説明

仕切り成形品とそれを用いた弁当箱

【課題】
給食など繰り返し用いられる弁当箱の残飯除去を簡単にするとともに、弁当箱の洗浄が容易で、キズ付きを少なくし、寿命の長期化などを図り、地球環境への負荷が減少させる。
【解決手段】
ポリ乳酸のフィルムを弁当箱内部の形状に合せて熱成形した形状であることに特徴を有する仕切り成形品を弁当箱内部に用いて、弁当箱内部の汚れを少なくして弁当箱の洗浄を容易とし、かつ残飯と仕切り成形品そのままコンポスト化できる切り成形品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁当箱の仕切り成形品およびそれを用いた弁当箱に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に給食など繰り返し用いられる弁当箱は、内部を仕切り壁によって複数の食品収納部に区画した合成樹脂製であって、各食品収納部にそれぞれご飯や惣菜を収容して食事を提供し、喫食後に残飯と共に弁当業者によって回収される。
回収された弁当箱は、残った残飯を取除いた後に洗浄して繰返して使用されるが、弁当箱内に仕切り壁等があり複雑な形状をしていると、回収後の残飯処理が面倒であるとともに、洗浄に際して完全な洗浄を行うとすればするほど弁当箱がキズ付き、弁当箱の寿命が短くなる傾向(特許文献1参照)があり、同時に大量の水と洗剤を用いるため地球環境への負荷が大きかった。
【特許文献1】登録実用新案公報第3000401号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ポリ乳酸のフィルムを熱成形した仕切り成形品を弁当箱内部に用いて、弁当箱内部の汚れを少なくして弁当箱の洗浄を容易とし、かつ残飯と仕切り成形品そのままコンポスト化できる仕切り成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ポリ乳酸フィルムの熱成形品であって、弁当箱内部の食品収容部の形状に合せて熱成形した仕切り成形品であって、フィルムの厚みが0.03〜0.2mmである仕切り成形品。また、本発明は、その仕切り成形品を装着した弁当箱であって、喫食後にその仕切り成形品とそれに付着した残飯とを一緒にコンポスト化する残飯廃棄方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の仕切り成形品を弁当箱内部に用いることで、そこに食材を収納して食事を提供することができる点、喫食後に回収した弁当箱から残飯を簡単に取出し、そのまま仕切り成形品と残飯を分離せずにコンポスト化できる点、弁当箱本体の汚れが少なく水や洗剤の使用を減らせる点、弁当箱の寿命が長くなる点などにおいて地球への環境負荷が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
用いるポリ乳酸は、乳酸を原料とするものであれば特に限定するものではないが、一般市販のものを用いることができ、合せてそのフィルムも特にその製造方法に限定されるものではない。
ポリ乳酸以外でも生分解プラスチックも数多くあるが、このポリ乳酸はフィルム化した場合に剛性が高い点で他の生分解プラスチック製のフィルムよりも優れている。一般的に熱可塑性樹脂のフィルムの剛性を上げるために2軸延伸処理する方法もあるが、ポリ乳酸製フィルムまたはシートは2軸延伸しなくても十分な剛性があり、この延伸工程が無い分エネルギー消費が少なく環境に優しいといえる。
【0007】
フィルム厚みは、0.03〜0.2mmの厚みである。0.04〜0.15mmであればより好ましく、0.05〜0.10mmであれば更に好ましい。フィルムの厚みが0.03mm未満では熱成形したときに破れが生じ易く、また食事中の箸で破れ易い傾向があり、0.2mmを超える場合は熱成形しにくくなる傾向がある。
【0008】
仕切り成形品は、2軸延伸ポリスチレン(以下、OPSという。)の熱成形に用いる一般的な熱板成形機を用いてポリ乳酸フィルムを熱成形して得ることができる。用いる金型もOPSの熱成形で用いる金型を用いることができる。また、その時の成形温度は、OPSの熱成形の温度条件より40〜70℃も低く設定でき、成形時のエネルギー消費が少なく環境に優しいといえる。これは、ポリ乳酸自身の特徴であると同時に、フィルムの厚みをOPSより30〜40%薄くしたことによる。
【0009】
仕切り成形品の形状は、弁当箱内部の形状に合せて熱成形した形状であることに特徴を有する。例えば、ご飯を主に収納するような仕切りの無い弁当箱の内部形状に合せた単純な形状でもよく、弁当箱自体に仕切りが既に設けられている場合や、仕切りを設けたトレー状の中敷を弁当箱内部に装着して用いる場合、個々の小型惣菜容器を組み合わせて弁当箱内部に並べて用いる場合では、弁当箱に惣菜を投入する最終の弁当箱内部の形状に合せて仕切り成形品を成形すればよい。このような仕切り成形品を弁当箱内部に装着し、その仕切り成形品の凹部に食品を配することによって、弁当箱回収後に仕切り成形品を取除くことで、残飯も一緒に除去できる。
なお、成形品の端部の形状も装着する弁当箱の端に沿う形状が好ましく、より好ましいのは弁当箱の縁を被う形状が好ましい。
【0010】
残飯と一緒に取除いた仕切り成形品は、その残飯とともにコンポスト化することができ、OPSを用いた場合と異なり、残飯と仕分ける必要がない。コンポスト内では、仕切り成形品は水と二酸化炭素に容易に分解して地球環境への負荷が少ない。
更に、本発明の仕切り成形品と一緒にあらかたの残飯は除去されるため、弁当箱本体や、仕切りを設けたトレー状の中敷、個々の小型惣菜容器の汚れは極めて少なく、洗浄に用いる水や洗剤の使用量を削減でき、この点においても地球環境への負荷が少ない。
【実施例】
【0011】
下記のポリ乳酸を使用し、下記の押出し条件でフィルムを得、続いて下記の熱成形条件で4仕切りの仕切り成形品を成形した。
ポリ乳酸樹脂:三井化学(株)製レイシアH−400
押出機:田辺工業(株)製 40mmφ単軸押出機
押出し温度:220℃
フィルム厚み:0.08mm
熱板成形機:関西自動機械(株)製CK−1200
熱成形温度:68℃
熱成形時間:0.7秒
上圧空圧力:1.2kg/cm
下圧空圧力:3.0kg/cm
金型温度:30℃
【0012】
得られた仕切り成形品を所定の弁当箱に装着し、食品を投入した2時間後に喫食したが通常の弁当で喫食するのと何ら違いはなく、更に喫食後は仕切り成形品は残飯とともに簡単に弁当箱から取り除くことができた。
仕切り成形品を取り除いた弁当箱は、惣菜由来と思われる水分の付着が見られたが、弁当箱の洗浄は極めて簡単であった。
続いて、残飯と一緒に仕切り成形品をコンポストに入れ、過湿状態で温度を60℃に保ったところ、1週間後には仕切り成形品の形状が保持されていないことを確認した。
【0013】
フィルムの厚みを0.12mmとし、熱成形時間を0.8秒とした以外は、上記の0.08mmのフィルムの場合と樹脂と押出機、熱板成形機、成形条件を同じとし、同じ仕切り成形品を成形した。この成形品は成形品の角の賦形が若干甘い他は、特に問題はなく、所定の弁当箱に装着できた。そのほかの評価は上記の評価と同様であった。
【比較例】
【0014】
市販の0.13mmのOPSを用いて、熱板成形温度を116℃、熱板成形時間を0.7秒、金型温度を80℃とした以外は、上記と同じ熱板成形を行い、同じ形状の仕切り成形品を得た。
得られた仕切り成形品を所定の弁当箱に装着し、食品を投入した2時間後に喫食したが通常の弁当で喫食するのと何ら違いはなく、喫食後はOPS製の仕切り成形品は残飯とともに簡単に弁当箱から取り除くことができたが、残飯と一緒に仕切り成形品をコンポストに入れ、過湿状態で温度を60℃に保ったところ、1週間後であっても仕切り成形品の形状がそのまま保持されていた。
【0015】
前述の0.08mmの本発明の仕切り成形品を用いた実施例で、喫食後に仕切り成形品を手で取り除かないで、あらかた残飯を除去したのち、直ちに熱殺菌の過熱(70〜80℃)をすると、本願発明の仕切り成形品は自己収縮して弁当箱から容易に剥がれ落ちる。これは、仕切り成形品を弁当箱から手で除去しなくとも更に簡単に仕切り成形品を除去できることを意味する。この効果は実施例に示した0.12mmのフィルムを用いた場合も同様であったが、比較例に用いたOPS製の仕切り成形品ではこのような効果を確認できなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸フィルムの熱成形品であって、弁当箱内部の食品収容部の形状に合せて熱成形した仕切り成形品。
【請求項2】
ポリ乳酸フィルムの厚みが0.03〜0.2mmである請求項1記載の仕切り成形品。
【請求項3】
弁当箱内部の食品収容部の形状に合せて熱成形した請求項1記載の仕切り成形品を装着した弁当箱
【請求項4】
喫食後に請求項1記載の仕切り成形品とそれに付着した残飯とを一緒にコンポスト化する残飯廃棄方法。



【公開番号】特開2006−312107(P2006−312107A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2006−232532(P2006−232532)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】