説明

人工水路における汚濁水の浄化工法

【課題】
人工水路の汚濁水の懸濁粒子を除去する浄化方法。
【解決手段】
人工水路の水路面の側壁に間隔を設けて突壁部を設け、かつ前記突壁部が互いに対岸の突壁部の中間部に位置するように設け、必要によりさらに水路の中央部に障害物壁を設けてなる人工水路における汚濁水の浄化工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工河川や農業用水路等の人工水路における流水中の懸濁粒子を除去するための浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年農業用水路が整備されると共に、例えば八郎潟のように大規模な埋立により造成が行われている。このような広範な造成地の場合人工水路としては水路幅が70メートルを超えるものから数メートルのもの迄種々の水路が整備されている。これらの水路に流れる水は、近年水質が悪化し、除濁することが求められるようになった。しかしながら、人工水路は一般的に直線的に作られているために、懸濁粒子の自然沈降による除濁しか期待することができない。従って流速が比較的に遅いときはある程度の除濁効果は期待することはできるが、流速が早くなるに従い除濁効果は得られなくなるのが実状であった。
【0003】
そこで従来これらの懸濁粒子の除濁を行う方法として、例えばシート膜を水路を遮断する様に水路幅いっぱいに展張したり、短冊形状のシート膜を間隙を設けて水面近傍に水路幅いっぱいに展張する方法が提案されている。かかる工法は流速が遅い場合除濁効果は優れているが、流速が早い場合、シート膜がめくれ上がり除濁効果が悪くなる。また水路幅いっぱいに展張する事から水路幅が広い場合は、多数の機材を用いなければならず工事費が高額になる欠点があった。また水路幅いっぱいに展張するため舟などの航行に支障をきたすことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許第0911708号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡便な整備により、かつ舟の航行等も自由にできる工法について種々研究を重ねた結果本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、人工水路の水路面の側壁に間隙を設けて突壁を設け、かつ前記突壁が互いに対岸(対側壁)の突壁間に位置するように設ける、人工水路における汚濁水の浄化工法である。また本発明はこれらの浄化工法に加えて人工水路の中央部にも水流に対して直交するように障害物壁を設けた浄化工法をも含むものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の浄化方法によれば、突壁、障害物壁の上流側では静かな淀み域を形成し、下流側にできるカルマン流の内側は、マイナスの引き込み領域(アトラクター)を形成して懸濁粒子を除濁することができる。
また水路幅が大きい場合は、水路の中央近辺に障害物壁を設置することによって除々に水流抵抗を減少させる透過体であるミックスセルを設け、障害物壁の前後に形成する除濁ポケットにより、懸濁粒子の沈降部を形成させることができる。
【0008】
さらに本発明は突壁あるいは障害物壁の前後に除濁ポケットの沈殿分離部を大きく形成することができ、水域内では懸濁粒子の相互干渉により濁質濃度を増し干渉沈降させて除濁効果を高め、懸濁粒子に由来するBODおよびCODなどの除濁を行うことができる。
加えて本発明は田畑から集合枡を介して農業排水や降雨水が人工水路に流入しても、流入部近傍にある突壁あるいは障害物壁によって除濁が行われるので懸濁粒子等の拡散を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】人工水路に突壁部として一枚の突壁を設けた場合を示す平面図
【図2】人工水路に突壁部として2枚の突壁を設けた場合を示す平面図
【図3】人工水路の水路面の側壁から2列に杭を設け、その間隙部に突壁板を挟持させた場合を示す平面図
【図4】複数列に杭を設け、その杭に突壁板をジグザク状になるように挟持させた場合を示した平面図
【図5】人工水路に突壁部と障害物壁部を設けた場合を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明を図面を参照しながら説明するが、本発明は以下の説明のみに限定されるものではない。
図1は、人工水路の一部を示した平面図であり、人工水路の水路面の側壁に突壁部として一枚の突壁を設けた場合である。すなわち人工水路の片側の水路面の側壁に突壁1a,突壁1cを間隔を設けて設置する。一方対岸の側壁には、突壁1b,突壁1dを設けるが、その場合に突壁1bは、対岸に設けられた突壁1aと突壁1cとの中間部に位置するように設ける。突壁1dも同様にして対岸に設けられた突壁の中間部に位置するように設ける。
前記「中間部」とは隣接する突壁との距離を3分割した中央区画部を指称するものである。例えば隣接する突壁との距離が12mとすると一方の突壁を基点として4〜8mの位置に設置することを意味するものである。
【0011】
水路中に設けられた突壁によって、突壁面の上流側には淀み域4が形成され、一方突壁面の下流側には懸濁粒子の引き込み領域(以下アトラクターと称す)5が形成される。そしてこれらの淀み域4およびアトラクター5によって水路を流れる汚濁水中の懸濁粒子をこれらの域に沈降させて除濁を行うことができる。
また人工水路中に突壁を設けることによって水路内の流れが蛇行流6となることから除濁効果が一層促進される。また長期間経過すると前記淀み域4およびアトラクター5に懸濁粒子が堆積して突壁がなくとも自然に蛇行流6とすることができる。また所望により堆積した懸濁粒子は除去することもできる。
【0012】
人工水路に設けられる突壁は、隣接する突壁との間隔を水流の流速等を考慮して適宜選択すれば良いが、好ましくは式
d=ny
(ただし、dは突壁間の距離を示し、nは2〜20の数を示し、yは突壁の長さを示す)
の関係を満足することが好ましい。
【0013】
突壁の長さも特に限定されるものではないが、好ましくは人工水路幅の1/2〜1/10の長さが好適である。
【0014】
本発明の突壁及び障害物壁としては、板状、膜状、土嚢状、蛇籠状、コンクリートブロック状、礫堤状等種々の全閉不透過性のものや、ネット状、紐状、短冊形状、杭状、筒状、多孔管状、葦状、礫間接触浄化袋(セルカ/日本ソリッド社製商品名)、除々に水流抵抗を減少させる透過体であるタイヤを十文字状等に組合わせて製作されたミックスセル(日本ソリッド社製商品名)の他に、懸濁粒子の相互干渉により濁質濃度を高め干渉沈降させて除濁効果を高める通水型の水流傾斜板パトレシア(日本ソリッド社製商品名)や、難沈降性微粒子を接触・付着沈降させて捕捉分離される透水型の水流傾斜板パトレシア(日本ソリッド社製商品名)等種々の透過性のものを使用することができる。更に板状、膜状、土嚢状、蛇籠状、コンクリートブロック状、礫堤状等の全閉不透過性のものであっても、間隔を開けて設置することによって、通水性の有する突壁とすることも好適である。
【0015】
また本発明は、図2に示すように水路の側壁に設けられる突壁部は、例えば2枚の突壁1を間隔を置いて設けることもできる。図2では2枚の場合を示したが3枚以上でもよい。これらの突壁部に設けられる突壁間の間隔は1〜100m、好ましくは5〜20mとすることが好適である。
【0016】
図3は、人工水路の水路面の側壁から水路に2条に杭2を打ち込み、この杭の間隙に突壁1を挟着することもできる。このようにすることによって突壁を必要により撤去することができる。
また図4に示すように杭2を複数条打ち込み、そこに単体の板状体7を複数枚組み合わせることによってジグザク状に突壁1を設けることができる。
【0017】
図5は人工水路に突壁1と障害物壁3を設けた場合を示したものである。水路の中央近辺に、この障害物壁3を設けることによって障害物壁3の下流面にカルマン渦流8を生起させ、懸濁粒子を沈降除去することができる。複数の障害物壁3を間隔を置いて設けることもできる。これらの障害物壁部に設けられる障害物壁3の間隔は1〜100m、好ましくは5〜20mとすることが好適である。
また、障害物壁3は除々に水流抵抗を減少させる透過体であるミックスセル9を単数又は複数設けることができる。
ミックスセル9は、必要に応じて、突壁1に設けることができる。
【0018】
ミックスセル9とは、例えばタイヤを十文字に組合わせてボルトで固定した物が好適に使用できるが、凹凸性を有した構造物であればこれに限定しない。
【0019】
本発明の人工水路に突壁1と障害物壁3を設けた場合の配置方法は、水流に対して垂直に突壁1或いは障害物壁3を設ける他に、ジグザクな波形状、斜形状、鏃形状、ポケット形状等に設けることができる。
【符号の説明】
【0020】
1・・・・突壁
2・・・・杭
3・・・・障害物壁
4・・・・淀み域
5・・・・引き込み領域
6・・・・蛇行流
7・・・・板状体
8・・・・カルマン渦流
9・・・・ミックスセル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工水路の水路面の側壁に間隔を設けて突壁部を設け、かつ前記突壁部が互いに対岸の突壁部の中間部に位置するように設けることを特徴とする、人工水路における汚濁水の浄化工法。
【請求項2】
人工水路の水路面の側壁に間隔を設けて突壁部を設け、かつ前記突壁部が互いに対岸の突壁部の中間部に位置するように設けると共に、人工水路の中央部に障害物壁を設けることを特徴とする人工水路における汚濁水の浄化工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−19165(P2013−19165A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153153(P2011−153153)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000229162)日本ソリッド株式会社 (39)