説明

仮設足場用連結構造体

【課題】足場材の支柱への連結を簡単かつ確実に実施できるとともに、連結後の安定性をより向上させることができる仮設足場用連結構造体を提供する。
【解決手段】本体部材20前部側にくさび受け15に差し込み可能に形成され差し込み時にはくさび受け15よりも後方にそれぞれ突出する上側突部31及び下側突部32を有する差込部30と、本体部材20の挿入部25に下方が前方に傾斜して形成された傾斜保持部40と、本体部材20の傾斜保持部40とくさび受け15に差し込まれた差込部30との間を進退可能であるとともに、前進時には傾斜保持部40と差込部30の下側突部32及び上側突部31によって固定されるとともに、後退時には前記固定が解除されるくさび部材50とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場材が固定された本体部材の挿入部にくさび部材を挿入することによって前記本体部材を支柱のくさび受けに対して取り外し可能に連結するための仮設足場用連結構造体の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建築物等の工事等を行う際には、その外周に仮設足場が設置されるものであって、複数本の支柱を所定間隔で配置し、前記各支柱間に足場板を架設させて一の階層の足場を形成し、上方に支柱を順次継ぎ足して同様に足場板を架設させることにより複数階層の足場を形成してなる。このような仮設足場にあっては、上方への足場の継ぎ足し作業をする際の安全対策として、足場板を架設させる前に筋交い材もしくは水平材もしくは垂直材等の足場材を手すりとして先行して配置するように構成される。
【0003】
上記の如く、足場材を配置する場合には、前記足場材を支柱のくさび受けに対して取り外し可能に連結するための仮設足場用連結構造体が使用される。そこで本出願人は、先に図4に示す仮設足場用連結構造体100を提案した(例えば、特許文献1参照。)。この仮設足場用連結構造体100は、2つの板状部材121,122よりなり足場材Pが固定された本体部材120と、支柱111のくさび受け115の穴部116に上方から差し込み自在に本体部材120に形成された固定くさび部材130と、本体部材120を構成する2つの板状部材121,122の間に形成された3つのガイド部123,124,132に沿って横方向に進退可能に設けられ、安全固定時にはくさび受け115の下部に前進され固定解除時にはくさび受け115の下部から後退される可動くさび部材140とを有する。
【0004】
図4において、符号131はくさび受け115の穴部116に差し込み可能な固定くさび部130の差込部、141はくさび状に形成された可動くさび部材140の棒状部、142は可動くさび部材140を打ち込むための打込部、143は可動くさび部材の脱落を防止するための抜け止め部を表す。
【0005】
この仮設足場用連結構造体100では、まず、固定くさび部材130の差込部131がくさび受け115の穴部116に上方から差し込まれる。次いで、可動くさび部材140をガイド部123,124,132に沿って前進させてその前部をくさび受け115下部に係着させる。これにより、固定くさび部材130と可動くさび部材140とでくさび受け115を上下から把持して固定できるので、足場材の支柱への連結を安全かつ確実でしかも簡易に実施することができる。また、可動くさび部材140の前部をくさび受け115下部から後退させれば、前記固定を容易に解除することができる。
【0006】
近年では、上記従来の仮設足場用連結構造体のように、足場材を支柱に対して簡単で確実に連結できることに加え、連結後の安定性をより向上させることが求められている。
【特許文献1】特開2008−2116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、足場材の支柱への連結を簡単かつ確実に実施できるとともに、連結後の安定性をより向上させることができる仮設足場用連結構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、足場材が固定された本体部材の挿入部にくさび部材を挿入することによって前記本体部材を支柱のくさび受けに対して取り外し可能に連結するための構造体であって、前記本体部材前部側に前記くさび受けに差し込み可能に形成され差し込み時には前記くさび受けよりも後方にそれぞれ突出する上側突部及び下側突部を有する差込部と、前記本体部材の挿入部に下方が前方に傾斜して形成された傾斜保持部と、前記本体部材の傾斜保持部と前記くさび受けに差し込まれた差込部との間を進退可能であるとともに、前進時には前記傾斜保持部と前記差込部の下側突部及び上側突部によって固定されるとともに、後退時には前記固定が解除されるくさび部材とを有することを特徴とする仮設足場用連結構造体に係る。
【0009】
請求項2の発明は、前記くさび部材が、前記固定時において、前記差込部の下側突部及び上側突部と当接する直線状側部と前記本体部材の傾斜保持部の傾斜に沿って当接する傾斜状側部を有する請求項1に記載の仮設足場用連結構造体に係る。
【0010】
請求項3の発明は、前記くさび部材が、後退時に本体部材の係合部に係着する抜け止め部を有する請求項1又は2に記載の仮設足場用連結構造体に係る。
【0011】
請求項4の発明は、前記くさび部材が、後退時に前記傾斜保持部の上端部と係合する係合部を有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の仮設足場用連結構造体に係る。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明に係る仮設足場用連結構造体によれば、足場材が固定された本体部材の挿入部にくさび部材を挿入することによって前記本体部材を支柱のくさび受けに対して取り外し可能に連結するための構造体であって、前記本体部材前部側に前記くさび受けに差し込み可能に形成され差し込み時には前記くさび受けよりも後方にそれぞれ突出する上側突部及び下側突部を有する差込部と、前記本体部材の挿入部に下方が前方に傾斜して形成された傾斜保持部と、前記本体部材の傾斜保持部と前記くさび受けに差し込まれた差込部との間を進退可能であるとともに、前進時には前記傾斜保持部と前記差込部の下側突部及び上側突部によって固定されるとともに、後退時には前記固定が解除されるくさび部材とを有するため、足場材の支柱への連結を簡単かつ確実に実施できるとともに、連結後の安定性が向上して安全性にも優れる。
【0013】
請求項2の発明によれば、請求項1において、前記くさび部材が、前記固定時において、前記差込部の下側突部及び上側突部と当接する直線状側部と前記本体部材の傾斜保持部の傾斜に沿って当接する傾斜状側部を有するため、くさび部材をより簡単かつ確実に固定保持することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2において、前記くさび部材が、後退時に本体部材の係合部に係着する抜け止め部を有するため、くさび部材の脱落を防止することができ、作業中の安全性を向上させることができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3において、前記くさび部材が、後退時に前記傾斜保持部の上端部と係合する係合部を有するため、後退位置でくさび部材を保持することが可能となり、作業性や安全性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係る仮設足場用連結構造体の斜視図、図2は仮設足場用連結構造体のくさび部材が固定解除された状態を表す概略側面図、図3は仮設足場用連結構造体のくさび部材が固定された状態を表す概略側面図である。
【0017】
図1ないし図3に示す本発明の一実施例に係る仮設足場用連結構造体10は、足場材Pが固定された本体部材20の挿入部25にくさび部材50を挿入することによって本体部材20を支柱11のくさび受け15に対して取り外し可能に連結するものである。ここで、足場材Pは、仮設足場用の筋交い材、水平材、垂直材等である。
【0018】
本体部材20は、2つの板状部材21,22よりなり、差込部30と、傾斜保持部40とを有し、後部側において足場材Pが固定される。実施例では、足場材Pの固定部P1が各板状部材21,22によって狭持されるとともに、各板状部材21,22を貫通する固定ピンP2によって固定されている。また、実施例の本体部20では、2つの板状部材21,22と、差込部30と、傾斜保持部40とによって挿入部25が構成される。なお、図中の符号23,24は板状部材21,22の上部に後方に突出して形成された差込部30の取付部、26,27は板状部材21,22の取付部23,24の下方側に形成された係合部である。
【0019】
差込部30は、本体部材20前部側にくさび受け15に差し込み可能に形成され、差し込み時には、くさび受け15よりも後方にそれぞれ突出する上側突部31及び下側突部32を有する。実施例では、上部が2つの板状部材21,22の取付部23,24に狭持されて溶接されている。
【0020】
傾斜保持部40は、本体部材20の挿入部25に下方が前方に傾斜して形成された部分である。この傾斜保持部40としては、本体部材20の前方に下方が傾斜した面45を形成するものであればよい。実施例では、図示のように、各板状部材21,22の間に狭持して溶接される板部材からなる。
【0021】
くさび部材50は、本体部材20の傾斜保持部25とくさび受け15に差し込まれた差込部30との間を進退可能であるとともに、前進時には傾斜保持部40と差込部30の下側突部32及び上側突部31によって固定されるとともに、後退時には前記固定が解除されるように構成される。実施例のくさび部材50は、前記固定時において、差込部30の下側突部32及び上側突部31と当接する直線状側部51と本体部材20の傾斜保持部40の傾斜に沿って当接する傾斜状側部52を有する。
【0022】
また、くさび部材50は、後退時に本体部材20の係合部26,27に係着する抜け止め部53を有する。抜け止め部53は、くさび部材50の先端近傍に貫通して固着されたピン状部材からなり、くさび部材50の後退時に本体部材20からの脱落が防止される。なお、実施例では、本体部材20の係合部26,27がピン状部材からなる抜け止め部53の直径よりわずかに大きい幅の凹部として形成されているため、抜け止め部53と係合部26,27との係着時にくさび部材50の先端部分が左右に大きくぶらつくことがなく、所定位置に保持される。
【0023】
さらに、くさび部材50は、後退時に傾斜保持部40の上端部と係合する係合部54を有する。実施例の係合部54は、抜け止め部53より上方の傾斜状側部52の下端部近傍に形成され、くさび部材50の後退時に、抜け止め部53が本体部材20の係合部26,27に係着する前に傾斜保持部40の上端部と係合可能に構成されている。これにより、くさび部材50の固定解除時に後退位置でくさび部材50を保持することができる。
【0024】
次に、当該仮設足場用連結構造体10による足場材Pの支柱11への連結方法について図2及び図3を用いて説明する。足場材Pを支柱11へ連結する際には、まず、図2に示すように、仮設足場用連結構造体10の差込部30がくさび受け15の上方から差し込まれる。その際、差込部30の下側突部32を含む先端部分がくさび受け15の下方から突出した状態となり、上側突部31を含む後端部分がくさび受け15の上方から突出した状態となる。
【0025】
この差し込み時において、仮設足場用連結構造体10のくさび部材50は、図2に示すように、係合部54が傾斜保持部40の上端部に係合されて後退位置で保持される。そのため、くさび部材50が意図せず前進することを防止することができる。また、特に、係合部54を傾斜保持部40の上端部に係合させた際には、同時に抜け止め部53が本体部材20の係合部26,27に係着されるため、くさび部材50のぶらつきを防止することができ、所定の後退位置で固定保持することが可能となる。従って、差込部30をくさび受け15に差し込む際にくさび部材50が妨げになることがなく、作業がし易くなって、しかも安全に行うことができる。
【0026】
続いて、くさび部材50の係合部54と傾斜保持部40との係合が解除され、図3に示すように、くさび部材50が本体部材20の挿入部25内で前進方向(図示の例では下方向)に移動される。この時、くさび部材50は、差込部30の下側突部32及び上側突部31と当接する直線状側部51と本体部材20の傾斜保持部40の傾斜に沿って当接する傾斜状側部52を有するため、くさび部材50を所定位置まで前進させるだけで、差込部30の上下の突部31,32と傾斜保持部40とによってくさび部材50を容易かつ確実に固定保持することができる。なお、くさび部材50を前進させ固定する際には、ハンマー等でくさび部材50の後端側を打ち込むことによって、より強固に固定することができる。
【0027】
このように、差込部30をくさび受け15に差し込み、くさび部材50を前進させて固定することにより、仮設足場用連結構造体10による足場材Pの支柱11への連結が完了する。この連結状態では、差込部30とくさび部材50がくさび受け15の側部を内と外の両側から把持するため、支柱11との連結後のがたつきを抑制することができ、安定性が向上する。しかも、連結時には差込部30の上側突部31及び下側突部32がそれぞれくさび受け15よりも後方に突出してくさび部材50の直線状側部51と当接しているため、当該仮設足場用連結構造体10がくさび受け15から外れることがなく、安全性にも優れる。従って、当該仮設足場用連結構造体10を用いることにより、足場材Pを支柱に対して極めて容易かつ確実に連結させることができ、さらに、連結時の安定性が向上して安全性にも優れる。
【0028】
また、連結状態を解除する際には、まず、固定状態のくさび部材50を後退方向(図示の例では上方向)に移動させて、くさび部材50の直線状側部51と差込部30の上下の突部31,32と、傾斜状側部52と傾斜保持部40とをそれぞれ離隔し、前記固定を解除する。その際、ハンマー等を用いてくさび部材50の先端側を打ち込むことによって、より簡単に解除することができる。
【0029】
このようにして後退されたくさび部材50は、抜け止め部53が本体部材20の係合部26,27と係着して脱落が防止されるため、作業中の部品落下等が発生することがなく、安全である。さらに、差込部30のくさび受け15への差し込み時と同様に、くさび部材50の係合部54を傾斜保持部40の上端部に係合させれば、くさび部材50が邪魔になることがなく作業性が向上し、安全性も向上する。そして、くさび部材50を後退させた状態から差込部30をくさび受け15から抜去させるだけで、当該仮設足場用連結構造体10の支柱11からの取り外しを容易に行うことができる。
【0030】
なお、本発明の仮設足場用連結構造体は、前述の実施例のみに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更して実施することができる。例えば、実施例では本体部材を2つの板状部材とし、挿入部を各板状部材と差込部と傾斜保持部とで構成したが、これに限らず、本体部材をブロック体とし、くさび部材50が挿入可能な貫通穴を形成して挿入部として構成することができる。その際、傾斜保持部は、挿入部を構成する貫通穴の内壁部分の下方を前方に傾斜させて形成することも可能であり、貫通穴内に実施例と同様の板部材からなる傾斜保持部を形成することもできる。
【0031】
また、実施例では、板部材からなる傾斜保持部40を板状部材21,22の間に狭持して溶接する構成としたが、各板状部材21,22に傾斜状の貫通穴を設けて、この貫通穴に板部材からなる傾斜保持部40をはめ込んで溶接してもよい。このように構成すれば、傾斜保持部40の取り付けを極めて容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例に係る仮設足場用連結構造体の斜視図である。
【図2】仮設足場用連結構造体のくさび部材が固定解除された状態を表す概略側面図である。
【図3】仮設足場用連結構造体のくさび部材が固定された状態を表す概略側面図である。
【図4】従来の仮設足場用連結構造体の概略側面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 仮設足場用連結構造体
11 支柱
15 くさび受け
20 本体部材
21,22 板状部材
30 差込部
31 上側突部
32 下側突部
40 傾斜保持部
50 くさび部材
P 足場材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場材が固定された本体部材の挿入部にくさび部材を挿入することによって前記本体部材を支柱のくさび受けに対して取り外し可能に連結するための構造体であって、
前記本体部材前部側に前記くさび受けに差し込み可能に形成され差し込み時には前記くさび受けよりも後方にそれぞれ突出する上側突部及び下側突部を有する差込部と、
前記本体部材の挿入部に下方が前方に傾斜して形成された傾斜保持部と、
前記本体部材の傾斜保持部と前記くさび受けに差し込まれた差込部との間を進退可能であるとともに、前進時には前記傾斜保持部と前記差込部の下側突部及び上側突部によって固定されるとともに、後退時には前記固定が解除されるくさび部材
とを有することを特徴とする仮設足場用連結構造体。
【請求項2】
前記くさび部材が、前記固定時において、前記差込部の下側突部及び上側突部と当接する直線状側部と前記本体部材の傾斜保持部の傾斜に沿って当接する傾斜状側部を有する請求項1に記載の仮設足場用連結構造体。
【請求項3】
前記くさび部材が、後退時に本体部材の係合部に係着する抜け止め部を有する請求項1又は2に記載の仮設足場用連結構造体。
【請求項4】
前記くさび部材が、後退時に前記傾斜保持部の上端部と係合する係合部を有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の仮設足場用連結構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−101056(P2010−101056A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273148(P2008−273148)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(503400053)KRH株式会社 (28)