説明

人物動き領域検出装置

【目的】画像を用いた人物の監視システムや画像通信時の圧縮、ヒューマンインターフェースに応用される高速な人物動き領域の検出を行う。
【構成】この人物動き領域検出装置は、人物の顔を含む動画像から顔の動きを検出する装置において、ある時刻Tに撮影された画像信号11を輝度・色差表現に変換する第一のRGB→輝度・色差変換手段1と、この時刻Tに撮影された輝度・色差表現された画像から閾値処理により肌色領域を定める肌色領域閾値処理手段3とを備える。また、次の時刻T+1に撮影された画像信号12を輝度・色差表現に変換する第二のRGB→輝度・色差変換手段2と、時刻Tに撮影された画像の輝度成分と次の時刻T+1に撮影された画像の輝度成分とから肌色領域内だけで動き量を表す画像を計算するマスク領域輝度差分計算手段4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は人物動き領域検出装置に関し、特に画像を用いた人物の監視システムや画像通信時の圧縮、ヒューマンインターフェースに応用される人物動き領域検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】画像を用いたヒューマンインターフェースを構成する際に最も重要となるのが人物、特に顔部分の検出である。また監視システムや画像圧縮システムでも顔検出は重要な技術となる。このような応用分野においては顔の急激な動きをキーとして処理を切り替える等のアクションを起こす必要があるために、動きを検出する処理は重要な要素の一つである。
【0003】従来の動き検出処理を文献「パソコンによる動画像処理」三池・古賀編著,森北出版(1993)に基づいて説明する。画像を用いた動き検出処理は、ブロックマッチング法と勾配法の二つに大きく分類される。この二つの手法を以下で順番に説明する。図5に示すように、人物が撮影されている画像が入力されたとする。ブロックマッチング法は大まかに以下の手続きから構成される。
手続き1.ある時刻に入力された画像を部分画像に分割する。部分画像への分割例を図5に示す。
手続き2.部分画像のうちの一つに注目し、次の時刻に入力された画像上で選んだ部分画像と最も良くマッチングする場所を探索する。部分画像の元の位置と最もマッチングの良かった場所との差が、この部分画像上に存在する物体の移動距離であるとする。
手続き3.全ての部分画像について手続き2を適用する。
【0004】勾配法では画像上の動きベクトルは画像の濃淡値の時間・空間に関する偏微分値から求められる。ある時刻tにおける座標値(x,y)での画像上の濃淡値を
【0005】


【0006】但し一画素あたり未知数(動き量)が2つ存在するのでそのままでは解けない。そのため動きベクトルが空間的に滑らかであるというような拘束をいれたり、多バンド画像に適用することにより動きベクトルを決定する手法が使われる。
【0007】勾配法を非常に単純化し、動きが存在するか否かを判定する手法もある。適当な閾値Thを設定し、式(2)を満たす場合その画素位置で動きが存在すると判定する。
【0008】


【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述の動き検出処理は基本的に画面全体に対して処理を行う汎用の方法であり、顔の動きに目的を絞ったときに、どういう量に注目して処理を行えば良いかという点については何も述べていない。そこで人物を対象とする用途を絞った効率・性能の良い処理が望まれた。
【0010】本発明の目的は、効率・性能の良い人物動き領域検出装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の人物動き領域検出装置は、人物の顔を含む動画像から顔の動きを検出する装置において、ある時刻に撮影された画像を輝度・色差表現に変換する第一の輝度・色差変換手段と、前記ある時刻に撮影された輝度・色差表現された画像から閾値処理により肌色領域を定める肌色領域閾値処理手段と、次の時刻に撮影された画像を輝度・色差表現に変換する第二の輝度・色差変換手段と、前記ある時刻に撮影された画像の輝度成分と前記次の時刻に撮影された画像の輝度成分とから前記肌色領域内だけで動き量を表す画像を計算するマスク領域輝度差分計算手段とを備える。
【0012】また、本発明の人物動き領域検出装置は、人物の顔を含む動画像から顔の動きを検出する装置において、ある時刻に撮影された画像を輝度・色差表現に変換する第一の輝度・色差変換手段と、前記ある時刻に撮影された輝度・色差表現された画像から閾値処理により肌色領域を定める肌色領域閾値処理手段と、次の時刻に撮影された画像を輝度・色差表現に変換する第二の輝度・色差変換手段と、前記ある時刻に撮影された画像の輝度成分と前記次の時刻に撮影された画像の輝度成分とから動き量を表す画像を計算する輝度差分計算手段と、前記肌色領域と前記動き量を表す画像との論理積をとる論理積処理手段とを備える。
【0013】さらに、本発明の人物動き領域検出装置は、人物の顔を含む輝度・色差表現された動画像から顔の動きを検出する装置において、ある時刻に撮影された画像から閾値処理により肌色領域を定める肌色領域閾値処理手段と、前記ある時刻に撮影された画像の輝度成分と次の時刻に撮影された画像の輝度成分とから前記肌色領域内だけで動き量を表す画像を計算するマスク領域輝度差分計算手段とを備える。
【0014】さらに、本発明の人物動き領域検出装置は、人物の顔を含む輝度・色差表現された動画像から顔の動きを検出する装置において、ある時刻に撮影された画像から閾値処理により肌色領域を定める肌色領域閾値処理手段と、前記ある時刻に撮影された画像の輝度成分と次の時刻に撮影された画像の輝度成分とから動き量を表す画像を計算する輝度差分計算手段と、前記肌色領域と前記動き量を表す画像との論理積をとる論理積処理手段とを備える。
【0015】
【作用】本発明はカラー画像を入力として人物、特に顔の動きを検出するためのものである。入力画像を輝度・色差表現に変換したとき、以下の実験事実が観測できる。
1.肌色の領域は、色相・彩度に人に余り依存しない固有の値を持っている。肌色をなしている領域は閾値処理により簡単に抽出可能である。
2.一人一人の肌の色相・彩度は、それぞれどの場所でもほとんど同じである。顔の動きによる色相・彩度方向の時間的変化はほとんどない。
3.顔は鼻や口など起伏が大きい部品を持つために、顔内陰影値の振幅は大きい。顔が動いたときの輝度値時間的変化量は大きな値となる。
ここで輝度・色差表現とは、テレビ信号の伝送に用いられているYIQ色表現等を指す。
【0016】これらの事実から以下の方針で処理を構成することにより、計算量を抑えて効率的に顔の動きを検出する処理を構成することが可能となる。
1.色相・彩度表現に重点を置いた閾値処理によって肌色領域を抽出する。
2.顔の動き量は肌色領域内だけで計算する。
3.顔の動き量は画像の輝度成分から求める。
【0017】高並列プロセッサシステムを用いる場合には画面全体で肌色領域と動き量を求めた後、動き量中で肌色領域内の値のみを出力する方が処理時間的に有利となる場合もある。
1.色相・彩度表現に重点を置いた閾値処理によって肌色領域を抽出する。
2.顔の動き量は画像の輝度成分から求める。
3.顔の動き量中で肌色領域内の値のみを出力する。
【0018】
【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明する。本発明の第一の実施例をブロックで示す図1を参照すると、この実施例の人物動き領域検出装置は、人物の顔を含む動画像から顔の動きを検出する装置において、ある時刻Tに撮影された画像信号11を輝度・色差表現に変換する第一のRGB→輝度・色差変換手段1と、この時刻Tに撮影された輝度・色差表現された画像から閾値処理により肌色領域を定める肌色領域閾値処理手段3と、次の時刻T+1に撮影された画像信号12を輝度・色差表現に変換する第二のRGB→輝度・色差変換手段2と、時刻Tに撮影された画像の輝度成分と次の時刻T+1に撮影された画像の輝度成分とから肌色領域内だけで動き量を表す画像を計算するマスク領域輝度差分計算手段4とから構成される。
【0019】図2は入力画像信号10の一例を示す図である。図2を図1に併せて参照して、この実施例の動作を説明する。入力画像信号10中には顔や腕などの肌色領域が撮影されているとする。時刻Tに撮影された画像信号11は、第一のRGB→輝度・色差変換手段1により、輝度・色差各成分信号13に変換される。この輝度・色差各成分信号13から、肌色領域閾値処理手段3は図3に示すような肌色領域20を検出し、肌色領域画像信号14を出力する。時刻T+1に撮影された画像信号12は同様に、第二のRGB→輝度・色差変換手段2により輝度・色差に変換され輝度成分信号15を出力する。輝度・色差各成分信号13のうちの輝度成分と輝度成分信号15および肌色領域画像信号14とは、マスク領域輝度差分計算手段4に入力されて肌色領域内のみ画素毎に差分を計算され、肌色領域動き量画像信号16が出力される。
【0020】本発明の第二の実施例をブロックで示す図4を参照すると、この実施例の人物動き領域検出装置は、人物の顔を含む動画像から顔の動きを検出する装置において、ある時刻Tに撮影された画像を輝度・色差表現に変換する第一のRGB→輝度・色差変換手段1と、この時刻Tに撮影された輝度・色差表現された画像から閾値処理により肌色領域を定める肌色領域閾値処理手段3と、次の時刻T+1に撮影された画像を輝度・色差表現に変換する第二のRGB→輝度・色差変換手段2と、時刻Tに撮影された画像の輝度成分と次の時刻T+1に撮影された画像の輝度成分とから動き量を表す画像を計算する輝度差分計算手段5と、肌色領域と動き量を表す画像との論理積をとる論理積処理手段6とから構成される。
【0021】次に、図4を参照して、この実施例の動作を説明する。時刻Tに撮影された画像信号11は、第一のRGB→輝度・色差変換手段1により、輝度・色差各成分信号13に変換される。この輝度・色差各成分信号13から、肌色領域閾値処理手段3は図3に示したような肌色領域を検出し、肌色領域画像信号14を出力する。時刻T+1に撮影された画像信号12は同様に、第二のRGB→輝度・色差変換手段2により輝度・色差に変換され輝度成分信号15を出力する。輝度・色差各成分信号13のうちの輝度成分と輝度成分信号15とは、輝度差分計算手段5に入力されて差分計算され、輝度成分差分画像信号17が出力される。肌色領域画像信号14と輝度成分差分画像信号17は論理積処理手段6に入力され論理積が取られ、肌色をなしている部分の動き量(時間差分量)である肌色領域動き量画像信号16を得る。
【0022】上記第1および第2の実施例ではRGB表現された画像が入力されるとして、輝度・色差表現に変換するRGB→輝度・色差変換手段1および2を用いたが、既に輝度・色差表現となった画像が入力される場合にはこの変換手段は不必要である。輝度・色差表現でもRGB表現でもない場合には、その表現から輝度・色差表現に変換する変換手段で、RGB→輝度・色差変換手段を取り換えることにより、同様の効果を得ることができる。
【0023】また動き検出処理として最も単純な時間差分法を用いて説明したが、ブロックマッチング法や勾配法その他の動き検出方法に取り換えても同様の効果を得ることができる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ある時刻に撮影された画像を輝度・色差表現に変換し、このある時刻に撮影された輝度・色差表現された画像から閾値処理により肌色領域を定め、次の時刻に撮影された画像を輝度・色差表現に変換し、ある時刻に撮影された画像の輝度成分と次の時刻に撮影された画像の輝度成分とから肌色領域内だけで動き量を表す画像を計算することにより、効率・性能良く人物の動きを検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】この実施例の入力画像の一例を示す図である。
【図3】この実施例の検出された肌色領域を示す図である。
【図4】本発明の第二の実施例の構成を示すブロック図である。
【図5】従来例のブロックマッチング法の説明図である。
【符号の説明】
1 第一のRGB→輝度・色差変換手段
2 第二のRGB→輝度・色差変換手段
3 肌色領域閾値処理手段
4 マスク領域輝度差分計算手段
5 輝度差分計算手段
6 論理積処理手段
10 入力画像信号
11 時刻Tの画像信号
12 時刻T+1の画像信号
13 輝度・色差各成分信号
14 肌色領域画像信号
15 輝度成分信号
16 肌色領域動き量画像信号
17 輝度成分差分画像信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】 人物の顔を含む動画像から顔の動きを検出する装置において、ある時刻に撮影された画像を輝度・色差表現に変換する第一の輝度・色差変換手段と、前記ある時刻に撮影された輝度・色差表現された画像から閾値処理により肌色領域を定める肌色領域閾値処理手段と、次の時刻に撮影された画像を輝度・色差表現に変換する第二の輝度・色差変換手段と、前記ある時刻に撮影された画像の輝度成分と前記次の時刻に撮影された画像の輝度成分とから前記肌色領域内だけで動き量を表す画像を計算するマスク領域輝度差分計算手段とを備えることを特徴とする人物動き領域検出装置。
【請求項2】 人物の顔を含む動画像から顔の動きを検出する装置において、ある時刻に撮影された画像を輝度・色差表現に変換する第一の輝度・色差変換手段と、前記ある時刻に撮影された輝度・色差表現された画像から閾値処理により肌色領域を定める肌色領域閾値処理手段と、次の時刻に撮影された画像を輝度・色差表現に変換する第二の輝度・色差変換手段と、前記ある時刻に撮影された画像の輝度成分と前記次の時刻に撮影された画像の輝度成分とから動き量を表す画像を計算する輝度差分計算手段と、前記肌色領域と前記動き量を表す画像との論理積をとる論理積処理手段とを備えることを特徴とする人物動き領域検出装置。
【請求項3】 人物の顔を含む輝度・色差表現された動画像から顔の動きを検出する装置において、ある時刻に撮影された画像から閾値処理により肌色領域を定める肌色領域閾値処理手段と、前記ある時刻に撮影された画像の輝度成分と次の時刻に撮影された画像の輝度成分とから前記肌色領域内だけで動き量を表す画像を計算するマスク領域輝度差分計算手段とを備えることを特徴とする人物動き領域検出装置。
【請求項4】 人物の顔を含む輝度・色差表現された動画像から顔の動きを検出する装置において、ある時刻に撮影された画像から閾値処理により肌色領域を定める肌色領域閾値処理手段と、前記ある時刻に撮影された画像の輝度成分と次の時刻に撮影された画像の輝度成分とから動き量を表す画像を計算する輝度差分計算手段と、前記肌色領域と前記動き量を表す画像との論理積をとる論理積処理手段とを備えることを特徴とする人物動き領域検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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