説明

人工発汗装置

【課題】人体における発汗の状態をより正確に再現できる人工発汗装置を提供すること。
【解決手段】人工発汗装置1は、面状に広がって配置される皮膚部材2と、皮膚部材2に設けられる複数の液体透過穴21と、皮膚部材2に設けられる複数の水蒸気透過穴22と、皮膚部材2の内面側に設けられ複数の液体透過穴21に液体を供給する液体供給部4と、皮膚部材2の内面側に設けられ複数の水蒸気透過穴22に水蒸気を供給する水蒸気供給部5と、液体供給部4による液体の供給、及び水蒸気供給部5による水蒸気の供給を制御する制御部7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工発汗装置に関する。より詳しくは、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の性能評価を行う場合等に用いられ、吸収性物品を装着可能な人工発汗装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体における発汗状態を再現できる人工発汗装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、模擬皮膚と、この模擬皮膚に設けられる複数の発汗穴と、これら複数の発汗穴に体温と同様の温度の水溶液を供給する水溶液供給手段と、を備える発汗装置が開示されている。この発汗装置では、水溶液供給手段は、複数の発汗穴それぞれに対して独立して水溶液を供給可能に構成されている。より具体的には、水溶液供給手段は、先端側が複数の発汗穴それぞれに接続される複数の管と、これら複数の管それぞれの基端側に接続された複数のシリンジと、を備えて構成される。そして、シリンジの内部に収容された所定の温度の水溶液を管側に押し出すことで水溶液を管の基端側から先端側に向けて流通させ、発汗穴から水溶液(液体状の汗)を発汗させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−167510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人体から発汗される汗には、液体の状態で発汗される汗、及び水蒸気の状態で発汗される汗(いわゆる不感蒸泄)がある。ここで、液体の状態の汗と水蒸気の状態の汗とでは、発汗の挙動が異なる。
しかしながら、特許文献1で提案された発汗装置では、複数の発汗穴のすべてに対して所定の温度の水溶液を供給しているので、複数の発汗穴からは、液体状の汗が発汗されることとなる。また、複数の発汗穴それぞれから発汗される液体状の汗の一部が水蒸気状の汗として発汗されることも考えられるが、これは、あくまで液体状の汗の一部が蒸発して水蒸気状となったにすぎない。即ち、特許文献1で開示された発汗装置では、人体における発汗の状態を正確に再現できない。
【0005】
従って、本発明は、人体における発汗の状態をより正確に再現できる人工発汗装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、面状に広がって配置される皮膚部材と、前記皮膚部材に設けられる複数の液体透過穴と、前記皮膚部材に設けられる複数の水蒸気透過穴と、前記皮膚部材の内面側に設けられ前記複数の液体透過穴に液体を供給する液体供給部と、前記皮膚部材の内面側に設けられ前記複数の水蒸気透過穴に水蒸気を供給する水蒸気供給部と、前記液体供給部による液体の供給、及び前記水蒸気供給部による水蒸気の供給を制御する制御部と、を備える人工発汗装置に関する。
【0007】
また、人工発汗装置は、前記皮膚部材の内面側に配置され該皮膚部材を加熱可能な加熱部と、前記液体供給部を加温する第1加温部と、前記水蒸気供給部を加温する第2加温部と、を更に備えることが好ましい。
【0008】
また、前記液体供給部は、先端側が前記複数の液体透過穴にそれぞれ接続される複数の第1液体供給管と、前記複数の第1液体供給管それぞれの基端側に接続される第2液体供給管と、該第2液体供給管の基端側に接続される液体供給装置と、を備えることが好ましい。
【0009】
また、前記複数の第1液体供給管の内径は、前記液体供給装置から該複数の第1液体供給管それぞれの基端部までの距離が遠くなるにしたがって大きくなっていることが好ましい。
【0010】
また、前記水蒸気供給部は、先端側が前記複数の水蒸気透過穴に接続される複数の第1水蒸気供給管と、該複数の第1水蒸気供給管それぞれの基端側に接続される第2水蒸気供給管と、該第2水蒸気供給管の基端側に接続される水蒸気供給装置と、を備えることが好ましい。
【0011】
また、人工発汗装置は、前記液体供給部に接続され該液体供給部に乾燥空気を供給する第1空気供給部と、
前記水蒸気供給部に接続され該水蒸気供給部に乾燥空気を供給する第2空気供給部と、を更に備えることが好ましい。
【0012】
また、前記液体透過穴及び前記水蒸気透過穴は、1個/cm以上の密度で設けられることが好ましい。
【0013】
また、人工発汗装置は、前記皮膚部材の表面側における温度を測定可能な温度測定部、該皮膚部材の表面側における湿度を測定可能な湿度測定部、該皮膚部材の表面に加えられた圧力を測定可能な圧力測定部、該皮膚部材の表面側における気体の流量を測定する流量測定部、及び該皮膚部材の表面側におけるぬれ性を測定可能なぬれ性測定部のうちの少なくとも一つを更に備えることが好ましい。
【0014】
また、胴体部と、該胴体部の一方側に形成される2本の脚部と、前記胴体部の付け根近傍に形成される1又は複数の排泄部とを有し、前記排泄部を覆うように吸収性物品を装着可能な人形形状に形成され、前記皮膚部材が前記胴体部の表面、前記脚部の表面及び前記排泄部の表面を構成することが好ましい。
【0015】
また、前記2本の脚部は、前記胴体部との連結部を支点として前後方向及び左右方向に回動駆動可能であり、前記胴体部は、垂直方向に傾斜駆動可能であり、かつ、胴回り方向に回転駆動可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の人工発汗装置によれば、人体における発汗の状態をより正確に再現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の人工発汗装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す人工発汗装置の部分拡大平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】発熱体の一実施形態を示す平面図である。
【図5】第2実施形態の人工発汗装置の断面図であり、図3に対応する図である。
【図6】第3実施形態の人工発汗装置の断面図であり、図3に対応する図である。
【図7】第4実施形態の人工発汗装置の断面図であり、図3に対応する図である。
【図8】第5実施形態の人工発汗装置の断面図であり、図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の人工発汗装置の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の人工発汗装置1は、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品の性能評価を行う場合等に用いられる。この人工発汗装置1は、図1に示すように、胴体部11と、この胴体部11の一方側に形成される2本の脚部12と、胴体部11の付け根近傍に形成される排泄部13と、を備える人形形状に構成されている。
人工発汗装置1は、人体に近似した動作を行い及び/又は姿勢をとることが可能である。具体的には、人工発汗装置1は、所定の吸収性物品を装着した状態において、2本の脚部12の前後方向及び左右方向への回動駆動、胴体部11の垂直方向への傾斜駆動、及び胴体部11の胴回り方向への回転駆動を可能に構成することで、人体における実際の動作及び/又は姿勢に近似した動作及び/又は姿勢をとることが可能である。
【0019】
先ず、第1実施形態の人工発汗装置1について、図2〜図4を参照しながら説明する。図2は、第1実施形態に係る人工発汗装置1の部分拡大平面図であり、図3は、図2のA−A線断面図である。
第1実施形態の人工発汗装置1は、図2及び図3に示すように、皮膚部材2と、この皮膚部材2の内面側に配置される加熱部としての発熱体3と、皮膚部材2に設けられた複数の液体透過穴21及び複数の水蒸気透過穴22と、複数の液体透過穴21に液体を供給する液体供給部4と、複数の水蒸気透過穴22に水蒸気を供給する水蒸気供給部5と、液体供給部4を加温する第1加温部41と、水蒸気供給部5を加温する第2加温部51と、液体供給部4に乾燥空気を供給する第1空気供給部42と、水蒸気供給部5に乾燥空気を供給する第2空気供給部52と、皮膚部材2の表面側に配置された複数のセンサ6と、これらを制御する制御部としての制御装置7と、を備える。
【0020】
皮膚部材2は、平面状又は曲面状に広がって配置され、人工発汗装置1の表面を構成する。この皮膚部材2は、人間の皮膚のような柔軟性を有する部材により構成されることが好ましい。皮膚部材2を構成する材料としては、発泡ウレタン、発泡シリコン及びゴム等が挙げられる。
皮膚部材2の厚さL1は、好ましくは1.5mm〜5mm、より好ましくは2.5mm〜3.5mmである。皮膚部材2の厚さL1が1.5mm未満の場合には、皮膚部材2と後述する第1液体供給管43及び第1水蒸気供給管53との間の接着性が弱くなり、皮膚部材2と第1液体供給管43との間、及び皮膚部材2と第1水蒸気供給管53との間に隙間が生じるおそれがある。また、皮膚部材2の厚さL1が5mmを超えてしまうと、皮膚部材2の厚さ方向に延びる穴(液体透過穴21及び水蒸気透過穴22)を開けることが困難になるおそれがある。
【0021】
発熱体3は、図3に示すように、皮膚部材2の内面側に、皮膚部材2に接触するように配置される。この発熱体3は、皮膚部材2を人間の皮膚の温度(30℃〜37℃程度)に加温する。発熱体3は、例えば、網状や棒状の発熱部材を有するヒータにより構成される。また、発熱体3は、図4に示すように、銅板等の熱伝効率に優れた薄板状部材31と、この薄板状部材の一方の面に接触して配置される温水流通チューブ等の加温部材32と、を含んで構成してもよい。この場合、薄板状部材31の他方の面を皮膚部材2に密着させ、この薄板状部材31を加温部材32により加温することで皮膚部材2を加温できる。
【0022】
複数の液体透過穴21は、図3に示すように、皮膚部材2の厚さ方向に貫通して設けられている。この液体透過穴21には、皮膚部材2の内面側から液体供給部4により液体が供給される。液体透過穴21から皮膚部材2の表面(外面)側に吐出された液体は、液体状の汗の発汗とみなされる。
液体透過穴21の直径D1(図2参照)は、好ましくは0.01mm〜2mm、より好ましくは、0.03mm〜1mmである。また、隣り合う液体透過穴21間の距離L2は、好ましくは2mm〜10mmである。隣り合う液体透過穴21間の距離L2が10mmを超えてしまった場合には、人工発汗装置1による正確な発汗状態を再現できなくなるおそれがある。また、隣り合う液体透過穴21間の距離L2が2mm未満の場合には、後述する液体供給部4の配管構造が複雑になってしまうおそれがある。
【0023】
複数の水蒸気透過穴22は、図3に示すように、皮膚部材2の厚さ方向に貫通して設けられている。この水蒸気透過穴22には、皮膚部材2の内面側から水蒸気供給部5により水蒸気が供給される。水蒸気透過穴22から皮膚部材2の表面(外面)側に吐出された水蒸気は、水蒸気状の汗の発汗とみなされる。
水蒸気透過穴22の直径D2(図2参照)は、液体透過穴21の直径D1よりも大きく構成されている。具体的には、水蒸気透過穴22の直径D2は、好ましくは1mm〜10mm、より好ましくは、5mm〜7mmである。また、隣り合う水蒸気透過穴22間の距離L3は、好ましくは2mm〜10mmである。隣り合う水蒸気透過穴22間の距離L3が10mmを超えてしまった場合には、人体における正確な発汗状態(例えば、角質から水蒸気状の汗が略均一に発汗される状態)を再現できなくなるおそれがある。また、隣り合う水蒸気透過穴22間の距離L3が2mm未満の場合には、後述する水蒸気供給部5の配管構造が複雑になってしまうおそれがある。
【0024】
以上の液体透過穴21及び水蒸気透過穴22は、人体におけるより正確な発汗状態を再現する観点から、いずれも、1個/cm以上の密度で設けられることが好ましい。
【0025】
液体供給部4は、図3に示すように、複数の第1液体供給管43と、第2液体供給管44と、液体供給装置45と、を備える。
複数の第1液体供給管43は、皮膚部材2の面方向に対して略垂直に延びて配置される。複数の第1液体供給管43は、それぞれ、先端側が皮膚部材2の複数の液体透過穴21に、皮膚部材2の内面側から挿入されて接続される。複数の第1液体供給管43の基端側は、それぞれ、第2液体供給管44に接続される。複数の第1液体供給管43のうちの所定の第1液体供給管43には、第1液体供給管43を流通する液体の流量又は圧力を測定する流量/圧力測定装置431が設けられる。
第1液体供給管43の直径(内径)は、好ましくは0.01mm〜2mm、より好ましくは、0.03mm〜1mmである。
【0026】
第2液体供給管44は、複数の第1液体供給管43に交差する方向に延びて配置される。この第2液体供給管44には、長手方向に所定の間隔をあけて複数の第1液体供給管43の基端側が接続される。ここで、複数の第1液体供給管43のうちのすべての第1液体供給管43が一本の第2液体供給管44に接続されてもよいが、第2液体供給管44を複数本用いて、それぞれの第2液体供給管44に対して所定の本数の第1液体供給管43を接続してもよい。第2液体供給管44の直径(内径)は、第1液体供給管43の直径(内径)よりも大きく構成される。第2液体供給管44の直径(内径)は、好ましくは0.05mm〜7mm、より好ましくは、1mm〜4mmである。
【0027】
以上の第1液体供給管43及び第2液体供給管44は、いずれも、金属部材からなる硬質の配管、又はシリコンチューブ等からなる可撓性を有する配管により構成される。
【0028】
液体供給装置45は、第2液体供給管44の基端側に配置される。この液体供給装置45は、液体を収容する液体収容部451と、この液体収容部451に収容された液体を第2液体供給管44側に押し出すポンプ452と、液体収容部451から第2液体供給管44に押し出された液体の流量又は押し出し圧力を測定する流量/圧力測定装置453と、を備えて構成される。
【0029】
以上の液体供給部4によれば、液体供給装置45において、液体収容部451に収容された液体をポンプ452により押し出すと、この押し出された液体は、第2液体供給管44及び複数の第1液体供給管43を流通して複数の液体透過穴21から吐出される。また、液体供給装置45から押し出される液体の流量又は圧力は、圧力測定装置453により測定される。また、以上の液体供給部4では、液体を連続的に吐出可能であり、また、ポンプ452による液体の押し出し圧力を調整することで、液体透過穴21から吐出させる液体の量を可変させられる。
【0030】
液体供給部4により供給され複数の液体透過穴21から吐出される液体の量は、好ましくは0〜1000g/m/hの範囲内である。尚、液体透過穴21から吐出される液体の量は、第1液体供給管43に設けられた流量/圧力測定装置431により測定される。
【0031】
水蒸気供給部5は、図3に示すように、複数の第1水蒸気供給管53と、第2水蒸気供給管54と、水蒸気供給装置55と、を備える。
複数の第1水蒸気供給管53は、皮膚部材2の面方向に対して略垂直に延びて配置される。複数の第1水蒸気供給管53は、それぞれ、先端側が皮膚部材2の複数の水蒸気透過穴22に、皮膚部材2の内面側から挿入されて接続される。複数の第1水蒸気供給管53の基端側は、それぞれ、第2水蒸気供給管54に接続される。複数の第1水蒸気供給管53のうちの所定の第1水蒸気供給管53には、第1水蒸気供給管53を流通する水蒸気の流量又は圧力を測定する流量/圧力測定装置531が設けられる。
第1水蒸気供給管53の直径(内径)は、1mm〜10mm、より好ましくは、5mm〜7mmである。
【0032】
第2水蒸気供給管54は、複数の第1水蒸気供給管53に交差する方向に延びて配置される。この第2水蒸気供給管54には、長手方向に所定の間隔をあけて複数の第1水蒸気供給管53の基端側が接続される。ここで、複数の第1水蒸気供給管53のうちのすべての第1水蒸気供給管53が一本の第2水蒸気供給管54に接続されてもよいが、第2水蒸気供給管54を複数本用いて、それぞれの第2水蒸気供給管54に対して所定の本数の第1水蒸気供給管53を接続してもよい。第2水蒸気供給管54の直径(内径)は、第1水蒸気供給管53の直径(内径)よりも大きく構成される。第2水蒸気供給管54の直径(内径)は、好ましくは2mm〜15mm、より好ましくは、6mm〜8mmである。
【0033】
以上の第1水蒸気供給管53及び第2水蒸気供給管54は、いずれも、金属部材からなる硬質の配管、又はシリコンチューブ等からなる可撓性を有する配管により構成される。
【0034】
水蒸気供給装置55は、第2水蒸気供給管54の基端側に配置される。この水蒸気供給装置55は、水飽和水蒸気を発生させる水蒸気発生部551と、この水蒸気発生部551に水を供給するポンプ552と、乾燥空気を生成して水蒸気発生部551に供給する乾燥空気生成部554と、水蒸気発生部551から第2水蒸気供給管54に押し出された水蒸気の流量又は押し出し圧力を測定する流量/圧力測定装置553と、を備えて構成される。
【0035】
以上の水蒸気供給部5によれば、水蒸気供給装置55において、ポンプ552から水蒸気発生部551に供給された水は、水蒸気発生部551において水蒸気となる。また、この水蒸気発生部551には乾燥空気生成部554から乾燥空気が供給される。そして、水蒸気発生部551で発生した水蒸気は、乾燥空気生成部554から供給された乾燥空気と共に第2水蒸気供給管54に押し出される。この第2水蒸気供給管54に押し出された水蒸気は、第2水蒸気供給管54及び複数の第1水蒸気供給管53を流通して複数の水蒸気透過穴22から吐出される。また、水蒸気供給装置55から押し出される水蒸気の流量又は圧力は、圧力測定装置553により測定される。また、以上の水蒸気供給部5では、水蒸気を連続的に吐出可能であり、ポンプ552による水蒸気発生部551への水の供給量、及び乾燥空気生成部554による水蒸気発生部551への乾燥空気の供給量を調整することで、水蒸気透過穴22から吐出させる水蒸気量を可変させられる。
【0036】
水蒸気供給部5により供給され複数の水蒸気透過穴22から吐出される水蒸気の量は、好ましくは0〜500g/m/hの範囲内である。尚、水蒸気透過穴22から吐出される水蒸気の量は、第1水蒸気供給管53に設けられた流量/圧力測定装置531により測定される。
【0037】
第1加温部41は、第1恒温槽46と、この第1恒温槽46の下流側に配置される第1温度調節器47と、を備える。第1恒温槽46には、30℃〜40℃程度の温水が貯留されており、この第1恒温槽46に、第1液体供給管43及び第2液体供給管44のうちの少なくとも一部が浸される。これにより、第1液体供給管43及び第2液体供給管44を流通する液体の温度の低下を防止できる。
第1恒温槽46には、第2液体供給管44の全長及び複数の第1液体供給管43のうちの皮膚部材2及び発熱体3に挿入されている部分を除く部分が浸されることが好ましい。
【0038】
第1温度調節器47は、第1恒温槽46の下流側において液体供給部4(第2液体供給管44)を流通する液体を所定の温度に調節(加温)する。これにより、液体透過穴21から吐出される液体の温度を皮膚部材2の温度と同じ温度に調節できる。
【0039】
第2加温部51は、第2恒温槽56と、この第2恒温槽56の下流側に配置される第2温度調節器57と、を備える。第2恒温槽56には、30℃〜40℃程度の温水が貯留されており、この第2恒温槽56に、第1水蒸気供給管53及び第2水蒸気供給管54のうちの少なくとも一部が浸される。これにより、第1水蒸気供給管53及び第2水蒸気供給管54を流通する水蒸気の温度の低下を防止できる。
第2恒温槽56には、第2水蒸気供給管54の全長及び複数の第1水蒸気供給管53のうちの皮膚部材2及び発熱体3に挿入されている部分を除く部分が浸されることが好ましい。
【0040】
第2温度調節器57は、第2恒温槽56の下流側において水蒸気供給部5(第2水蒸気供給管54)を流通する水蒸気を所定の温度に調節(加温)する。これにより、第1水蒸気供給管53の内部、第2水蒸気供給管54の内部、及び皮膚部材2の表面において結露が生じることを防止できる。
【0041】
第1空気供給部42は、乾燥空気を生成する乾燥空気生成部421と、この乾燥空気生成部421と第2液体供給管44とを連結する乾燥空気供給管422と、を備える。
乾燥空気供給管422は、乾燥空気生成部421で生成された乾燥空気を液体供給部4(第2液体供給管44)に供給する。乾燥空気供給管422と第2液体供給管44との連結部には、三方弁423が配置されている。
【0042】
以上の第1空気供給部42によれば、三方弁423を切り替えて乾燥空気供給管422から第2液体供給管44への流路を開放した状態で、乾燥空気生成部421を駆動させて乾燥空気を生成することで、乾燥空気を第2液体供給管44及び複数の第1液体供給管43に供給できる。
【0043】
第2空気供給部52は、乾燥空気を生成する乾燥空気生成部521と、この乾燥空気生成部521と第2水蒸気供給管54とを連結する乾燥空気供給管522と、を備える。
乾燥空気供給管522は、乾燥空気生成部521で生成された乾燥空気を水蒸気供給部5(第2水蒸気供給管54)に供給する。乾燥空気供給管522と第2水蒸気供給管54との連結部には、三方弁523が配置されている。
【0044】
以上の第2空気供給部52によれば、三方弁523を切り替えて乾燥空気供給管522から第2水蒸気供給管54への流路を開放した状態で、乾燥空気生成部521を駆動させて乾燥空気を生成することで、乾燥空気を第2水蒸気供給管54及び複数の第1水蒸気供給管53に供給できる。
【0045】
複数のセンサ6は、皮膚部材2の表面側の状態を測定する第1センサ61と、人工発汗装置1の動作状態を測定する第2センサ62と、を備える。ここで、皮膚部材2の表面側の状態とは、人工発汗装置1に性能評価の対象物としての吸収性物品を装着した場合における吸収性物品の表面(内面)の状態や、皮膚部材2と吸収性物品の内面との間に形成される空間の状態を示す。
第1センサ61は、皮膚部材2の表面における所定の場所に複数配置される。
第1実施形態では、第1センサ61として、温度測定部としての温度センサ、湿度測定部としての湿度センサ、流量測定部としての流量センサ、及びぬれ性測定部としてのぬれ性センサが配置される。
【0046】
温度センサは、皮膚部材2の表面側の温度(吸収性物品の内面の温度)を測定する。湿度センサは、皮膚部材2の表面側における湿度(皮膚部材2と吸収性物品の内面との間に形成される空間の湿度)を測定する。流量センサは、皮膚部材2の表面側における空気の流れ(皮膚部材2と吸収性物品の内面との間に形成される空間における空気の流れ方向や流量)を測定する。ぬれ性センサは、皮膚部材2の表面側におけるぬれ性(吸収性物品の内面のぬれ性)を測定する。このぬれ性センサは、2極間の静電容量を測定することで皮膚部材2の表面側のぬれ性を測定する。
【0047】
第2センサ62は、皮膚部材2の温度が一定に維持されているかを確認するために設けられ、皮膚部材2の表面側に埋め込まれている。この第2センサ62は、皮膚部材2の温度を測定する。第2センサ62で測定された温度データは、制御装置7に送信される。
【0048】
尚、第1センサ61の配置位置は、皮膚部材2の表面に限られない。即ち、人工発汗装置1を平板状に構成した場合には、すべての第1センサ61を皮膚部材2の表面に配置する。一方、人工発汗装置1を人形形状に構成した場合には、人工発汗装置1に吸収性物品を装着した状態で、皮膚部材2の表面と吸収性物品の内面との間に空間が形成されるような場所(例えば、臀部)では、第1センサ61を、吸収性物品の内面や、皮膚部材2の表面と吸収性物品の内面との間に形成される空間に配置してもよい。
【0049】
制御装置7は、人工発汗装置1の駆動を制御する。
具体的には、制御装置7は、液体供給装置45(ポンプ452)の駆動を制御して液体透過穴21から吐出される液体の吐出速度及び吐出圧力を制御する。また、制御装置7は、水蒸気供給装置55(ポンプ552)の駆動を制御して複数の水蒸気透過穴22から吐出される水蒸気の吐出速度及び吐出圧力を制御する。尚、制御装置7は、液体供給装置45及び水蒸気供給装置55をそれぞれ独立して制御する。
【0050】
また、制御装置7は、第1加温部41(第1恒温槽46及び第1温度調節器47)を制御して、複数の液体透過穴21から吐出される液体の温度を制御する。また、制御装置7は、第2加温部(第2恒温槽56及び第2温度調節器57)を制御して複数の水蒸気透過穴22から吐出される水蒸気の温度を制御する。
【0051】
また、制御装置7は、乾燥空気生成部421の駆動及び三方弁423の開閉を制御して第1空気供給部42から液体供給部4への乾燥空気の供給を制御する。また、制御装置7は、乾燥空気生成部521の駆動及び三方弁523の開閉を制御して第2空気供給部52から水蒸気供給部5への乾燥空気の供給を制御する。
また、制御装置7は、発熱体3による皮膚部材2の加熱状態を制御する。
【0052】
次に、以上の人工発汗装置1の使用方法の一例につき説明する。
本実施形態の人工発汗装置1は、例えば、使い捨ておむつ等の吸収性物品の性能テストを行う場合に用いられる。
人工発汗装置1により使い捨ておむつの性能テストを行う場合には、先ず、使い捨ておむつを人工発汗装置1に装着させる。
【0053】
次いで、複数の液体透過穴21から液体(液体状の汗)を吐出(発汗)させ、複数の水蒸気透過穴22から水蒸気(水蒸気状の汗)を吐出(発汗)させる。ここで、液体状の汗の発汗量及び水蒸気状の汗の発汗量は、それぞれ、使い捨ておむつの装着対象者の年齢や、使い捨ておむつを装着させる季節等の条件に応じて決定され、制御装置7により制御される。これにより、人体における発汗状態が正確に再現される。
【0054】
次いで、発汗が行われている状態における使い捨ておむつ内の環境を測定する。具体的には、所定の状態で発汗が行われている状態における使い捨ておむつ内の温度や湿度は、温度センサ及び湿度センサにより測定される。また、使い捨ておむつ内における空気(水蒸気状の汗を含む)の流通方向や流量は、流量センサにより測定される。また、使い捨ておむつが装着された状態における使い捨ておむつの表面(内面)のぬれ性は、ぬれ性センサにより測定される。
このように、本実施形態の人工発汗装置1によれば、人体における発汗状態をより正確に再現できるので、使い捨ておむつの性能をより正確に把握できる。
【0055】
以上説明した第1実施形態の人工発汗装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0056】
(1)液体供給部4により複数の液体透過穴21に液体を供給し、水蒸気供給部5により複数の水蒸気透過穴22に水蒸気を供給した。また、制御装置7により、液体供給部4及び水蒸気供給部5を独立して制御した。これにより、複数の液体透過穴21から液体状の汗を発汗させられると共に、複数の水蒸気透過穴22から水蒸気状の汗を発汗させられる。よって、人工発汗装置1が対象とする人間の年齢や外部環境に応じて液体状の汗の発汗量及び水蒸気状の汗の発汗量をそれぞれ調整できるので、人体における発汗の状態をより正確に再現できる。
【0057】
(2)人工発汗装置1を、発熱体3、第1加温部41及び第2加温部51を含んで構成した。これにより、皮膚部材2を人体の皮膚温度と同様の温度に保てる。また、第1液体供給管43及び第2液体供給管44を流通する液体の温度の低下を防止でき、液体透過穴21から発汗される液体状の汗の温度を皮膚部材2の温度と同じ温度に調節できる。また、第1水蒸気供給管53及び第2水蒸気供給管54を流通する水蒸気の温度の低下を防止できるので、第1水蒸気供給管53の内部、第2水蒸気供給管54の内部、及び皮膚部材2の表面において結露が生じることを防止できる。
【0058】
(3)液体供給部4を、複数の第1液体供給管43と、これら複数の第1液体供給管43に接続される第2液体供給管44と、この第2液体供給管44に液体を供給する液体供給装置45と、を含んで構成した。これにより、第2液体供給管44に液体を供給することでこの第2液体供給管44に接続された複数の第1液体供給管43を介して複数の液体透過穴21から液体状の汗を発汗させられる。よって、第2液体供給管44に液体を押し出すポンプ452の台数を低減でき、人工発汗装置1の構造をコンパクト化できる。
【0059】
(4)水蒸気供給部5を、複数の第1水蒸気供給管53と、これら複数の第1水蒸気供給管53に接続される第2水蒸気供給管54と、この第2水蒸気供給管54に水蒸気を供給する水蒸気供給装置55と、を含んで構成した。これにより、第2水蒸気供給管54に水蒸気を供給することでこの第2水蒸気供給管54に接続された複数の第1水蒸気供給管53を介して複数の水蒸気透過穴22から水蒸気状の汗を発汗させられる。よって、第2水蒸気供給管54に水蒸気を押し出すポンプ552の台数を低減でき、人工発汗装置1の構造をコンパクト化できる。
【0060】
(5)人工発汗装置1を、第1空気供給部42と、第2空気供給部52と、を含んで構成した。これにより、人工発汗装置1を使用した後に、第1空気供給部42から液体供給部4に乾燥空気を供給することで液体供給部4(第2液体供給管44及び複数の第1液体供給管43)を乾燥させられる。また、第2空気供給部52から水蒸気供給部5に乾燥空気を供給することで水蒸気供給部5(第2水蒸気供給管54及び複数の第1水蒸気供給管53)を乾燥させられる。よって、人工発汗装置1を繰り返し使用して評価を行う場合におけるそれぞれの評価の精度を向上できる。また、液体供給部4及び水蒸気供給部5を構成する配管の内部に滞留した異物を除去できる。更に、配管の内部にカビが発生することを防止できる。
【0061】
(6)液体透過穴21及び水蒸気透過穴22を、それぞれ、1個/cm以上の密度で設けた。よって、人体における発汗状態をより正確に再現できる。
【0062】
(7)人工発汗装置1を、皮膚部材2の表面側の状態(人工発汗装置1に装着された吸収性物品の表面状態)を測定する第1センサ61(温度センサ、湿度センサ、流量センサ及びぬれ性センサ)を含んで構成した。よって、発汗状態における皮膚部材2の表面側の状態を正確に把握できる。
【0063】
(8)液体供給装置45及び水蒸気供給装置55を、それぞれ、流量/圧力測定装置453,553を含んで構成すると共に、第1液体供給管43及び第1水蒸気供給管53にそれぞれ流量/圧力測定装置431,531を配置した。これにより、流量/圧力測定装置453,553により、第2液体供給管44に供給される液体の流量及び圧力、並びに第2水蒸気供給管54に供給される水蒸気の流量及び圧力を把握できると共に、流量/圧力測定装置431,531により、第1液体供給管43を流通する液体の流量及び圧力、並びに第1水蒸気供給管53を流通する水蒸気の流量及び圧力を把握できる。よって、液体状の汗の発汗量及び水蒸気状の汗の発汗量をより正確に制御できる。
【0064】
(9)発熱体3を、網状又は棒状の発熱部材を有するヒータにより構成した。これにより、発熱体3を皮膚部材2の形状に沿って容易に配置できる。
【0065】
次に、本発明の人工発汗装置の第2実施形態について、図5を参照しながら説明する。図5は、第2実施形態の人工発汗装置1Aを示す断面図である。尚、第2実施形態以降の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0066】
第2実施形態の人工発汗装置1Aは、液体供給部4Aの構成において第1実施形態と異なる。より具体的には、第2実施形態では、図5に示すように、複数の第1液体供給管43Aの内径が液体供給装置45からの距離に応じて異なっている。
複数の第1液体供給管43Aの内径は、液体供給装置45から複数の第1液体供給管43Aそれぞれの基端部までの距離が遠くなるにしたがって大きくなっている。
【0067】
第2実施形態の人工発汗装置1Aによれば、上述の(1)〜(9)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0068】
(10)一本の第2液体供給管44に複数の第1液体供給管43を接続した場合、これら複数の第1液体供給管43の内径を等しく構成すると、液体供給装置45からの距離が近い位置に接続された第1液体供給管43を流通する液体の量は、液体供給装置45からの距離が遠い位置に接続された第1液体供給管43を流通する液体の量よりも多くなる。そこで、複数の第1液体供給管43Aの内径を、液体供給装置45から複数の第1液体供給管43Aそれぞれの基端部までの距離が遠くなるにしたがって大きくした。これにより、複数の第1液体供給管43Aそれぞれを流通する液体の量を略等しくでき、複数の液体透過穴21それぞれから発汗される液体状の汗の量を略等しくできる。
【0069】
次に、本発明の人工発汗装置1の第3実施形態について、図6を参照しながら説明する。図6は、第3実施形態の人工発汗装置1Bを示す断面図である。
第3実施形態の人工発汗装置1Bは、主として、皮膚部材2Bの構成、及び水蒸気供給部5Bの構成において第1実施形態と異なる。より具体的には、第3実施形態では、皮膚部材2Bは、気体は透過させるが液体は透過させない微細な開口(直径30μm〜70μm)を複数備えるシート状部材により構成されている。つまり、第3実施形態では、シート状部材に形成された複数の微細な開口が水蒸気透過穴として機能する。また、このシート状部材には、第1実施形態と同様の複数の液体透過穴21が設けられている。
【0070】
また、水蒸気供給部5Bは、皮膚部材2Bの内面側に所定の空間をあけて配置される水蒸気供給装置55Bにより構成される。この水蒸気供給装置55Bは、皮膚部材2Bの内面側の空間に向けて水蒸気を供給する。これにより、皮膚部材2Bの内面側の空間に供給された水蒸気は、シート部材に形成された微小な開口を透過して皮膚部材2Bの表面(外面)側に吐出(発汗)される。
また、第3実施形態では、第2加温部51Bは、恒温槽を有さず皮膚部材2Bの内面側の空間に配置される温度調節器57Bにより構成される。尚、第2加温部51Bを、恒温槽を含んで構成してもよい。
【0071】
また、第3実施形態では、液体供給部4Bは、複数の第1液体供給管43Bと、これら複数の第1液体供給管43Bそれぞれに接続される複数の第2液体供給管44Bと、これら複数の第2液体供給管44Bの基端側に配置される液体供給装置45Bと、を備える。
【0072】
第3実施形態の人工発汗装置1Bによれば、上述の(1)、(2)、(6)〜(9)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0073】
(11)皮膚部材2Bを、微細な複数の開口を有するシート状部材により構成し、水蒸気供給装置55Bを、皮膚部材2Bの内面側に所定の空間をあけて配置した。これにより、シート状部材に別途水蒸気透過穴22を設けることなく、シート状部材の微細な開口を水蒸気透過穴として機能させられる。よって、水蒸気供給装置55Bから供給される水蒸気を、配管を介さずにシート状部材の微細な開口から皮膚部材2Bの表面側に吐出(発汗)させられるので、人工発汗装置1Bの構造をコンパクト化できる。
【0074】
(12)液体供給部4Bを、複数の第1液体供給管43Bと、これら複数の第1液体供給管43Bそれぞれに接続される複数の第2液体供給管44Bと、これら複数の第2液体供給管44Bの基端側に配置される液体供給装置45Bと、を含んで構成した。これにより、複数の第2液体供給管44Bそれぞれに対する液体の供給量を制御することで、複数の液体透過穴21それぞれから発汗される液体状の汗の量を調整できる。よって、皮膚部材2Bの部位によって異なる量の液体状の汗を発汗させられる。
【0075】
次に、本発明の人工発汗装置1の第4実施形態について、図7を参照しながら説明する。図7は、第4実施形態の人工発汗装置を示す断面図である。
第4実施形態の人工発汗装置1Cは、主として、液体供給部4C及び水蒸気供給部5Cの構成において第1実施形態と異なる。
【0076】
第4実施形態では、液体供給部4Cは、複数の第1液体供給管43Cと、これら複数の第1液体供給管43Cそれぞれに接続される複数の第2液体供給管44Cと、これら複数の第2液体供給管44Cの基端側に配置される液体供給装置45Cと、を備える。
また、水蒸気供給部5Cも、複数の第1水蒸気供給管53Cと、これら複数の第1水蒸気供給管53Cそれぞれに接続される複数の第2水蒸気供給管54Cと、これら複数の第2水蒸気供給管54Cの基端側に配置される水蒸気供給装置55Cと、を備える。
【0077】
第4実施形態の人工発汗装置1Cによれば、上述の(1)、(2)、(5)〜(9)及び(12)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0078】
(13)水蒸気供給部5Cを、複数の第1水蒸気供給管53Cと、これら複数の第1水蒸気供給管53Cそれぞれに接続される複数の第2水蒸気供給管54Cと、これら複数の第2水蒸気供給管54Cの基端側に配置される水蒸気供給装置55Cと、を含んで構成した。これにより、複数の第2水蒸気供給管54Cそれぞれに対する水蒸気の供給量を制御することで、複数の水蒸気透過穴22それぞれから発汗される水蒸気状の汗の量を調整できる。よって、皮膚部材2の部位によって異なる量の水蒸気状の汗を発汗させられる。
【0079】
次に、本発明の人工発汗装置1の第5実施形態について、図8を参照しながら説明する。図8は、第5実施形態の人工発汗装置1Dを示す断面図である。
第5実施形態の人工発汗装置1Dは、主として、水蒸気供給部5Dの構成において第1実施形態と異なる。
【0080】
第5実施形態では、水蒸気供給部5Dを構成する複数の第1水蒸気供給管53Dは、皮膚部材2に設けられた複数の水蒸気透過穴22Dに挿入されておらず、複数の第1水蒸気供給管53Dの先端側は、皮膚部材2の内面に当接している。
第5実施形態によれば、複数の第1水蒸気供給管53Bの先端側から吐出された水蒸気は、第1水蒸気供給管53Dと皮膚部材2との当接部から皮膚部材2の内面側に漏れることなく水蒸気透過穴22Dを流通して皮膚部材2の表面(外面)側に吐出(発汗)される。
尚、複数の第1液体供給管43の先端側を皮膚部材2の内面に当接させた場合には、第1液体供給管43と皮膚部材2との当接部分から液体が皮膚部材2の内面側に漏れ出してしまうおそれがある。
【0081】
第5実施形態の人工発汗装置1Dによれば、上述の(1)〜(10)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0082】
(14)複数の第1水蒸気供給管53Dの先端側を、皮膚部材2の内面に当接させた。これにより、皮膚部材2に設けられた複数の水蒸気透過穴22に複数の第1水蒸気供給管53Dを挿入することなく、複数の水蒸気透過穴22から水蒸気状の汗を発汗させられる。よって、皮膚部材2に設けられた複数の水蒸気透過穴22に複数の第1水蒸気供給管53Dを挿入しなくてよいので、人工発汗装置1Dの製造工程を簡略化できる。また、皮膚部材2が押圧された場合等に複数の第1水蒸気供給管53Dに破損が生じることを低減できる。
【0083】
以上、本発明の人工発汗装置の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、第1実施形態〜第5実施形態では、本発明を、人形形状を有し、曲面状に広がる皮膚部材2を有する人工発汗装置1に適用したが、これに限らない。即ち、本発明を平板状に広がる皮膚部材を有する人工発汗装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 人工発汗装置
2 皮膚部材
3 発熱体(加熱部)
4 液体供給部
5 水蒸気供給部
7 制御装置(制御部)
11 胴体部
12 脚部
21 液体透過穴
22 水蒸気透過穴
41 第1加温部
42 第1空気供給部
43 第1液体供給管
44 第2液体供給管
45 液体供給装置
51 第2加温部
52 第2空気供給部
53 第1水蒸気供給管
54 第2水蒸気供給管
55 水蒸気供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状に広がって配置される皮膚部材と、
前記皮膚部材に設けられる複数の液体透過穴と、
前記皮膚部材に設けられる複数の水蒸気透過穴と、
前記皮膚部材の内面側に設けられ前記複数の液体透過穴に液体を供給する液体供給部と、
前記皮膚部材の内面側に設けられ前記複数の水蒸気透過穴に水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
前記液体供給部による液体の供給、及び前記水蒸気供給部による水蒸気の供給を制御する制御部と、を備える人工発汗装置。
【請求項2】
前記皮膚部材の内面側に配置され該皮膚部材を加熱可能な加熱部と、
前記液体供給部を加温する第1加温部と、
前記水蒸気供給部を加温する第2加温部と、を更に備える請求項1に記載の人工発汗装置。
【請求項3】
前記液体供給部は、先端側が前記複数の液体透過穴にそれぞれ接続される複数の第1液体供給管と、前記複数の第1液体供給管それぞれの基端側に接続される第2液体供給管と、該第2液体供給管の基端側に接続される液体供給装置と、を備える請求項1又は2に記載の人工発汗装置。
【請求項4】
前記複数の第1液体供給管の内径は、前記液体供給装置から該複数の第1液体供給管それぞれの基端部までの距離が遠くなるにしたがって大きくなっている請求項3に記載の人工発汗装置。
【請求項5】
前記水蒸気供給部は、先端側が前記複数の水蒸気透過穴に接続される複数の第1水蒸気供給管と、該複数の第1水蒸気供給管それぞれの基端側に接続される第2水蒸気供給管と、該第2水蒸気供給管の基端側に接続される水蒸気供給装置と、を備える請求項1〜4のいずれかに記載の人工発汗装置。
【請求項6】
前記液体供給部に接続され該液体供給部に乾燥空気を供給する第1空気供給部と、
前記水蒸気供給部に接続され該水蒸気供給部に乾燥空気を供給する第2空気供給部と、を更に備える請求項1〜5のいずれかに記載の人工発汗装置。
【請求項7】
前記液体透過穴及び前記水蒸気透過穴は、1個/cm以上の密度で設けられる請求項1〜6のいずれかに記載の人工発汗装置。
【請求項8】
前記皮膚部材の表面側における温度を測定可能な温度測定部、該皮膚部材の表面側における湿度を測定可能な湿度測定部、該皮膚部材の表面に加えられた圧力を測定可能な圧力測定部、該皮膚部材の表面側における気体の流量を測定する流量測定部、及び該皮膚部材の表面側におけるぬれ性を測定可能なぬれ性測定部のうちの少なくとも一つを更に備える請求項1〜7のいずれかに記載の人工発汗装置。
【請求項9】
胴体部と、該胴体部の一方側に形成される2本の脚部と、前記胴体部の付け根近傍に形成される1又は複数の排泄部とを有し、前記排泄部を覆うように吸収性物品を装着可能な人形形状に形成され、前記皮膚部材が前記胴体部の表面、前記脚部の表面及び前記排泄部の表面を構成する請求項1〜8のいずれかに記載の人工発汗装置。
【請求項10】
前記2本の脚部は、前記胴体部との連結部を支点として前後方向及び左右方向に回動駆動可能であり、
前記胴体部は、垂直方向に傾斜駆動可能であり、かつ、胴回り方向に回転駆動可能である請求項9に記載の人工発汗装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−209625(P2011−209625A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79265(P2010−79265)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】