説明

仮撚加工糸及びその製造方法並びにその織編物

【課題】低頻度で上品な斑感と適度な膨らみ感及び適度なハリ感とシャリ感とを有し、かつ糸形態安定性に優れた、上品な意匠性を有する織編物を提供することができる仮撚加工糸及びその製造方法、並びに同仮撚加工糸を使ったその織編物を提供する。
【解決手段】走行中のマルチフィラメント糸(12)に、液体ディスペンサー(14)を用いて、水又は水性液体を間欠的に塗布し、引き続き仮撚加工を施すことにより仮撚加工糸(11)を得る。この仮撚加工糸(11)は、水又は水性液体が付着した部分が仮撚加撚と逆方向の撚りを有する過解撚部からなる集束部となり、水又は水性液体が付着していない部分が仮撚加撚と同方向の仮撚トルクを有する仮撚捲縮部となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形態安定性に優れ、織編物表面の凹凸変化が少なく、低頻度で上品な斑感と適度な膨らみ感及び適度なハリ感とシャリ感を併せ持った織編物を提供することができる仮撚加工糸及びその製造方法、並びにその織編物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、織編物の表面に斑付与可能な加工糸は、これまで種々検討されてきた。例えば、特開平10−219536号公報(特許文献1)によれば、旋回流ノズルを用いて仮撚加工を行い、集束部と嵩高部を形成し、意匠性に優れた仮撚加工糸が提案されているが、集束部の構成比率が30〜50%であるため、意匠効果が大きく、集束部の出現頻度も多いために、斑感付与も多くなり、織編物の表面変化が粗々しいものとなる。
【0003】
また例えば、特開2005−240232号公報(特許文献2)によれば、2本のマルチフィラメント糸を用いて、SZ交互撚形態部と捲縮形態部を形成し、織編物表面の凹凸変化が少ない仮撚加工糸が提案されている。該仮撚加工糸を用いて、上品な斑感は得られるが、SZ交互撚構造のためトルクが大きくなりやすく、また2本のマルチフィラメント糸の諸撚効果により織編物の風合いが硬くなりやすく、更には構成糸の本数が2本以上のため総繊度が大きく、織編物の薄地化が困難である。
【0004】
また例えば、特開昭61−055223号公報(特許文献3)によれば、ポリエステル高配向未延伸糸を用いて、水又は水性液体を付与して、延伸仮撚を施すことにより極めて大きい繊度差を有し、織編物に凹凸感に富んだ織編物を得る技術が提案されているが、加工糸の繊度差による変化のため、細繊度部が織編物の上で虫食い状となり、欠点となりやすい。
【特許文献1】特開平10−219536号公報
【特許文献2】特開2005−240232号公報
【特許文献3】特開昭61−055223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このように従来技術における問題点を解決するものであり、低頻度で上品な斑感と適度な膨らみ感及び適度なハリ感とシャリ感とを有し、かつ糸形態安定性に優れた、上品な意匠性を有する織編物を提供することができる仮撚加工糸及びその製造方法、並びに同仮撚加工糸を使ったその織編物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の第1の基本的な構成である、集束部と捲縮部とを有するマルチフィラメント糸からなる仮撚加工糸であって、集束部は仮撚加撚と逆方向の撚りを有する過解撚部であり、捲縮部は仮撚加撚と同方向の仮撚トルクを有する仮撚捲縮部とからなることを特徴とする仮撚加工糸により解決される。
【0007】
好適な態様によれば、集束部の加工糸全体に占める割合が3%以上30%未満で、かつ、集束部の長さが0.1m以上0.4m以下であり、更には集束部と捲縮部を有するマルチフィラメント糸からなる仮撚加工糸が、セルロース系マルチフィラメント糸又はセルロース系マルチフィラメント糸を50質量%以上含む複合糸からなる。
【0008】
本発明の第2の基本的構成は、走行中のマルチフィラメント糸に、液体ディスペンサーを用いて、水又は水性液体を間欠的に塗布し、引き続き仮撚加工を施すことを特徴とする仮撚加工糸の製造方法であって、水又は水性液体が付着した部分が仮撚加撚と逆方向の撚りを有する過解撚部からなる集束部を形成し、水又は水性液体が付着していない部分が仮撚加撚と同方向の仮撚トルクを有する仮撚捲縮部からなることを特徴とする仮撚加工糸の製造方法にある。
また本発明にあっては、前記構成を備えた仮撚加工糸を含む織編物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、仮撚加工糸が撚りを有する集束部と捲縮部とを有することにより、低頻度で上品な斑感と適度な膨らみ感及び、適度なハリ感とシャリ感を有し、かつ糸形態安定性に優れた、上品な意匠性を有する織編物を提供することができ、衣料用分野に与える価値が大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の仮撚加工糸は、集束部と捲縮部とを有するマルチフィラメント糸からなり、集束部は仮撚加撚と逆方向の撚りを有する過解撚構造を有している。過解撚されることで、集束部にも捲縮が付与される。すなわち、仮撚の加撚から解撚されるゼロ点を通過するため、仮撚捲縮が付与された上に実撚が付与されるために、集束部にも捲縮が付与される。そのため、集束部は染色工程で仮撚捲縮が発現されるので、集束部と捲縮部の繊度差が小さくなり、虫食い状になりにくく、欠点となりにくい。その結果、織編物表面に凹凸変化の少ない、上品な斑感を付与することができる。捲縮部は仮撚加撚方向と同方向の仮撚トルクを仮撚捲縮部からなる部分をいい、糸を長手方向に見ると、集束部の次に未解撚部、仮撚捲縮部が続いた糸形態を呈しているように見えるが、ここで言う未解撚部は仮撚加撚方向と同方向の仮撚トルクを有しているために、集束部の存在により、捲縮部の一部が未解撚のような撚形態を呈しているように見えるだけであり、実質的に未解撚部と仮撚捲縮部とが明確に分離できるものではない。
【0011】
本発明の仮撚加工糸において、集束部は仮撚加工糸全体に占める割合が3%以上30%未満、5%以上25%未満であることがより好ましい。集束部の割合が3%未満では、斑感の効果が低く、織編物表面の欠点となる可能性がある。また30%以上では、集束部の出現頻度が煩雑となり、織編物表面の凹凸変化が大きく、また集束部の割合が増えることで、織編物の風合いが硬くなりやすい。
【0012】
集束部の長さは0.1m以上0.4m以下、0.15m以上0.35m以下がより好ましい。集束部が0.1m未満では、斑感の効果が低く、欠点となる可能性がある。0.4mを超える場合は、織編物としたときに集束部が長くなり、段のように見え、織編物の品位を損なうものとなりやすい。
【0013】
本発明における仮撚加工糸を構成するマルチフィラメント糸は、セルロース系マルチフィラメント糸の単体からなるもの、又はセルロース系マルチフィラメント糸を50質量%以上含む複合糸である必要がある。本発明の仮撚加工糸はマルチフィラメント糸に低頻度で上品な斑感を付与することを目的としている。仮撚加工糸の成分は、セルロース系マルチフィラメント糸が単体から構成されることが好ましいが、仮撚加工糸の強力、また得られる織編物の風合いを考慮してセルロース系マルチフィラメント糸を50質量%以上含む複合糸を用いてもよい。
【0014】
本発明における仮撚加工糸を構成するセルロース系マルチフィラメント糸の材質は特に限定されるものではなく、再生繊維のレーヨン、リヨセル、キュプラ、半合成繊維のアセテート等を用いることが可能である。またセルロース系マルチフィラメント糸と複合する相手としても、特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑性マルチフィラメント糸であるポリエステル繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリアミド繊維等を用いることが可能である。更に、セルロース系マルチフィラメント糸も、複合するマルチフィラメント糸も、個々の構成フィラメントの断面形状、繊度斑、染色特性等は特に限定されるものではなく、更に本発明の目的を逸脱しない範囲で各種添加物等を含むことも可能である。
【0015】
次に、上述した本実施形態の仮撚加工糸を製造する方法の一例について、図面を参照しながら具体的に説明する。ここで図1は、本発明の仮撚加工糸を製造する装置の構成を概略的に示している。
【0016】
図1に示した製造装置は、まずマルチフィラメントからなる供給糸12を、糸条供給ガイド13、15を通して第1糸条供給ローラー16に供給する。第1糸条供給ローラー16に供給する前に、液体ディスペンサー14を用いて、走行中の供給糸12に水又は水性液体を間欠的に塗布し、供給糸12に水又は水性液体を含んだ部分と、水又は水性液体を含まない部分とを交互に形成する。
【0017】
液体ディスペンサー14で水又は水性液体を間欠的に塗布された供給糸12は、次に、第1糸条供給ローラー16と第1引取ローラー19との間で仮撚加工が行われる。第1糸条供給ローラー16と第1引取ローラー19との間には、第1ヒーター(接触ヒーター)17と仮撚スピンドル18が配される。
【0018】
供給糸は第1糸条供給ローラー16を介して所定のオーバーフィード率で仮撚加工領域に供給される。仮撚加工領域に供給された供給糸12は、仮撚スピンドル18で所定方向に回転が与えられることにより、第1糸条供給ローラー16と仮撚スピンドル18との間(即ち、加撚領域)で仮撚加撚方向の撚りが掛けられると共に、第1ヒーター17により熱処理が行われる。
【0019】
続いて、供給糸12は、仮撚スピンドル18を通過して、仮撚スピンドル18と第1引取ローラー19との間(即ち、解撚領域)で仮撚加撚方向とは逆方向の撚りが掛けられて解撚作用を受ける。この一連の操作により供給糸12は、液体ディスペンサー14で間欠的に水又は水性液体を塗布された部分が、水又は水性液体を含むことにより、集束性が高まることで、設定された仮撚加撚方向の撚りを付与することができず、設定よりも低い加撚数となる。すなわち、設定加撚数以下となるために、解撚領域で過解撚が付与され、集束部となる。
【0020】
また水又は水性液体を含まない部分は、仮撚加撚方向の撚りが掛けられた後に熱処理され、仮撚加撚方向とは逆方向の撚りが掛けられて解撚作用を受けるため、大部分は仮撚加撚と同方向の仮撚トルクを有する無撚の仮撚捲縮部となるが、水又は水性液体を塗布された部分によって発生した仮撚加撚と逆方向の撚りを有する集束部の存在のため、一部は仮撚加撚と同方向の仮撚トルクを有し、かつの仮撚捲縮部と同方向の緩やかな撚りを有する部分となる。
【0021】
このように液体ディスペンサー14を用いて、供給糸12に間欠的に水又は水性液体を塗布し、引き続き仮撚加工を行うことにより、集束部と捲縮部を有する、低頻度で上品な斑感と適度な膨らみ感及び、適度なハリ感とシャリ感を有し、かつ糸形態安定性に優れた、上品な意匠性を有する織編物を提供することができる仮撚加工糸11を得ることができる。
【0022】
更に、図1に示した製造装置において、第1引取ローラー19の後段に、仮撚加工が施された仮撚加工糸11に弛緩熱セットを行う第2ヒーター20(非接触ヒーター)が配されている。この第2ヒーター20で仮撚加工糸11に弛緩熱セット処理を行うことにより、同仮撚加工糸11の顕在トルク軽減等を行うことが出来る。
【0023】
その後、第2ヒーター20で熱セット処理を受けた仮撚加工糸11は、第2引取ローラー21を経由して巻取り部22で巻き取られる。以上のような工程を経ることにより、本発明に係る仮撚加工糸11を製造することができる。但し、弛緩熱セットは、得られる織編物の風合いを考慮して、省略することも可能である。
【0024】
水又は水性液体を含んだ部分の長さは、液体ディスペンサーのノズル口径や液体の塗布時の液体噴射圧力によって調整可能である。塗布量や塗布長さは得られる織編物の見え方や風合い等の目的にあわせて設定すればよい。液体噴射圧力が高くなると走行中のマルチフィラメント糸の糸揺れが大きくなり、水又は水性液体が付着しにくいだけでなく、周囲へ飛散するので、例えば110dTexのマルチフィラメント糸に対して水を塗布する場合であれば、レギュレーター圧力は0.05MPa以下が好ましい。但し、水よりも粘度の高い水性液体を用いる場合に、直線的に塗布できない場合はレギュレーター圧力を高くする必要がある。
【0025】
ここで言う水性液体とは、供給糸であるマルチフィラメントの可塑剤であることが好ましい。例えば、トリアセテートマルチフィラメントの場合は、可塑剤であるトリアセチンが好ましい。
【0026】
本発明の仮撚加工糸11を含む織編物は、その混率並びに織物組織や編物組織を、目的とする風合いや製品外観が得られる範囲で決定すればよく、本発明の仮撚加工糸11単独からなる織編物、或いは本発明の仮撚加工糸11を織編物の一部に用いた交編物、交織物でもよい。
【0027】
また、織編物に本発明の仮撚加工糸11を含んだ撚糸を用いてもよい。撚糸とは、本発明の仮撚加工糸11を撚糸したもの、或いは本発明の仮撚加工糸11同士を合撚したもの、又は本発明の仮撚加工糸11と他繊維とを合撚したものであり、本発明の仮撚加工糸11の特徴とともに他繊維の特徴をも併せ持たせることも可能となる。例えば、本発明の仮撚加工糸11と、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、熱可塑性繊維等の他繊維とを合撚することで、該他繊維が有している本来の特徴、例えば、光沢感、清涼感、シャリ感、ウェット感等の風合いを損なわずに、これらの特徴を併せ持つ織編物が得られる。また、合撚による撚り効果でハリコシ感に富んだ織編物を得ることが可能となる。
【0028】
上述の合撚に使用する他繊維とは、例えば、綿、麻、絹等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリエステル繊維等の熱可塑性繊維等である。また、それぞれの繊維を構成する単繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、得られる織編物の風合い、光沢等を考慮して、菊型、円形、扁平、Y字等の糸断面形状を選択すればよく、また単繊維繊度、染色特性等についても特に限定されない。
【0029】
本発明の撚糸の撚り方向及び合撚数には特に限定がなく、構成糸条の本数、本発明の仮撚加工糸11の混率、撚り数等は目的とする風合いや織編物外観が得られる範囲で適宜設定すればよいが、斑感を強調するためには、仮撚加撚と逆方向に撚糸することがより好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。なお、実施例及び比較例で得られた各マルチフィラメント糸の物性の測定及び評価は、以下の方法を用いて行った。
(1)集束部の長さの測定方法
1mの糸条に3.6×10-3cN/dTexの初荷重を付与し、集束部の長さLを10点測定し、その平均値として算出した。
(2)捲縮部の長さの測定方法
1mの糸条に3.6×10-3cN/dTexの初荷重を付与し、捲縮部の長さMを10点測定し、その平均値として算出した。
(3)集束部の占有率の測定方法
1mの糸条に3.6×10-3cN/dTexの初荷重を付与し、集束部の長さLと捲縮部の長さMを10点測定し、下記式により算出した。
集束部占有率=L/M×100
(4)織編物評価
得られた嵩高仮撚加工糸あるいは撚糸を製編織して、ハンドリング並びに目視判定による評価を行った。
【0031】
(実施例1)
トリアセテートマルチフィラメント(三菱レイヨン社製、ブライト110dTex/26フィラメント)を供給糸として、糸条供給ガイドを経て、液体ディスペンサー(( 株) サンエイテック社製、741MD−SS)を用いて、液体として水を間欠的に塗布する。水の塗布時間を10ミリ秒、非塗布時間を1000ミリ秒とし、液体を塗布する直前のレギュレーター圧力を0.05MPaで間欠的に水を塗布した。次いで、第1糸条供給ローラーを経て、仮撚加撚域に供給して、加工速度100m/分、仮撚オーバーフィード率(以下、仮撚OFと略記)−3%、仮撚温度160℃(第1ヒーターの温度)、仮撚数1600T/m(Z撚)の条件で仮撚加工を行い、第1引取ローラーを通過し、緩和オーバーフィード率(以下、緩和OFと略記)、緩和温度160℃(第2ヒーター温度)の条件で緩和処理を行い、第2引取ローラーを通過し、巻取り部で巻取り、仮撚加工糸を得た。
得られた仮撚加工糸の糸物性を表1に示す。
【0032】
経糸としてトリアセテートマルチフィラメント(三菱レイヨン社製、ブライト84dTex/20フィラメント)をS撚方向に350T/mで追撚した糸を用い、緯糸として得られた仮撚加工糸を用いて織物(経糸密度10.56羽/cm、緯糸密度140本/2.54cm、サテン組織)を作成し、常法により精錬後に染色温度120℃、染色時間30分の条件で分散染料にて染色を行った。得られた織物は上品な斑感を持ち、適度なフクラミ感とシャリ感、及び適度な光沢感を併せ持ち、糸形態安定性に優れたものであった。
【0033】
(実施例2)
トリアセテートマルチフィラメント(三菱レイヨン社製、ブライト110dTex/26フィラメント)を供給糸として、水の間欠塗布を、水の塗布時間を10〜30ミリ秒、非塗布時間を500〜1000ミリ秒のランダム周期とし、その他の条件は実施例1と同様にして仮撚加工糸を得た。
得られた仮撚加工糸の糸物性を表1に示す。
【0034】
得られた仮撚加工糸を用いて、仮撚加撚と逆方向(S撚)で追撚を行い、実施例1と同じ条件で本発明の仮撚加工糸を追撚した糸を緯糸に用いて織物を作成した。得られた織物は低頻度で上品な斑感を持ち、適度なフクラミ感と撚糸によるシャリ感、及び適度な光沢感を併せ持ち、糸形態安定性に優れたものであった。
【0035】
(実施例3)
トリアセテートマルチフィラメント(三菱レイヨン社製、ブライト110dTex/26フィラメント)とポリエステルマルチフィラメント(三菱レイヨン社製、ブライト11dTex/4フィラメント)を供給糸として、糸条供給ガイドを経て、液体ディスペンサー(( 株) サンエイテック社製、741MD−SS)を用いて、液体として水を間欠的に塗布する。水の塗布時間を10〜30ミリ秒、非塗布時間を500〜1000ミリ秒のランダム周期とし、次いで、第1糸条供給ローラーを経て、仮撚加撚域に供給して、加工速度100m/分、仮撚オーバーフィード率(以下、仮撚OFと略記)−1%、仮撚温度160℃(第1ヒーターの温度)、仮撚数1600T/m(Z撚)の条件で仮撚加工を行い、第1引取ローラーを通過し、弛緩熱セットを行わずに、巻取り部で巻取り、仮撚加工糸を得た。
得られた仮撚加工糸の糸物性を表1に示す。
【0036】
得られた仮撚加工糸を緯糸に用いて実施例1と同じ条件で織物を作成した。得られた織物は低頻度で上品な斑感を持ち、適度なフクラミ感とシャリ感、及び適度なハリ感を併せ持ち、糸形態安定性に優れたものであった。
【0037】
(比較例1)
トリアセテートマルチフィラメント(三菱レイヨン社製、ブライト110dTex/26フィラメント)を供給糸として、水の間欠塗布を、水の塗布時間を100ミリ秒、非塗布時間を1000ミリ秒とし、その他の条件は実施例1と同様にして仮撚加工糸を得た。
得られた仮撚加工糸の糸物性を表1に示す。
【0038】
得られた仮撚加工糸を緯糸に用いて実施例1と同じ条件で織物を作成した。集束部が長く、集束部の占める割合が30%を超えるために、集束部の発現頻度が多く、斑感は得られるものの上品な斑感を得ることができず、また集束部が多いために風合いの硬いものとなり、品位の低いものとなった。
【0039】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の仮撚加工糸を製造する装置の構成を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
11 仮撚加工糸
12 供給糸(セルロース系マルチフィラメント糸)
13 糸条供給ガイド
14 液体ディスペンサー
15 糸条供給ガイド
16 第1糸条供給ローラー
17 第1ヒーター
18 仮撚スピンドル
19 第1引取ローラー
20 第2ヒーター
21 第2引取ローラー
22 巻取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束部と捲縮部を有するマルチフィラメント糸からなる仮撚加工糸であって、集束部は仮撚加撚と逆方向の撚りを有する過解撚部であり、捲縮部は仮撚加撚と同方向の仮撚トルクを有する仮撚捲縮部からなることを特徴とする仮撚加工糸。
【請求項2】
集束部の加工糸全体に占める割合が3%以上30%未満で、かつ、集束部の長さが0.1m以上0.4m以下であることを特徴とする請求項1に記載の仮撚加工糸。
【請求項3】
集束部と捲縮部を有するマルチフィラメント糸からなる仮撚加工糸が、セルロース系マルチフィラメント糸又はセルロース系マルチフィラメント糸を50質量%以上含む複合糸からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の仮撚加工糸。
【請求項4】
走行中のマルチフィラメント糸に、液体ディスペンサーを用いて、水又は水性液体を間欠的に塗布し、引き続き仮撚加工を施すことを特徴とする仮撚加工糸の製造方法であって、水又は水性液体が付着した部分により仮撚加撚と逆方向の撚りを有する過解撚部からなる集束部を形成し、水又は水性液体が付着していない部分により仮撚加撚と同方向の仮撚トルクを有する仮撚捲縮部を形成することを特徴とする仮撚加工糸の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の仮撚加工糸を含むことを特徴とする織編物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−24557(P2010−24557A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184481(P2008−184481)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(301067416)三菱レイヨン・テキスタイル株式会社 (102)
【Fターム(参考)】