説明

人工芝生の回収方法

【課題】比較的容易な方法で芝葉間の粒状物を効率よく回収できる人工芝生の回収方法を提供する。
【解決手段】基布と、この基布に植設させた複数の芝葉と、この芝葉の各植設部の間に粒状物を充填させて形成させた充填層を備えた人工芝生の回収方法であって、前記充填層の上面より突出した前記芝葉の突出部分を加熱して、前記芝葉を熱収縮させて該芝葉の長さを減縮される減縮工程を設ける。これにより芝葉の長さを減縮させるので、芝葉間に充填された粒状物の回収の際に芝葉が障害となりにくくなり、効率よく粒状物を回収できる。充填層の上面より突出した前記芝葉の突出部分を加熱して熱収縮させるので、特殊な設備などを必要とせず、容易に実施可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の人工芝生の回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運動競技場などに用いられる人工芝生は、基布に芝糸をカットパイル状に植設して芝葉を形成させ、この芝葉の間に粒状の充填層を設ける構成のものがよく用いられ、経年劣化した人工芝生の回収方法についても種々の方法が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、敷設済みの砂入り人工芝生を敷設面から剥離し、該剥離後の人工芝生をパイル面側が凸になるように屈曲させてパイル相互間を目開きし、該目開き状態のパイル面から砂を分離すると共に、該砂を分離後の人工芝生から回収する敷設済み砂入り人工芝生の回収方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−8314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の如き人工芝生の回収方法は、パイル相互間を目開きさせるために人工芝生を屈曲させる工程が含まれているので、特殊な設備が必要になるなど容易に実施できないという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、比較的容易な方法で芝葉間の粒状物を効率よく回収できる人工芝生の回収方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る人工芝生の回収方法は、基布と、該基布に植設された複数の芝葉と、該芝葉の各植設部の間に粒状物が充填されて形成された充填層を備えた人工芝生の回収方法であって、前記充填層の上面より突出した前記芝葉の突出部分を加熱し、前記芝葉を熱収縮させて該芝葉の長さを減縮される減縮工程を備えたことを特徴としている。
【0008】
本発明に係る人工芝生の回収方法によれば、芝葉の長さを減縮される減縮工程を備えているので、芝葉間に充填された粒状物の回収の際に芝葉が障害となりにくくなり、効率よく粒状物を回収できる。また前記減縮工程が、充填層の上面より突出した前記芝葉の突出部分を加熱し熱収縮させて行うので、特殊な設備などを必要とせず、容易に実施可能である。
【0009】
また前記減縮工程を、前記芝葉の上端が前記充填層の上面以下の高さに至るまで加熱して行えば、芝葉間に充填された粒状物をより容易に回収できるので、好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る人工芝生の回収方法によれば、比較的容易な方法で芝葉間の粒状物を効率よく回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る減縮工程を行う前の人工芝生の実施の一形態の状態を示す断面図である。
【図2】図1の人工芝生に減縮工程を行っている状態を示す断面図である。
【図3】図2に示す減縮工程を行った後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図1に示す人工芝生は、ポリプロピレン製の平織りの織布を用いた基布2にポリエチレン製の芝糸をカットパイル状に植設して芝葉3を形成し、基布2の裏面からSBR等のバッキング材5を塗布して芝葉3を固定している。これを、基礎層4に敷設した後、その上方から散布機によって粒状物を散布し、植設された各芝葉3の間に充填して充填層1を形成している。
【0013】
本実施形態の充填層1は、弾性を有する粒状物で構成されており、具体的には廃タイヤを粉砕させた粒を用い、人工芝生で運動競技などを行った際に競技者に負傷させないようになされている。
本実施形態では、充填層1に廃タイヤの粒状物を用いているが、これに限るものではなく、SBR、EPDMなどの合成ゴムやエラストマー、天然ゴムの粒を単体または組み合わせて用いてもよい。また、充填層1に硅砂などの硬質の粒状物を用いてもよく、硅砂以外の小石や陶器の粒、樹脂ペレットなどの粒状体を単体または組み合わせて用いてもよく、前記の弾性を有する粒状物と硬質の粒状物とを組み合わせて用いてもよい。
【0014】
基礎層4は、地面上に透水性のアスファルトコンクリートを打設して好適に形成可能だが、これに限るものではなく、地面そのものであってもよく、地面上に非透水性のアスファルトコンクリートを打設するなどして形成してもよい。
【0015】
また、本実施形態では基布2にポリプロピレン製の平織りの織布を用いているが、これに限るものではなく織物、編物、不織布等、芝葉が植設されるものであれば何でもよい。
【0016】
芝葉3は基布2にカットパイル状に植設され、その上部分を充填層1の上面から突出させて突出部31を形成するように設けられている。実施形態の芝葉3はポリエチレン製の芝糸を用いて形成しているが、これに限るものではなく、これ以外のポリプロピレン等のオレフイン系合成樹脂等の適宜合成樹脂材料を好適に用いることができる。
このように芝葉3と充填層1とを設けた人工芝生は、充填層1の上面から突出する芝葉3の突出部31が天然の芝生のような外観を醸し出すが、反面、人工芝生が経年劣化して新しいものと交換するような場合に、充填層1の上面においては突出する突出部31が粒状物に被さって分別を困難なものとし、充填層1の内部においても粒状物の移動を芝葉3が抑制して、それぞれを分別することを困難にしている。
【0017】
図2は図1の人工芝生に減縮工程を行っている状態を示す断面図であり、図3は図2に示す減縮工程を行った後の状態を示す断面図である。
本実施形態における減縮工程は、芝葉3間に充填層1を備えて敷設された人工芝生において、充填層1の上面から突出する芝葉3の突出部31に、加熱用具6による加熱を行うものである。
芝葉3の突出部31に対して不可逆的な熱収縮を起こすまで加熱を行うことで、突出部31は熱収縮して減縮され、充填層1の粒状物を回収する際に障害となりにくくなされる。
【0018】
また、減縮工程において突出部31に充分な加熱を行うことで、突出部31に加えた熱が芝葉3を通じて充填層1内部に至るまで伝導されて熱収縮を起こさせ、芝葉3の上端が充填層1の上面より低い高さとなるまで芝葉3を熱収縮させて減縮させることができる。
このように芝葉3を、その上端が充填層1の上面以下の高さに至るまで減縮させることで、芝葉3による粒状物の移動の抑制効果が低減し、芝葉3間に充填された粒状物をより容易に回収できるので、好ましい。
【0019】
本実施形態の人工芝生の減縮工程は、加熱用具6を用いて芝葉3の突出部31を加熱しているが、加熱用具6には芝葉3を不可逆的な熱収縮を起こす温度に加熱できる任意の器具を用いることができる。一例としては、ガスバーナーや、電熱ヒーター、ガスや電熱によって加温したエアーを吹き付けるエアヒーター、などを適宜用いることができる。中でも、芝葉3を熱収縮させ、且つゴムやエラストマーなどの粒状物から構成させる充填層1や芝葉3に引火させない130〜180℃程度の温度で加熱可能な電熱ヒーターやエアヒーターなどを好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 充填層
2 基布
3 芝葉
4 基礎層
5 バッキング材
6 加熱用具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布と、該基布に植設された複数の芝葉と、該芝葉の各植設部の間に粒状物が充填されて形成された充填層を備えた人工芝生の回収方法であって、前記充填層の上面より突出した前記芝葉の突出部分を加熱し、前記芝葉を熱収縮させて該芝葉の長さを減縮される減縮工程を備えたことを特徴とする人工芝生の回収方法。
【請求項2】
前記減縮工程が、前記芝葉の上端が前記充填層の上面以下の高さに至るまで加熱することを特徴とする請求項1に記載の人工芝生の回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−99224(P2011−99224A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253449(P2009−253449)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】