説明

仮撚糸の製造方法

【課題】 解舒性が良好で、織編物等の布帛表面品位に優れ、風合いのソフトなポリトリメチレンテレフタレート繊維仮撚糸の製造方法を提供する。
【解決手段】 ポリトリメチレンテレフタレート繊維を供給糸とした仮撚加工において、仮撚後、巻き取り前に延伸ゾーンを設けて、室温にて延伸倍率1.01〜1.30倍の延伸を行うことを特徴とする仮撚糸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を供給糸とした仮撚糸の製造方法に関するものであり、特に解舒性が良好で、布帛表面品位に優れ、風合いのソフトな織編物等が得られるポリトリメチレンテレフタレート繊維仮撚糸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を供給糸とした仮撚糸においては、その捲縮特性や優れた弾性回復性、柔軟な風合いから幅広い提案がされている。例えば、特許文献1には、ポリトリメチレンテレフタレート繊維仮撚糸の優れた弾性回復性により発生する、仮撚糸パッケージの巻き締まりによる紙管潰れや解舒性悪化を防ぐための方法が提案されている。又、特許文献2には、ポリプロピレンテレフタレート繊維の仮撚糸において、パッケージの巻き締まりによって生じる解舒性の悪化や経時変化による糸長方向の染斑の発生を防ぐために、仮撚後、巻き取るまでの間で室温状態で弛緩率5〜25%の弛緩ゾーンを設けることが提案されている。しかしながら、これらの方法で得られる仮撚糸は解舒性については良好であるが、顕在捲縮が不均一で、織編物等の布帛表面の品位や風合いについては不十分であった。
【0003】
【特許文献1】国際公開第00/047505パンフレット
【特許文献2】特開2001−164433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特に解舒性が良好で、布帛表面品位に優れ、風合いのソフトな織編物等が得られるポリトリメチレンテレフタレート繊維仮撚糸の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、ポリトリメチレンテレフタレート繊維仮撚糸の製造方法において特定の条件を付加することにより、目的を達成することができることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明はポリトリメチレンテレフタレート繊維を供給糸とした仮撚加工において、仮撚後、巻き取り前に延伸ゾーンを設けて、室温にて延伸倍率1.01〜1.30倍の延伸を行うことを特徴とする仮撚糸の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を供給糸とし、顕在捲縮が均一であることから、解舒性が良好で、これを使った織編物等の布帛では表面品位に優れ、且つ、ソフト風合いを有する織編物が得られるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明においてポリトリメチレンテレフタレート繊維とは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、更には80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上の範囲で含有する繊維をいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、更には20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメ
チレンテレフタレートを包含する。
【0008】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の好ましい特性としては、強度は2〜5cN/dtex、好ましくは2.5〜4.5cN/dtex、さらには3〜4.5cN/dtexが好ましい。伸度は30〜60%、好ましくは35〜55%、さらには40〜55%が好ましい。弾性率は30cN/dtex以下、好ましくは10〜30cN/dtex、さらには12〜28cN/dtex、特に15〜25cN/dtexが好ましい。10%伸長時の弾性回復率は70%以上、好ましくは80%以上、さらには90%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0009】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適切な反応条件下に結合せしめることにより製造される。この製造過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしても良いし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に製造した後、ブレンドしたり、複合紡糸(偏芯鞘芯、サイドバイサイド等)により少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートで構成される潜在捲縮発現性ポリエステル系繊維としてもよい。
【0010】
複合紡糸に関しては、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報等に例示されるような、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロンを並列的あるいは偏芯的に配置したサイドバイサイド型又は偏芯シースコア型に複合紡糸したものがあり、特にポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせや、固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましく、特に、特開2000−239927号公報に例示されるような固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを用い、低粘度側が高粘度側を包み込むように接合面形状が湾曲しているサイドバイサイド型に複合紡糸したものが、高度のストレッチ性と嵩高性を兼備するものであり特に好ましい。2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.4(dl/g)であることが好ましく、特に0.1〜0.35(dl/g)、さらに0.15〜0.35(dl/g)がよい。例えば高粘度側の固有粘度を0.7〜1.3(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.5〜1.1(dl/g)から選択されるのが好ましい。尚、低粘度側の固有粘度は0.8(dl/g)以上が好ましく、特に0.85〜1.0(dl/g)、さらに0.9〜1.0(dl/g)がよい。
【0011】
また、この複合繊維自体の固有粘度即ち平均固有粘度は、0.7〜1.2(dl/g)がよく、0.8〜1.2(dl/g)がより好ましい。特に0.85〜1.15(dl/g)が好ましく、さらに0.9〜1.1(dl/g)がよい。
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸されている糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである
二種のポリエステル成分の複合比は、一般的に質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多いがとくに限定されず、接合面形状も、例えば直線又は曲線形状のものがあるが、特に限定されない。又、総繊度は20〜300dtex、単糸繊度は0.5〜20dtexが好ましく用いられる。
【0012】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等が挙げられる。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用出来る。
更に、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0013】
本発明においてポリトリメチレンテレフタレート繊維の紡糸については、1500m/分程度の巻き取り速度で未延伸糸を得た後、2.0〜3.5倍程度で延撚する方法、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻き取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)の何れを採用しても良い。また、溶融紡糸において、2000m/分以上、好ましくは2500〜4000m/分の巻き取り速度で巻き取って得られる部分配向未延伸糸を用いることもできる。又、繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面形状においても、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
仮撚加工法としては、一般に用いられているピンタイプ、ディスクフリクションタイプ、ニップベルトタイプ等のいかなる方法によるものでも良い。更に、複合仮撚(同時仮撚、先撚仮撚(先撚同方向仮撚や先撚異方向仮撚)、伸度差仮撚、位相差仮撚、融着仮撚等)、仮撚加工後に後混繊等の手段を応用しても良い。
【0014】
本発明の製造方法において、ポリトリメチレンテレフタレート繊維の仮撚ゾーンの条件は特に限定されないが、次の範囲内で選定されるのが好ましい。
仮撚ヒーター温度は、第1ヒーターの出口直後の糸条温度が100〜200℃、好ましくは120〜180℃、より好ましくは130〜170℃の範囲内になるようにヒーター温度を設定することが好ましい。
仮撚数Tは、次式で計算される仮撚数の係数Kの値が18500〜37000の範囲になるように仮撚数Tを設定することが好ましく、仮撚糸の太さによって好ましい仮撚数Tが決定される。
T(T/m)=K/(仮撚糸の繊度(dtex))1/2
仮撚後、巻き取るまでに室温にて延伸倍率1.01〜1.30倍、好ましくは延伸倍率1.01〜1.20倍、より好ましくは延伸倍率1.01〜1.10倍の延伸を行う室温延伸ゾーンを設けることが必要である。延伸倍率とは、仮撚後のデリベリローラー周速と巻き取りローラー前のフィードローラー周速の比で設定され、巻き取りローラー前フィードローラー周速/仮撚後のデリベリローラー周速で表される。
【0015】
室温にて延伸して、糸に張力を与え、伸長することにより、伸長変形抗力の小さい捲縮成分が減殺され、伸長変形抗力が大きく、細かで強固な捲縮成分が残り、更に潜在している捲縮が顕在化することにより、顕在捲縮が増加し、より均一な捲縮が多量に顕在化している仮撚糸になることから、より解舒性が良好になり、織編物等の布帛表面品位が平滑で、風合いのソフトな布帛を得ることができる。
延伸ゾーンの温度は室温が良く、室温とは10〜35℃の温度をいう。室温が35℃よりも高いと、糸に熱セットの効果が働き、それにより捲縮性が低下し、伸縮性の良好な布帛を得ることが出来ない。
【0016】
延伸倍率が1.01倍未満の場合には、伸長変形抗力の小さい捲縮成分と伸長変形抗力が大きく、細かで強固な捲縮成分が混在した不均一な顕在捲縮をもつ仮撚糸となることから、解舒時にビリツキの原因となって解舒性が低下したり、この仮撚糸を使った織編物はその表面品位に凹凸が見られ、その結果風合いがザラツキ、硬いものとなる。
延伸倍率が1.30倍を越える場合には、糸張力が高くなりすぎ、捲縮の弾性限界を超え、糸自体が伸ばされてしまう。捲縮の弾性限界を超えてしまうと、その糸の捲縮は消滅し、強いては単糸切れの欠点や、糸自体の切れ等の加工性不良となってしまう。その結果、得られる仮撚糸は捲縮性が極度に低下した伸縮性が不良のものとなる。
【0017】
巻き取り条件については、平均巻き取り張力を0.05〜0.22cN/dtexで巻き取ることが望ましく、好ましくは0.07〜0.18cN/dtex、より好ましくは0.09〜0.13cN/dtexの範囲が良い。この張力範囲で巻き取ることにより、解舒性の良好な後工程で使いやすい仮撚糸パッケージを得ることができる。尚、巻き取り張力は、巻き取りローラー上でのトラバースガイドの往復運動によって周期的に変化しているが、その平均を平均巻き取り張力とした。
【0018】
平均巻き取り張力が0.05cN/dtex未満だと、仮撚糸パッケージに綾落ちが生じたり、運搬中の振動等によりパッケージの型崩れが起き易くなる。又、顕在捲縮を多量に発生した状態で巻き取るということになることから、顕在捲縮同士が絡みやすくなり、織編物作成時に解舒性不良となり、編み立て性や製織性が低下したり、解舒張力が変動することによって、織編物上で欠点となる。
平均巻き取り張力が0.22cN/dtexを越えると、巻き締りによる紙管潰れが発生し、良好なパッケージ形態を保てなることや、内外層での捲縮変化や経時変化が大きくなり、織編地の品位を低下させる。又、仮撚紙パッケージが耳高形状になり、毛羽や解舒張力変動が発生する。
綾角度については、良好なパッケージ形態で、解舒性に支障がなければ特に限定されないが、具体的には10〜18度とするのが好ましい。
【実施例】
【0019】
本発明を実施例などに基づいて更に具体的に説明する。但し、本発明は実施例などにより何ら限定されるものではない。尚、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)固有粘度[η]
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義中のηrは、純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリマーの稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した該溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
【0020】
(2)強度、伸度
JIS−L−1013、化学繊維フィラメント糸試験方法の引張強さ、伸び率の試験方法に従って測定を行った。測定は各試料につき10回ずつ行い、その平均値を求めた。
(3)熱水収縮率
JIS−L−1013、化学繊維フィラメント糸試験方法の熱水収縮率B法の試験方法に従って測定を行った。測定は各試料につき5回ずつ行い、その平均値を求めた。
【0021】
(4)顕在捲縮伸長率
JIS−L−1090、合成繊維フィラメントかさ高加工糸試験方法の伸縮性試験A法に準じ、仮撚糸パッケージから取ったフィラメントに前処理を施さないで測定を行った。測定は各試料につき5回ずつ行い、その平均値を求めた。
(5)巻き取り張力
巻き取りローラー直前の張力を、金井工機社製:テェックマスターCM−50FRを用いて測定し、平均巻き取り張力を読み取った。
【0022】
[実施例1]
固有粘度[η]=0.9(dl/g)のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸温度285℃、ホットロール温度90℃、紡糸速度3200m/分にて、98dtex/36fの部分配向未延伸糸を得た。部分配向未延伸糸の強度、伸度、熱水収縮率は、各々2.4cN/detx、90.0%、6.8%であった。
この部分配向未延伸糸を、TMTマシナリー(株)社製:マッハ33Hニップベルト仮撚機を使用して、糸速度400m/分、延伸比(DR)1.225倍、ツイスターベルト角110°、ツイスターベルト圧1.5kg/cm2 、ツイスターベルト周速比(VR)1.390、第1ヒーター温度170℃条件で延伸仮撚加工を行い、次いで第2ヒーターゾーンにて第2ヒーターをOFFの状態で、延伸倍率1.03倍の延伸を行った後、平均巻き取り張力が0.12cN/dtexになるように巻き取り率を設定し、83dtex/36fの仮撚糸を得た。得られた仮撚糸は顕在捲縮伸長率が90.2%であった。得られた仮撚糸は解舒性が良好で、28GG丸編み機でスムース組織に編成したときの丸編地の表面品位が平滑で、風合いもソフトであった。
【0023】
[実施例2]
実施例1で用いたのと同じポリトリメチレンテレフタレート部分配向未延伸糸を用いて、同じ仮撚条件にて延伸仮撚を行い、次いで第2ヒーターゾーンにて第2ヒーターをOFFの状態で、延伸倍率1.14倍の延伸を行った後、平均巻き取り張力が0.12cN/dtexになるように巻き取り率を設定し、81dtex/36fの仮撚糸を得た。得られた仮撚糸は顕在捲縮伸長率が97.1%であった。得られた仮撚糸は解舒性が良好で、28GG丸編み機でスムース組織に編成したときの丸編地の表面品位が平滑で、風合いもソフトであった。
【0024】
[実施例3]
実施例1で用いたのと同じポリトリメチレンテレフタレート部分配向未延伸糸を用いて、同じ仮撚条件にて延伸仮撚を行い、次いで第2ヒーターゾーンにて第2ヒーターをOFFの状態で、延伸倍率1.25倍の延伸を行った後、平均巻き取り張力が0.12cN/dtexになるように巻き取り率を設定し、80dtex/36fの仮撚糸を得た。得られた仮撚糸は顕在捲縮伸長率が89.9%であった。得られた仮撚糸は解舒性が良好で、28GG丸編み機でスムース組織に編成したときの丸編地の表面品位が平滑で、風合いもソフトであった。
【0025】
[実施例4]
固有粘度[η]=0.9(dl/g)のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸温度285℃、第1ホットロール温度60℃、第2ホットロール温度133℃の間で延伸倍率は延伸後の繊度が84dtexとなるように設定して熱延伸し、4180m/分で巻き取った84dtex/36fの延伸糸を得た。延伸糸の強度、伸度、熱水収縮率は、各々3.0cN/detx、49.7%、8.2%であった。
この延伸糸をTMTマシナリー(株)社製:マッハ33Hニップベルト仮撚機を使用して、糸速度300m/分、延伸比(DR)1.070倍、ツイスターベルト角115°、ツイスターベルト圧1.5kg/cm2 、ツイスターベルト周速比(VR)1.430、
第1ヒーター温度170℃条件で延伸仮撚加工を行い、次いで第2ヒーターゾーンにて第2ヒーターをOFFの状態で延伸倍率1.026倍の延伸を行った後、平均巻き取り張力が0.12cN/dtexになるように巻き取り率を設定し、82dtex/36fの仮撚糸を得た。得られた仮撚糸は顕在捲縮伸長率が85.9%であった。得られた仮撚糸は解舒性が良好で、28GG丸編み機でスムース組織に編成したときの丸編地の表面品位が平滑で、風合いもソフトであった。
【0026】
[実施例5]
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得、次いでホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が84dtexとなるように設定して延撚し、84dtex/36fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの強度、伸度、熱水収縮率は、各々2.5cN/detx、40.5%、11.4%で、固有粘度は高粘度側が[η]=0.9(dl/g)、低粘度側が[η]=0.7(dl/g)であった。
【0027】
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とした。
この複合マルチフィラメントを、TMTマシナリー(株)社製:マッハ33Hニップベルト仮撚機を使用して、糸速度400m/分、延伸比(DR)1.071倍、ツイスターベルト角107.5°、ツイスターベルト圧1.5kg/cm2 、ツイスターベルト周速比(VR)1.350、第1ヒーター温度165℃条件で延伸仮撚加工を行い、次いで第2ヒーターゾーンにて第2ヒーターをOFFの状態で延伸倍率1.035倍の延伸を行った後、平均巻き取り張力が0.12cN/dtexになるように巻き取り率を設定し、83dtex/36fの仮撚糸を得た。得られた仮撚糸は顕在捲縮伸長率が112.2%であった。得られた仮撚糸は解舒性が良好で、28GG丸編み機でスムース組織に編成したときの丸編地の表面品位が平滑で、風合いもソフトであった。
【0028】
[比較例1]
実施例1で用いたのと同じポリトリメチレンテレフタレート部分配向未延伸糸を用いて、同じ仮撚条件にて延伸仮撚を行い、次いで第2ヒーターゾーンにて第2ヒーターをOFFの状態で1.80%の弛緩を行った後、平均巻き取り張力が0.12cN/dtexになるように巻き取り率を設定し、83dtex/36fの仮撚糸を得た。得られた仮撚糸は顕在捲縮伸長率が76.9%であった。解舒性はやや不良であり、28GG丸編み機でスムース組織に編成したときの丸編地の表面品位に凹凸が見られ、風合いもやや硬めであった。
【0029】
[比較例2]
実施例1で用いたのと同じポリトリメチレンテレフタレート部分配向未延伸糸を用いて、同じ仮撚条件にて延伸仮撚を行い、次いで第2ヒーターゾーンにて第2ヒーターをOFFの状態で延伸倍率1.37倍の延伸を行った後、平均巻き取り張力が0.12cN/dtexになるように巻き取り率を設定し、68dtex/36fの仮撚糸を得た。得られた仮撚糸は顕在捲縮伸長率が8.5%であった。得られた仮撚糸パッケージには毛羽が見られ、解舒性は不良であり、28GG丸編み機でスムース組織に編成したときの丸編地の表面にスジ様の欠点が数多く見られた。風合いも硬く、伸縮性の乏しいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の製造方法は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を供給糸とし、仮撚糸の顕在捲縮が均一であることから、解舒性が良好で、これを使った織編物等の布帛では表面品位に優れ、且つ、ソフト風合いを有する織編物を得ることが出来る。したがって、仮撚糸を用いた織編物分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維を供給糸とした仮撚加工において、仮撚後、巻き取り前に延伸ゾーンを設けて、室温にて延伸倍率1.01〜1.30倍の延伸を行うことを特徴とする仮撚糸の製造方法。
【請求項2】
平均巻き取り張力が0.05〜0.22cN/dtexで巻き取ることを特徴とする請求項1記載の仮撚糸の製造方法。

【公開番号】特開2007−77529(P2007−77529A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265431(P2005−265431)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(302071162)ソロテックス株式会社 (45)
【Fターム(参考)】