説明

仮設築堤工法

【目的】 低廉な部材を用いて効率よく潜提や突堤など堤を水底基盤上に構築することができ、部材の運搬や施工と共に、撤去或いは移設も容易な仮設的な築堤に有効な工法を提供する。
【構成】 合成樹脂製糸条を比較的密に織成した基布2を使用して構成される投入口6と吊り手7を有する大型の袋体1であって、袋体内部に土砂などの充填物を封入した用材を配列、積み重ねて水底11の地盤に定着させ堤10をなす仮設的な築堤方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、河川や港湾に潜提、突堤、防波堤などを構築するための仮設的な工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から水中での築堤工法としては、水底の表層を造成してケ−ソンを設置する工法や、粗大なコンクリ−ト塊をそのまま山積みして盛り上げる工法などが多く採用されている。
【0003】ケ−ソンを設置する工法は、強固で大規模な築堤への適用がなされているが、水底造成や設置作業の煩雑さにおいて問題となり、コンクリ−ト塊を用いる工法は、水底造成の必要がなくそのまま捨て込めば堤となる点で有効ではあるが、一定の形状を発現させることが困難であり使用場所が限られる。また、どちらの工法も部材の運搬、移動に大変な手間がかかり専ら本格的な築堤に限られ、而して小規模或いは仮設的な築堤へ適用し難いことが問題となっているのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明においては前述のごとき課題を解決しようとするものであり、その目的は、低廉な部材を用いて、効率よく堤を構築できと共に撤去或いは移設も容易に行える仮設築堤に有効な工法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、合成樹脂製糸条を経緯糸に用いて、土砂や粗石等の充填物の透過を阻止し得る密度で織成した基布2から構成され、投入口6と吊り手7を有する大型の袋体1であって、該袋体1に充填物を封入した状態で水底に配列、積み重ねて定着させることを特徴とする仮設築堤工法である。
【0006】ここで、大型の袋体1とは、軽量、安価、柔軟性に富み、不使用時には折り畳んで運搬できる輸送効率上の利点で、工業原料や食品原材料等の粉粒体の輸送或いは貯蔵に大量に使用されているいわゆるフレキシブルコンテナと云われるものと同様なものであるが、本発明の目的において充填物の内容量が500〜3,000kg程度の大型袋体が築堤作業効率の点で好適であり採用される。
【0007】袋体を構成する基布2に用いられる合成樹脂製糸条は、非腐食性であってその形状を特に限定されるものではなく、モノフィラメント、連糸フィラメント、低繊度モノフィラメントを収束したマルチフィラメント、フィルムをスリットして得られるフラットヤ−ン、フラットヤ−ンを割繊したスプリットヤ−ンなどが挙げられるが、何れにしても高倍率下に延伸して高強力を付与したもので充填物の重量に対して充分な強度を有し、生産効率や取り扱いの容易さから繊度1,000〜2,000drのフラットヤ−ンが最も好適に用いられる。
【0008】糸条とされる合成樹脂は特に限定されるものではないが、連続生産での安定品質と経済的に量産し得ることにおいて熱可塑性合成樹脂が該当し、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンの単独重合体もしくは相互共重合体またはこれらのα−オレフィンと他のコモノマ−の共重合体からなるポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン−ビニル共重合体系樹脂などが挙げられる。
【0009】合成樹脂製糸条は、スル−ザ−型織機、ウオ−タ−ジェットル−ム、サ−キュラ−織機などの従来織機で織成されて基布2を成す。糸条の打込密度としては、土砂や粗石等の充填物の透過を阻止できる密度、つまり織布の目隙部を少なくすることが必要であるから、袋体基布としての柔軟性を阻害しない範囲で高密度に打込んだものが望ましい。
【0010】この基布2を用いて製袋する。ここで、袋体1の本体は上壁3、側壁4、底壁5とから成っており、上壁3には袋内に充填物を投入するための投入孔が開設されており、投入孔を覆うように筒状の部材を垂設することによって開閉が可能な投入口6が設けられる。
【0011】また、袋体1には移送が容易に行えるように吊り手7が設けられる。即ち、少なくとも対面する二カ所の本体側壁4の外面に吊りベルトを縫着したものであって、吊り手7の形状は例えば、ベルトを二つ折りとして中間部を部分的に縫製して輪状フックを有する一つの端部を袋体に取り付けたものや、ベルトの両方の端部をそれぞれ袋体に取り付けてル−プ状に形成したものなどが挙げられる。
【0012】袋体1の内部に、開口された投入口6から陸地から掘出した土砂や粗石、砕石、浚渫土或いはこれらに代わる比較的高比重の充填物を投入し、紐体9により投入口6を縛って閉鎖して、一つの用材となる。この用材は、吊り手7を利用してクレ−ンで吊下し水底の所定の場所に配列、積み重ねて仮設的な提をなすのである。
【0013】
【実施例】以下、本発明に係る築堤工法を実施例にて説明を加える。
【0014】ポリオレフィン系合成樹脂としてポリプロピレン(MFR=0.8)を選び、スジ入り円形ダイスからインフレ−ション法により、溶融温度260℃で無定形状態で押し出し、冷却してチュ−ブ状フィルムとした後、細断してテ−プ状とし、熱ロ−ル延伸方式で延伸温度140℃、アニ−リング温度145℃、延伸倍率5.2倍で縦一軸延伸して繊度1,500drのフラットヤ−ンを得た。このフラットヤ−ンを経糸及び緯糸に用いてスル−ザ−型織機にて打込密度を経糸×緯糸;15×15本/インチとし平織り組織で織成し、フラットヤ−ンクロスの基布2を得た。
【0015】この基布2を用いて、円筒状の投入口6を付けた上壁3及び底壁5を、側壁4の上下縁端に縫着して角型の袋本体を成し、対面する二カ所の本体側壁4の外側に底壁5を経由して連続する吊りベルトを縫着してル−プ状とした吊り手7を形成し、側壁4に吊りベルトを固定し且つ補強のため補強ベルト8を周回させ縫着することで大型の袋体1を得て、図1に示す。
【0016】袋体1の内部には、開口された投入口6から土砂等の充填物を2,200kg投入した後に、紐体9で縛って閉鎖し一つの用材とした。この用材を水深約12mの水底11に幅方向に第一段(最下段)6袋、第二段5袋、第三段4袋、第四段(最上段)3袋で、46列に配列、積み重ねて約30mの長さの潜提となる堤10を構築した。この袋体1の配列状態を図2に示す。
【0017】約半年経過後、潜提の状態を確認したところ用材の欠落や崩壊がなく堤の構造を充分に保持したものであり、袋体の内部に収納した土砂などの充填物の袋体外部への流出は殆ど認められなく、仮設的ではあっても長期使用に耐え得ることが確認できるものであった。
【0018】
【発明の効果】以上のように本発明に係る築堤工法によれば、大型の袋体1を用いたものであるから、可撓性の基布2により空袋での保管スペ−スが少なく、用材としての使用時には土砂や粗石、浚渫土などの充填物が近場で調達できるので、重量物としての移送が低減できる。充填物を封入された袋体1は、水底11に配列、積み重ねることで多数の用材の組み合わせにより一定の形状を発現させることができ、袋体1の内部に収納した充填物の袋体外部への流出は殆どないため耐久性もあり、構築、撤去、移設が大がかりな機械設備を使用することなく容易に行えることにおいて、潜提、突堤、防波堤など堤10を構築するための仮設築堤工法として有効なものとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の築堤工法に用いる大型の袋体の斜視図である。
【図2】本実施例で構築した潜提の説明図である。
【符号の説明】
1 袋体
2 基布
3 上壁
4 側壁
5 底壁
6 投入口
7 吊り手
8 補強ベルト
9 紐体
10 堤
11 水底

【特許請求の範囲】
【請求項1】 合成樹脂製糸条を経緯糸に用いて、土砂や粗石等の充填物の透過を阻止し得る密度で織成した基布2から構成され、投入口6と吊り手7を有する大型の袋体1であって、該袋体1に充填物を封入した状態で水底に配列、積み重ねて定着させることを特徴とする仮設築堤工法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平8−49225
【公開日】平成8年(1996)2月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−187070
【出願日】平成6年(1994)8月9日
【出願人】(000234122)萩原工業株式会社 (47)