説明

伝動装置

【課題】 装飾性に優れ且つ合理的に構成された伝動装置を得ること。
【解決手段】 被駆動部200に動力を伝達する伝動装置において、被駆動部を収納した透明の容器400と、容器に充填した液体500と、磁力によって被駆動部を容器の外部から非接触にて駆動する駆動手段600とを備え、被駆動部を構成する部材は、それらのうちの一部を透明の部材とするとともに、透明の部材220の屈折率は、液体の屈折率とほぼ等しいものとして、目視により透明の部材を認識することが困難又は不可能となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾性を向上してなる伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
装飾に利用される伝動装置は、見た目の面白さが重要とされる。例えば特許文献1乃至3には、透明板に指針を設けた時計であって、その指針を駆動する機構が見た目からは解らないように構成されたものが開示されている。つまり、時計を見る者にとっては、なぜ指針が動くのかと興味をそそる不思議なものとなっている。
【特許文献1】特開2006−284256号公報
【特許文献2】特開2006−126029号公報
【特許文献3】特開2005−54822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さて、この種の伝動装置については、その趣向を凝らすとともに、被駆動部の駆動効率の向上、設計の自由度の向上等が重要な課題とされており、前述したように指針が駆動する機構が解らないように構成された時計についても、これらの諸条件を考慮しつつ更なる工夫が求められている。本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、装飾性に優れ且つ合理的に構成された伝動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願第1請求項に記載した発明は、被駆動部に動力を伝達する伝動装置において、前記被駆動部を収納した透明の容器と、前記容器に充填した液体と、磁力によって前記被駆動部を前記容器の外部から非接触にて駆動する駆動手段とを備え、前記被駆動部を構成する部材は、それらのうちの一部を透明の部材とするとともに、前記透明の部材の屈折率は、前記液体の屈折率とほぼ等しいものとして、目視により前記透明の部材を認識することが困難又は不可能となるようにした構成の伝動装置である。
【0005】
本願第2請求項に記載した発明は、請求項1において、前記被駆動部を支持する透明の支持体を備え、前記支持体の屈折率は、前記液体の屈折率とほぼ等しいものとして、目視により前記支持体を認識することが困難又は不可能となるようにした構成の伝動装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、装飾性に優れ且つ合理的に構成された伝動装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示す本例の伝動装置1は、指針201を駆動するアナログ式の時計である。この伝動装置1は、指針201を備えた被駆動部200と、被駆動部200を支持する支持体300と、被駆動部200及び支持体300を収納した透明の容器400と、容器400に充填した液体500と、磁力によって被駆動部200を容器400の外部から非接触にて駆動する駆動手段600とを備えている。
【0008】
本例の被駆動部200は、複数の指針201をそれぞれ所定の速度で回転する輪列機構210と、この輪列機構210に動力を伝達する回転軸220とを備えたものである。輪列機構210は、容器400の内部に固定したプレート状の支持体300に装着されている。回転軸220の要所には、輪列機構210と噛合するギア230が固定されている。
【0009】
容器400は、その下部を台座410に挿入して固定された矩形のものである。また、その左右側面及び上面はシート体420で覆われており、目視によれば、その正面から背面にかけて筒抜けとなっている。更に、台座410に挿入された部位の内部は、有色プレート430にて仕切られている。支持体300は、有色プレート430に固定されている。回転軸220は、有色プレート430を貫通するとともに、支持体300及び有色プレート430に軸支されている。液体500は容器400の内部全体に充填されており、容器400は液体500を完全密封したものとなっている。尚、図中の401は、時刻を表示するための指標部であり、本例では容器400に設けられている。このような指標部401は、支持体300に設けるようにしてもよい。
【0010】
本例の駆動手段600は、減速装置を介して回転出力部610をモーター駆動により回転するユニットである。尚、このユニットとしては、一般的な時計用のムーブメントを利用している。
【0011】
被駆動部200の回転軸220の下端には、駆動手段600の回転出力部610と対向する回転入力部240が固定されている。そして、回転出力部610及び回転入力部240の一方には磁石611を設けるとともに、それらの他方には磁石611に作用する他の磁石241又は磁性体を設けている。回転出力部610が回転すると、磁力によって回転入力部240が回転軸220とともに回転し、その動力が輪列機構210に伝達されて指針201が駆動する。つまり、駆動手段600は、磁力によって被駆動部200を容器400の外部から非接触にて駆動するものとなっている。
【0012】
本例の場合、被駆動部200を構成する部材は、それらのうちの一部を透明の部材とするとともに、その透明の部材の屈折率は、液体500の屈折率とほぼ等しいものとなっている。その結果、目視により透明の部材を認識することが困難又は不可能となっている。具体的には、回転軸220を透明の部材とすることにより、輪列機構210に対してどこから動力が伝達されているのか解からないものとなっている。
【0013】
また、支持体300は、これを透明の部材とするとともに、支持体300の屈折率は、液体500の屈折率とほぼ等しいものとなっている。その結果、目視により支持体300を認識することが困難又は不可能となっている。すなわち、輪列機構210がどこに支持されているのか解からないものとなっている。
【0014】
かくして、伝動装置1を見る者にとっては、なぜ指針201が動くのかと興味をそそる不思議なものとなっている。
【0015】
次に、屈折率について言及する。透明の部材の素材、及び液体の成分は、特に限定はしないが、本例では、回転軸220及び支持体300をアクリル樹脂製の部材とし、液体としてはアクリレート系の液体を採用している。SI単位系の定義により真空の屈折率を1とすれば、両者ともに屈折率は1.49前後であり、液体中において透明な部材の輪郭は、ほぼ目視し得ないものとなる。例えば、水の屈折率は約1.33であり、水を本例の液体として採用すると、アクリル樹脂製の部材は目視によって容易に認識されてしまう。この点、本願発明者は、各種素材と各種液体との組合せを試しつつ、屈折率について鋭意検討を重ねた結果、両者の屈折率の差が0.05以下であれば、十分な効果が得られることを確認している。
【0016】
このように、本例の伝動装置は、不思議な動きを得るという点で、装飾性に優れ且つ合理的に構成されたものである。尚、本例における各部の構成は、特許請求の範囲に記載した技術的範囲において適宜に設計変更が可能であり、図例説明したものに限定されないことは勿論である。例えば、本例の伝動装置は、時計の指針を駆動するものであるが、その構成は、玩具や装飾用の置物といったその他各種の装置に応用することも可能である。また、本例の駆動手段は、永久磁石を駆動するものとなっているが、或は、容器外部の適宜部位に電磁石を配置し、電磁石の磁力によって被駆動部200を駆動するように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の伝動装置は、時計の指針を駆動する装置として好適に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係り、伝動装置を示す正面図である。
【図2】本発明の実施例に係り、伝動装置を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 伝動装置
200 被駆動部
201 指針
210 輪列機構
220 回転軸
230 ギア
240 回転入力部
241 磁石
300 支持体
400 容器
401 指標部
410 台座
420 シート体
430 有色プレート
500 液体
600 駆動手段
610 回転出力部
611 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動部に動力を伝達する伝動装置において、
前記被駆動部を収納した透明の容器と、前記容器に充填した液体と、磁力によって前記被駆動部を前記容器の外部から非接触にて駆動する駆動手段とを備え、
前記被駆動部を構成する部材は、それらのうちの一部を透明の部材とするとともに、前記透明の部材の屈折率は、前記液体の屈折率とほぼ等しいものとして、目視により前記透明の部材を認識することが困難又は不可能となるようにしたことを特徴とする伝動装置。
【請求項2】
前記被駆動部を支持する透明の支持体を備え、前記支持体の屈折率は、前記液体の屈折率とほぼ等しいものとして、目視により前記支持体を認識することが困難又は不可能となるようにしたことを特徴とする請求項1記載の伝動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate