説明

伐採装置

【課題】 樹木の上端部を伐採するための伐採装置において、構造が簡単でしかもコンパクトな機構により極めて小型,軽量化して山間部での搬送を容易にし、かつ作業性を向上させると共に、従来木上で伐採していた作業を地上から行い、作業者の危険を軽減することを課題とする。
【解決手段】 コの字形状をなす機枠2の外周に帯ノコ7を周動させ、コの字形状の開放部に露出したノコ歯部7aを円弧軌跡上に回動させる機構を昇降装置40上に設けると共に、立ち木を機枠の凹部に誘導する機構を設け、さらに切断装置の下方に挟持装置を設け、また駆動源を着脱式バッテリーにすることにより、簡潔な機構となり小型,軽量化できるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生立する樹木が生長すると共に、引き起こされる障害を排除するために、樹木の上端部を伐採切断する伐採装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手段として、例えば送電線の直下に生立する樹木が、電線に接触して引き起こされる送電不良等を防止するための一方法として、樹木の根元から伐採する方法や作業者が樹木に登り所定の高さで伐採する方法が用いられていた。また、人が高所に登ることなく、樹木を所定の高さで伐採する伐採装置も提案されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2000−78934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、樹木に登り上端部を切断する方法は、樹木の登り降りに困難を伴うし、作業者の落下等による危険性を有している。また、特許文献1の装置は自走可能な台車部を伴うものであるとともに、装置構成が複雑なものとなっている。
本発明は上記した問題点を除き、地上から簡単に操作が可能で、安全でしかも山間部での運搬が容易に出来る小型、軽量で、さらに安価な樹木を所定の高さで伐採できる伐採装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明の手段は、コの字状の機枠の外周に帯ノコを周動可能に配置し、コの字状の機枠開口部に露出したノコ歯を樹木に圧接して切断する樹木切断手段を所定高さを有する支持手段上に取付けて伐採装置を構成する。
【0005】
さらに、請求項2記載の発明の手段は、請求項1記載の発明において、コの字状機枠の開口部を、開口部と相対するコの字機枠の閉塞側にすなわちコの字状の機枠の開口部と相対する機枠に沿って回動軸を設け、帯ノコの作動軌跡を円弧とすることにより樹木を伐採切断するものである。
【0006】
さらに、請求項3記載の発明の手段は、請求項1又は2に記載の発明において上記支持手段上に樹木を挟持する手段を併設することにより、安定した伐採切断を行うものである。
【0007】
さらに、請求項4記載の発明の手段は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、切断に必要な帯ノコの駆動エネルギの供給源をバッテリーとし、さらに支持手段上に搭載することにより、地上から電線等の接続を不要とし、作業性を向上させた伐採切断を行うものである。
【0008】
さらに、請求項5記載の発明の手段は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、支持手段として昇降装置を用い、任意の高さでの伐採切断を可能としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は次のような効果を奏する。請求項1に記載された発明は、樹木切断手段をコの字状機枠の開口部に帯ノコを露出させる構成とすると共に、切断時に立ち木切断部の下方をコの字状の凹部に案内するように構成することにより小型,軽量化が可能で、さらに機構の構成が簡潔となり安価な伐採装置となり、山間部での搬送や、伐採作業効率の向上に多大な効果をもたらすことができる。
【0010】
請求項2に記載された発明は、コの字状機枠の開放部に帯ノコを露出させ、さらに開放部と相対する機枠上に回動支点軸を設け、該帯ノコを円弧状に回動させ立ち木を切断することにより、簡潔で小型,軽量化することが可能となり、請求項1と同様の効果をもたらすことできる。
【0011】
請求項3に記載されている発明は、帯ノコが切断する際に発生する抵抗力により切断面が不安定になる現象を防止し、円弧状の切断面軌跡を得ることができ切断時間を大幅に短縮し、作業効率向上に多大な効果をもたらすことができる。
【0012】
請求項4に記載されている発明は、切断に必要なエネルギをバッテリーとし、さらに装置内部に搭載することにより地上からのエネルギ供給のための電線等が不要となり、作業性を向上させるという効果がある。また着脱式バッテリーにより、予め充電された予備のバッテリーを携帯し交換することで、山間部などでの発電機等の搬送が不要になり作業性が多大に向上するという効果がある。
【0013】
請求項5に記載されている発明は、樹木切断手段を所定の高さに支持する支持手段が昇降装置で構成されているため、任意の高さで樹木を切断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明における切断装置の構成を示したものであり、図2は挟持装置の構成を示したものである。また図3は回路構成及び、図4から図7は装置の動作を示した図である。
【0015】
図1は主要な切断装置(樹木切断手段)1の構成を示す。切断装置1はコの字状の機枠2と、軸受け部10aと10bを有するベース10とから構成される。機枠2には軸受け8a、8bが設けられベース10に対し軸9を介しA,B方向に回動可能に係合されている。機枠2の面にはモータ3が設けられ、モータ3のモータ軸3aは機枠2を貫通し、軸端には駆動プーリ4が係合されている。さらに機枠2には軸6a,6b,6cが設けられ、それぞれ従動プーリ5a,5b,5cが駆動プーリ4と同面に回動可能に係合され、さらにプーリ5a,5b,5c,駆動プーリ4の外周面にはノコ歯部7aを有する帯ノコ7が周動可能に係合されている。即ちモータ3がC方向へ回動すると、帯ノコ7はモータ軸3a,駆動プーリ4、従動プーリ5a,5b,5cを介しD方向へ周動する構成となっている。一方ベース10上には軸受け18a,18bが軸13により回動可能に係合され、さらに軸13上には歯車12、軸端には一端にワイヤー15が接続された駆動レバー14が固定されている。また軸9上には歯車11が設けられ、歯車12と係合している。また機枠2及びベース10にはそれぞれバネ掛け19a,19bがバネ19により連結され、機枠2とベース10は直角に保持されている。さらにベース10にはセンサ16が設けられ機枠2の側面2cを検出可能に設置されている。一方ベース10上には、モータ3の駆動電源であるバッテリー17が着脱可能に搭載され、さらに下面には支柱31a,31b,31cを介し、図2で示す挟持装置20が設けられている。また挟持装置20の下面には切断装置1を所定の高さまで上昇、下降させるための昇降装置40が設けられている。
【0016】
図2は挟持装置20の構成を示す。ベース21上には軸23a,23bが設けられ、さらにそれぞれの軸にはクランパ22a,22bが回動可能に係合されている。クランパ22a,22bの一端は歯車22c,22dを成し、それぞれに噛合し、さらに側面にはバネ掛け26a,26bが設けられ、バネ27で連結されている。またクランパ22bには軸23bに回動可能にワイヤ25が巻き止められたプーリ24が重なって設けられている。一方ベース21は軸受け29a,29bがプーリ28を回動可能に軸30により係合されている。以上の構成により、ワイヤ25がJ方向に引かれるとクランパ22a,22bはそれぞれプーリ28,軸30,プーリ24及び軸23a,23b、歯車22c,22dを介しI,I’の方向へ回動する。この時、バネ27はバネ掛け26a26bにより引伸される。またワイヤ25を緩めると、バネ27の引戻力により、バネ掛け26a,26bを介し、クランパ22a,22bはG及びG’の方向へ復帰、回動する。
【0017】
図3は切断装置1のモータ3を駆動する回路構成を示す。バッテリー17の電源の1回路はセンサ16を介し、他回路は直接モータ3に接続されている。またセンサ16は機枠2の面が乖離した時回路をONとなりモータ3を回動させ、機枠2の面が接近した時OFFとなりモータ3を停止させる構成となっている。
【0018】
図4は本伐採装置の初期の状態を示す。切断装置1及び挟持装置20が昇降装置40によりK方向に上昇し、立ち木50が切断される所定の位置において停止する。(詳細説明は省略する)その後ワイヤ25をJ方向に引き下げると左右一対のクランパ22a,22b(左右一対部位のため番号は併記する)は、軸30,プーリ28,軸23a,23b(同様に番号は併記する)及び図2で示されるプーリ24,歯車22c,22dを介しI方向に回動され、図4で示す立ち木50の所定部を挟持する。
【0019】
次の動作を図5で示す。クランパ22a,22bが立ち木50を挟持した後、切断装置2のワイヤ15をH方向へ引き下げると、レバー14はE方向へ回動し、軸13,歯車12,歯車11,軸9を介し機枠2はA方向へ回動される。その時センサ16は機枠2の検出面2aが乖離したことを検知し、図3で示される回路構成によりモータ3を駆動させ、さらに駆動プーリ4が帯ノコ7を周動させる。その結果ノコ歯部7aが立ち木50の切断を開始する。その際立ち木50は機枠2の凹部2bへ誘導される。
【0020】
次の動作を図6で示す。ワイヤ15をさらにH方向へ引き下げるとレバー14及び機枠2はそれぞれE方向,A方向へ回動し、帯ノコ7は立ち木50を軸9を中心とした円弧状軌跡の切断面50bで切断する。また切断された立ち木の切断木50aは、曲面50bに沿って落下する。
【0021】
次の動作を図7で示す。ワイヤ15を緩めると機枠2はバネ19によりバネ掛け19a,19bを介しB方向へ回動する。またレバー14は軸9,歯車11,12,軸13を介しF方向へ回動し初期状態へ復帰する。その時センサ16は機枠2の検出面2aを検出し、図3で示す回路構成によりモータ3を停止せしめる。さらにワイヤ25を緩めると、クランパ22a,22bは、図2で示すバネ27の作用により、バネ掛け26a,26b,歯車22c,22dを介しG及びG’方向へ回動され、立ち木50の挟持を開放し初期状態へ復帰する。その後昇降装置40をJ方向へ下降させ一連の切断伐採工程は終了する。
【0022】
以上実施例として切断装置および挟持装置の回動手段としてワイヤを用い説明したが、直接装置内に駆動装置を搭載して回動手段としても同様の効果を得られる。
【0023】
また実施例として帯ノコの周動手段として駆動プーリ及びプーリを計4個で構成する機構で説明したが、駆動プーリとプーリそれぞれ複数個で構成される周動手段を用いても同様の効果が得られる。また、樹木切断手段の支持手段として昇降装置を用いたが、所定の高さが得られるものであれば、例えば柱状体等任意の支持手段が採用できる。
【0024】
また挟持装置のクランパ回動手段としてプーリ,歯車,バネを用いて説明したが、リンク機構やカム機構等他の機構要素により構成される回動手段を用いても同様の結果が得られる。
【0025】
本実施の形態に係わる切断装置によれば、立ち木を挟持しかつ帯ノコで円弧状に切断することにより、確実な切断が可能となる。
【0026】
さらにこのような切断装置は小型,安価,軽量で山間部での運搬が容易で、作業費用も軽減できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】 本発明における切断装置の機構構成を示す要部斜視図である。
【図2】 本発明における挟持装置の機構構成を示す要部斜視図である。
【図3】 本発明における回路構成を示す回路図である。
【図4】 本発明の切断装置の切断動作を示す側面図である。
【図5】 本発明の切断装置の切断動作を示す側面図である。
【図6】 本発明の切断装置の切断動作を示す側面図である。
【図7】 本発明の切断装置の切断動作を示す側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 切断装置
2 機枠
2a 検出面
2b 開口部
3 モータ
3a モータ軸
4 駆動プーリ
5a 従動プーリ
5b 従動プーリ
5c 従動プーリ
6a 軸
6b 軸
6c 軸
7 帯ノコ
7a ノコ歯部
8a 軸受
8b 軸受
9 軸
10a 軸受け
10b 軸受け
11 歯車
12 歯車
13 軸
14 駆動レバー
15 ワイヤ
16 センサ
17 バッテリ
18a 軸受け
18b 軸受け
19 バネ
19a バネ掛け
19b バネ掛け
20 挟持装置
21 ベース
22a クランパ
22b クランパ
23a 軸
23b 軸
24 プーリ
25 ワイヤ
26a バネ掛け
26b バネ掛け
27 バネ
28 プーリ
29a 軸受け
29b 軸受け
30 軸
31a 支柱
31b 支柱
31c 支柱
40 昇降装置
50 立ち木
50a 切断木
50b 切断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の高さを有する支持手段と、前記支持手段上に設けられた樹木切断手段とを有し、前記樹木切断手段が、コの字状をなす機枠上に設けられた周動可能な帯ノコ部を有し、コの字状機枠の開口部において露出されたノコ歯により被伐採木を伐採することを特徴とする伐採装置。
【請求項2】
前記樹木切断手段は、コの字状の機枠の開口部と相対する機枠に沿って回動軸を有し、該回動軸を中心に開口部に露出する帯ノコを円弧軌跡上を回動させることにより、被伐採木を切断することを特徴とする請求項1記載の伐採装置。
【請求項3】
前記支持手段上に切断時に被伐採木を挟持して、安定した切断動作を行わせる為の挟持装置を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の伐採装置。
【請求項4】
被伐採木を切断するための帯ノコの駆動手段へ供給する電源を着脱可能なバッテリーとし、該バッテリーを前記支持手段上に搭載することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の伐採装置。
【請求項5】
前記支持手段が昇降装置であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の伐採装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−109814(P2006−109814A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325690(P2004−325690)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(502185618)株式会社高林製作所 (2)