説明

人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は人毛調の適度な表面光沢と適度な艶消し性を有する人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】かつら、ヘヤーウイッグ、付け毛あるいはヘヤーバンドなどに用いられる人工毛髪の素材として、近年、ポリエチレンテレフタレートに代表される飽和ポリエステルを主成分とする繊維が、その優れた抗張力、耐熱性、セット保持性の良さなどの点から広く用いられるようになった。飽和ポリエステルを主成分とする繊維を人工毛髪として用いる場合には易セット性、セット保持性、櫛通り性、光による退色が少ないなどの特性のほか、特に人毛に近い適度な艶消し性と適度な表面光沢が必要とされるが、常法で製糸したポリエステル繊維そのままでは糸表面が平坦で、かつ光の屈折率が高いため、表面光沢が強く、人工毛髪に適用することができない。この点を改良するため、従来よりポリエステル繊維表面の艶消し技術の提案が行なわれてきた。例えばポリエステル繊維の表面に多数の擦過傷を生じさせて粗面化し、艶消し人工毛髪を得る方法が知られている。しかしながらこの方法により得られた艶消し繊維は繊維表面に生じた擦過傷のために繊維の強度が低下するという欠点を有していた。また、特開昭63−12716号公報には酸化硅素を主成分とする微粒子などを含有するポリエステル系繊維をアルカリ性水溶液で処理し、繊維表面に特定の微細な凹凸を形成させた人工毛髪用ポリエステル繊維およびその製造方法が開示されている。しかしながら、この方法で得られた繊維は表面の凹凸が微細かつ均一過ぎるために艶消し状態が不十分で、斜め方向からの光を受けたときに強い光の反射を示すことが認められ、人工毛髪としての使用が制約されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記した種々の問題のない、人毛調の適度な表面光沢と適度な艶消し性を有する人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体の提供にある。
【0004】
【課題を解決するための手段】前記した本発明の目的は、表面に凹部を有するモノフィラメントにおいて、開口部の最大長が2μm以上、30μm以下の凹部を糸表面積100平方μm当たり0.1個〜10個有するポリエステルモノフィラメント5〜95本数部と、糸表面からの高さが0.5μm以上、8μm以下である表面突起を糸表面積1平方ミリメートル当たり10個以上、10個以下有するポリエステルモノフィラメント95〜5本数部とをブレンドしてなる人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体によって達成できる。以下、本発明を詳細に説明する。本発明の人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体とは、かつらあるいはヘヤーウイッグあるいは付け毛またはヘヤーバンドなど毛髪を補う目的、あるいはおしゃれなどの目的で毛髪部または頭部に装着する様々な物の全部あるいは一部分を構成する繊維材料をさすものである。本発明の人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体を構成するところのポリエステルモノフィラメントのポリエステルとは、テレフタル酸を主たる二官能性カルボン酸とし、エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルが好ましいが、テレフタル酸の一部あるいは全部を2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ジカルボキシフェノキシメタン、イソフタル酸などに置き換えたもの、また、エチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールの一部あるいは全部をジエチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノール−AのEO付加物などに置き換えたものであってもよい。また、少量であればトリメシン酸、トリメリット酸、硼酸、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三官能化合物を共重合したものでもよい。また、該ポリエステルは、改質の目的で他の熱可塑性合成樹脂、例えばナイロン6,ナイロン6・6などのポリアミド類、ポリエチレン,ポリプロピレンなどのポリオレフィン類、ポリテトラフルオロエチレン,ポリフッ化ビニリデン,エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマーなどの含フッ素ポリマー類などを0.5重量%から50重量%の範囲でポリエステルにブレンドすることもできる。
【0005】本発明の人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体は、糸表面に、開口部の最大長が2μm以上、30μm以下の凹部を糸表面積100平方μm当たり0.1個〜10個有するポリエステルモノフィラメント5〜95本数部と、糸表面からの高さが0.5μm以上、8μm以下である表面突起を糸表面積1平方ミリメートル当たり103個以上、105個以下有するポリエステルモノフィラメント95〜5本数部とがブレンドされていることが必須である。本発明の人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体を構成するところの、糸表面に凹部の最大長および単位面積当たりの存在個数は(株)日立製作所S−4000電解放射形走査電子顕微鏡を用いて、該フィラメント表面を500倍の倍率で10視野撮影した写真から計測したものである。本発明の人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体を構成するところの表面に凹部を有するポリエステルモノフィラメントには、表面に開口部の最大長が2μm以上、30μm以下の凹部が糸表面積100平方μm当たり0.1個〜10個存在することが必須である。糸表面に存在する凹部の個数が糸表面積100平方μm当たり0.1個〜10個であっても、凹部の開口部の最大長が2μmより小さいと艶消し効果が不十分となり、本発明の目的を達成できない。また、凹部の開口部の最大長が30μmより大きいと表面のざらつきが肉眼で見えるようになり、更には糸物性が低下し本発明の目的上好ましくない。◎ 一方、糸表面に存在する凹部の開口部の最大長が2μm以上、30μm以下の範囲であっても、凹部の個数が糸表面積100平方μm当たり0.1個より少ないと艶消し効果が不十分となり、本発明の目的を達成できない。また、凹部の個数が糸表面積100平方μm当たり10個より多いと糸物性が低下し、人工毛髪として好ましく用いることができない。更に、糸表面に、開口部の最大長が10μm以上である凹部が糸表面積100平方μm当たり0.01個以上存在すると艶消し効果が一層顕著となるので好ましい。
【0006】ポリエステルモノフィラメント表面の凹部はいかなる方法で形成させたものでもよく、例えばポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)やポリブチレンテレフタレート(以下、PBTという)などのポリエステルチップを溶融紡糸して得たフィラメントの表面に無機粒子などを衝突させて凹部を形成することができるが操作とコントロールが繁雑となる。より効率的にはポリエステルの重縮合反応前あるいは反応中に、エチレングリコールや1,4−ブタンジオールなどのグリコール成分中に不活性粒子を分散させたスラリーを添加し重縮合するなど公知の方法で得た。平均粒子径が1μm以上、10μm以下の不活性粒子を0.1重量%以上、10重量%以下含有するPETやPBTなどのポリエステルチップを常法により溶融紡糸・延伸した後、フィラメントをアルカリ性の液体中で処理する(以下、N処理という)ことにより得ることができる。N処理は通常、1重量%〜25重量%のNaOH水溶液中にフィラメントを浸漬し、60℃〜100℃で数分から数十分処理して減量する方法で行なわれる。このときのN処理によるフィラメントの重量減少は、N処理前のフィラメント重量に対して1〜12重量%が適当である。本発明の表面に凹部を有するポリエステルモノフィラメントが含有する不活性粒子の平均粒径は(株)堀場製作所製のCAPA−500を用いて測定したものである。該不活性粒子の含有量はN処理後の艶消し効果、およびフィラメントとしての物理特性の点から、0.1重量%以上、10重量%以下が好ましい。また、平均粒径はN処理後の艶消し効果、およびフィラメントとしての物性の点から1μm以上、10μm以下であることが好ましい。本発明の表面に凹部を有するポリエステルモノフィラメントが含有するところの不活性粒子とは、有機粒子、無機粒子いずれでもよく、例えば炭酸カルシウム,酸化硅素,酸化チタン,酸化アルミニウムなどの酸化物、燐酸カルシウム,燐酸一水素カルシウム,燐酸二水素カルシウム,燐酸カリウム,燐酸一水素カリウム,燐酸二水素カリウム,燐酸アンチモンなどの燐酸塩、硫酸バリウム,硫酸カルシウムなどの硫酸塩、架橋ポリスチレンなどを挙げることができるが、特に酸化硅素を主成分とする一次粒径が数十から数百nmなどの微粒子が集合した凝集性粒子や球状の単分散性粒子が取扱い易さや該フィラメントよりなる人工毛髪の発色性などの面から好ましい。凝集性の酸化硅素粒子を用いると該フィラメント表面に様々な形状の混在した凹部を形成させることができ、更には染色時に該フィラメント中に存在する粒子の内部にも染料が侵入するため、人工毛髪のいわゆる白ちゃけを防ぐことができる。一方、球状の単分散性酸化硅素粒子を用いると表面の凹部の形状や大きさが比較的均一となり、よって粒子を選択することで目的に応じた艶消し効果を発現することができる。また、更には凝集性の酸化硅素粒子と単分散性酸化硅素粒子を適宜使い分けたり、組み合わせて用いることもできる。また、上記した各種の粒子2種以上を適宜、組み合わせて用いることもできる。 本発明の表面に凹部を有するポリエステルモノフィラメントはそのまま人工毛髪として用いることができるが、必要に応じて染色処理したものを用いることができる。また、染色は集束体とした後に染色することもできる。本発明の表面に凹部を有するポリエステルモノフィラメントを染色する場合の染料は分散染料を使用できるが、耐光堅牢度が5級以上のものが使用中の人工毛髪の変・退色が少ないので、好ましい。また、染色は公知の染色キャリヤー剤を併用しても良いが、染色キャリヤー剤を必要としない高圧染色が好ましい。また、染色前の該ポリエステルモノフィラメントにカーボンブラックや各種顔料などが添加されていてもよく、この場合には染色時の染料が節約できるばかりでなく、用途によっては染色を行なう必要がないなど、好ましいものである。
【0007】本発明の人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体を構成するところの表面に突起を有するポリエステルモノフィラメントには、糸表面からの高さが0.5μm以上、8μm以下である表面突起を糸表面積1平方ミリメートル当たり10個以上、10個以下有することが必須である。
【0008】本発明の表面に突起を有するポリエステルモノフィラメント表面に存在するところの表面突起の高さおよび単位面積当たりの存在個数はELIONIX社のESM−3200およびPMS−1を用い計測したものである。
【0009】表面突起の個数が糸表面積1平方ミリメートル当たり10個以上、10個以下であっても、糸表面の突起高さが0.5μmより低いと艶が強く、集束体中で該モノフィラメントの存在が目立つ傾向にあり、本発明の目的を達成できない。同様に、突起高さが8μmを越えると艶が消え過ぎて、集束体としたときに適度な人毛調の艶が発現しなくなるため、本発明の目的を達成できない。
【0010】一方、糸表面の表面突起の高さが0.5μm以上、8μm以下であっても、糸表面積1平方ミリメートル当たりの表面突起の存在個数が10個より少ないと艶が強く、集束体中で該モノフィラメントの存在が目立つ傾向にあり、本発明の目的を達成できない。また、存在個数が10個より多いと該モノフィラメントが強伸度の低いものとなり好ましくない。更に、表面突起のうち、高さ1μm以上の表面突起が糸表面積1平方ミリメートル当たり50個以上で、かつ高さ2μm以上の表面突起が糸表面積1平方ミリメートル当たり10個以上存在すると艶が一層人毛調となるので好ましい。
【0011】ポリエステルモノフィラメント表面の突起はいかなる方法で形成させたものでもよく、例えばPETやPBTなどのポリエステルチップを溶融紡糸して得たフィラメントの表面に突起形成性の薬剤、粒状物などを接触・固着してもよいが、操作が複雑となる。より効率的にはポリエステルの重縮合反応前あるいは反応中に、エチレングリコールや1,4−ブタンジオールなどのグリコール成分中に不活性粒子を分散させたスラリーを添加し重縮合するなど公知の方法で得た。平均粒径が1μm以上、10μm以下の不活性粒子を0.1重量%以上、10重量%以下含有するポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルチップを常法により溶融紡糸・延伸することにより得ることができる。面に突起を有するポリエステルモノフィラメントが含有するところの不活性粒子の平均粒径は(株)堀場製作所製のCAPA−500を用いて測定したものである。該不活性粒子の含有量は艶消し効果、およびモノフィラメントとしての物理特性の点から、0.1重量%以上、10重量%以下が好ましい。また、平均粒径も艶消し効果、およびフィラメントとしての物性の点から1μm以上、10μm以下であることが好ましい。
【0012】面に突起を有するポリエステルモノフィラメントが含有するところの不活性粒子とは、有機粒子、無機粒子いずれでもよく、例えば炭酸カルシウム,酸化硅素,酸化チタン,酸化アルミニウムなどの酸化物、燐酸カルシウム,燐酸一水素カルシウム,燐酸二水素カルシウム,燐酸カリウム,燐酸一水素カリウム,燐酸二水素カリウムなどの燐酸塩、硫酸バリウム,硫酸カルシウムなどの硫酸塩、架橋ポリスチレンなどを挙げることができるが、特に酸化硅素を主成分とする一次粒径が数十から数百nmなどの微粒子が集合した凝集性粒子や球状の単分散性粒子が取扱い易さや該フィラメントよりなる人工毛髪の発色性などの面から好ましい。凝集性の酸化硅素粒子を用いると該フィラメント表面に様々な形状の混在した突起を形成させることができ、更には染色時に粒子内部にも染料が侵入するため、人工毛髪のいわゆる白ちゃけを防ぐことができる。一方、球状の単分散性酸化硅素粒子を用いると表面突起の高さが比較的均一となり、よって粒子を選択することで目的に応じた艶消し効果を発現することができる。また、更には凝集性の酸化硅素粒子と単分散性酸化硅素粒子を適宜使い分けたり、組み合わせて用いることもできる。また、上記した各種の粒子2種以上を適宜、組み合わせて用いることもできる。
【0013】面に突起を有するポリエステルモノフィラメントはそのまま人工毛髪の一部として用いることができるが、必要に応じて染色処理したものを用いることができる。また、染色は集束体とした後に染色することもできる。本発明の表面に突起を有するポリエステルモノフィラメントを染色する場合の染料は分散染料を使用できるが、耐光堅牢度が5級以上のものが使用中の人工毛髪の変・退色が少ないので、好ましい。また、染色は公知の染色キャリヤー剤を併用しても良いが、染色キャリヤー剤を必要としない高圧染色が好ましい。また、染色前の該ポリエステルモノフィラメントにカーボンブラックや各種顔料などが添加されていてもよく、この場合には染色時の染料が節約できるばかりでなく、用途によっては染色を行なう必要がないなど、好ましいものである。
【0014】本発明の人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体中の、糸表面に、開口部の長手方向の径が2μm以上、30μm以下の凹部を糸表面積100平方μm当たり0.1個〜10個有するポリエステルモノフィラメントのブレンド量が5本数部より少ないと、該集束体がやや強い光の反射を呈するため本発明の目的上好ましくない。また、表面に凹部を有する該ポリエステルモノフィラメントのブレンド量が95本数部より多いと人毛調の適度な艶の無い集束体となるため本発明の目的上好ましくない。一方、本発明の人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体中の、糸表面からの高さが0.5μm以上、8μm以下である表面突起を糸表面積1平方ミリメートル当たり10個以上、10個以下有するポリエステルモノフィラメントとのブレンド量が95本数部より多いと、該集束体がやや強い光の反射を呈するため本発明の目的上好ましくない。また、表面突起を有する該ポリエステルモノフィラメントのブレンド量が5本数部より少ないと人毛調の適度な艶の無い集束体となるため本発明の目的上好ましくない。
【0015】本発明の集束体を構成するモノフィラメントの糸断面形状はいかなるものでもよく、例えば丸、楕円、3角、T、Y、H、+、5葉,6葉,7葉,8葉などの多葉形状、正方形、長方形、菱形、繭型、馬蹄型などを挙げることができ、また、これらの形状を一部変更したものであってもよい。また、これら各種断面形状のモノフィラメントを適宜組み合わせて用いることができる。
【0016】本発明の集束体を構成するところのポリエステルモノフィラメントの太さは20μm以上、120μm以下であることが、天然様の効果を発現させる点から望ましい。更に好ましくは25μm以上、100μm以下である。本発明の集束体をヘヤーバンド用素材として用いるときは、集束体が単一太さのモノフィラメントを束ねたものでも良いが、かつらあるいはヘヤーウイッグまたは付け毛などの素材として用いる場合は25μm以上、100μm以下の範囲の太さのモノフィラメントを適宜組み合わせ、ミックスした集束体であるのが好ましい。
【0017】また、該集束体を構成するポリエステルモノフィラメント中には使用中の人工毛髪の変・退色を防止する目的で、公知の紫外線吸収剤を含有させることができる。紫外線吸収剤としては、例えば2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔3,5−ビス(2,2−ジメチルプロピル)−2−ヒドロキシフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(3−ターシャリーブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ターシャリーブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤および2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン30〜50モル%とメタクリル酸メチル70〜30モル%とのランダムコポリマー、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2´,4,4´−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤および酸化鉄微粒子などを挙げることができる。これらの紫外線吸収剤中でもビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタンおよび2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールおよび2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾールおよび酸化鉄微粒子などが溶融状態のポリエステルに添加・混合する際の耐熱性が良好で、高い耐光性を有するモノフィラメントが得られるため、好ましく用いることができる。また、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン30〜50モル%とメタクリル酸メチル70〜30モル%とのランダムコポリマーは高分子量でありポリエステルモノフィラメント中からのブリードアウトが少なく安定した耐光性が得られるため、好ましく用いることができる。また、これらの各種紫外線吸収剤の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0018】該集束体を構成するポリエステルモノフィラメント中には使用中の火災による危険から人体を守るため、燐系,ハロゲン系,三酸化アンチモンなどの公知の有機または無機質の難燃剤が含まれていてもよい。また、該集束体を構成するポリエステルモノフィラメントは、フィラメントの帯電によるまとわり付きや絡まり、あるいは埃の付着を防止する目的で、帯電防止剤を含有した変性ポリエステルを用いたもの、あるいは帯電防止剤を表面付与したものでもよい。
【0019】本発明の集束体は、例えば、20〜100cmの長さに切断した、上記した表面に凹部を有するポリエステルモノフィラメント5〜95本数部と、表面に突起を有するポリエステルモノフィラメント95〜5本数部とを一束の集束体に合糸する操作を繰り返し行なうことで製造することができる。
【0020】また、本発明の人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体を構成する繊維として前記した表面に凹部を有するポリエステルモノフィラメントと表面に突起を有するポリエステルモノフィラメントの他に、必要に応じて人毛,微細な凹凸を表面に有するポリエステルフィラメント,モダアクリルフィラメント,球晶凹凸を有するポリアミドフィラメント,塩化ビニールフィラメントなどを適宜併用することもできる。
【0021】かくして、本発明の表面に凹部を有するポリエステルモノフィラメントと表面突起を有するポリエステルモノフィラメントからなる人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体は、人毛調の適度な表面光沢と適度な艶消し性を有しているため、かつらあるいはヘヤーウイッグあるいは付け毛またはヘヤーバンドなど毛髪を補う目的、あるいはおしゃれなどの目的で毛髪部または頭部に装着する様々な物の全部あるいは一部分を構成する繊維材料など、光によるキラ付き感の嫌われる様々な分野において好適に用いることができる。
【0022】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例中の艶消し性の評価は、モノフィラメント1000本を束ねた集束体の反射光沢を、直射日光の当たる屋内の窓際で日光の入射角5〜45度で視覚判定し、繊維軸方向に比較的強い反射光沢を示したもの、および人毛調の表面光沢が見られないものは人工毛髪として不適当なものとし、また、人毛調の適度な表面光沢と適度な艶消し性を示したものは人工毛髪用として好適なものと判定したものである。
【0023】実施例1平均粒径2.36μmの凝集性酸化硅素粒子を2.5重量%含有する極限粘度(フェノールとテトラクロルエタン1:1の混合溶剤中25℃で測定)0.67のポリエチレンテレフタレートチップを真空下160℃で8時間乾燥した。該チップを、290℃でエクストルーダ型混練機と計量ギヤポンプおよび50メッシュのガラスビーズと150メッシュの金網より成る濾過層とを有する紡糸機により、孔径0.3mmの紡出孔を30ホール有する紡糸口金より溶融紡糸し、次いでトータル5.0倍に延伸し、更に8%のリラックス処理を施した後に巻取った。得られたポリエステルフイラメントの単糸表面には、高さ0.5μm以上、8μm以下の表面突起が糸表面積1平方ミリメートル当たり約18000個存在し、単糸強度は3.8g/デニールで、単糸の直径は60μmであった。
【0024】次いで、このフィラメントの半分量はこのまま保存し、残りの半分量のフィラメントをN処理(NaOH50g/■水溶液,98℃,30分間)し、N処理による重量減少率7wt%のポリエステルフイラメントを得た。得られたポリエステルフイラメントの単糸表面には、開口部の長手方向の径が2μm以上、30μm以下の凹部が糸表面積100平方μm当たり1.1個存在していた。この凹部のうち開口部の長手方向の径が10μm以上のものは糸表面積100平方μm当たり0.03個存在していた。また、単糸強度は3.5g/デニールで、単糸の直径は58μmであった。この表面に凹部を有するフィラメントを、高圧スミス染色機を用い、次に示す染料液にて浴比20:1、130℃で60分間の条件で染色を行ない、次いでハイドロサルファイト1.5g/■,苛性ソ−ダ1g/■,アミラジン1g/■を含む水溶液中(浴比20:1)にて80℃で20分間還元洗浄を行ない、染め上がりフィラメントを得た。また、N処理すること無く保存しておいた表面に突起を有するフィラメントも同様に染色を行ない、染め上がりフィラメントを得た。
【0025】
〔染料液〕
Sumikaron Brown 2.5% owf Miketon Polyester Black 0.3% owf Dianix Fast Yellow 1.5% owf Dianix Fast Dark Green 1.0% owf次いで、長さ30cmに切った、表面に凹部を有する染め上がりモノフィラメント500本を幅10cmにほぼ均一に広げ、その上に同じく長さ30cmに切った、表面に突起を有する染め上がりモノフィラメント500本をほぼ均一に重ねた。次いで、このモノフィラメントの重なりを幅方向に4等分し、それぞれの上下を入れ替えないように一つに重ねた。このモノフィラメント集束体を2等分し、一方を幅10cmにほぼ均一に広げた上に、残りをほぼ均一に重ね、このモノフィラメントの重なりを幅方向に4等分し、それぞれの上下を入れ替えないように一つに重ねた。この操作を計20回繰り返し、表面に凹部を有する染め上がりモノフィラメント500本と表面に突起を有する染め上がりモノフィラメント500本とをブレンドしてなる集束体を得た。この集束体の艶消し性を評価したところ、人毛調の適度な表面光沢と適度な艶消し性を有し人工毛髪用として好適なものであった。
【0026】実施例2,3表面に凹部を有する染め上がりモノフィラメントの本数を70本に変更し、表面に突起を有する染め上がりモノフィラメントの本数を930本に変更したこと(実施例2)、および表面に凹部を有する染め上がりモノフィラメントの本数を930本に変更し、表面に突起を有する染め上がりモノフィラメントの本数を70本に変更したこと(実施例3)以外は実施例と同様にして得た集束体の艶消し性を評価したところ、いずれも人毛調の適度な表面光沢と適度な艶消し性を有し人工毛髪用として好適なものであった。
【0027】比較実施例1表面に凹部を有する染め上がりモノフィラメントの本数を30本に変更し、表面に突起を有する染め上がりモノフィラメントの本数を970本に変更したこと以外は実施例と同様にして得た集束体の艶消し性を評価したところ、繊維軸方向に比較的強い反射光沢を示し、人工毛髪として不適当なものであった。
【0028】比較実施例2表面に凹部を有する染め上がりモノフィラメントの本数を970本に変更し、表面に突起を有する染め上がりモノフィラメントの本数を30本に変更したこと以外は実施例と同様にして得た集束体の艶消し性を評価したところ、人毛調の適度な光沢に欠け、人工毛髪として不適当なものであった。
【0029】
【発明の効果】本発明の人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体は、糸表面に、開口部の最大長が2μm以上、30μm以下の凹部を糸表面積100平方μm当たり0.1個〜10個有するポリエステルモノフィラメント5〜95本数部と、糸表面からの高さが0.5μm以上、8μm以下である表面突起を糸表面積1平方ミリメートル当たり10個以上、10個以下有するポリエステルモノフィラメント95〜5本数部とをブレンドしたものであるため、人毛調の適度な表面光沢と適度な艶消し性を有し、かつらあるいはヘヤーウイッグあるいは付け毛またはヘヤーバンドなど毛髪を補う目的、あるいはおしゃれなどの目的で毛髪部または頭部に装着する様々な物の全部あるいは一部分を構成する繊維材料として好適なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】糸表面に凹部を有するモノフィラメントにおいて、最大長2μm以上、30μm以下の凹部を糸表面積100平方μm当たり0.1個〜10個有するポリエステルモノフィラメント5〜95本数部と、糸表面からの高さが0.5μm以上、8μm以下である表面突起を糸表面積1平方ミリメートル当たり10個以上、10個以下有するポリエステルモノフィラメント95〜5本数部とからなる人工毛髪用ポリエステルモノフィラメント集束体。

【特許番号】特許第3134421号(P3134421)
【登録日】平成12年12月1日(2000.12.1)
【発行日】平成13年2月13日(2001.2.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−301981
【出願日】平成3年11月18日(1991.11.18)
【公開番号】特開平5−140817
【公開日】平成5年6月8日(1993.6.8)
【審査請求日】平成10年5月22日(1998.5.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【参考文献】
【文献】特開 平5−140807(JP,A)
【文献】特開 平5−86505(JP,A)
【文献】特開 平1−6114(JP,A)
【文献】特開 昭63−211311(JP,A)