説明

人工血管

【課題】PET繊維、またはポリブチレンテレフタレート繊維等、芳香族系ジカルボンサンと脂肪族ジオールとの反応で造られた芳香族系ポリエステル繊維を用いた人工血管を生体血管に繋いだ時に、内径6mm以下の小口径人工血管において、血栓を生じず、長期にわたり閉塞しない人工血管の提供。および実用化されている従来のPET繊維を基材とした内径7mm以上の人工血管においても、枝分かれした部分、屈曲した部分または吻合部において血栓層が厚くなり閉塞することを防止し、より安全性の高い人工血管の提供。
【解決手段】芳香族系ポリエステル繊維の編物、織物、または不織布を基材とした管状物にポリアミノ酸ウレタン樹脂をコーティング、または含浸被覆した人工血管は、生体血管に繋いで血液が流れた時内皮細胞膜が形成され、その上には血栓が生じないので、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工血管に関し、特に優れた生体適合性、安全性等を有する人工血管に関する。
【背景技術】
【0002】
1950年頃から、血行再建を目的として人工血管が臨床で用いられるようになっている。
【0003】
その後人工血管としては、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)の編物や織物の管状物やポリテトラフルオロエチレンを延伸して多孔質化した樹脂(e−PTFE)の管状物が用いられている。これらの人工血管の管壁組織は空隙性に富んでいる。
【0004】
この中でPET繊維の編物や織物の管状物(人工血管)は血液が流れた時に血栓層ができ、その上に内皮細胞が生成する。またPET繊維が生体親和性であるため、血管外壁から生体細胞が侵入し新生内皮細胞に到達する。更に細血管が血管外壁から侵入し血管内に生成した新生内皮細胞膜に到達し、血栓は時間とともに体内に吸収される。血管内の新生内膜は細血管の血流により、新陳代謝が行われ、常に新しいものへと維持管理されている。
【0005】
即ち、このようにして生成した人工血管内新生膜は生体血管と同じ構造と機能を有しているため、開存性においても優れた人工血管である。
【0006】
一方、e−PTFEを用いた人工血管はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が代表的な生体非親和性(生体不活性な)物質であるため、e−PTFEを生体血管に繋いだ場合(生体血管の一部と置換した場合)、その吻合部に向かって生体血管から内皮細胞膜が侵入してくるが、e-PTFEの孔をおおきくしても、血管外壁からの生体細胞の侵入力が非常に劣り、また細血管が侵入しないのでPET繊維を基材とした人工血管のように人工血管内に生体血管と同じ構造のものは生成しない。また、その吻合部に向かって生体血管から侵入してくる内皮細胞膜はe−PTFEに付着しにくく、付着しても剥がれて血腫をつくり、長期間経過するうちにこの部分が肥厚して、吻合部に狭窄を生じさせ閉塞の原因となっている。
【0007】
ただ、内径6mm以下の人工血管の場合、血液が流れた時、e−PTFEが生体不活性物質であるので、PET繊維の場合のような血液凝固は起こらず、ある程度の期間は開存状態を保持するが、長期間の開存性は望めず実用的には不十分なものである。
【0008】
現在、実用化されている人工血管は大部分PET繊維の編物や織物で管状化した人工血管である。
【0009】
しかし、PET繊維の人工血管は血液が流れると管壁に血栓を生じ、小口径(内径6mm以下)の人工血管では血管が閉塞する。また、PET繊維の人工血管は血液が流れると、血球や血漿の漏出現象を引き起こす。
【0010】
そこでこれを防ぐために、1.人工血管を予め患者の血液で処理するプレクロッティング法、2.フィブリン糊でシールする方法、3.アルブミンを熱処理する方法、等が使用されてきた。しかし近年、緊急手術にも対応できるようにあらかじめゼラチン、コラーゲン等で目詰まりさせた人工血管が多用されている。
【0011】
これらの方法で目詰まりさせた人工血管においても血液が流れると小口径の人工血管では血液が凝固して血管が閉塞するため、中口径以上(内径7mm以上)の人工血管にしか実用できないという問題点を有している。
【0012】
現在までのところ、PET繊維を基材とした人工血管は内径6mm未満のものは使用されていない。また、PET繊維を基材とした内径7mm以上の実用化されている人工血管においても枝分かれした部分、屈曲した部分または場合によっては生体血管との吻合部に血栓層が厚く形成されて閉塞することがある。
【0013】
また、理想的人工血管として、最終的には生体内で全て吸収される人工血管も研究されているが、人工血管内に生体血管が出来はじめ、人工血管が吸収される過程において、人工血管は常にかかっている内圧によって徐々に膨らみ動脈瘤を形成し、ついには破裂するとのことである。
【0014】
すでに20年以上前から生体吸収性繊維の人工血管への応用が試みられているようであるが、上記動脈瘤を形成し、破裂する問題があるためか、全く実用化されていない。
【0015】
PAUについては、特許文献1においてPAUで内径1.0mm、長さ10mmのチューブをつくり、これをラットの腹部大動脈に移植し、一週間飼育後の結果、抗血栓性が良いことが示されている。特許文献2の実施例4には、細胞培養膜に利用できる抗血栓材料としての内径1.5mm、7mmのe−PTFE人工血管にPAUをコーティングしたものをラットの腹部大動脈に移植し、e−PTFE人工血管に比べて抗血栓性が向上したことが示されている。また、非特許文献1においては内径1.5mmのe−PTFE人工血管にPAUをコーティングしラットの腹部大動脈に移植すると血栓が全く生じなくなり、その人工血管内面には内皮細胞が良く内ばりされていることが内皮細胞マーカーとの反応、電子顕微鏡写真、光学顕微鏡写真で説明されている。しかしe−PTFE人工血管は生体不活性である性質から血管外壁からの生体細胞の侵入性に乏しく、細血管も血管外壁からは血管内まで到達しにくいため、e−PTFE人工血管内にはPET繊維の人工血管のように新陳代謝が可能な生体血管が生成されない。
【0016】
更にe−PTFE人工血管内において、e−PTFEは、他の材料に対する接着性が乏しいため、比較的長期のテストにおいては血流によりPAUコーティング成分とその上に生成した内皮細胞膜が剥離する可能性が大で、この剥離物が原因で血管(人工血管または生体血管)が閉塞してしまう危険性を否めず、実用的なものではない。
また、特許文献3にはポリグリコール酸、ポリ乳酸等の生体吸収性脂肪族系ポリエステル繊維から成るチューブ内に細胞接着層としてポリアミノ酸ウレタン樹脂(PAU)を用いることが提案されているが、このチューブを用いた人工血管は生体吸収性であるため、上記生体吸収性人工血管の問題点とその経緯から見て実用化は困難である。特許文献4にはPAUが生体吸収性であることが説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平11−239612号公報
【特許文献2】特開2001−136960号公報
【特許文献3】特開2005−319165号公報
【特許文献4】特開平1−124464号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Churen Wang, Qing Zhang, Shinji Uchida, Makoto Kodama., J Biomed Mater Res. 2002; 62(3):315-22.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は生体内で容易に分解または吸収されないPET繊維、またはポリブチレンテレプタレート繊維等、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの反応で造られた芳香族系ポリエステル繊維を用いた人工血管を生体血管に繋いだ時に血栓を生じさせないことであり、内径6mm以下の小口径の人工血管においても、長期にわたり閉塞しない人工血管を提供することである。
また、血栓を生じさせないことにより、実用化されている従来のPET繊維を基材とした内径7mm以上の人工血管においても、枝分かれした部分、屈曲した部分または場合によっては吻合部における血栓層が厚くなることよる閉塞を防止し、安全性の高い人工血管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、芳香族系ポリエステル繊維の編み物、織物、および不織布を基材とした管状物にポリアミノ酸ウレタン樹脂(PAU)をコーティングまたは含浸被覆することによって得られる人工血管である。
【0021】
本発明は、芳香族系ポリエステル繊維基材をゼラチン、コラーゲン等で目詰まりさせた人工血管にも適応可能である。
【0022】
即ち、PAUをコーティングした人工血管を生体血管に繋いだ場合(または生体血管と置換した場合)、PAUまたはゼラチン、コラーゲン等により、血球や血漿の漏れが防止され、かつPAUの抗血栓性と細胞接着性が機能して血栓が出来る前に人工血管の管内全体が内皮細胞膜で覆われるので血栓が生じない。
【0023】
芳香族系ポリエステル繊維基材がゼラチン、コラーゲン等で目詰まりさせた人工血管に対しては血液の漏れ防止が行われているのでPAUのコーティング量を少なくても、抗血栓性と内皮細胞の接着性が優れた人工血管が得られる。この場合も、PAUをコーティングした人工血管に血液が流れると内皮細胞膜が優先して形成されるため、従来のポリエステル繊維の人工血管のように血栓が生じない。
【0024】
その後、生体細胞と細血管が従来の芳香族系ポリエステル繊維の人工血管と同じように血管外壁から血管内に侵入し、内皮細胞に到達し、新陳代謝機能を有する生体血管が人工血管内に生成する。
これを図解すると次の図の通りである。
人工血管を移植(人工血管の両端に生体結果を繋ぎ血流させる)した時の従来の芳香族系ポリエステル繊維系人工血管の移植後の経過を図1に、従来の芳香族系ポリエステル繊維系人工血管にPAUをコーティングした人工血管の移植後の経過(PAUコーティング芳香族系ポリエステル繊維系人工血管の移植後の経過)を図2に示す。
また、芳香族系ポリエステル繊維系人工血管およびPAUコーティング芳香族系ポリエステル繊維の人工血管内に生成する生体血管の構造図を図3に示す。
【0025】
図1の従来の芳香族系ポリエステル繊維の人工血管においては、例えば内径7mm以上の人工血管だとゼラチンやコラーゲンのみで目詰まりさせたものに血液を流した場合、血液が管壁に凝結してもその厚みが2mm程度以下であるため血管が閉塞することなく、凝固血(血栓層)の上に内皮細胞膜が覆って生体血管と同様な表面構造を形成し、かつ人工血管の外壁から繊維間隙に生体細胞と細血管が侵入し、内皮細胞層の下には平滑筋細胞層、その下に繊維芽細胞が生成することにより生体組織との一体化が促進され、長期使用に耐える人工血管が形成される。しかし枝分かれした部分、屈曲した部分および場合によっては吻合部において血栓層が厚くなり閉塞する場合がある。
【0026】
また内径が4mm以下の小口径血管では、患者の血液によって生じる血栓層の厚みで血管が閉塞する。
【0027】
一方、図2のように芳香族系ポリエステル繊維の人工血管にPAUをコーティングしたものは抗血栓性と内皮細胞膜の生成性に優れているので、血液が流れた時、血液の凝結(血栓)が生じる前に内皮細胞膜が血管内壁全体を覆うので血栓が生じることがない。血栓を生じないため、現在実用化されていない内径6mm以下、さらには内径4mm以下の小口径人工血管にも使用可能となる。また最終的にはPAUは生体吸収され、新陳代謝可能な生体血管が芳香族系ポリエステル繊維の人工血管内に生成するので、長期にわたり閉塞しない人工血管となる。
また血栓を生じないので、内径7mm以上の人工血管の場合においても、従来の芳香族系ポリエステル繊維の人工血管のように枝分かれした部分、屈曲した部分および場合によっては吻合部に血栓を生じることがなく、安全性の高い人工血管である。
更にPAUは芳香族系ポリエステル繊維製品(織物、編み物、不織布等)にコーティングすると触感、風合いの良いものが得られ。この触感、風合いの特長により合成皮革、衣料用防水布に長年実用化されていた経緯があり、この触感、風合いは実用化されている人工血管においても大切な物性になっている。
【0028】
特にPAUをポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族系ポリエステル繊維にコーティング方法はこれまでの文献には全く存在しない。
即ち、人工血管内のPAUコーティング層は通常の芳香族系ポリエステル繊維の人工血管に血液が流れた時に生じる血栓層と同じようにその表層に内皮細胞膜を生成する機能を有している。
【0029】
この現象を生じさせる原因は、PAU成分中の比較的抗血栓性の良いウレタンセグメントと内皮細胞生成作用を持つペプチドセグメントの折衷作用によるものと考えられる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の人工血管は、内径6mm以下の小口径であっても、長期にわたり閉塞しないという効果を有する。
また内径7mm以上の中口径および大口径のものにあっては、実用化されている従来の芳香族系ポリエステル(PET)繊維の人工血管の屈曲部および場合によっては吻合部に血栓層が厚く生成して閉塞することがあるが、本発明の人工血管においては血栓層が出来ないため、このように閉塞することはなくなり安全性の高い人工血管となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】従来の芳香族系ポリエステル繊維の人工血管の移植後の経過
【図2】本発明のPAUコーティング芳香族系ポリエステル繊維の人工血管の移植後の経過
【図3】従来の芳香族系ポリエステル繊維の人工血管および本発明のPAUコーティング芳香族系ポリエステル繊維の人工血管中の生体血管
【図4】支管つき芳香族系ポリエステル繊維の人工血管
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明の芳香族系ポリエステル繊維とは芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの反応により得られたものを繊維化したポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等でこれらの繊維単独、これらの繊維の混合物、またはこれらの繊維と他の繊維の混合物を用いることが出来る。
【0033】
本発明におけるPAUに使用する原料アミノ酸は光学活性体、ラセミ体あるいはこれらの混合物のいずれであっても良い。またポリアミノ酸はアミノ酸ユニット平均4以上が連続して結合されたもので、同種又は異種のアミノ酸が平均4個以上連続して結合した構造を意味する。この様なポリアミノ酸とウレタンとの共重合体の合成法は大別して二つの方法がある。
【0034】
第一の方法はポリアミノ酸とポリウレタンとを別々に合成した後、共重合を行う方法である。この方法はアミノ酸を逐次結合させて合成したポリアミノ酸又はポリアミノ酸の前駆体として活性モノマーを重合して得たポリアミノ酸とウレタンを反応させる方法である。この方法ではポリアミノ酸又は共重合体の分子量を上げることが困難である。
【0035】
第二の方法はポリアミノ酸の前駆体としての活性モノマー(重合性モノマー)とウレタンとを共重合させる方法である。この方法においてポリアミノ酸の前駆体として、α−アミノ酸−N−カルボン酸無水物を用いると生成する共重合体中のポリアミノ酸鎖およびその共重合体の双方の分子量を大にすることが容易である。従って、本発明に使用するポリアミノ酸ウレタン樹脂は、この第二の方法、即ち、(a)α−アミノ酸−N−カルボン酸無水物、(b)末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、および(c)水、ヒドラジン及び有機アミンから選ばれる少なくとも一種を反応させて得られるポリアミノ酸ウレタン樹脂で形成されることが好ましい。
【0036】
使用されるアミノ酸の具体例としてはグリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、α−アミノヘプタノイック酸などの炭素数2〜12の中性アミノ酸、β−ベンジルアスパラギン酸、γ−メチル−L−グルタメート、γ−メチル−D−グルタメート、γ−ベンジル−L−グルタメートなどのモノエステル化酸性アミノ酸、ε−アシルリジン、δ−アシルオルチニンなどのω−アミノ基が適当なマスキンググループで保護されたα−ω−ジアミノカルボン酸誘導体、O−アセチルレオニンなどが挙げられる。この場合のα−アミノ酸は、ラセミ体、光学活体のいずれも使用できる。
【0037】
またポリアミノ酸の前駆体として、α−アミノ酸−N−カルボン酸無水物(以下、N−カルボン酸無水物をNCAと略す)を用いる場合には前記全てのα−アミノ酸−NCAを用いることが可能である。その代表例として、グリシン−NCA、アラニン−NCA、ロイシン−NCA、γ−メチル−L−グルタメート−NCA等が挙げられる。
【0038】
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネート化合物とポリオールを当量比NCO/OH>1の条件で反応させて得られる。ポリイソシアネート成分としては通常、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートの単独又はこれらの混合物が用いられる。例えばトルエン−2,4−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ビフェニルジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、パラキシレンジイソシアネート、ヘキサンメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)等が挙げられる。
【0039】
ポリオール成分としてはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールの単独又はこれらの混合物があげられる。ポリエーテルポリオールの例としてはポリプロピレンエーテルグリコール、ポリエチレンポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリペンタメチレンエーテルグリコール、ポリエチレンポリテトラメチレンエーテルランダム共重合体、ポリエチレンポリテトラメチレンエーテルブロック共重合体の単独またはこれらの混合物、ビスフェノールAにプロピレンオキサイド又はエチレンオキサイドを付加して得られる芳香環を有するグリコール等があげられる。
【0040】
ポリエステルポリオールの代表例はポリカプロラクトンポリオール、又はエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等のジオール類とアジピン酸、セバシン酸等の二塩基酸との反応で得られたものが用いられる。またポリテトラメチレンエーテルポリオール又はポリプロピレンエーテルポリオールにカプロラクトンを付加して得られるポリオール、ポリシロキサンポリオール等の特殊ポリオールも使用可能である。更にジエチレンカーボネートにモル比過剰の1,6−ヘキサンジオール又は3−メチルペンタンジオールを加え脱エタノール反応から得られるポリカーボネートポリオール等が用いられる。
【0041】
これらのポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよび特殊ポリオールの数平均分子量は200以上のものが好ましい。本発明に使用する水は通常の水を意味し水道水、非脱塩水、又は脱塩水のいずれでもよい。ヒドラジンは無水ヒドラジン、又は含水ヒドラジンのいずれでもよく、工業的には含水ヒドラジンの方が安全性の面において有利である。
【0042】
有機アミンの代表例としてはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルジアミン等の3級アミン、ピペラジン等の2級ジアミン、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン等の1級ジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−ブタンジアミン等の1級、2級の両アミンおよびヒダントイン環を有するジヒドラジド、例えば1,3−ビス(ヒドラジドカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等が適当である。これら有機アミンの他にヒドラジンが使用可能である。
【0043】
ポリアミノ酸ウレタン樹脂を得る際のα−アミノ酸NCAとウレタンプレポリマーとの重量比は、5:95〜95:5であり、好ましくは10:90〜90:10であり、更に好ましくは20:80〜80:20の範囲である。この重量比は目的とする抗血栓性、内皮細胞接着性と機械特性に応じて決定される。またヒドラジンおよび1級または2級の活性水素を有する有機アミンの使用量はアミノ基としてウレタンプレポリマーのイソシアネート基に対して、1/2当量以上が好ましく更に好ましくは2/3当量以上である。3級アミンの使用量はα−アミノ酸NCAの1/1000モル以上が好ましい。
【0044】
水は、イソシアネート基と反応してアミノ基を生成するのでアミンの代替として用いることが出来る。本方法におけるポリアミノ酸ウレタン樹脂は、有機溶媒中で、α−アミノ酸−N−カルボン酸無水物、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、および水、ヒドラジンまたは有機アミンを反応させて得られる。
【0045】
ここで使用する有機溶媒としては、ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、1,1,2−トリクロルエタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロルエタン等の塩素化脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の塩素化芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキサイド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ヘキサメチルホスホルアミド等の活性水素を含まない水可溶性有機溶媒、またはこれらの二種以上の混合物などが挙げられる。
【0046】
有機溶媒の使用量は、最終生成物のポリアミノ酸ウレタン樹脂液中の樹脂濃度が生成樹脂溶液換算で通常は3〜50重量%の範囲とされるが、好ましくは10〜30重量%の範囲とするのがよい。あまり濃度が高すぎると粘度が著しく高くゲル状となり、管状物にコーティングまたは含浸して加工する時は溶媒で希釈して使用すれば良いが、取扱いが困難である。又あまり濃度が低すぎると高粘度(10,000cps以上)のものが得られがたく、汎用性に乏しい。
【0047】
また本方法において光学活性、α−アミノ酸NCAを使用する場合においてポリアミノ酸ウレタン樹脂液を製造する際の反応温度はα−アミノ酸NCAから高分子量のポリアミノ酸単一ポリマーを合成出来る温度が好ましく10〜60℃の範囲が良い。60℃より高くなると、共重合時にアミノ酸鎖がα−ヘリックス構造をとりにくくなるために、アミノ酸鎖の重合度が上らなくなり、高分子量のものが得られない場合がある。また、高温で反応させるとイソシアネート基とアミノ基との反応によって生じる尿素結合にイソシアネート基がビュレット反応をし、ゲル化を起こす場合がある。
【0048】
以上のようにして得られるポリアミノ酸ウレタン樹脂液は、溶媒としてジメチルホルムアミドを用いると、α−アミノ酸NCAが少ない場合、例えばα−アミノ酸NCAとウレタンプレポリマーとの重量比が5:95〜15:85の範囲内では濁りの比較的少ない溶液となり、α−アミノ酸NCAの比率が多くなるに従い、濁りが増大し、粘度10cps〜100万cps/25℃の範囲内で任意の粘度のものが得られる。また構造的には、アミノ酸成分として光学活性α−アミノ酸NCAを使用した場合においては、アミノ酸含量が少ない場合は、α−ヘリックス含量が少く、β構造含量が多くなり、アミノ酸含量が多い場合には、α−ヘリックス含量が多くなりβ構造が少くなる傾向がある。
【0049】
ポリアミノ酸ウレタン樹脂を得る好ましい方法としては、(イ)前記有機溶媒中でウレタンプレポリマーとα−アミノ酸NCAとを混合した後三級アミンを添加して反応させる方法。
(ロ)前記有機溶媒中で、α−アミノ酸NCAとウレタンプレポリマーを混合した後、水、ヒドラジン又は活性水素を有する有機アミンを添加して反応させる方法。
(ハ)前記有機溶媒中でウレタンプレポリマーとα−アミノ酸NCAとを混合した後、水、ヒドラジンまたは活性水素を有する有機アミンを添加反応させた後、さらに三級アミンを加えて反応させる方法。
(ニ)前記有機溶媒中で、ウレタンプレポリマーと、水、ヒドラジンまたは活性水素を有する有機アミンとを反応させたのち、α−アミノ酸NCAを添加して反応させる方法。
(ホ)前記有機溶媒中で、α−アミノ酸NCAとウレタンプレポリマーを混合した後、水、ヒドラジン又は活性水素を有する有機アミンを添加して反応させ、更に、ウレタンプレポリマーを添加する方法。
(ヘ)前記有機溶媒中でウレタンプレポリマーと水、ヒドラジン、又は活性水素を有するアミン類とを反応させた後、α−アミノ酸−N−カルボン酸無水物を添加、反応させてから更に、水、ヒドラジン又は活性水素を有するアミン類を添加反応させる方法等が挙げられる。
以上のポリアミノ酸ウレタン樹脂(PAU)を得る方法において有機溶媒の種類はPAUの用途、原料(α―アミノ酸NCA、ウレタンプレポリマー)の種類に適合するものが用いられる。
【0050】
また本発明は以上のような方法で得られるポリアミノ酸ウレタン樹脂にポリアミノ酸又はポリウレタン樹脂を混合して使用することも出来る。本発明の人工血管は前記の方法で得られるポリアミノ酸ウレタン樹脂を、芳香族系ポリエステル繊維の編物、織物、または不織布の管状物にポリアミノ酸ウレタン樹脂をコーティングまたは含浸して得ることが出来る。
【0051】
芳香族系ポリエステル繊維の上記管状物がゼラチンまたはコラーゲン等で目詰処理されていないものをPAU溶液に浸漬して含浸コーティングする時のPAU溶液の濃度は5wt%以上が好ましい。
【0052】
また芳香族系ポリエステル繊維の上記管状物をゼラチンまたはコラーゲン等で目詰処理したものにポリアミノ酸ウレタン樹脂をコーティングまたは含浸して人工血管を得る時のPAU溶液の濃度は1%以上、好ましくは3wt%以上である。
【0053】
ポリアミノ酸ウレタン樹脂(PAU)を主体としたものを芳香族系ポリエステル繊維の編物、織物、または不織布を管状に加工してつくった人工血管に含浸コーティングする場合において、PAU中のアミノ酸含有量が一定量以上になると、人工血管内に内皮細胞が生体血管からの侵入以外に、PAU樹脂による血液からの内皮細胞または内皮細胞生成因子の取り込みとその育成、と細血管が人工血管外壁から人工血管内に侵入し、それが人工血管内で開くこと等により人工血管内全体に内皮細胞膜が接着伸展する。このようにして人工血管内に生体血管の形成が始まる。この場合、人工血管内は内皮細胞膜で全面覆われているので血栓とか吻合部からのパンヌヌの離脱による血管閉塞が生じることなく、内皮細胞膜の下には平滑筋細胞層が、ついでその下には繊維芽細胞がつくられ、人工血管内に生体血管が円滑に生成されて行く。
【0054】
この過程で人工血管内のPAU成分、ゼラチン、コラーゲン等は徐々に生体内に吸収されて行き、最終的に芳香族系ポリエステル繊維管を構成する編み物または織物の繊維集合体の間隙中に生体血管が形成される。PAUが生体吸収性であることは前記特許文献4に報告されている。
【0055】
この場合PAU中のアミノ酸成分が少なすぎると内皮細胞膜の生成が乏しくなり、長期使用で血栓が生じやすくなる。またアミノ酸成分が多すぎると内皮細胞膜の生成は向上するがそれに先立って抗血栓性が低下し内径が小さい(6mm以下)人工血管においては血栓が生じる。
【0056】
従ってPAU中のアミノ酸含有量は5〜95%で好ましくは10〜90%で、更に好ましくは15〜85%である。アミノ酸としてα−アミノ酸NCA以外のアミノ酸を用いる場合もこの範囲に準じたものが好ましい。
【0057】
以下、本発明を実施するに当たり使用する樹脂の製造法とそれを用いた人工血管の製造法を、実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0058】
イ)ポリアミノ酸ウレタン樹脂の製造
ポリテトラメチレンエーテルグリコール(OH価57.25)980gと、トリレンジイソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネートと、2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、2,4−トリレンジイソシアネート80重量%)174gを70℃で5時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(NCO当量、1164)を得た。該ウレタンプレポリマー58.2gとγ−メチル−L−グルタメートNCA58.2gとをジメチルホルムアミド(DMF)394.3gに溶解し、これにヒドラジンヒドラート1.375gをDMF20gに溶解した溶液を滴下、反応させ、粘度16000cps/25℃のポリアミノ酸ウレタン樹脂溶液(A)(濃度、20wt%DMF溶液)を得た。
【0059】
なお、本溶液におけるアミノ酸鎖の平均重合度について、1級アミンとイソシアネートの反応性および1級アミンによるNCAの重合機構(MurrayGoodman and John Hutchison.J.Am.Chem.Soc.,88,3627(1966))に基づいて算出すると約62であった。
【0060】
また、本共重合体を皮膜化したもののα−ヘリックス構造と、β−構造との割合いは、IR−スペクトル1655cm−1(α−ヘリックスC=O伸縮)と1625cm−1(β−構造C=O伸縮)の吸光度比より求めると95/5であり、大部分がα−ヘリックス構造である。
【0061】
ロ)人工血管の製造
上記ポリアミノ酸ウレタン樹脂(A)(濃度20wt%DMF溶液)をDMFで希釈して濃度10wt%DMF溶液にした。次にポリエチレンテレフタレート繊維を内径3mm、長さ70mmのチューブ状の編み物にした管状物(a)内に金属棒を通し、これを前記ポリアミノ酸ウレタン樹脂10wt%DMF溶液に浸漬して、その樹脂溶液を含浸させた。次にこれを溶液から取り出し、ロールで絞り水中に入れて脱DMFを行った。ついでこれを風乾して金属棒を抜き取り、ポリアミノ酸ウレタン樹脂で目詰処理した人工血管(試料1)を得た。この人工血管はドライタッチ性で触感良好であった。またPAUがアミノ酸とウレタンとの組み合わせから生体へのフィッティング性も良好と考えられる人工血管を得た。この物を生体実験用人工血管にした。
【0062】
比較例1
イ)ウレタン樹脂の製造
ヒドラジンヒドラート1.25gをDMF80.5gに溶解し、これに実施例1で用いたのと同じウレタンプレポリマー52.8gを、窒素雰囲気下でDMF58.2gに溶解した溶液を滴下、反応させ、粘度14000cps/25℃のウレタン樹脂溶液(B)(濃度、28wt%DMF溶液)を得た。
【0063】
ロ)人工血管の製造
上記ウレタン樹脂溶液(B)を実施例1と同じように濃度10wt%までDMFで希釈し、この溶液に実施例1と同じ管状物(a)内に金属棒を通して浸漬してウレタン樹脂溶液を含浸させた後、取り出してロールで絞り水中に入れて脱DMFを行った。ついでこれを風乾して金属棒を抜き取り、ウレタン樹脂で目詰処理した人工血管(試料2)を得た。この人工血管はゴムライクでベトツキがある触感であった。この試料を比較例用生体実験用試料とした。
【実施例2】
【0064】
実施例1で用いた管状物(a)をコラーゲンで目詰処理し、血液の漏出をなくした管状物(b)を作り、その管内に金属棒を通した。次に実施例1で得たポリアミノ酸ウレタン樹脂溶液(A)(濃度20wt%)をジクロロ酢酸で濃度5wt%まで希釈し、これに金属棒を通した管状物(b)を投入し、濃度5wt%の溶液を含浸させた。ついでこれを取り出し、水中に入れて脱溶媒(溶媒、DMFとジクロロ酢酸)後、風乾して金属棒を抜き取り、ポリアミノ酸ウレタン樹脂を含浸コーティングした人工血管(試料3)を得た。この物はドライタッチな風合いで触感が良い人工血管であった。またアミノ酸とウレタンとの組み合わせからフィッティング性の良い人工血管であると考えられる。これを生体実験用試料とした。
【0065】
比較例2
実施例1で用いた管状物(a)をコラーゲンで目詰処理した管状物(b)を人工血管(試料4)とした。これを比較用生体実験用試料とした。
【実施例3】
【0066】
実施例1で合成したポリアミノ酸ウレタン樹脂(A)(濃度20wt%DMF溶液)をDMFで希釈して濃度10wt%DMF溶液にした。次に、ポリエチレンテレフタレート繊維を内径1.5mm、長さ10mmの編み物にした管状物(c)の管内に金属棒を通し、これを前記ポリアミノ酸ウレタン樹脂10wt%DMF溶液に浸漬して、その樹脂溶液を含浸させた。次にこれを溶液から取り出し、ロールで絞り水中に入れて脱DMFを行った。ついでこれを風乾して金属棒を抜き取り、ポリアミノ酸ウレタ樹脂で目詰処理した人工血管(試料5)を得た。この物はドライタッチな風合いで触感良好であった。これを生体実験用試料とした。
【0067】
比較例3
比較例1で合成したウレタン樹脂溶液をDMFで濃度10wt%となるよう希釈した。次に内径1.5mm、長さ10mmのポリエチレンテレフタレート繊維の編み物をチューブ状に成形した管状物(c)の管内に金属棒を通し、これを前記ウレタン樹脂10wt%溶液に浸漬して、その樹脂溶液を含浸させた。次にこれを溶液から取り出し、ロールで絞り水中に入れて脱DMFを行った。ついでこれを風乾しての管内の金属棒を抜き取り、ウレタン樹脂で目詰処理した人工血管(試料6)を得た。このものは風合いがゴムライクでベトツキのある触感であった。これを比較用生体実験用試料とした。
【実施例4】
【0068】
実施例3で用いた管状物(c)(内径1.5mm、長さ10mmのポリエチレンテレフタレート繊維の編み物)をゼラチンで目詰処理し、血液の漏出をなくした管状物(d)を作った。次に実施例1で得たポリアミノ酸ウレタン樹脂溶液(A)(濃度20wt%)をジクロロ酢酸で濃度5wt%溶液になるまで希釈した。ついで管状物(d)の管内に金属棒を通し、これを前記濃度5wt%溶液に投入し、その溶液を含浸させた。ついで、これを取り出し、ロールで絞った後水中に入れて脱溶媒(溶媒、DMFとジクロロ酢酸)した。水中からそれを取り出して風乾し、金属棒を抜き取り、ポリアミノ酸ウレタン樹脂を含浸コーティングした人工血管(試料7)を得た。この物は触感良好な人工血管であった。これを生体実験用試料とした。
【0069】
比較例4
実施例4で用いた管状物(c)をゼラチンで目詰処理した管状物(試料8)を得た。これを比較用生体実験用人工血管とした。
【0070】
実施例5
実施例1で合成したポリアミノ酸ウレタン樹脂(A)(濃度20wt%DMF溶液)をジクロロ酢酸で希釈して濃度3%溶液にした。次にポリエチレンテレフタレート繊維を内径2mm、長さ10mmのチューブ状の編み物をコラーゲンで目詰処理した管内に金属棒を通し、これを前記のジクロロ酢酸で希釈し濃度3%のポリアミノ酸ウレタン溶液に浸漬してその樹脂溶液を含浸させた。次にこれを溶液から取り出し水中に入れて、溶媒(DMFとジクロロ酢酸)の除去を行い、次いでこれを風乾して金属棒を抜き取り、ポリアミノ酸ウレタン樹脂を含浸コーティングした人工血管を得た(試料9)。これを生体実験用試料とした。
本人工血管には少量のポリアミノ酸ウレタン樹脂(PAU)しか含浸被覆されていないが、非特許文献1中でe−PTFEに濃度3%のPAUをコーティングした時と同様に抗血栓性に優れたものであると考えられる。
【0071】
比較例5
次にポリエチレンテレフタレート繊維の内径2mm、長さ10mmのチューブ状の編み物にコラーゲンで目詰処理した管状物(e)を生体実験用試料(試料10)とした。
【0072】
実施例6
図4にT字型に分岐したポリエチレンテレフタレート(PET)繊維の織物の人工血管をコラーゲンで目詰め処理した管状物(f){主管(太い部分):内径12mm、長さ140mmの管状物、側管(支管:主管の中央部に繋がっている内径8mm、長さ150mmの管状物}の主管と側管に金属棒を差しこんだ。次いで実施例1で得たポリアミノ酸ウレタン樹脂溶液(A)(濃度20wt%)をジクロロ酢酸で濃度3wt%まで希釈し、これに金属棒を差し込んだ人工血管を浸漬した後、引き上げて水中で脱溶媒し、風乾して金属棒を抜き取り、PAUをコーティングしたPET繊維の織物の人工血管(試料10)を得た。この人工血管は触感、風合いとも良好であった。本人工血管には少量のポリアミノ酸ウレタン樹脂(PAU)しか含浸被覆さしていないが、実施例5と同様に抗血栓性に優れたものであると考えられる。これを生体実験用試料とした。
【0073】
比較例6
比較例として図4のT字型に分岐したPET繊維の織物の人工血管をコラーゲンで目詰め処理した管状物(f)を生体実験用試料(試料11)とした。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、人工血管として使用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 従来の芳香族系ポリエステル繊維系人工血管
2 移植後に生成する血栓層
3 血栓層上に生成する内皮細胞膜
4 従来の芳香族系ポリエステル繊維の人工血管の繊維集合体に生成した生体血管
5 本発明のPAUコーティング芳香族系ポリエステル繊維の人工血管
6 本発明のPAUコーティング芳香族系ポリエステル繊維の人工血管の内壁に生成した内皮細胞膜
7 本発明のPAUコーティング芳香族系ポリエステル繊維の人工血管の繊維集合体に生成した生体血管(PAU成分は生体内に吸収される)
8 主管(太い方)の長さ:140mm
9 主管の中央部に繋がっている側管の長さ:150mm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族系ポリエステル繊維の編物、織物、または不織布を基材とした管状物にポリアミノ酸ウレタン樹脂をコーティングまたは含浸被覆した人工血管。
【請求項2】
芳香族系ポリエステル繊維が、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維またはこの二つの混合物である、請求項1に記載の人工血管。
【請求項3】
小口径人工血管に使用することができる、請求項1又は2に記載の人工血管。
【請求項4】
内径が、6mm以下である、請求項1又は2に記載の人工血管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−187398(P2012−187398A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37615(P2012−37615)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(511051720)
【Fターム(参考)】