説明

介護用パンツ

【課題】外観上は普通のパンツと変わらず違和感なくと着用することができ、且つ、着脱も容易で介護者の負担も軽減できる使い勝手の良い介護用パンツを提供する。
【解決手段】股間部1と、その一端側に連続して設けた覆い部2と、他端側に連続して設けた後身頃3と、後身頃3の両側部より側方に延出する右前身頃4aと左前身頃4bを備える。右前身頃4aと左前身頃4bの端部を腹部側において重ね合わせ、この重ね合わせ部分を着脱自在に結合させて前身頃4を構成し、前身頃4の上に覆い部2を重ね合わせてその先端部2aを前身頃4に着脱自在に結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として歩行が困難な障害者、認知症や尿失禁症の高齢者が着用して好ましい介護用パンツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、歩行が困難で介護が必要な障害者、認知症や尿失禁症のある寝たきりの高齢者(被介護者)のための介護用パンツとして、汚物処理が容易な使い捨の紙おむつが普及している(特許文献1)。
【0003】
ところが、このような介護用の紙おむつは、幼児用の使い捨て紙おむつと外観や構造やが全く同じであることから、介護用パンツとして紙おむつを着用することに嫌悪感や劣等感を抱く被介護者も多く、ましてや、介護者に紙おむつを装着される場合には自尊心が傷つけられ、このことが被介護者の心の健康にも大きく影響することになる。
【0004】
また、日々行う紙おむつの交換は、介護者にとっても大きな負担であると共に、被介護者にとっても、汚物が付着した下着を身に付けていることは非衛生的であり、好ましいものではなかった。
【特許文献1】特開2007−029612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、外観上は普通のパンツと変わらず、違和感なく着用することができ、且つ、着脱も容易で、介護者の負担も軽減できる使い勝手の良い介護用パンツを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1に記載の介護用パンツは、股間部と、その一端側に連続して設けた覆い部と、他端側に連続して設けた後身頃と、当該後身頃の両側部より側方に延出する右前身頃と左前身頃を備え、前記右前身頃と左前身頃の端部を腹部側において重ね合わせ、当該重ね合わせ部分を着脱自在に結合させて前身頃を構成すると共に、当該前身頃の上に前記覆い部を重ね合わせてその先端部を前記前身頃に着脱自在に結合させて構成したことを特徴している。
ここで、介護用パンツとは、介護が必要な障害者や自分で排泄処理ができる障害者、或いは高齢者が着用するパンツのことをいう。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の介護用パンツにおいて、前記股間部を2重構造として、間に吸水性パットを挿入可能としたことを特徴としている。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の介護用パンツにおいて、前記覆い部の基端部を前記前身頃に着脱自在に結合させて、前記覆い部と前記前身頃の重合部に尿や便を一時的に溜めておく容器や予備の前記パットを保持可能としたことを特徴としている。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3までの何れかに記載の介護用パンツにおいて、抗菌性、防臭性に優れる素材にて構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜4に記載の発明によれば、後身頃の両側部より側方に延出する左右前身頃の端部を腹部側において重ね合わせて前身頃を構成し、さらに、この前身頃を覆い部にて覆う構成としたので、腹部側において前身頃の重ね合わせ部分が覆い部にて覆い隠されることで、外観上は普通のパンツと全く変わらなくでき、おむつを着用しているようには見えないため、着用者は何ら違和感や劣等感、嫌悪感等を感じることなく、通常のパンツを使用する感覚で着用することができる。この結果、介護用パンツを着用することによる被介護者のストレスが軽減され、精神的な安定が得られる。
【0011】
また、排泄の際は、前身頃から覆い部を外すことで、容易、且つ迅速に股間を開放することができ、介護用パンツを着用したまま排尿や排便を行えるため、排泄が間に合わず心ならずも介護用パンツを汚してしまうことも防止でき、介護が必要な障害者や自分で排泄処理できる障害者や高齢者にとって極めて好ましい下着となる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明によれば、股間部を2重構造とすることにより、間に吸水性のパット(失禁パット)を挿入することが可能となり、これにより、失禁による尿漏れを吸収して、常に好ましい衛生状態を保持できる。しかも、パットの交換はパンツを着用した状態で行えるので、極めて使い勝手が良い。また、軽度の失禁であれば、失禁パットを装着しなくても、この2枚重ね部分で尿漏れを十分に吸収することができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明によれば、覆い部の基端部が前身頃に結合されているので、覆い部と前身頃の重合部に尿や便を一時的に溜めておく容器(例えば、ウリナールやパウチ)を保持させれば、容器の取り扱いが容易となり、介護者の負担も軽減できると共に、被介護者にとっても動き易くなる。且つ、この場合、被介護者の肌に容器が直接接触しないため、容器を装着した違和感も緩和されると共に、肌を傷付けることもない。
【0014】
また、請求項4に記載の発明によれば、介護用パンツを抗菌性や防臭性に優れる素材にて構成したので、長時間着用していても、いやな臭いも無く衛生的であり、爽快感が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図1〜図9に基づいて、本発明による介護用パンツ10の実施形態を説明する。
【0016】
本実施形態の介護用パンツ10は、図1に示すように、長手中間部に括れを有する股間部1と、この股間部1の一端側に連続して設けた三角状の覆い部2と、股間部1の他端側に連続して設けた幅広逆三角状の後身頃3と、この後身頃3の両側部より側方に延出し、長手端部側が下側に張り出した細長帯状の右前身頃4aと左前身頃4bとを備え、展開状態で略T字となる一体の布体で構成されている。
【0017】
股間部1の内側には、図3に示すように、股間部1とほぼ同形の厚手の当て布5が設けられ、この当て布5の上下端が股間部1に縫着されており、両側部は非縫着の状態となっている。
右前身頃4a、後身頃3、左前身頃4bと続く上端縁(ウエスト部分)と覆い部2の先端部2aには、それぞれ伸縮自在の帯状部材7が縫着されている。
【0018】
右前身頃4aの外側両端には、止め具としての面ファスナー11b(フック側)が設けられ、左前身頃4bの内側両端には、これら面ファスナー11bに係合する面ファスナー11a(ループ側)が設けられている(図1参照)。
また、覆い部2の基端部2bの内側両端には、止め具としてのスナップ12aが設けられ、右前身頃4aと左前身頃4bの外側下端には、これらスナップ12aに係合するスナップ12bが設けられている(図1、図5参照)。
さらにまた、覆い部2の先端部2aの内側両端には、スナップ16aが設けられ、右前身頃4aと左前身頃4bの上端縁、すなわちウエスト部分には、これらスナップ16aに係合するスナップ16bがそれぞれ複数(3個)横列に設けられている(図6参照)。
【0019】
尚、上記スナップ12a、12b、16a、16bにおいては、何れも、スナップテープ15の周囲に縫い残し部分18を設けておいて、この縫い残し部分18よりスナップテープ15の裏面に指を差し込むことで、スナップの係脱を容易にしている。図9にウエスト部分におけるスナップ16bの取り付けを一例として示し、符号17は縫着部を示している。
【0020】
上記した展開状態で略T字の布体を筒形見頃の介護用パンツ10に構成するには、先ず、図4、図5に示すように、右前身頃4aと左前身頃4bの端部同士を腹部側において右前身頃4aを外側にして重ね合わせ、その重ね合わせ部分を面ファスナー11a、11bの係合にて結合させて前身頃4を構成する。
本実施形態では、面ファスナー11a、11bをウエスト周りに細長くして、各々の係合位置を調整することにより、介護用パンツ10のウエストサイズを適宜調整できるようになっており、且つ、肌に触れる可能性のある布体の内側の面ファスナー11aには、柔らかい素材で成るループ側が配設され、ウエストサイズの調整具合で面ファスナー11aの一部が直接着用者の肌に触れても肌を傷めないように考慮されている。
【0021】
次に、図6に示すように、構成された前身頃4の上に覆い部2を重ねて合わせ、スナップ12a、12bとスナップ16a、16bをそれぞれ係合させて、覆い部2の先端部2aと基端部2bをそれぞれ前身頃4の上端と下端に結合させる。ウエスト周りには、スナップ16bが3個横列に設けてあるので、調整されたウエストサイズに応じた位置に覆い部2のスナップ16aを係合させる。
図1に示すように、右前身頃4aと左前身頃4bは、長手端部側において下側に張り出しているため、前身頃4に覆い部2を重ねて合わせることで、外観上、通常のパンツと同じように左右対の円形の脚口8が形成された、図2に示す介護用パンツ10が構成される。
【0022】
以上、本実施形態によれば、後身頃3の両側縁部より側方に延出する左右前身頃4a、4bの端部を腹部側において重ね合わせて前身頃4を構成し、さらに、この前身頃4を覆い部2にて覆う構成としており、腹部側において前身頃4の重ね合わせ部分が覆い部2にて覆い隠されることで、図2に示すように、外観上は普通のパンツと変わらない介護用パンツ10が構成される。よって、被介護者は、この介護用パンツ10を違和感や劣等感や嫌悪感等を感じることなく、通常のパンツと同じ感覚で着用することができる。
この結果、介護用パンツ10を着用することによる被介護者のストレスも軽減され、精神的に安定した生活が送れるようになり、ひいては、病状の回復にも大いに貢献できるものとなる。
【0023】
また、排泄の際は、図8に示すように、前身頃4から覆い部2を外すことで、容易、且つ迅速に股間を開放状態とすることができ、介護用パンツ10を着用しまま排尿や排便を行えるため、排泄が間に合わず、心ならずも介護用パンツ10を汚してしまうことも防止できる。
尚、男性の場合は、図7に示すように、前身頃4から覆い部2を一部外して左右前身頃4a、4bの重ね合わせ部分を露出すれば小用を足すことができる。
【0024】
また、股間部1を2重構造としているので、その隙間部分6に失禁パット13を挿入することが可能であり、これにより、失禁による尿漏れを失禁パット13で吸収して常に衛生状態を良好に保持できる。尚、股間部1に厚手の当て布5を用いているので、失禁パット13を装着しなくても軽度の失禁であれば、この2枚重ねの部分で尿漏れを吸収することは十分可能である。
また、失禁パットの交換は、図8に示すように、覆い部2を外せば介護用パンツ10を着用した状態でも行うことができ、且つ、被介護者が起立した状態でも、座った状態や寝ている状態でも簡単に行えるので、介護者の負担も少ない。
【0025】
また、覆い部2の基端部2bを前身頃4に結合させているので、図2に示すように、覆い部2と前身頃4の重合部9を尿や便を一時的に溜めておく容器14(例えば、ウリナールやパウチ)を保持させるポケットとして利用することができる。このポケットに容器14を保持させれば、容器14の取り扱いも容易になり、介護者の負担も軽減されると共に、被介護者も動き易く活動的になる。
加えて、この構造は、容器14が直接被介護者の肌に接触しないため、容器14を装着している違和感も緩和されると共に、容器1が触れて被介護者の肌を傷付けることもない。
また、上記ポケットに予備の失禁パット13を入れておけば、パット交換の際に便利である。
【0026】
また、上記構成の介護用パンツ10は、抗菌性や防臭性に優れる素材を用いて構成するのが好ましく、例えば、消臭、抗菌、殺菌効果のある酸化チタンを担持加工した大進熱機株式会社製の光触媒反応用捺染布地が好適である。当光触媒反応用捺染布地は、その消臭、抗菌、殺菌効果等が長期持続するため極めて衛生的であると共に、布地の伸縮性と柔らかい肌触りにより、被介護者の体に心地よくフィットし、体型に合わせてしっかりと着用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態による介護用パンツを展開した状態を示す図。
【図2】同、介護用パンツを示す図。
【図3】同、介護用パンツの股間部を示す図。
【図4】同、介護用パンツの構成手順を示す図。
【図5】同、介護用パンツの図4とは別の構成手順を示す図。
【図6】同、介護用パンツの図5とは別の構成手順を示す図。
【図7】同、介護用パンツの図6とは別の構成手順を示す図。
【図8】同、介護用パンツを着用した状態を示す図。
【図9】スナップの取り付け状態を示す図。
【符号の説明】
【0028】
1 股間部
2 覆い部
2a 先端部
2b 基端部
3 後身頃
4 前身頃
4a 右前身頃
4b 左前身頃
10 介護用パンツ
13 吸水性パット(失禁パット)
14 容器(ウリナール、パウチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
股間部と、その一端側に連続して設けた覆い部と、他端側に連続して設けた後身頃と、当該後身頃の両側部より側方に延出する右前身頃と左前身頃を備え、前記右前身頃と左前身頃の端部を腹部側において重ね合わせ、当該重ね合わせ部分を着脱自在に結合させて前身頃を構成すると共に、当該前身頃の上に前記覆い部を重ね合わせてその先端部を前記前身頃に着脱自在に結合させて構成したことを特徴とする介護用パンツ。
【請求項2】
前記股間部を2重構造として、間に吸水性パットを挿入可能としたことを特徴とする請求項1に記載の介護用パンツ。
【請求項3】
前記覆い部の基端部を前記前身頃に着脱自在に結合させて、前記覆い部と前記前身頃の重合部に尿や便を一時的に溜めておく容器や予備の前記パットを保持可能としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の介護用パンツ。
【請求項4】
抗菌性、防臭性に優れる素材にて構成したことを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかに記載の介護用パンツ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−18096(P2009−18096A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184493(P2007−184493)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(597062890)
【出願人】(507238724)
【Fターム(参考)】