説明

代謝障害の治療

本発明は、II型糖尿病及び肥満を含む代謝障害の分野に関する。具体的には、本発明は、IL−18アンタゴニスト、特に抗IL−18抗原結合タンパク質、特に抗IL−18抗体を用いて代謝障害を治療及び/又は予防する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、II型糖尿病及び肥満を含む代謝の障害の分野に関する。具体的には、本発明は、IL−18アンタゴニスト、特に抗IL−18抗原結合タンパク質、特に抗IL−18抗体を用いて代謝障害を治療及び/又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン−18(IL−18)は、IL−1サイトカインファミリーのメンバーである。IL18は、多様な範囲の免疫担当細胞及び間葉系細胞に対して強力な作用を有する多面発現性のサイトカインである(Nakanisheら(2001年)Ann Rev Immunol 19:423−427)。IL−18の最も特徴的な生物学的機能は、微生物病原体に対する宿主防御における役割である。IL−18は、Th1及びNK細胞の活性化及び分化、炎症促進性サイトカインIFN−γの産生(Dinarello及びBoraschi(2006年)Eur Cytokine Netw 17:224−52)、Fas及びFasリガンド(FasL)のアップレギュレート、並びに他の炎症促進性メディエーターの増強を通じてウイルス及び他の細胞内病原体に対する先天性免疫及び後天性免疫の両方を刺激する。更に、IL−18は、ヒト微小血管内皮細胞の遊走及び管形成についての強力な走化刺激であることが示唆されており(Parkら(2001年)J Immunol 167:1644−1648)、そして、直接、又は酸化ストレス経路及びマトリックス金属結合タンパク質を通して、内皮機能を変化させるか、あるいは血管平滑筋細胞の遊走及び/又は増殖を誘導することができる。
【0003】
長さ193アミノ酸残基のIL−18の天然細胞前駆体であるPro−IL−18は、カスパーゼ−1又はプロテイナーゼ−3によって切断されて、長さ156アミノ酸残基の生物学的に活性を有する成熟した18kDaのタンパク質を生成する(Ghayurら(1997年)Nature 386:619及びGuら(1997年)Science 275:206−208)。成熟したIL−18は、IL−18Rαサブユニットに結合して、細胞表面上のIL−18Rβを動員する。IL−18と異種二量体細胞表面受容体との間の相互作用は、TLR及びIL−1受容体等の他のIL−1Rファミリーのメンバーと共有されているシグナル伝達経路を誘導する(Katoら(2003年)Nat Struct Biol 10:966)。IL−18は、マクロファージ、樹状細胞、破骨細胞、滑膜線維芽細胞、脂肪細胞及び上皮細胞で発現する。一方、IL−18R受容体は、マクロファージ、リンパ球、好中球、ナチュラルキラー細胞、内皮、上皮及び平滑筋細胞で主に発現する(Gracie,ら(2003年)J Leukoc Biol 73:213;Nakanisheら(2001年)Ann Rev Immunol 19:423−427)。インビボにおいて、IL−18R複合体に対するIL−18の結合は、IL−18結合タンパク質(IL−18BP)により調節される。IL−18BPは、構成的に発現し、IL−18機能の天然阻害剤として作用する。
【0004】
自己免疫疾患の発現におけるIL−18の役割についての仮定は、以下の所見によって支持される。IL−18は、様々な自己免疫疾患に関連する様々な標的組織で増加し、成人スチル病(AOSD)(血漿及び肝臓)(Kawashimaら(2001年)Arthritis Rheum 44:550−560)、全身性エリテマトーデス(SLE)(血漿及び様々な組織)、関節リウマチ(RA)(血漿及び滑膜)(Tanakaら(2004年)Life Sciences 74:1671−1674)、クローン病(血漿及び腸上皮)(Pizarroら(1999年)J Immunol 162:6829−6835)及び乾癬(血漿及び皮膚)(Ohtaら(2001年)293:334−342)で最も顕著である。
【0005】
より最近では、末梢におけるIL−18レベルが体重及びインスリン抵抗性と相関しており、IL−18は、2型糖尿病(T2DM)への進行を予測する能力を有することも見出されている(Murdoloら(2008年)Am J Physiol Endocrinol Metab 295:E1095−E1105;Fischeraら(2005年)Clinical Immunology 117:152−160)。更に、IL−18の血中濃度は、肥満及びT2DMの多くの共存症の原因として関与していると考えられる。具体的には、IL−18の血漿濃度が内膜中膜肥厚と相関し、T2DM患者における将来の心血管系イベントを予測することが示されている[Yamagamiら(2005年)Arterioscler Thromb Vasc Biol.25:1458−1462]。
【0006】
T2DMは、例えば、細胞がインスリンに対して適切に応答しない、肝臓のグルコース産生の増加、及びインスリン分泌の減少等の末梢インスリン抵抗性を特徴とする。T2DMの罹患率は、食習慣の変化(肥満率の上昇)並びにライフスタイルの変化(あまり体を動かさなくなった)ことにより近年著しく上昇しており、流行の域に達している。T2DMの一次治療は、食事制限、体重管理、及び運動量を増やすことである。しかし、これらのアプローチを用いても血中グルコースレベルを下げることができない場合、患者にメトホルミン等の血糖降下薬を処方したり、インスリン注射が必要になったりする場合もある。T2DMを制御するために多くの他の治療が用いられており、例えば、ロシグリタゾン等のPPARガンマアゴニスト、GLP1受容体アゴニスト(例えば、エクセナチド(Byetta(商標))、リラグルチド(Victoza(商標))及びPYY受容体アゴニストが挙げられる。
【0007】
単独であっても又は組合せであっても、市販されているものであっても開発中のものであっても、プラセボと比較して10%超体重を減少させる抗肥満剤は存在しない。更に、多くの市販薬は、悪心及び嘔吐等の重大な耐容性の問題を抱えている。開発中の小分子及び生物製剤の数は増加している。特に注目すべきことに、フェンテルミンとトピラメートとの組合せであるQnexa(商標)は、プラセボ対照PhIII試験において1.6%(4lb)に対して11%の体重減少を示したが、依然として著しい副作用を伴っていた。更に、ペプチドの組合せ(グルカゴン/GLP−1コアゴニスト、及びGLP−1/オキシントモジュリンコアゴニスト:Merck)は、現在、前臨床試験中であり、両方とも有意な体重減少を示すが、依然として副作用を伴う場合がある。
【0008】
T2DMとは対照的に、1型糖尿病(T1DM)は糖尿病患者の5〜10%が罹患しており、膵臓のランゲルハンス島におけるβ−細胞が喪失した結果身体がインスリンを産生できなくなることに起因する。T1DMの患者は、インスリン注射の形態の治療を必要とする。
【0009】
糖尿病の分野におけるIL−18アンタゴニストに関する研究は、1型(自己免疫)糖尿病に集中している。例えば、拮抗性のIL−18結合タンパク質(IL−18BP)は、若年マウスに予防的に投与されたとき、T1DMの非肥満マウス(NOD)モデルにおいて糖尿病の進行を軽減することが示されている。著者らは、β−細胞のアポトーシスに対してIL−18BPが保護効果を有する可能性について想定している(Zacconea及びPhillips(2005年)Clinical Immunology 115:74−79)。更に、IL−18BPは、エキソビボのβ−細胞破壊アッセイにおいて、アポトーシスからβ−細胞を保護することが示されている(Lewis及びDinarello(2006年)PNAS 103:16852−16857)。
【0010】
IL−18は、血清及び末梢組織において著しく増加しており、且つ高脂肪食を与えた肥満マウス(T2DMモデル)におけるインスリン抵抗性(IR)の発生と相関していることが示されているが、公開されている文献中にこれらモデルにおけるIL−18アンタゴニストの影響に関する研究のエビデンスは全く存在しない。
【0011】
IL−18ノックアウトマウスについての研究が行われている。IL−18ノックアウトマウスは、食欲が過剰であるので、肥満及びインスリン抵抗性になる。最近のIL−18ノックアウトマウスの代謝に関する分析では、マウスIL−18を頭蓋内に投与することによるIL−18ノックアウトマウスの再構成により、正常な摂食挙動が回復し、次いで、体重が減少し、正常な血糖コントロールが行われるようになることが示されているが、マウスIL−18を静脈内(IV)/腹腔内(IP)に投与してもが認識可能な効果は得られなかった。このデータに照らして、満腹応答の促進におけるIL−18の作用に関して、直接又は間接的に、標的器官として視床下部が関与する摂食挙動の調節にIL−18が中心的な役割を果たしていることが示唆されている(Zorillaら(2007年)PNAS 104:11097−11102及びNatea及びJoosten(2006年)Nat Med 12:650−656)。肥満及びインスリン抵抗性が、これらマウスの摂食亢進の誘導から生じる副次的作用であることが提唱されている。
【0012】
IL−18ノックアウトマウスにおける知見は、IL−18レベルの上昇をヒト代謝疾患の重篤度の上昇と関連づけるデータとは逆説的であるので、ヒトにおけるIL−18の発現増加は代謝疾患の原因ではなく、代償性反応である可能性を示唆することができる。
【0013】
したがって、IL−18の正確な役割、特に代謝疾患に関する役割は、全く明らかになっておらず、代謝疾患のモデル又は病院においてIL−18についての因果関係は確立されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Nakanisheら(2001年)Ann Rev Immunol 19:423−427)
【非特許文献2】Dinarello及びBoraschi(2006年)Eur Cytokine Netw 17:224−52
【非特許文献3】Parkら(2001年)J Immunol 167:1644−1648
【非特許文献4】Ghayurら(1997年)Nature 386:619
【非特許文献5】Guら(1997年)Science 275:206−208
【非特許文献6】Katoら(2003年)Nat Struct Biol 10:966
【非特許文献7】Gracie,ら(2003年)J Leukoc Biol 73:213
【非特許文献8】Kawashimaら(2001年)Arthritis Rheum 44:550−560
【非特許文献9】Tanakaら(2004年)Life Sciences 74:1671−1674
【非特許文献10】Pizarroら(1999年)J Immunol 162:6829−6835
【非特許文献11】Ohtaら(2001年)293:334−342
【非特許文献12】Murdoloら(2008年)Am J Physiol Endocrinol Metab 295:E1095−E1105
【非特許文献13】Fischeraら(2005年)Clinical Immunology 117:152−160
【非特許文献14】Yamagamiら(2005年)Arterioscler Thromb Vasc Biol.25:1458−1462
【非特許文献15】Zacconea及びPhillips(2005年)Clinical Immunology 115:74−79
【非特許文献16】Lewis及びDinarello(2006年)PNAS 103:16852−16857
【非特許文献17】Zorillaら(2007年)PNAS 104:11097−11102
【非特許文献18】Natea及びJoosten(2006年)Nat Med 12:650−656
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
これら障害の罹患率を鑑みて、T2DM、肥満に関連するT2DM、及び肥満等の代謝疾患の安全且つ改善された治療法及び予防措置が必要とされている。T2DMに対して有効な薬理学的介入はほとんど存在せず、大部分は、有効性が乏しく且つ重大な耐容性の問題を伴っている。更に、一旦治療を中止すると体重は典型的に再度増加し、多くの場合、既存の治療はβ−細胞の機能低下を防ぐことができず、最終的にはT2DMからT1DMに切り替わると共にβ−細胞が破壊される。
【0016】
本発明の目的は、代謝疾患の新規且つ改善された治療法、特に、β−細胞の機能を失わせることなく体重を減少させ、血糖コントロールを改善し、インスリン感受性を高め、結果として疾患の進行を遅らせるT2DMの新規治療法を提供することである。本発明の更なる目的は、心臓血管の健康等の他のT2DM共存症を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、第1の態様では、患者における代謝障害の治療若しくは予防及び/又は患者における血糖コントロールの改善において使用するためのIL18アンタゴニストを提供する。
【0018】
本発明は、第2の態様では、治療上有効な量のIL−18アンタゴニストを代謝障害に罹患している患者に投与することにより、前記患者を治療する方法を提供する。
【0019】
本発明は、第3の態様では、予防上有効な量のIL−18アンタゴニストを代謝障害に罹患しやすい患者に投与することにより、このような患者において代謝障害を予防する方法を提供する。
【0020】
本発明は、第4の態様では、治療上有効な量のIL−18アンタゴニストを患者に投与することにより、前記患者の血糖コントロールを改善する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、A)Synagis(抗RSV)IgG 1μg/mL、B)IL−18 50ng/mL、C)IL−18 50ng/mL+H1L2 1μg/mL、又はD)H1L2 1μg/mLのいずれかで処理された10人の健常ドナーから採取したエキソビボ全血サンプルにおけるIL−6の強度値(対数目盛)を示す。ドナー毎にデータ点に濃淡をつける。
【図2】図2は、A)Synagis(抗RSV)IgG 1μg/mL、B)IL−18 50ng/mL、C)IL−18 50ng/mL+H1L2 1μg/mL、又はD)H1L2 1μg/mLのいずれかで処理された10人の健常ドナーから採取したエキソビボ全血サンプルにおけるJAK2の強度値(対数目盛)を示す。ドナー毎にデータ点に濃淡をつける。
【図3】図3は、A)Synagis(抗RSV)IgG 1μg/mL、B)IL−18 50ng/mL、C)IL−18 50ng/mL+H1L2 1μg/mL、又はD)H1L2 1μg/mLのいずれかで処理された10人の健常ドナーから採取したエキソビボ全血サンプルにおけるSOCS3の強度値(対数目盛)を示す。ドナー毎にデータ点に濃淡をつける。
【図4】図4は、A)Synagis(抗RSV)IgG 1μg/mL、B)IL−18 50ng/mL、C)IL−18 50ng/mL+H1L2 1μg/mL、又はD)H1L2 1μg/mLのいずれかで処理された10人の健常ドナーから採取したエキソビボ全血サンプルにおけるSTAT3の強度値(対数目盛)を示す。ドナー毎にデータ点に濃淡をつける。
【図5】図5は、A)Synagis(抗RSV)IgG 1μg/mL、B)IL−18 50ng/mL、C)IL−18 50ng/mL+H1L2 1μg/mL、又はD)H1L2 1μg/mLのいずれかで処理された10人の健常ドナーから採取したエキソビボ全血サンプルにおけるMCP−1(CCL2)の強度値(対数目盛)を示す。ドナー毎にデータ点に濃淡をつける。
【図6】図6は、A)Synagis(抗RSV)IgG 1μg/mL、B)IL−18 50ng/mL、C)IL−18 50ng/mL+H1L2 1μg/mL、又はD)H1L2 1μg/mLのいずれかで処理された10人の健常ドナーから採取したエキソビボ全血サンプルにおけるMCP−4(CCL13)の強度値(対数目盛)を示す。ドナー毎にデータ点に濃淡をつける。
【図7】図7は、A)Synagis(抗RSV)IgG 1μg/mL、B)IL−18 50ng/mL、C)IL−18 50ng/mL+H1L2 1μg/mL、又はD)H1L2 1μg/mLのいずれかで処理された10人の健常ドナーから採取したエキソビボ全血サンプルにおけるIRS2の強度値(対数目盛)を示す。ドナー毎にデータ点に濃淡をつける。
【図8】図8は、A)Synagis(抗RSV)IgG 1μg/mL、B)IL−18 50ng/mL、C)IL−18 50ng/mL+H1L2 1μg/mL、又はD)H1L2 1μg/mLのいずれかで処理された10人の健常ドナーから採取したエキソビボ全血サンプルにおけるPPARガンマの強度値(対数目盛)を示す。ドナー毎にデータ点に濃淡をつける。
【図9】図9は、A)Synagis(抗RSV)IgG 1μg/mL、B)IL−18 50ng/mL、C)IL−18 50ng/mL+H1L2 1μg/mL、又はD)H1L2 1μg/mLのいずれかで処理された10人の健常ドナーから採取したエキソビボ全血サンプルにおけるLEPの強度値(対数目盛)を示す。ドナー毎にデータ点に濃淡をつける。
【図10】図10は、A)Synagis(抗RSV)IgG 1μg/mL、B)IL−18 50ng/mL、C)IL−18 50ng/mL+H1L2 1μg/mL、又はD)H1L2 1μg/mLのいずれかで処理された10人の健常ドナーから採取したエキソビボ全血サンプルにおけるLEPRの強度値(対数目盛)を示す。ドナー毎にデータ点に濃淡をつける。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者らは、インスリン抵抗性が炎症性障害であり、且つ免疫系の細胞並びに脂肪組織により合成される炎症性メディエーターがインスリンの調節に関与していると仮定した。本発明者らは、栄養過剰及び肥満が慢性低炎症性状態を導き、これが、炎症マーカーの発現を増加させ、次いで、脂肪組織へのマクロファージの浸潤を増加させる結果となると仮定した。これらマクロファージは、脂肪細胞におけるインスリンシグナル伝達を低下させ、次いで、脂肪分解を増加させ、そして脂肪酸を血液中に放出させる炎症促進性サイトカインを分泌する。脂肪酸は、肝臓及び骨格筋をインスリン抵抗性にし、糖尿病の発現を導く前糖尿病状態の一因となる。
【0023】
驚くべきことに、本発明者らは、IL−18がヒトの血液中のインターロイキン−6(IL−6)及びその重要なシグナル伝達分子(例えば、ヤヌスキナーゼ2、JAK2)の発現を誘導し、本発明のIL18アンタゴニスト、すなわちH1L2(配列番号7及び配列番号11)によりこれら作用を中和し得ることを見出した。
【0024】
IL−6は、慢性炎症の重要なメディエーターであり、肥満、インスリン抵抗性及びT2DMに関与している。脂肪組織は、血中IL−6レベルの最高35%を産生し得る。慢性的に低レベルのIL−6発現の全身的作用は、シグナル伝達性転写因子3(STAT3)及びサイトカインシグナル抑制因子3(SOCS3)の発現を通してインスリンの機能を阻害することができる。JAK2及びSTAT3は、SOCS3の発現を増加させ、これにより、インスリン受容体基質(IRS;IL−18によっても減少する)によるインスリン受容体(IR)の活性化を防いで、筋肉及び脂肪による血中グルコースの取り込みを減少させ、そして、グリコーゲンの利用能を低下させることができる(Kimら(2009年)Vitamins and Hormones 80:613−633)。
【0025】
したがって、本発明者らの所見は、IL−18アンタゴニストが、健常個体における正常なレベル又は発現に比べてIL−6レベル又はIL−6発現が増加している障害、例えば、T2DM、肥満T2DM、及び肥満等の代謝障害の有用な治療法であり得ることを初めて示唆するものである。
【0026】
更に、本発明者らは、IL−18アンタゴニストが単球化学誘引性タンパク質(MCP−1及びMCP−4)を含む他の重要な炎症メディエーターをダウンレギュレートすることを示した。これら走化性タンパク質は、遺伝学的に肥満のマウス及び高脂肪食によって肥満が誘導された健常マウスにおいて増加する。肥満被験体の脂肪組織において低度の炎症反応(マクロファージ浸潤)が誘導されることにより、MCP−1及びMCP−4が肥満及びインスリン抵抗性と関連することが示唆されている。
【0027】
更に、本発明者らは、IL−18がヒト血液におけるIRS2の発現を減少させ、これら作用が、本発明のIL18アンタゴニスト、すなわちH1L2(配列番号7及び配列番号11)により中和され得ることを見出した。
【0028】
インスリンシグナル伝達は、インスリン受容体基質IRS1−4のチロシンリン酸化による対抗制御的なシグナル伝達と協調し、IRS−2が栄養素のホメオスタシスにおいて特に重要である。IRS−2は、インスリンの代謝及び成長を促進する効果の主なエフェクターであり、膵臓のβ細胞の機能及び生存、並びに主要な栄養感知を促進する(Dongら,(2006年)J.Clin.Invest.,116(1):101−104)。マウスにおけるIRS−2のコンディショナルノックアウトは、食欲、除脂肪体重及び脂肪体重、並びに線形成長が増加し、最終的に糖尿病に進行する。更に、IRS−2ノックダウンでは、空腹時高血糖及び空腹時高インスリン、インスリン抵抗性、耐糖能異常、異脂肪血症、及びメタボリック症候群に一致する他の特徴が生じる(Taniguchiら,(2005年)J.Clin.Invest.115(3):718−727)。これらデータは、(エキソビボ血液アッセイにより支持される通り、IL−18の増加による)IRS−2のダウンレギュレートが、ヒトにおける肥満の発現、及びそれに続くT2DMへの進行において重要な役割を果たしている可能性があることを示唆する。抗IL−18アンタゴニストによりIL−18の作用をブロックすると、IRS−2機能不全を逆行させることができる。
【0029】
また、発明者らは、抗IL−18アンタゴニストが、脂肪組織で高度に発現するオーファン受容体であるPPARガンマをアップレギュレートすることを示した。ロシグリタゾン等のPPARガンマアゴニストは、インスリン感受性を改善することが示されているので、T2DMの治療において使用されている。
【0030】
また、発明者らは、抗IL−18アンタゴニストがレプチン及びレプチン受容体をアップレギュレートすることも示した。食欲抑制ホルモンであるレプチン及びレプチン受容体が低レベルであることと肥満とは、多くの証拠により関連づけられている。レプチン抵抗性が肥満を生じさせる可能性があることが示唆されているので、レプチンは、肥満の治療において使用されている。レプチン及びその受容体のアップレギュレートは、肥満被験体及びT2DM患者における食欲抑制、及びそれに続く体重減少における抗IL−18アンタゴニストの役割を補助する。
【0031】
また、驚くべきことに、本発明者らは、ヒト患者におけるIL−18レベルと血漿グルコースレベルの上昇とが関連していることが示された。したがって、IL−18アンタゴニストは、健常個体における正常レベルと比較して血漿グルコースが増加している障害、例えば、T2DM、肥満T2DM、及び肥満等の代謝障害の有用な治療であり得る。
【0032】
実際、本発明者らは、肥満ではあるが、他の点では健康なヒトにおけるグルコース及びインスリンを含む様々な代謝パラメータをH1L2が調節していることを別々の研究で示した。
【0033】
本発明者らの所見に照らして、本発明者らは、肥満及び/又は糖尿病のヒト患者における末梢のIL−18の機能をブロックし、次いで、低度の炎症を防ぐことにより、血清及び血漿グルコースレベルが低下し、インスリン抵抗性が弱まると予測する。末梢におけるIL−18作用をブロックすることによって、体重及び脂肪過多に影響を与えることができるはずである。これは、β−細胞の機能に有害な影響を与えることなく、体重に影響を与え且つ血糖コントロールを改善する可能性がある。実際、IL−18アンタゴニストは、アポトーシスを減少させることによりβ−細胞の機能に対して直接的保護効果を発揮し得る。更に、心臓血管の共存症に対する好ましい影響も想定される。
【0034】
本明細書全体にわたって用いられる「血糖コントロール」とは、健常個体でみられる血中グルコースの正常レベルと比較した、糖尿病患者における血中グルコースの典型的なレベル、及び前記患者がこれらレベルを制御する能力を指す。血糖コントロールが乏しいとは、血中グルコースが持続的に正常レベルを上回る高いレベルであることを指し、完全な血糖コントロールとは、血中グルコースレベルが常に正常範囲内であることを指す。
【0035】
本明細書で使用する「IL−18アンタゴニスト」は、IL−18の生物活性をある程度阻害又は拮抗する剤である。IL−18アンタゴニストとしては、体内から単離された又は組換え技術により作製された(例えば、Tadekinig−α(登録商標))内因性IL−18結合タンパク質(IL−18BP)等のIL−18に結合する剤、並びにIL−18BP−Fc融合タンパク質、又はIL−18の受容体に結合してIL−18がその生物活性を発揮するのを妨げるアンタゴニストが挙げられる。具体的には、IL−18アンタゴニストは、IL−18に対して免疫特異的であり且つIL−18の活性に拮抗する抗IL−18抗原結合タンパク質、例えば抗体であると想定される。IL−18アンタゴニストの非限定的な例としては、欧州特許第0712931号明細書、H18−108(Hamasakiら、2005)に記載されているH1及びH2、並びに国際公開第01/58956号パンフレット、国際公開第2005/047307号パンフレット、及び国際公開第2007/137984号パンフレットに記載されている抗体が挙げられ、これらは全て参照することにより全体を本明細書に援用する。1つの実施形態では、IL−18アンタゴニストは、例えば、単離された又は組み換え技術により作製されたIL−18BP、すなわちIL−18抗原結合タンパク質等のタンパク質である。更なる実施形態では、IL−18アンタゴニストは、抗原結合タンパク質である。1つの実施形態では、IL−18アンタゴニストは、新規化学物質(NCE)ではない。特定の実施形態では、IL−18抗原結合タンパク質は、本明細書に開示される抗体H1L2(配列番号7及び配列番号11)又はその変異体である。
【0036】
用語「抗IL−18」は、それが本発明の抗原結合タンパク質を指すとき、このような抗体がヒトIL−18の生物活性を中和できることを意味する。しかし、それは、このような抗体が非ヒト霊長類(例えば、アカゲザル及び/又はカニクイザル)のIL−18及び/又は他の種に存在するIL−18の形態も更に中和し得ることを除外するものではない。
【0037】
本明細書で使用する用語「抗体」は、最も広い意味で、免疫グロブリン様ドメインを有する分子を指し、例えば、モノクローナル抗体、組換え型抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体及びヘテロコンジュゲート抗体;単一可変ドメイン、ドメイン抗体、抗原結合断片、免疫学的に有効な断片、単鎖Fv、ダイアボディ、Tandabs(商標)等が挙げられる(別の「抗体」フォーマットの概要については、Holliger及びHudson,Nature Biotechnology,2005年,23巻,9号,1126−1136を参照されたい)。
【0038】
語句「単一可変ドメイン」とは、異なる可変領域又はドメインとは独立に、抗原又はエピトープに特異的に結合する抗原結合タンパク質の可変ドメイン(例えば、VH、VHH、VL)を指す。
【0039】
「ドメイン抗体」又は「dAb」は、抗原に結合することができる「単一可変ドメイン」と同一であると考えてよい。単一可変ドメインは、ヒト抗体可変ドメインであってもよいが、げっ歯類(例えば、国際公開第00/29004号パンフレットに開示されている)、テンジクザメ及びラクダ科のVHH dAb等の他の種に由来する単一抗体可変ドメインも含む。ラクダ科のVHHは、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ及びグアナコを含む種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドであり、天然に軽鎖が欠けている重鎖抗体を産生する。このようなVHHドメインは、当技術分野において利用可能な標準技術に従ってヒト化することができ、このようなドメインは「ドメイン抗体」であるとみなされる。本明細書で使用するVHとしては、ラクダ科のVHHドメインが挙げられる。
【0040】
本明細書で使用する用語「ドメイン」は、タンパク質の残りとは無関係な三次構造を有する折り畳みタンパク質構造を指す。一般的に、ドメインは、タンパク質の個別の機能特性に関与しており、多くの場合、タンパク質及び/又はドメインの残りの機能を失うことなく付加、除去、又は他のタンパク質に転移することができる。「単一可変ドメイン」は、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含む折り畳みポリペプチドドメインである。したがって、ドメインは、完全な抗体可変ドメイン及び、例えば、抗体可変ドメインに特徴的ではない配列、あるいは切頭されているか又はN末端若しくはC末端に伸長を含む抗体可変ドメイン、並びに完全長ドメインの結合活性及び特異性を少なくとも保持する可変ドメインの折り畳み断片によって1以上のループが置換されている改変可変ドメインを含む。ドメインは、異なる可変領域又はドメインとは無関係に抗原又はエピトープに結合することができる。
【0041】
抗原結合断片は、ドメイン等の非抗体タンパク質スカフォールドに1以上のCDRを配置することにより提供することができる。ドメインはドメイン抗体であってもよく、CTLA−4、リポカリン、SpA、アフィボディ、アヴィマー、GroEl、トランスフェリン、GroES、及びフィブロネクチン/アドネクチンからなる群より選択されるスカフォールドの誘導体であるドメインであってもよく、これらは、天然リガンド以外のIL−18等の抗原に結合させるためにタンパク質工学に供されている。
【0042】
抗原結合断片又は免疫学的に有効な断片は、部分的に重鎖又は軽鎖の可変配列を含み得る。断片の長さは、少なくとも5、6、7、8、9、又は10アミノ酸である。あるいは、断片の長さは、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも75、又は少なくとも100アミノ酸である。
【0043】
抗原結合タンパク質に関連して用いる用語「特異的に結合する」は、抗原結合タンパク質が、他の(例えば、無関係の)タンパク質には全く又は殆ど結合しないがIL−18には結合することを意味する。
【0044】
抗体に関連して用いられる用語「免疫特異的」とは、他のタンパク質には全く又は殆ど結合しないが、標的タンパク質(例えば、ヒトIL−18)には結合する抗体を意味する。しかし、この用語は、所与の種(例えばヒト)における標的タンパク質に対する抗体が、他の種(例えば、非ヒト霊長類)における標的タンパク質の他の形態と交差反応する可能性があるという事実を除外するものではない。
【0045】
抗原結合タンパク質とIL−18との相互作用の平衡解離定数(KD)は、1mM以下、100nM以下、10nM以下、2nM以下、又は1nM以下であり得る。あるいは、KDは、5〜10nM;又は1〜2nMであってもよい。KDは、1pM〜500pM;又は500pM〜1nMであってもよい。結合親和性は、BIAcore(商標)により、例えば、一級アミンカップリングによってCM5チップ上にカップリングされたIL−18を用いて抗原を捕捉し、この表面上に抗体を捕捉することにより測定できる。あるいは、結合親和性は、FORTEbioにより、例えば、一級アミンカップリングによってCM5針にカップリングされたIL−18を用いて抗原を捕捉し、この表面上に抗体を捕捉することにより測定できる。H1L2(配列番号7及び配列番号11)は、高い親和性(KD=30.3pM)でヒトIL−18に結合する。特定の実施形態では、25℃で測定したとき、本発明の抗IL−18抗原結合タンパク質及びヒトIL−18に関する平衡解離定数は、約30pM、又は30pM未満である。
【0046】
本明細書で使用する用語「中和する」とは、インビトロ又はインビボにおいて、抗原結合タンパク質の非存在下におけるIL−18の活性と比較して、本明細書に記載する抗原結合タンパク質の存在下におけるIL−18の生物活性が低下することを意味する。中和は、IL−18がIL−18受容体に結合するのをブロックする、循環からIL−18を取り除く、IL−18又はIL−18受容体をダウンレギュレートする、又はエフェクター機能に影響を与えるのうちの1以上に起因し得る。
【0047】
IL−18活性は、エキソビボで刺激された全血におけるインターフェロン−γ(IFN−γ)アッセイを用いて間接的に測定することができる。簡潔に述べると、血液30mLを収集して標準的なクエン酸塩又はヘパリン抗凝血剤に入れ、以下のプロトコールを使用する。治療剤約3μLを6ウェルプレートのウェルに直接分注する(治療剤は、50ng/mLのIL18及び適切な対照を含むはずである)。各ウェルに全血3mLを添加し、穏やかに振盪することにより混合する。15分ごとにシェーカー上で穏やかに混合しながら、4時間COインキュベータ内で37℃にてプレートをインキュベートする。インキュベートの最後に、2.5mLの血液をPAX管に移し、前記PAX管を8〜10回反転させ、室温で2時間直立した状態で保存する。中期保存するために前記PAX管を−20℃に移す。IFN−γレベルは、製造業者のガイドラインに従ってTaqMan又はELISA/MSDのいずれかを使用して測定することができる。
【0048】
「キメラ抗体」は、アクセプター抗体由来の軽鎖及び重鎖定常領域に会合しているドナー抗体由来の天然に存在する可変領域(軽鎖及び重鎖)を含有する改変抗体の種類を指す。
【0049】
「ヒト化抗体」は、非ヒトドナー免疫グロブリン由来のCDRを有し、分子の残りの免疫グロブリン由来部分が1以上のヒト免疫グロブリンに由来する改変抗体の種類を指す。更に、フレームワークサポート残基は、結合親和性を保つように変化させることができる(例えば、Queenら,Proc.Natl.Acad Sci USA,86:10029−10032(1989年)、Hodgsonら,Bio/Technology,9:421(1991年)を参照されたい)。好適なヒトアクセプター抗体は、ドナー抗体のヌクレオチド及びアミノ酸の配列に対する相同性によって、従来のデータベース、例えば、KABAT(登録商標)データベース、Los Alamosデータベース、及びSwiss Proteinデータベースから選択される抗体であってもよい。(アミノ酸に基づいて)ドナー抗体のフレームワーク領域に対する相同性により特徴付けられるヒト化抗体は、重鎖定常領域及び/又はドナーCDRを挿入するための重鎖可変フレームワーク領域を提供するのに好適であり得る。軽鎖の定常又は可変フレームワーク領域を供与することができる好適なアクセプター抗体は、同様の方法で選択することができる。アクセプター抗体の重鎖及び軽鎖は、同じアクセプター抗体を起源とする必要はないことに留意すべきである。先行技術には、このようなヒト化抗体を産生する幾つかの方法が記載されている。例えば、欧州特許出願公開第0239400号明細書及び欧州特許出願公開第054951号明細書を参照されたい。1つの実施形態では、本発明の抗体は、ヒト化抗体である。
【0050】
用語「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列に由来する抗体を指す。これら完全ヒト抗体は、低免疫原性治療抗体の起源として再改変又は脱免疫されたげっ歯類モノクローナル抗体(例えば、ヒト化抗体)に代わるものを提供し、これらは、通常、ファージディスプレイ又はトランスジェニックマウスプラットフォームのいずれかを用いて作製される。1つの実施形態では、本発明の抗体はヒト抗体である。
【0051】
用語「VH」及び「VL」は、それぞれ、抗原結合タンパク質の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を指すために本明細書で用いられる。
【0052】
「CDR」は、抗原結合タンパク質の相補性決定領域のアミノ酸配列として定義される。これらは、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の超可変領域である。免疫グロブリンの可変部分には3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDR(すなわち、CDR領域)が存在する。したがって、本明細書で使用する「CDR」は、3つの重鎖CDR全て、3つの軽鎖CDR全て、重鎖及び軽鎖のCDRの全て、又は少なくとも2つのCDRを指す。
【0053】
本明細書全体にわたって、可変ドメイン配列及び完全長抗体配列におけるアミノ酸残基は、Kabatの番号付け規則に従って番号付けされる。また、本明細書に開示する特定の配列に関連する用語「CDR」、「CDRL1」、「CDRL2」、「CDRL3」、「CDRH1」、「CDRH2」、「CDRH3」もKabatの番号付け規則に従う。更なる情報については、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第4版,U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987年)を参照されたい。
【0054】
しかし、本明細書全体にわたって可変ドメイン配列及び完全長抗体配列におけるアミノ酸残基にはKabatの番号付け規則が使用されるが、可変ドメイン配列及び完全長抗体配列におけるアミノ酸残基について別の番号付け規則が存在することが当業者には明らかであろう。また、例えば、Chothiaら.(1989年)Nature 342:877−883に記載の通り、CDR配列についての別の番号付け規則も存在する。抗体の構造及びタンパク質の折り畳みは、他の残基をCDR配列の一部とみなすことを意味する場合があり、当業者にはそのように理解される。
【0055】
当業者が利用可能なCDR配列についての他の番号付け規則としては、「AbM」法(University of Bath)及び「contact」(University College London)法が挙げられる。少なくともKabat、Chothia、AbM及びcontact法のうちの少なくとも2つを用いる最小重複領域が、「最小結合単位」を提供すると定めることができる。最小結合単位は、CDRの一部であってもよい。
【0056】
以下の表1は、各CDR又は結合単位について各番号付け規則を用いた1つの定義を表す。可変ドメインのアミノ酸配列を番号付けするために表1ではKabatの番号付けスキームを使用する。CDRの定義のうちの一部は、使用される個々の刊行物によって異なる場合があることに留意するべきである。
【表1】

【0057】

1つの実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、配列番号7及び/又は配列番号11内に含有されているCDRを含む。1つの実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、以下のCDR又はその変異体のうちの任意の1以上を含む:CDRH1(配列番号1)、CDRH2(配列番号2)、CDRH3(配列番号3)、CDRL1(配列番号4)、CDRL2(配列番号5)、CDRL3(配列番号6)。1つの実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、CDRH1(配列番号1)、CDRH2(配列番号2)、CDRH3(配列番号3)、CDRL1(配列番号4)、CDRL2(配列番号5)、及びCDRL3(配列番号6)を含む。
【0058】
本明細書に記載するCDR又は変異体CDRのうちの1以上は、例えば、ヒト化又はキメラ可変ドメインとして、ヒトフレームワークの状況において存在してもよい。
【0059】
「CDR変異体」は、少なくとも1つのアミノ酸によって改変されたアミノ酸配列を含み、前記改変は、(例えば、10以下のアミノ酸による)アミノ酸配列の化学的又は部分的変化であり得、この改変により、変異体が未改変配列の生物学的特徴を保持することが可能になる。例えば、前記変異体は、IL−18に結合し、中和する機能的変異体である。CDRアミノ酸配列の部分的変化は、(例えば、10以下のアミノ酸による)1つ〜幾つかのアミノ酸の欠失又は置換、あるいは1つ〜幾つかのアミノ酸の付加又は挿入、あるいはこれらの組合せによるものであり得る。CDR変異体は、アミノ酸配列で、1、2、3、4、5又は6アミノ酸の置換、付加、又は欠失を任意の組合せで含有し得る。CDR変異体又は結合単位変異体は、アミノ酸配列で、1、2、又は3アミノ酸の置換、挿入、付加、又は欠失を任意の組合せで含有し得る。アミノ酸残基における置換は、例えば、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸に置換する保存的置換であってよい。例えば、ロイシンは、バリン又はイソロイシンで置換することができる。
【0060】
1つの実施形態では、抗IL−18抗体は、以下からなる群より選択される:H1L2(配列番号7及び配列番号11)、ABT−325(Abbott)及び125−2H(R&D Systems)。
【0061】
ヌクレオチド及びアミノ酸配列について、用語「同一」又は、「配列同一性」は、最適に整列させ、適切に挿入又は欠失したものと比較したときの、2つの核酸又は2つのアミノ酸配列間の同一性の程度を示す。
【0062】
2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列を最適に整列させるために導入する必要があるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮して、配列が共有している同一位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数×100)。下記の通り、数学アルゴリズムを使用して、配列を比較し、2つの配列間の同一性パーセントを求めることができる。
【0063】
2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを使用し、NWSgapdna.CMPマトリックス、並びにギャップ重み付け(gap weight)40、50、60、70、又は80、及び長さ重み付け(length weight)1、2、3、4、5、又は6を使用して求めることができる。2つのヌクレオチド又はアミノ酸の配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE.Meyers及びW.Miller(Comput.Appl.Biosci.,4:11−17(1988年))のアルゴリズムを使用し、PAM120重み付け残基表、ギャップ長ペナルティ12及びギャップペナルティ4を用いて求めることもできる。更に、GCGソフトウェア・パッケージにおけるGAPプログラムに組み込まれたNeedleman及びWunsch(J.Mol.Biol.48:444−453(1970年))のアルゴリズムを使用し、Blossum 62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれか、並びにギャップ重み付け16、14、12、10、8、6又は4、及び長さ重み付け1、2、3、4、5、又は6を使用して、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントを求めることができる。
【0064】
ポリペプチド配列は、本明細書に記載するレファレンスポリペプチド配列(例えば、配列番号7を参照されたい)と同一である、すなわち、100%同一であってもよく、同一性%が100%未満、例えば少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98又は99%同一になるように、レファレンス配列と比べて特定の整数以下のアミノ酸の変化を含んでもよい。このような変化は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、保存的及び非保存的置換を含む置換、又は挿入からなる群より選択され、前記変化は、レファレンスポリペプチド配列のアミノ末端又はカルボキシ末端位置、又はこれら末端位置間のいずれの位置に生じてもよく、レファレンス配列中のアミノ酸の中に個々に点在してもよく、又はレファレンス配列内の1以上の連続する群に生じてもよい。所与の同一性%についてのアミノ酸の変化の数は、本明細書に記載するポリペプチドレファレンス配列(例えば、配列番号7を参照されたい)によりコードされるポリペプチド配列におけるアミノ酸の総数に、それぞれの同一性パーセントの数値的パーセント(100で除された数)を乗じ、次いで、本明細書に記載するポリペプチドレファレンス配列(例えば、配列番号7を参照されたい)におけるアミノ酸の総数からその積を減じることにより求められる、すなわち:
≦x−(x・y)
(式中、nは、アミノ酸の変化の数であり、xは、本明細書に記載するレファレンスポリペプチド配列(例えば、配列番号7を参照されたい)におけるアミノ酸の総数であり、yは、50%の場合0.50、60%の場合0.60、70%の場合0.70、75%の場合0.75、80%の場合0.80、85%の場合0.85、90%の場合0.90、95%の場合0.95、98%の場合0.98、99%の場合0.99、又は100%の場合1.00であり、・は、乗算演算子の記号であり、x及びyの積が任意の非整数である場合、xからそれを減じる前に最も近い整数に切り捨てられる)。
【0065】
同一性%は、配列の長さ全体にわたって求めることができる。
【0066】
本発明の抗体重鎖は、配列番号7(重鎖H1)、配列番号8(重鎖H2)、又は配列番号9(重鎖H3)に対して75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%の同一性を有し得る。特定の実施形態では、本発明の抗体重鎖は、配列番号7(重鎖1)に対して75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%の同一性を有する。
【0067】
本発明の抗体軽鎖は、配列番号10(軽鎖L1)、配列番号11(軽鎖L2)、又は配列番号12(軽鎖L3)に対して75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%の同一性を有し得る。特定の実施形態では、本発明の抗体軽鎖は、配列番号11(軽鎖L2)に対して75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%の同一性を有する。
【0068】
本発明の抗体重鎖は、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1アミノ酸の置換、挿入又は欠失を含有する配列番号7、配列番号8、又は配列番号9の変異体であってよい。1つの実施形態では、抗体重鎖は、配列番号7の変異体である。本発明の抗体軽鎖は、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1アミノ酸の置換、挿入又は欠失を含有する配列番号10、配列番号11、又は配列番号12の変異体であってよい。1つの実施形態では、抗体軽鎖は、配列番号11の変異体である。
【0069】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、それぞれ、2以上のアミノ酸残基を含む分子を指す。ペプチドは、モノマーであってもポリマーであってもよい。
【0070】
特定のアミノ酸置換を「保存的」であるとみなすことは、当技術分野において十分認識されている。アミノ酸は、共通の側鎖特性に基づいてグループ分けされ、抗原結合タンパク質の結合親和性の全て又は実質的に全てを維持するグループ内の置換は、保存的置換であるとみなされる。以下の表2を参照されたい。
【表2】

【0071】

1つの実施形態では、本発明の抗原結合タンパク質は、IL−18に特異的に結合し、IL−18を中和し、配列番号7の重鎖配列及び配列番号11の軽鎖配列を含むレファレンス抗体(H1L2)のIL−18に対する結合と拮抗する。
【0072】
抗原結合タンパク質とレファレンス抗体との間の競合は、競合ELISAにより測定することができる。競合する抗原結合タンパク質はレファレンス抗体が結合するのと同じエピトープ、重複するエピトープ、又は前記エピトープに近接しているエピトープに結合し得る。
【0073】
抗原結合タンパク質は、ラット、マウス、霊長類(例えば、カニクイザル、旧世界サル、又は類人猿)又はヒトに由来し得る。抗原結合タンパク質は、ヒト化抗体であっても、キメラ抗体であってよい。抗原結合タンパク質は、ヒト抗体であってもよい。
【0074】
抗原結合タンパク質は、いずれのアイソタイプ又はサブクラスであってもよい定常領域を含み得る。定常領域は、IgGアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又はこれらの変異体の定常領域であってもよい。1つの実施形態では、抗原結合タンパク質の定常領域は、IgG1である。
【0075】
定常ドメイン領域を含む抗原結合タンパク質は、ADCC及び/又は補体活性化若しくはエフェクター機能を低下させることができる。定常ドメインは、IgG2又はIgG4アイソタイプの生来不能である定常領域、あるいは突然変異型IgG1定常ドメインを含んでもよい。好適な改変の例は、欧州特許第0307434号明細書に記載されている。一例は、位置235及び237(EUインデックスの番号付け)におけるアラニン残基の置換を含む。
【0076】
抗原結合タンパク質は、抗体のエフェクター機能/ADCC及び/又は補体活性化が増強されるように、突然変異型定常領域から選択される1以上の改変を含んでもよい。好適な改変の例は、Shieldsら.J.Biol.Chem(2001年)276:6591−6604,Lazarら.PNAS(2006年)103:4005−4010、及び米国特許第6737056号明細書、国際公開第2004063351号パンフレット、及び国際公開第2004029207号パンフレットに記載されている。
【0077】
抗原結合タンパク質のエフェクター機能/ADCC及び/又は補体活性化が増強されるように、抗原結合タンパク質は、グリコシル化プロファイルの変化している定常領域を含んでもよい。グリコシル化プロファイルの変化している抗原結合タンパク質を作製するのに好適な方法の例は、国際公開第2003/011878号パンフレット、国際公開第2006/014679号パンフレット、及び欧州特許第1229125号明細書に記載されている。
【0078】
本明細書に記載するIL−18アンタゴニスト、例えば、抗原結合タンパク質の精製調製物を、本明細書に記載するヒトの疾患、障害、及び病状、特に代謝障害の治療において使用するための医薬組成物に配合してもよい。疾患、障害及び病状という用語は、互換的に使用される。
【0079】
本発明のIL18アンタゴニスト、特に抗原結合タンパク質は、代謝障害を治療又は予防するために用いることができる。代謝障害を治療又は予防する薬剤の製造における本発明のIL18アンタゴニスト、特に抗原結合タンパク質の使用も提供される。
【0080】
「代謝障害」は、炭水化物、アミノ酸、有機酸、脂肪酸、ミトコンドリア、ステロイドが挙げられるがこれらに限定されない身体中の物質代謝の不均衡により定義される任意の障害である。代謝障害としては、以下の非限定的な例が挙げられる:インスリン抵抗性、2型糖尿病(T2DM)、肥満、メタボリック症候群、異脂肪血症、急性膵炎、肝不全、T2DMに関連する共存症(例えば、アテローム性動脈硬化、心血管疾患)。1つの実施形態では、代謝障害はT2DMである。
【0081】
1つの実施形態では、本発明のIL18アンタゴニストは、ヒト患者におけるグルコースレベルを低下させる。
【0082】
本発明のIL−18アンタゴニストは、低血糖を引き起こすことなく(すなわち、血中グルコースが3mmol/L未満になることなく)、末梢インスリン抵抗性を改善し、血糖コントロールを改善し(すなわち、空腹時血糖の標的幅を8.9mmol/L未満、特に3.9〜7.2mmol/Lで維持し)、β細胞を保護し、β細胞機能の喪失を防ぎ、膵臓の機能を改善し(セクレチンに対する膵臓の応答を測定することにより評価される)、(全身の代謝の改善を介して)体重を減少させ、心臓血管の健康を改善し(血漿トリグリセリド、脂質、CRP、血圧、及びBMIを測定することにより評価される)、及び/又は疾患の進行を遅らせる。
【0083】
本発明の1つの実施形態では、エキソビボで刺激された健常ボランティアの血液において、IL−18によって誘導されるIL−6、STAT3、SOCS3、JAK2、MCP−1(CCL2)及びMCP−4(CCL13)のうちの任意の1以上又は全ての遺伝子発現の増加は、本発明のIL−18アンタゴニスト、例えば、H1L2(配列番号7及び配列番号11)により回復する又は部分的に回復する。
【0084】
本発明の1つの実施形態では、エキソビボで刺激された健常ボランティアの血液において、IL−18によって誘導されるIRS2、PPARガンマ、レプチン及びレプチン受容体の遺伝子発現の減少は、本発明のIL−18アンタゴニスト、例えば、H1L2(配列番号7及び配列番号11)により回復する又は部分的に回復する。
【0085】
1つの実施形態では、本発明のIL−18アンタゴニストは、感知できる量が中枢神経系(CNS)に達することはないが、その代わり、末梢で作用することによりその治療効果を発揮する。
【0086】
医薬調製品は、薬学的に許容しうる担体と組み合わせて、本発明のIL−18アンタゴニスト、例えば抗原結合タンパク質を含み得る。IL−18アンタゴニストは、単独で投与してもよく、医薬組成物の一部として投与してもよい。
【0087】
典型的に、このような組成物は、公知であり且つ許容し得る薬務により要求される薬学的に許容し得る担体を含む。例えば、例えば、Remingtons Pharmaceutical Sciences,第16版(1980年)Mack Publishing Co.を参照されたい。このような担体の例としては、生理食塩水、リンゲル液、又はデキストロース溶液等の無菌担体が挙げられ、これら担体は、任意で好適なバッファによりpH5〜8に緩衝される。
【0088】
医薬組成物は、(例えば、静脈内、腹腔内、皮内、皮下、筋肉内、門脈内に)注射又は持続注入することにより投与することができる。このような組成物は、目に見える粉粒体を含まないことが好ましい。1つの実施形態では、本発明の医薬組成物は、皮下注射を介して投与される。更なる実施形態では、本発明の医薬組成物は、皮内に投与される。このような皮内投与は、パッチ技術(例えば、多数の極微針又は摩耗性表面)又は他の好適な手段を使用して、皮膚から約15°の角度で挿入される1本の針で注射することを介して達成することができる(マントーの手順)。IL−18アンタゴニストがタンパク質である場合、医薬組成物は、0.01mg〜10gのタンパク質、例えば、5mg〜1gのタンパク質を含み得る。あるいは、組成物は、5mg〜500mg、例えば、5mg〜50mgを含み得る。
【0089】
このような医薬組成物を調製する方法は、当業者に周知である。医薬組成物は、単位剤形中に1mg〜10gのタンパク質を含み得、任意で使用説明書を共に含む。医薬組成物は、当業者に周知であるか又は当業者に明らかである方法に従って、投与前に再構成するために凍結乾燥(フリーズドライ)してもよい。IL−18アンタゴニストが抗IL−18抗体であり且つ前記抗体がIgG1アイソタイプを有する場合、このアイソタイプの抗体の銅触媒による分解の程度を低下させるために医薬組成物にクエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)又はEDTA又はヒスチジン等の銅のキレート化剤を添加してもよい。欧州特許第0612251号明細書を参照されたい。また、医薬組成物は、アルギニン塩基等の可溶化剤、ポリソルベート80等の界面活性剤/抗凝集剤、及びバイアルのヘッドスペースの酸素を置換するための窒素等の不活性ガスを含み得る。
【0090】
IL−18アンタゴニストを投与するための有効量及び治療レジメンは、一般的に、経験的に決定され、患者の年齢、体重、及び健康状態、並びに治療される疾患又は障害等の要因に依存し得る。このような要因は、主治医の理解の範囲内である。適切な用量の選択における指針は、例えば、Smithら(1977年)Antibodies in human diagnosis and therapy,Raven Press,New Yorkに見出すことができる。
【0091】
被験体に投与されるIL−18アンタゴニストの投薬量は、一般的に、被験体の体重1kg当たり1μg〜150mg、0.1mg〜100mg、0.5mg〜50mg、1〜25mg、又は1〜10mgである。例えば、用量は、10mg/kg、30mg/kg又は60mg/kgであり得る。1つの実施形態では、H1L2(配列番号7及び配列番号11)は、1〜5mg/kgの投薬量で被験体に投与される。別の実施形態では、H1L2(配列番号7及び配列番号11)は、約3mg/kgの投薬量で被験体に投与される。IL−18アンタゴニストは、例えば、皮下、静脈内、又は筋肉内等、非経口的に投与してもよい。
【0092】
2〜24時間、例えば、2〜12時間、又は2〜6時間の期間にわたって低速連続注入により用量を投与してよい。
【0093】
用量の投与は、必要に応じて1回以上、例えば、1日3回、毎日1回、2日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月に1回、6ヶ月に1回、又は12ヶ月に1回繰り返してもよい。本発明の特定の実施形態では、用量の投与は、1ヶ月に1回である。更なる実施形態では、用量の投与は、6ヶ月に1回である。IL−18アンタゴニストは、維持療法により投与してもよく、例えば、6ヶ月以上の期間にわたって1週間に1回投与してもよい。IL−18アンタゴニストは、間欠療法により投与してもよく、例えば、1周期において、3〜6ヶ月間IL−18アンタゴニストを投与し、次いで、3〜6ヶ月間投与せず、次いで、3〜6ヶ月間再度IL−18アンタゴニストを投与してもよい。
【0094】
IL−18アンタゴニストは、特定の部位に対する標的療法を行うように被験体に投与してよい。例えば、皮下又は静脈内にIL−18アンタゴニストを局所的に注射してもよい。
【0095】
IL−18アンタゴニストは、本明細書に記載する疾患を治療するためのメトホルミン、ロシグリタゾン、フェンテルミン、トピラメート、オルリスタット(Xenical(商標)、Alli(商標))、GLP−1受容体アゴニスト(例えば、エクセナチド(Byetta(商標))、リラグルチド(Victoza(商標))、アルビグルチド(Syncria(商標))及び/又はPYY受容体アゴニストを含む1以上の他の治療活性剤と併用してもよい。
【0096】
他の治療活性剤と組み合わせてIL−18アンタゴニスト、例えば、抗原結合タンパク質を使用する場合、個々の成分を、一緒に又は別々に、同時に、順次、一斉に、又は連続して、別個の又は複合医薬製剤で、任意の便利な経路により投与してよい。別々に又は順次投与する場合、IL−18アンタゴニスト及び治療活性剤は、任意の順序で投与してよい。
【0097】
上記組合せは、任意で薬学的に許容し得る担体又は賦形剤と共に、上に定義する組合せを含む単一医薬製剤の形態で使用するために提示してもよい。
【0098】
同じ製剤中で組合せる場合、成分が安定であり且つ互いに及び製剤の他の成分と適合しなくてはならず、投与用に製剤化できることが認識される。別々に製剤化する場合、例えば当技術分野の抗原結合タンパク質について公知のように、任意の便利な製剤で提供してよい。
【0099】
同じ疾患に対する第2の治療活性剤と組合せる場合、各成分の用量は、IL−18アンタゴニストを単独で使用するときと異なってもよい。当業者は適切な用量を容易に認識する。
【0100】
IL−18アンタゴニスト及び治療活性剤は、相乗的に作用する場合もある。言い換えれば、IL−18アンタゴニストと治療活性剤とを組合せて投与すると、本明細書に記載する疾患、障害、又は病状に対する効果が、それぞれの単独の効果の合計よりも大きくなる場合がある。
【0101】
用語「個体」、「被験者」及び「患者」は、本明細書において互換的に使用される。被験体は、典型的にヒトである。また、被験体は、マウス、ラット又は霊長類(例えばマーモセット又はサル)等の哺乳類であってもよい。被験体は、非ヒト動物であってもよい。また、IL−18アンタゴニストは、獣医学的に使用してもよい。治療される被験体は、例えば、雌ウシ又は雄ウシ、ヒツジ、ブタ、雄ウシ、ヤギ又はウマ等の家畜であってもよく、イヌ又はネコ等のペットであってもよい。動物は、任意の年齢であってよく、成熟した成体動物であってもよい。
【0102】
治療は、療法的、予防的、又は防止的であってよい。被験体は、それを必要としている被験体である。治療を必要としている被験体は、特定の医学的疾患に既に罹患している個体に加えて、将来その疾患を発現する可能性のある個体を含み得る。
【0103】
したがって、本明細書に記載するIL−18アンタゴニストは、予防的又は防止的治療に用いることができる。この場合、本明細書に記載するIL−18アンタゴニストは、疾患の1以上の局面又は症状の発生を防止するか又は遅らせるために、個体に投与される。被験体は、無症候性であり得る。被験体は、その疾患に対する遺伝性素因を有し得る。このような個体には、予防上有効な量のIL−18アンタゴニストが投与される。予防上有効な量は、本明細書に記載する疾患の1以上の局面又は症状の発生を防止するか又は遅らせる量である。
【0104】
また、本明細書に記載するIL−18アンタゴニストを治療の方法で用いてもよい。用語「治療」は、疾患の少なくとも1つの局面又は症状の緩和、低減、又は防止を包含する。例えば、本明細書に記載するIL−18アンタゴニストを用いて、本明細書に記載する疾患の1以上の局面又は症状を寛解又は低減することができる。
【0105】
本明細書に記載するIL−18アンタゴニストは、療法的、予防的、又は防止的治療に有効な量で用いられる。本明細書に記載するIL−18アンタゴニストの治療上有効な量は、疾患の1以上の局面又は症状を寛解又は低減するのに有効な量である。また、本明細書に記載するIL−18アンタゴニストは、本明細書に記載する疾患を治療、防止、又は治癒させるために用いることができる。
【0106】
本明細書に記載するIL−18アンタゴニストは、一般的に、被験体の健康に対して有益な効果を有し得、例えば、被験体の予測寿命を延ばすことができる。
【0107】
本明細書に記載するIL−18アンタゴニストは、実行可能な療法的治療を行うために疾患の全ての症状又は徴候を完全に治癒させる又は根絶する必要がある訳ではない。適切な分野で認識されている通り、治療剤として使用される薬物は、所与の疾患状態の重篤度を低下させることができるが、有用な治療剤であるとみなされるために疾患の全ての徴候を消失させる必要がある訳ではない。同様に、予防的に投与される治療剤は、実行可能な予防剤を構成するために疾患の発症を防止するのに完全に有効である必要はない。単に、(例えばその症状の数又は重篤度を減らすことにより、又は別の治療の有効性を高めることにより、又は別の有益な効果を生じさせることにより)疾患の影響を低下させるか又は(例えば疾患の発症を遅らせることにより)被験体において疾患が生じたり悪化したりする可能性を低下させることで十分である。
【0108】
本明細書に記載するIL−18アンタゴニストは、本明細書に記載する任意の代謝障害の治療又は予防において用いることができる。
【0109】
用語「治療上有効な量」は、治療される疾患を防ぐ、阻害する、停止させる、又は改善するのに十分な物質、例えば、IL−18アンタゴニストの量(用量)を指す。
【0110】
したがって、本発明は、上記疾患を治療及び/又は予防する方法であって、治療上有効な量のIL−18アンタゴニスト、例えば、抗IL−18抗原結合タンパク質を、それを必要としている患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0111】
本明細書中では、本発明は、明確且つ簡潔に説明を記載することができるように、実施形態を参照して記載される。実施形態は、本発明から逸脱することなく様々に組合せたり分離させたりできることを意図しており、またそのように認識されるべきである。
【0112】
本明細書に引用する特許及び特許出願が挙げられるがこれらに限定されない全ての刊行物は、全体が記載されているかのように参照することにより本明細書に援用される。
【0113】
本開示は、更に、例示目的のためだけに以下の実施例に更に記載される。
【実施例】
【0114】
実施例1
IL−18誘導性遺伝子発現に対するH1L2(配列番号7及び配列番号11)の効果を求めるために、10人の健常ボランティアドナーから採取した血液をドナー1人当たり4つのアリコートに分割し、以下のいずれかを用いてエキソビボで刺激した:A)Synagis 1μg/mL(対照抗RSV IgG)、B)IL−18 50ng/mL、C)IL−18 50ng/mL+H1L2 1μg/mL、又はD)H1L2 1μg/mL。各処理群のサンプルを、Affymetrix U133_plus_2.0全ゲノムヒトマイクロアレイにハイブリダイズさせた。以下の比較を行った:
・Synagis IgG 1μg/mL対IL−18 50ng/mL:血液中の遺伝子発現に対するIL−18の効果を求めるため
・IL−18 50ng/mL対IL−18 50ng/mL+H1L2 1μg/mL:IL−18誘導性遺伝子発現に対するH1L2の効果を求めるため
・Synagis IgG 1μg/mL対H1L2 1μg/mL:刺激の非存在下における血液中の遺伝子発現に対するH1L2の効果を求めるため
エキソビボでIL−18により刺激された血液は、IL−6の発現において9倍の増加(P<0.0001)を示し、H1L2の添加は、この効果を中和した(IL−18+H1L2のデータをIL−18のみのデータと比較したとき7倍減少した)。図1にデータを示す。
【0115】
更に、JAK2、SOCS3及びSTAT3は、それぞれ、IL−18刺激による発現において3.2倍、3.1倍、及び1.7倍の増加を示した。H1L2の添加は、これら効果を部分的に中和した:IL−18+H1L2をIL−18のみと比較したとき、JAK2は2.1倍減少し、SOCS3は1.9倍減少し、STAT3は1.6倍減少した。図2、3及び4にデータを示す。
【0116】
更に、MCP−1及びMCP−4は、それぞれ、IL−18刺激による発現において4.4倍及び4.1倍の増加を示した。IL18+H1L2をIL18のみと比較したとき、H1L2の添加によりこれら増加は部分的に回復し、2.6倍及び2.5倍の減少を示した(図5〜6を参照されたい)。PPARガンマ及びIRS2は、IL18刺激によりそれぞれ2.9倍及び1.5倍の減少を示した。これら効果はH1L2の添加により部分的に回復し(図7〜8を参照されたい)、IL18+H1L2をIL18のみと比較したとき1.7倍及び1.4倍の増加を示した。最後に、レプチン及びレプチン受容体は、両方とも、IL−18刺激後に発現が1.5倍の減少を示した。これら効果もH1L2により中和された(図9〜10を参照されたい)。
【0117】
この実験は、マイクロアレイ上のプローブの90%において1.1倍の変化を検出するために90%信頼力を用いて行った。
【0118】
このデータは、IL−18がIL−6及び血液中のその重要なシグナル伝達分子の発現を誘導し、これら効果がH1L2によって中和され得ることを示す。
【0119】
実施例2
様々な癌を治療するために注入又は皮下投与された組換え型ヒトIL−18(rhIL−18)の有用性について、3つの第I相試験及び1つの第II相試験で調べられている。これら試験から得られた血中グルコース及び臨床検査値異常のデータを再調査して、rhIL−18の注入と、その後のグルコース代謝の変化との間に何らかの関係が存在する可能性について調査した。全ての第1相試験において、糖尿病等の合併症を有する患者は、治験責任医師によりその疾患が安定しているとみなされ且つ患者が少なくとも6ヶ月間治療を受けている場合に限り、参加資格を有していた。
【0120】
これら試験で調査された全ての用量レベルでは、30〜40時間かけて患者の血漿中でrhIL−18が超生理学的なレベルに達した。
【0121】
これら試験で組換え型ヒトIL−18(rhIL−18)の投薬中に遭遇した最も一般的な臨床化学的異常は、過血糖であった。
【0122】
現在までに完了している単独療法試験全体で、治療を受けた患者の38〜68%が、プロトコールの適格基準(すなわち、糖尿病被験体を除外したかどうか)によって少なくとも等級1(CTC基準)の高血糖症AE(>ULN〜8.9mmol/L)を経験した。
【0123】
3つの完了し報告されている用量設定試験(n=72)全体で、8人(7%)の患者が等級3(>13.9〜27.8mmol/L)の高血糖事象を経験し、1人の患者が等級4(>27.8mmol/L)の高血糖症を経験した。これら患者の9人全てが、ランダム化時点で糖尿病であると診断されていた。
【0124】
血漿グルコースレベルとの明らかな用量相関は存在しなかったが、血中グルコースの増加の程度に加えて、投与に対する低血糖症AEのタイミング(注入の5〜10日後)が一貫していることは、これら事象がrhIL−18の投与と関連していることを示唆する。これらデータは、IL−18と血漿グルコースレベルの上昇との間の関連を示し、ひいては、IL−18アンタゴニストが、血漿グルコースが増加する代謝障害、例えば、T2DM、肥満T2DM、及び肥満の有用な治療法であり得ることを示唆する。
【0125】
実施例3
DIO(食餌誘発性肥満)マウスモデルで様々な用量の本発明のIL−18アンタゴニストを用いて、グルコースレベル、インスリンレベル、並びに肥満及び糖尿病に関係する他の代謝パラメータに加えて、体重減少に対する影響を調べることができる。
【0126】
このモデルでは、C57bl/6雄マウスは、18〜20週間45%脂肪食を給餌したとき、体重が約40〜45gに達する。次いで、IL−18アンタゴニストを1回又は数回投与し、実験が終わるまで毎日マウスの体重を測定した。終末麻酔後のマウスから心臓の血液を回収し、ALP、ALT、AST、GLDH、ビリルビン、グルコース、インスリン、尿素、クレアチニン、総タンパク量、アルブミン、カルシウム、コレステロール、トリグリセリド、リン酸塩、ナトリウム、カリウム、塩化物及びケトン(可能な場合にはハイドロキシブチレート及びアセトアセテートの両方)を含むいくつかのマーカーの分析を行う。組織を採取し、安全性評価のために組織病理学的に評価し、免疫組織化学のための脳組織を評価してもよい。
【0127】
上記実施例1及び2に示した結果を鑑みて、これらマウスを用いた実験の結果は、体重減少に与える影響と共に、IL−18アンタゴニストで処理したマウスにおけるグルコース及びインスリンレベルの減少であると予測される。
【0128】
実施例4
健常及び肥満被験体に静脈内注入された単回用量のH1L2の安全性、耐容性、薬物動態について調べるために、ヒトにおいて初めての(FTIH)試験(すなわち、単盲検無作為化プラセボ対照試験)を実施した。また、肥満被験体において、代謝薬動力学も評価した。
【0129】
方法論
試験は、2つの部分からなっていた。第1部は、5コホートの健常被験体(1コホート当たりn=5〜15)からなっており、第2部は、3コホートの肥満被験体(1コホート当たりn=5〜12)からなっていた;肥満被験体は、BMIが30〜40であるが他の点では健康である被験体として定義した。各コホートは、単回試験セッションに参加した。
【0130】
両部とも、単純盲検及びプラセボ対照で実施した。各コホート内では、プラセボ又は動的治療への被験体の割当てを無作為化した。
【0131】
第1部の開始用量は0.008mg/kgであり、最大用量3.0mg/kgまで段階的に用量を増加させた。第2部の投与は、第1部に対する1mg/kgの投与が完了し、予備安全性及びPKデータが調査されるまで開始しなかった。
【0132】
細胞媒介性炎症に対するH1L2の効果を調べるために、第1部の健常被験体の1mg/kg及び3mg/kgのコホートには遅延型過敏(DTH)アプローチが含まれていた。Candin(登録商標)は、皮内に投与したときにDTH炎症反応をトリガーするカンジダアルビカンス(Candida albicans)皮膚試験抗原である(Allermed Laboratories)。DTH応答者であると確認された27人の健常ボランティア(腕の手掌表面に皮内注入した0.1mLのCandin(登録商標)に応答して>5mm硬化した)を、1mg/kg(H1L2 n=9、プラセボn=3)及び3mg/kg(H1L2 n=9、プラセボn=6)の健常被験体コホートに新規登録した。これらコホートに登録された被験体は、試験の3日目(H1L2投与の48時間後)に2回目のCandin(登録商標)皮内注射を受けた。Candin(登録商標)抗原投与の24時間後及び48時間後に硬化及び紅斑を評価することに加えて、各被験体から3つの皮膚生検を得た。スクリーニング時(Candin(登録商標)抗原投与の48時間後)における非病変領域、スクリーニング時におけるDTH硬化の中心、及び反復抗原投与時(Candin(登録商標)抗原投与の48時間後、H1L2投与の96時間後)におけるDTH硬化の中心から2mm又は3mmのパンチ生検を採取した。前記生検からRNAを抽出し、標識し、Affymetrix U133_plus_2.0全ゲノムヒトマイクロアレイにハイブリダイズさせた。データを分析して、H1L2投与によって調節されるCandin(登録商標)DTH抗原投与に応答して発現の変化する遺伝子を同定した。代謝障害において何らかの役割を有していることが既に同定されている炎症遺伝子をこのモデルで評価した。
【0133】
第2部には、3コホートの肥満男性ボランティアが含まれていた。開始用量は0.25mg/kgであり、最大用量3.0mg/kgまで段階的に用量を増加させた。これは、1部の最も高い3用量を反映している。
【0134】
代謝疾患患者におけるH1L2の潜在的な有用性を鑑みて、この試験では、肥満被験体における代謝薬力学的エンドポイントに対するH1L2の効果についても調べた。この試験に含まれていた健康な肥満被験体は、インスリンレベルが上昇し、これは潜在的なインスリン抵抗性を示す。
【0135】
経口グルコース負荷試験(OGTT)を使用して、肥満被験体における様々な用量のH1L2の潜在的な代謝効果を評価した。75gの経口グルコース負荷を摂取した後、インスリン分泌が急速に増加し(第1相応答)、次いで、ホルモンがより持続的に放出された(第2相)。この分泌過程中に、インスリン前駆体分子であるプロインスリンからCペプチド、すなわち結合ペプチドが分離され、等モル量のインスリンが生成される。血流中において、Cペプチドは、インスリンと異なり肝クリアランスに供されないので、長い半減期を有する。OGTT中のCペプチド及びインスリン動態データをモデル化することにより、インスリン分泌の第1相及び第2相が導き出され得るように、180分間かけて血液サンプルを回収した。更に、摂取されたグルコースの出現及び消失速度からインスリン感受性を計算した。
【0136】
結果
DTHを抗原投与された皮膚は、IL6発現が113倍(P<0.0001)増加した(1mg/kgのコホートでは123倍増加(P<0.0001)し、3mg/kgのコホートでは101倍増加(P<0.0001)した)。反復抗原投与前にH1L2 3mg/kgで処理すると、IL−6の発現が3.4倍(P<0.0001)減少した。これは、プラセボよりも1.8倍大きな減少(P=0.055)であった。この効果は、H1L2 1mg/kgの処理では有意ではなかった(1.6倍減少、P=0.098)。
【0137】
更に、SOCS3及びSTAT3は、それぞれ、DTHにより有意な(P<0.0001)14倍及び6倍の発現増加を示した。SOCS3のDTH誘導性発現は、H1L2 3mg/kgの処理により1.9倍減少した。これは、プラセボよりも1.4倍大きな減少(P<0.05)であった。STAT3のDTH誘導性発現は、H1L2 3mg/kgの処理により1.3倍減少し(P<0.01)た。これは、プラセボよりも1.4倍大きな減少(P<0.01)であった。これら効果は、1mg/kgのH1L2による処理ではみられなかった。
【0138】
更に、LEPRは、DTH抗原投与により5倍の発現減少(P<0.0001)を示した。DTHによるLEPRの減少は、H1L2 3mg/kgを用いて1.5倍(P<0.01)減少した。これは、プラセボよりも1.4倍大きな減少(P=0.084)であった。
【0139】
予備分析は、H1L2も肥満被験体のOGTTにおいてグルコースレベルを減少させることを示し、これら効果は、正常値の上限を上回るグルコースレベルを有する被験体においてより顕著に現れ、これは、H1L2が、T2DM患者等のより重篤な集団においてより大きな効果を示し得ることを示唆する。また、インスリンの効果が患者のこのサブセットのグルコースレベルにおいて観察されるものを反映しているというエビデンスが存在していた。
【0140】
結論
これらデータは、H1L2が細胞媒介性炎症のインビボモデルにおいて、IL6、STAT3、SOCS3及びLEPRの発現の変化を減少させ得ることを示す。更に、前記データは、H1L2がグルコース及びインスリンレベルを含む様々な代謝パラメータを調節することを示す。したがって、抗IL18アンタゴニスト、特に抗体H1L2は、代謝障害の治療において有望である。
【表3】

【0141】
配列
配列番号1(CDRH1)
GYYFH

配列番号2(CDRH2)
RIDPEDDSTKYAERFKD

配列番号3(CDRH3)
WRIYRDSSGRPFYVMDA

配列番号4(CDRL1)
LASEDIYTYLT

配列番号5(CDRL2)
GANKLQD

配列番号6(CDRL3)
LQGSKFPLT
【0142】
配列番号7(H1)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKVSGEISTGYYFHWVRQAPGKGLEWMGRIDPEDDSTKYAERFKDRVTMTEDTSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCTTWRIYRDSSGRPFYVMDAWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0143】
配列番号8(H2)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKVSGEISTGYYFHWVRRRPGKGLEWMGRIDPEDDSTKYAERFKDRVTMTEDTSTDTAYMELSSLRSEDTAVYYCTTWRIYRDSSGRPFYVMDAWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0144】
配列番号9(H3)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKVSGEISTGYYFHFVRRRPGKGLEWMGRIDPEDDSTKYAERFKDRVTMTADTSTDTAYMELSSLRSEDTATYFCTTWRIYRDSSGRPFYVMDAWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0145】
配列番号10(L1)
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCLASEDIYTYLTWYQQKPGKAPKLLIYGANKLQDGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQGSKFPLTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0146】
配列番号11(L2)
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCLASEDIYTYLTWYQQKPGKAPKLLIYGANKLQDGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDFATYYCLQGSKFPLTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0147】
配列番号12(L3)
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCLASEDIYTYLTWYQQKPGKAPQLLIYGANKLQDGVPSRFSGSGSGTDYTLTISSLQPEDEGDYYCLQGSKFPLTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0148】
配列番号13(IL−18)
MAAEPVEDNCINFVAMKFIDNTLYFIAEDDENLESDYFGKLESKLSVIRNLNDQVLFIDQGNRPLFEDMTDSDCRDNAPRTIFIISMYKDSQPRGMAVTISVKCEKISTLSCENKIISFKEMNPPDNIKDTKSDIIFFQRSVPGHDNKMQFESSSYEGYFLACEKERDLFKLILKKEDELGDRSIMFTVQNED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における代謝障害の治療又は予防に用いるためのIL−18アンタゴニスト。
【請求項2】
前記IL−18アンタゴニストがタンパク質である、請求項1に記載のIL−18アンタゴニスト。
【請求項3】
前記タンパク質が抗原結合タンパク質である、請求項1に記載のIL−18アンタゴニスト。
【請求項4】
前記抗原結合タンパク質が、重鎖H1(配列番号7)のCDRのうちの1以上若しくは全て及び/又は軽鎖L1(配列番号11)のCDRのうちの1以上若しくは全て、或いはこれらのCDR変異体を含んでなる、請求項3に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項5】
約10nM以下のKDを有する、請求項4に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項6】
前記抗原結合タンパク質が、CDRH1(配列番号1)、CDRH2(配列番号2)、CDRH3(配列番号3)、CDRL1(配列番号4)、CDRL2(配列番号5)、及びCDRL3(配列番号6)からなる群より選択されるCDRのうちの1以上又は全て、或いはこれらのCDR変異体を含んでなる、請求項3、4又は5に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項7】
前記抗原結合タンパク質が、ヒト化抗体若しくはヒト抗体又はこれらの機能的断片である、請求項3〜6のいずれか一項に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項8】
前記抗原結合タンパク質が、IgG1抗体である、請求項4〜7のいずれか一項に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項9】
前記抗原結合タンパク質が、ドメイン抗体である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項10】
前記抗原結合タンパク質が、IL−18に対する結合について、配列番号7の重鎖配列(H1)及び配列番号11の軽鎖配列(L2)を含んでなる抗体と競合する、請求項4〜9のいずれか一項に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項11】
前記抗原結合タンパク質が、配列番号7の重鎖配列(H1)又はそれに対して90%の同一性を有する重鎖配列と、配列番号11の軽鎖配列(L2)又はそれに対して90%の同一性を有する軽鎖配列とを有する抗体である、請求項4に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項12】
前記タンパク質が、単離された又は組換え技術により作製されたIL−18BPである、請求項2に記載のIL−18アンタゴニスト。
【請求項13】
前記代謝障害が、2型糖尿病である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項14】
前記代謝障害が、肥満である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項15】
前記抗原結合タンパク質が、前記患者の血糖コントロールを高める、請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項16】
前記患者が、ヒト患者である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項17】
前記抗原結合タンパク質が、1ヶ月に1回投与されるものである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項18】
前記抗原結合タンパク質が、6ヶ月に1回投与されるものである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項19】
前記抗原結合タンパク質が、皮下投与されるものである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項20】
前記抗原結合タンパク質が、皮内投与されるものである、請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗IL−18抗原結合タンパク質。
【請求項21】
治療上有効な量のIL−18アンタゴニストを代謝障害に罹患している患者に投与することにより、前記患者を治療する方法。
【請求項22】
予防上有効な量のIL−18アンタゴニストを代謝障害に罹患しやすい患者に投与することにより、前記患者における代謝障害を予防する方法。
【請求項23】
治療上有効な量のIL−18アンタゴニストを患者に投与することにより、前記患者の血糖コントロールを改善する方法。
【請求項24】
患者における代謝障害を予防又は治療する薬剤を製造するための請求項1〜23のいずれか一項に記載のIL18アンタゴニストの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−518863(P2013−518863A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551646(P2012−551646)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051749
【国際公開番号】WO2011/098424
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【Fターム(参考)】