の支台歯の断面図である。
【図10】ファイバーの長さ方向に沿って変化する暑さを有するセラミックファイバーを含む歯科補装具の破断断面図
【図11】図10の歯科インプラントの部分の詳細図である。
【符号の説明】
【0068】
20 インプラント
22 螺設部
24 穴
26 下顎
28 治療用スクリュウ
30 螺設シャフト
33 螺設穴
38 細孔
50 支台歯本体
52 取付スクリュウ
54 フランジ
56 フランジ
40 材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工歯科補装具をインプラントに接続するように構成されたインプラントカップリング構造を有する人工歯科補装具であって、ポリマー材料及び該ポリマー材料内に分散したセラミック材料を含む複合材料を有する本体を備えたことを特徴とする人工歯科補装具。
【請求項2】
請求項1記載の人工歯科補装具であって、前記セラミック材料がナノ粒子を含んでいることを特徴とする人工歯科補装具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の人工歯科補装具であって、前記セラミック材料が複数のファイバーを含み、各ファイバーは、長手方向の軸と該軸を横切る変化する断面を規定し、比較的狭い第2の部分に接続される比較的広い第1の部分と、隣接する第1及び第2の部分の中間部分に規定されるポケットとを規定し、前記ポリマー材料は該ポケット内に受容されることを特徴とする人工歯科補装具。
【請求項4】
請求項1,2又は3記載の人工歯科補装具であって、前記セラミック材料がセラミック粒子及びセラミックファイバーを含み、前記セラミック粒子は前記セラミックファイバーに付着していることを特徴とする人工歯科補装具。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の人工歯科補装具であって、前記複合材料は、630ksi以上の引張弾性係数を有していることを特徴とする人工歯科補装具。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の人工歯科補装具であって、前記複合材料は、0.5パーセント以上の平均最大歪みを有していることを特徴とする人工歯科補装具。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の人工歯科補装具であって、前記複合材料は、前記セラミック材料に加えて二酸化チタンを含むことを特徴とする人工歯科補装具。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の人工歯科補装具であって、前記複合材料はカップリング剤を含み、該カップリング剤は前記セラミック材料を前記ポリマー材料に接着することを特徴とする人工歯科補装具。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の人工歯科補装具であって、強化要素を更に備え、前記複合材料は前記強化要素の周りに注入されて前記歯科補装具を形成することを特徴とする人工歯科補装具。
【請求項10】
請求項1乃9の何れかに記載の人工歯科補装具であって、前記人工歯科補装具が支台歯であることを特徴とする人工歯科補装具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−541874(P2008−541874A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513684(P2008−513684)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/020130
【国際公開番号】WO2006/127838
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(507385637)ジマー デンタル, インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】