説明

他物固定具

【課題】他物に対する固定強度を高く確保でき、設置数を減少させられるようにする。
【解決手段】下地3上に防水シート5を敷設して構成してある設置対象部1に対して接地自在な接地底部6Aと、設置対象部1の上方に設置する他物2を取付固定自在な他物固定部7とを、固定本体6に備えてある他物固定具であって、固定本体6は金属によって構成してあり、固定本体6は、合成樹脂によって鋳ぐるんである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地上に防水シートを敷設して構成してある設置対象部(例えば、屋上やバルコニー等)に対して接地自在な接地底部と、前記設置対象部の上方に設置する他物(例えば、ソーラー設備や空調設備、広告設備、キャットウォーク等の構造物、植栽設備等)を取付固定自在な他物固定部とを、固定本体に備えてある他物固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の他物固定具としては、屋上スラブ(設置対象部に相当)の防水シート上にソーラー設備(他物に相当)を設けるに当たって使用する固定具(例えば、特許文献1参照)があった。
この固定具は、固定本体を硬質合成樹脂によって形成してあり、前記接地底部となる円板部の中央に、前記他物固定部となるネジ部を突出状態に埋設して構成してある。
そして、固定本体における前記ネジ部の両側方には、上下に貫通するネジ部材挿通孔が設けてあり、そのネジ部材挿通孔の上端開口を密閉状態に閉塞する蓋部材が設けてあった。
設置対象部の上に当該他物固定具を配置した状態で、固定本体の前記円板部を下地に接着したり、前記ネジ部材挿通孔に固定ビスを挿通して下地に締着させることで設置することができる。
また、前記ネジ部材挿通孔には、蓋部材を密閉状態に設置することで、ネジ部材挿通孔内への水の浸入を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−220658号公報(図4、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の他物固定具によれば、固定本体が硬質合成樹脂で構成してあるから、大きな荷重が他物から作用する場合には、強度的な問題点があり、その問題を解消するのに、固定具の数を増やして、荷重分散を図る必要があった。
その結果、他物固定具の設置数が多くなり、設置コストが高くついていた。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、他物に対する固定強度を高く確保でき、設置数を減少させることができる他物固定具を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、下地上に防水シートを敷設して構成してある設置対象部に対して接地自在な接地底部と、前記設置対象部の上方に設置する他物を取付固定自在な他物固定部とを、固定本体に備えてある他物固定具であって、前記固定本体は金属によって構成してあり、前記固定本体は、合成樹脂によって鋳ぐるんであるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記固定本体は金属によって構成してあり、固定本体の強度が従来品に比べて高まり、それに伴って、他物固定具としての固定強度を向上させることができる。その結果、従来と同様の他物を下地上に固定するのに、他物固定具一個所での固定強度が上がるから、全体としての他物固定具の設置数を少なくでき、設置手間の軽減を図ることができる。
更には、前記固定本体は、合成樹脂によって鋳ぐるんであるから、金属が外部に露出するのを前記合成樹脂の鋳ぐるみ部で防止できる。その結果、金属部分の酸化による腐食の進行を防止して、耐久性の向上を図ることができるから、長期間にわたって他物を安定した状態で下地上に固定しておくことができる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記他物固定部は、前記固定本体から鋳ぐるみ層を貫通して突出する状態に設けられたボルトで構成してあり、前記ボルトには、突出部分における基端部とその周囲の鋳ぐるみ層との間をシールするシーリングワッシャが外嵌させて設けてあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、合成樹脂による鋳ぐるみ層の内方側に水が浸入するのを前記シーリングワッシャによって防止することができる。
即ち、前記ボルトが、固定本体から鋳ぐるみ層を貫通して突出しているから、シーリングワッシャが無ければ、ボルトの突出部に沿って水が鋳ぐるみ層内に浸入し易く、もし、鋳ぐるみ層内に水が浸入したら、金属製の固定本体や、ボルトの埋設部分を腐食させる危険性がある。金属部の腐食に関しては、水による酸化の影響の他に、固定本体とボルトとが異なる金属で構成されている場合、水に浸されることで相互の電位差に基因した腐食(所謂「電食」)を生じる危険性がある。
従って、前記ボルトの突出部分における基端部とその周囲の鋳ぐるみ層との間を、ボルトに外嵌させたシーリングワッシャによってシールすることで、鋳ぐるみ層内への水の浸入を防止でき、金属そのものの高強度を維持することができる。
その結果、鋳ぐるみ層内部での金属部分の腐食を防止して、耐久性の向上を図ることができるから、長期間にわたって他物を安定した状態で下地上に固定しておくことができる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記固定本体に、一方が前記接地底部に開口すると共に、設置状態で他方が上方に開口するネジ部材挿通孔が設けてあり、前記ネジ部材挿通孔に挿通させるネジ部材の拡径頭部を受ける座繰り部が、前記ネジ部材挿通孔に形成してあり、前記座繰り部の座繰り面は、前記固定本体の金属が露出させてあるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、ネジ部材挿通孔が設けてあり、前記ネジ部材挿通孔に挿通させるネジ部材の拡径頭部を受ける座繰り部が、前記ネジ部材挿通孔に形成してあるから、ネジ部材挿通孔に挿通させたネジ部材を下地に締着させることによって拡径頭部から座繰り面に押圧力が伝達されて当該他物固定具を下地に固定することができる。
また、固定本体は、合成樹脂で鋳ぐるんであるにも拘わらず、前記座繰り部の座繰り面は、前記固定本体の金属が露出させてあるから、固定本体の座繰り面とネジ部材の拡径頭部とは金属どうしが直接的に接触する状態で押圧力の伝達が図られ、ネジ部材の締め付けトルク管理を行う上で、バラツキを押さえた精度の高い締め付け管理を行うことができる。
比較例として、座繰り面に合成樹脂の鋳ぐるみ層が存在している場合を例に挙げると、鋳ぐるみ層が金属間に介在して弾性変形することで、ネジ部材の締め付けトルクにバラツキを生じ易くなり、所定の締着力で固定することが困難となる。更には、鋳ぐるみ層のクリープ変形によってネジ部材の緩みを誘発し、他物固定具の取付状況に悪影響を与える危険性がある。本発明の特徴構成によれば、このような問題点を解消し、緩み難い状態に他物固定具を下地に固定することができる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記ネジ部材挿通孔に挿通自在な固定用ネジ部材を備え、
前記固定用ネジ部材は、前記ネジ部材挿通孔に挿通して前記固定本体を前記下地に固定した状態で、ネジ部材の拡径頭部の上面が、前記座繰り部の上縁部より低くなるように形成してあるところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、ネジ部材を設置した状態で、その拡径頭部の上方に、座繰り部の上縁部より入り込んだ凹部を形成することができ、この凹部に、例えば、ネジ部材周りをシールするシール材を充填することが可能となる。ネジ部材挿通孔をシール材でシールできれば、ネジ部材挿通孔内への水の浸入を防止できるから、ネジ部材による防水シートの貫通部に水が浸入したり、下方へ漏水することを防止できる。
即ち、他物固定具の取付部分の防水性の維持を図ることができる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、前記ネジ部材挿通孔の開口部を開閉自在な蓋部材が設けてあり、前記ネジ部材挿通孔に前記蓋部材を取り付けた状態で、前記ネジ部材挿通孔に外部からの水が浸入するのを阻止すると共に、前記ネジ部材挿通孔と外部空間とを連通させる連通機構が設けてあるところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、蓋部材をネジ部材挿通孔の開口部に取り付けることによって、ネジ部材挿通孔内への水の浸入を防止できるから、ネジ部材による防水シートの貫通部に水が浸入したり、下方へ漏水することを防止できる。
即ち、他物固定具の取付部分の防水性の維持を図ることができる。
更には、前記ネジ部材挿通孔に前記蓋部材を取り付けた状態で、前記ネジ部材挿通孔に外部からの水が浸入するのを阻止すると共に、前記ネジ部材挿通孔と外部空間とを連通させる連通機構が設けてあるから、例えば、他物固定具の周囲環境の温度上昇によって、ネジ部材挿通孔内の空気が熱膨張したとしても、連通機構を通して内部の圧抜きを行うことができる。従って、熱膨張によって前記蓋部材が跳ね上げられて外れることを防止できる。その結果、環境温度の変化がある設置対象部であっても、他物固定具の取付部分の防水性の維持を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】他物固定具の取付状況を示す斜視図
【図2】他物固定具の取付状況を示す斜視図
【図3】他物固定具の一部切欠き斜視図
【図4】他物固定具の取付状況を示す断面図
【図5】他物固定具の取付状況を示す断面図
【図6】蓋部材の取付状況を示す要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の他物固定具の一実施形態である固定具Kを使用して屋上スラブ(設置対象部に相当)1上に他物2を固定してある状況を示すものである。
但し、前記他物2とは、例えば、ソーラー設備や空調設備、広告設備、キャットウォーク等の構造物、植栽設備等さまざまなものが該当し、更には、それらの各設備を取り付けるための各フレーム等も含めてここでは他物2と言う。当該実施形態では、前記他物2は、ソーラー設備のフレームにおけるフランジ部2aを例に挙げて説明している。
【0019】
前記屋上スラブ1は、本実施形態においては、図4、図5に示すように、下地3上に合成樹脂製の防水シート5を接着して構成されている。
前記下地3は、本実施形態においては、コンクリート床3Aによって構成されている。
勿論、下地3そのものは、このような構成に限るものではなく、例えば、コンクリート床3Aの上に断熱層を配置したものや、折板屋根に使用される折板(金属板)によるものや、その上に断熱材が設けられたもの等、さまざまな対応が考えられる。
因みに、下地3への防水シート5の接着は、例えば、防水シート固定用金属プレート(図には示さないが、例えば、円盤状や帯板状のもの)をビスやコンクリート釘、ボルト等で下地3に横間隔をあけて固定しておき、この金属プレートの上面に接着剤を塗布して前記防水シート5を接着する方法や、全面的に接着する等の方法が例として挙げられる。
前記防水シート5は、本実施形態においては、塩化ビニル製のものを例に挙げて説明している。
【0020】
前記固定具Kは、図2、図3に示すように、屋上スラブ1に対して接着自在な円板形状の底面部(接地底部に相当)6Aと、その底面部6Aの中央上方にボルト(他物固定部に相当)7を埋設保持した状態に立設してある平面視十文字形状の立設部6Bとを一体に備えた金属製の固定本体6によって構成してある。尚、前記固定本体6は、合成樹脂(例えば、塩化ビニル)によって外周部(上下面及び側面)に鋳ぐるみ層10(図3〜5参照)を設けてある。
【0021】
前記立設部6Bの平面視十文字は、二つの一文字が平面視で直交する状態に形成されており、一つの一文字の両端部には、縦方向に貫通するネジ部材挿通孔8がそれぞれ形成されている。
このネジ部材挿通孔8の内周面の内、前記固定本体6の金属部分はそのまま金属が露出する状態に形成されている。
また、ネジ部材挿通孔8の金属部分には、挿通させる固定用ネジ部材9(図5参照)の拡径頭部9aを受ける座繰り部8aが形成してあり、ネジ部材挿通孔8内に、上方から固定用ネジ部材9を挿通させて下方の下地3に締め込むに伴って、前記拡径頭部9aが座繰り部8aに直接に接触して下地側に挟圧して、固定具Kを下地3に固定することができる。
また、ネジ部材挿通孔8の金属部分の上方には、鋳ぐるみ樹脂で構成された筒状部10aが立ち上げられている。
また、前記筒状部10aの上端部から、前記座繰り部8aまでの深さ寸法の設定は、図5に示すように、前記固定用ネジ部材9を前記ネジ部材挿通孔8に挿通して前記固定本体6を前記下地3に固定した状態で、固定用ネジ部材9の拡径頭部9aの上面が、前記筒状部10aの上縁部より低くなるように設定してある。
前記固定用ネジ部材9の上方に確保される凹部8bは、シール材11の充填空間として使用される。ネジ部材挿通孔8に固定用ネジ部材9を挿通させて下地3に固定した後、前記凹部8bにシール材11を充填することで、ネジ部材挿通孔8内から固定用ネジ部材9に沿って下地2側へ漏水するのを防止できる。
【0022】
前記筒状部10aには、前記ネジ部材挿通孔8の開口部を開閉自在な蓋部材12が設けてある。
蓋部材12は、前記鋳ぐるみ層10と同じ合成樹脂材料で構成してあり、図3に示すように、前記筒状部10aの外径より大きい直径寸法の天板部12aと、天板部12aの外周縁部から下方に垂下する外筒部12bと、天板部12aにおける前記外筒部12bより内側の位置に垂下する内筒部12cとを設けて構成してある。
前記内筒部12cは、周方向に4分割の分割筒部13によって構成してあり、周方向に隣合う分割筒部13には、それぞれ縦スリットS1が形成されている。また、各分割筒部13の外周面における周方向での中央部分には、縦方向の凸条部13aが形成されている。
【0023】
前記内筒部12cの寸法設定は、各凸条部13aに外接する円の直径が、前記筒状部10aの内径寸法より若干大きくなるように設定してある。また、長さに関しては、固定本体6に蓋部材12を取り付けた状態で、内筒部12cの下端部が、ネジ部材挿通孔8内の金属部分に当接する程度に設定してある。
【0024】
蓋部材12をネジ部材挿通孔8に取り付けるには、内筒部12cを筒状部10aに内嵌させて押し込むことで実施される。その際、各分割筒部13は、ネジ部材挿通孔8の内周壁から凸条部13aが縮径側に押圧され、前記縦スリットS1の幅が縮まる方向に撓み変形するから、各分割筒部13の弾性復元力が、前記凸条部13aを介してネジ部材挿通孔8の内周面に集中的に作用し、互いの嵌合力の向上が図られる。よって、外れ難い状態に蓋部材12を固定本体6に取り付けることができる。
【0025】
一方、外筒部12bは、蓋部材12の設置状態において、筒状部10aの外方に位置し、雨水等が筒状部10aからネジ部材挿通孔8内に浸入するのを防止している。
【0026】
また、ネジ部材挿通孔8の内空部は、図6に示すように、前記縦スリットS1を通して筒状部10aと天板部12aとのら隙間S2、及び、筒状部10aと外筒部12bとの隙間S3を介して外部空間と連通している。即ち、ネジ部材挿通孔8と外部空間との間に、前記スリットS1、隙間S2、隙間S3からなる連通経路Sが形成される。従って、例えば、日射によってネジ部材挿通孔8内の温度が上昇して内部の空気が膨張しても、上述の連通経路Sを通して圧抜きされるので、蓋部材12が跳ね上げられることを防止できる。
【0027】
前記外筒部12bと前記連通経路Sとを設けてあるから、ネジ部材挿通孔8に前記蓋部材12を取り付けた状態で、前記ネジ部材挿通孔8に外部からの水が浸入するのを阻止できると共に、前記ネジ部材挿通孔8と外部空間とを連通させることができる。前記外筒部12bと前記連通経路Sとによって連通機構Rが構成されている。
【0028】
前記立設部6Bの二つ目の一文字部分は、図4に示すように、その両端部において、固定具Kの重量低減のために、下面側部分を空洞に形成してある。
また、中央の前記ボルト7は、固定本体6の中央に形成されたボルト挿通孔6aに下方側から上方に向けて挿通させた状態でナット7aを螺合させて、前記ボルト挿通孔6aの周部を上下から挟圧することで固定本体6との一体化が図られている。
【0029】
また、前記ボルト7には、軸部分における基端部とその周囲の鋳ぐるみ層10との間をシールするシーリングワッシャ7bが外嵌させて設けてある。ボルト7に前記他物2を取り付けて固定ナット7cを締め込むことで、シーリングワッシャ7bのシール部分がボルト7の外周部と鋳ぐるみ層10とにわたって密着し、シール効果を発揮するから、鋳ぐるみ層10内部への水の浸入を防止できる。
【0030】
前記底面部6Aの下面を覆っている底面鋳ぐるみ部10bは、図1、図2に示すように、前記下地3に沿って鍔状に延出させてあり、前記防水シート5上に接着によって固定できるように形成されている。即ち、底面鋳ぐるみ部10bの外形は、前記底面部6Aより大きい直径の円形として構成してある。
また、底面鋳ぐるみ部10bの上面には、円周方向に等しい間隔で、四つの溝mが形成してある。これは、前記立設部6Bの十文字の中心線と一致する配置となっており、例えば、防水シート5上に当該固定具Kの設置位置をマーキング(十字線)した場合に、そのマーキングに対して前記溝mを合わせることで固定具Kの位置合わせができるようにしたものである。
【0031】
当該固定具Kの屋上スラブ1への取り付けに関しては、図4に示すように、底面鋳ぐるみ部10bの下面に接着材を塗布した状態で、屋上スラブ1の所定位置に固定具Kを配置し、図5に示すように、両ネジ部材挿通孔8にネジ部材9を挿通して下地3に螺進させて固定することで実施できる。この場合、底面鋳ぐるみ部10bの接着と共に、ネジ部材9による固定によって、屋上スラブ1に強固に固定することができる。
そして、ネジ部材9の拡径頭部9aの上からネジ部材挿通孔8にシール材11を充填してシールを図ると共に、ネジ部材挿通孔8の開口部に蓋部材12を取り付ける。
このように設置された固定具Kのボルト7に、レール部2aをネジ止めしてソーラ設備等を設置することができる。
【0032】
本実施形態の固定具Kによれば、固定強度が合成樹脂の従来品に比べて向上するから、一つの他物を固定するのに、固定具Kの設置数を少なくでき、設置手間の軽減を図ることができる。そして、鋳ぐるみ層10によって固定本体6の耐久性の向上を図ることができるから、長期間にわたって他物を安定した状態で下地3上に固定しておくことができる。
また、鋳ぐるみ層10に加えてシーリングワッシャ7bを設けてあるから、鋳ぐるみ層10内に水が浸入することを防止でき、その結果、固定本体6とボルト7との腐食(所謂「電食」)をも防止でき、より耐久性の向上を図ることができる。
また、屋上スラブ1へのボルト固定の締め付けトルク管理を精度良く実施できる。
【0033】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0034】
〈1〉 当該他物固定具によって取付対象部に取り付ける他物2とは、先の実施形態で説明したソーラー設備のレール部2aに限るものではなく、例えば、ソーラー設備そのものであったり、空調設備、広告設備、キャットウォーク等の構造物、植栽設備等さまざまなものが該当し、当然の事ながら、それらの各設備を取り付けるための各フレーム等も含めて他物という。
〈2〉 当該他物固定具を取り付ける対象となる設置対象部1は、先の実施形態で説明した屋上スラブに限るものではなく、例えば、屋根(陸屋根、傾斜屋根、折板屋根等)、デッキプレート、バルコニー、壁、部材表面等、あらゆる個所を対象とすることができる。そして、設置対象部1によって下地はコンクリート床以外の構成をとる場合もある。
〈3〉 当該他物固定具の形状は、先の実施形態で説明したものに限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。その一例として、接地底部に関しては、先の実施形態で説明した円形や正方形に限るものではなく、例えば、矩形形状や、三角形や五角形以上の多角形、楕円形状、又は、それらの組合せた形状等であってもよい。
【0035】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1 屋上スラブ(設置対象部に相当)
2 他物
3 下地
5 防水シート
6 固定本体
6A 底面部(接地底部に相当)
7 ボルト(他物固定部に相当)
7b シーリングワッシャ
8 ネジ部材挿通孔
8a 座繰り部
9 ネジ部材
9a 拡径頭部
10 鋳ぐるみ層
12 蓋部材
R 連通機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地上に防水シートを敷設して構成してある設置対象部に対して接地自在な接地底部と、前記設置対象部の上方に設置する他物を取付固定自在な他物固定部とを、固定本体に備えてある他物固定具であって、
前記固定本体は金属によって構成してあり、
前記固定本体は、合成樹脂によって鋳ぐるんである他物固定具。
【請求項2】
前記他物固定部は、前記固定本体から鋳ぐるみ層を貫通して突出する状態に設けられたボルトで構成してあり、前記ボルトには、突出部分における基端部とその周囲の鋳ぐるみ層との間をシールするシーリングワッシャが外嵌させて設けてある請求項1に記載の他物固定具。
【請求項3】
前記固定本体に、一方が前記接地底部に開口すると共に、設置状態で他方が上方に開口するネジ部材挿通孔が設けてあり、前記ネジ部材挿通孔に挿通させるネジ部材の拡径頭部を受ける座繰り部が、前記ネジ部材挿通孔に形成してあり、前記座繰り部の座繰り面は、前記固定本体の金属が露出させてある請求項1又は2に記載の他物固定具。
【請求項4】
前記ネジ部材挿通孔に挿通自在な固定用ネジ部材を備え、
前記固定用ネジ部材は、前記ネジ部材挿通孔に挿通して前記固定本体を前記下地に固定した状態で、ネジ部材の拡径頭部の上面が、前記座繰り部の上縁部より低くなるように形成してある請求項3に記載の他物固定具。
【請求項5】
前記ネジ部材挿通孔の開口部を開閉自在な蓋部材が設けてあり、前記ネジ部材挿通孔に前記蓋部材を取り付けた状態で、前記ネジ部材挿通孔に外部からの水が浸入するのを阻止すると共に、前記ネジ部材挿通孔と外部空間とを連通させる連通機構が設けてある請求項3又は4に記載の他物固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−57374(P2012−57374A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202309(P2010−202309)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000178619)アーキヤマデ株式会社 (39)