説明

付着細胞のエレクトロポレーションのためのディスク表面の使用

細胞上の環状スペース内にトランスフェクト種を含有する緩衝溶液を入れ、そして電極間に電位を印加することにより、円筒間の環状スペースの両側の対向する表面上に電極を有する同軸的な円筒間でエレクトロポレーションを行うことによって、ディスクの表面上の付着細胞がトランスフェクトされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスフェクション、つまり、外来分子種を膜構造内に挿入する方法であって、構造が種の溶液と接触している間に膜を一次的に透過性にし、これにより種が膜を通過するのを可能にし、そして、処置が完了した後には構造が生存能力を回復するようにこのことを行うことによる、外来分子種を膜構造内に挿入する方法の分野にある。
【背景技術】
【0002】
親水性種又は膜非透過性種を含む外来種を生体細胞中に導入することは、特定の生物学的及び生化学的な技術において利用されている。高効率トランスフェクションは、外来種が高い比率の細胞に進入しているか又は個体群が処理されるようになっており、そして細胞の生存能力が一貫して維持されているか又は処置後に回復されているようなトランスフェクションである。種々のトランスフェクション技術のうち、膜透過化のためのエネルギー源として電界を利用するエレクトロポレーションが、最も注目を集めている。緩衝溶液中に懸濁された細胞、及び付着細胞、すなわち、しばしば細胞が成長させられている表面である固体表面上に固定化された細胞の両方において実施されている。高い効率を達成することは、全てのエレクトロポレーション形態において継続的な課題であり、付着細胞のエレクトロポレーションにおいてはなおさらこれが当てはまる。付着細胞のエレクトロポレーションの開示は、下記刊行済の文書に見いだされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,897,069号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0155016号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0115015号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/070510号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0029240号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0148524号明細書
【特許文献7】米国特許第6,261,815号明細書
【特許文献8】米国特許第5,964,726号明細書
【特許文献9】米国特許第5,134,070号明細書
【特許文献10】米国特許第6,001,617号明細書
【0004】
上記リスト中の文書は、トランスフェクションの効率及び均一性を改善する種々様々なアプローチを提供しているが、これらの質は依然として判りにくく、継続的な目標である。
【発明の概要】
【0005】
本発明に従ってトランスフェクトされようとする細胞は、円形ディスクの実質的に平らな表面上の、ディスクの周縁と、周縁より内側の、周縁と同心的な内側円との間の領域内で成長させられるか、又は固定化される。細胞はこうして平らなリングの表面を占有する。凸面状の外向きの表面上に電極又は電極列の形態を成す電極材料を有し、また内側円の直径以下の直径を有する円筒が、内側電極として役立つ。凹面状の内面上に電極又は電極列の形態を成す電極材料を有する第2の中空円筒が、外側電極として役立つために、ディスクの周縁を取り囲んでいる。細胞に進入することになる、本明細書中で「トランスフェクト種」と呼ばれる外来種の溶液は、容器内に保持される。この容器は、溶液中に浸漬されたディスク表面とともに、ディスクと電極との両方を受容するのに十分に大きい。外側電極を支持する円筒はそれ自体、容器として役立つことができ、外側電極は容器の内向きの表面上に設けられている。形態がいかなるものであれ、2つの電極(又は電極列)、内側及び外側電極は、細胞がディスク表面における一平面内に位置し、そして内側電極及び外側電極の双方がこの平面を横断するように、容器内で支持される。内側及び外側電極が存在する円筒面は、共通の円筒軸を有する同軸的な円筒を形成し、また細胞が配置されたディスク表面は、この軸に対して横方向、好ましくは垂直方向である。こうして電極は活性化されると、平らなリングの表面を横切る電界を生成し、表面上の細胞を電界に曝露する。
【0006】
内側電極材料は、円筒形支持体の外向きの表面上に存在しており、本発明の或る実施態様の場合、ディスクと、表面上に内側電極を有するこの円筒形支持体とは、一体的な部材を形成するように堅く接合されている。他の実施態様において、ディスクと内側円筒は装置の別々の構成部分であり、内側円筒の存在なしに細胞がディスク表面上で成長するのを可能にする。ディスクが内側円筒と一体化されているか又は別々であるかとは無関係に、装置外部でディスク表面上で細胞を成長させることができるように、ディスクを外側円筒から容易に取り外し可能であることが好ましい。外側円筒から取り外し可能なディスクは、別のディスク上の細胞にエレクトロポレーションを施している間に、細胞を1つのディスク上で成長させるか又は1つのディスクに付着させるのを可能にすることによって、処理に柔軟性及び効率を提供する。ディスクは、細胞をディスク表面上で成長させている間に、ディスク、又は2つ又は3つ以上のディスクが回転させられるのを可能にする容器内に配置することができる。回転は、周りの成長培地を攪拌し、これにより、培地中の栄養素、及び細胞成長を促進するガスへの細胞の接近性を改善する。本発明の或る実施態様の場合、ディスクは、エレクトロポレーション中に、エレクトロポレーション・チャンバ(すなわち外側円筒)内部で回転させることもできる。
【0007】
或る実施態様においても、内側円筒の外壁上の電極材料、すなわち内側電極は、内側円筒の全周にわたって延びることによって連続的なライニングを形成しているのに対して、他の実施態様では、この電極材料は、周囲上の所定の点、又は周囲の比較的に短いセグメントに沿って、好ましくは均一の間隔を置いて、内側円筒の表面に固定されたパッチ又は狭幅のストリップを形成する。同様に、他の電極を形成する電極材料も、外側円筒の全周にわたって延びる連続的なライニング、パッチ、又はストリップ、又は一連のパッチ又はストリップであって、これにより内側円筒上の電極材料に対応する。電極のうちの少なくとも1つがそれぞれの円筒の全周にわたって連続しない場合には、好ましい実施態様におけるディスクは、両円筒に対して回転可能であるように構成され、これにより、ディスク表面のセグメントが、順次電極間の空間内に配置されるのを可能する。
【0008】
本発明の或る実施態様の場合、ディスクの内縁と内側電極との間、又はディスクの外縁と外側電極との間、又はその両方に小さなギャップが維持される。ギャップはこれが存在すると、ディスクの縁部における電界異常の形成を回避することになる。内側電極と外側電極とは好ましくは、ディスク表面の上方及び下方の両方に延びている。使用方法において、両電極が溶液と電気的に接触した状態で、また付着細胞が溶液中に浸漬された状態で、外来種を含有する緩衝溶液が、外側円筒によって形成された円筒形容器内に入れられる。溶液はこうして、細胞が存在するディスク表面の上方に延び、細胞の上方には浅い液体深さしか必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1aは、本発明において使用される一体型ディスク・内側円筒とを示す側面図である。図1bは、図1aの一体化型ディスク・内側円筒とを示す頂面図である。
【図2】図2は、図1a及び図1bの一体化型ディスク・内側円筒とを有する容器を、ディスクと内側円筒とが容器内部に配置されており、またディスク表面をトランスフェクト種の溶液が覆っている状態で示す断面図である。
【図3】図3aは、本発明において使用するための別のディスクを示す頂面図である。図3bは、図3aのディスクを示す縦断面図である。
【図4】図4は、図3a及び3bのディスクを有する容器を、トランスフェクト種の溶液中の内側円筒と一緒に示す断面図である。
【図5】図5は、図3a及び3bに示されたタイプのいくつかのディスク上で細胞を成長させるための容器を示す概略図である。
【図6】図6は、やはり本発明の範囲に含まれる、別の電極装置を含有する内側及び外側円筒の組み合わせを示す頂面図である。
【図7】図7は、図6の電極に対応する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、いかなる特定のサイズ及びサイズ範囲のディスクにも制限されない。とはいえ、2つの円筒面間の、付着細胞が存在する環状領域の幅を、ディスクの外径と比較して小さく形成することによって、電極がそれぞれの円筒の周面を巡って完全に延びている場合、電極によって形成された電界の強度が細胞領域全体にわたって半径方向で最小限にしか変化しないようにすることが好ましい。この形状のディスク及び電極を用いると、ディスク表面に付着する全ての細胞は、均一に近い電界強度、又は少なくとも、ディスク中心に向かう領域内で急勾配を含むことのない電界強度を被ることになる。このような考えを念頭に置くと、外縁の直径に対する内縁の直径の比は、好ましくは約0.2〜約0.95の範囲内、より好ましくは約0.3〜約0.9の範囲内、そして最も好ましくは約0.5〜約0.8の範囲内にある。ディスクの縁部と隣接円筒との間にギャップが存在する場合、ギャップは、使用者がディスク、内側円筒、又は一体型ディスク・内側円筒を、外側円筒内に容易に挿入し、そして所望の場合にはこれを取り外すのを可能にするための空間を提供することになる。しかしながらギャップは、可能な限り幅広のディスクを収容し、ひいては細胞のトランスフェクションのために電極間の距離を最大限に利用するのに十分に小さいことが望ましい。大抵の場合、約30ミクロン〜約3mmの範囲内、より好ましくは約100ミクロン〜約1mmの範囲内のギャップ幅が有用となる。ディスク上の環状領域の幅を横切って互いに対面する電極間の距離は、トランスフェクトされようとする細胞の必要性とともに変化することができるものの、最良の結果は大抵の場合、約0.3cm〜約10cmの範囲の距離で得られることになる。
【0011】
ディスク表面は、細胞のための固定化支持体として役立つすることができる任意の材料から製作することができる。生体細胞の場合、好適な材料の例は、グラス、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリビニル、ポリエチレン、及びポリプロピレンである。膜をベースとする細胞培養において使用される多孔質膜を使用することもできる。その例は、親水性ポリ(テトラフルオロエチレン)、セルロースエステル、ポリカーボネート、及びポリエチレンテレフタレートの膜である。さもなければ可撓性である膜は、この膜を剛性材料、例えば剛性スクリーン又はガラス又はポリマーディスク上に配置することによって、平らに維持することができる。表面の組成にかかわりなく、表面に対する細胞の付着は、細胞が表面上に成長させられたときの内生的付着、並びに免疫学的結合又はアフィニティ型結合、静電吸引、又は共有結合を介した付着を含むコンベンショナルな手段によって達成することができる。
【0012】
電極は、エレクトロポレーションにおいて従来より使用される電極材料から形成することができる。内部電極は、中実な電極材料又は中空電極材料から成っていてよい内側円筒全体を形成することができ、そして外部電極も同様に、リングと内側電極と緩衝溶液とが保持されたチャンバの側壁全体を形成することができる。或いは、内側電極及び外側電極のいずれか又は両方を、表面層、パッチ、又はストリップとして電気絶縁材料上に形成することもできる。例えば、電気絶縁円筒コアの外面を金属材料でめっきすることにより、内側電極を形成することができ、そして絶縁シェルの内面を同様に金属材料でめっきすることにより、外側電極を形成することができる。
【0013】
使用中、ディスクは装置内でセンタリングされることになる。外側円筒から取り外し可能であり、そしてディスクの外縁と外側円筒との間にギャップを残すディスク及び一体型ディスク・円筒ユニットの場合、センタリングは種々の構成要件のいずれかによって達成することができる。センタリング構成要件の一例は、外側円筒によって形成されたチャンバの床部に設けられた凹みと嵌合するための、ディスクの下面の隆起部、又は一般に突起である。ディスクが内側円筒と一体化されている場合には、内側円筒の下面に突起をセンタリングすることができる。或いは、突起は、チャンバの床部から上方に向かって延びることにより、内側円筒の下面に設けられた凹みと嵌合することができる。ディスクが内側円筒に接合されていない場合には、ディスクの中心開口を除くディスクの下面に2つ又は3つ以上の突起又は凹みを配列することができる。更なる別の実施態様としては、相補的な溝(又は畝)と嵌合された単一の円形の畝(又は円形の溝)が、同じ機能を果たすことになる。図面に示され下で説明されるものを含め、さらに別の変更形も容易に明らかである。
【0014】
ディスクとは独立して、又は取り付けられたディスクと一緒に、内側円筒自体をセンタリングすることも、本発明の或る実施態様において同様に有益である。内側円筒がディスクと一体化されている場合には、上記センタリング構成要件が目的を果たすことになり、また円筒とディスクとが別々である場合には、円筒は、チャンバの頂部から、センタリング構成要件によって支持することができる。チャンバの床部内に一体化され、そしてディスク、内側円筒、又はその両方と係合するセンタリング構成要件の更なる例は、一方の部分に設けられた磁石と、他方の部分に設けられた鉄金属又は他の磁気応答材料から成る対面挿入体である。このように、磁石をチャンバの床部内に結合するか又はチャンバ成形時に床部内に組み込むことにより、ディスク又は内側円筒の下面に沿って設けられた磁気応答金属から成るビード、ボール、又はチップを引きつけることができる。或いはその逆も同様である。下で明らかになるように、或る実施態様では、ディスクが内側円筒に取り付けられる場合に、ディスク又は内側円筒の基部から延びる隆起部内に磁石又は磁気活性材料を含むことにより、更なる有用性及び有益性を得ることができる。センタリング構成要件のさらに別の例は、内側円筒、外側円筒、又はその両方から延びる支持ブラケット、フランジ、又はショルダである。
【0015】
本発明の実施において、ディスクとディスク表面に付着する細胞とに接触するようにチャンバ内部に入れられる溶液の量はさほど重大ではなく、本発明の利点は、細胞上の極めて薄い又は浅い溶液層を使用し、ひいては細胞上及び細胞の周りの電界を濃縮するのを可能にすることである。細胞を覆うのにかろうじて十分な量の溶液を使用することができ、また一般には、細胞上方の深さは、約0.5mm〜約5mmとなることが好ましい。
【0016】
本発明によってトランスフェクトすることができる生体細胞は、ディスク表面上で成長させられ、表面に自然に付着するもの、及び、その付着力が、細胞又は表面に結合される細胞接着分子によって促進されるものを含む。全てのこのような細胞は「付着細胞」と呼ばれる。付着細胞の例は、神経細胞、神経幹細胞、間葉幹細胞、膵臓細胞、骨格筋細胞、心筋細胞、肝臓又は肝臓由来細胞、例えば初代肝細胞、肝上皮細胞、HepG2細胞、及び肝細胞癌由来細胞である。本発明によって細胞内に挿入されるべきトランスフェクト種の例は、DNA、RNA、プラスミド、及び遺伝子及び遺伝子フラグメントを含む核酸、並びに、タンパク質、医薬、及び酵素補因子である。更なる例も当業者には明らかである。
【0017】
本発明を定義する特徴は、種々様々な構造及び手順で実施することができるが、全体としての本発明は、図面に示したような或る特定の実施態様を詳細に検討することにより、最良に理解することができる。
【0018】
図1a及び1bは、一体型ディスク・内側円筒11の2種の図であり、図1aは構成部分を側方から示しており、また図1bは頂面図である。ディスク12は、内側では円筒14によって、そして外側では円形周縁15によって仕切られた平らな上面13を有しており、円筒14と周縁15とは同心的又は同軸的である。円筒14は、連続的な電極材料から形成されているか、又は非電極材料コアとその外面上の電極材料層とから形成されており、いずれの場合にも電極材料と電源(図示せず)との間に適切な電気的接続が形成されている。円筒14の下面の中心から下方に向かって隆起部16が延びており、隆起部16はこれらの図面には小さな円筒として示されているが、しかし半球体を含む種々の他の形状を想定することもできる。隆起部16はセンタリング構成要件であり、図2に示された外側円筒によって形成されたチャンバの床部内に設けられた相補的形状の凹部と嵌合する。センタリング構成要件は下で論じるように、磁石又は磁気応答金属を含むこともできる。ノブ16は、回路を完結するための凹部内の電気的コンタクトと一緒に、電極へ給電する電気的接続部として役立つこともできる。
【0019】
図2は、図1a及び1bの一体型ディスク・内側円筒11を、チャンバ21の内側に位置する状態で示している。断面で示されたチャンバ21は、円筒側壁22と平らな基部23とから形成されており、この具体例では頂部が開いている。電極材料は円筒側壁22全体、又は円筒の内面24上の層を形成しており、電極材料と電源との間には適切な電気的接続が形成されている。円筒壁22及びディスク12の寸法は、側壁の内面24とディスクの外縁15との間に小さなギャップ25が存在するように設定されている。中央ユニット、すなわち一体型ディスク・内側円筒はこうして、容易にチャンバ内に挿入してチャンバから容易に取り外すことができ、また少なくともディスクの外縁における電界異常が回避される。図2に示された構造において、図1a及び1bの円筒形隆起部16の代わりに、半球形隆起部26が設けられており、この半球形隆起部は、チャンバの平らなベース23内に形成された半球形凹部内に嵌合している。外来分子種が挿入されることになっている細胞28は、リング12の上面に付着し、そして外来種を含有する溶液29は細胞を覆う。安定化を目的として、隆起部26は磁気応答材料を含有しており、そしてチャンバの下面に、取り外し可能な支持体、例えばスライド・ストリップを介して磁石31が取り付けられている。
【0020】
図3a及び3bは、内側円筒とは分離している別のタイプのディスク32を示している。図3aは、ディスクの頂面図であり、そして図3bは側方断面図である。細胞が付着するこのディスクの表面33は、前の図面におけるディスクの表面と同じ形状又は類似の形状であるが、しかし図3a及び3bのディスクは、その露出した外縁又は周縁35に加えて、露出した内縁又はリム34を有しており、内縁は中心開口36を取り囲んでいる。半球形隆起部37の形態のセンタリング構成要件は、ディスクから下方に向かって延びるブラケット38から突出している。ブラケット38は、中空半球体として示されているが、しかし、籠型構造又は一連の湾曲スポークであってもよい。
【0021】
図4は、チャンバ41内に挿入された図3a及び3bのディスク32を示している。図2のチャンバ21と同様の構造において、同じように断面で示された図4のチャンバ41は、円筒側壁42及び平らな基部43を有しており、基部に設けられた凹部44は、ディスク・ブラケット38から突出する隆起部37に対して輪郭が相補的であり、また側壁の内面には電極層45が設けられている。円筒側壁42の頂部に載置された蓋47に、内側円筒電極46が取り付けられており、内側円筒電極46はチャンバ内部内に、そしてディスク32の中心開口36を通って延びている。中心開口36は、内側円筒とディスクとの間に小さなギャップ48を残すのに十分に広い。ギャップ48は、内側円筒46の容易な挿入及び取り外しを可能にし、またディスクの内縁における電界異常を低減又は排除する。
【0022】
図1a、1b、2、3a、3b及び4のそれぞれは、ディスクに取り付けられた隆起部を示している。ノブが磁化されるか又は磁気応答材料を含有している場合、ディスクは、チャンバ内又は別個の容器内で、モータ作動式回転磁石によって回転させることができる。成長培地を含有する別個の容器内でディスクを回転させると、ディスク表面上の細胞の成長を促進する手段が提供される。このような容器の一例が図5に示されている。図5の容器51は、いくつかのディスク52、又はディスクが一体化された円筒から成るいくつかのユニットを収容している。容器51は、液体栄養培地53を充填されており、そして栄養ガス源、例えば二酸炭素を含有している。容器の床部55の下には、それぞれ磁気部材57を有する一連の回転モータ56がある。回転モータによって形成される回転磁界は、突出する磁気隆起部を磁界内に有するディスクの回転を引き起こす。回転は、培地53中の栄養素への、そしてガス54へのディスク表面上の細胞の接近性を向上させる。
【0023】
前の図における電極のそれぞれは円筒面の全周を、この面が内側円筒の外面であれチャンバ壁の内面であれ、覆っている。図6は、不連続電極列が内側及び外側両方の電極に対して使用されている装置の一例であり、各個々の列における電極は、列が形成されている円筒の全周にわたって、それぞれの列内で均一な間隔を置いて分配されている。頂面図において、図6は内側円筒61と外側円筒62とを示している。外側円筒62の外面には第1のストリップ電極列63が固定されている一方、内側円筒61の外面には、第2のストリップ電極列64が固定されている。2つの列は相補的であり、2つの円筒間の空間を横切って互いに対面する電極対を一緒に形成する。ディスクは示されていないが、その構造及びセンタリング手段は、前の図面に示されたものと同じであってよい。
【0024】
図6の装置において、電極に全て同時に通電又はパルス化を施すか、或いは対向電極対にディスクの周りで順次通電することもできる。対に個々に通電する場合には、結果としての電界は、ディスク表面の楔状セグメントを占有する細胞上に広がることになる。電極を制御するための回路が図7に示されており、図7ではただ3つの電極対63a/64a、63b/64b、63c/64cのための回路接続だけが、便宜上示されており、残りの接続も明らかである。コントローラ71が、個々の電極対に対応する一連のバイポーラ・トランジスタ対72/72’、73/73’、74/74’を、選択されたプロトコルに従って制御する。一連の電極対の代わりに、単一の電極対、すなわち図6に示された対向ストリップ電極を一対設けることもでき、そしてチャンバ内に回転メカニズムを組み込むことにより、ディスク表面の連続するセグメントを電界パルスに曝露するようにディスクを徐々に回転させることもできる。
【0025】
添付の特許請求の範囲において、用語「a」又は「an」は「1つ又は2つ以上」を意味するものとする。「含む」という用語及びその変化形、例えば「含んでいる」は、工程又は要素の列挙に先行するときには、更なる工程又は要素の付加が任意でありしかも排除されないことを意味するものである。本明細書に引用された全ての特許明細書、特許出願明細書、及び刊行済の参考試料の全体を参考のため本明細書中に引用する。本明細書中に引用された参考資料と、本明細書の明示的な教示内容とのいかなる不一致も、本明細書中の教示内容を優先して解消されるものとする。このことは、当業者には明らかな語又は語句の定義と、本明細書中に明示された同じ語又は語句の定義とのいかなる不一致をも含む。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着生体細胞のトランスフェクションのための装置であって、前記装置が、円形ディスクと、容器と、円筒部材と、支持手段と、印加手段とを含んでおり、
該円形ディスクは、ディスク直径と、前記細胞が付着する実質的な平らな表面とを有しており;
該容器は、溶液を保持するように、そして前記溶液中に前記平らな表面が浸漬された状態で前記円形ディスクを受容するようにサイズ設定されており、前記容器は、前記ディスク直径と少なくとも同じ大きさの直径を有する第1円筒を形成する内向きの表面を有していて、前記内向きの表面上には、外側電極を形成するために電極材料が設けられており;
該円筒部材は、前記円形ディスクの直径よりもかなり小さい直径と、第2円筒を形成する外向きの表面とを有しており、前記外向きの表面上には、内側電極を形成するために電極材料が設けられており;
前記支持手段は、前記外側電極と前記内側電極との双方が、前記平らな表面上に付着した細胞が存在する平面を横断するように、前記容器内部で前記円形ディスクと前記円筒部材とを支持するための手段であり;
前記印加手段が、該外側電極と内側電極との間に電位を印加するための手段である、
付着生体細胞のトランスフェクションのための装置。
【請求項2】
さらに、前記ディスク及び前記円筒部材を前記容器内部でセンタリングする手段を含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記容器が床部を有しており、そして前記ディスクをセンタリングする前記手段が、前記床部に設けられた凹部と嵌合する、前記ディスクの一方の側から延びる突起を含んでいる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記容器が床部を有しており、そして前記ディスクをセンタリングする前記手段が、前記ディスク及び前記床部のうちの一方に設けられた磁石と、前記ディスク及び前記床部のうちの他方に設けられた磁気応答挿入体とを含んでいる、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記円筒部材と前記ディスクとが互いに堅く接合されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ディスクと前記円筒部材とが互いに結合されておらず、そして前記ディスクは、前記円筒部材を受容するのに十分に広い、内側リムで終わっている中心円形開口を有している一方、前記円筒部材及び前記リムの周りにギャップを残す、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記円筒部材が、前記容器を覆う取り外し可能な蓋に固定されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記中心開口の直径が、前記ディスク直径の約0.3倍〜約0.9倍である、請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記外側電極が、前記内向きの表面の周囲を巡って連続的に延びるライニングである、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記内側電極が、前記外向きの表面の周囲を巡って連続的に延びるライニングである、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記容器の前記内向きの表面上の前記電極材料は、前記内向きの表面の周囲を巡って分配された第1の不連続電極列であり、そして前記円筒部材の前記外向きの表面上の前記電極材料は、前記外向きの表面の周囲を巡って分配された第2の不連続電極列である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
さらに、前記ディスクを回転させる手段を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記ディスクを回転させる前記手段が回転磁石である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
生体細胞をトランスフェクト種でトランスフェクトする方法であって、前記方法は:
実質的に平らな円形ディスクの表面上に前記細胞を固定化し;
こうして固定化された前記細胞を、共通の円筒軸を有する同軸的な円筒を形成する凸面状の内側円筒面及び凹面状の外側円筒面上の電極間に、前記円形ディスクの前記表面が前記軸に対して横方向である状態で配置し;そして
前記細胞がこのように配置されて前記トランスフェクト種の溶液中に浸漬された状態で、そして前記電極が前記溶液と接触している状態で、
前記内側円筒面及び外側円筒面上の前記電極間に、前記固定化された細胞のトランスフェクションを達成するのに十分な電位を印加する
ことを含む
生体細胞をトランスフェクト種でトランスフェクトする方法。
【請求項15】
前記凸面状の内側円筒面上に存在する前記電極が、前記凸面状の内側円筒面の周囲を巡って連続的に延びる電極材料から成るライニングであり、そして、前記凹面状の外側円筒面上に存在する前記電極が、前記凹面状の外側円筒面の周囲を巡って連続的に延びる電極材料から成るライニングである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記凹面状の外側円筒面上に存在する前記電極が、前記凹面状の外側円筒面の周囲を巡って分配された第1の不連続電極列であり、そして前記凸面状の内側円筒面上に存在する前記電極が、前記凸面状の内側円筒面の周囲を巡って分配された第2の不連続電極列である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1及び第2の不連続電極列が、複数の対面する対向電極対を形成し、そして前記方法がさらに、前記ディスクの周りで順番に、前記対面する対向電極対に通電することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記外側円筒面が容器の内面であり、そして前記方法が、前記容器内の前記溶液中に前記ディスクを浸漬することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記外側円筒面が容器の内面であり、前記凸面状の内側円筒面は円筒形挿入体の表面であり、そして前記容器内部に嵌合する一体的な部材を形成するために、円筒形挿入体と前記ディスクとが接合される、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
さらに、前記円筒軸を中心として前記平らなディスクを回転させることを含む、請求項14に記載の方法。

【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−518561(P2011−518561A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506385(P2011−506385)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/041198
【国際公開番号】WO2009/131972
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(591099809)バイオ−ラッド ラボラトリーズ,インコーポレイティド (79)
【Fターム(参考)】