説明

仮設階段のステップ角度調整装置

【課題】左右一対の仮設階段用側枠の角度に関係なく、ステップ部材を略水平に角度調整できる、操作性及び安全性に優れた角度調整装置を提案する。
【解決手段】仮設階段用側枠2a,2bに対するクランプ7は、互いに同心状の水平軸心の周りに回転自在にステップ部材1に軸支されると共に、当該クランプ7と一体に回転する回転部材8が設けられ、この回転部材8には、周方向適当間隔おきに被係止部8aが設けられ、係止部材9は、先端部が被係止部8aに対して係脱可能に、回転部材8の半径方向に移動自在にステップ部材1に取り付けられ、ストッパー部材10は、係止部材9の移動方向に対して直交する上下方向に移動自在にステップ部材1に取り付けられ、このストッパー部材1が下降限位置にあるときは、被係止部8aに先端部が係合する前進限位置にある係止部材9と係合して、当該係止部材9の後退移動を阻止する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事現場において作業者が昇り降りするように斜めに仮設される仮設階段のステップ角度調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の仮設階段は、上階床部と下階床部との間に所定角度で斜めに仮設された左右一対の単管(鋼管)などで構成される仮設階段用側枠間にステップ部材(足踏み板)を架設して構成される。このとき、左右一対の仮設階段用側枠の角度は、周囲の種々の条件により変化するのが普通であり、一方、ステップ部材は常に水平に架設しなければならないので、この種の仮設階段では、ステップ角度調整装置が必要になる。而して、従来の仮設階段のステップ角度調整装置は、特許文献1及び2に記載されるように、左右一対の仮設階段用側枠間に架設するステップ部材の左右両側辺に前記仮設階段用側枠に対するクランプと係止部材が設けられ、前記クランプは、互いに同心状の水平軸心の周りに回転自在にステップ部材に軸支されると共に、当該クランプと一体に回転する回転部材が設けられ、この回転部材には、前記水平軸心の周方向適当間隔おきに被係止部が設けられ、前記係止部材は、前記被係止部に対して係脱可能に前記ステップ部材に取り付けられている。具体的には、特許文献1に記載されたステップ角度調整装置では、前記係止部材が前記水平軸心方向に移動することにより前記回転部材側の被係止部と係脱動作するものであり、特許文献2に記載されたステップ角度調整装置では、前記係止部材が、前記水平軸心と平行な支軸によって軸支されたレバータイプのものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−193250号公報
【特許文献2】特許第2946327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に記載されたステップ角度調整装置では、何れも係止部材を係止作用位置で固定するボルトナットが必要であり、ステップ角度調整時には、工具を利用したボルトナットの弛め操作と強力な締結操作とが必要になるので、操作が面倒で多大の労力が必要になる。しかもボルトナットが何らかの原因で弛むと、クランプ側の回転部材の被係止部からステップ部材側の係止部材が外れて、ステップ部材がフリーになってしまう恐れがあり、安全性の面でも問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできる仮設階段のステップ角度調整装置を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係る仮設階段のステップ角度調整装置は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、左右一対の仮設階段用側枠(2a,2b)間に架設するステップ部材(1)の左右両側辺に前記仮設階段用側枠(2a,2b)に対するクランプ(7)、係止部材(9)、及びストッパー部材(10)が設けられ、前記クランプ(7)は、互いに同心状の水平軸心の周りに回転自在にステップ部材(1)に軸支されると共に、当該クランプ(7)と一体に回転する回転部材(8)が設けられ、この回転部材(8)には、前記水平軸心の周方向適当間隔おきに被係止部(8a)が設けられ、前記係止部材(9)は、先端部(9a)が前記被係止部(8a)に対して係脱可能に、前記回転部材(8)の半径方向に移動自在に前記ステップ部材(1)に取り付けられ、前記ストッパー部材(10)は、前記係止部材(9)の移動方向に対して直交する上下方向に移動自在に前記ステップ部材(1)に取り付けられ、このストッパー部材(1)が下降限位置にあるときは、前記被係止部(8a)に先端部(9a)が係合する前進限位置にある前記係止部材(9)と係合して、当該係止部材(9)の前記被係止部(8a)から離脱する後退移動を阻止する構成になっている。
【0006】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記回転部材(8)には、前記水平軸心と同心状の周壁部(17b)を設け、この周壁部(17b)に周方向適当間隔おきに設けられた孔によって前記被係止部(8a)を構成し、前記ステップ部材(1)には、前記回転部材(8)の周壁部(17b)の内側に入り込む突出板(31)を突設し、この突出板(31)に、前記被係止部(8a)を貫通した前記係止部材(9)の先端部(9a)が嵌入する被係止孔(31a)を設けることができる。
【0007】
又、請求項3に記載のように、前記係止部材(9)は、前記被係止部(8a)に対して係脱自在な先端部(9a)を備えた水平板部(26a)と、当該水平板部(26a)の内側辺から垂下する垂直板部(26b)とで構成し、前記垂直板部(26b)を、長孔(27)と当該長孔(27)を貫通する固定ピン(28a,28b)とで前記ステップ部材(1)の側辺に一定範囲内移動自在に取り付け、前記水平板部(26a)の外側辺には、当該係止部材(9)を移動させるときの操作片(30a,30b)を連設することができる。
【0008】
上記請求項3に記載の構成を採用する場合、請求項4に記載のように、前記ステップ部材(1)の側辺には、前記係止部材(9)の水平板部(26a)の上に重なる押え(29)を突設することができる。又、請求項5に記載のように、前記ストッパー部材(10)は、前記ステップ部材(1)の側枠材(4a,4b)の上面に固着されて横側方に突出する取付け部材(32)を上下方向に貫通させると共に、上端には、下降限位置にあるときに前記取付け部材(32)の上に乗る頭部(10a)を設け、当該下降限位置にあるストッパー部材(10)が、前進限位置にある前記係止部材(9)の水平板部(26a)の後側辺に隣接するように構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の本発明の構成によれば、ステップ部材の左右両側辺を左右一対の仮設階段用側枠にそれぞれクランプにより結合し、この左右一対の仮設階段用側枠を階段仮設位置に適当な角度で設置した後、ステップ部材を水平軸心の周りに回転させて略水平状態にし、この状態で係止部材をクランプ側の回転部材に向けてスライドさせて、その先端を前記回転部材の1つの被係止部に係合させる。この状態で、ストッパー部材を下降限位置まで降下させて、係止部材が前進限位置から後退移動するのを前記ストッパー部材が阻止する状態に切り換える。これで左右一対の仮設階段用側枠間のステップ部材が略水平姿勢にロックされるのであるが、下降限位置まで降下しているストッパー部材を所定高さ、即ち、後退移動する係止部材と干渉しない高さまで引き上げる操作と、前進限位置にある係止部材を後退移動させて先端部をクランプ側の回転部材の被係止部から離脱させる操作とを行なわない限り、略水平姿勢でのステップ部材のロックを解除することができない。
【0010】
従って、工具を利用したボルトナットの弛緩・締結操作のような面倒で多大の労力を要する操作から開放されるだけでなく、ボルトナットの締結力によりステップ部材のロック状態を維持するものではないので、振動などによってステップ部材のロックが不測に解除されてフリーになるような危険な事態が生じる恐れも皆無となり、安全性が格段に向上する。又、ボルトナットの締結力が十分であるか否かを外観から確実に見極めることは無理であるが、本発明の構成では、ストッパー部材が下降限位置まで下がっているか否かで、ステップ部材がロックされているか否かを見極めることができるので、ステップ部材がロックされているか否かを外観から極めて簡単且つ確実に判定することができ、この点でも安全に利用することができる。
【0011】
尚、ステップ部材を所定角度でロックしているとき、作業者昇り降り時にステップ部材に作用する大きな荷重により係止部材の先端部に大きな曲げ力が働くことになる。しかしながら、請求項2に記載の構成によれば、回転部材側の被係止孔を内側に貫通した係止部材の先端部を、当該係止部材が取り付けられているステップ部材側の突出板の被係止孔で支持することができるので、作業者昇り降り時にステップ部材に作用する大きな荷重により係止部材の先端部が曲がって回転部材側の被係止孔から離脱するような危険な事態を未然に防止することができる。しかも、当該係止部材の先端部やこれを支持するステップ部材側の突出板は、クランプ側の回転部材でカバーして保護できる。
【0012】
又、請求項3に記載の構成によれば、係止部材自体とその取付け構造が簡単になり、容易且つ安価に本発明を実施することができる。しかも係止部材を出退移動させる操作も、操作片により容易に行なえる。又、回転部材の被係止部に嵌脱自在な先端部を除いて、係止部材が断面L形となり、曲げに対して強いものであるが、更に請求項4に記載の構成によれば、作業者昇り降り時にステップ部材に作用する大きな荷重により係止部材がステップ部材に対して上方に逃げようとするのをカバー板で阻止させることができる。従って、ステップ部材に対する係止部材の取り付けに長孔と固定ピンとから成る簡単な構造を採用しながら、安全性を十分に確保できる。
【0013】
更に、請求項5に記載の構成によれば、テップ部材の側枠材の上面に固着されて横側方に突出する取付け部材を設けておくだけで、ストッパー部材を1本の頭部付きピンから構成できると共に、当該ストッパー部材の取り付けも簡単になり、係止部材側にストッパー部材が係合する特別な部分を設ける必要もなくなるので、本発明を簡単且つ安価に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】A図は仮設階段の1つのステップ部材を示す横断平面図、B図は仮設階段の1つのステップ部材を示す側面図である。
【図2】ロック作用状態での角度調整装置を示す一部縦断側面図である。
【図3】図2のX−X線拡大断面図である。
【図4】図2の横断平面図である。
【図5】ロック解除状態での角度調整装置を示す一部縦断側面図である。
【図6】角度調整装置の要部の分解一部縦断正面図である。
【図7】クランプと当該クランプが取り付けられる回転部材を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1において、1はステップ部材、2a,2bは単管(鋼管)を利用した左右一対の仮設階段用側枠、3A,3Bはステップ部材1の左右両側辺に取り付けられた角度調整装置である。ステップ部材1は、角鋼管利用の左右両側枠材4a,4bの前後両端部間及び中央部間を、同じく角鋼管利用の連結枠材5a〜5cにより連結一体化すると共に、上面側にエキスパンドメタルなどの踏み面形成部材6を張設して構成された従来周知のものである。角度調整装置3A,3Bは左右対称構造のものであって、それぞれ、パイプクランプ7、回転部材8、係止部材9、及びストッパー部材10から構成されている。
【0016】
以下、図2〜図7に基づいて詳細に説明すると、パイプクランプ7は、ベース部材11、このベース部材11の一端部に支軸12の周りに開閉自在に軸支した押え部材13、ベース部材11の他端部に支軸14の周りに揺動自在に軸支され且つ押え部材13の遊端二股部13aに嵌合離脱自在な締結用ボルト15、及び締結用ボルト15に螺嵌するナット16から構成され、ベース部材11と押え部材13との間に仮設階段用側枠2a,2bを嵌合した状態で、締結用ボルト15を押え部材13の遊端二股部13aに嵌合させ、この押え部材13の遊端二股部13aの外側に位置するナット16を螺進させて押え部材13をベース部材11側へ締め付けることにより、仮設階段用側枠2a,2bの長さ方向任意の位置に固定できるものである。
【0017】
回転部材8は、上記構成のパイプクランプ7のベース部材11の外側に取り付けられている。この回転部材8は、円形板部17aの周囲から片側に短い円筒状の周壁部17bを一体に連設したものであって、図6及び図7に示すように、その円形板部17aの中心位置には、周壁部17bと同一側に突出するバーリング周壁18bによって形成された角孔18aが設けられ、円形板部17aの角孔18aから少し離れた位置には、周壁部17bとは反対側に突出するバーリング周壁によって形成された2つの突起19a,19bが一体に突設されている。前記パイプクランプ7のベース部材11の偏平な底板部11aには、前記角孔18aと略同一サイズの角孔20と、前記2つの突起19a,19bが嵌合する2つの貫通孔21a,21bが設けられている。そしてこの回転部材8の円筒状の周壁部17bには、当該回転部材8の軸心方向に長い矩形状の被係止孔8aが周方向等間隔おきに設けられている。
【0018】
上記パイプクランプ7と回転部材8とは、ボルト22と角軸部付きナット23とで互いに締結されている。即ち、パイプクランプ7におけるベース部材11の底板部11aの外側に回転部材8を、2つの突起19a,19bが2つの貫通孔21a,21bに嵌合し且つ両者の角孔18a,20が互いに合致するように重ね合わせ、角軸部付きナット23の角軸部23aを、回転部材8の角孔18aとベース部材11の底板部11aの角孔20に、回転部材8の内側から挿入し、ボルト22をパイプクランプ7のベース部材11の側から角孔20内の角軸部付きナット23に螺合貫通させることにより、当該ボルト22の頭部22aと角軸部付きナット23のナット本体23bとで、パイプクランプ7のベース部材11の底板部11aと回転部材8の角孔18aのバーリング周壁18bとを挟み付けて、パイプクランプ7のベース部材11の外側に回転部材8が取り付けられる。この状態では、パイプクランプ7と回転部材8とは、2つの突起19a,19bと2つの貫通孔21a,21bとの嵌合、及び角軸部付きナット23の角軸部23aと角孔18a,20との嵌合により、相対回転不能に一体化されており、この両者に対してボルト22が固定された状態である。
【0019】
上記のように回転部材8が固定されたパイプクランプ7は、前記ボルト22とダブルナット24とでステップ部材1の側枠材4a,4bの横側面の前寄りの位置に取り付けられる。即ち、図6に示すように、ステップ部材1の側枠材4a,4bには、ボルト22が丁度挿通できる貫通孔25が水平向きで互いに同心状に設けられ、回転部材8から内側に突出しているボルト22を前記貫通孔25に挿通させ、側枠材4a,4bの内側に突出したボルト22にダブルナット24を、パイプクランプ7、回転部材8、及びボルト22の三者が当該ボルト22を中心に回転できる状態に締結する。尚、ダブルナット24の締め過ぎによりパイプクランプ7、回転部材8、及びボルト22の三者が回転不能に側枠材4a,4bに固定されてしまうのを避けるために、角軸部付きナット23の外側でボルト22に所要長さのスリーブを外嵌させ、角軸部付きナット23とダブルナット24との間で前記スリーブを軸方向に挟持固定するように構成しても良い。
【0020】
係止部材9は、水平板部26aと、この水平板部26aの内側辺から直角下向きに折曲連設された垂直板部26bとから成る断面L形のものであって、その垂直板部26bに設けられた前後方向の長孔27と、この長孔27を貫通する状態でステップ部材1の側枠材4a,4bを水平に貫通する2本の固定ピン28a,28bとによって、側枠材4a,4bの横側面に沿って一定範囲内で前後方向に移動自在に取り付けられている。ステップ部材1の側枠材4a,4bには、係止部材9の水平板部26a上に重なる厚板から成る押え部材29が固着突設され、この押え部材29の下側面を係止部材9の水平板部26aが摺接して前後移動するように構成されている。又、係止部材9には、その水平板部26aから前方に延出する先端部9aと、前記押え部材29より外側で上向きに突出する前後一対の操作片30a,30bが一体に連設されている。
【0021】
而して上記係止部材9は、2本の固定ピン28a,28bに対する長孔27の前後方向の相対移動範囲内で前後移動できるのであるが、前進限位置まで移動させたとき、その先端部9aを回転部材8の周壁部17bに設けられた被係止孔8aの1つに貫通させることができるが、このとき被係止孔8aを貫通した係止部材9の先端部9aが同時に貫通できる被係止孔31aを備えた突出板31が、回転部材8の周壁部17bの内側に隣接するように、ステップ部材1の側枠材4a,4bに固着突設されている。
【0022】
ステップ部材1の側枠材4a,4bには、押え部材29の上位置から側枠材4a,4bの後端位置までの領域において、側枠材4a,4bの上面に固着されて横外側方に突出する、角鋼管利用の取付け部材32が設けられている。ストッパー部材10は、前記取付け部材32を昇降自在に貫通するもので、上端には、このストッパー部材10が下降限位置まで降下したときに取付け部材32の上に乗る頭部10aが設けられた円柱軸状部材から成り、この下降限位置まで降下したストッパー部材10が、前進限位置まで移動した係止部材9の水平板部26aの後側辺に隣接するように配設されている。
【0023】
左右両側辺に角度調整装置3A,3Bを備えたステップ部材1は、角度調整装置3A,3Bのパイプクランプ7を利用して、先に説明したように左右一対の仮設階段用側枠2a,2bに適当間隔おきに取り付けられる。左右一対の仮設階段用側枠2a,2bは、階段を仮設する場所に応じて所定の角度で配置固定されるが、この仮設階段用側枠2a,2bの傾斜角度に関係なく各ステップ部材1を略水平の姿勢に固定するために、図1Bに示す仮設階段用側枠2a,2bと各ステップ部材1との間の角度θが角度調整装置3A,3Bによって調整される。
【0024】
即ち、図5に示すように、ストッパー部材10を、その下端が係止部材9の水平板部26aより上になるように引き上げた状態で、操作片30a,30bを利用して係止部材9を回転部材8から遠ざかる方向へ後退限位置まで後退移動させ、その先端部9aを回転部材8の周壁部17bの被係止孔8aから離脱させてロック解除状態に切り換えると、仮設階段用側枠2a,2bに固定されているパイプクランプ7と回転部材8とに対してステップ部材1がボルト22を中心に回転自在な状態になる。このとき、引き上げていたストッパー部材10から手を離すと、重力で降下するストッパー部材10の下端が、後退限位置にある係止部材9の水平板部26a上に乗ることになる。この状態でステップ部材1をボルト22の周りに回転させて略水平姿勢に調整して、回転部材8の周壁部17bの被係止孔8aの1つに係止部材9の先端部9aを対向させる。次に、図2及び図4に示すように、操作片30a,30bを利用して係止部材9を前進限位置まで前進移動させ、その先端部9aを、回転部材8の周壁部17bの被係止孔8aの1つを経由させて、突出板31の被係止孔31aに挿通させることにより、ステップ部材1を、ボルト22の周りでの回転ができないロック状態にする。係止部材9を前進限位置まで前進移動させたとき、当該係止部材9の水平板部26a上に下端が乗っていたストッパー部材10は、当該ストッパー部材10の下端から係止部材9の水平板部26aが前方に離れるため、重力で降下して、頭部10aが取付け部材32に乗る下降限位置で安定し、前進限位置にある係止部材9の後退移動を阻止する状態になる。
【0025】
以上のように、左右一対の仮設階段用側枠2a,2b間に架設された各ステップ部材1を略水平姿勢に角度調整することができ、その角度調整後のステップ部材1は、ストッパー部材10の引き上げと係止部材9を後退移動させる2段階の操作を経なければボルト22の周りに回転させることができない、完全なロック状態になり、仮設階段のステップとして安全に使用することができる。
【0026】
尚、係止部材9を一定範囲内で前後移動自在に支持する構造は、上記実施例の構造に限定されるものではなく、如何なる構造でも良いが、実施例のように長孔27と2本の固定ピン28a,28bとを利用する場合、長孔27をステップ部材1の側枠材4a,4b側に設け、2本の固定ピン28a,28bを係止部材9の垂直板部26bに取り付けることもできる。又、パイプクランプ7のベース部材11に回転部材8を固着する構造も、上記実施例の構造に限定されるものではなく、例えばパイプクランプ7のベース部材11に回転部材8を溶接により固着一体化しても良い。
【0027】
更に、回転部材8の被係止部として矩形の貫通孔(被係止孔8a)を設けたが、回転部材8の周壁部17bの周縁から切り込み形成した凹入部で被係止部を構成することも可能である。又、係止部材9も断面L形の板材から成るものに限定されない。例えばステップ部材1の側枠材4a,4bに固着した円筒状の支持部材を前後移動自在に貫通する棒状部材で係止部材9を構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の仮設階段のステップ角度調整装置は、建設工事現場において上階床部と下階床部との間に、左右一対の単管などから成る仮設階段用側枠間にステップ部材を架設して成る作業者昇り降り用の階段を仮設する場合に活用できる。
【符号の説明】
【0029】
1 ステップ部材
2a,2b 仮設階段用側枠
3A,3B 角度調整装置
4a,4b ステップ部材の側枠材
7 パイプクランプ
8 回転部材
8a 被係止孔
9 係止部材
9a 先端部
10 ストッパー部材
11 パイプクランプのベース部材
13 パイプクランプの押え部材
15 パイプクランプの締結用ボルト
17b 回転部材の周壁部
18a,20 角孔
19a,19b 突起
22 ボルト
23 角軸部付きナット
24 ダブルナット
26a 係止部材の水平板部
26b 係止部材の垂直板部
27 長孔
28a,28b 固定ピン
29 押え部材
30a,30b 操作片
31 突出板
32 取付け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の仮設階段用側枠間に架設するステップ部材の左右両側辺に前記仮設階段用側枠に対するクランプ、係止部材、及びストッパー部材が設けられ、前記クランプは、互いに同心状の水平軸心の周りに回転自在にステップ部材に軸支されると共に、当該クランプと一体に回転する回転部材が設けられ、この回転部材には、前記水平軸心の周方向適当間隔おきに被係止部が設けられ、前記係止部材は、先端部が前記被係止部に対して係脱可能に、前記回転部材の半径方向に移動自在に前記ステップ部材に取り付けられ、前記ストッパー部材は、前記係止部材の移動方向に対して直交する上下方向に移動自在に前記ステップ部材に取り付けられ、このストッパー部材が下降限位置にあるときは、前記被係止部に先端部が係合する前進限位置にある前記係止部材と係合して、当該係止部材の前記被係止部から離脱する後退移動を阻止するように構成された、仮設階段のステップ角度調整装置。
【請求項2】
前記回転部材は、前記水平軸心と同心状の周壁部を有し、この周壁部に周方向適当間隔おきに設けられた孔によって前記被係止部が構成され、前記ステップ部材には、前記回転部材の周壁部の内側に入り込む突出板が突設され、この突出板に、前記被係止部を貫通した前記係止部材の先端部が嵌入する被係止孔が設けられている、請求項1に記載の仮設階段のステップ角度調整装置。
【請求項3】
前記係止部材は、前記被係止部に対して係脱自在な先端部を備えた水平板部と、当該水平板部の内側辺から垂下する垂直板部とを有するもので、前記垂直板部が、長孔と当該長孔を貫通する固定ピンとで前記ステップ部材の側辺に一定範囲内移動自在に取り付けられ、前記水平板部の外側辺には、当該係止部材を移動させるときの操作片が連設されている、請求項1又は2に記載の仮設階段のステップ角度調整装置。
【請求項4】
前記ステップ部材の側辺には、前記係止部材の水平板部の上に重なる押え部材が突設されている、請求項3に記載の仮設階段のステップ角度調整装置。
【請求項5】
前記ストッパー部材は、前記ステップ部材の側枠材の上面に固着されて横側方に突出する取付け部材を上下方向に貫通し、上端には、下降限位置にあるときに前記取付け部材の上に乗る頭部が設けられ、当該下降限位置にあるストッパー部材が、前進限位置にある前記係止部材の水平板部の後側辺に隣接するように構成されている、請求項3又は4に記載の仮設階段のステップ角度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−219963(P2011−219963A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89103(P2010−89103)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000143558)株式会社国元商会 (64)