説明

人形製造方法およびその装置

【課題】印刷物から立体的なお面を自由自在に作製し、これを個人の選択した好みの人形の顔部分に装着するという一連の作業工程を可能にする。
【解決手段】画像を転写して成る印刷物を立体成形するもので、モニタ画面3を見ながらリモコン操作によって個人自身が好みの状態に写るように位置決めしてからモニタ画面3近傍のカメラ2で数枚の写真を撮影する写真撮影工程Aと、個人により選択した写真をプリンター6にセットし熱転写ローラで写真のカラートナー画像を転写用剥離シートS1に固着する熱転写工程Bと、画像形成後の転写用剥離シートS1を立体成型器7にセットして画像によるお面を作製するお面作製工程Cと、原型から硬化成形後の転写用剥離シートS1によるお面を外し、個人により選択した人形本体の空白部分に装着するお面装着工程Dとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば成型品プラスチックによるフィギュア等の例えば空白状態の顔部分に個人の写真等の変換可能な種々の画像によるお面を付設可能にした顔面変換型の人形製造方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マスコット人形の顔部分に、例えばインクジェットで印刷した既設の企画デザインによる顔フィルムを使ったお面を直接貼り付けて成る実体のある人形形態を備え、お面自体の脱着交換が可能となるようにした顔面変換型立体人形が提案されている。
【0003】
これは、例えば携帯電話機、パソコン、IP電話機、DS、PSP等の種々の通信機器やインターネット機器に取り込んだ種々の変換可能な画像データを出力させて、これを立体人形の顔部分に対し脱着交換可能に取り付けることのできる技術である。
【特許文献1】特になし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来におけるこのようなお面を形成するためには、高価な成型用金型を使った熱圧着によるプレス加工技術が要求されるため、作製コストが掛かり、且つ成型に要する時間もかなり掛かってしまう。しかも、店頭販売での簡単な操作でもって、個人の写真によるお面を自由自在に作製し、これを個人の選択した好みの人形の顔部分に装着するという一連の作業工程に基づく人形製造方法およびその装置は未だ存在していないのが実状である。
【0005】
また、従来においては、写真をプリントするにはレーザープリンター等を使用しているが、このレーザープリンターは、約100℃程度の熱転写ローラによってトナーを熱転写シートに固着させるため、通常のプリント用紙では熱で軟化して縮んでしまう等という欠点がある。
【0006】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、低コストで且つ短時間に種々の画像によるお面を作製することができ、しかも何人でも簡単な操作でもって、立体的なお面を自由自在に作製し、これを個人の選択した好みの人形に装着するという一連の作業工程を可能にする人形製造方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、モニタ画面を見ながらリモコン操作によって個人自身が好みの状態に写るように位置決めしてからモニタ画面近傍のカメラで写真を撮影する写真撮影工程と、個人により選択された写真をプリンターにセットして延伸性プラスチックフィルム上に当該写真を印刷する写真印刷工程と、印刷後の延伸性プラスチックフィルムをお面に立体成形するお面製作工程と、人形本体にお面を装着するお面装着工程とを有して成ることを特徴とする。
【0008】
モニタ画面を見ながらリモコン操作によって個人自身が好みの状態に写るように位置決めしてからモニタ画面近傍のカメラで写真を撮影する写真撮影工程と、個人により選択された写真をプリンターにセットし熱転写ローラで写真のカラートナー画像を転写用剥離シートに固着する熱転写工程と、画像形成後の転写用剥離シートを立体成型器にセットして画像によるお面を作製するお面作製工程と、原型から硬化成形後の転写用剥離シートによるお面を外し、個人により選択された人形本体の空白部分に装着するお面装着工程とを有する。
【0009】
熱転写工程は、熱延展性を有する転写用剥離シートを塩ビ製の基材シートに貼り、さらにシリコンシートで挟んでからプリンターの熱転写ローラで写真のカラートナー画像を固着するものである。
【0010】
お面作製工程は、画像を印刷して成る転写用剥離シートを、複数の通気用微細孔が形成されて成る石膏もしくはゴム製の原型に被せて、立体成型器で上方より加熱しながら下方から前記微細孔を介してバキュームを行うことで前記転写用剥離シートを原型に密着収縮させ、温度を低下させて硬化した状態として画像によるお面を作製するものである。
【0011】
転写用剥離シートとしては、耐熱性および熱延展性を有するプラスチックシート、電子ペーパーもしくは液晶ペーパーのいずれかを使用する。
【0012】
個人の写真を撮るカメラ、該カメラの撮影レンズを通して個人を写し出すモニタ画面、顔部分を照らすための照明装置、カメラによって撮影した写真をプリントするためのプリンター、プリント後の画像によるお面を立体的に成型するための立体成型器を配備させて成る簡易ボックスストアタイプの製造販売カウンタ装置を有して成る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低コストで且つ短時間に種々の画像によるお面を作製することができ、しかも何人でも簡単な操作でもって、立体的なお面を自由自在に作製し、これを個人の選択した好みの人形に装着するという一連の作業工程を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明する。
本発明に係る人形製造方法は、画像を転写して成る印刷物を立体成形するものであり、図1に示すように、写真撮影工程A、熱転写工程B、お面作製工程C、お面装着工程Dとから概ね構成されている。
【0015】
写真撮影工程Aは、顧客(個人)が後述する製造販売カウンタ装置1のモニタ画面3の前に立ち、その顧客自身がモニタ画面3を見ながらリモコン操作によって、例えば個人自身の顔やペットの顔、あるいはペット等を抱いている姿等の好みの状態に写るように位置決めし、店員(作業者)がモニタ画面3近傍に配されている撮影用のカメラ2で数枚の写真を撮影する。尚、撮影用のカメラ2は、個人自身によって撮影操作できるようにしても良い。
【0016】
熱転写工程Bは、顧客により選択された1枚の写真を店員(作業者)が後述する製造販売カウンタ装置1のレーザープリンター6にセットし、図6に示すように、熱延展性を有する転写用剥離シートS1を剥離してその粘着面を塩ビ製の基材シートS2に貼り、さらに2枚折りのシリコンシートS3の間に挟んでから、レーザープリンター6の熱転写ローラに送って写真のカラートナー画像を転写用剥離シートS1に固着することで印刷物が形成される。
【0017】
お面作製工程Cは、店員(作業者)が基材シートS2から画像を印刷して成る転写用剥離シートS1を剥がし、後述する製造販売カウンタ装置1に配備した立体成型器7にセットして画像によるお面を作製する。この立体成型器7は、画像を印刷して成る転写用剥離シートS1を、複数の通気用微細孔が形成されて成る石膏もしくはゴム製の原型に被せて、上方より加熱しながら下方から前記微細孔を介してバキュームを行うことで前記転写用剥離シートS1を原型に密着収縮させ、温度を低下させて硬化した状態として画像によるお面を作製するものである。
【0018】
お面装着工程Dは、店員(作業者)が原型から硬化成形後の転写用剥離シートS1によるお面を外して周囲の不要部分をカットし、該お面を、顧客により選択された好みの人形本体の空白状態にある顔部分に装着する。
【0019】
転写用剥離シートS1としては、耐熱性を有し、且つ成形時に熱延展性のある例えばプラスチックフィルムを使用する。
【0020】
例えば、特許第3704673号公報に開示されているように、シルクスクリ−ン印刷機を用いて、片面シリコ−ンコ−ト紙90g/m2 の基材のシリコーンコート面上に溶剤系ポリウレタン樹脂(大日本インキ社製)クリスボンAH500を乾燥膜で40ミクロン塗工し、次に、水溶性ポリウレタン樹脂(大日精化工業社製)Seikaprene UD710に酸化チタン15部とケイ素粉(シオノギ製薬社製)カープレックスFPS−2 3部を第四級アンモニュウム塩1部と共に混入し、これを乾燥膜10ミクロンとなるように塗工して成る転写用剥離シートS1を使用する。このようにして得られた転写用剥離シートS1を、カラ−トナ−を用いたキヤノン社製の電子画像形成出力装置(商品名カラーレーザーコピー:ピクセルDio730)に挿入し、カラートナー画像を固着させる。
【0021】
この他、利用できる転写用剥離シートS1としては、例えばポスター等に使用される厚さ1mm以下の液晶ペーパーや電子ペーパー等を使用しても良い。
【0022】
図2乃至図4には、上記した各工程を、顧客(個人)と店員(作業員)との間で、一連の作業によって行うための簡易ボックスストアタイプの具体的な製造販売カウンタ装置1が示されている。すなわち、この製造販売カウンタ装置1は、図2に示すように、表側に例えば熊等のぬいぐるみ形態の頭部、口部、腹部それぞれの部分に、顧客の写真を撮るカメラ2、該カメラ2の撮影レンズを通して顧客の顔を写し出すモニタ画面3、顧客の顔部分を照らすための照明装置4がそれぞれ備え付けられている。
【0023】
また、図3および図4に示すように、製造販売カウンタ装置1の裏側には、店員(作業員)が作業するためのパソコン5、そしてカメラ2によって撮影した写真を転写用剥離シートS1にプリントするためのレーザープリンター6、画像を印刷して成る転写用剥離シートS1から、画像によるお面を作製するための立体成型器7等を配備させている。
【0024】
この立体成型器7は、吸気機構を内蔵した筐体状のバキューム部と、転写用剥離シートS1を挟持させる成形部と、該成形部の転写用剥離シートS1を加熱させるヒーター部とから概ね構成されている。
【0025】
バキューム部は、電気的に始動する吸気機構を内蔵した筐体の上面に複数の吸気用孔部を有する円形突出面状の載置台を配しており、この載置台の中央には、例えば石膏もしくはゴム製の原型が載せられる。この原型は、例えば鼻突出部分や頬・目・口の窪み部分等のように表面が立体的な凹凸状の顔面形態となるように加工形成され、さらに表面から裏面にかけては、複数の通気用微細孔が形成されている。
【0026】
成形部は、転写用剥離シートS1を挟持可能とする矩形板状の上押さえ部および下押さえ部が昇降自在となるように形成され、前記バキューム部の載置台の円形形状に対応して、それぞれの中央には、円形の開口部が形成されている。すなわち、成型部は、バキューム部の背面側から上方へ向けて突出した左右一対のガイド軸に、矩形ブロック状の可動ベースを介して下押さえ部が昇降自在となるように装着されている。この下押さえ部側面の後方側左右対称位置には、棒状をした手持用のハンドルが付設されている。したがって、開口部によって露出している転写用剥離シートS1は、載置台上の原型から離反した位置と当該原型に被さる位置との間を自由に昇降できるものとなる。
【0027】
ヒーター部は、矩形枠内に蛇行状となったヒーターが配され、左右一対の前記ガイド軸の上端に固定された固定ベースを介して取り付けられ、成形部における下押さえ部および上押さえ部それぞれの開口部により露出している転写用剥離シートS1を原型に被さる位置で上面全体を加熱するものである。
【0028】
尚、上述したバキュームタイプの立体成型器7は、本発明におけるお面作製工程Cにおける一例に過ぎず、他の構成による立体成型器7を使用しても良いことは勿論である。
【0029】
次に、以上のように構成された最良の形態についての使用の一例について図5を参照して説明する。先ず、ステップ1で、製造販売カウンタ装置1へ顧客が来店した時に、「いらっしゃいませ。プリ面ぐるみ劇場へようこそ。」というコメントを出す。
【0030】
そして、ステップ2でレーザープリンター6における不図示の熱転写ローラの電源を入れる。このとき、熱転写ローラの設定温度を120℃にする。
【0031】
次に、ステップ3で写真撮影を例えば3回行う。このとき、製造販売カウンタ装置1から「先ず、写真をお撮りしますのでこちらへどうぞ。3枚撮りまして、気に入った1枚でつくりますね。」というコメントを出す。これと同時に顧客のお名前を聞く。
【0032】
ステップ4で再生モードに切り替えて、製造販売カウンタ装置1から「それでは、今から某様の為にお面をお作りいたします」というコメントを出す。
【0033】
ステップ5で店員は、顧客に対し写真3枚の内、好みの1枚を選択させる。
【0034】
ステップ6でレーザープリンター6のボタンを押す。
【0035】
ステップ7で立体成型器7のヒーター部の電源を入れる。
【0036】
ステップ8で転写用剥離シートS1であるプリメイクシートを取り出し、新しいシートをレーザープリンター6にセットする。
【0037】
このとき、ステップ9で転写用剥離シートS1であるプリメイクシートを塩ビ製の基材シートS2と一緒にシリコンシートS3に挟み、裏表を確認しながら熱転写ローラへ送る(図6参照)。
【0038】
ステップ10で熱転写ローラの電源を切る。
【0039】
ステップ11でプリメイクシートの表面シールを剥がす。
【0040】
ステップ12で立体成型器7にプリメイクシートをセットする。このとき、セット前に原型の位置を確認する。
【0041】
ステップ13でヒーター部を約30秒だけ加熱スタートする。
【0042】
ステップ14でバキューム部のスイッチを入れて、ハンドルを約3秒間だけ下げる。
【0043】
ステップ15でバキューム部のスイッチを切る。
【0044】
ステップ16で原型から硬化成形後のお面を外して周囲の不要部分をハサミ等でカットする。このとき、製造販売カウンタ装置1から「チョキ、チョキ、チョキ」という音を出して、顧客にカットしている状況を知らせる。
【0045】
ステップ17で顧客により好みの人形本体を選択してもらい、この空白状態にある顔部分にお面を装着する。しかる後、製造販売カウンタ装置1から「はい、お待たせしました。どうもありがとうございました。」というコメントを出し、顧客は代金の支払いと引き替えに、完成した人形本体を入手する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明を実施するための最良の形態における人形製造工程の概略を示すフローチャート図である。
【図2】同じく人形製造装置の正面図である。
【図3】同じく人形製造装置の背面図である。
【図4】同じく人形製造装置の側面図である。
【図5】さらに具体的な人形製造工程の概略を示すフローチャート図である。
【図6】転写用剥離シート、基材シート、シリコンシートそれぞれの使用状態を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
A 写真撮影工程
B 熱転写工程
C お面作製工程
D お面装着工程
S1 転写用剥離シート
S2 基材シート
S3 シリコンシート
1 製造販売カウンタ装置
2 カメラ
3 モニタ画面
4 照明装置
5 パソコン
6 レーザープリンター
7 立体成型器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニタ画面を見ながらリモコン操作によって個人自身が好みの状態に写るように位置決めしてからモニタ画面近傍のカメラで写真を撮影する写真撮影工程と、個人により選択された写真をプリンターにセットして延伸性プラスチックフィルム上に当該写真を印刷する写真印刷工程と、印刷後の延伸性プラスチックフィルムをお面に立体成形するお面製作工程と、人形本体にお面を装着するお面装着工程とを有して成ることを特徴とした人形製造方法。
【請求項2】
モニタ画面を見ながらリモコン操作によって個人自身が好みの状態に写るように位置決めしてからモニタ画面近傍のカメラで写真を撮影する写真撮影工程と、個人により選択された写真をプリンターにセットし熱転写ローラで写真のカラートナー画像を転写用剥離シートに固着する熱転写工程と、画像形成後の転写用剥離シートを立体成型器にセットして画像によるお面を作製するお面作製工程と、原型から硬化成形後の転写用剥離シートによるお面を外し、個人により選択された人形本体の空白部分に装着するお面装着工程とを有する請求項1記載の人形製造方法。
【請求項3】
熱転写工程では、熱延展性を有する転写用剥離シートを塩ビ製の基材シートに貼り、さらにシリコンシートで挟んでからプリンターの熱転写ローラで写真のカラートナー画像を固着する請求項1または2記載の人形製造方法。
【請求項4】
お面作製工程は、画像を印刷して成る転写用剥離シートを、複数の通気用微細孔が形成されて成る石膏もしくはゴム製の原型に被せて、立体成型器で上方より加熱しながら下方から前記微細孔を介してバキュームを行うことで前記転写用剥離シートを原型に密着収縮させ、温度を低下させて硬化した状態として画像によるお面を作製する請求項1乃至3のいずれか記載の人形製造方法。
【請求項5】
転写用剥離シートとしては、耐熱性および熱延展性を有するプラスチックシート、電子ペーパーもしくは液晶ペーパーのいずれかを使用する請求項1乃至4のいずれか記載の人形製造方法。
【請求項6】
個人の写真を撮るカメラ、該カメラの撮影レンズを通して個人を写し出すモニタ画面、顔部分を照らすための照明装置、カメラによって撮影した写真をプリントするためのプリンター、プリント後の画像によるお面を立体的に成型するための立体成型器を配備させて成る簡易ボックスストアタイプの製造販売カウンタ装置を有して成ることを特徴とする人形製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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