説明

仮支持工法車の制御装置

【課題】簡便な構成で電線の仮支持作業を安全に行うことが可能な仮支持工法車の制御装置を提供する。
【解決手段】仮支持工法車の制御装置は、ブームの作動範囲を設定する作動範囲設定部83と、作動範囲設定部83により設定された作動範囲内でブームが作動するようにブームの作動を制御する規制部82と、パラメータ設定スイッチ70とを備え、作動範囲設定部83は、パラメータ設定スイッチ70から入力された、電線のサイズと、電線の水平角度(電線の被支持部分における水平方向の折れ曲がり角度)と、季節と、径間(電線を支持する電柱間の距離)とに基づいて、仮支持装置が電線を支持する仮支持状態でのブームの作動範囲である仮支持作動範囲および、仮支持装置が電線を支持しない非支持状態でのブームの作動範囲である非支持作動範囲をそれぞれ設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電工事、特に電柱の建替え作業等に有用な仮支持工法車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電柱の建替え作業や、電柱上において電線等を支持している腕金等の交換作業を行うときには、電柱上に支持されている電線を当該電柱の代わりに支持させるため、ブームの先端に仮支持装置を備えた仮支持工法車が用いられることが多い(例えば、特許文献1を参照)。このような仮支持工法車によって電線を支持したとき、ブームの先端には、電線の重量による垂直荷重および電線の張力による水平荷重が作用する。これらの荷重は、仮支持工法車の車体に対して転倒方向に作用する転倒モーメントを発生させる。したがって、この転倒モーメントが車体の側方等に張り出したアウトリガにより支持し得る定格モーメントに達すると、車体の安定性が低下するおそれがある。
【0003】
これに対し、バネを利用した荷重検出装置を用いて仮支持装置(ブームの先端)に作用する垂直荷重および水平荷重を検出し、検出した垂直荷重および水平荷重が規制荷重に到達すると、ランプおよびブザー等を用いて作業者に知らせる方法が考案されている。また、ロードセルを利用した荷重検出装置を用いて仮支持装置(ブームの先端)に作用する垂直荷重および水平荷重をそれぞれ検出し、検出した垂直荷重および水平荷重が規制荷重に到達すると、ランプおよびブザー等を用いて作業者に知らせる方法も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2537589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バネを利用した荷重検出装置を用いて垂直荷重および水平荷重を検出する場合、所定の規制荷重しか検出できないため、ブームの作動範囲を細かく設定することができないという問題があった。また、ロードセルを利用した荷重検出装置を用いて垂直荷重および水平荷重をそれぞれ検出する場合、垂直荷重および水平荷重を検出するロードセルをそれぞれ設ける必要があり、さらに、専用の荷重検出機構を設ける必要があるため、仮支持装置の構造が複雑で大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、簡便な構成で電線の仮支持作業を安全に行うことが可能な仮支持工法車の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のため、本発明に係る仮支持工法車の制御装置は、走行可能な車体と、前記車体上に起伏および伸縮動自在に配設されたブームと、前記ブームの先端部に取り付けられて電線を支持可能な仮支持装置とを備え、前記仮支持装置により前記電線を支持可能な仮支持工法車の制御装置(例えば、実施形態におけるコントローラ80)であって、前記ブームの作動範囲を設定する作動範囲設定部と、前記作動範囲設定部により設定された前記作動範囲内で前記ブームが作動するように前記ブームの作動を制御するブーム作動制御部(例えば、実施形態における規制部82)と、前記電線のサイズおよび、前記仮支持装置に支持される前記電線の被支持部分における水平方向の折れ曲がり角度が入力される入力部(例えば、実施形態におけるパラメータ設定スイッチ70)とを備え、前記作動範囲設定部は、前記入力部から入力された前記電線のサイズおよび前記折れ曲がり角度に基づいて、前記仮支持装置が前記電線を支持する仮支持状態での前記ブームの作動範囲である仮支持作動範囲および、前記仮支持装置が前記電線を支持しない非支持状態での前記ブームの作動範囲である非支持作動範囲をそれぞれ設定するようになっている。
【0008】
なお、上述の発明において、作動範囲設定部は、前記入力部から入力された、前記電線のサイズと、前記折れ曲がり角度と、季節または気温と、前記電線を支持する電柱間の距離とに基づいて、前記仮支持作動範囲および前記非支持作動範囲をそれぞれ設定することが好ましい。また、作動範囲設定部は、前記電線のサイズと、前記折れ曲がり角度と、前記季節または気温とを用いるようにしてもよく、前記電線のサイズと、前記折れ曲がり角度と、前記電柱間の距離とを用いるようにしてもよい。
【0009】
また、上述の発明において、前記仮支持状態にするための操作が行われる仮支持操作部(例えば、実施形態における四面ローラ開閉スイッチ66)を有し、前記ブーム作動制御部は、前記仮支持操作部から操作信号が入力されると、前記作動範囲を前記非支持作動範囲から前記仮支持作動範囲に切り替えて、前記ブームの作動を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作動範囲設定部は、入力部から入力された電線のサイズおよび折れ曲がり角度に基づいて、仮支持装置が電線を支持する仮支持状態でのブームの作動範囲である仮支持作動範囲および、仮支持装置が電線を支持しない非支持状態でのブームの作動範囲である非支持作動範囲をそれぞれ設定するため、ロードセル等を用いることなく、安全なブームの作動範囲を精度よく設定することができ、簡便な構成で電線の仮支持作業を安全に行うことが可能になる。
【0011】
なお、上述の発明において、作動範囲設定部は、電線のサイズと、折れ曲がり角度と、季節または気温と、電柱間の距離とに基づいて、仮支持作動範囲および非支持作動範囲をそれぞれ設定することが好ましく、このようにすれば、安全なブームの作動範囲をより精度よく設定することができ、電線の仮支持作業をより安全に行うことが可能になる。
【0012】
また、上述の発明において、ブーム作動制御部は、仮支持操作部から操作信号が入力されると、作動範囲を非支持作動範囲から仮支持作動範囲に切り替えて、ブームの作動を制御することが好ましく、このようにすれば、仮支持状態になったときの作動範囲の切り替えを適切に行うことができ、電線の仮支持作業をより安全に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】仮支持工法車の制御系を示すブロック図である。
【図2】仮支持工法車の斜視図である。
【図3】仮支持装置の側面図である。
【図4】仮支持装置の平面図である。
【図5】仮支持装置の正面図である。
【図6】操作装置の正面図である。
【図7】仮支持装置に支持された電線の平面図である。
【図8】ブームの作動範囲の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る制御装置を備えた仮支持工法車1を図2に示している。この仮支持工法車1は、前後輪3a,3bを有して走行可能であり、前部に運転キャブ2aを有したトラック車両をベースに構成される。このトラック車両の車体2の上に油圧モータである旋回モータ6(図2では図示せず、図1を参照)により駆動されて水平旋回可能に構成された旋回台4が配設されている。旋回台4に基端部が枢結されてブーム5が取り付けられており、このブーム5は起伏シリンダ7により起伏動されるようになっている。ブーム5は、基端ブーム5a、中間ブーム5b、および先端ブーム5cを入れ子式に組み合わせて、内蔵のブーム伸縮シリンダ8(図2では図示せず、図1を参照)により伸縮動可能に構成されている。
【0015】
先端ブーム5cは先端にブームヘッド5dを有し、このブームヘッド5dには、電柱の代わりに電線を支持可能な仮支持装置20が取り付けられている。なお、車体2の前後左右の四カ所に下方に伸縮自在なアウトリガ9が設けられており、仮支持作業を行うときには、アウトリガ9を車体2の側方に張出させるとともに下方に伸長させて、車体2を持ち上げ支持できるようになっている。また、車体2の後部には、ブーム5や仮支持装置20等の操作が行われる操作装置50が取り付けられている。
【0016】
仮支持装置20は、図3に示すように、ブームヘッド5dに枢結された垂直ポスト21と、垂直ポスト21に略水平に伸びるように支持されたブラケット26と、ブラケット26に支持されて当該ブラケット26の延伸方向と平行に伸びるアーム部30と、アーム部30に設けられて3本の高圧線HW1〜HW3をそれぞれ支持可能な3つの電線支持具40A〜40Cと、アーム部30に設けられてグランドワイヤGWを支持可能なグランドワイヤ支持具40Gとを有して構成される。なお、3本の高圧線HW1〜HW3はそれぞれ、略水平に並ぶように互いに平行に伸びて、所定の間隔で配置された複数の電柱P(図5を参照)に支持されている。また、グランドワイヤGWは、3本の高圧線HW1〜HW3の上方で平行に伸びて、3本の高圧線HW1〜HW3と同じ電柱Pに支持されている。また、3本の高圧線HW1〜HW3の下方に3本の低圧線LW1〜LW3が配設されており、3本の低圧線LW1〜LW3はそれぞれ、略水平に並ぶように互いに平行に伸びて、3本の高圧線HW1〜HW3と同じ電柱Pに支持されている。
【0017】
垂直ポスト21は、下側部分がブームヘッド5dに枢結されて上下に揺動可能に取り付けられる。ブームヘッド5dと垂直ポスト21との間に配設されたレベリングシリンダ(図示せず)により垂直ポスト21の揺動制御が行われ、ブーム5の起伏角度に拘わらず垂直ポスト21の上部が常に略鉛直に延びて位置するように垂直ポスト21が揺動制御される。このように略鉛直に保持される垂直ポスト21に、ブラケット26が首振り自在に(水平旋回自在に)支持され、ブラケット26はブーム5の起伏角度に拘わらず略水平に伸びるように保持される。また、垂直ポスト21には、ブラケット26を垂直ポスト21に対して首振りさせる首振りモータ22(油圧モータ:図4を参照)および首振り機構(図示せず)が設けられている。
【0018】
ブラケット26は、アーム部30を当該ブラケット26の延伸方向と平行に伸びるように支持する。すなわち、アーム部30を構成する第1および第2アーム33,35は、通常、ブーム5の起伏角度に拘わらず略水平に伸びるように保持される。また、ブラケット26には、図3および図5に示すように、ブラケット26の延伸方向に伸びる軸を回転軸としてアーム部30を回転させる回転モータ27(油圧モータ)および回転機構(図示せず)が設けられている。この回転モータ27および回転機構によって、ブラケット26は、図5に示すように、3つの電線支持具40A〜40Cおよびグランドワイヤ支持具40Gが略鉛直方向を向いて電線を支持可能な鉛直位置と、3つの電線支持具40A〜40Cおよびグランドワイヤ支持具40Gが略水平方向を向く水平位置との間でアーム部30を回転可能に支持するが、この範囲を超えてアーム部30を回転させることも可能である。
【0019】
アーム部30は、図3および図4に示すように、ブラケット26に支持されたアームベース31と、アームベース31に支持されてブラケット26の延伸方向と平行に伸びる第1および第2アーム33,35と、第1アーム33の側部に取り付けられて当該第1アーム33と平行に伸びるサブアーム37とを有して構成される。アームベース31は、アームベース31に配設された揺動シリンダ32(図5を参照)により、第1および第2アーム33,35(および、サブアーム37)を、第1および第2アーム33,35が略水平方向を向く水平支持位置と、第1および第2アーム33,35が鉛直下方を向く鉛直支持位置との間で揺動可能に支持する。なお通常は、第1および第2アーム33,35が水平支持位置に位置する状態でアームベース31に支持される。
【0020】
第1アーム33は、第1基端アーム33aおよび第1先端アーム33bを入れ子式に組み合わせて、内蔵の第1アーム伸縮シリンダ34(図3〜図5では図示せず、図1を参照)により伸縮動可能に構成される。第1基端アーム33aの中央上部には、第1基端アーム33aに対して垂直に伸びるように第1電線支持具40Aが取り付けられる。また、第1先端アーム33bの先端上部には、第1電線支持具40Aと平行に、第1先端アーム33bに対して垂直に伸びるように第3電線支持具40Cが取り付けられる。これにより、第1アーム33を伸縮動させると、第3電線支持具40Cが第1電線支持具40Aに対してスライド移動し、第1電線支持具40Aと第3電線支持具40Cとの間隔を変えることができる。また、第1基端アーム33aの側部先端には、サブアーム37が取り付けられる。
【0021】
第2アーム35は、第1アーム33の側方に平行に配置され、第2基端アーム35aおよび第2先端アーム35bを入れ子式に組み合わせて、内蔵の第2アーム伸縮シリンダ36(図3〜図5では図示せず、図1を参照)により伸縮動可能に構成される。第2先端アーム35bの先端上部には、第1電線支持具40A(および第3電線支持具40C)と平行に、第2先端アーム35bに対して垂直に伸びるように第2電線支持具40Bが取り付けられる。これにより、第2アーム35を伸縮動させると、第2電線支持具40Bが第1電線支持具40Aに対してスライド移動し、第1電線支持具40Aと第2電線支持具40Bとの間隔を変えることができる。
【0022】
サブアーム37は、第2アーム35と反対側の第1アーム33の側方に平行に配置され、サブアーム37の基端部が第1基端アーム33aの側部先端に枢結されて取り付けられる。サブアーム37の先端上部には、第1〜第3電線支持具40A〜40Cと平行に、サブアーム37に対して垂直に伸びるようにグランドワイヤ支持具40Gが取り付けられる。なお、サブアーム37は、図4に示すように、アーム部30の先端側を向く状態で固定して使用するが、非使用時にアーム部30の基端側を向くように回転させて固定するようにしてもよい。これにより、ブーム5の格納時等に仮支持装置20をコンパクトにすることができる。
【0023】
第1電線支持具40Aは、図3に示すように、第1基端アーム33aの中央上部に取り付けられて第1基端アーム33aに対し垂直に伸びる第1の碍子41Aと、この碍子41Aの先端部(上部)に取り付けられて電線(例えば、第1高圧線HW1)を支持可能な第1四面ローラ42Aとを有して構成される。第1四面ローラ42Aは、上下左右にそれぞれ対向して設けられた4つのローラを有し、この4つのローラによって形成される矩形状の間隙部に電線を挿通させて支持するようになっている。なお、第1四面ローラ42Aにおける電線の挿通方向(矩形状の間隙部が伸びる方向)は、第1アーム33および第1電線支持具40Aの延伸方向に対してそれぞれ垂直になるように設定される。また、第1四面ローラ42Aの側部には、開閉シリンダ44(図3〜図5では図示せず、図1を参照)を利用して第1四面ローラ42Aの先端部(上部)に位置するローラを揺動開閉可能な第1四面ローラ開閉機構43Aが設けられている。
【0024】
第2電線支持具40Bは、第2先端アーム35bの先端上部に取り付けられて第2先端アーム35bに対し垂直に伸びる第2の碍子41Bと、この碍子41Bの先端部(上部)に取り付けられて電線(例えば、第2高圧線HW2)を支持可能な第2四面ローラ42Bとを有して構成される。第2四面ローラ42Bは、第1四面ローラ42Aと同様の構成であり、第2四面ローラ42Bの側部には、開閉シリンダ44を利用して第2四面ローラ42Bの先端部(上部)に位置するローラを揺動開閉可能な第2四面ローラ開閉機構43Bが設けられている。なお、第2四面ローラ42Bにおける電線の挿通方向(矩形状の間隙部が伸びる方向)は、第2アーム35および第2電線支持具40Bの延伸方向に対してそれぞれ垂直になるように設定される。
【0025】
第3電線支持具40Cは、第1先端アーム33bの先端上部に取り付けられて第1先端アーム33bに対し垂直に伸びる第3の碍子41Cと、この碍子41Cの先端部(上部)に取り付けられて電線(例えば、第3高圧線HW3)を支持可能な第3四面ローラ42Cとを有して構成される。第3四面ローラ42Cは、第1四面ローラ42Aと同様の構成であり、第3四面ローラ42Cの側部には、開閉シリンダ44を利用して第3四面ローラ42Cの先端部(上部)に位置するローラを揺動開閉可能な第3四面ローラ開閉機構43Cが設けられている。なお、第3四面ローラ42Cにおける電線の挿通方向(矩形状の間隙部が伸びる方向)は、第1アーム33および第3電線支持具40Cの延伸方向に対してそれぞれ垂直になるように設定される。
【0026】
グランドワイヤ支持具40Gは、サブアーム37の先端上部に取り付けられてサブアーム37に対し垂直に伸びる柱部46と、柱部46の先端部(上部)に取り付けられて柱部46と同じ方向に伸びる第4の碍子41Gと、この碍子41Gの先端部(上部)に取り付けられて電線(グランドワイヤGW)を支持可能な第4四面ローラ42Gとを有して構成される。第4四面ローラ42Gは、第1四面ローラ42Aと同様の構成であり、第4四面ローラ42Gの側部には、開閉シリンダ44を利用して第4四面ローラ42Gの先端部(上部)に位置するローラを揺動開閉可能な第4四面ローラ開閉機構43Gが設けられている。なお、第4四面ローラ42Gにおける電線の挿通方向(矩形状の間隙部が伸びる方向)は、サブアーム37およびグランドワイヤ支持具40Gの延伸方向に対してそれぞれ垂直になるように設定される。また、第1〜第4四面ローラ開閉機構43A〜43C,43Gの開閉シリンダ44は、それぞれ同様の構成であるため、まとめて同じ番号を付すことにする。
【0027】
ところで、操作装置50は、図6に示すように、ブーム5の操作が行われるブーム操作スイッチ51と、仮支持装置20の操作が行われる仮支持装置操作スイッチ60と、各種パラメータの設定を行う操作が行われるパラメータ設定スイッチ70と、ブーム5の作動モードを設定する操作が行われるモード操作スイッチ75と、アウトリガ9の操作が行われるジャッキ操作スイッチ76と、図示しないバッテリの充電操作等が行われるバッテリユニット操作スイッチ77と、ブーム5やアウトリガ9の作動状態等を表示する表示器78とを有して構成される。
【0028】
ブーム操作スイッチ51は、ブーム5の旋回操作が行われるブーム旋回スイッチ52と、ブーム5の起伏操作が行われるブーム起伏スイッチ53と、ブーム5の伸縮操作が行われるブーム伸縮スイッチ54とから構成される。仮支持装置操作スイッチ60は、アーム部30(ブラケット26)の首振り操作が行われる首振りスイッチ61と、アーム部30の回転操作が行われる回転スイッチ62と、アーム部30の揺動操作が行われる揺動スイッチ63と、第1アーム33の伸縮操作が行われる第1アーム伸縮スイッチ64と、第2アーム35の伸縮操作が行われる第2アーム伸縮スイッチ65と、第1〜第4四面ローラ42A〜42C,42Gの開閉操作が行われる四面ローラ開閉スイッチ66とから構成される。
【0029】
パラメータ設定スイッチ70は、電線のサイズを選択する操作が行われるサイズ選択スイッチ71と、電柱間の距離(以下、径間と称する)を選択する操作が行われる径間選択スイッチ72と、季節を選択する操作が行われる季節選択スイッチ73と、電線の水平角度を選択する操作が行われる角度選択スイッチ74とから構成される。なお、本実施形態において、図7に示すように、仮支持装置20に支持される電線(例えば、高圧線HW1〜HW3)の被支持部分における水平方向の折れ曲がり角度αを、電線の水平角度と称することにする。
【0030】
サイズ選択スイッチ71が操作されると、仮支持装置20に支持される電線のサイズ(断面積)について、複数の電線のサイズ(例えば、25mm2、58mm2、120mm2、200mm2、400mm2)のうちいずれか一つが選択入力される。なお、サイズ選択スイッチ71に設けられた表示灯71aにおいて、現在選択されている電線のサイズ(いずれか一つ)が表示されるようになっている。径間選択スイッチ72が操作されると、電線を支持している電柱の径間について、複数の径間(例えば、30m、40m、50m、60m)のうちいずれか一つが選択入力される。なお、径間選択スイッチ72に設けられた表示灯72aにおいて、現在選択されている径間(いずれか一つ)が表示されるようになっている。
【0031】
季節選択スイッチ73が操作されると、使用時の季節について、複数の季節(例えば、冬、春または秋、夏)のうちいずれか一つが選択入力される。なお、季節選択スイッチ73に設けられた表示灯73aにおいて、現在選択されている季節(いずれか一つ)が表示されるようになっている。角度選択スイッチ74が操作されると、電線の水平角度について、複数の水平角度(例えば、−12.5度、−6度、0度、+6度、+12.5度)のうちいずれか一つが選択入力される。なお、角度選択スイッチ74に設けられた表示灯74aにおいて、現在選択されている水平角度(いずれか一つ)が表示されるようになっている。
【0032】
さて、仮支持工法車1の制御装置は、図1に示すように、車体2の内部に設置されたコントローラ80を主体に構成される。コントローラ80は、バルブ制御部81と、規制部82と、作動範囲設定部83とを有して構成される。バルブ制御部81は、ブーム操作スイッチ51および仮支持装置操作スイッチ60と電気的に接続され、ブーム操作スイッチ51および仮支持装置操作スイッチ60からそれぞれ出力された操作信号がバルブ制御部81に入力される。そして、バルブ制御部81は、ブーム操作スイッチ51のブーム旋回スイッチ52から入力された操作信号に基づいて、旋回モータ6に対応する第1油圧制御バルブV1のスプールを電磁駆動し、ブーム起伏スイッチ53から入力された操作信号に基づいて、起伏シリンダ7に対応する第2油圧制御バルブV2のスプールを電磁駆動し、ブーム伸縮スイッチ54から入力された操作信号に基づいて、ブーム伸縮シリンダ8に対応する第3油圧制御バルブV3のスプールを電磁駆動する。
【0033】
また、バルブ制御部81は、仮支持装置操作スイッチ60の首振りスイッチ61から入力された操作信号に基づいて、首振りモータ22に対応する第4油圧制御バルブV4のスプールを電磁駆動し、回転スイッチ62から入力された操作信号に基づいて、回転モータ27に対応する第5油圧制御バルブV5のスプールを電磁駆動し、揺動スイッチ63から入力された操作信号に基づいて、揺動シリンダ32に対応する第6油圧制御バルブV6のスプールを電磁駆動する。また、バルブ制御部81は、第1アーム伸縮スイッチ64から入力された操作信号に基づいて、第1アーム伸縮シリンダ34に対応する第7油圧制御バルブV7のスプールを電磁駆動し、第2アーム伸縮スイッチ65から入力された操作信号に基づいて、第2アーム伸縮シリンダ36に対応する第8油圧制御バルブV8のスプールを電磁駆動し、四面ローラ開閉スイッチ66から入力された操作信号に基づいて、開閉シリンダ44に対応する第9油圧制御バルブV9のスプールを電磁駆動する。
【0034】
なお、第1〜第9油圧制御バルブV1〜V9は、油圧ポンプ88から各アクチュエータへの作動油の供給を制御する電磁弁である。車体2の内部に設けられた油圧ポンプ88は、図示しないエンジンや電動モータ等により回転駆動され、第1油圧制御バルブV1を介して旋回モータ6に作動油を供給し、第2油圧制御バルブV2を介して起伏シリンダ7に作動油を供給し、第3油圧制御バルブV3を介してブーム伸縮シリンダ8に作動油を供給する。また、油圧ポンプ88は、第4油圧制御バルブV4を介して首振りモータ22に作動油を供給し、第5油圧制御バルブV5を介して回転モータ27に作動油を供給し、第6油圧制御バルブV6を介して揺動シリンダ32に作動油を供給する。また、油圧ポンプ88は、第7油圧制御バルブV7を介して第1アーム伸縮シリンダ34に作動油を供給し、第8油圧制御バルブV8を介して第2アーム伸縮シリンダ36に作動油を供給し、第9油圧制御バルブV9を介して開閉シリンダ44に作動油を供給する。
【0035】
規制部82は、ブーム5に内蔵された、ブーム5の起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器85およびブーム5の長さを検出するブーム長さ検出器86と電気的に接続され、ブーム起伏角度検出器85およびブーム長さ検出器86からそれぞれ出力された検出信号が規制部82に入力される。また、規制部82は、作動範囲設定部83と電気的に接続され、作動範囲設定部83から出力されたブーム5の作動範囲の情報が規制部82に入力される。そして、規制部82は、ブーム起伏角度検出器85およびブーム長さ検出器86から入力された検出信号に基づいて、ブーム5の先端位置(すなわち、仮支持装置20の位置)を算出し、算出したブーム5の先端位置が作動範囲設定部83により設定されたブーム5の作動範囲(車体2を転倒させることなく仮支持装置20を移動させ得る領域として定められた仮支持装置20(ブーム5の先端)の移動可能領域)を超えると判定した場合、表示器78等にその旨を報知させて作業者に注意を喚起するとともに、ブーム5の作動を規制する制御を行う。具体的には、規制部82がブーム5の先端位置に応じた規制信号をバルブ制御部81へ出力し、バルブ制御部81によるブーム5の作動範囲を超える方向への油圧制御バルブ(例えば、第2および第3油圧制御バルブV2,V3)の作動を規制する。
【0036】
作動範囲設定部83は、パラメータ設定スイッチ70と電気的に接続され、パラメータ設定スイッチ70から出力された各種パラメータ(電線のサイズ、径間、季節、および電線の水平角度)の情報が作動範囲設定部83に入力される。そして、作動範囲設定部83は、サイズ選択スイッチ71から入力された電線のサイズと、径間選択スイッチ72から入力された径間と、季節選択スイッチ73から入力された季節と、角度選択スイッチ74から入力された電線の水平角度とに基づいて、図8に示すように、仮支持装置20が電線を支持する仮支持状態でのブーム5の作動範囲である仮支持作動範囲Sおよび、仮支持装置20が電線を支持しない非支持状態でのブーム5の作動範囲である非支持作動範囲Rをそれぞれ設定する。なお、作動範囲設定部83は、設定した仮支持作動範囲Sおよび非支持作動範囲Rの情報を規制部82へ出力する。
【0037】
作動範囲設定部83により設定されるブーム5の非支持作動範囲Rは、電線のサイズ、径間、季節、および電線の水平角度に応じて、予め算出された複数の非支持作動範囲(例えば、7つの非支持作動範囲R1〜R7)のうちいずれか一つが選択設定される。ここで、電線のサイズが大きくなると、電線の単位長さ当たりの重量が増えてブーム5の先端に作用する荷重が大きくなるため、ブーム5の非支持作動範囲Rが狭くなる傾向となる。径間が長くなると、電線の重量が増えてブーム5の先端に作用する荷重が大きくなるため、ブーム5の非支持作動範囲Rが狭くなる傾向となる。気温が低い季節になると、電線が縮んでブーム5の先端に荷重が作用しやすくなるため、ブーム5の非支持作動範囲Rが狭くなる傾向となる。電線の水平角度(絶対値)が大きくなると、ブーム5の先端に作用する水平方向荷重が大きくなるため、ブーム5の非支持作動範囲Rが狭くなる傾向となる。
【0038】
作動範囲設定部83により設定されるブーム5の仮支持作動範囲Sは、電線のサイズ、径間、季節、および電線の水平角度に応じて、予め算出された複数の仮支持作動範囲のうちいずれか一つが選択設定される。ここで、電線のサイズが大きくなると、電線が撓みにくくなるため、ブーム5の仮支持作動範囲Sが狭くなる傾向となる。径間が長くなると、電線の撓み量が大きくなるため、ブーム5の仮支持作動範囲Sが広くなる傾向となる。気温が低い季節になると、電線が縮んで撓み量が小さくなるため、ブーム5の仮支持作動範囲Sが狭くなる傾向となる。電線の水平角度(絶対値)が大きくなると、ブーム5の先端に作用する水平方向荷重を小さくする方向(すなわち、電線の水平角度が0度になる方向)に、ブーム5の仮支持作動範囲Sが広くなる傾向となる。なお、電線のサイズが変化しても、仮支持作動範囲Sに対して大きく影響しないため、径間、季節、および電線の水平角度だけで、仮支持作動範囲Sを設定するようにしてもよい。
【0039】
以上のように構成される仮支持工法車1を用いて、電柱Pの代わりに3本の高圧線HW1〜HW3およびグランドワイヤGWを支持するには、まず、操作装置50のパラメータ設定スイッチ70を操作して、電線のサイズ、径間、季節、および電線の水平角度をそれぞれ入力する。このとき、パラメータ設定スイッチ70から出力された各種パラメータ(電線のサイズ、径間、季節、および電線の水平角度)の情報が作動範囲設定部83に入力される。そうすると、作動範囲設定部83は、サイズ選択スイッチ71から入力された電線のサイズと、径間選択スイッチ72から入力された径間と、季節選択スイッチ73から入力された季節と、角度選択スイッチ74から入力された電線の水平角度とに基づいて、仮支持作動範囲Sおよび非支持作動範囲Rをそれぞれ設定し、設定した仮支持作動範囲Sおよび非支持作動範囲Rの情報を規制部82へ出力する。
【0040】
このように、電線のサイズ、径間、季節、および電線の水平角度に基づいて、仮支持作動範囲Sおよび非支持作動範囲Rを設定するようにすれば、ロードセル等を用いることなく、安全なブーム5の作動範囲を精度よく設定することができ、簡便な構成で電線の仮支持作業を安全に行うことが可能になる。なお、パラメータ設定スイッチ70のいずれかもしくは全部が操作されなかったとしても、現状選択されている各種パラメータ(電線のサイズ、径間、季節、および電線の水平角度)の情報が作動範囲設定部83に入力される。
【0041】
次に、車体2を安定支持するため、操作装置50のジャッキ操作スイッチ76等を操作して、アウトリガ9を車体2の側方に張出させるとともに下方に伸長させる。次に、操作装置50のブーム操作スイッチ51を操作して、ブーム5の先端に取り付けられた仮支持装置20を3本の高圧線HW1〜HW3の下方に移動させる。このとき、ブーム操作スイッチ51(ブーム旋回スイッチ52、ブーム起伏スイッチ53、およびブーム伸縮スイッチ54)の操作に応じた操作信号がバルブ制御部81に入力され、バルブ制御部81は、ブーム操作スイッチ51から入力された操作信号に基づいて、第1〜第3油圧制御バルブV1〜V3のスプールをそれぞれ電磁駆動する。そうすると、油圧ポンプ88から第1〜第3油圧制御バルブV1〜V3を介して旋回モータ6、起伏シリンダ7、およびブーム伸縮シリンダ8にそれぞれ作動油が供給され、ブーム操作スイッチ51の操作に応じてブーム5が作動することになる。
【0042】
このようにブーム5を作動させて、非支持状態の仮支持装置20を3本の高圧線HW1〜HW3の下方に移動させる際、規制部82は、ブーム起伏角度検出器85およびブーム長さ検出器86から入力された検出信号に基づいて、ブーム5の先端位置(すなわち、仮支持装置20の位置)を算出し、算出したブーム5の先端位置が作動範囲設定部83により設定された非支持作動範囲Rを超えると判定した場合、表示器78等にその旨を報知させて作業者に注意を喚起するとともに、ブーム5の作動を規制する制御を行う。具体的には、規制部82がブーム5の先端位置に応じた規制信号をバルブ制御部81へ出力し、バルブ制御部81による非支持作動範囲Rを超える方向への油圧制御バルブ(例えば、第2および第3油圧制御バルブV2,V3)の作動を規制する。
【0043】
なお、図2に示すように、ブーム5の格納時には、仮支持装置20のブラケット26およびアーム部30が垂直ポスト21に対してブーム5の基端側を向くように首振りするとともに、アーム部30が前述の水平位置に回転した状態で保持されている。また、アーム部30の第1および第2アーム33,35は水平支持位置で保持され、第1〜第4四面ローラ42A〜42C,42Gの先端部に位置するローラは開いた状態である。そこで、仮支持装置20を3本の高圧線HW1〜HW3の下方に移動させる際、仮支持装置操作スイッチ60の首振りスイッチ61を操作して、ブラケット26およびアーム部30を垂直ポスト21に対しブーム5の先端側を向くように首振りさせてブーム5の先端より突出させるとともに、アーム部30を水平位置に回転させた状態のまま保持する。このように、アーム部30が水平位置に回転した状態では、図5に示すように、3つの電線支持具40A〜40Cおよびグランドワイヤ支持具40Gが略水平方向を向いて、仮支持装置20の高さが低くなるため、3本の高圧線HW1〜HW3の下方に低圧線LW1〜LW3等が存在しても、3本の高圧線HW1〜HW3と低圧線LW1〜LW3との間に側方から仮支持装置20を容易にアプローチさせることができる。
【0044】
なおこのとき、首振りスイッチ61の操作に応じた操作信号がバルブ制御部81に入力され、バルブ制御部81は、首振りスイッチ61から入力された操作信号に基づいて、第4油圧制御バルブV4のスプールを電磁駆動する。そうすると、油圧ポンプ88から第4油圧制御バルブV4を介して首振りモータ22に作動油が供給され、首振りスイッチ61の操作に応じてブラケット26が首振り作動することになる。
【0045】
また、仮支持装置20を3本の高圧線HW1〜HW3の下方に移動させる際、仮支持装置操作スイッチ60の第1および第2アーム伸縮スイッチ64,65を操作して、第1および第2アーム33,35をそれぞれ伸縮動させ、3つの電線支持具40A〜40Cのピッチ間隔を3本の高圧線HW1〜HW3のピッチ間隔と同じになるように調整し、3本の高圧線HW1〜HW3の鉛直下方にそれぞれ3つの電線支持具40A〜40Cが平行に位置するようにする。このとき、第1および第2アーム伸縮スイッチ64,65の操作に応じた操作信号がバルブ制御部81に入力され、バルブ制御部81は、第1および第2アーム伸縮スイッチ64,65から入力された操作信号に基づいて、第7および第8油圧制御バルブV7,V8のスプールをそれぞれ電磁駆動する。そうすると、油圧ポンプ88から第7および第8油圧制御バルブV7,V8を介して第1および第2アーム伸縮シリンダ34,36にそれぞれ作動油が供給され、第1および第2アーム伸縮スイッチ64,65の操作に応じて第1および第2アーム33,35がそれぞれ伸縮動することになる。
【0046】
なお、サブアーム37に関しては、グランドワイヤGWの鉛直下方にグランドワイヤ支持具40Gが平行に位置するように、予め手作業でサブアーム37の長さを調整しておく。また、仮支持装置20を3本の高圧線HW1〜HW3の下方に移動させる際、3本の高圧線HW1〜HW3と仮支持装置20との上下間隔が3つの電線支持具40A〜40Cの長さとほぼ同じになるように位置調整されるが、このときのグランドワイヤGWと仮支持装置20との上下間隔がグランドワイヤ支持具40Gの長さとほぼ同じになるように、柱部46の長さが調整されている。
【0047】
仮支持装置20を3本の高圧線HW1〜HW3の下方に移動させて、3本の高圧線HW1〜HW3の鉛直下方にそれぞれ3つの電線支持具40A〜40Cが平行に位置するとともに、グランドワイヤGWの鉛直下方にグランドワイヤ支持具40Gが平行に位置する状態にすると、仮支持装置操作スイッチ60の回転スイッチ62を操作して、アーム部30を水平位置から鉛直位置に回転させる。そうすると、3つの電線支持具40A〜40Cおよびグランドワイヤ支持具40Gがそれぞれ略鉛直方向を向いて電線を支持する。
【0048】
すなわち、図3および図5に示すように、第1電線支持具40Aは、略鉛直方向を向くように上方に回転し、先端部のローラが開いた第1四面ローラ42Aの間隙部に第1高圧線HW1が挿通され、第1四面ローラ42Aで第1高圧線HW1を支持する状態になる。また、第2電線支持具40Bは、略鉛直方向を向くように上方に回転し、先端部のローラが開いた第2四面ローラ42Bの間隙部に第2高圧線HW2が挿通され、第2四面ローラ42Bで第2高圧線HW2を支持する状態になる。また、第3電線支持具40Cは、略鉛直方向を向くように上方に回転し、先端部のローラが開いた第3四面ローラ42Cの間隙部に第3高圧線HW3が挿通され、第3四面ローラ42Cで第3高圧線HW3を支持する状態になる。同様に、グランドワイヤ支持具40Gは、略鉛直方向を向くように上方に回転し、先端部のローラが開いた第4四面ローラ42Gの間隙部にグランドワイヤGWが挿通され、第4四面ローラ42GでグランドワイヤGWを支持する状態になる。
【0049】
なおこのとき、回転スイッチ62の操作に応じた操作信号がバルブ制御部81に入力され、バルブ制御部81は、回転スイッチ62から入力された操作信号に基づいて、第5油圧制御バルブV5のスプールを電磁駆動する。そうすると、油圧ポンプ88から第5油圧制御バルブV5を介して回転モータ27に作動油が供給され、回転スイッチ62の操作に応じてアーム部30が回転することになる。
【0050】
アーム部30を水平位置から鉛直位置に回転させて、3つの電線支持具40A〜40Cおよびグランドワイヤ支持具40Gがそれぞれ3本の高圧線HW1〜HW3およびグランドワイヤGWを支持する状態にすると、仮支持装置操作スイッチ60の四面ローラ開閉スイッチ66を操作して、第1〜第4四面ローラ42A〜42C,42Gの先端部に位置するローラを閉じるように、第1〜第4四面ローラ開閉機構43A〜43C,43Gをそれぞれ作動させる。このとき、四面ローラ開閉スイッチ66の操作に応じた操作信号がバルブ制御部81に入力され、バルブ制御部81は、四面ローラ開閉スイッチ66から入力された操作信号に基づいて、第9油圧制御バルブV9のスプールを電磁駆動する。そうすると、油圧ポンプ88から第9油圧制御バルブV9を介して開閉シリンダ44に作動油が供給され、四面ローラ開閉スイッチ66の操作に応じて第1〜第4四面ローラ42A〜42C,42Gの先端部に位置するローラが開閉することになる。
【0051】
以上のようにして、図3および図5に示すように、仮支持装置20により電柱Pの代わりに3本の高圧線HW1〜HW3およびグランドワイヤGWを支持することができる。このように電線を仮支持した状態で、必要に応じ、ブーム起伏スイッチ53およびブーム伸縮スイッチ54を操作して、ブーム5先端の仮支持装置20に支持された3本の高圧線HW1〜HW3およびグランドワイヤGWを移動させる。このとき、ブーム起伏スイッチ53およびブーム伸縮スイッチ54の操作に応じた操作信号がバルブ制御部81に入力され、バルブ制御部81は、ブーム起伏スイッチ53およびブーム伸縮スイッチ54から入力された操作信号に基づいて、第2および第3油圧制御バルブV2,V3のスプールをそれぞれ電磁駆動する。そうすると、油圧ポンプ88から第2および第3油圧制御バルブV2,V3を介して起伏シリンダ7およびブーム伸縮シリンダ8にそれぞれ作動油が供給され、ブーム起伏スイッチ53およびブーム伸縮スイッチ54の操作に応じてブーム5が作動することになる。
【0052】
ところで、四面ローラ開閉スイッチ66からの開閉操作信号は規制部82にも入力され、規制部82は、第1〜第4四面ローラ42A〜42C,42Gの先端部に位置するローラを閉じるための閉操作信号、すなわち、仮支持装置20により電線を仮支持状態にするための操作信号が入力されると、ブーム5の作動範囲を非支持作動範囲Rから仮支持作動範囲Sに切り替えて、ブーム5の作動を規制する制御を行う。そのため、ブーム5を作動させて仮支持状態の仮支持装置20を移動させる際、規制部82は、ブーム起伏角度検出器85およびブーム長さ検出器86から入力された検出信号に基づいて、ブーム5の先端位置(すなわち、仮支持装置20の位置)を算出し、算出したブーム5の先端位置が作動範囲設定部83により設定された仮支持作動範囲Sを超えると判定した場合、表示器78等にその旨を報知させて作業者に注意を喚起するとともに、ブーム5の作動を規制する制御を行う。具体的には、規制部82がブーム5の先端位置に応じた規制信号をバルブ制御部81へ出力し、バルブ制御部81による仮支持作動範囲Sを超える方向への油圧制御バルブ(第2および第3油圧制御バルブV2,V3)の作動を規制する。
【0053】
なお、仮支持作動範囲Sは非支持作動範囲Rよりも(特に、鉛直方向の範囲が)狭く設定されるが、仮支持作動範囲Sが非支持作動範囲Rからはみ出す範囲では、非支持作動範囲Rを優先的に適用するようにしてもよい。すなわち、ブーム5を作動させて仮支持状態の仮支持装置20を移動させる際、規制部82は、仮支持作動範囲S内であっても、非支持作動範囲Rを超えると判定した場合、表示器78等にその旨を報知させて作業者に注意を喚起するとともに、ブーム5の作動を規制する制御を行うようにしてもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態によれば、作動範囲設定部83は、パラメータ設定スイッチ70から入力された電線のサイズおよび電線の水平角度(折れ曲がり角度)に基づいて、仮支持装置20が電線を支持する仮支持状態でのブーム5の作動範囲である仮支持作動範囲Sおよび、仮支持装置20が電線を支持しない非支持状態でのブーム5の作動範囲である非支持作動範囲Rをそれぞれ設定するため、ロードセル等を用いることなく、安全なブーム5の作動範囲を精度よく設定することができ、簡便な構成で電線の仮支持作業を安全に行うことが可能になる。
【0055】
なおこのとき、電線のサイズと、電線の水平角度(折れ曲がり角度)と、季節と、径間(電柱間の距離)とに基づいて、仮支持作動範囲Sおよび非支持作動範囲Rをそれぞれ設定することが好ましく、このようにすれば、安全なブーム5の作動範囲をより精度よく設定することができ、電線の仮支持作業をより安全に行うことが可能になる。
【0056】
また、四面ローラ開閉スイッチ66から閉操作信号が入力されると、作動範囲を非支持作動範囲Rから仮支持作動範囲Sに切り替えて、ブーム5の作動を制御することが好ましく、このようにすれば、仮支持状態になったときの作動範囲の切り替えを適切に行うことができ、電線の仮支持作業をより安全に行うことが可能になる。
【0057】
なお、上述の実施形態において、仮支持装置20により電柱Pの代わりに3本の高圧線HW1〜HW3およびグランドワイヤGWを支持しているが、これに限られるものではなく、第1〜第3低圧線LW1〜LW3を支持することも可能である。また、図3に示す3本の高圧線HW1〜HW3のような、略水平に並ぶように互いに平行に伸びた複数の電線に限らず、揺動スイッチ63を操作してアーム部30の第1および第2アーム33,35を(水平支持位置から)鉛直支持位置に揺動させるようにすれば、略鉛直に並ぶように互いに平行に伸びた複数の電線を支持することも可能である。
【0058】
なお、第1および第2アーム33,35を揺動させるとき、揺動スイッチ63の操作に応じた操作信号がバルブ制御部81に入力され、バルブ制御部81は、揺動スイッチ63から入力された操作信号に基づいて、第6油圧制御バルブV6のスプールをそれぞれ電磁駆動する。そうすると、油圧ポンプ88から第6油圧制御バルブV6を介して揺動シリンダ32にそれぞれ作動油が供給され、揺動スイッチ63の操作に応じて第1および第2アーム33,35が揺動することになる。
【0059】
また、上述の実施形態において、仮支持装置20は、3つの電線支持具40A〜40Cおよびグランドワイヤ支持具40Gを有して構成されているが、これに限られるものではなく、仮支持装置20が有する電線支持具は、1つであってもよく、複数であってもよい。
【0060】
また、上述の実施形態において、ブラケット26およびアーム部30が首振り可能に構成されているが、これに限られるものではなく、アーム部30がブーム5の先端より突出した状態で固定されていてもよい。
【0061】
また、上述の実施形態において、第1および第2アーム33,35が揺動可能に構成されているが、これに限られるものではなく、略水平状態で固定されていてもよい。
【0062】
また、上述の実施形態において、第1および第2アーム33,35が伸縮動可能に構成されているが、これに限られるものではなく、3つの電線支持具40A〜40Cのピッチ間隔が3本の高圧線HW1〜HW3のピッチ間隔と同じになるように調整されていれば、伸縮動しなくてもよい。
【0063】
また、上述の実施形態において、作動範囲設定部83は、電線のサイズと、電線の水平角度(折れ曲がり角度)と、季節と、径間(電柱間の距離)とに基づいて、仮支持作動範囲Sおよび非支持作動範囲Rをそれぞれ設定しているが、これに限られるものではなく、電線のサイズと水平角度だけに基づいて、仮支持作動範囲Sおよび非支持作動範囲Rをそれぞれ設定するようにしてもよい。また、電線のサイズと水平角度と季節だけを用いるようにしてもよく、電線のサイズと水平角度と径間だけを用いるようにしてもよい。また、季節の代わりに気温を用いるようにしてもよい。なおこの場合、パラメータ設定スイッチ70には、季節の代わりに気温が入力される。
【0064】
また、上述の実施形態において、ブーム5の先端位置を基準に作動範囲を設定しているが、これに限られるものではなく、仮支持装置20における所定の基準位置(例えば、垂直ポスト21の先端位置等)を基準に作動範囲を設定するようにしてもよい。
【0065】
また、上述の実施形態において、パラメータ設定スイッチ70のいずれかもしくは全部が操作されなかったとしても、現状選択されている各種パラメータ(電線のサイズ、径間、季節、および電線の水平角度)の情報が作動範囲設定部83に入力されるように構成されているが、これに限られるものではなく、パラメータ設定スイッチ70の操作が全て行われるまでブーム5の作動等を規制するようにしてもよい。
【0066】
また、上述の実施形態において、ブーム5の先端に仮支持装置20が設けられた仮支持工法車1を例に説明しているが、これに限られるものでなはく、例えば、走行可能な車体と、車体上に配設されたブームと、ブームの先端に設けられた作業台とを備えた高所作業車において、垂直ポストの上端に仮支持装置が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 仮支持工法車
2 車体
5 ブーム
20 仮支持装置
50 操作装置
51 ブーム操作スイッチ
60 仮支持装置操作スイッチ
66 四面ローラ開閉スイッチ
70 パラメータ設定スイッチ
71 サイズ選択スイッチ
72 径間選択スイッチ
73 季節選択スイッチ
74 角度選択スイッチ
80 コントローラ
81 バルブ制御部
82 規制部
83 作動範囲設定部
P 電柱
GW グランドワイヤ
HW1 第1高圧線
HW2 第2高圧線
HW3 第3高圧線
LW1 第1低圧線
LW2 第2低圧線
LW3 第3低圧線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、前記車体上に起伏および伸縮動自在に配設されたブームと、前記ブームの先端部に取り付けられて電線を支持可能な仮支持装置とを備え、前記仮支持装置により前記電線を支持可能な仮支持工法車の制御装置であって、
前記ブームの作動範囲を設定する作動範囲設定部と、
前記作動範囲設定部により設定された前記作動範囲内で前記ブームが作動するように前記ブームの作動を制御するブーム作動制御部と、
前記電線のサイズおよび、前記仮支持装置に支持される前記電線の被支持部分における水平方向の折れ曲がり角度が入力される入力部とを備え、
前記作動範囲設定部は、前記入力部から入力された前記電線のサイズおよび前記折れ曲がり角度に基づいて、前記仮支持装置が前記電線を支持する仮支持状態での前記ブームの作動範囲である仮支持作動範囲および、前記仮支持装置が前記電線を支持しない非支持状態での前記ブームの作動範囲である非支持作動範囲をそれぞれ設定することを特徴とする仮支持工法車の制御装置。
【請求項2】
前記入力部に、季節または気温、および前記電線を支持する電柱間の距離の少なくともどちらかが入力可能であり、
前記入力部に、前記季節または気温、および前記電柱間の距離の少なくともどちらかが入力されたときには、前記作動範囲設定部は、前記入力部から入力された、前記電線のサイズと、前記折れ曲がり角度と、前記季節または気温、および前記電柱間の距離の少なくともどちらかとに基づいて、前記仮支持作動範囲および前記非支持作動範囲をそれぞれ設定することを特徴とする請求項1に記載の仮支持工法車の制御装置。
【請求項3】
前記仮支持状態にするための操作が行われる仮支持操作部を有し、
前記ブーム作動制御部は、前記仮支持操作部から操作信号が入力されると、前記作動範囲を前記非支持作動範囲から前記仮支持作動範囲に切り替えて、前記ブームの作動を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の仮支持工法車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−223815(P2011−223815A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92653(P2010−92653)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)