説明

人造大理石用樹脂組成物と人造大理石

【課題】
補強リブが透けないための隠蔽塗装を行う必要のない、透明性の人造大理石を可能とする。
【解決手段】
光透過性を有する樹脂とフィラーを含有する人造大理石用樹脂組成物であって、前記樹脂とフィラーの配合は、7mm厚成形品の380〜780nm波長域の光の平均透過率が2〜10%の範囲内とされているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人造大理石用樹脂組成物とその成形品としての人造大理石に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィラーを充填した樹脂が人造大理石として各種天板やカウンタートップ、洗面化粧台、流し台、浴槽、シャワートレー、防水パン、床材、壁材、間仕切り板、美術工芸品などに使用されている。このような人造大理石は、美的価値などを高めるために透明感が要求されている。透明感を有する人造大理石製品は深み感があり、模様づけするときは模様に奥ゆきを与えることが可能となって、高級感を醸し出す。
【0003】
人造大理石を製造するための樹脂としては、ポリエステル系、アクリル系、ビニルエステル系等が用いられている。またフィラーとしては、シリカ系、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスパウダーなどが用いられている。
【0004】
これらの樹脂やフィラーを配合して得られる人造大理石用の樹脂組成物は所望の形状の成形品として加熱硬化されて人造大理石とされている。
【0005】
人造大理石の透明感は、配合する樹脂の屈折率とフィラーの屈折率により決まり、その差が小さい程透明感が高いものが得られることが知られている。このことから、人造大理石に適切な透明感を与えるために、樹脂やフィラーの屈折率や配合を調整するための試みが様々になされている(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−132751号公報
【特許文献2】特開平9−302009号公報
【特許文献3】特開2001−64061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
人造大理石は、その透明性によって他の樹脂成形品に比べて深み感を保持でき、高級外観を与えることができる。
【0008】
しかしながら一方で、人造大理石の成形品においては、補強材としてリブを配設したり、リブを一体成形する場合がある。このような場合、人造大理石にはその透明性によって隠蔽性が乏しいためリブが透けてしまうというデメリットがあった。このため、従来では、成形品の裏面にリブが透けないように隠蔽塗装を行う必要があった。
【0009】
本発明は、このようなリブが透けないための隠蔽塗装を行う必要のない、透明感を有する人造大理石の成形を可能とする人造大理石用樹脂組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下のことを特徴としている。
【0011】
光透過性を有する樹脂とフィラーを含有する人造大理石用樹脂組成物であって、前記樹脂とフィラーの配合は、7mm厚成形品の380〜780nm波長域の光の平均透過率が2〜10%の範囲内とされている人造大理石用樹脂組成物である。
【0012】
樹脂とフィラーとの屈折率の差は0.2以下であること、さらには、屈折率の差は0.01〜0.15の範囲内であることが好ましい。
【0013】
また、フィラーとして、屈折率の異なる複数のものが配合されていること、さらには、屈折率の差が0.15以下であることが好ましい。
【0014】
フィラーの粒径は、2〜20μmの範囲内であることが好ましい。
【0015】
また、フィラーとして、粒径の異なる複数のものが配合されていること、さらには、複数のものの平均粒径の差が1〜10μmの範囲内であることが好ましい。
【0016】
そして本発明の人造大理石用樹脂組成物では、樹脂100質量部に対してフィラーが150〜320質量部の割合で配合されていることが好ましい。
【0017】
また、顔料または染料が配合されていることも好ましい。
【0018】
本発明では、以上の人造大理石用樹脂組成物の成形品である人造大理石も提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の人造大理石用樹脂組成物によれば、補強材としてのリブの付設や樹脂一体成形によるリブの形成に際しても、従来のようにリブが透けないための裏面隠蔽塗装を施す必要はない。リブが透けて目障りとなることなく、透明感を有する人造大理石が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
本発明では、その成形品の厚みが7mmの時に380〜780nm波長域の光の透過率の平均が2〜10%となるように樹脂とフィラーを配合する。これによって、隠蔽塗装を必要としない透明感を保持した人造大理石が得られる。光の透過率の平均が、2%未満であると隠蔽性は上がるが所望する透明感を得ることができない場合があり、10%を超えると隠蔽性が下がり補強材であるリブが透けてしまう場合がある。
【0022】
なお、本発明の前記「7mm」の規定については、成形品人造大理石の製品としての厚みが7mmのものに特定されることを意味しておらず、一般的には7〜30mmである。成形品である人造大理石の形状、厚みが様々であっても、7mm厚の場合の光透過率が前記のとおりの2〜10%とされていることを意味している。この光透過率については人造大理石の製造にともなう試験サンプルについて確認することができる。あるいは7mm厚の製造において確認することもできる。
【0023】
配合する樹脂は、従来より透明性人造大理石の製造に用いられるものをはじめとする各種の透明性樹脂であればよい。例えば、エポキシ、不飽和ポリエステル、アクリル、メラミン等の熱硬化性樹脂の1種もしくは2種以上や、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂の1種もしくは2種以上で光透過性を有する樹脂であればよく、その平均分子量には制限がなく所望する諸物性にあわせて選定することができる。
【0024】
また、フィラーについても従来より透明性人造大理石の製造に用いられるものをはじめとする各種ものであってよい。例えば、光透過性を有するフィラーは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ等で、表面処理されていても特に制限されることはないが、複合する樹脂と分散性や密着性が良いものでかつ樹脂との屈折率差が小さいフィラーである方が望ましい。屈折率差が大きいと、少量の配合量で上記の透過率である成形品を得ることができるが、所望する諸物性を満足できない場合がある。樹脂とフィラーとの屈折率の差は0.2以下であることが好ましい。これによって、本発明の効果、すなわち、透明性と、リブ透けの抑制はより確実に、安定して実現される。
【0025】
より好ましくは、この屈折率の差は0.01〜0.15の範囲内とする。これによって本発明の効果はより優れたものとなる。
【0026】
屈折率の異なる複数種のフィラーを配合することも有効である。すなわち、樹脂との屈折率差が小さいフィラーと大きいフィラーを複合させることで成形品の厚みが7mmの時に、380〜780nm波長域の光の透過率の平均が2〜10%となるように配合する。屈折率の異なる複数種のフィラーを配合する場合には、相互の屈折率の差を0.15以下とすることが好ましい。これにより本発明の効果はより良好となる。
【0027】
フィラーの粒径については、平均粒径として1〜100μm程度の範囲のものが一般的に考慮される。人造大理石の透明性とリブ透けの抑制という本発明の効果の確実性、安定性、さらには、成形品人造大理石の好ましい強度の点からは、平均粒径が2〜20μm範囲であることが望ましい。また、粒径の異なるものを配合することも有効である。
【0028】
粒径の大きいフィラーと小さいフィラーを複合させることで成形品の厚みが7mmの時に380〜780nm波長域の光の透過率の平均が2〜10%となるように配合する。粒径が小さいフィラーを複合すると人造大理石の強度を向上させる効果もある。この場合の平均粒径の差は1〜10μmの範囲内であって、粒径の最も大きいフィラーに対しての粒径の小さいフィラーの配合比としては、質量比として0.1〜0.3の範囲であることが好ましい。
樹脂に対してのフィラーの配合は、樹脂100質量部に対し、フィラー150〜320質量部の割合とすることが好ましく考慮される。150質量部未満においてはリブが透けやすくなる。一方、320質量部を超える場合には全体の透明感が失われやすい。
【0029】
また、有機顔料や無機顔料、天然染料や合成染料を複合させることで、フィラーの配合量が比較的少ない場合でも効果的に成形品の厚みが7mmの時に380〜780nm波長域の光の透過率の平均が2〜10%となるようにすることが可能である。また着色も可能となる。顔料や染料の配合については、その種類は透光性のものであって、樹脂100質量部に対して10質量部以下とすることが好ましい。
【0030】
本発明の人造大理石用樹脂組成物では、以上のような樹脂やフィラーだけでなく、本発明の目的、効果を阻害しない限り、その他の機能性樹脂や硬化剤等を複合しても問題はない。
【0031】
本発明の人造大理石用樹脂組成物の調製については、樹脂、フィラー、その他硬化剤等の成分を混練する方法や、液状の樹脂、あるいはモノマー溶液とフィラーとの混合や反応混合物等の様々な方法が採用可能である。人造大理石用樹脂組成物は液状において、あるいはペレット状等の固形物の加熱溶融の状態において、注型による加圧、加熱硬化等の様々な方法で成形し、所望形状の人造大理石とすることができる。
【実施例】
【0032】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
メタクリル酸メチルモノマー(住友化学株式会社)を重合平均分子量が10万となるように塊状重合させて得られたアクリル重合体20質量部とメタクリル酸メチルモノマー(住友化学株式会社)80質量部を混合してアクリル樹脂を得た。その樹脂の屈折率を測定すると1.42であった。次にフィラーとして屈折率が1.45、粒径が11μmである熔融シリカ(A)(龍森株式会社)200質量部、硬化剤として10時間半減期温度が61℃であるジアシルパーオキサイド(化薬アクゾ株式会社)0.5質量部を複合させた樹脂組成物を厚みが7mm、リブ一体成形できるような形状をした型内に流し込み、80℃雰囲気内で2時間加熱することでリブ一体成形品を得た。
【0033】
得られた成形品の光の透過率、目視による透明感、目視によるリブ透け度、基材曲げ強度を測定し、各測定結果を表1にまとめた。
【0034】
光の透過率は、日立社製のU−400形自己分光光度計を用いた。
【0035】
(実施例2)
フィラー量を、230質量部にした以外は実施例1と同様にして熱硬化型アクリル樹脂系組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして成形品を得た。
【0036】
(実施例3)
フィラーとして、屈折率が1.45、粒径が11μmである熔融シリカ(A)(龍森株式会社)170質量部と屈折率は同じで粒径が7μmである熔融シリカ(B)(龍森株式会社)30質量部を加えた以外は実施例1と同様にして熱硬化型アクリル樹脂系組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして成形品を得た。
【0037】
(実施例4)
フィラーとして、屈折率が1.45、粒径が11μmである熔融シリカ(A)(龍森株式会社)180質量部と屈折率が1.55、粒径が11μmである結晶性シリカ(C)(龍森株式会社)20質量部を加えた以外は実施例1と同様にして熱硬化型アクリル樹脂系組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして成形品を得た。
【0038】
(実施例5)
フィラーとして、屈折率が1.45、粒径が11μmである熔融シリカ(A)(龍森株式会社)150質量部を、無機顔料としてプルシアンブルー(大日精化株式会社)0.2質量部を加えた以外は実施例1と同様にして熱硬化型アクリル樹脂系組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして成形品を得た。
【0039】
(実施例6)
無機顔料を1.5質量部にした以外は実施例4と同様にして熱硬化型アクリル樹脂系組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして成形品を得た。
【0040】
(実施例7)
フィラーとして、屈折率が1.45、粒径が11μmである熔融シリカ(A)(龍森株式会社)150質量部、合成染料としてSDN青A(東急ハンズ)5質量部を加えた以外は実施例1と同様にして熱硬化型アクリル樹脂系組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして成形品を得た。
【0041】
(比較例1)
フィラー量を、360質量部にした以外は実施例1と同様にして熱硬化型アクリル樹脂系組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして成形品を得た。
【0042】
(比較例2)
フィラー量を、150質量部にした以外は実施例1と同様にして熱硬化型アクリル樹脂系組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして成形品を得た。
【0043】
(比較例3)
フィラー量を、100質量部にした以外は実施例1と同様にして熱硬化型アクリル樹脂系組成物を調製し、さらに実施例1と同様にして成形品を得た。
【0044】
【表1】

【0045】
(評価)
7mm厚成形品の光(380〜780nm波長域)の平均透過率が2〜10%の範囲内にある実施例1〜7においては目視による透明感が良好である。しかも、目視によるリブ透け度においても、いずれも透けない。
【0046】
一方、光の平均透過率が2%未満の比較例1では、透明感がない。また、10%を超える比較例2、3では透明感は優れているものの、リブは透けてしまう。
【0047】
また、粒径の異なるフィラーを配合した実施例3では、成形品の強度が向上していることがわかる。顔料、染料を配合した実施例5〜7においては比較的少ないフィラーの配合でも、透明感、リブ透け度は抑制、さらには強度向上に良好な結果が得られている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する樹脂とフィラーを含有する人造大理石用樹脂組成物であって、前記樹脂とフィラーの配合は、7mm厚成形品の380〜780nm波長域の光の平均透過率が2〜10%の範囲内とされていることを特徴とする人造大理石用樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂とフィラーとの屈折率の差が0.2以下であることを特徴とする請求項1に記載の人造大理石用樹脂組成物。
【請求項3】
前記屈折率の差が0.01〜0.15の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の人造大理石用樹脂組成物。
【請求項4】
前記フィラーとして、屈折率の異なる複数のものが配合されていることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の人造大理石用樹脂組成物。
【請求項5】
前記複数のものの屈折率の差が0.15以下であることを特徴とする請求項4に記載の人造大理石用樹脂組成物。
【請求項6】
前記フィラーの粒径が2〜20μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の人造大理石用樹脂組成物。
【請求項7】
前記フィラーとして、粒径の異なる複数のものが配合されていることを特徴とする請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の人造大理石用樹脂組成物。
【請求項8】
前記複数のものの平均粒径の差が1〜10μmの範囲内であることを特徴とする請求項7に記載の人造大理石用樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂100質量部に対してフィラーが150〜320質量部の割合で配合されていることを特徴とする請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の人造大理石用樹脂組成物。
【請求項10】
顔料または染料が配合されていることを特徴とする請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の人造大理石用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1から10のうちのいずれか一項に記載の人造大理石用樹脂組成物の成形品であることを特徴とする人造大理石。

【公開番号】特開2012−67244(P2012−67244A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215051(P2010−215051)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】