説明

人工血管及び人工血管システム

【課題】人工血管を構成するチューブを容易に内側に折り返して吻合する。
【解決手段】人工血管システム10は、可撓性を有するチューブ16と該チューブ16の一端部16aに備えられるステント(構造体)18とを含む人工血管12と、チューブ16がその他端部16cから内側に折り返される場合に、該チューブ16を所望の位置で係止する位置固定装置14と、を含む。この場合、チューブ16には、所望の位置において係止されるための係止部40が備えられ、位置固定装置14はフック48を用いてこの係止部40を係止し、人工血管12を位置決め保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大動脈等の置換手術に用いられる人工血管及び人工血管システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大動脈疾患(大動脈瘤や大動脈解離等)に対する外科的治療では、人工血管への置換手術が行われている。特に、弓部大動脈から下行大動脈まで広範囲にわたって治療する場合、弓部大動脈置換手術が行われる。この手術では、弓部大動脈を切開(切離)し、一端部にステントを備えた人工血管(管状形態を維持するための金属製の骨格を有する人工血管。ステントグラフトともいう。)を下行大動脈まで挿入して該ステントを血管壁に押し付けた後、人工血管の中間部と弓部大動脈(又は下行大動脈)の切断部分とを吻合し、さらに人工血管と他の動脈とを吻合する手術方式(フローズンエレファントトランクテクニックとも呼ばれる)が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、上記弓部大動脈置換手術では、人工血管の中間部と弓部大動脈を吻合する場合に、特許文献1の図4に示されるように、人工血管のステントが備えられていない側(以下、前記ステントと対比するためチューブともいう)の他端部を、内側に折り返す作業(内翻作業とも呼ばれる)が営まれている。これによって、チューブの折り返し端部と弓部大動脈の切断端部との間で比較的容易に且つ確実に吻合が行われることになり、手術時間が短縮され、また、患者への負担も軽減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6773457号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記弓部大動脈置換手術は患者の手術侵襲を低減させるため、通常、胸部正中切開のみが行われ、この結果、狭い手術領域の中で上述したステントの挿入やチューブと各動脈の吻合等の行為を余儀なくされる。
【0006】
しかしながら、このような狭い領域内の作業では、チューブの他端部をスムーズにチューブの内側に折り返すことが難しい。すなわち、チューブを所望の位置(折り返し端部)まで折り返そうとしても、この折り返し作業にともなう押し込み力によって、チューブが弓部大動脈や下行大動脈に押し込まれてしまい、チューブの内側に所望の形状で折り返せなくなる。その結果、折り返し作業に大きな手間がかかり、置換手術の作業効率を低下させ、患者の負担も相当大きくなる不都合がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、人工血管のチューブを所望の位置において係止可能に構成することにより、該チューブを容易に内側に折り返すことができ、これにより人工血管の置換手術を一層効率的に行うことができ、しかも患者への負担を軽減することが可能となる人工血管及び人工血管システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、可撓性を有するチューブと、該チューブの一端部に備えられて第1の外径及び該第1の外径より大きい第2の外径に変形可能な構造体とを含む人工血管であって、前記チューブには、該チューブが他端部から内側に折り返される場合に、所望の位置において係止される係止部が備えられることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、人工血管は、チューブの他端部を内側に折り返す作業が行われる場合に、チューブに備えられた係止部が所望の位置において係止されるため、折り返し作業にともなう押し込み力によって生体血管内(例えば、弓部大動脈や下行大動脈)に押し込まれることを防止できる。すなわち、チューブが所望の位置において係止されることで、該チューブの他端部を所望の位置まで短時間に折り返すことが可能となるため、人工血管の置換手術をより効率的に行うことができる。なお、係止部を係止する装置としては、後述する位置固定装置や鉗子等を用いることができる。
【0010】
また、前記チューブの外周面には、前記係止部が軸方向に沿って複数備えられることが好ましい。このように複数の係止部がチューブの軸方向に備えられることで、チューブが係止される位置を治療範囲等に応じて変えて、チューブの折り返し量を自由に設定することができる。これにより、チューブを折り返すことによって形成される折り返し端部を、生体血管の切断端部の近傍に確実に位置させることが可能となり、折り返し端部と生体血管の切断端部との吻合作業を一層容易化することができる。
【0011】
さらに、前記チューブは、蛇腹状であって前記チューブの外周面に形成された周回する稜線上に前記係止部が複数備えられることが好ましい。このようにチューブの稜線上に係止部が複数備えられていれば、チューブがその他端部から内側に折り返される場合に、複数の係止部が係止されることで、チューブが確実に保持される。これにより、人工血管は、折り返し作業において強い押し込み力が付与されても、チューブの位置決め状態が固定される。
【0012】
ここで、前記係止部は、前記チューブの外周面に両端部が固定された円弧状引掛部によって構成されてもよい。このように係止部として円弧状引掛部を用いることで、チューブの外周面にこの円弧状引掛部を簡単に取り付けることができる。また、円弧状引掛部であれば、人工血管の外周面に残存しても人工血管と生体血管を吻合する吻合糸に比して微量に突き出る程度であるため、手術後に人体に対して悪影響を与えることがない。
【0013】
また、本発明の人工血管システムは、可撓性を有するチューブと、該チューブの一端部に備えられて第1の外径及び該第1の外径より大きい第2の外径に変形可能な構造体とを含む人工血管と、前記チューブがその他端部から内側に折り返される場合に、該チューブを所望の位置に位置決め保持する位置固定装置と、を含むことを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、人工血管の置換手術において、チューブの他端部を内側に折り返す作業を行う場合に、位置固定装置を用いてチューブを所望の位置に位置決め保持することができる。このようにチューブが位置決め保持されていることで、チューブの他端部を所望の位置まで容易に折り返すことが可能となる。
【0015】
上記チューブを係止するための具体的構成として、前記チューブの外周面には、係止部が備えられ、前記位置固定装置は、前記係止部に係合可能なフック部を有する構成とすることができる。このように、位置固定装置が有するフック部とチューブの係止部が係合することで、チューブを所望の位置において容易に位置決め保持することができる。
【0016】
また、前記チューブの外周面には、前記係止部が軸方向に沿って複数備えられ、前記フック部は、前記チューブが前記他端部から内側に折り返される場合に、該チューブの軸方向位置を変更可能に位置決め保持することが好ましい。係止部が軸方向に沿って複数備えられることで、位置固定装置が位置決め保持する位置を選択的に変えることが可能となる。これにより、置換される生体血管(例えば、弓部大動脈や下行大動脈)の大きさや治療範囲等に応じて、チューブの折り返し量を自由に設定することができる。
【0017】
さらに、前記チューブは、蛇腹状であって前記チューブの外周面に形成された周回する稜線上に前記係止部が複数備えられ、前記位置固定装置は、前記係止部に対応する複数のフック部を有し、前記フック部によって前記係止部を係止することが好ましい。位置固定装置のフック部がチューブの稜線上に設けられた係止部を係止することで、チューブの他端部を内側に折り返す場合に、強い押し込み力が付与されてもチューブを確実に位置決め保持することができる。
【0018】
またさらに、前記位置固定装置は、前記フック部が前記係止部を係止した状態において、該係止部を外径方向に引っ張るように構成されていてもよい。このように、位置固定装置によって係止部が外径方向に引っ張られることで、チューブの内径を拡径させることができる。したがって、チューブを他端部から内側に折り返す作業を容易に行うことができ、更に折り返し端部を所望の形状に形成できる。これにより、チューブの折り返し端部と生体血管の切断端部との吻合を容易にして、人工血管の置換手術をより一層効率的に行うことが可能となる。
【0019】
ここで、前記係止部は、前記チューブの外周面に両端部が固定された円弧状引掛部であり、前記フック部は、前記円弧状引掛部に対応して一方が開放されて前記チューブを受容するU字部の内方に突出している構成としてもよい。このように係止部を円弧状引掛部とし、フック部がU字部の内方に突出していることで、該フック部が円弧状引掛部を簡単に引っ掛けることができるため、チューブを所望の位置において簡単に位置決め保持することができる。
【0020】
また、上記の人工血管システムを用いた人工血管の接合では次の方法を採ることができる。
【0021】
すなわち、可撓性を有するチューブと、該チューブの一端部に備えられて第1の外径及び該第1の外径より大きい第2の外径に変形可能な構造体と、前記チューブを所望の位置で係止可能な係止部とを備える人工血管を、生体血管に接合する人工血管の接合方法であって、前記生体血管を切離し、前記人工血管に置換される生体血管を取り除くステップと、前記人工血管が接合される生体血管に対し、前記構造体を前記第1の外径とした状態で前記人工血管を挿入し、該構造体を所定の留置位置に送るステップと、前記留置位置において前記構造体を前記第1の外径から前記第2の外径に拡張させるステップと、フック部を有する位置固定装置を前記チューブの係止部に係合させて前記チューブを係止するステップと、前記チューブを他端部から内側に折り返して折り返し端部を形成するステップと、前記チューブの折り返し端部と前記生体血管の切断端部を吻合するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、人工血管の置換手術においてチューブが他端部から内側に折り返される場合に、チューブが所望の位置で係止されることになり、これによりチューブの他端部を容易に内側に折り返すことができ、人工血管の置換手術をより効率的に行うことが可能となり、しかも患者への負担を軽減することができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態に係る人工血管を生体に適用した状態を模式的に示す説明図である。
【図2】人工血管システムの全体構成を示す斜視図である。
【図3】人工血管及び位置固定装置の関係を模式的に示す説明図であり、図3Aは人工血管を示す側面図、図3Bは位置固定装置によって人工血管のチューブを係止した状態を示す側面図、図3Cはチューブの他端部を内側に折り返した状態を示す側面図である。
【図4】本実施の形態に係る人工血管システムを用いて弓部大動脈置換手術を行う際の手順を示すフローチャートである。
【図5】人工血管に置換前の弓部大動脈付近の状態を模式的に示す説明図である。
【図6】人工血管を下行大動脈に挿入した状態を模式的に示す説明図である。
【図7】人工血管の他端部を折り返した状態を模式的に示す説明図である。
【図8】人工血管の中間部と下行大動脈を吻合した状態を模式的に示す説明図である。
【図9】人工血管の他端部を元にした状態を模式的に示す説明図である。
【図10】本実施の形態の第1変形例に係る人工血管を示す説明図であり、図10Aは、弓部大動脈の切断箇所を示す図、図10Bは、第1変形例の人工血管の適用状態を示す図である。
【図11】第2変形例に係る人工血管の接合方法を示す説明図であり、図11Aは、弓部大動脈の切断箇所を示す図、図11Bは、第2変形例の人工血管の適用状態を示す図である。
【図12】第3変形例に係る人工血管の接合方法を示す説明図であり、図12Aは、弓部大動脈の切断箇所を示す図、図12Bは、第3変形例の人工血管の適用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る人工血管及び人工血管システムについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係る人工血管を生体に適用した状態を模式的に示す説明図であり、図2は、人工血管システムの全体構成を示す斜視図である。本実施の形態に係る人工血管システム10は、人工血管12と、位置固定装置14とを含む構成である(図2参照)。図1に示すように、本実施の形態に係る人工血管12は、例えば、弓部大動脈22の外科的治療(弓部大動脈置換手術)において、該弓部大動脈22を部分的に置換する代替物として用いられる。なお、以降の説明では、人工血管の置換手術のうち弓部大動脈置換手術について詳述するが、本人工血管12を他の血管の治療に用いてもよいことは勿論である。
【0026】
図1及び図2に示すように、人工血管12は、チューブ16とステント(構造体)18を有する。人工血管12のチューブ16は、可撓性を有し、且つ生体血管の代替物として適用可能な材質によって形成される。このような材質としては、例えば、ポリエステル繊維、ePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)、ポリウレタン等の人工素材を用いることができる。この場合、チューブ16は、内皮細胞やタンパク質等の生体素材によって内周面をコーティングした混成素材(ハイブリッド人工血管)を用いてもよい。さらに、組織工学や遺伝子工学によって形成された人工血管12を適用することもできる。
【0027】
チューブ16は、弓部大動脈22との置換に適した胸部用大口径人工血管となるように、その寸法及び形状が設定されている。この場合、チューブ16は、外径を12mm〜30mm程度、肉厚を0.1mm〜1mm程度、長さを100mm〜600mm程度に設定すると、弓部大動脈22との関係で好適である。
【0028】
また、本実施の形態に係るチューブ16は、側面が手術中に折り曲げてもつぶれないように蛇腹構造が採用されている。なお、チューブ16は、この蛇腹構造に替えてリング状のリブが外周面に形成されていてもよく、またチューブ16自体に一定の弾性力があれば平滑面に形成されていてもよい。
【0029】
図2に示すように、ステント18は、上述したチューブ16の一端部16aに接合される。このステント18は、血管内に挿入する際に適宜な寸法に縮径する第1の外径と、該第1の外径より大きく血管を内側から支持する適宜な寸法となる第2の外径に変形可能な構造体として構成されている。また、本実施の形態に係るステント18は、チューブ16と同じ素材からなるグラフト18aに、金属製のワイヤー18bを組み合わせたステントグラフトとして構成されている。このワイヤー18bの材質としては、例えば、医療用ステンレス、ナイチノール、タンタル、コバルト合金等を用いることができる。また、病的血管の治療に使用するための薬剤を溶出する特殊ワイヤーを採用してもよい。
【0030】
ステント18は、超弾性合金のような復元力を有する金属素材からなるワイヤー18bがグラフト18aの周方向に対して波状に形成されており、このワイヤー18bが軸方向に複数並べられることで(図2では2つ)、弾性力を有した自己拡張型ステントとして機能する。なお、ステント18は、ワイヤーを格子状やリング状に形成し、グラフト18aを周方向に拡張するように取り付けてもよい。さらに、ステント18は、自己拡張型以外にも、塑性変形する金属素材を網目状の筒に形成して、この筒内から風船を膨らませることで拡張するバルーン拡張型ステントを用いてもよい。
【0031】
上述したチューブ16及びステント18からなる人工血管12を生体血管に適用する場合は、図示しないカテーテル(シースチューブとも呼ばれる)のルーメン内にステント18を収縮(すなわち、ステント18を第1の外径に変形)して装填する。そして、カテーテルとともに人工血管12を生体血管内に挿入した後、該カテーテルを抜き取ることによってステント18を拡張(すなわち、ステント18を第2の外径に変形)させる。このステント18の拡張によって、グラフト18aを生体血管の血管壁に押し付けることができる。
【0032】
ここで、本実施の形態に係る人工血管12を弓部大動脈22に置換した状態について、図1及び図5を対比しながら説明する。なお、図5は、人工血管12に置換する前の弓部大動脈22付近の状態を模式的に示す説明図である。図5に示すように、弓部大動脈22は、心臓(図示せず)の上部に存在する胸部大動脈20の一部を構成しており、心臓から送り出される血液を流通させる。
【0033】
一般的に、胸部大動脈20は、上行大動脈24、弓部大動脈22、下行大動脈26、腕頭動脈28、左総頚動脈30及び左鎖骨下動脈32が含まれる。上行大動脈24は、基部24aが心臓(左心室)の大動脈口(図示せず)に接続されており、下部には心筋に酸素を供給する冠動脈(右冠動脈34a、左冠動脈34b)が接続されている。弓部大動脈22は上行大動脈24の上部において弓なりに曲がった部分であり、その上部には腕頭動脈28、左総頚動脈30及び左鎖骨下動脈32が分枝されている。下行大動脈26は、上部が弓部大動脈22に連なるとともに、下部が腹部大動脈(図示せず)までつながっており、心臓から送り出された血液をこの腹部大動脈に供給する機能を有している。
【0034】
外科的治療にともない弓部大動脈22を人工血管12に置換する場合は、治療範囲に応じて、例えば、上行大動脈24及び弓部大動脈22(又は下行大動脈26)の二箇所を切断線100、102で示すように切断するとともに、弓部大動脈22の上部で分枝されている腕頭動脈28、左総頚動脈30及び左鎖骨下動脈32を切断線104によってまとめて切断する手法が採られる。
【0035】
図1に示すように、本実施の形態に係る人工血管12を弓部大動脈22と置換した状態(弓部大動脈置換手術を施した状態)では、ステント18が下行大動脈26の所望の位置(例えば、血管の内径が比較的小さい箇所)において拡張状態を維持する。これにより、チューブ16の一端部16aが下行大動脈26に固定された状態となっている。一方、チューブ16の中間部16bが弓部大動脈22の切断端部22aと吻合されることで、弓部大動脈22及び下行大動脈26が閉塞されている。さらに、下行大動脈26の近傍に露出したチューブ16の中間部16bが切り欠かれ、この切り欠き部には一体的に切断された腕頭動脈28、左総頚動脈30及び左鎖骨下動脈32の基部29が吻合されている。またさらに、チューブ16の他端部16cと切断された上行大動脈24の基部24aとが吻合された状態にある。
【0036】
以上のように、人工血管12が有するステント18を下行大動脈26内に押し付けるとともに、人工血管12と各動脈とを吻合する手術方式(フローズンエレファントトランクテクニック)によって、人工血管12と弓部大動脈22とを置換することができ、置換後の人工血管12を介して心臓から各動脈に血液が供給されることになる。この手術方式は、大動脈瘤や大動脈解離の治療において手術侵襲を少なくする等の大きな効果を得ることができる。
【0037】
既述したように、弓部大動脈置換手術では、チューブ16の中間部16bと弓部大動脈22の切断端部22aとを吻合する前に、ステント18が備えられていない側の端部(他端部16c)をチューブ16内に折り返す作業(内翻作業)が行われる(図7参照)。人工血管12は、この折り返し作業が行われる際に、弓部大動脈22の切断端部22a近傍において人工血管12が係止されることで、折り返し作業にともなう押し込み力によって弓部大動脈22や下行大動脈26内に押し込まれることが防止される。
【0038】
本実施の形態に係る人工血管システム10は、上記したチューブ16の係止を行う構成として、位置固定装置14を有している。
【0039】
図3は、人工血管12と位置固定装置14の関係を模式的に示す説明図であり、図3Aは人工血管12を示す側面図、図3Bは位置固定装置14によって人工血管12のチューブ16を係止した状態を示す側面図、図3Cはチューブ16の他端部16cを内側に折り返した状態を示す側面図である。図2及び図3Aに示すように、本実施の形態に係る人工血管12は、複数の係止部40がチューブ16の中間部16bに設けられている。この係止部40は、前記位置固定装置14によって係止される。
【0040】
係止部40としては、例えば、チューブ16の外周面に両端部が固定された糸状の引掛部(円弧状引掛部)42を適用することができる。このように係止部40として引掛部42を適用することで、チューブ16の外周面に該引掛部42を簡単に取り付けることができる。
【0041】
また、本実施の形態では、チューブ16の周方向(蛇腹構造の1つの山部稜線上)に4つの引掛部42が配設されている。これら4つの引掛部42は、チューブ16の一方の側部に一対の引掛部42が一定間隔で、例えば30度の角度をもって配置され、それと対称的に他方(反対側)の側部に同じく一対の引掛部42が一定間隔で、例えば30度の角度をもって配置されている。なお、4つの引掛部42は90度ずつ離間して等間隔に配置されてもよい。
【0042】
さらに、チューブ16の外周面には、周方向に配設された4つの引掛部42を1列として、この引掛部42の列が軸方向に5つ並べて配列されている(各列について図2中の上方から順にa〜eの符号を付し、以下、1列を係止列ともいう)。各係止列a〜eの間隔は、チューブ16が直線状に延在した状態で等間隔に設定されている。
【0043】
一方、人工血管システム10の位置固定装置14は、上記チューブ16の引掛部42(係止部40)を係止する機能を有している。位置固定装置14は、直線状に延在する棒部44と、この棒部44の端部から二股に分かれて略円弧状を描くU字部46とが弾力性を有する樹脂材により一体形成されている。U字部46は、棒部44の延在方向に対し直交方向に突出している。位置固定装置14は、棒部44をチューブ16の延在方向に合わせることにより、該チューブ16の側部を部分的にU字部46で囲うことができる。
【0044】
このU字部46は、チューブ16の引掛部42に引っ掛けるフック(フック部)48を4つ有している。各フック48は、係止列a〜eに配設された各引掛部42に対応する位置に配置され、それぞれU字部46の内径方向に突出している。これら各フック48は、位置固定装置14によってチューブ16を係止する際に、所望の係止列a〜eのいずれかの引掛部42にそれぞれ引っ掛けられる(図3B参照)。このように、チューブ16の周方向に4つ備えられた引掛部42が位置固定装置14の4つのフック48にそれぞれ引っ掛けられることで、位置固定装置14がチューブ16を確実に係止することができ、チューブ16をその他端部16cから内側に容易に折り返すことができる(図3C参照)。よって、人工血管12は、チューブ16の折り返し作業を行う場合に強い押し込み力が付与されても、係止位置においてチューブ16が確実に固定される。
【0045】
また、複数の係止列a〜eがチューブ16の軸方向に沿って設けられることで、位置固定装置14によるチューブ16の係止位置を選択的に変えることが可能となる。これにより、下行大動脈26の大きさや治療範囲等に応じて、チューブ16の折り返し量を自由に設定することができる。したがって、チューブ16を折り返すことによって形成される折り返し端部16dを、弓部大動脈22の切断端部22aの近傍に確実に位置させることで、折り返し端部16dと弓部大動脈22の切断端部22aとの吻合作業を一層容易化することができる。
【0046】
さらに、本実施の形態に係る位置固定装置14のU字部46は弾性力を有しており、各フック48が各引掛部42を係止した状態において各引掛部42を外径方向に引っ張る構成としている。チューブ16の周方向に設けられた各引掛部42が外径方向に引っ張られることで、同位置のチューブ16内径を拡径させることができ、この状態でチューブ16の他端部16cを折り返すことで、折り返し端部16dを所望の形状に形成できる。これにより、折り返し端部16dと弓部大動脈22の切断端部22aとの吻合を容易にして、人工血管の置換手術をより効率的に行うことが可能となる。
【0047】
なお、人工血管12に置換した状態において、引掛部42は、チューブ16の外周面上に残るが、人工血管12と生体血管を吻合する吻合糸(縫合糸)に比して微量に突き出る程度であるため、人体に対して悪影響を与えることがない。あるいは、引掛部42をチューブ16から取り外し可能な構成とし、チューブ16の折り返し端部16dと弓部大動脈22の切断端部22aの吻合後に、引掛部42を除去する作業を実施してもよい。
【0048】
また、引掛部42としては、人工血管12と生体血管との吻合に使用される吻合糸を適用できるが、生体内で分解され人体に無害な材質を用いるほうがより好ましい。この材質としては、例えば、ゼラチン、フィブリン、セルロース等の生分解性ポリマー、又はリン酸系化合物、炭酸系化合物等の無機材料を適用することができる。このような材質によって引掛部42を形成することで、人工血管12に置換した後、引掛部42を生体内で分解させることができる。
【0049】
次に、本実施の形態に係る人工血管システム10を用いて弓部大動脈置換手術を行う際の手順を、図4及び図5〜図9を参照して説明する。弓部大動脈置換手術では、先ず患者の胸部を開胸して、弓部大動脈22又は下行大動脈26を切開(切離)し、人工血管12に置換される動脈を取り除く(図4のステップS1)。胸部の開胸は、患者の手術侵襲を低減させるため、通常、胸部正中切開が行われるが、疾患状況等に応じて左開胸が行われることもある。また、弓部大動脈22を切開する場合は、必要に応じて人工心肺等を用いて血液の体外循環を実施する。そして、図5に示すように、胸部大動脈20を三箇所の切断線100、102、104に沿って切断し、胸部大動脈20の各動脈から弓部大動脈22を切り離す。
【0050】
その後、カテーテルに装填したステント18を有する人工血管12を下行大動脈26に挿入し、下行大動脈26の所定の留置位置(例えば、図6中の下行大動脈26の外径が狭くなる箇所)に人工血管12(ステント18)を送る(図4のステップS2)。この場合、人工血管12のステント18は、第1の外径の状態でカテーテル内に収納されている。
【0051】
次に、留置位置においてステント18を第1の外径から第2の外径に拡張させ、人工血管12を下行大動脈26の血管壁に押し付ける(図4のステップS3)。すなわち、下行大動脈26の所望の位置まで挿入したステント18からカテーテルを抜き取ることで、ステント18を自動的に拡張させる。これにより、図6に示すように、ステント18が下行大動脈26に押し付けられる。以上の作業が行われると、人工血管12は、他端部16cが上行大動脈24の基部24aまで延び、中間部16bが下行大動脈26の上部から切断端部22aを通って動脈外側に露出した状態となる。
【0052】
次に、位置固定装置14のフック48をチューブ16の引掛部42に係合させてチューブ16を係止する(図4のステップS4)。この場合、弓部大動脈22の切断端部22aに合わせて係止列a〜eの中から1つを選択し(例えば、図6中では、弓部大動脈22の切断端部22aに最も近い係止列c)、この係止列cに設けられた4つの引掛部42に位置固定装置14の4つフック48を引っ掛ける。
【0053】
そして、位置固定装置14により係止列cを位置決め保持した状態で、鉗子等を用いてチューブ16の他端部16cを内側に折り返す作業を行い、図7に示すように、最終的には弓部大動脈22の切断端部22aにほぼ重なる位置(位置固定装置14が係止列cを係止している位置)に折り返し端部16dを形成させる(図4のステップS5)。
【0054】
続いて、チューブ16の折り返し端部16dと弓部大動脈22の切断端部22aを吻合する(図4のステップS6)。このとき、上述したように、チューブ16の折り返し端部16dが弓部大動脈22の切断端部22aにほぼ重なる位置に形成されていることで、吻合を容易且つ正確に行うことが可能になる(図8参照)。この吻合によって弓部大動脈22の切断端部22aが閉塞される。このように、ステップS1〜S6を実施する人工血管12の接合方法によれば、手間のかかる人工血管12の折り返し作業を短時間で行うことが可能となり、しかもチューブ16を綺麗(所望の形状)に折り返せるので、生体血管(弓部大動脈22)に人工血管12を一層容易に接合することできる。よって、手術全体の作業効率を向上することができる。
【0055】
吻合が終了した後は、折り返したチューブ16の他端部16cを元に戻す作業を行う(図4のステップS7)。この場合、ステップS5におけるチューブ16の折り返し作業において該チューブ16を係止していたことで、チューブ16が綺麗に折り返されているため、効率的に元の状態に戻すことができる。
【0056】
次に、チューブ16の中間部16bの上部側を切断する(図4のステップS8)。すなわち、図9に示すように、チューブ16は、下行大動脈26から露出した部分が切断線106に沿って切断されることで、チューブ16の中間部16bの上部に切り欠き部(図示せず)が形成される。
【0057】
最後に、チューブ16の他端部16cに上行大動脈24を吻合し、さらに切断したチューブ16の中間部16bに各動脈(腕頭動脈28、左総頚動脈30、左鎖骨下動脈32)の基部29を吻合する(図4のステップS9)。これにより、人工血管12が各動脈と接合されることになり、図1に示すように、弓部大動脈22が人工血管12に置換された状態が完成する。
【0058】
以上のように、本実施の形態に係る人工血管システム10によれば、人工血管12のチューブ16を、位置固定装置14によって所望の位置に位置決め保持することで、該チューブ16を容易に内側(チューブ16内)に折り返すことができる。したがって、該チューブ16の他端部16cを短時間に切断端部22a近傍まで折り返すことができ、人工血管12の置換手術をより効率的に行うことが可能となり、しかも患者への負担を軽減することができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、位置固定装置14を用いて、チューブ16の係止部40を係止する構成としたが、手術領域の大きさや治療範囲等に応じて鉗子等により係止部40を係止してもよい。また、人工血管システム10は、チューブ16の外周面を吸着保持する吸着機能を備えた位置固定装置(図示せず)によって、チューブ16の係止を行うこともできる。
【0060】
さらに、本実施の形態では、弓部大動脈置換手術のステップS4において、位置固定装置14のフック48をチューブ16の引掛部42に引っ掛ける構成としたが、手術領域の大きさや治療範囲等に応じて、ステップ2の実施前に、予め位置固定装置14のフック48をチューブ16の引掛部42に引っ掛けておき、その状態で人工血管12を下行大動脈26に挿入し(ステップS2)、その後、人工血管12に引っ掛かっている位置固定装置14を下行大動脈26から引き出すことでチューブ16を係止するようにしてもよい(ステップS4)。
【0061】
要するに、人工血管システム10は、チューブ16の折り返し作業を行う場合に、該チューブ16が所望の位置で係止されればよく、係止する位置固定装置14の構成、形状、機能及び係止のタイミング等は特に限定されるものではない。
【0062】
図10は、第1変形例に係る人工血管50を示す説明図であり、図10Aは、弓部大動脈22の切断箇所を示す図、図10Bは、第1変形例の人工血管50の適用状態を示す図である。なお、以降の第1〜第3変形例の説明において、上述した人工血管システム10と同じ構成又は同じ機能を有するものは、同一の符号を付しその詳細な説明は省略する。
【0063】
図10A及び図10Bに示すように、第1変形例に係る人工血管50は、2つの人工血管(第1人工血管52、第2人工血管54)を使用する点で、本実施の形態で説明した人工血管12とは異なる。この場合、第1人工血管52は、本実施の形態に係る人工血管12と同様に、チューブ16及びステント18を有する。一方、第2人工血管54は、第1人工血管52のチューブ16と同じ大きさの主血管56と、該主血管56に接続され弓部大動脈22上部の各動脈(腕頭動脈28、左総頚動脈30及び左鎖骨下動脈32)の根本部分を置換可能な3分枝血管56a、56b、56cとを有する。この人工血管50は、第1人工血管52の他端部16cに第2人工血管54の一端部54aが吻合されて一体化され、治療が必要な生体血管(弓部大動脈22)と置換される。
【0064】
また、第1人工血管52は、本実施の形態に係る人工血管12よりもチューブ16が短く形成されており、第1人工血管52を弓部大動脈22に挿入した状態で、チューブ16(他端部16c)が吻合部分から少しだけ突き出る。したがって、第1人工血管52のチューブ16の外周面に係止部40(引掛部42)を設けることで、位置固定装置14等を用いて該係止部40を容易に位置決め保持することができる。
【0065】
ここで、第1変形例に係る人工血管50の接合方法について説明すると、先ず患者の胸部を開胸して、弓部大動脈22を切開(切離)し、人工血管50に置換される動脈を取り除く(図4のステップS1)。この際、胸部大動脈20は、図10Aに示すように、上行大動脈24側の切断線110と、弓部大動脈22側の切断線112と、腕頭動脈28、左総頚動脈30及び左鎖骨下動脈32の根元付近の各切断線114a、114b、114cとに沿って切離される。
【0066】
動脈を取り除いた後、第1人工血管52を弓部大動脈22に接合するまでの作業は、本実施の形態の人工血管12の接合方法で説明したステップ(図4のステップS2〜S7)を採ることができる。ステップS7が終了し、第1人工血管52のチューブ16の折り返しを元に戻した後は、第2人工血管54の他端部54bを上行大動脈24に吻合し、さらに3分枝血管56a、56b、56cを各動脈(腕頭動脈28、左総頚動脈30及び左鎖骨下動脈32)に吻合し、その後第1人工血管52と第2人工血管54を吻合する。
【0067】
このように、第1変形例によれば、第1人工血管52の他端部16cを内側に折り返す作業を行う際に、位置固定装置14等によってチューブ16を位置決め保持することで、該チューブ16の他端部16cを短時間に切断端部22a近傍まで折り返すことができ、患者への負担を軽減することができる。また、第1人工血管52と第2人工血管54を組み合わせることで、生体血管の治療の範囲(例えば、弓部大動脈22の上部側付近に疾患がある場合)に応じた汎用性の高い置換手術を行うことができる。なお、第1人工血管52は、本実施の形態に係る人工血管12を短く切断したものを用いてもよい。また、人工血管50は、第1人工血管52と第2人工血管54が予め一体となったものを用いてもよい。
【0068】
図11は、第2変形例に係る人工血管の接合方法を示す説明図であり、図11Aは、弓部大動脈22の切断箇所を示す図、図11Bは、第2変形例の人工血管12の適用状態を示す図である。図11A及び図11Bに示すように、第2変形例では、本実施の形態に係る人工血管12を適用することができ、本実施の形態で説明した人工血管12と生体血管の接合方法のみが異なっている。すなわち、第2変形例では、人工血管12の他端部16cに上流側の動脈(弓部大動脈22又は上行大動脈24)を挿入し、この上流側の動脈の外周面(側面)と人工血管12の他端部16c近傍を吻合する接合方法を採っている。
【0069】
この場合、胸部大動脈20は、図11Aに示すように、弓部大動脈22の上行大動脈24寄りの切断線120と、弓部大動脈22の下行大動脈26寄りの切断線122と、腕頭動脈28、左総頚動脈30及び左鎖骨下動脈32の基部29側の切断線124とに沿って切離される。なお、第2変形例では、切断線122が切断線124に連なるように切離される。
【0070】
第2変形例においては、本実施の形態の人工血管12の接合方法で説明したステップ(図4のステップS2〜S8)を行った後、ステップS9を実施する際に、チューブ16の中間部16bと基部29を吻合する作業と、切断線120、124で切断された弓部大動脈22を人工血管12のチューブ16(他端部16c)に挿入して、チューブ16と弓部大動脈22の重合部分を吻合する作業が行われる。このように、上流側の動脈を人工血管12の内部に挿入して吻合を行うことで、人工血管12を容易に生体血管に密着させることができる。
【0071】
また、第2変形例でも、人工血管12の他端部16cを内側に折り返す作業を行う際に、位置固定装置14等によってチューブ16を位置決め保持することで、該チューブ16の他端部16cを短時間に切断端部22a近傍まで折り返すことができ、患者への負担を軽減することができる。
【0072】
図12は、第3変形例に係る人工血管60の接合方法を示す説明図であり、図12Aは、弓部大動脈22の切断箇所を示す図、図12Bは、第3変形例の人工血管60の適用状態を示す図である。図12A及び図12Bに示すように、第3変形例に係る人工血管60は、弓部大動脈22の治療範囲(置換箇所)に応じてチューブ16を短くした点で本実施の形態で説明した人工血管12と異なる。
【0073】
すなわち、胸部大動脈20は、図12Aに示すように、弓部大動脈22の左総頚動脈30と左鎖骨下動脈32の間の切断線130と、弓部大動脈22の下行大動脈26寄りの切断線132と、左鎖骨下動脈32の基部の切断線134とに沿って切離される。そして、第3変形例に係る人工血管60を用いて、切断線130で切断された弓部大動脈22の端部と人工血管60の他端部16cを吻合し、さらに他端部16cの上部に左鎖骨下動脈32を吻合することで、人工血管60と生体血管との置換を行うことができる。
【0074】
この第3変形例を採った場合、胸部大動脈20の置換範囲を極力少なくすることとができるので、患者の負担をより低減することができる。また、人工血管60のチューブ16の外周面に係止部40(引掛部42)を設けることで、位置固定装置14等を用いて該係止部40を容易に位置決め保持することができる。よって、該チューブ16の他端部16cを短時間に切断端部22a近傍まで折り返すことができる。
【0075】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
10…人工血管システム 12、50、60…人工血管
14…位置固定装置 16…チューブ
18…ステント 20…胸部大動脈
22…弓部大動脈 24…上行大動脈
26…下行大動脈 40…係止部
42…引掛部 44…棒部
46…U字部 48…フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するチューブと、該チューブの一端部に備えられて第1の外径及び該第1の外径より大きい第2の外径に変形可能な構造体とを含む人工血管であって、
前記チューブには、該チューブが他端部から内側に折り返される場合に、所望の位置において係止される係止部が備えられることを特徴とする人工血管。
【請求項2】
請求項1記載の人工血管において、
前記チューブの外周面には、前記係止部が軸方向に沿って複数備えられることを特徴とする人工血管。
【請求項3】
請求項1又は2記載の人工血管において、
前記チューブは、蛇腹状であって前記チューブの外周面に形成された周回する稜線上に前記係止部が複数備えられることを特徴とする人工血管。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の人工血管において、
前記係止部は、前記チューブの外周面に両端部が固定された円弧状引掛部であることを特徴とする人工血管。
【請求項5】
可撓性を有するチューブと、該チューブの一端部に備えられて第1の外径及び該第1の外径より大きい第2の外径に変形可能な構造体とを含む人工血管と、
前記チューブがその他端部から内側に折り返される場合に、該チューブを所望の位置に位置決め保持する位置固定装置と、
を含むことを特徴とする人工血管システム。
【請求項6】
請求項5記載の人工血管システムにおいて、
前記チューブの外周面には、係止部が備えられ、
前記位置固定装置は、前記係止部に係合可能なフック部を有することを特徴とする人工血管システム。
【請求項7】
請求項6記載の人工血管システムにおいて、
前記チューブの外周面には、前記係止部が軸方向に沿って複数備えられ、
前記フック部は、前記チューブが前記他端部から内側に折り返される場合に、該チューブの軸方向位置を変更可能に位置決め保持することを特徴とする人工血管システム。
【請求項8】
請求項6又は7記載の人工血管システムにおいて、
前記チューブは、蛇腹状であって前記チューブの外周面に形成された周回する稜線上に前記係止部が複数備えられ、
前記位置固定装置は、前記係止部に対応する複数のフック部を有し、前記フック部によって前記係止部を係止することを特徴とする人工血管システム。
【請求項9】
請求項8記載の人工血管システムにおいて、
前記位置固定装置は、前記フック部が前記係止部を係止した状態において、該係止部を外径方向に引っ張るように構成されていることを特徴とする人工血管システム。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の人工血管システムにおいて、
前記係止部は、前記チューブの外周面に両端部が固定された円弧状引掛部であり、
前記フック部は、前記円弧状引掛部に対応して一方が開放されて前記チューブを受容するU字部の内方に突出していることを特徴とする人工血管システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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