説明

介護用オムツ

【課題】本発明は、腹当て部及び背当て部と漏れ防止部材とを容易に脱着可能であるように構成された介護用オムツを提供する。
【解決手段】本発明の介護用オムツは、臍下付近を覆う腹当て部材と、臀部を覆う背当て部材と、使用者の排泄物を収容する収容構造体と、腹当て部材及び背当て部材に取り付けられ、収容構造体が取り付けられる開口部を有し、人体の股間及び股間の周辺に密着して収容構造体からの排泄物の漏れを防止する漏れ防止部材を含む、股間及び股間の周辺を覆うように構成された股間被覆部材と、が設けられた介護用オムツであって、腹当て部材及び背当て部材を、股間被覆部材に着脱自在に装着可能な着脱手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や家庭等において歩行不能な病人または寝たきりの老人に好適に用いることができるように構成された介護用オムツに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、排泄時の介護を要する者に用いられる各種の排泄物処理システムが提案されている。この種の排泄物処理システムとしては、例えば、使用者の股間にあてがわれる収容カップを有する介護用オムツと、ホースを介して収容カップに接続され、かつ収容カップ内部の排泄物を吸引する排泄物処理装置と、使用者が横たわる介護用マットとを備え、介護用マットに使用者が横たわった姿勢で排泄を行えるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−153498号公報
【特許文献2】特開2009−039405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した排泄物処理システムで用いられる従来の介護用オムツは、腹当て部と、背当て部と、カップ部を含む収容カップと、を備えている。収容カップは、腹当て部と背当て部との間の股間周辺をくり抜き、このくり抜いた箇所に接着剤等により取付けられるように構成されている。収容カップは、その周囲に、伸縮性を有する襞状の漏れ防止部材を備えている。漏れ防止部材は、収容カップのカップ部内及び収容カップに取付けられた汚物収集トレイ内の汚物等の排泄物が収容カップの外部に漏れることを防止するように構成されている。そして、腹当て部と背当て部とは、使用者が横たわった状態で装着を行えるように、一般的なショートパンツ(ショーツ)の両腰脇付近を大腿部方向に裂いて、収容カップと一体的に形成されている。
この構成では、腹当て部と背当て部とが収容カップと一体的に形成されているので、漏れ防止部材を使用者の身体に十分フィットさせることが難しかった。その結果、使用者が動くと、漏れ防止部材と使用者の身体との隙間から排泄物等の漏れが生じることがあった。
そこで、例えば、特許文献2に記載されているように、漏れ防止部材を使用者の身体に十分フィットさせることにより、収容カップの股間への密着性を向上させて、収容カップ内の排泄物の漏れを抑えた介護用オムツが提案されている。
しかしながら、上述した従来の介護用オムツでは、腹当て部及び背当て部が、収容カップと一体化されているので、腹当て部及び背当て部を収容カップから取り外すことができないと共に、汚物収集トレイが収カップに接着されているために汚物収集トレイを収容カップから取り外すことができず、その結果、腹当て部、背当て部、汚物収集トレイが汚れたり、破損した場合に、それらを収容カップから取り外して洗濯したり、取り替えたりすることができないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記従来の介護用オムツにおける問題点に鑑みてなされたものであり、腹当て部及び背当て部を容易に着脱可能であるように構成された介護用オムツを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、臍下付近を覆う腹当て部材と、臀部を覆う背当て部材と、使用者の排泄物を収容する収容構造体と、腹当て部材及び背当て部材に取付けられ、収容構造体が取付けられる開口部を有し、人体の股間及び股間の周辺に密着して収容構造体からの排泄物の漏れを防止する漏れ防止部材を含む、股間及び股間の周辺を覆うように構成された股間被覆部材と、が設けられた介護用オムツであって、腹当て部材及び背当て部材を、股間被覆部材に着脱自在に装着可能な着脱手段を備えている介護用オムツによって達成される。
【0007】
本発明の介護用オムツでは、漏れ防止部材は、開口部を囲むように形成された壁状の形状を有しており、股間被覆部材は、所定の幅を有し、かつ漏れ防止部材の周囲を縁取るように設けられた縁取り部を備えて構成されてもよい。
【0008】
本発明の介護用オムツでは、着脱手段は、股間被覆部材の一部分に設けられた第1の貼着部材と、腹当て部材及び背当て部材の一部分にそれぞれ設けられた第2の貼着部材と、を備え、腹当て部材及び背当て部材は、第1の貼着部材と第2の貼着部材とを連結することにより、股間被覆部材に装着されるように構成されてもよい。
【0009】
本発明の介護用オムツでは、腹当て部材及び背当て部材は、それぞれ別個に股間被覆部材に装着されるように構成されてもよい。
【0010】
本発明の介護用オムツでは、腹当て部材及び背当て部材は、一体化されて股間被覆部材に装着されるように構成されてもよい。
【0011】
本発明の介護用オムツでは、収容構造体は、使用者の汚物を収集するための汚物収集トレイを備え、汚物収集トレイは、股間被覆部材の開口部に密閉するように、接着剤により接着して取付けられるように構成してもよい。
【0012】
本発明の介護用オムツでは、収容構造体は、使用者の汚物を収集するための汚物収集トレイを備え、汚物収集トレイは、収容構造体に着脱自在に装着されるように構成してもよい。
【0013】
本発明の介護用オムツでは、収容構造体は、アタッチメントを備え、股間被覆部材の開口部に密閉するように、該収容構造体の該アタッチメントを股間被覆部材に係合することにより、股間被覆部材に着脱自在に装着されるように構成してもよい。
【0014】
本発明の介護用オムツでは、アタッチメントは、フランジで構成されており、股間被覆部材の開口部に密閉するように、収容構造体のフランジ部を股間被覆部材のフランジ部と固定手段で固定することにより、股間被覆部材に着脱自在に装着されるように構成してもよい。
【0015】
本発明の介護用オムツでは、アタッチメントは、ジッパーで構成されており、股間被覆部材の開口部に密閉するように、該収容構造体のジッパー部を股間被覆部材のジッパー部と掛合することにより、股間被覆部材に着脱自在に装着されるように構成してもよい。
【0016】
本発明の介護用オムツでは、漏れ防止部材は、撥水性を有し、かつ洗浄可能な素材により形成されてもよい。
【0017】
本発明の介護用オムツでは、漏れ防止部材は、外側を覆う外面材と、外面材によって包含されるクッション材と、を備え、外面材は、伸縮性を有する発泡合成樹脂によって形成され、当該外面材の表面は、撥水性を有するように構成されてもよい。
【0018】
本発明の介護用オムツでは、発泡ネオプン系、すなわち、発泡クロロプレン系であってもよい。
【0019】
本発明の介護用オムツでは、着脱手段は、ベルクロ、すなわち、マジックテープ(登録商標)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による介護用オムツの一実施形態の構成を示す概略構成図である。
【図2】図1のオムツを構成する股間被覆部材と、収容構造体と、収容構造体に装着された汚物収集トレイとを一体になるように取付けた状態を示す図である。
【図3】図2の股間被覆部材と収容構造体とを分離した状態を示す図である。
【図4】図2の股間被覆部材の内側部分を展開して示す略構成図である。
【図5】図4の破線A−Aで示した部分における漏れ防止部材部及び股間被覆部材の縁取り部分の一部の断面を示す断面図である。
【図6】図1の介護オムツの外側部分を展開して示す構成図である。
【図7】図1の介護オムツを構成する腹当て部材及び背当て部材を示す図である。
【図8】図1の介護用オムツの内側の構成を示す図である。
【図9】図1の介護用オムツを用いた排泄物処理システムの一構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明による介護用オムツを説明する。
図1は、本発明による介護用オムツ(以下、「オムツ」と略称する)の一実施形態であるオムツ20の構成を示す概略構成図である。
図1に示すオムツ20は、使用者2に装着された状態で、股下が短く膝上丈の、いわゆるショーツ(ショートパンツ)を模した外観を有し、その主要構成部分として、少なくとも使用者2の臍下付近を覆うための腹当て部材21と、少なくとも使用者2の臀部を覆うための背当て部材22と、股間被覆部材23とを備えている。股間被覆部材23には、使用者2の排泄物を収容するための収容構造体24が設けられている。
【0022】
以下、上記各構成部分について詳細に説明する。
図2は、図1のオムツ20を構成する股間被覆部材23に収容構造体24を取付けた状態を示す図であり、図3は、図2の股間被覆部材23から収容構造体24を取り外した状態を示す図である。
図1に示すように、股間被覆部材23は、腹当て部材21及び背当て部材22に取付けられ、人体の股間及び当該股間の周辺部分(股間部位から臀部の部位に至る部分)を覆うように構成されている。
また、股間被覆部材23は、図2及び図3に示すように、収容構造体24が取付けられる開口部OPENと、略椀型に湾曲した形状のカップ部23Aと、開口部OPENに取付けられた収容構造体24を股間被覆部材23に装着するように構成されたアタッチメント・フランジ23Bと、股間被覆部材23の周縁に設けられ、かつ所定の幅を有する縁取り部23Cと、を備えている。
【0023】
図3に示すように、収容構造体24は、アタッチメントATにより、股間被覆部材23の開口部OPENに、着脱自在に取付けられる。
本実施形態では、アタッチメントATは、フランジで構成されていて、股間被覆部材23には、洩れを防止するためのクッション材が付設されたアタッチメント・フランジ部23Bが設けられている。また、収容構造体24には、トレイ・フランジ部24Aが設けられている。ただし、クッション材はトレイ・フランジ部24Aに付設されていてもよい。そして、アタッチメント・フランジ部23Bとトレイ・フランジ部24Bが固定手段であるクリップ等により固定するように構成されている。
【0024】
別の実施形態として、アタッチメントATは、ジッパー、例えば、線ファスナーで構成されていて、股間被覆部材23には、ジッパー部オス(またはメス)が設けられている。また、収容構造体24には、ジッパー部メス(またはオス)が設けられている。そして、オス及びメスによる一対のジッパー部により収容構造体24が股間被覆部材23の開口部OPENに、着脱自在に取付けられるように構成されてもよい。
【0025】
また、収容構造体24には、使用者2の汚物を収集するための汚物収集トレイ25が設けられ、この汚物収集トレイ25は、収容構造体24と一体に形成されている。この汚物収集トレイ25は、股間被覆部材23の開口部OPENに密閉するように、接着剤により接着して取付けられて構成してもよいし、収容構造体24と着脱自在に装着できるように構成してもよい。
更に、図3に示すように、汚物収集トレイ25には、スペーサSPCが装着されるようになっている。このスペーサSPCは、腹当て部材21並びに背当て部材22を取り付けた後に装着される。
【0026】
図4は、人体と接触する側から見た、股間被覆部材23の内側部分の構成を示す図である。
図4に示すように、オムツ20は、股間被覆部材23の内側部に、弾力性及び伸縮性を有する材料で股間被覆部材23に一体的に形成され、かつ人体の股間部位に密着してカップ部23Aからの排泄物及び汚物収集トレイ25に収容された汚物、等の漏れを防止する漏れ防止部材26を備えている。
股間被覆部材23のカップ部23Aの内側面(内面)は、例えば、伸縮素材にチタンメタル特殊表面加工(メセル構造)、例えば山本化学工業(株)によるもの、を施すことによって撥水加工処理が施されており、これによりカップ部23Aの縫合部(図示せず)からの水漏れを防止することができる。
上記チタンメタル特殊表面加工は、撥水効果と共に抗菌効果を有するので、カップ部23Aの内面への汚水等の付着が防止され、カップ部23A内でのバクテリア等の細菌の増殖が防止され、その結果、カップ部23Aの内部を衛生的に保つことができるようになっている。
【0027】
図5は、図4の破線A−Aで示した部分における、漏れ防止部材部26及び股間被覆部材23の縁取り部分23Cの一部の断面を示す概略断面図である。
図5に示すように、股間被覆部材23の縁取り部分23Cの内側面23CINS(即ち、漏れ防止部材26が形成されている側)の幅W(即ち、漏れ防止部材26の縁部から縁取り部分23Cの外縁部まで長さ)は、30ミリメートル以上が好ましく、本実施形態では、40ミリメートルに設定されている。
【0028】
また、図5に示すように、漏れ防止部材26の内側部分(即ち、使用者2に直接装着される側の部分)は、漏れ防止部材26の内側部分を覆う内面材27INと、内面材27INによって包含されるクッション材28と、クッション材28を内面材27INと挟むようにして密閉する外面材27OUTとを備えている。
内面材27INは、ウェットスーツ等に用いられる伸縮性のある発泡合成樹脂、例えば山本化学工業(株)製のSCSメタル/スライス素材によって形成され、外面材27OUTは、例えば山本化学工業(株)製のナイロンジャージ/スムース素材によって形成され、その表面は、撥水性を有すべく防水処理加工が施されている。
【0029】
クッション材28は、弾力性のある素材、例えば、発泡ポリウレタン或いは低反発発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン或いは低反発発泡ポリエチレン、等によって形成されている。
本実施形態の構成では、漏れ防止部材26は、クッション材28を内面材27INで包み、この内面材27INの両縁部27Aを、外面材27OUTと縫合または接着によって固定することにより形成されている。
オムツ20を使用者2に装着したときに、縁取り部23Cが使用者2の身体の股間、臀部、及び腿と密着して、漏れ防止部材26を使用者2の身体に押し付けることにより、漏れ防止部材26が使用者2の身体にフィットするように構成されており、カップ部23Aからの排泄物及び汚物収集トレイ25に収容された汚物、等が漏れ防止部材26を通り抜けて外部に漏れることを完全に防止するように構成されている。
【0030】
図6は、図1の介護オムツの股間被覆部材23の外側部分を展開した概略構成図である。
股間被覆部材23の外面材27OUTは、例えば、ナイロンジャージ/スムース素材で形成されており、股間被覆部材23の縁取り部23Cの外側表面には、カップ部23Aの上端部からカップ部23Aの形状の一部分に沿って、着脱手段であるベルクロファスナー(いわゆる、マジックテープ(登録商標))BFの第1の貼着手段であるフック面23Dが付設されていると共に、収容構造体24の汚物収集トレイ25側の縁部略中央から汚物収集トレイ25の背面部25Aの形状の一部分に沿って、同様に、ベルクロファスナーBFのフック面23Dが付設されている。
【0031】
図7は、図1の介護オムツ20を構成する腹当て部材21(図の上部を参照)及び背当て部材22(図の下部を参照)を示す図である。図7に示すように、本実施形態では、腹当て部材21及び背当て部材22は、別個のものとしてそれぞれ独立した形で示されている。
使用者2の臍下付近を覆う腹当て部材21は、股間被覆部材23側の面が第2の貼着手段であるループ面21RASとして形成され、カップ部23Aの上端部からカップ部23Aの形状の一部分に沿って、股間被覆部材23の縁取り部23Cの外側表面に備えられたベルクロファスナーBFのフック面23Dと止着するように構成されている。
【0032】
別の実施形態として、腹当て部材21の股間被覆部材23側の面に設けられたベルクロファスナーBFのループ面21RASは、ほぼ腹当て部材21の股間被覆部材23側の面全体を覆っていて、股間被覆部材23の縁取り部23Cの外側表面に備えられたベルクロファスナーBFのフック面23Dと止着する際に、腹当て部材21の取付け位置を使用者2の体格に適合するように調節可能に構成されている。
【0033】
使用者2の臀部を覆う背当て部材22は、股間被覆部材23側の面が第2の貼着手段であるループ面22RASとして形成され、汚物収集トレイ25側の縁部略中央から汚物収集トレイ25の背面部25Aの形状の一部分に沿って、股間被覆部材23の縁取り部23Cの外側表面に備えられたベルクロファスナーBFのフック面23Dと止着するように構成されている。
【0034】
別の実施形態として、背当て部材22の股間被覆部材23側の面に設けられたベルクロファスナーBFのループ面22RASは、ほぼ背当て部材22の股間被覆部材23側の面全体を覆っていて、股間被覆部材23の縁取り部23Cの外側表面に備えられたベルクロファスナーBFのフック面23Dと止着する際に、背当て部材22の取付け位置を使用者2の体格に適合するように調節可能に構成されている。
【0035】
従って、腹当て部材21及び背当て部材22は、介護用オムツ20を使用者2の体格(即ち、体形やサイズ)に合せてそれらの取付け位置を調節することができるので、オムツ20を、使用者2の体格に応じて密着させて、使用者2に装着することができる。
【0036】
上述のように構成することによって、腹当て部材21と、背当て部材22とにより、漏れ防止部材26を股間及び股間の周辺に密着することができ、股間被覆部材23を使用者2の体格に応じて確実に保持することができ、その結果、オムツ20のずれや外れを防ぐことができると共に、股間被覆部材23及び収容構造体24からの排泄物が漏れ防止部材26を通り抜けて外部に漏れることを完全に防ぐことができる。
【0037】
別の実施形態として、ループ面とフック面とを逆に配置してもよい。即ち、股間被覆部材23の縁取り部23Cの外側面上に設けられたベルクロファスナーBFをループ面とし、腹当て部材21及び背当て部材22は、股間被覆部材23側の面にそれぞれ設けられたベルクロファスナーBFをフック面として構成してもよい。
【0038】
腹当て部材21及び背当て部材22は、通気性が良く、かつ、水分を通さない素材から形成されており、使用者2が長時間装着し続けても、発汗によるムレが防止されるようになっている。
【0039】
ここで、図1及び図7を参照して、背当て部材22と、腹当て部材21とを説明する。
背当て部材22は、使用者2の腰回り方向に長く形成され、図1及び図2に示すように、使用者2がオムツ20を装着した場合、背当て部材22の左右の両端部22A、22Bは、それぞれ使用者2の腰に巻きつけられ、これら両端部22A、22B同士が当該使用者2の腹部の上で重ねられる。
【0040】
腹当て部材21は、腹当て部材21の胸側(即ち、上縁部側)の両角部21B、21Cの内面には第1止着部45A、45Bがそれぞれ設けられている。
この第1止着部45A、45Bは、上記両角部21B、21Cには、それぞれベルクロファスナーBFのフック面を貼着して形成されている。そして、第1止着部45A、45Bのフック面が、背当て部材22の腹当て部材21側の面の一部分に形成されているベルクロファスナーBFのループ面に止着するように構成されている。
第1止着部45A、45Bは、腹当て部材21を胸方向(図1のX方向)に引張り、漏れ防止部材41を当該胸方向に伸縮させた状態で、腹当て部材21を背当て部材22に止着するものである。
【0041】
腹当て部材21は、腹当て部材21の股間被覆部材23側(即ち、下縁部側)の両端部21D、21Eの内面には、第2止着部46A、46Bがそれぞれ設けられている。
第2止着部46A、46Bは、腹当て部材21の両端部21D、21Eをそれぞれ胴回り方向(図1のY方向)に引張り、漏れ防止部材41を当該胴回り方向に伸縮させた状態で、腹当て部材21を背当て部材22に止着するものである。
第2止着部46A、46Bは、上記した第1止着部45A、45Bよりも胴回り方向に突出して形成されている。このため、第1止着部45A、45Bを背当て部材22に止着した後であっても、第2止着部46A、46Bを胴回り方向に引くことにより、漏れ防止部材26を当該胴回り方向に容易に伸縮させることができ、この状態で第2止着部46A、46Bを背当て部材22に止着することができる。
【0042】
腹当て部材21は、上記第1止着部45A、45Bと第2止着部46A、46Bとの間に、第3止着部47A、47Bを備えている。
第3止着部47A、47Bは、腹当て部材21を背当て部材22により強固に止着するためのものである。これら第2止着部46A、46B及び第3止着部47A、47Bは、腹当て部材21の該当部分にそれぞれベルクロファスナーBFのフック面を貼着して形成されている。
そして、第2止着部46A、46B及び第3止着部47A、47Bのフック面が、腹当て部材21の背当て部材22側の面(股間被覆部材23側の面)の一部に形成されているベルクロファスナーBFのループ面に止着するように構成されている。
【0043】
使用者2にオムツ20を装着する場合には、まず、使用者2の臀部を覆う背当て部材22を股間被覆部材23の外側面に装着する。背当て部材22の装着は、汚物収集トレイ25側の縁部略中央から汚物収集トレイ25の背面部25Aの形状の一部分に沿って、その股間被覆部材23側の面に備えられたベルクロファスナーBFのループ面を、股間被覆部材23の縁取り部23Cの外側表面に備えられたベルクロファスナーBFのフック面と止着することにより行われる。
【0044】
次に、使用者2の臍下付近を覆う腹当て部材21を股間被覆部材23に装着する。腹当て部材21の装着は、カップ部23Aの上端部からカップ部23Aの上部形状の一部分に沿って、その股間被覆部材23側の面に備えられたベルクロファスナーBFのループ面を、股間被覆部材23の縁取り部23Cの外側表面に備えられたベルクロファスナーBFのフック面と止着することにより行われる。
【0045】
そして、収容構造体24を股間にあてがう一方、従来のオシメをはかすように、背当て部材22を臀部にあてがい、この背当て部材22の両端部22A、22Bを腹部の上で重ね合わせる。
【0046】
それから、腹当て部材21を臍下付近にあてがい、この腹当て部材21を胸方向に引張り、漏れ防止部材26を当該胸方向に伸縮させた状態で、腹当て部材21の第1止着部45A、45Bを背当て部材22に止着する。
【0047】
続いて、腹当て部材21の両端部21D、21Eをそれぞれ胴回り方向に引張り、漏れ防止部材26を当該胴回り方向に伸縮させた状態で、第2止着部46A、46Bを背当て部材22に止着する。最後に第3止着部47A、47Bを背当て部材22に止着し、オムツ20の装着を終了する。
【0048】
本実施形態では、腹当て部材21及び背当て部材22を、股間被覆部材23に着脱自在に装着することができるように構成されているので、腹当て部材21及び背当て部材22を別々に取り替えたり、或いは使用頻度に応じて別々に付け替えたりすることができると共に、必要に応じて腹当て部材21及び背当て部材22を洗濯したり、洗浄したりすることができる。
なお、別の実施形態として、腹当て部材21及び背当て部材22を一体として構成してもよい。
【0049】
(a)腹当て部材21及び背当て部材22が各々生地1枚で形成されている場合には、背当て部材22は、その裏側面としてベルクロのループ面の機能を有する生地、例えば、東レのフレンチパイル7187Eを前面に使用するか、端部22D2が固定される部分にベルクロのループ面を有する生地、例えば、東レのフレンチパイル7187Eを使用し、残りの部分には、水分拡散が良く、伸縮性に富む、例えば、小松精練Mawus 2475、もしくは、小松精練三層ラミネート/スムースを使用するのがよい。背当て部材22の端部22D2は、ベルクロのフック面を有するものであり、背当て部材22の裏側に固定される。即ち、ベルクロのループ面の機能を有する生地を採用することで、固定位置の自由度が生まれ、胴回りの違いに対応することが可能になる。
【0050】
また、腹当て部材21の端部45A、46A、47A、45B、46B、47Bもベルクロのフック面を有するものであり、背当て部材22の裏側に自由度を持って固定される。
腹当て部材21の生地は、同じ生地を使用してもよし、生地材料は、特に限定されない。但し、腹当て部材21及び背当て部材部22は、共に吸収水分の拡散性に優れている、即ち、湿気透過性が優れていて、肌荒れを起こさないような生地が望ましい。
【0051】
(b)腹当て部材21及び背当て部材22が各々2重に形成されている場合には、腹当て部材21の表側生地は、吸収水分の拡散性に優れている、即ち、湿気透過性が優れていて、肌荒れを起こさない生地、例えば、小松精練Mawus 2475であり、裏側生地は、湿気を通すが、水分を通さない生地、例えば、小松精練SAITOS TH430を使用するのがよい。
背当て部材22は、その表側生地としては、腹当て部材21と同様な生地、例えば、小松精練Mawus 2475を全面に使用してもよいが、その裏側は、端部22D2、端部45A、46A、47A、45B、46B、47Bが固定される部分にベルクロのループ面を有する生地、例えば、東レのフレンチパイル7187Eを使用し、残りの部分には、湿気を通すが、水分を通さない生地、例えば、小松精練SAITOS TH430を使用するのがよい。
【0052】
収容構造体24に設けられた、使用者2の汚物を収集するための汚物収集トレイ25は、プラスチックなどの樹脂材から形成されており、多少の押圧力が加わった場合でも樹脂材の弾性により、その押圧力を吸収することができるように構成されている。
【0053】
汚物収集トレイ25は、図1に示すように、使用者2の臀部に対向する背面部25Aと、股間に対向する底面部25Bとを備え、断面略L字状に形成されている。
底面部25Bの外側には、汚物吸引ホース接続口29、洗浄水ホース接続口30、及び送風ホース接続口31が一体化構造を形成すべく設けられており、汚物吸引ホース接続口29、洗浄水ホース接続口30、及び送風ホース接続口31には、後述する汚物吸引ホース4、洗浄水ホース5及び送風ホース6がそれぞれ接続されるように構成されている。
【0054】
図8は、図1の介護用オムツ20の内側の構成を示す概略構成図である。
図8に示すように、汚物収集トレイ25の底面部25Bの内側には、洗浄水ホース接続口30(図1)と連通し、洗浄水ホース接続口30を通じて供給された洗浄水を噴射する洗浄口32a、32bと、汚物吸引ホース接続口29(図1)に連通する汚物吸引口33と、がそれぞれ形成されている。
【0055】
汚物吸引口33は、使用者2がオムツ20を装着して仰向けに横たわった場合、汚物収集トレイ25の底面部25Bの高さが最も低い位置に対応する底面部25Bと背面部25Aとの連結部分に形成されている。これにより、汚物収集トレイ25上の排泄物等は、汚物吸引口33から汚物吸引ホース4を介して、ほとんどすべて後述する排泄物処理装置に吸引される。
上記構造を有するので、汚物収集トレイ25上には排泄物等がほとんど残留することがないので、汚物収集トレイ25上を清潔に保つことができる。
【0056】
上述した汚物吸引ホース4は、剛性を有する屈曲管で形成されるのが好ましく、それにより、排泄物処理装置が汚物を空気の圧力差で吸引しても管径が変化しないように構成される。
【0057】
洗浄口32aは、使用者2の肛門を洗浄するためのものであり、汚物吸引口33付近に設けられている。洗浄口32aは、洗浄口32aから噴射された洗浄水が使用者2の肛門に向くような位置に配設されている。
【0058】
洗浄口32bは、使用者2が女性である場合に女性の陰部を洗浄するためのものであり、使用者2の下腹部に相当する位置付近に配設されている。
また、洗浄水として、使用者2の不快感を招かぬよう適度な温度の温水を使用することが好ましい。
【0059】
上述したように、汚物収集トレイ25には、女性の陰部(特に、尿内、膣等)を洗浄するための洗浄口32bが設けられているので、使用者2が女性である場合には、排尿後も陰部を清潔に保ち、使用者2に不快感を与えることがないように構成されている。
【0060】
なお、使用者2が男性である場合を考慮して、洗浄水ホース5と洗浄口32bとの間に開閉弁等の遮蔽手段を設けて、洗浄口32bからの洗浄水噴射を選択的に遮蔽することができるように構成するのがよい。
【0061】
洗浄口32a、32bには、洗浄水のみならず送風ホース6を介して空気が供給されるように構成されている。即ち、洗浄水により使用者2の各部位を洗浄したあと、空気(乾燥空気)を吹き付けることにより、使用者2の各部位を乾燥させるようになっている。この場合、空気を供給するに先立って、水抜き手段を用いて洗浄水ホース5内に残留する洗浄水を吸引して水抜きを行うのが好ましい。
【0062】
汚物収集トレイ25の背面部25Aの内側には、使用者2の尾てい骨の近傍に対応する位置に、汚物吸引口33に向けて洗浄口34が配設されている。洗浄口34には、洗浄水ホース接続口30及び送風ホース接続口31を介して、排泄物処理装置から空気と洗浄水とが混合されて供給され、この混合された空気及び洗浄水により、汚物収集トレイ25上の排泄物等が汚物吸引口33の方向へ押し流されるように構成されている。更に、汚物収集トレイ25の背面部25Aの内側には、洗浄口34と汚物吸引口33との間に、排泄の有無を検出するための排泄物検知センサ35が配設されている。排泄物検知センサ35は、後述する排泄物処理装置の制御部に連結されており、背面部25A上に排泄が検出されると、制御部が排泄物処理装置の動作を開始するように構成されている。
【0063】
図9は、本発明による介護用オムツを用いた排泄物処理システムの一構成例を示す概略構成図である。
図9に示すように、排泄物処理システム1は、使用者2が横たわった姿勢で排泄を衛生的に行えるようにしたものであり、使用者2が横たわるマット(介護用マット)3と、使用者2の腰臀部に装着される上述した本発明によるオムツ20と、オムツ20内部の排泄物または汚水を吸引し蓄積する排泄物処理装置50とを備えている。
【0064】
オムツ20と排泄物処理装置50とは、汚物吸引ホース4、洗浄水ホース5及び送風ホース6により接続される。排泄物処理装置50は、洗浄水ホース5や送風ホース6を通じてオムツ20内に洗浄水や空気を供給し、汚物吸引ホース4を通じてオムツ20内の排泄物または汚水(以下、排泄物等という)を吸引する。
【0065】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様にすぎず、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の範囲内で任意に変形可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
20 オムツ
21 腹当て部材
22 背当て部材
23 股間被覆部材
23A カップ部
23B アタッチメント・フランジ
23C 縁取り部
23D フック面
24 収容構造体
24A トレイ・フランジ
25 汚物収集トレイ
26 漏れ防止部材
AT アタッチメント
BF マジックテープ(登録商標)
OPEN 開口部
SPC スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臍下付近を覆う腹当て部材と、臀部を覆う背当て部材と、使用者の排泄物を収容する収容構造体と、前記腹当て部材及び前記背当て部材に取り付けられ、前記収容構造体が取り付けられる開口部を有し、人体の股間及び股間の周辺に密着して前記収容構造体からの前記排泄物の漏れを防止する漏れ防止部材を含む、前記股間及び前記股間の周辺を覆うように構成された股間被覆部材と、が設けられた介護用オムツであって、
前記腹当て部材及び前記背当て部材を、前記股間被覆部材に着脱自在に装着可能な着脱手段を備えていることを特徴とする介護用オムツ。
【請求項2】
前記漏れ防止部材は、前記開口部を囲むように形成された壁状の形状を有しており、
前記股間被覆部材は、所定の幅を有し、かつ前記漏れ防止部材の周囲を縁取るように設けられた縁取り部を備えている請求項1に記載の介護用オムツ。
【請求項3】
前記着脱手段は、前記股間被覆部材の一部分に設けられた第1の貼着部材と、前記腹当て部材及び前記背当て部材の一部分にそれぞれ設けられた第2の貼着部材と、を備え、
前記腹当て部材及び前記背当て部材は、前記第1の貼着部材と前記第2の貼着部材とを連結することにより、前記股間被覆部材に装着される請求項1または2に記載の介護用オムツ。
【請求項4】
前記腹当て部材及び前記背当て部材は、それぞれ別個に前記股間被覆部材に装着されるように構成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の介護用オムツ。
【請求項5】
前記腹当て部材及び前記背当て部材は、一体化されて前記股間被覆部材に装着されるように構成されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の介護用オムツ。
【請求項6】
前記収容構造体は、使用者の汚物を収集するための汚物収集トレイを備え、前記汚物収集トレイは、前記股間被覆部材の前記開口部に密閉するように、接着剤により接着して取付けられる請求項1乃至5のいずれか一項に記載の介護用オムツ。
【請求項7】
前記収容構造体は、使用者の汚物を収集するための汚物収集トレイを備え、前記汚物収集トレイは、前記収容構造体に着脱自在に装着される請求項1乃至5のいずれか一項に記載の介護用オムツ。
【請求項8】
前記収容構造体は、アタッチメントを備え、前記股間被覆部材の前記開口部に密閉するように、該収容構造体の該アタッチメントを前記股間被覆部材に係合することにより、前記股間被覆部材に着脱自在に装着される請求項1乃至7のいずれか一項に記載の介護用オムツ。
【請求項9】
前記アタッチメントは、フランジで構成されており、前記股間被覆部材の前記開口部に密閉するように、前記収容構造体のフランジ部を前記股間被覆部材のフランジ部と固定手段で固定することにより、前記股間被覆部材に着脱自在に装着される請求項8に記載の介護用オムツ。
【請求項10】
前記アタッチメントは、ジッパーで構成されており、前記股間被覆部材の前記開口部に密閉するように、該収容構造体のジッパー部を前記股間被覆部材のジッパー部と掛合することにより、前記股間被覆部材に着脱自在に装着される請求項8に記載の介護用オムツ。
【請求項11】
前記漏れ防止部材は、撥水性を有し、かつ洗浄可能な素材により形成される請求項1乃至10のいずれか一項に記載の介護用オムツ。
【請求項12】
前記漏れ防止部材は、外側を覆う外面材と、外面材によって包含されるクッション材と、を備え、前記外面材は、伸縮性を有する発泡合成樹脂によって形成され、当該外面材の表面は、撥水性を有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の介護用オムツ。
【請求項13】
前記発泡合成樹脂は、発泡ネオプレン系、すなわち、発泡クロロプレン系である請求項12に記載の介護用オムツ。
【請求項14】
前記着脱手段は、ベルクロ、すなわち、マジックテープ(登録商標)であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の介護用オムツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−229820(P2011−229820A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105164(P2010−105164)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(504320569)
【出願人】(510122739)
【Fターム(参考)】