説明

付属部品取付構造

【課題】圧入時に発生するバリ(糸バリ)の除去作業の必要がなく、生産効率の向上を図ることが可能な付属部品取付構造、このような付属部品取付構造を介して付属部品が付設されている等速自在継手、及び動力伝達軸を提案する。
【解決手段】等速自在継手52(53)に付設される付属部品を等速自在継手52に取り付けるための取付構造である。等速自在継手52(53)に圧入される筒部95aを備え、筒部95aの圧入によって生じるバリ98を圧入完了状態において覆い隠すバリ内包部100が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付属部品(例えば、ダストカバー、シールプレート、回転センサ等)を等速自在継手に付設するための付属部品取付構造、このような付属部品取付構造を介して付属部品が付設されている等速自在継手、及び動力伝達軸に関する。
【背景技術】
【0002】
動力伝達軸は、図10に示すように、シャフト1と、シャフト両端部に装着される等速自在継手2,3とを備えたものである。この場合、一方の等速自在継手2は固定式等速自在継手であり、他方の等速自在継手3は摺動式等速自在継手である。
【0003】
等速自在継手2は、内径面5にトラック溝6が形成された外側継手部材7と、外径面8に外側継手部材7のトラック溝6と対をなす複数のトラック溝9が形成された内側継手部材10と、外側継手部材7のトラック溝6と内側継手部材10のトラック溝9との間に介在してトルクを伝達する複数のボール11と、外側継手部材7の内径面5と内側継手部材10の外径面8との間に介在してボール11を保持するケージ12とを備えている。
【0004】
外側継手部材7は、前記内径面5にトラック溝6が形成されるマウス部15と、このマウス部15の底壁部15aから突設されるステム部16からなる。マウス部15は、前記底壁部15aと、外径面が底壁部15aよりも大径の中径部15bと、外径面が中径部15bよりも大径の大径部15cとを備える。
【0005】
そして、内側継手部材10の内径面には雌スプライン17が形成され、シャフト1の一方の端部に雄スプライン18が嵌入されて、雌スプライン17と雄スプライン18とが嵌合する。
【0006】
この等速自在継手2には、マウス部15の開口部を塞ぐブーツ20が装着される。ブーツ20は、大径部20aと、小径部20bと、大径部20aと小径部20bとを連結する蛇腹部20cとからなる。大径部20aが、マウス部15の開口部に外嵌されて、この状態でブーツバンド21にて締め付けられる。また、小径部20bがシャフト1のブーツ装着部22に外嵌され、この状態でブーツバンド21にて締め付けられる。
【0007】
また、他方の等速自在継手3は、円筒状内周面31に複数の直線状トラック溝32が軸方向に沿って形成された外側継手部材33と、球面状外周面34に複数の直線状トラック溝35が前記外側継手部材33のトラック溝32と対をなして軸方向に沿って形成された内側継手部材36と、前記外側継手部材33のトラック溝32と前記内側継手部材36のトラック溝35との間に介在してトルクを伝達する複数のボール37と、前記外側継手部材33の円筒状内周面31と内側継手部材36の球面状外周面34との間に介在してボール37を保持するケージ38とを備えたものである。
【0008】
外側継手部材33は、円筒状内周面31にトラック溝32が形成された筒状本体部39と、この筒状本体部39の一方の開口部側に設けられるフランジ部40とからなる。また、筒状本体部39の他方の開口部は、ブーツ41にて塞がれている。ブーツ41は、大径部41aと、小径部41bと、大径部41aと小径部41bとを連結する蛇腹部41cとからなる。大径部41aが、筒状本体部39の他方の開口部に外嵌されて、この状態でブーツバンド42にて締め付けられる。また、小径部41bがシャフト1のブーツ装着部43に外嵌され、この状態でブーツバンド42にて締め付けられる。
【0009】
そして、等速自在継手2,3には付属部品が付設される。等速自在継手2に付設される付属部品としては、ダストカバー等の金属環45やセンサロータ46等であり、等速自在継手3に付設される付属部品としては、シールプレート47である。
【0010】
金属環45は、図11に示すように、外側継手部材7の中径部15bに圧入(外嵌)される筒部45aを有し、センサロータ46は、図13に示すように、外側継手部材7の大径部15cに圧入(外嵌)される筒部46aを有する。また、シールプレート47は、図15に示すように、外側継手部材33の本体部39の一方の開口部に圧入(内嵌)される筒部47aと、この開口部を塞ぐ円盤状の本体部47bとを有する。
【0011】
金属環45としては、前記図11では、内径側の筒部45aと外径側の筒部45bとを有するものであったが、図12に示すように、外径側の筒部45bを有さないものもある。また、図13では、ABSリングを用いていたが、図14に示す磁気エンコーダ48を用いる場合もある。磁気エンコーダ49は、筒部49aを有する芯金50と、この芯金50の筒部49aの外径面に付設されたマグネット49bとを備える。
【0012】
前記したように、このような各付属部品はその筒部45a(46a、49a、47a)が等速自在継手に圧入されることによって、等速自在継手に付設される。しかしながら、このような付属部品を単に圧入するのみでは、抜けるおそれがある。
【0013】
そのため、従来には、ダストカバー等の金属環を圧入し易くするとともに、抜けにくくすることができる取付構造が提案され(特許文献1)、等速自在継手内部のグリースの漏洩を抑制するシールプレートの取付構造が提案されている(特許文献2)。
【0014】
前記特許文献1では、金属環の内周面を、圧入方向先端側から圧入方向後端側へテーパ状に縮径させたものである。これによって、金属環の引抜時に要する力を増大させることができるとともに、金属環の圧入時に要する力の増大を押えることができるようにしている。
【0015】
特許文献2では、取付部の内周面を、外方部材の一端開口部側に向かって漸次拡大するテーパ面をなし、取付部の内周面に圧入されたシールプレートの圧入部(短円筒部)の外径面が、前記取付部の内周面に対応したテーパ面をなすものである。これによって、テーパ面間に隙間が生じた場合であっても、その隙間に侵入したグリースを、継手回転時の遠心力によって、継手内部空間へと押し戻すことができ、グリースの漏洩を効果的に抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2009−162347号公報
【特許文献2】特開2009−58014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図11に示すように付属部品である金属環45を矢印A方向に圧入して行けば、金属環45の内表面から図17に示すようなバリ(糸バリ)48が発生するおそれがある。この場合、図16に示すように、外側継手部材7の中径部15b側から底壁部15a側へ矢印Bのように、飛び出すことになる。他の付属部品であっても、同様にバリ(糸バリ)48が発生し、また、前記特許文献1及び特許文献2に記載のものも同様にバリ(糸バリ)48が発生するおそれがある。なお、このような糸バリは、圧入部形状の改善により、発生度合を低減することができるが、製品全数において発生させない圧入部構造を確立することが困難である。
【0018】
このようなバリ48が形成されれば、このバリ48のために、動力伝達軸の動力伝達に支障をきたしたりする場合があり、圧入作業後にこのバリ48の除去作業を行う必要がある。このため、組立て作業効率の低下を招き、生産性に劣ることになっていた。
【0019】
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、圧入時に発生するバリ(糸バリ)の除去作業の必要がなく、生産効率の向上を図ることが可能な付属部品取付構造、このような付属部品取付構造を介して付属部品が付設されている等速自在継手、及び動力伝達軸を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の付属部品取付構造は、等速自在継手に付設される付属部品を等速自在継手に取り付けるための取付構造であって、前記等速自在継手の外側継手部材に圧入される筒部を備え、筒部の圧入によって生じるバリを圧入完了状態において覆い隠すバリ内包部が形成されるものである。
【0021】
本発明の付属部品取付構造によれば、バリ内包部にて、圧入によって生じるバリを覆い隠すことができ、圧入作業終了後のバリ除去作業を省略することができる。
【0022】
前記付属部品が前記等速自在継手の外側継手部材に外嵌されるダストカバーであって、バリ内包部は、前記筒部の圧入終端部から内径側に延びる内鍔部にて構成したものとできる。
【0023】
前記付属部品が前記等速自在継手の外側継手部材に外嵌されるセンサロータであって、バリ内包部は、前記筒部の圧入終端部から内径側に延びる内鍔部にて構成したものとできる。
【0024】
前記付属部品が等速自在継手の外側継手部材の開口部を塞ぐシールプレートであって、前記筒部は外側継手部材の開口部に内嵌され、バリ内包部は、筒部の圧入終端部から外径側に延びるフランジ部にて構成しものとできる。
【0025】
付属部品には表面処理が施されているのが好ましい。ここで、表面処理とはメッキ等であり、また、固体潤滑剤表面処理を行ってもよい。固体潤滑剤表面処理とは固体潤滑処理被膜を成形することであり、固体潤滑処理被膜とは、二硫化モリブデン、黒鉛(グラファイト)、フッ素樹脂(四フッ化エチレン等)、二硫化タングステン、金属酸化物などの固体潤滑剤を一種類または数種類、各種の有機樹脂に分散させ塗料状にし、これをコーティングして得られる乾燥被膜である。固体潤滑処理被膜は、耐摩耗性、耐熱性、耐腐食性に優れる。
【0026】
本発明の等速自在継手は、前記付属部品取付構造を用いて付属部品が付設されているものである。このため、付属部品が圧入によって装着されていても、圧入作業終了後のバリ除去作業を省略することができる。
【0027】
本発明の動力伝達軸は、シャフトと、シャフト両端部に装着される等速自在継手とを備えた動力伝達軸であって、前記付属部品取付構造を用いて付属部品が等速自在継手に付設されているものである。このため、付属部品が圧入によって装着されていても、圧入作業終了後のバリ除去作業を省略することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の付属部品取付構造では、圧入作業終了後のバリ除去作業を省略することができ、生産性の向上を図ることができ、しかも、バリの外部への流出を防止できる。このため、不良品発生率の低減を図ることができる。
【0029】
ダストカバー等の金属環、シールプレート、センサロータ等の種々の付属部品を等速自在継手に、バリを外部に流出させることなく付設することができる。また、表面処理を施すことよって、圧入時のバリの発生を抑えることができる。
【0030】
本発明の等速自在継手および動力伝達軸は、付属部品の圧入作業終了後のバリ除去作業を省略することができ、生産性に優れるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態を示す付属部品取付構造を用いて付属部品が装着されている動力伝達軸を示す断面図である。
【図2】ダストカバー等の金属環である付属部品が等速自在継手に装着されている状態の拡大図である。
【図3】前記図2に示す金属環の断面図である。
【図4】前記図2に示す金属環の要部拡大断面図である。
【図5】金属環の変形例を示す拡大断面図である。
【図6】センサロータである付属部品が等速自在継手に装着されている状態の拡大断面図である。
【図7】磁気エンコーダである付属部品が等速自在継手に装着されている状態の拡大断面図である。
【図8】シールプレートである付属部品が等速自在継手に装着されている状態の拡大断面図である。
【図9】他のシールプレートである付属部品が等速自在継手に装着されている状態の拡大断面図である。
【図10】従来の付属部品取付構造を用いて付属部品が装着されている動力伝達軸を示す断面図である。
【図11】従来の金属環である付属部品が等速自在継手に装着されている状態の拡大図である。
【図12】従来の他の金属環である付属部品が等速自在継手に装着されている状態の拡大図である。
【図13】従来のセンサロータである付属部品が等速自在継手に装着されている状態の拡大断面図である。
【図14】従来の磁気エンコーダである付属部品が等速自在継手に装着されている状態の拡大断面図である。
【図15】従来のシールプレートである付属部品が等速自在継手に装着されている状態の拡大断面図である。
【図16】従来の付属部品取付構造を用いた場合の課題説明図である。
【図17】従来の付属部品取付構造を用いた場合に形成されるバリを示す簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0033】
図1は本発明の付属部品取付を用いて複数の付属部品が装着されている状態の動力伝達軸を示す。動力伝達軸は、シャフト51と、シャフト両端部に装着される等速自在継手52,53とを備えたものである。この場合、一方の等速自在継手52は固定式等速自在継手であり、他方の等速自在継手53は摺動式等速自在継手である。
【0034】
等速自在継手52は、内径面55にトラック溝56が形成された外側継手部材57と、外径面58に外側継手部材57のトラック溝56と対をなす複数のトラック溝59が形成された内側継手部材60と、外側継手部材57のトラック溝56と内側継手部材60のトラック溝59との間に介在してトルクを伝達する複数のボール61と、外側継手部材57の内径面55と内側継手部材60の外径面58との間に介在してボール61を保持するケージ62とを備えている。
【0035】
外側継手部材57は、前記内径面55にトラック溝56が形成されるマウス部65と、このマウス部65の底壁部65aから突設されるステム部66からなる。マウス部65は、前記底壁部65aと、外径面が底壁部65aよりも大径の中径部65bと、外径面が中径部65bよりも大径の大径部65cとを備える。なお、大径部65aの開口側端部には外径側へ膨出する膨出部65dが設けられている。
【0036】
そして、内側継手部材60の内径面には雌スプライン67が形成され、シャフト51の一方に端部の雄スプライン68が嵌入されて、雌スプライン67と雄スプライン68とが嵌合する。
【0037】
この等速自在継手52には、マウス部65の開口部を塞ぐブーツ70が装着される。ブーツ70は、大径部70aと、小径部70bと、大径部70aと小径部70bとを連結する蛇腹部70cとからなる。大径部70aが、マウス部65の開口部に外嵌されて、この状態でブーツバンド71にて締め付けられる。また、小径部70bがシャフト51のブーツ装着部72に外嵌され、この状態でブーツバンド71にて締め付けられる。
【0038】
また、他方の等速自在継手53は、円筒状内周面81に複数の直線状トラック溝82が軸方向に沿って形成された外側継手部材83と、球面状外周面84に複数の直線状トラック溝85が前記外側継手部材83のトラック溝82と対をなして軸方向に沿って形成された内側継手部材86と、前記外側継手部材83のトラック溝82と前記内側継手部材86のトラック溝85との間に介在してトルクを伝達する複数のボール87と、前記外側継手部材83の円筒状内周面81と内側継手部材86の球面状外周面84との間に介在してボール87を保持するケージ88とを備えたものである。
【0039】
外側継手部材83は、円筒状内周面81にトラック溝82が形成された筒状本体部89と、この筒状本体部89の一方の開口部側に設けられるフランジ部90とからなる。また、筒状本体部89の他方の開口部は、ブーツ91にて塞がれている。ブーツ91は、大径部91aと、小径部91bと、大径部91aと小径部91bとを連結する蛇腹部91cとからなる。大径部91aが、筒状本体部89の他方の開口部に外嵌されて、この状態でブーツバンド92にて締め付けられる。また、小径部91bがシャフト51のブーツ装着部93に外嵌され、この状態でブーツバンド92にて締め付けられる。
【0040】
そして、等速自在継手2,3には付属部品S1が付設される。等速自在継手2に付設される付属部品S1としては、ダストカバー等の金属環95やセンサロータ96等であり、等速自在継手3に付設される付属部品S1としては、シールプレート97である。
【0041】
金属環95は、図2から図4に示すように、外側継手部材57の中径部65bに圧入(外嵌)される軸方向短寸の筒部95aと、この筒部95aよりも外径側に連設部95dを介して配設される筒部95bとを有し、圧入によって生じるバリ98を、圧入完了状態において覆い隠すバリ内包部100が形成される。
【0042】
この場合、筒部95aの圧入終端縁部から内径側へ延びる内鍔部95cが形成される。また、外側継手部材57の底壁部66a外径面と中径部66bの外径面との間に、中径部66b側から底壁部66aに向かって縮径するテーパ部101が設けられている。そして、内鍔部95cは、その内径端がテーパ部101の底壁部66a側の最小径部位101aよりも内径側に位置する。このため、図2や図4に示すような圧入状態では、テーパ部101と、内鍔部95cと、筒部95aの内鍔部側の端部とでもって空間部102が形成され、この空間部102にバリ98が収容される。すなわち、内鍔部95cを形成することによって、バリ98を覆い隠すバリ内包部100を構成することになる。
【0043】
次にこの金属環95を等速自在継手52の外側継手部材57に装着(圧入)する方法を説明する。この場合、金属環95の筒部95aを、連結部95d側を圧入開始側としてステム部66側から外側継手部材57の中径部65bに圧入していく。これによって、金属環95の筒部95aの内径面(内周面)からバリ(糸バリ)98が生じることになる。
【0044】
このように生じたバリ98は、金属環95が圧入されるに従ってテーパ部101側へ押し出される。そして、内鍔部95cが底壁部65aとテーパ部101との間の段差部103に当接した圧入完了状態で、空間部102にバリ98が収納されることになる。
【0045】
本発明の付属部品取付構造では、バリ内包部100にて、圧入によって生じるバリ98を覆い隠すことができ、圧入作業終了後のバリ除去作業を省略することができる。従って、圧入作業終了後のバリ除去作業を省略することができ、生産性の向上を図ることができ、しかも、バリの外部への流出を防止できる。このため、不良品発生率の低減を図ることができる。
【0046】
図5は金属環95の変形例を示し、この金属環95は、図12の従来の金属環に対応するものである。このため、この金属環95は、筒部95aと、この筒部95aの外径側に連結部95dを介して配設される筒部95bと、筒部95aの圧入終端縁部から内径側へ延びる内鍔部95cと、筒部95bの端部から外径側へ延びるフランジ部95eとを備える。
【0047】
このような金属環95であっても、圧入によって生じるバリ98を、圧入完了状態において覆い隠すバリ内包部100が形成される。このため、前記図2〜図4等に示す取付構造と同様に作用効果を奏する。
【0048】
センサロータ96は、図6に示すように、その筒部96aの圧入終端縁に内径側に延びる内鍔部96cを有するものである。このため、内鍔部96cを形成することによって、バリ98を覆い隠すバリ内包部100を構成することになる。なお、このセンサロータ96は、筒部96aの外径側にくし歯96bが設けられている。
【0049】
図6に示すセンサロータ96に代えて図7に示すような磁気エンコーダ99を用いてもよい。この磁気エンコーダ99は、筒部99aを有する芯金105と、この芯金105の筒部99aの外径面に付設されたマグネット106とを備える。そして、この筒部99aの圧入終端縁部から内径側へ内鍔部99cが延びている。このため、内鍔部99cを形成することによって、バリ98を覆い隠すバリ内包部100を構成することになる。従って、センサロータ96であっても、磁気エンコーダ99であっても、前記図2〜図4等に示す取付構造と同様の作用効果を奏する。なお、このセンサロータ96及び磁気エンコーダ99は、反内鍔部96c、99c側を圧入開始側としてステム部66側から外側継手部材57の大径部65cに圧入(外嵌)することになる。
【0050】
シールプレート97は、図8に示すように、外側継手部材83の反ブーツ側の開口部に圧入される軸方向短寸の筒部97aと、この筒部97aの内径側に連設部97dを介して配設される内側の筒部97bと、筒部97aの圧入終端縁から外径側へ延びるフランジ部97cと、筒部97bの軸方向端縁部に連設される円盤状の本体部97eとからなる。
【0051】
また、外側継手部材83の筒状本体部89の反ブーツ側の開口部内径面89aと、フランジ部90の外端面90aとの間のコーナ部には、テーパ部108が設けられている。フランジ部97cは、その外径端がテーパ部108の最大径部位108aよりも外径側に位置する。このため、図1や図8に示すような圧入状態では、テーパ部108と、フランジ部97cと、筒部97aのフランジ部側の端部とで、もって空間部109が形成され、この空間部109にバリ98が収容される。そのため、フランジ部97cを形成することによって、バリ98を覆い隠すバリ内包部100を構成することになる。なお、この外側継手部材83のブーツ側開口部には、リング材からなる抜け止め94が装着されている。この抜け止め94は、内側継手部材86とボール87とケージ88等で構成される内部部品の外側継手部材83からの抜けを規制している。
【0052】
次にこのシールプレート97を等速自在継手53の外側継手部材83に装着(圧入)する方法を説明する。この場合、シールプレート97の筒部97aを、反ブーツ側からその外側継手部材83の開口部に圧入していく。これによって、シールプレート97の筒部97aの外径面(外周面)からバリ(糸バリ)98が生じることになる。
【0053】
このように生じたバリ98は、シールプレート97が圧入されるに従ってテーパ部108側へ押し出される。そして、フランジ部97cがフランジ部90の外端面90aに当接した圧入完了状態で、空間部109にバリ98が収納されることになる。このため、バリ内包部100にて、圧入によって生じるバリ98を覆い隠すことができ、圧入作業終了後のバリ除去作業を省略することができる。従って、圧入作業終了後のバリ除去作業を省略することができ、生産性の向上を図ることができ、しかも、バリの外部への流出を防止できる。このため、不良品発生率の低減を図ることができる。
【0054】
次に、図9はシールプレート97の変形例を示し、この場合、シールプレート97は、筒部97aと、この筒部97aの圧入始端縁部に連設される円盤状の本体部97eと、筒部97aの圧入終端縁部から外径側へ伸びるフランジ部97cとからなる。
【0055】
このため、フランジ部97cと、筒部97aのフランジ部側の端部とで、バリ98を覆い隠すバリ内包部100を構成することになり、前記図8に示すシールプレート97と同様の作用効果を奏する。
【0056】
前記付属部品S1(金属環95、センサロータ96、磁気エンコーダ99、及びシールプレート97)において、表面処理を施してもよい。ここで、表面処理とはメッキ等であり、また、固体潤滑剤表面処理を行ってもよい。固体潤滑剤表面処理とは固体潤滑処理被膜を成形することであり、固体潤滑処理被膜とは、二硫化モリブデン、黒鉛(グラファイト)、フッ素樹脂(四フッ化エチレン等)、二硫化タングステン、金属酸化物などの固体潤滑剤を一種類または数種類、各種の有機樹脂に分散させ塗料状にし、これをコーティングして得られる乾燥被膜である。固体潤滑処理被膜は、耐摩耗性、耐熱性、耐腐食性に優れる。このように、表面処理を施すことよって、圧入時のバリの発生を抑えることができる。
【0057】
本発明の等速自在継手および動力伝達軸は、付属部品S1の圧入作業終了後のバリ除去作業を省略することができ、生産性に優れるものとなる。
【0058】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、動力伝達軸における固定式等速自在継手として、前記実施形態のようなバーフィールドタイプに限らず、アンダーカットフリータイプ等の固定式等速自在継手であってもよい。また、摺動式等速自在継手として、ダブルオフセットタイプに限らず、トリポードタイプやクロスグルーブタイプ等の摺動式等速自在継手であってもよい。
【0059】
前記実施形態では、金属環やセンサロータ等の円筒部の内径面(内周面)は軸方向に沿うものであるが、圧入方向開始端側から圧入方向終端に向かって拡開するようなテーパ面であってもよい。また、シールプレートの円筒部の内径面(内周面)を、反ブーツ側に向かって縮径するようなテーパ面であってもよい。
【0060】
付属部品S1としてもダスタカバー、センサロータ、シールプレート等に限るものではない。すなわち、付属部品S1としては筒部を有し、筒部が等速自在継手52(53)に圧入されるものであればよい。また、付属部品S1の材質としては、筒部を等速自在継手52(53)に圧入できるものであればよいので、等速自在継手52(53)に応じて、その付属部品S1としての機能を発揮できる範囲で種々選択できる。
【0061】
表面処理を施す場合、付属部品S1に用いる材質等に応じて種々選択でき、また、付属部品S1全体に施すものであっても、筒部の圧入面(内径面又は外径面)のみに施すものであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
51 シャフト
52,53 等速自在継手
57 外側継手部材
83 外側継手部材
95a 筒部
95 金属環
96 センサロータ
96a 筒部
97 シールプレート
97a 筒部
98 バリ
99 磁気エンコーダ
99a 筒部
100 バリ内包部
S1 付属部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
等速自在継手に付設される付属部品を等速自在継手に取り付けるための取付構造であって、
前記等速自在継手の外側継手部材に圧入される筒部を備え、筒部の圧入によって生じるバリを圧入完了状態において覆い隠すバリ内包部が形成されることを特徴とする付属部品取付構造。
【請求項2】
前記付属部品が前記等速自在継手の外側継手部材に外嵌されるダストカバーであって、バリ内包部は、前記筒部の圧入終端部から内径側に延びる内鍔部にて構成したことを特徴とする請求項1に記載の付属部品取付構造。
【請求項3】
前記付属部品が前記等速自在継手の外側継手部材に外嵌されるセンサロータであって、バリ内包部は、前記筒部の圧入終端部から内径側に延びる内鍔部にて構成したことを特徴とする請求項1に記載の付属部品取付構造。
【請求項4】
前記付属部品が等速自在継手の外側継手部材の開口部を塞ぐシールプレートであって、前記筒部は外側継手部材の開口部に内嵌され、バリ内包部は、筒部の圧入終端部から外径側に延びるフランジ部にて構成したことを特徴とする請求項1に記載の付属部品取付構造。
【請求項5】
前記付属部品には表面処理が施されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の付属部品取付構造。
【請求項6】
前記請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の付属部品取付構造を用いて付属部品が付設されている等速自在継手。
【請求項7】
シャフトと、シャフト両端部に装着される等速自在継手とを備えた動力伝達軸であって、前記請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の付属部品取付構造を用いて付属部品が前記等速自在継手に付設されていることを特徴とする動力伝達軸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−102805(P2012−102805A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252044(P2010−252044)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)