説明

企業財務情報データベースおよび企業財務情報提供システム

【課題】 全業種間での財務情報の比較分析が可能な企業財務情報データベースおよびそれを用いた情報提供システムを提供する。
【解決手段】(a)XBRLファイル入手工程、(b)各企業の財務諸表データに係るXBRLファイルにおける勘定科目名を、全業種共通の統合財務諸表タクソノミの勘定科目名に置き換えるXBRLファイル変換工程、(c)置き換えられたXBRL文書のデータをRDBに格納するためのSQL文を作成する工程、(d)前記データをRDBに登録するDB登録工程により企業財務情報データベースを構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、XBRL(eXtensible Business Reporting Language)ファイルのデータに基づく企業財務情報データベースの構築方法、その方法により構築された企業財務情報データベース(システム)、およびそれを用いた企業財務情報提供システムに係り、特に、異業種企業間での財務情報の比較分析が可能な、XBRLファイルのデータに基づく企業財務情報データベースの構築方法、その方法により構築された企業財務情報データベース(システム)、およびそれを用いた企業財務情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
XBRLは、財務情報をXML(eXtensible Markup
Language)形式で記述するための標準仕様である(非特許文献1参照)。
金融庁では、EDINET(Electronic Disclosure
for Investors' NETwork:金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)でのXBRL採用を決定し、2008年3月から本番運用を開始した。
【0003】
このXBRLの導入に際して,金融庁は約4000項目の勘定科目、開示項目をまとめた「EDINETタクソノミ(Taxonomy)」と呼ばれる財務報告の雛型を公開している。このEDINETタクソノミについては、財務諸表等タクソノミを含む24の業種別タクソノミが用意され、企業はこの業種別タクソノミに合わせて、企業別タクソノミを作成し、それに基づいて各企業の有価証券報告書等の書類ファイルを作成し、金融庁へ提出している。
また、東京証券取引所TDnet(Timely Disclosure network:適時開示情報伝達システム)でも上場企業の決算短信サマリについて2008年7月からXBRLデータの提出が義務付けられた。日本銀行も金融機関との間でXBRLによるデータ交換を行っている。
【0004】
このようにXBRLは財務情報の開示システムや伝達システムに取り入れられて急速に普及しつつあり、また、市場では上記EDINET等で開示されたXBRLファイルをダウンロードして分析システムに直接取り込んで保存・管理するなど、開示情報の二次利用も進められている。なお、このXBRLの仕様は、http://www.xbrl.org/に公開されており、その公開された仕様に従うアプリケーション(XBRLツールなど)を用いることにより、保存した財務データを解釈することができ、長期的に保存可能である。
【0005】
このようなXBRL形式の財務データの処理システムおよび処理方法については、現在まで種々の方法が公開されているが、その一つの例として、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、評価対象企業の財務データを複数の評価定義によって評価して得られる総合投資評価を個人投資家に提供する財務データ処理システムが記載されている。
【0006】
また、XML文書のデータを格納するデータベースとしては、汎用の「リレーショナルデータベース」(以下、「RDB」)とXML文書の管理に特化した「ネイティブXMLデータベース」(以下、「NXDB」)とが知られている。
このうち、RDBを用いるXML文書のデータ管理に関する例として、特許文献2が挙げられる。特許文献2には、XML文書のようなタグ付き構造化文書を、XML構造検索エンジンとRDBに分解して管理する方法が記載されている。
【0007】
また、フォーマットが区々である各企業の財務諸表を統合した財務データベースの構築については、特許文献3が知られている。特許文献3には、XBRLファイルが普及する以前の技術であるが、企業の財務諸表に係るCSV(Comma Separated Values)形式のデータファイルに基づき、財務諸表のフォーマットが相違する公開企業と非公開企業の財務諸表を統合して財務データベースを構築することを目的とした財務管理システムが記載されている。
さらに、本願発明の背景となるWebアプリケーション関連のシステム技術を示す先行技術文献として、下記の非特許文献2と非特許文献3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006− 59207号公報
【特許文献2】特開2006− 53724号公報
【特許文献3】特開2004− 70406号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】筏井 大祐著「XBRL財務諸表の作成ガイドブック−EDINET対応」、中央経済社、2009年4月
【非特許文献2】赤間信幸著 「.NETエンタープライズWebアプリケーション開発技術大全」Vol.1〜Vol.5、日経BPソフトプレス、2004年6月〜2005年3月
【非特許文献3】赤間信幸著 「Microsoft Visual Studio2005によるWebアプリケーション構築技法」、日経BPソフトプレス、2006年5月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1には、XBRL形式の財務データを記憶する財務データベースから、評価対象企業に対応する財務データを取得し、指定された評価定義に従って、取得した財務データをもとに評価対象企業の投資評価を作成し、作成された複数の投資評価をもとに、評価対象企業に対する総合投資評価を作成する技術が開示されているが、業種が異なる企業間の財務諸表が統合された企業財務情報データベースの構築およびそれを利用するシステムについての開示はない。
【0011】
特許文献2には、XML形式のタグ付き構造化文書を、RDB、および構造検索専用データベースを用いて管理する方法が記載されているが、業種が異なる企業間の財務諸表が統合された企業財務情報データベースの構築およびそれを利用するシステムについての開示はない。
また、特許文献2には、本発明で対象とするXBRLファイルのデータに基づくデータベースの構築方法についての具体的開示はない。
【0012】
特許文献3には、複数の勘定科目からなる企業の財務諸表を統合する財務データベースの構築が開示されているが、「帳票を業種別に設けることで、それぞれの業種独特の勘定科目をカバーするようにする。」(明細書〔0033〕の欄)と記載されているように、同業種間での統合を想定した技術である。
また、特許文献3において対象とするデータは、CSV形式のファイルに基づくものであり、現在財務情報に係る電子ファイルとして普及しつつあるXBRLファイルのデータから企業財務情報データベースを構築する方法については記載もなく、示唆もない。
【0013】
このように、XBRLツール等を利用して企業毎の財務情報閲覧および同業種企業間での財務諸表データの比較はできるようになったものの、金融庁EDINET等に提出された各企業のXBRLファイルでは、業種毎、企業毎に異なるタクソノミが使用されているため、異業種企業間、横並びで財務データを比較分析することは極めて困難であった。
そのため、特に、相互に関連のない異業種部門を傘下に収めて多角的経営を行うコングロマリット企業の財務担当者や、大学の研究者および一般投資家の間では、異業種企業間であっても、横並びでXBRLファイルのデータに基づく財務情報の比較分析が可能な企業財務情報データベースおよびそれを用いた企業財務情報提供システムの出現が切望されていた。
【0014】
本発明者は、この点に着目し、金融庁EDINETで採用されている業種別タクソノミ(24業種)および金融庁EDINETへの開示のために各企業が用いている企業別タクソノミを統合し、網羅性が高くかつ整合性が保たれた一体系の統合財務諸表タクソノミを作成することを着想し、その統合財務諸表タクソノミを完成させた。
また、それによって、業種ごとに分かれていた各企業の財務報告データに係るXBRLファイルを、一体系の統合財務諸表タクソノミに基づくXBRLファイルに変換することに成功した。
【0015】
さらに、本発明者は、上記の方法で得られた統合XBRLファイルに基づき、一体系の企業財務情報データベースを構築することを着想した。ここで、XBRLファイルは、報告企業および会計期間ごとの1件の報告について、それぞれ階層構造を有する複数のファイルから構成されるため、本発明者は、これらのデータベース(以下の説明において、「DB」と略記することあり)を構築するには、当初、XML文書の管理に特化したNXDBのようなXMLベースのDBサーバを利用する必要があると考えた。しかしながら、XMLベースのDBサーバを利用してXBRLデータを検索する場合、システムを構成するコンピュータのCPUへの負荷が大きく、処理速度が低くなることが問題であった。
【0016】
本発明の目的は、EDINET等で開示される上場各企業の財務諸表データを収集し、異業種を含めて統合した一体系の財務諸表タクソノミに基づくデータに変換・蓄積し、異業種を含めた全業種間での財務情報の比較分析が可能な企業財務情報データベース(システム)およびその構築方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、Web上で上記企業財務情報データベース(システム)を有する財務情報提供サーバを利用する企業財務情報提供システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載された発明は、(a)各企業の財務諸表データに係るXBRLファイルを入手するデータファイル入手工程、(b)企業別又は業種別財務諸表タクソノミで用いられている勘定科目名と、全業種共通の統合財務諸表タクソノミの勘定科目名との対応関係を記述したマッピングテーブルを参照して、前記各企業の財務諸表データに係るXBRLファイルにおける勘定科目名を、前記統合財務諸表タクソノミの勘定科目名に置き換えるXBRLファイル変換工程、(c)変換されたXBRLファイルのうち、置き換えられた勘定科目およびそれに対応する数値に係るXBRLインスタンス文書のデータをRDBに格納するためのSQL(Structured Query Language)文作成工程、(d)前記SQL文を実行することにより、前記統合財務諸表タクソノミを定義するXML形式のファイルに従って制御されるRDBに、前記XBRLインスタンス文書のデータを登録するデータベース登録工程、を有することを特徴とする全業種共通の統合財務諸表タクソノミに基づく企業財務情報データベースの構築方法である。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構築方法により得られることを特徴とする企業財務情報データベースである。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の企業財務情報データベース、データに対するアクセス要求に応えるデータ制御部、および統合財務諸表タクソノミを定義するXML形式のファイルを有することを特徴とする企業財務情報データベースシステムである。
【0020】
請求項4に記載の発明は、Webサーバと請求項3に記載の企業財務情報データベースシステムとを有する財務情報提供サーバと、所定のプロトコルに従って前記財務情報提供サーバと通信を行うユーザ端末と、を備える企業財務情報提供システムであって、
前記財務情報提供サーバは、前記ユーザ端末からの要求に応答し、前記企業財務情報データベースを検索するための検索ファイルを生成する検索ファイル生成手段と、前記検索ファイル生成手段により生成された検索ファイルに基づき前記企業財務情報データベースを検索する検索手段と、その検索結果のファイルを前記ユーザ端末に送信する手段と、を備え、
前記ユーザ端末は、前記財務情報提供サーバから受信したファイルを表示するブラウザ手段を備えることを特徴とする企業財務情報提供システムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の企業財務情報データベースによれば、財務情報提供機関から適時入手可能なXBRLファイルのデータに基づき、異業種企業間であっても、横並びで財務情報の比較分析が可能となる。
また、本発明の企業財務情報提供システムによれば、XBRLデータの検索における処理が飛躍的に高速化されるので、企業財務情報データの分析の効率化が可能となる。
【0022】
さらに、本発明の企業財務情報提供システムによれば、全業種共通様式の帳票を作成することができる。ここで言う帳票には、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書などが挙げられるが、比較分析のために、ユーザが任意に選択した勘定科目を用いた様式のものも作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の企業財務情報データベース(システム)の構築方法に関する一実施形態の全体構成を示す図である。
【図2】標準タクソノミの拡張と本発明で用いる統合財務諸表タクソノミとの関係を示す概念図である。
【図3】本発明で用いる統合財務諸表タクソノミを作成するために、EDINET業種別タクソノミ(貸借対照表)で分かれていた勘定科目を集約する例を示す図である。
【図4】本発明で用いる統合財務諸表タクソノミを作成するために、EDINET業種別タクソノミ(損益計算書)で分かれていた勘定科目を集約する例を示す図である。
【図5】本発明で用いる統合財務諸表タクソノミを作成するために、EDINET業種別タクソノミ(キャッシュフロー計算書)で分かれていた勘定科目を集約する例を示す図である。
【図6】本発明で用いる統合財務諸表タクソノミに、EDINET業種別タクソノミ(貸借対照表)にない新設の勘定科目が含まれることを示す図である。
【図7】本発明の企業財務情報データベースの構築方法におけるXBRLファイル変換工程に用いる勘定科目集約プログラムのフローチャートの例を示す図である。
【図8】本発明の企業財務情報データベースの構築方法における勘定科目集約処理(一部)の具体例を示す図である。
【図9】本発明の企業財務情報提供システムのシステム構成の一例を示す図である。
【図10】本発明の企業財務情報提供システムを用いて出力される企業5社の貸借対照表のデータを横並びに比較する帳票の一例(イメージ)を示す図である。
【図11】本発明の企業財務情報提供システムの応用例であり、Webサービスによる展開の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の例について説明するが、その前に、本発明が対象とするXBRLファイルの構造について簡単に説明しておく。
このXBRLは、勘定科目情報と科目間関係を定義する辞書機能をもつタクソノミ(Taxonomy)と、勘定科目毎の数値を示すインスタンス文書(Instance)から構成される。
各々について説明すると、以下の通り。
【0025】
(1)タクソノミは、具体的な勘定科目を定義するスキーマ(拡張子がxsdのファイル)と、勘定科目の表示、勘定科目間の関連性を示すための5つのリンクベース(拡張子がxmlのファイル)からなる。5つのリンクベースとは、名称リンクベース、参照リンクベース、表示リンクベース、計算リンクベース、計算リンクベースおよび定義リンクベースである。
(2)インスタンス文書は拡張子がxbrlのファイルであり、勘定科目毎の数値を示すものである。なお、このインスタンスは、文書中の項目の定義を行っているタクソノミを呼び出す必要があるため、必要なタクソノミの一覧を記述するとともに、必要なタクソノミをシステムのアクセス可能な場所に確保する必要がある。
【0026】
以上述べたように、XBRLは複数のファイルから構成されるファイルであるが、本願においては、このファイルのセットを「XBRLファイル」と言う。
次に、本発明の実施形態の例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
このようなXBRLファイルのデータに基づく本発明の企業財務情報データベースは、以下の各工程を経て構築される。
(a)データファイル入手工程
(b)XBRLファイル変換工程
(c)SQL文作成工程
(d)データベース登録工程
図1は、上記工程(a)〜(d)の流れを示す全体構成(概念)図である。
【0028】
以下、図面を参照しながら各工程について説明する。
(a)データファイル入手工程について
本発明の実施形態で用いる各企業の財務諸表データに係るXBRLファイル102は、上場企業であれば、財務情報提供機関である金融庁(EDINET)や東京証券取引所(TDnet)のホームページ101からダウンロードすることにより入手できる。
【0029】
これらの機関から入手する場合、XBRLファイル102は一括して圧縮ファイル(ZIPファイル)の形でダウンロードされるので、解凍する必要がある。また、これらのファイルは、次の工程にかけるために、コード(企業等毎に割り振られているEDINETコード)別および提出書類[有価証券報告書(通期)、半期報告書、四半期報告書、決算短信(通期)、四半期決算短信など]別に区分けしておくことが好ましい。
なお、上記ホームページで入手できない場合(例えば、非上場企業)であっても、XBRLファイル102が正当に取得できれば本発明に利用できるので、本発明の対象であるXBRLファイル102は、上記ホームページから得られるファイルに限定されるものではない。
【0030】
(b)XBRLファイル変換工程について
本工程では、業種別または企業別の財務諸表タクソノミ105,106で用いられている勘定科目名と、全業種共通の統合財務諸表タクソノミ107の勘定科目名との対応関係を記述したマッピング(勘定科目集約)テーブル104をあらかじめ作成しておく必要がある。
【0031】
ここで、図2に、標準タクソノミ201から業種別財務諸表タクソノミ105への拡張、業種別財務諸表タクソノミ105から企業別財務諸表タクソノミ106への拡張に対する、本発明に用いられる統合財務諸表タクソノミ204の概念的な位置づけを示す。このように、本発明に用いられる統合財務諸表タクソノミ204は、標準タクソノミの位置づけとは異なり、異業種を含め全業種を対象とした財務情報の比較分析を可能にするという目的で作成されるものである。
なお、この統合財務諸表タクソノミ107は、上記目的に合致するように一体系化されたタクソノミであればよく、タクソノミの一体系化は任意の基準に基づいてできる。
【0032】
以下、本発明において統合財務諸表タクソノミ107作成のために、勘定科目を集約した例の一部を紹介する。
図3〜5は、統合財務諸表タクソノミ107における勘定科目集約の例の一部を示す図である。図3は、貸借対照表における「流動負債」の項において、7行目から10行目の「借入有価証券」は、EDINETタクソノミでいうところの、商工業・その他・共通、銀行・信託業、保険業および投資信託受益証券の各業種における借入有価証券をまとめたものである。
【0033】
図4は、損益計算書における「販売費及び一般管理費・その他営業費用」の項において、5行目から7行目の「一般管理費」は、EDINETタクソノミでいうところの、海運事業、投資運用業(投資信託委託会社)および商工業・その他・共通における一般管理費をまとめたものである。
図5は、キャッシュフロー計算書における「投資活動によるキャッシュフロー」の項において、5行目から6行目の「有価証券の取得による支出」は、EDINETタクソノミでいうところの、商工業・その他・共通、銀行・信託業における有価証券の取得による支出をまとめたものである。
【0034】
図6は、本発明で用いる全業種共通の統合財務諸表タクソノミにおいて新たに作成された、EDINETの貸借対照表タクソノミにはない科目の例を示す図である。「当座資産」はラベル3の列にあり、この列に次の科目「たな卸資産」が入るまでの科目を「当座資産」として集約している。
「当座資産」は、会計上は一般用語であるが、財務諸表上は「当座資産」という科目はなく、現預金や受取手形、売掛金等を足した項目になり、これを足し上げた数字を、本発明で用いる全業種共通の統合財務諸表タクソノミで集約定義している、ということになる。
【0035】
工程(b)では、上記の例のように作成されたマッピングテーブル104を参照することにより、前記工程(a)で入手した各企業の財務諸表データに係るXBRLファイルの勘定科目名を、対応する統合財務諸表タクソノミの勘定科目名に置き換える。
この置き換えには、勘定科目集約プログラム103が用いられる。図7にこの勘定科目集約プログラムのフローチャートを示す。
【0036】
1)まず、対象XBRLファイルから勘定科目を抽出する(S701)。
2)次に、勘定科目毎に、マッピングテーブルの勘定科目群の科目の文字列(要素ID)を照合する(S702)。
3)上記において、文字列が合致するか否かを判断する(S703)。
i)文字列が一致しない場合:
上記工程2)(S702)に戻る(処理Aの継続)。
ii)文字列が一致する場合:
下記4)の工程に進む
4)文字列(要素ID)で一致した勘定科目の集約科目を取得する(S704)。
5)対象XBRLファイルの勘定科目名をマッピングテーブルの集約科目名に集約する(置き換える)(S705)。
6)勘定科目が全て一致するか否かを判断する(S706)。
(i)勘定科目が全て一致していない場合:
工程2)(S702)に戻る(処理Bの継続)。
(ii)勘定科目が全て一致した場合: 下記7)に進む。
7)集約XBRLが完成する(S707)。
【0037】
また、この勘定科目集約プログラム103を用いた勘定科目集約処理の具体的な例を図8に示す。
勘定科目集約プログラム103は、企業別又は業種別財務諸表タクソノミで用いられている勘定科目名と、全業種共通の統合財務諸表タクソノミの勘定科目名との対応関係を記述したマッピングテーブル104を参照しながら、対象XBRLファイルの勘定科目801を読んでいき、その勘定科目が含まれる勘定科目群に対応する集約科目を出力する。
その結果、XBRLファイルにおける勘定科目名が変換後のXBRLファイルの科目群802に置き換えられ、統合財務諸表タクソノミの属性、構造に対応する、変換された形式のXBRLファイル108(以下、「集約XBRLファイル」という。)が作成される。
上記マッピングテーブル104は、全ての勘定科目、財務諸表を取り込んだマッピングテーブルであり、出力は、1社単位で行われる。
【0038】
なお、XBRL変換工程(b)において、対象企業のXBRLファイル102に含まれる新規追加勘定科目が、本発明で用いるマッピングテーブル104に用意されていない場合には、置き換える勘定科目を手入力することで対応できる。このように新たに手入力で置き換えられた勘定科目の情報については、マッピングテーブル104にその情報を組み込むことにより、本発明の企業財務情報DBシステム110の更新を行うことができる。
【0039】
(c)SQL文作成工程について
上記工程(b)で得られた集約XBRLファイル108については、置き換えられた勘定科目およびそれに対応する数値に係るXBRLインスタンス文書のデータをRDBに格納するために、書類1件当たり(企業毎、財務諸表毎)、一つのSQL文109が作成される。
【0040】
(d)データベース登録工程
上記SQL文109が実行されることにより、XBRL文書に含まれるタグ付けされたデータが構造分解されて、複数の関係表に分けてインスタンス(値)単位で格納される。
以上述べた(a)〜(d)の工程を実施することにより、本発明の企業財務情報RDBが構築される。
【0041】
次に、本発明の企業財務情報DBシステム110には、図1に示されるように、SQL文のデータ(勘定科目と数値)が格納されたテーブル112を有する企業財務情報RDB、データに対するアクセス要求に応えるデータ制御部115、および統合財務諸表タクソノミを定義したXML形式のファイル113が存在する。これにより、上記SQL文により企業財務情報RDB111のテーブルに取り込まれた各企業の財務諸表データを、統合財務諸表タクソノミ107の定義を合わせた形で検索できるシステムとなる。
【0042】
次に、上記企業財務情報DBシステム110を利用して、ネットワーク上で情報利用者に情報を提供する企業財務情報提供システムの発明について説明する。
本発明の財務情報提供システムのシステム構成図の例を図9に示す。
図示されるように、本発明の財務情報提供システムは、情報利用者であるユーザが使用するユーザ端末910と、ユーザ端末910からのアクセスに応じて企業財務諸表データに関する検索結果を提供する財務情報提供サーバ930と、を備える。
【0043】
また、本発明の財務情報提供システムの財務情報提供サーバ930は、ユーザの操作するユーザ端末910とネットワーク920を介してデータの送受信が可能である。ここでネットワーク920とは、インターネット等のオープンネットワーク、LAN等のクローズドネットワーク、それらの組合せのイントラネット等のいずれであっても良く、有線・無線の別も問わない。
本システムの財務情報提供サーバ930は、企業財務情報DBシステム110と、Webサーバ931と、を備える。
【0044】
企業財務情報DBシステム110は、企業財務情報RDB111と、企業財務情報RDB111のデータについて、読み出し、登録、更新等の処理を例えばSQL(System Query Language)により行うデータ制御部115と、を備える。
データ制御部115では、アクセス要求部933の指示を受け、統合タクソノミ定義に沿って企業財務情報RDB111から情報をピックアップし、アクセス要求部933に返す処理を行う。
【0045】
Webサーバ931は、各ユーザ端末910からの要求に応じて、所定のHTML(HyperText Markup
Language)形式のファイルを送信するWeb制御部932と、各ユーザ端末910からの要求に従って、企業財務情報DBシステム110へのアクセスを行い、また、企業財務情報DBシステム110からの財務諸表データの検索結果を受け取るアクセス要求部933と、を備える。
なお、財務情報提供サーバ930のハードウエアは、コンピュータであり、基本構成として、入力装置、CPU、メモリ、記憶装置等を有する。
また、ユーザ端末としては、パーソナルコンピュータ、携帯端末、携帯電話等が用いられる。
【0046】
本発明の財務情報提供システムにおけるユーザ端末のWebブラウザからのリクエストからユーザ端末での表示までの手順の一例を以下に説明する。
まず、Webブラウザ911から企業財務情報RDB111をアクセスするための所定のパラメータを含むリクエスト(要求)がHTTP(HyperText Transfer
Protocol)に従ってWebサーバ931に送信される。Webサーバ931に送信されたリクエストはWeb制御部932を介してアクセス要求部933に渡される。アクセス要求部933は、そのリクエストに含まれるパラメータを、ファイル記憶部934における検索要求ファイルのSQLクエリ中に埋め込むことにより、企業財務情報RDBにアクセスするためのファイルを生成する(検索ファイル生成手段)。
【0047】
次に、アクセス要求部933は、生成した検索要求ファイルを企業財務情報DBシステム110に渡す。企業財務情報DBシステム110におけるデータ制御部115は、受け取った検索要求ファイルに記述されているSQLクエリに従って企業財務情報RDB111を検索する。次に、企業財務情報DBシステム110は、検索結果をWebサーバ931に渡す。Webサーバ931におけるアクセス要求部933は、受け取った検索結果が反映された検索結果ファイルを生成する(検索手段)。次に、Webサーバ931におけるWeb制御部932は、検索結果ファイルをWebブラウザ911に送信する(検索結果送信手段)。Webブラウザ911は、受信した検索結果ファイルを表示する(ブラウザ手段)。
【0048】
なお、企業財務情報DBシステム110には、図9に示されるように、SQL文のデータ(財務数値と勘定科目名)が格納されたテーブル112、および統合財務諸表タクソノミを定義したXML形式のファイル113が存在し、企業財務情報DBシステム110においてこれらが対応付けられている。これにより、上記SQL文により企業財務情報RDBのテーブルに取り込まれた各企業の財務諸表データを、統合財務諸表タクソノミ107の定義を合わせた形で検索できるシステムとなっている。
次に、本発明の企業財務情報提供システムを用いた検索例を以下具体的に説明する。
例えば、企業5社の貸借対照表のデータを横並びに比較したい場合、まず、ユーザ(情報利用者)は、データを得たい企業5社(A社〜E社)の名前と指定する財務諸表名(貸借対照表)をユーザ端末910へ入力する。
【0049】
この入力によって、ユーザ端末910は、入力された情報をネットワーク920を介してWebサーバ931へ送信する。Webサーバ931のWeb制御部932がそれらの情報を受信すると、アクセス要求部933が、企業財務情報DBシステム110にアクセスする。企業財務情報DBシステム110のデータ制御部115は、このアクセスに応じ、検索エンジンを用いることにより、企業財務情報RDB111から、ユーザから指定された各企業の貸借対照表のデータを検索する。この検索結果は、データ制御部115からWebサーバ931のアクセス要求部933に送信され、さらに、Web制御部からユーザ端末に送信され、ユーザ端末は、図10に示すようなイメージの帳票を表示する。
【0050】
また、本発明の財務情報提供システムの利用例としては、図11に示すように、Webサービスによる展開の例も挙げることができる。
この例において、Webサービス提供企業は、Webサービス経由で財務諸表データを「JSON(JavaScript Object Notation)形式」ないし「XML形式」で常時配信している。
また、Webサービスの契約者(図中、Web制作会社A,B,Cなど)は、AJAX(Asynchronous JavaScript + XML)クライアントコンピュータより、Webサービスにアクセスし、そこから所望の企業の財務情報データを受け取る。
Webサービスの契約者は受け取ったデータを自社Webサイト上で自由にレイアウトし、デザインカスタマイズをして、一つのWebページとしてエンドユーザに情報提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、企業、大学、アナリスト、投資家、情報提供会社などが、異業種企業等間での財務情報の比較分析等の業務で利用することにより、広範囲かつ的確な分析結果が得られ、業務効率の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0052】
101 金融庁等のホームページ
102 XBRLファイル
103 勘定科目集約プログラム
104 マッピングテーブル
105 業種別の財務諸表タクソノミ
106 企業別の財務諸表タクソノミ
107 統合財務諸表タクソノミ
108 集約XBRLファイル
109 SQL文書
110 企業財務情報DBシステム
111 企業財務情報RDB
112 財務数値と勘定科目名が格納されたテーブル
113 統合タクソノミを定義したXML形式のファイル
114 全文検索エンジン
115 データ制御部
201 標準タクソノミ
801 対象XBRLファイルの科目群
802 変換後のXBRLファイルの科目群
910 ユーザ端末
911 Webブラウザ
920 ネットワーク
930 財務情報提供サーバ
931 Webサーバ
932 Web制御部
933 アクセス要求部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)各企業の財務諸表データに係るXBRLファイルを入手するデータファイル入手工程、(b)企業別又は業種別財務諸表タクソノミで用いられている勘定科目名と、全業種共通の統合財務諸表タクソノミの勘定科目名との対応関係を記述したマッピングテーブルを参照して、前記各企業の財務諸表データに係るXBRLファイルにおける勘定科目名を、前記統合財務諸表タクソノミの勘定科目名に置き換えるXBRLファイル変換工程、(c)変換されたXBRLファイルのうち、置き換えられた勘定科目およびそれに対応する数値に係るXBRLインスタンス文書のデータをリレーショナルデータベースに格納するためのSQL文作成工程、(d)前記SQL文を実行することにより、前記統合財務諸表タクソノミを定義するXML形式のファイルに従って制御されるリレーショナルデータベースに、前記XBRLインスタンス文書のデータを登録するデータベース登録工程、を有することを特徴とする全業種共通の統合財務諸表タクソノミに基づく企業財務情報データベースの構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載の構築方法により得られることを特徴とする企業財務情報データベース。
【請求項3】
請求項2に記載の企業財務情報データベース、データに対するアクセス要求に応えるデータ制御部、および統合財務諸表タクソノミを定義するXML形式のファイルを有することを特徴とする企業財務情報データベースシステム。
【請求項4】
Webサーバと請求項3に記載の企業財務情報データベースシステムとを有する財務情報提供サーバと、所定のプロトコルに従って前記財務情報提供サーバと通信を行うユーザ端末と、を備える企業財務情報提供システムであって、
前記財務情報提供サーバは、前記ユーザ端末からの要求に応答し、前記企業財務情報データベースを検索するための検索ファイルを生成する検索ファイル生成手段と、前記検索ファイル生成手段により生成された検索ファイルに基づき前記企業財務情報データベースを検索する検索手段と、その検索結果のファイルを前記ユーザ端末に送信する手段と、を備え、
前記ユーザ端末は、前記財務情報提供サーバから受信したファイルを表示するブラウザ手段を備えることを特徴とする企業財務情報提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−76557(P2011−76557A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230064(P2009−230064)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(597095599)株式会社プロネクサス (8)
【Fターム(参考)】