説明

人工芝生敷設構造

【課題】簡易な構造で良好な排水性が得られる人工芝生敷設構造を提供する。
【解決手段】基礎層を非透水性に形成させ、この基礎層の上面に排水溝を間隔をあけて複数形成させ、この上に敷設させる人工芝生の基布に上面から下面に至る透水部を間隔をあけて複数形成させると共に、前記各透水部の間隔を前記各排水溝の間隔より狭い大きさに形成させて、前記人工芝生上に降った雨水が透水部から基布と基礎層との隙間を通って前記排水溝に流入させる。前記各透水部の間隔を前記各排水溝の間隔より狭い大きさに形成させるので、前記各透水部による人工芝生の透水性が、基礎層の各排水溝による排水性より大きくなされ、人工芝生の透水性の低さによって人工芝生上面に水が滞留することが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雨などによって上面にもたらされた水を効率よく排水できる人工芝生敷設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
雨などによって人工芝生に降りかかった水を、その上面に滞留させずに排水させる人工芝生の構造については、種々の発明が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透水係数が、少なくとも0.1cm/secである無機多孔質焼成タイルと透水性の人工芝生布とを積層してなり、かつ、表面積が0.01〜1m2 の人工芝生舗装タイル、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2559558号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の如き人工芝生舗装タイルは、透水性を有する無機多孔質焼成タイルと透水性人工芝生を積層させることで、人工芝生の上面にもたらされた水を人工芝生舗装タイルの下方へ透水させて排水できるようになされているが、構造が複雑であり、劣化や破損などが生じた際に、同じ構造の人工芝生舗装タイルを用いた交換を継続的に実施できるか不安がある、という問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、簡易な構造で良好な排水性が得られる人工芝生敷設構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る人工芝生敷設構造は、基礎層の上に人工芝生を敷設させる人工芝生敷設構造であって、
前記基礎層は非透水性に形成され、該基礎層の上面には下方へ窪む排水溝が間隔をあけて複数形成されており、
前記人工芝生は芝糸が基布の上面から上方へ立設されるように植設されて形成され、
前記基布には上面から下面に至る透水部が間隔をあけて複数形成されると共に、
前記各透水部の間隔が前記各排水溝の間隔より狭い大きさに形成されて、前記人工芝生上に降った雨水が透水部から基布と基礎層との隙間を通って前記排水溝に流入されるようになされたことを特徴としている。
【0008】
本発明に係る人工芝生敷設構造によれば、芝糸を立設させて植設させる基布に、上面から下面に至る透水部を間隔をあけて複数形成させるので、人工芝生の上面の水を前記透水部を通じて下面側へ透水させることができる。
そして前記人工芝生を敷設させる基礎層を非透水性に形成させ、この基礎層の上面に下方へ窪む排水溝を間隔をあけて複数形成させると共に、前記人工芝生上に降った雨水が透水部から基布と基礎層との隙間を通って前記排水溝に流入させるので、前記透水部を通じて人工芝生の下面側へ流れ込んだ水を、前記排水溝を通じて排水させることができる。
また、前記各透水部の間隔を前記各排水溝の間隔より狭い大きさに形成させるので、前記各透水部による人工芝生の透水性が、基礎層の各排水溝による排水性より大きくなされ、人工芝生の透水性の低さによって人工芝生上面に水が滞留することが防止される。
また、前記各排水溝間の間隔を大きく形成させることで、排水溝の凹形状による人工芝生表面における凸凹感が抑制され、人工芝生上を歩く人の足裏への違和感や、球技の際のボールのイレギュラーバウンドの発生などが低減される。
また、人工芝生が劣化や破損などして交換などが必要な場合、基礎層の各排水溝の間隔より狭い大きさの間隔に各透水部が形成された人工芝生を用いることで、人工芝生を全面的に交換せずに、部分的に交換させるような補修を行っても、補修を行った範囲とそれ以外の範囲との排水性能に大きな差が生じにくくなされる。
【0009】
また、前記各排水溝を碁盤目状に形成させれば、異物が詰まる等の要因によって一部の排水溝の排水性能が低下しても、これに繋がる他の排水溝を経由して水が排水されるので、全体的な排水性能が継続的に良好なものとなされるので、好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る人工芝生敷設構造によれば、簡易な構造で良好な排水性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る人工芝生敷設構造の実施の一形態を示す断面の概要図である。
【図2】図1の要部を拡大した概要図である。
【図3】図1の人工芝生に設けられた各透水部の状態を示す人工芝生の底面の拡大図である。
【図4】図1の基礎層1に設けられた各排水溝11の状態を示す基礎層1の平面視の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の一形態を図面に基づき具体的に説明する。
図面において1は基礎層である。
基礎層1は、地面Gの上面へのアスファルトコンクリートやコンクリートの打設によって、上面が非透水性の平坦面に形成されている。
また、基礎層1の上面は、雨等が降った際に、その雨水が基礎層の全面を縁方向へ流れるように中央側から縁側へ若干傾斜するように形成させている。
基礎層1の傾斜は、雨水などの水が排水できればよいので、前記のように中央側を最も高くする形態に限るものではなく、一方の縁が対向する縁より高く位置するように傾斜させて設けても良く、他の形態に傾斜させてもよい。
【0013】
2は人工芝生である。
人工芝生2は、基布22の表面側に複数の芝糸21が植設され、この植設された芝糸21を固定するためのバッキング材23が基布22の裏面側に設けられて構成されている。本実施形態では人工芝生2は、ポリプロピレン製の平織りの織布を用いた基布22に、2000デシテックスのポリエチレン製モノフィラメントの芝糸21を、パイル長50mmのカットパイル状に植設して芝葉を形成し、基布22の裏面にウレタン樹脂等のバッキング材23を塗布して前記芝糸21の植設部分を固定して構成されている。
また、本実施形態の人工芝生2は基布22にポリプロピレン製の平織りの織布を用いているが、これに限るものではなく、織物、編物、不織布等、芝糸21が植設されるものであれば何でもよい。
また、本実施形態の人工芝生2は、芝糸21に2000デシテックスのポリエチレン製モノフィラメントを用いているが、これに限るものではなく、その糸の太さや材質、形状などを適宜選択して用いてよく、例えば800デシテックスのポリエチレン製スプリットヤーンを芝糸21として20mm程度の高さに植設させてもよく、他の材質や太さの芝糸21を用いても良い。
【0014】
人工芝生2の基布22に植設された各芝糸21の間には、粒状体を充填させた粒状体層3を形成させている。
本実施形態の粒状体層3は、人工芝生の表面に配置された上層33と、上層33の下の中層32と、中層32の下の下層31との三層構造となされている。上層33及び下層31は、SBRの粒からなる弾性粒状体で構成されており、本実施形態ではSBRの粒を用いている。
また中層32は、SBRの粒からなる弾性粒状体に硅砂を配合して構成しており、前記下層弾性粒状体100重量部に珪砂100重量部を配合させている。
本実施形態の粒状体層3は、SBRの粒からなる弾性粒状体と、硬質の硅砂とを用いて三層構造に形成させているが、これに限るものではなく、弾性粒状体のみを利用して粒状体層3を形成させてもよく、硬質の粒状体のみを利用して形成させても良い。
また、弾性粒状体として、SBRや、EPDMなどの合成ゴムや天然ゴムの粒を単体または組み合わせて用いてもよく、廃タイヤの粉砕物などのリサイクル品や、エラストマーなどを単体または組み合わせて用いてもよい。
また、硬質の粒状体として、硅砂やそれ以外の小石、陶器の粒、樹脂ペレットなどの粒状体を単体又は組み合わせて用いても良い。
また、本実施形態では、粒状体層3を三層構造としているが、これに限るものではなく、二層以下に構成させてもよく、四層以上に構成させてもよく、また粒状体層3を設けなくても良い。
【0015】
本実施形態の人工芝生2の基布22には、上面から下面に貫通する丸穴形状の透水部24が形成されている。
透水部24は、バッキング材23も貫通し、これを通じて人工芝生2の上面に降りかかった雨水などの水を、基布22の下方へ流下させるように形成されている。
本実施形態の透水部24は丸穴形状に形成させているが、これに限るものではなく、長穴形状に形成させてもよく、他の形状に形成させてもよい。
【0016】
図3は図1の人工芝生に設けられた各透水部24の状態を示す人工芝生の底面図である。
本実施形態の透水部24は直径約3mmの丸穴形状に形成され、人工芝生2の全面に亘って形成されている。
具体的には、図3に示すように、基布22の縦方向及び横方向にそれぞれX2、Y2の間隔をあけて複数配置されて設けられており、本実施形態ではX2とY2とがそれぞれ7cm程度の間隔に設けられている。
【0017】
また、本実施形態の基礎層1の上面には、下方に窪む排水溝11が形成されている。
排水溝11は、上端から下端までの幅の大きさが均一な凹溝形状に形成され、本実施形態の排水溝11は幅が約3mm、深さが5mm程度に形成されている。
また、排水溝11は基礎層1の上面から一定の深さに形成されており、排水溝11の底が基礎層1の上面と同じ傾斜を有するように設けられている。
上記のように排水溝11を設けることで、排水溝11に流れ込んだ水が、基礎層1の傾斜に沿って排水溝11内を流れて、基礎層11の端へ排出されるようになされる。
本実施形態では、コンクリートカッターを用いて各排水溝11を形成させており、コンクリートカッターを用いることで、上記のように各排水溝を基礎層1の上面から一定の深さに容易に設けることができる。
【0018】
各排水溝11は、その幅の大きさが小さすぎると基礎層1の排水性が低下するので、その幅の大きさを1mm以上に形成するのが好ましく、3mm以上に形成するのがより好ましい。
また、各排水溝11の幅の大きさは、大きすぎると排水溝11が設けられた部位とそれ以外の部位とで、人工芝生2の上面における弾力などに影響を与えるので、特に運動競技などを行うための競技場などでは不具合となり得る。各排水溝11の幅の大きさは、7mm以下に形成するのが好ましく、5mm以下に形成するのがより好ましい。
また、各排水溝11の溝の深さは、浅すぎると基礎層1の排水性が低下するので、その深さを3mm以上に形成するのが好ましく、5mm以上に形成するのがより好ましい。
また、各排水溝11の溝の深さは、深すぎると基礎層1の強度が低下する恐れがあるので、その深さを15mm以下に形成するのが好ましく、10mm以下に形成するのがより好ましい。
【0019】
図4は図1の基礎層1に設けられた各排水溝11の状態を示す基礎層1の平面視の拡大図である。
本実施形態の排水溝11は直線状に形成され、基礎層1の縦方向及び横方向にそれぞれX1、Y1の間隔をあけて複数配置されて設けられている。
本実施形態では、X1とY1とがそれぞれ30cm程度の間隔に設けられている。
また、各排水溝11はそれぞれ基礎層1の一方の端から他方の端に至るように形成されており、基礎層1の全面にわたって排水溝11が設けられるように配置されて形成されている。
【0020】
降雨や散水などによって、人工芝生2の上面に降りかかった水は、粒状体層3に浸透し、流れ落ちて基布22に至り、基布22とバッキング材23とを貫通する透水部24を通じて人工芝生2の下側へ流下して、基礎層1の上面に至る。
この後、基礎層1の上面の傾斜に沿って流れる水は、排水溝11に至ってその底へ流れ落ち、排水溝11の内側を流れて基礎層1の端から外側へ排水されるようになされる。
図2に示すように、人工芝生2の下面にはバッキング材23が全面的に塗布されているが、芝糸21の植設部分が下方へ突出しており、人工芝生2の下面全体に凸凹が生じている。この凸凹によって、基礎層1の上面と、人工芝生2の下面との間に隙間Sが生じ、基礎層1の上面に流れ落ちた水はこの隙間Sを通って流れるようになされる。また、本実施形態の基礎層1は、排水溝11以外の部分は平坦に設けられているが、その上面に生じた小さな凸凹も水の流れる通路となっている。また、基礎層1と人工芝生2との間の隙間Sを大きく設けるために、基礎層1の上面を粗く形成させて、比較的大きな凸凹が生じるように設けてもよい。
【0021】
本実施形態の人工芝生2の各透水部24は、それぞれ縦方向と横方向にX2、Y2の間隔をあけて配置されて設けられているが、これは基礎層1に設けた各排水溝11の間隔X1、Y1より狭い間隔となるように設けられている。
このように各透水部24を設けることで、各透水部11による人工芝生2の透水性が、基礎層1の各排水溝11による排水性より大きくなされ、人工芝生2の透水性の低さによって人工芝生2上面に水が滞留することが防止される。
また、人工芝生2が劣化や破損などして交換などが必要な場合、基礎層1の各排水溝11の間隔より狭い大きさの間隔に各透水部24が形成された人工芝生2を用いることで、人工芝生2を全面的に交換せずに、部分的に交換させるような補修を行っても、補修を行った範囲とそれ以外の範囲との排水性能に大きな差が生じにくくなされる。
【0022】
また、本実施形態の各排水溝11は、基礎層1の上面に碁盤目状に形成させているが、これに限るものではなく、縦方向のみ又は横方向のみ等、各排水溝を一方向のみへ向かうように配置させて設けてもよく、他の形態に設けても良いが、本実施形態のように碁盤目状に設けることで、その内部に異物が詰まる等して排水溝11の一部の水の流れが低下しても、この部分に繋がる他の排水溝11を通って水が流れて排水されるので、基礎層1全体の排水性が継続して保たれる。
【0023】
また、本実施形態の人工芝敷設構造では、基礎層1の上面に人工芝生2を直接敷設させているが、これに限るものではなく、透水性のシートや、砕石層、透水コンクリート層など、透水性を有する層を設けても良い。しかし、これらの透水性を有する層を設けると、これらが使用の課程で劣化し、その屑や破片などが下方へ落ちて、基礎層1の排水溝11を詰まらせる要因となり得るので、本実施形態のように排水溝11を設けた非透水性の基礎層1の上面に直接人工芝生2を敷設させるのが望ましい。
【符号の説明】
【0024】
1 基礎層
11 排水溝
2 人工芝生
21 芝糸
22 基布
23 バッキング材
24 透水部
3 粒状体層
31 下層
32 中層
33 上層
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎層の上に人工芝生を敷設させる人工芝生敷設構造であって、
前記基礎層は非透水性に形成され、該基礎層の上面には下方へ窪む排水溝が間隔をあけて複数形成されており、
前記人工芝生は芝糸が基布の上面から上方へ立設されるように植設されて形成され、
前記基布には上面から下面に至る透水部が間隔をあけて複数形成されると共に、
前記各透水部の間隔が前記各排水溝の間隔より狭い大きさに形成されて、前記人工芝生上に降った雨水が透水部から基布と基礎層との隙間を通って前記排水溝に流入されるようになされたことを特徴とする人工芝生敷設構造。
【請求項2】
前記各排水溝が碁盤目状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の人工芝生敷設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−47001(P2012−47001A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191674(P2010−191674)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】