説明

伝動ベルト

【課題】伝動ベルトの耐久性を向上させる。
【解決手段】伝動ベルトBは、心線14がベルト長さ方向に延びるように埋設されたゴム層11を備える。ゴム層11は、繊維径1μm以下の極細繊維15がベルト長さ方向に配向するように含有されたゴム組成物で形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伝動ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
伝動ベルトの耐久性を高めること等を目的として、心線が埋設された接着ゴム層に短繊維を含有させる技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、伝動ベルトの接着ゴム層に、綿、ポリエステル、アラミド、カーボン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ナイロン、ガラス繊維等を、ステープルファイバ、細断繊維(チョップトファイバ)、パルプ状繊維、或いはフロック加工繊維の形態で、ベルト長さ方向に配向するように含有させることにより高弾性率化することが開示されている。
【0004】
特許文献2には、伝動ベルトの接着ゴム層を心線よりも外側の上部層と内側の下部層に分け、その下部層に、繊維径が1.5μm以下の変成ナイロンミクロファイバーを、所定の方向に配向しないようにランダムに含有させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−507679号(段落0031)
【特許文献2】特開2007−198485号(段落0034−0036)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、接着ゴム層のベルト長さ方向の高弾性率化は図られるものの、伝動ベルトの耐久性の十分な向上を得ることができない。
【0007】
また、特許文献2に記載された発明では、接着ゴム層に変成ナイロンミクロファイバーをランダムに含有させており、そのベルト長さ方向への十分な高弾性率化が図られず、従って、伝動ベルトの耐久性の向上を期待することができない。
【0008】
本発明の課題は伝動ベルトの耐久性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、心線がベルト長さ方向に延びるように埋設されたゴム層を備えた伝動ベルトであって、上記ゴム層は、繊維径1μm以下の極細繊維がベルト長さ方向に配向するように含有されたゴム組成物で形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、繊維径1μm以下の極細繊維がベルト長さ方向に配向するように含有されたゴム組成物で心線が埋設されたゴム層が形成されているので、ゴム層のベルト長さ方向の高弾性率化を図ることができ、しかも、伝動ベルトの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るVリブドベルトの斜視図である。
【図2】補機駆動ベルト伝動装置のプーリレイアウトを示す図である。
【図3】(a)〜(c)は実施形態に係るVリブドベルトの製造方法を示す説明図である。
【図4】変形例のVリブドベルトの斜視図である。
【図5】(a)〜(d)はその他の実施形態に係る伝動ベルトを示す斜視図である。
【図6】ベルト走行試験機のプーリレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は本実施形態に係るVリブドベルトB(伝動ベルト)を示す。本実施形態に係るVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動ベルト伝動装置等に用いられるものである。本実施形態に係るVリブドベルトBは、例えば、ベルト周長700〜3000mm、ベルト幅10〜36mm、及びベルト厚さ4.0〜5.0mmである。
【0014】
本実施形態に係るVリブドベルトBは、ベルト厚さ方向の中間の接着ゴム層11とそのベルト内周側の圧縮ゴム層12とベルト外周側の背面ゴム層13との三重層に構成されたVリブドベルト本体10を備えており、接着ゴム層11には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配された心線14が埋設されている。
【0015】
接着ゴム層11は、断面横長矩形の帯状に構成されており、厚さが例えば1.0〜2.5mmである。接着ゴム層11は、原料ゴムに種々の配合剤等が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたゴム組成物で形成されている。
【0016】
接着ゴム層11を形成するゴム組成物の原料ゴムは、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。原料ゴムは、単一種で構成されていてもよく、また、複数種がブレンドされて構成されていてもよい。
【0017】
配合剤としては、カーボンブラックなどの補強材、加硫促進剤、架橋剤、老化防止剤、軟化剤等が挙げられる。
【0018】
補強材としては、カーボンブラックでは、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N−339、HAF、N−351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N−234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラックが挙げられる。補強剤としてはシリカも挙げられる。補強剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。補強材は、耐摩耗性及び耐屈曲性のバランスが良好となるという観点から、原料ゴム100質量部に対する配合量が30〜80質量部であることが好ましい。
【0019】
加硫促進剤としては、酸化マグネシウムや酸化亜鉛(亜鉛華)などの金属酸化物、金属炭酸塩、ステアリン酸などの脂肪酸及びその誘導体等が挙げられる。加硫促進剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。加硫促進剤は、原料ゴム100質量部に対する配合量が例えば0.5〜8質量部である。
【0020】
架橋剤としては、例えば、硫黄、有機過酸化物が挙げられる。架橋剤として、硫黄を用いたものでもよく、また、有機過酸化物を用いたものでもよく、さらには、それらの両方を併用したものでもよい。架橋剤は、硫黄の場合、原料ゴム100質量部に対する配合量が0.5〜4.0質量部であることが好ましく、有機過酸化物の場合、原料ゴム100質量部に対する配合量が例えば0.5〜8質量部である。
【0021】
老化防止剤としては、アミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体、フェノール系、亜リン酸エステル系のものが挙げられる。老化防止剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。老化防止剤は、原料ゴム100質量部に対する配合量が例えば0〜8質量部である。
【0022】
軟化剤としては、例えば、石油系軟化剤、パラフィンワックスなどの鉱物油系軟化剤、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落下生油、木ろう、ロジン、パインオイルなどの植物油系軟化剤が挙げられる。軟化剤は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。石油系軟化剤以外の軟化剤は、原料ゴム100質量部に対する配合量が例えば2〜30質量部である。
【0023】
また、接着ゴム層11を形成するゴム組成物には、繊維径1μm以下の極細繊維15がベルト長さ方向に配向するように含有されている。これにより接着ゴム層11のベルト長さ方向の高弾性率化を図ることができ、しかも、VリブドベルトBの耐久性を向上させることができる。
【0024】
極細繊維15の材質としては、例えば、アクリル繊維(例えば三菱レーヨン社製 商品名:ボンネル)、ポリアリレート繊維(例えばクラレ社製 商品名:ベクトラン)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維(例えば東レ社製 商品名:トルコン)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維(例えば東洋紡績社製 商品名:ザイロン)、ポリイミド繊維(例えば東洋紡績社製 商品名:P84)、ポリエステル(PET)繊維(例えば帝人ファイバー社製 商品名:テイジンテトロンテピルス、ナノフロント)、ポリエチレン繊維(東洋紡績社製 商品名:ダイニーマ)、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維(例えばダイセル化学工業社製 商品名:ティアラ)、綿、他に炭素繊維(昭和電工社製 商品名:VGCF)、ガラス繊維、、金属繊維等が挙げられる。極細繊維15は、単一種で構成されていてもよく、また、複数種で構成されていてもよい。極細繊維15は、例えば、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液(以下「RFL水溶液」という。)等に浸漬した後に加熱する接着処理が施されたものであってもよい。
【0025】
極細繊維15は、原料ゴム100質量部に対する配合量が5〜50質量部であることが好ましく、10〜30質量部であることがより好ましい。極細繊維15は、繊維径が1μm以下であるが、0.7μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、また、繊維長が4mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましい。なお、極細繊維15の繊維径及び繊維長は、走査型電子顕微鏡(例えば、日立ハイテクノロジーズ社製 型番:S−4800)により得られた画像解析により測定することができる。
【0026】
接着ゴム層11を形成するゴム組成物は、ベルト長さ方向の引張強さ(TB)が10MPa以上であることが好ましく、15MPa以上であることがより好ましい。接着ゴム層11を形成するゴム組成物は、ベルト幅方向の引張強さ(TB)が5MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましい。ベルト長さ方向及びベルト幅方向の引張強さ(TB)の上限値は、特に規定されるものではないが、当業者が一般的に想定するものとしては100MPaである。なお、引張強さ(TB)は、接着ゴム層11を形成するゴム組成物について、JIS K6251に基づいて測定されるものである。
【0027】
接着ゴム層11を形成するゴム組成物は、ベルト長さ方向の貯蔵弾性率(E’)が100MPa以上であることが好ましく、150MPa以上であることがより好ましく、また、ベルト幅方向の貯蔵弾性率(E’)が30MPa以上であることが好ましく、50MPa以上であることがより好ましい。ベルト長さ方向及びベルト幅方向の貯蔵弾性率(E’)の上限値は、特に規定されるものではないが、当業者が一般的に想定するものとしては2000MPaである。接着ゴム層11を形成するゴム組成物のベルト長さ方向の貯蔵弾性率(E’)は、ベルト幅方向の貯蔵弾性率(E’)の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましい。ベルト長さ方向の貯蔵弾性率(E’)がベルト幅方向の貯蔵弾性率(E’)の2倍以上であると、弾性率効果及び補強効果の持続性が相乗的に機能してベルト耐久性を高めることができる。極細繊維15がベルト長さ方向に配向した接着ゴム層11を形成するゴム組成物では、貯蔵弾性率(E’)についてベルト長さ方向とそれに直交するベルト幅方向との間で大きな異方性を有する。この異方性は混入した極細繊維15の配向に起因するものであり、上記ベルト長さ方向の貯蔵弾性率(E’)のベルト幅方向の貯蔵弾性率(E’)に対する倍率は極細繊維15の配向度合を示すパラメータである。なお、本出願における貯蔵弾性率(E’)とは、接着ゴム層11を形成するゴム組成物の試験片について、粘弾性スペクトロメータを用い、試験温度25℃の下で0.294MPaの静荷重をかけ、±0.1%の動歪みを加えることにより測定されるものである。
【0028】
圧縮ゴム層12は、複数のVリブ16がベルト内周側に垂下するように設けられている。複数のVリブ16は、各々がベルト長さ方向に延びる断面略逆三角形の突条に形成されていると共に、ベルト幅方向に並設されている。各Vリブ16は、例えば、リブ高さが2
.0〜3.0mm、基端間の幅が1.0〜3.6mmに形成されている。また、リブ数は、例えば、3〜6個である(図1では、リブ数が6)。圧縮ゴム層12は、原料ゴムに種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたゴム組成物で形成されている。
【0029】
圧縮ゴム層12を形成するゴム組成物の原料ゴムとしては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。圧縮ゴム層12の原料ゴムは接着ゴム層11の原料ゴムと同一であることが好ましい。配合剤としては、接着ゴム層11と同様、例えば、カーボンブラックなどの補強材、加硫促進剤、架橋剤、老化防止剤、軟化剤等が挙げられる。
【0030】
圧縮ゴム層12を形成するゴム組成物には短繊維17が含有されていてもよい。この短繊維17は、ベルト幅方向に配向していることが好ましく、Vリブ16表面に露出したものがVリブ16表面から突出していることが好ましい。また、圧縮ゴム層12には、Vリブ16表面に短繊維17が植毛されていてもよい。
【0031】
短繊維17の材質としては、例えば、ナイロン繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、綿等が挙げられる。短繊維17は、長繊維を長さ方向に沿って所定長に切断して製造される。短繊維17は、例えば、RFL水溶液等に浸漬した後に加熱する接着処理が施されたものであってもよい。短繊維17は、例えば、繊維径が10〜50μm、繊維長が0.2〜5.0mmである。
【0032】
背面ゴム層13は、断面横長矩形の帯状に構成されており、厚さが例えば0.4〜0.8mmである。背面ゴム層13の表面は、ベルト背面が接触する平プーリとの間で生じる音を抑制する観点から、織布の布目が転写された形態に形成されていることが好ましい。背面ゴム層13は、原料ゴムに種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤により架橋させたゴム組成物で形成されている。背面ゴム層13は、ベルト背面が接触する平プーリとの接触で粘着が生じるのを抑制する観点から、接着ゴム層11よりもやや硬めのゴム組成物で形成されていることが好ましい。
【0033】
背面ゴム層13を形成するゴム組成物の原料ゴムとしては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。背面ゴム層13の原料ゴムは接着ゴム層11の原料ゴムと同一であることが好ましい。配合剤としては、接着ゴム層11と同様、例えば、カーボンブラックなどの補強材、加硫促進剤、架橋剤、老化防止剤、軟化剤等が挙げられる。
【0034】
圧縮ゴム層12、接着ゴム層11、及び背面ゴム層13は、別配合のゴム組成物で形成されていてもよく、また、同じ配合のゴム組成物で形成されていてもよい。
【0035】
心線14は、ポリエステル繊維(PET)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN)、アラミド繊維、ビニロン繊維等の撚り糸で構成されている。心線14は、Vリブドベルト本体10に対する接着性を付与するために、成形加工前に下地処理液やRFL水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理及び/又はゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理が施されている。
【0036】
図2は、本実施形態に係るVリブドベルトBを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置20のプーリレイアウトを示す。この補機駆動ベルト伝動装置20は、VリブドベルトBが4つのリブプーリ及び2つの平プーリの6つのプーリに巻き掛けられて動力を伝達するサーペンタインドライブ方式のものである。
【0037】
この補機駆動ベルト伝動装置20は、最上位置のパワーステアリングプーリ21、そのパワーステアリングプーリ21の下方に配置されたACジェネレータプーリ22、パワーステアリングプーリ21の左下方に配置された平プーリのテンショナプーリ23と、そのテンショナプーリ23の下方に配置された平プーリのウォーターポンププーリ24と、テンショナプーリ23の左下方に配置されたクランクシャフトプーリ25と、そのクランクシャフトプーリ25の右下方に配置されたエアコンプーリ26と、を備えている。これらのうち、平プーリであるテンショナプーリ23及びウォーターポンププーリ24以外は全てリブプーリである。これらのリブプーリ及び平プーリは、例えば、金属のプレス加工品や鋳物、ナイロン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂成形品で構成されており、また、プーリ径がφ50〜150mmである。
【0038】
この補機駆動ベルト伝動装置20では、VリブドベルトBは、Vリブ16側が接触するようにパワーステアリングプーリ21に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面が接触するようにテンショナプーリ23に巻き掛けられた後、Vリブ16側が接触するようにクランクシャフトプーリ25及びエアコンプーリ26に順に巻き掛けられ、さらに、ベルト背面が接触するようにウォーターポンププーリ24に巻き掛けられ、そして、Vリブ16側が接触するようにACジェネレータプーリ22に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ21に戻るように設けられている。プーリ間で掛け渡されるVリブドベルトBの長さであるベルトスパン長は例えば50〜300mmである。プーリ間で生じ得るミスアライメントは例えば0〜2°である。
【0039】
本実施形態に係るVリブドベルトBの製造方法について図3(a)〜(c)に基づいて説明する。
【0040】
本実施形態に係るVリブドベルトBの製造において、まず、原料ゴムに各配合物を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して接着ゴム層11用の未架橋ゴムシート11’(ベルト形成用の未架橋ゴム組成物)を作製する。このとき、未架橋ゴムシート11’の列理方向、つまり、ゴムシート引出方向に極細繊維15が配向することとなる。極細繊維15には、配合前に、ホモジナイザーや粉砕機を用いて剪断力を作用させることにより繊維径が1μm以下となるように微細化加工を施してもよい。また、同様に、圧縮ゴム層12用及び背面ゴム層13用の未架橋ゴムシート12’,13’も作製する。このとき、圧縮ゴム層12にベルト幅方向に配向するように短繊維17を含有させる場合には、シート状に成形したものを所定長さに切断し、それらを短繊維が幅方向に配向するように連結して未架橋ゴムシート12’を形成すればよい。さらに、心線14となる撚り糸14’を下地処理剤及びRFL水溶液のそれぞれに浸漬して加熱する接着処理を行った後、ゴム糊に浸漬して加熱乾燥する接着処理を行う。
【0041】
次いで、図3(a)に示すように、円筒状の内金型30の外周に背面ゴム層13用の未架橋ゴムシート13’を巻き付けた後、その上に接着ゴム層11の外側部分を形成するための未架橋ゴムシート11’を巻き付け、次いで、その上に心線14となる接着処理済の撚り糸14’を螺旋状に巻き付けた後、その上に接着ゴム層11の内側部分を形成するための未架橋ゴムシート11’を巻き付け、さらにその上に圧縮ゴム層12を形成するための未架橋ゴムシート12’を巻き付ける。
【0042】
しかる後、内金型30上の成形体にゴムスリーブを被せてそれを成形釜にセットし、内金型30を高熱の水蒸気などにより加熱すると共に、高圧をかけてゴムスリーブを半径方向内方に押圧する。このとき、ゴム成分が流動すると共に架橋反応が進行し、加えて、撚り糸14’のゴムへの接着反応も進行して図3(b)に示すように複合化する。これによって、筒状のベルトスラブ10’(ベルト本体プリフォーム)が成形される。
【0043】
そして、内金型30からベルトスラブ10’を取り外し、それを長さ方向に数個に分割した後、図3(c)に示すように、それぞれの外周を研磨切削してVリブ16を形成する。
【0044】
最後に、分割されて外周にVリブ16が形成されたベルトスラブ10’を所定幅に幅切りし、それぞれの表裏を裏返すことによりVリブドベルトBが得られる。
【0045】
なお、本実施形態では、接着ゴム層11、圧縮ゴム層12、及び背面ゴム層13でVリブドベルト本体10を構成したが、特にこれに限定されるものではなく、図4に示すように、接着ゴム層11と圧縮ゴム層12とでVリブドベルト本体10を構成し、背面ゴム層13の代わりに補強布18が設けられた構成であってもよい。
【0046】
また、本実施形態では、伝動ベルトとしてVリブドベルトBを示したが、特にこれに限定されるものではなく、心線14が埋設されたゴム層41が本実施形態の接着ゴム層11と同一構成を有するものであれば、図5(a)に示すローエッジタイプのVベルト50A、図5(b)に示すラップドタイプのVベルト50B、図5(c)に示す歯付ベルト50C、或いは、図5(d)に示す平ベルト50D等であってもよい。
【0047】
また、本実施形態に係るVリブドベルトBの製造方法は、上記の方法に限定されるものではなく、以下の(1)又は(2)の方法であってもよい。
(1)外周にVリブ形成溝が形成された円筒金型に圧縮ゴム層12用の未架橋ゴムシートを巻き付けた後、その上に接着ゴム層11の内側部分を形成するための未架橋ゴムシートを巻き付け、次いで、その上に心線14となる接着処理済の撚り糸を螺旋状に巻き付けた後、その上に接着ゴム層11の外側部分を形成するための未架橋ゴムシートを巻き付け、さらにその上に背面ゴム層13を形成するための未架橋ゴムシートを巻き付け、円筒金型上に成形体を構成する。
【0048】
しかる後、成形体を構成した円筒金型を成形釜にセットし、高熱の水蒸気などにより加熱すると共に高圧をかけて成形体を半径方向内方に押圧する。このとき、ゴム成分が流動してVリブ形成溝に流入することによりVリブ16が形成されると共に架橋反応が進行し、加えて、撚り糸のゴムへの接着反応も進行して複合化する。そして、これによって、筒状のベルトスラブ(ベルト本体プリフォーム)が成形される。
【0049】
そして、円筒金型からベルトスラブを取り外し、それを所定幅に幅切りすることによりVリブドベルトBが得られる。このとき、必要に応じてVリブ16表面を研磨してもよい。
(2)可撓性円筒型に背面ゴム層13用の未架橋ゴムシートを巻き付けた後、その上に接着ゴム層11の外側部分を形成するための未架橋ゴムシートを巻き付け、次いで、その上に心線14となる接着処理済の撚り糸を螺旋状に巻き付けた後、その上に接着ゴム層11の内側部分を形成するための未架橋ゴムシートを巻き付け、さらにその上に圧縮ゴム層12を形成するための未架橋ゴムシートを巻き付け、可撓性円筒型上に成形体を構成する。
【0050】
しかる後、成形体を構成した可撓性円筒型を内周にVリブ形成溝が形成された円筒金型内に配置し、可撓性円筒型を膨張させ、また、高熱の水蒸気などにより加熱すると共に高圧をかけて成形体を半径方向外方に押圧する。このとき、ゴム成分が流動してVリブ形成溝に流入することによりVリブ16が形成されると共に架橋反応が進行し、加えて、撚り糸のゴムへの接着反応も進行して複合化する。そして、これによって、筒状のベルトスラブ(ベルト本体プリフォーム)が成形される。
【0051】
そして、可撓性円筒型からベルトスラブを取り外し、それを所定幅に幅切りし、それぞれの表裏を裏返すことによりVリブドベルトBが得られる。このとき、必要に応じてVリブ16表面を研磨してもよい。
【実施例】
【0052】
(接着ゴム層用及び背面ゴム層用ゴム組成物)
以下の配合1〜6の接着ゴム層用及び背面ゴム層用未架橋ゴム組成物を調整した。それぞれの構成は表1にも示す。
【0053】
<配合1>
EPDM(JSR社製 商品名:EP24、エチレン含量54質量%、エチリデンノルボルネン(ENB)4.5質量%、ムーニー粘度65ML1+4(100℃))73.3質量部、EPDM/低密度ポリエチレン(LDPE)/繊維径0.3〜0.4μm及び繊維長4mm以下のナイロン6極細繊維=100/40/105(質量組成比)の複合材料(大丸産業社製 商品名:SHP(Super Hybrid Polymer)LA3080)46.7質量部、FEFカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シーストSO)50質量部、酸化亜鉛(堺化学社製)5質量部、オイル(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)5質量部、老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラック224)2質量部、及びジクミルパーオキサイド(日本油脂社製、商品名:パークミルD)6質量部の割合で配合したものをバンバリーミキサーで混練後、カレンダロールで圧延したものを配合1の未架橋ゴム組成物とした。なお、この配合1では、複合材料中のEPDM及びLDPEを含めてEPDM成分が100質量部であり、それに対するナイロン6極細繊維の配合量が20質量部である。
【0054】
<配合2>
EPDM(JSR社製 商品名:EP24、エチレン含量54質量%、エチリデンノルボルネン(ENB)4.5質量%、ムーニー粘度65ML1+4(100℃))を原料ゴムとして、この原料ゴム100質量部に対し、FEFカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シーストSO)50質量部、酸化亜鉛(堺化学社製)5質量部、オイル(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)5質量部、老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラック224)2質量部、ジクミルパーオキサイド(日本油脂社製、商品名:パークミルD)6質量部、及びポリエステル極細繊維(帝人ファイバー社製 商品名:ナノフロント 繊維径0.7μm 繊維長1mm以下)20質量部を配合したものをバンバリーミキサーで混練後、カレンダロールで圧延したものを配合2の未架橋ゴム組成物とした。
【0055】
<配合3>
ポリエステル極細繊維の代わりにアラミド極細繊維(ダイセル化学工業社製 商品名:ティアラ 繊維径0.2〜0.3μm 繊維長1mm以下)5質量部を配合したことを除いて配合2と同一構成のものを配合3の未架橋ゴム組成物とした。
【0056】
<配合4>
ポリエステル極細繊維を配合していないことを除いて配合2と同一構成のものを配合4の未架橋ゴム組成物とした。
【0057】
<配合5>
ポリエステル極細繊維の代わりにナイロン短繊維(旭化成社製 ナイロン66 タイプT5 繊維径28μm 繊維長1mm)20質量部を配合したことを除いて配合2と同一構成のものを配合5の未架橋ゴム組成物とした。
【0058】
<配合6>
ポリエステル極細繊維の代わりにアラミド短繊維(帝人社製 商品名:テクノーラ 繊維径12μm 繊維長3mm)20質量部を配合したことを除いて配合2と同一構成のものを配合6の未架橋ゴム組成物とした。
【0059】
【表1】

【0060】
(圧縮ゴム層用ゴム組成物)
EPDM(JSR社製 商品名:EP24、エチレン含量54質量%、エチリデンノルボルネン(ENB)4.5質量%、ムーニー粘度65ML1+4(100℃))を原料ゴムとして、この原料ゴム100質量部に対し、FEFカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シーストSO)60質量部、酸化亜鉛(堺化学社製)5質量部、オイル(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)10質量部、老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラック224)1質量部、ジクミルパーオキサイド(日本油脂社製、商品名:パークミルD)2.7質量部、及びナイロン短繊維(旭化成社製 ナイロン66 タイプT5 繊維径28μm 繊維長1mm)15質量部を配合したものをバンバリーミキサーで混練後、カレンダロールで圧延したものを圧縮ゴム層用未架橋ゴム組成物とした。
【0061】
【表2】

【0062】
(心線材料)
心線用の撚り糸として、1100dtexのポリエステル(PET)フィラメント束を2本引き揃えて10cm当たり21.9回のS撚りの下撚りを加え、その下撚り糸を3本集めて10cm当たり9.5回のZ撚りの上撚りを加えたもの(1100dtex/2×3)を準備した。
【0063】
イソシアネート(住化バイエルウレタン社製 商品名:スミジュール44V20)20に対してトルエン80の質量割合で混合して溶解させた下地処理液(固形分濃度20質量%)を調整した。
【0064】
表3に示すように、レゾルシン(R)6.7、37%ホルマリン(F)6.3、水酸化ナトリウム(NaOH)0.5、2,3-ジクロロブタジエン(2,3-DCB)ゴムラテックス(東ソー社製 商品名:スカイプレンLH430、固形分濃度32質量%)307.1、及び水679.4の質量割合で混合したRFL水溶液(固形分濃度10.8質量%)を調整した。具体的には、このRFL水溶液の調整の際、まず、水97.4質量部に水酸化ナトリウム0.5質量部を溶解させ、そこにレゾルシン(R)6.7質量部及び37%ホルマリン(F)6.3質量部を順に溶解させて2時間熟成させることにより、R/F比(レゾルシン/ホルマリンモル比)=1/1.2であるレゾルシン・ホルマリン樹脂(RF:レゾルシン・ホルマリン初期縮合物)の水溶液を調整し、そこに2,3-ジクロロブタジエンゴムラテックス307.1質量部及び残りの水582質量部を加えた。
【0065】
【表3】

【0066】
表4に示すように、EPDM(JSR社製 商品名:EP24、エチレン含量54質量%、エチリデンノルボルネン(ENB)4.5質量%、ムーニー粘度65ML1+4(100℃))を原料ゴムとして、この原料ゴム100質量部に対し、FEFカーボンブラック(東海カーボン社製 商品名:シーストSO)60質量部、酸化亜鉛(堺化学社製)5質量部、オイル(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)10質量部、老化防止剤(大内新興化学社製 商品名:ノクラック224)1質量部、及びジクミルパーオキサイド(日本油脂社製、商品名:パークミルD)5質量部を配合したものをバンバリーミキサーで混練して得たゴム組成物10に対してトルエン90の質量割合で混合して溶解させたゴム糊(固形分濃度10質量%)を調整した。
【0067】
【表4】

【0068】
そして、撚り糸に対し、下地処理液に浸漬した後に240℃に昇温させた炉内に40秒間保持して加熱し、次いでRFL水溶液に浸漬した後に230℃に昇温させた炉内に80秒間保持して加熱し、続いてゴム糊に浸漬した後に60℃に昇温させた炉内に40秒間保持して乾燥させる接着処理を施した。
【0069】
(Vリブドベルト)
以下の実施例1〜3及び比較例1〜8のVリブドベルトを作製した。
【0070】
<実施例1>
接着ゴム層用及び背面ゴム層用ゴム組成物として上記配合1を、ナイロン6極細繊維がベルト長さ方向に配向するように用い、また、上記圧縮ゴム層用ゴム組成物を、ナイロン短繊維がベルト幅方向に配向するように用い、さらに、上記心線材料を用いて作製したVリブドベルトを実施例1とした。
【0071】
この実施例1のVリブドベルトは、ベルト周長が1115mm、ベルト幅が10.68mm、ベルト厚さが4.3mm、リブ数が3個、及びVリブ高さが2.0mmである。
【0072】
<実施例2>
接着ゴム層用及び背面ゴム層用ゴム組成物として上記配合2を、ポリエステル極細繊維がベルト長さ方向に配向するように用いたことを除いて実施例1と同一の構成に作製したVリブドベルトを実施例2とした。
【0073】
<実施例3>
接着ゴム層用及び背面ゴム層用ゴム組成物として上記配合3を、アラミド極細繊維がベルト長さ方向に配向するように用いたことを除いて実施例1と同一の構成に作製したVリブドベルトを実施例3とした。
【0074】
<比較例1>
接着ゴム層用及び背面ゴム層用ゴム組成物として上記配合1を、ナイロン6極細繊維がベルト幅方向に配向するように用いたことを除いて実施例1と同一の構成に作製したVリブドベルトを比較例1とした。
【0075】
<比較例2>
接着ゴム層用及び背面ゴム層用ゴム組成物として上記配合2を、ポリエステル極細繊維がベルト幅方向に配向するように用いたことを除いて実施例2と同一の構成に作製したVリブドベルトを比較例2とした。
【0076】
<比較例3>
接着ゴム層用及び背面ゴム層用ゴム組成物として上記配合3を、アラミド極細繊維がベルト幅方向に配向するように用いたことを除いて実施例3と同一の構成に作製したVリブドベルトを比較例3とした。
【0077】
<比較例4>
接着ゴム層用及び背面ゴム層用ゴム組成物として上記配合4を、列理方向(ゴムシート引出方向)がベルト長さ方向になるように用いたことを除いて実施例1と同一の構成に作製したVリブドベルトを比較例4とした。
【0078】
<比較例5>
接着ゴム層用及び背面ゴム層用ゴム組成物として上記配合5を、ナイロン短繊維がベルト長さ方向に配向するように用いたことを除いて実施例1と同一の構成に作製したVリブドベルトを比較例5とした。
【0079】
<比較例6>
接着ゴム層用及び背面ゴム層用ゴム組成物として上記配合5を、ナイロン短繊維がベルト幅方向に配向するように用いたことを除いて比較例5と同一の構成に作製したVリブドベルトを比較例6とした。
【0080】
<比較例7>
接着ゴム層用及び背面ゴム層用ゴム組成物として上記配合6を、アラミド短繊維がベルト長さ方向に配向するように用いたことを除いて実施例1と同一の構成に作製したVリブドベルトを比較例7とした。
【0081】
<比較例8>
接着ゴム層用及び背面ゴム層用ゴム組成物として上記配合6を、アラミド短繊維がベルト幅方向に配向するように用いたことを除いて比較例7と同一の構成に作製したVリブドベルトを比較例8とした。
【0082】
(試験評価方法)
<引張強さ(TB)及び切断時伸び(EB)>
配合1〜6のそれぞれの架橋済ゴム組成物について、JIS K6251に基づいて、列理方向:ゴムシート引出方向(極細繊維配向方向)及び反列理方向:列理方向に直交する方向(極細繊維配向方向に直交する方向)の引張強さ(TB)及び切断時伸び(EB)を測定した。
【0083】
<貯蔵弾性率(E’)>
配合1〜6のそれぞれの架橋済ゴム組成物について、粘弾性スペクトロメータ(ティー・エル・インスツルメント・ジャパン社製 商品名:RSA−III)を用い、試験温度25℃の下で0.294MPaの静荷重をかけ、±0.1%の動歪みを加えることにより列理方向及び反列理方向の貯蔵弾性率(E’)を測定した。また、列理方向の貯蔵弾性率(E’)/反列理方向の貯蔵弾性率(E’)を算出した。
【0084】
<ベルト走行試験>
図6は、ベルト耐久試験用のベルト試験走行機60のプーリレイアウトを示す。
【0085】
このベルト走行試験機60は、各々、プーリ径が120mmのリブプーリである大径従動プーリ61及び駆動プーリ62が上下に間隔をおいて設けられ、また、それらの上下方向中間にプーリ径が70mmの平プーリであるアイドラプーリ63が設けられ、さらに、アイドラプーリ63の右方にプーリ径が45mmのリブプーリである小径従動プーリ64が設けられている。そして、このベルト走行試験機60は、VリブドベルトBのVリブ側がリブプーリである大径従動プーリ61、駆動プーリ62、及び小径従動プーリ64に接触すると共に背面側が平プーリであるアイドラプーリ63に接触して巻き掛けられるように構成されている。なお、アイドラプーリ63及び小径従動プーリ64のそれぞれはVリブドベルトBの巻き掛け角度が90°となるように位置付けられている。また、小径従動プーリ64は、VリブドベルトBにベルト張力を負荷できるように横方向に可動に構成されている。
【0086】
実施例1〜3及び比較例1〜3のそれぞれについて、上記ベルト走行試験機60にセットし、大径従動プーリ61に11.8kWの回転負荷を与え、また、ベルト張力が負荷されるように小径従動プーリ64に側方に833.6Nのデッドウェイトを負荷し、雰囲気温度130℃の下、駆動プーリ62を4900rpmの回転数で回転させて24時間ベルト走行させた。そして、ベルト走行後に心線の接着ゴム層からの剥離長さを測定した。
【0087】
(試験評価結果)
試験結果を表5及び6に示す。
【0088】
【表5】

【0089】
【表6】

【0090】
架橋済ゴム組成物の列理方向の引張強さ(TB)は、配合1が23.2MPa、配合2が23.9MPa、配合3が19.1MPa、配合4が19.6MPa、配合5が21.3MPa、及び配合6が18.0MPaであった。
【0091】
架橋済ゴム組成物の反列理方向の引張強さ(TB)は、配合1が18.9MPa、配合2が16.7MPa、配合3が18.3MPa、配合4が20.4MPa、配合5が15.8MPa、及び配合6が16.0MPaであった。
【0092】
架橋済ゴム組成物の列理方向の切断時伸び(EB)は、配合1が73.5%、配合2が72.1%、配合3が100.1%、配合4が107.0%、配合5が55.0%、及び配合6が72.0%であった。
【0093】
架橋済ゴム組成物の反列理方向の切断時伸び(EB)は、配合1が119.0%、配合2が105.0%、配合3が117.0%、配合4が140.0%、配合5が87.2%、及び配合6が107.0%であった。
【0094】
以上の結果から、極細繊維又は短繊維を混入させることにより切断時伸び(EB)が低下することが分かる。各々、繊維種が同一である配合1と配合5、及び配合3と配合6のそれぞれについて、列理方向の切断時伸び(EB)を比べると、極細繊維を混入させた配合1及び2の方が短繊維を混入させた配合5及び6よりも切断時伸び(EB)の低下が小さいことが分かる。これは、短繊維を混入させた場合、ゴムとの界面が広く、従って、ゴムに変形を与えたときの応力がそれらの界面に集中して剥離が発生することから補強効果が持続せずに切断時伸び(EB)が比較的大きく低下するのに対し、極細繊維を混入させた場合、ゴムが短繊維の場合に比べて均一に補強させることから切断時伸び(EB)の低下が小さく抑えられるものと考えられる。
【0095】
架橋済ゴム組成物の列理方向の貯蔵弾性率(E’)は、配合1が192.3MPa、配合2が162.7MPa、配合3が181.6MPa、配合4が55.2MPa、配合5が180.8MPa、及び配合6が170.3MPaであった。
【0096】
架橋済ゴム組成物の反列理方向の貯蔵弾性率(E’)は、配合1が59.3MPa、配合2が79.8MPa、配合3が51.6MPa、配合4が51.3MPa、配合5が72.6MPa、及び配合6が61.2MPaであった。
【0097】
架橋済ゴム組成物の列理方向の貯蔵弾性率(E’)/反列理方向の貯蔵弾性率(E’)は、配合1が3.24、配合2が2.04、配合3が3.52、配合4が1.08、配合5が2.49、及び配合6が2.78であった。
【0098】
ベルト走行後の心線の接着ゴム層からの剥離長さは、実施例1〜3が無欠点、つまり、剥離なし、並びに、比較例1が10mm、比較例2が12mm、比較例3が9mm、比較例5が95mm、比較例6が352mm、比較例7が108mm、及び比較例8が413mmであった。なお、比較例4は走行時間20時間で心線剥離により破壊した。
【0099】
以上の結果から、接着ゴム層に極細繊維をベルト長さ方向に配向するように混入させた実施例1〜3では、心線の動的接着性が良好であることが分かる。これは、接着ゴム層に混入させた極細繊維の補強による弾性率向上効果とその持続性の向上効果とが相乗的に機能するためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は伝動ベルトについて有用である。
【符号の説明】
【0101】
B Vリブドベルト(伝動ベルト)
11 接着ゴム層
14 心線
15 極細繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心線がベルト長さ方向に延びるように埋設されたゴム層を備えた伝動ベルトであって、
上記ゴム層は、繊維径1μm以下の極細繊維がベルト長さ方向に配向するように含有されたゴム組成物で形成されている伝動ベルト。
【請求項2】
請求項1に記載された伝動ベルトにおいて、
上記ゴム層を形成するゴム組成物は、ベルト長さ方向の貯蔵弾性率(E’)がベルト幅方向の貯蔵弾性率(E’)の2倍以上である伝動ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−64257(P2011−64257A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214921(P2009−214921)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)