説明

伝送システム

【課題】可変長符号化を含む高能率圧縮符号化処理されたデータを符号化装置から復号装置側に伝送する際に、復号装置側にエラーが生じている伝送データを認識させ、復号装置側で自律した復号処理を可能とする伝送システムを提供する。
【解決手段】記録側で符号データにアドレスデータを付加して記録し、再生側ではエラー訂正回路93が再生データのエラーを検出してエラーブロックのアドレスをゼロデータ作成制御回路86に出力する。スイッチ88はスイッチ87からエラーフラグが付加されたゼロデータとデータ長調整ビットとが入力されると共に、エラー訂正回路93の出力が遅延回路85によって遅延されて入力されており、ゼロデータ作成制御回路86に制御されて、遅延回路85の出力がエラーブロックである場合には、このエラーブロックに代えてゼロデータを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変長符号化を含む高能率圧縮符号化処理された符号化データを伝送データとして復号側の装置に伝送する伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像のディジタル処理が検討されている。ディジタル画像データの磁気記録再生装置(VCR)への記録については各種方式が検討されている。図5はこのVCRにおける画面上の位置と記録媒体の記録トラック上の位置との対比を説明するための説明図である。図5(a)は画面上の位置を示し、図5(b)は記録トラック上の位置を示している。
【0003】
図5(a)は1フレーム画面を垂直方向に8分割して示している。また、図5(b)は#1乃至#9…の各トラックの記録位置を同様に8分割して示している。記録媒体に対する記録はトラック#1の最下端Aから開始し、最上端Iに向かって順次記録する。例えば、1フレームデータを1トラックに記録するものとすると、画面の最上端aからbまでのデータは記録媒体の最下端AからBまでに記録し、以後同様に、画面のbから最下端iまでのデータは記録媒体のBから最上端Iまでに順次記録する。また、例えば、1フレームデータを2トラックに記録するものとすると、画面のa乃至eまでのデータは#1トラックのA乃至Iに記録し、画面のe乃至iのデータは#2トラックのA乃至Iに記録する。
【0004】
図6は3倍速再生時のトレースパターンと再生エンベロープの関係を示す説明図である。図6(a)は横軸にヘッド走査時間をとり縦軸にトラックピッチ又はテープ走行距離をとって、3倍速再生した場合のトレースパターンを示している。図6(a)の記号+,−は夫々再生ヘッドの正規のアジマスを示している。また、図中、数字は再生トラックの番号を示し、奇数トラックはプラスアジマスであり、偶数トラックはマイナスアジマスである。図6(b)乃至(d)は夫々通常ヘッドによる再生エンベロープ、特殊ヘッドによる再生エンベロープ及び両ヘッドの合成エンベロープを示している。図7は記録・再生ヘッドの構成を示す説明図である。
【0005】
図7に示すように、記録及び再生においては、通常ヘッド1及び特殊ヘッド2を装着した回転シリンダ3を用いるものとする。回転シリンダ3には相互にアジマスが相違する一対の通常ヘッド1と相互にアジマスが相違する一対の特殊ヘッド2とが装着されており、隣接配置された通常ヘッド1と特殊ヘッド2とのアジマスも相違する。図6(a)の記号+に示すように、最初の走査期間(トレース期間)にはプラスアジマスの通常ヘッド1によって第1及び第3のトラックがトレースされ、次の走査期間にはマイナスアジマスの通常ヘッド1によって第4及び第6トラックがトレースされる。こうして、通常ヘッド1によって図6(b)に示す再生エンベロープが得られる。また、最初の走査期間には特殊ヘッド2によって第2トラックがトレースされ、同様にして、図6(c)に示す再生エンベロープが得られる。通常ヘッド1の再生出力と特殊ヘッド2の再生出力とを合成することにより、図6(d)に示す合成エンベロープが得られる。
【0006】
下記表1は3倍速再生の再生出力(図6(d))及びそのトレース位置とフレーム画面における位置との対応を示している。
【表1】

【0007】
図6(d)及び表1に示すように、最初の走査期間には、最初の1/4の時間に通常ヘッド1によって第1トラック#1のA乃至Cが再生され、次の1/2の時間には特殊ヘッド2によって第2トラック#2のC乃至Gが再生され、次の1/4の時間には通常ヘッド1によって第3トラック#3のG乃至Iが再生される。以後同様に、1走査期間に3つのトラックが再生される。
【0008】
1フレーム画面を1トラックに記録した場合には、表1に示すように、第1トラック#1のA乃至Cは第1フレームの画面の上のa乃至cに対応し、第2トラック#2のC乃至Gは第2フレームの画面のc乃至gに対応し、第3トラック#3のG乃至Iは第3フレームの画面のg乃至iに対応する。従って、この3倍速再生においては、図8(a)に示すように、再生画面は第1乃至第3フレームの各位置の絵柄が合成されて表示される。
【0009】
また、1フレーム画面を2トラックに記録した場合には、表1に示すように、第1トラック#1のA乃至Cは第1フレームの画面のa乃至bに対応し、第2トラック#2のC乃至Gは第1フレームの画面のf乃至hに対応し、第3トラック#3のG乃至Iは第2フレームの画面のd乃至eに対応する。更に、第4トラック#4のA乃至Cは第2フレームの画面のe乃至fに対応し、第5トラック#5のC乃至Gは第3フレームの画面のb至dに対応し、第6トラック#6のG乃至Iは第3フレームの画面のh乃至iに対応する。従って、この場合には、図8(b)に示すように、再生画面は第1乃至第3フレームの各位置の絵柄が混在する。
【0010】
ところで、近年、画像データを圧縮するための高能率符号化については、各種標準化案が提案されている。高能率符号化技術は、ディジタル伝送及び記録等の効率を向上させるために、より小さいビットレイトで画像データを符号化するものである。例えば、CCITT(Comite Consultafif Internatinal Telegraphique et Telephonique )は、テレビ会議/テレビ電話用の標準化勧告案H.261を提案している。この勧告案ではフレーム内圧縮(Intra-frame )されたフレームIとフレーム間圧縮(Inter-frame 又は Predictive frame )されたフレームPとを用いた符号化を行っている。
【0011】
図9はこの勧告案の圧縮法を説明するための説明図である。
【0012】
フレームIはDCT(離散コサイン変換)処理によって1フレームの画像データを符号化したものである。フレームPはフレームI又は他のフレームPを用いた予測符号化によって画像データを符号化したものである。更に、これらの符号化データを可変長符号化することによって、一層のビットレートの低減を図っている。フレームIはフレーム内の情報のみによって符号化されているので、単独の符号化データのみによって復号可能である。一方、フレームPは他の画像データとの相関を利用して符号化を行っており、単独の符号化データのみによっては復号することができない。
【0013】
図10はこのような予測符号化を採用した従来の記録再生装置の記録側を示すブロック図である。
【0014】
輝度信号Y及び色差信号Cr,Cbは多重処理回路11に与えられて、8画素×8水平走査線のブロック単位で多重される。色差信号Cr、Cbについては水平方向のサンプリングレートが輝度信号Yの1/2である。従って、8×8の輝度ブロックが2個サンプリングされる期間に、色差信号Cr,Cbは8×8の1個のブロックがサンプリングされる。多重処理回路11は、図11に示すように、2個の輝度ブロックY及び各1個の色差ブロックCr,Cbの4個のブロックによってマクロブロックを構成する。なお、2個の輝度ブロックYと各1個の色差ブロックCr ,Cb とは画面の同一位置を表わしている。多重処理回路11の出力は引算器12を介してDCT回路13に与えられる。
【0015】
フレーム内圧縮を行う場合には、後述するように、スイッチ14はオフであり、多重処理回路11の出力はそのままDCT回路13に入力される。DCT回路13には1ブロックが8×8画素で構成された信号が入力され、DCT回路13は8×8の2次元DCT(離散コサイン変換)処理によって入力信号を周波数成分に変換する。これにより、空間的な相関成分を削減可能となる。すなわち、DCT回路13の出力は量子化回路15に与えられ、量子化回路15はDCT出力を所定の量子化係数で再量子化することによって、1ブロックの信号の冗長度を低減する。なお、ブロック単位で動作する多重化処理回路11、DCT回路13及び量子化回路15等にはブロックパルスが供給されている。
【0016】
量子化回路15からの量子化データは可変長符号化回路16に与えられ、量子化出力の統計的符号量から算出した結果に基づいて、例えばハフマン符号化される。これにより、出現確率が高いデータは短いビットが割当られ、出現確率が低いデータは長いビットが割当られて、伝送量が一層削減される。可変長符号化回路16の出力は誤り訂正エンコーダ17に与えられ、誤り訂正エンコーダ17は、エラー訂正用のパリティを付加して多重化回路19に出力する。
【0017】
可変長符号化回路16の出力は符号化制御回路18にも与えられている。出力データのデータ量は、入力画像に依存して大きく変化する。そこで、符号化制御回路18は、可変長符号化回路16からの出力データ量を監視し、量子化回路15の量子化係数を制御して出力データ量を調整している。また、符号化制御回路18は可変長符号化回路16を制御して出力データ量を制限することもある。
【0018】
一方、同期・ID作成回路20はフレーム同期(シンク)信号とデータの内容及び付加情報を示すID信号とを作成して多重化回路19に出力する。多重化回路19は、シンク信号、ID信号、圧縮信号データ及びパリティで1シンクブロックのデータを構成して図示しない記録符号化回路に出力する。記録符号化回路は、多重化回路19の出力を記録媒体の特性に応じて記録符号化した後、図示しない記録アンプを介して記録媒体(図示せず)に記録させる。
【0019】
一方、スイッチ14がオンである場合には、多重処理回路11からの現フレームの信号は、引算器12において後述する動き補償された前フレームのデータから引算されて、DCT回路13に与えられる。すなわち、この場合には、フレーム間の画像の冗長性を利用して差分データを符号化するフレーム間符号化が行われる。フレーム間符号化において、単に前フレームと現フレームとの差分を求めると、画像に動きがある場合には差分が大きなものとなる。そこで、現フレームの所定位置に対応する前フレームの位置を求めて動きベクトルを検出し、この動きベクトルに応じた画素位置において差分を求めることによって動き補償を行って差分値を小さくするようにしている。
【0020】
すなわち、量子化回路15の出力は逆量子化回路21にも与えられている。量子化出力は逆量子化回路15において逆量子化され、更に逆DCT回路22において逆DCT処理されて元の映像信号に戻される。なお、DCT処理、再量子化、逆量子化及び逆DCT処理では、完全に元の情報を再生することはできず、一部の情報は欠落してしまう。この場合には、引算器12の出力が差分情報であるので、逆DCT回路22の出力も差分情報である。逆DCT回路22の出力は加算器23に与えられる。加算器23の出力は約1フレーム期間信号を遅延させる可変遅延回路24及び動き補正回路25を介して帰還されており、加算器23は前フレームのデータに差分データを加算して現フレームのデータを再生し可変遅延回路24に出力する。
【0021】
可変遅延回路24からの前フレームのデータと多重処理回路11からの現フレームのデータとは動き検出回路26に与えられて動きベクトルが検出される。動き検出回路26は例えばマッチング計算による全探索型動き検出によって動きベクトルを求める。全探索型動き検出においては、現フレームを所定のブロックに分割し、各ブロックで例えば水平15画素×垂直8画素の探索範囲を設定する。各ブロック毎に前フレームの対応する探索範囲においてマッチング計算を行いパターン間の近似を計算する。そして、探索範囲の中で最小歪を与える前フレームのブロックを算出し、現フレームのブロックとによって得られるベクトルを動きベクトルとして検出する。動き検出回路26は求めた動きベクトルを動き補正回路25に出力する。
【0022】
動き補正回路25は、可変遅延回路24から対応するブロックのデータを抽出して動きベクトルに応じて補正を行い、スイッチ14を介して引算器12に出力すると共に、時間調整の後加算器23に出力する。こうして、動き補償された前フレームのデータが動き補正回路25からスイッチ14を介して引算器12に供給されることになり、スイッチ14のオン時はフレーム間圧縮モードとなり、スイッチ14オフ時はフレーム内圧縮モードとなる。
【0023】
スイッチ14のオン,オフは動き判定信号に基づいて行われる。すなわち、動き検出回路26は、動きベクトルの大きさが所定の閾値を越えているか否かによって動き判定信号を作成して論理回路27に出力する。論理回路27は動き判定信号及びリフレッシュ周期信号を用いた論理判断によってスイッチ14をオン,オフ制御する。リフレッシュ周期信号は、図9のフレーム内圧縮フレームIを示す信号である。論理回路27は、リフレッシュ周期信号によってフレームIが入力されたことが示された場合には、動き判定信号に拘らず、スイッチ14をオフにする。また、論理回路27は、動き判定信号によって、動きが比較的早くマッチング計算による最小歪が閾値を越えたことが示されると、フレームPが入力された場合でも、スイッチ14をオフにしてブロック単位でフレーム内圧縮符号化させる。下記表2に論理回路27によるスイッチ14のオン,オフ制御を示す。
【表2】

【0024】
図12は多重化回路19から出力される記録信号のデータストリームを示す説明図である。
【0025】
図12に示すように、入力画像信号の第1及び第6フレームは夫々フレーム内圧縮フレームI1 ,I6 に変換され、第2乃至第5フレームはフレーム間圧縮フレームP1 乃至P5 に変換される。図示していないが、符号化フレームデータには当該データがフレーム内圧縮データであるかフレーム間圧縮データであるかを示すヘッダが付加されている。フレームIとフレームPのデータ量の比は(3乃至10):1である。フレームIのデータ量は比較的多いが、フレームPのデータ量は極めて低減される。なお、フレーム間圧縮処理されたデータは、他のフレームデータが復号されなければ復号することはできない。
【0026】
図13は記録再生装置の復号側(再生側)を示すブロック図である。
【0027】
記録媒体に記録された圧縮符号データは図示しない再生ヘッドによって再生されてエラー訂正デコーダ31に入力される。エラー訂正デコーダ31は伝送及び記録時に生じたエラーを訂正する。エラー訂正デコーダ31からの再生データは符号バッファメモリ回路32を介して可変長データ復号回路33に与えられて、固定長データに復号される。なお、符号バッファメモリ回路32は省略されることもある。
【0028】
可変長復号回路33の出力は、逆量子化回路34において逆量子化され、逆DCT回路35において逆DCT処理されて元の映像信号に復号されてスイッチ36の端子aに与えられる。一方、可変長復号回路33の出力はヘッダ信号抽出回路37にも与えられている。ヘッダ信号抽出回路37は入力されたデータがフレーム内圧縮データであるかフレーム間圧縮データであるかを示すヘッダを検索してスイッチ36に出力する。スイッチ36はフレーム内圧縮データを示すヘッダが与えられた場合には、端子aを選択して逆DCT回路35からの復号データを出力する。
【0029】
フレーム間圧縮データは逆DCT回路35の出力と予測復号回路39からの前フレームの出力とを加算器38によって加算することによって得られる。すなわち、可変長復号回路33の出力は動きベクトル抽出回路40に与えられて動きベクトルが求められる。この動きベクトルは予測復号回路39に与えられる。一方、スイッチ36からの復号出力はフレームメモリ41によって1フレーム期間遅延される。予測復号回路39はフレームメモリ41からの前フレームの復号データを動きベクトルによって動き補償して加算器38に出力する。加算器38は予測復号回路39の出力と逆DCT回路35の出力とを加算することにより、フレーム間圧縮されたデータを復号してスイッチ36の端子bに出力する。フレーム間圧縮データが入力されると、スイッチ36はヘッダによって端子bを選択し、加算器38からの復号データを出力させる。このように、フレーム内圧縮及びフレーム間圧縮の両モードで圧縮及び伸張動作が遅滞なく行なわれる。
【0030】
しかしながら、フレーム内圧縮フレームIとフレーム間圧縮フレームPとは符号量が相違し、図12に示すデータストリームを記録媒体に記録すると、上述した3倍速再生においては、再生データによって1フレームを再現することができるとは限らない。更に、フレーム間圧縮フレームPは単独のフレームでは復号することができないので、3倍速再生のように、復号されないフレームが発生する場合には再生不能となってしまう。
【0031】
また、1フレームが複数に分割されたブロック(8×8画素)は量子化され、その量子化データはさらに可変長符号化され、伝送量がより一層削減される。このように可変長符号化を含む高能率圧縮符号化処理されたデータでは、そのデータの一部が失われて復号手段側に伝送されると、失われたデータ以降のデータを正しく復号することができず、つまり画像を正しく復元することができなくなる。例えば、このようなデータをテープ等の記録媒体に記録して3倍速再生すると、データが失われ、伝送されないデータが生じ、例えば一部のブロックが欠落することで、それ以降のデータを復元しても正しい画像として再生されない。しかし、従来はこのようなデータの欠落があったか否か等を、それらデータを入力する復号手段が知る術がなく、復号回路はデータに欠落があったか否かに関らず余分な復号処理をすると共に、無駄な画像再生を行っていた。
【0032】
図14、図15及び図16を用いてこの問題を説明する。図14はテレビ会議及びテレビ電話等に採用されている放送システムを説明するための説明図である。
【0033】
放送局では、図示しないカメラからの映像信号は符号化回路51において高能率符号化され、エラー訂正エンコーダ52で伝送路54に対応したエラー訂正符号が付加される。伝送変調回路53はエラー訂正エンコーダ52の出力に伝送路54に適応した変調を行って電波等に変換して伝送路54に出力する。受信側では、伝送路54を介して入力される受信信号は受信復調回路55で復調される。エラー訂正回路56は伝送路54で発生したエラーを訂正してスイッチ57に与えると共に、VCR58にも与える。VCR58は入力された信号を記録すると共に、再生してスイッチ57に与える。スイッチ57はユーザー操作に基づく入力切換え信号によって切換えられて、エラー訂正回路56又はVCR58の出力を選択して復号化回路59に出力する。復号化回路59は高能率符号化信号を復号して基の信号に戻し、エラー修正回路60は復号出力に訂正されずに残っているエラーを修正して図示しないモニタテレビに出力する。こうして、モニタテレビの表示画面には伝送路54を介して入力された放送信号又はVCR58からの再生信号が映出される。
【0034】
図15は高能率符号化復号化が可能なVCRの構成を示すブロック図である。なお、図14中のVCRは図15の破線から右側と同一構成になっている。
【0035】
映像信号は符号化回路61によって高能率符号化され、エラー訂正エンコーダ62に与えられる。エラー訂正エンコーダ62は、VCRに適合したエラー訂正用パリティ符号を符号化データに付加して加算器63に出力する。加算器63は同期・ID作成回路64によって作成された同期信号及びID信号をエラー訂正エンコーダ62の出力に加算して記録変調回路65に与える。記録変調回路65は記録媒体の記録に適合した変調を行って記録アンプ66に出力する。記録アンプ66は変調信号を増幅して磁気ヘッド67に与えてテープ68上に記録させる。
【0036】
再生時には、磁気ヘッド67によってテープ68がトレースされて記録信号が再生され再生アンプ69に供給される。再生アンプ69からの再生信号は波形等化回路70において符号間干渉を低減するために波形等化されて同期回路71に与えられる。同期回路71は再生データを記録データ列単位に戻して復調回路72に与え、復調回路72は再生データを復調してエラー訂正回路73に与える。エラー訂正回路73はエラー訂正を行い復号化回路74に出力する。復号化回路74及びエラー修正回路75は夫々図14の復号化回路59及びエラー修正回路60と同一構成であり、エラー訂正回路73の出力を復号し、エラーを修正して出力する。
【0037】
いま、図14のスイッチ57にVCR58を選択させるものとする。放送局側から伝送路54を介して伝送されたデータは受信復調回路55及びエラー訂正回路56を介してVCR58に供給される。こうして、VCR58に図16(a)に示す記録データ列が与えられる。図中、添字nはトラック番号を示し、添字mは記録データ列番号を示している。つまり、Gn,m は第nトラックの第mデータ列を意味する。
【0038】
VCR58においてデータ列Gn,1 乃至Gn,m が記録され、このデータ列がエラーなく再生されるものとすると、通常再生時には、図16(b)に示すように、記録データ列と再生データ列は同一となる。しかしながら、3倍速再生時には、上述したように、磁気ヘッドはトラックを横切って再生するので、再生データは記録データと一致しない。すなわち、図16(c)に示すように、第1トラックでは第k0 データ列から第k1 データ列まで再生され、第2トラックでは第k2乃至第k3 データ列が再生され、第3トラックでは第k4 データ列から第k5 データ列まで再生される。
【0039】
VCR58はこの再生データに対して復調処理、エラー訂正処理及び復号化処理等を行う。再生トラックが切換わる部分ではデータが確実に再生されないことがあり、また、再生データ列は再生トラックの切換え点で不連続となるので、トラックの切換え部分近傍のデータは復号に用いることができない。なお、VCR58においては、記録時に同期信号及びID信号を映像データに付加して記録し、再生時に同期回路によって同期信号単位で復調を行っているので、同期ブロックの途中でデータが再生されなくなった場合でも、次の同期ブロックの開始位置から復調可能である。こうして、3倍速再生の1スキャンで得られる再生データは、図16(d)に示すように、図16(c)に対して破線部分が出力されない。
【0040】
しかしながら、モニタテレビは、ヘッダ及びアドレスがデータに付加されていてもこれらのデータを用いて画像を再構成することはできず、単に入力される画像データ順に順次画像を再現する。伝送されるデータ列は可変長符号であるので、図16(d)の破線部のデータ長が判明しても、次のデータ列k2 ′の開始位置を識別することができない。従って、テレビ電話等のように入力データ列を連続して復号するシステムにおいては、データが途切れると以後のデータを活用することができない。
【0041】
そこで、エラー伝搬を停止させるために、可変長符号化が完結する範囲が複数の同期ブロツクのデ−タエリアに対応する画像情報ブロツク数である場合に、画像情報の復号を同期ブロツク単位に行うことにより、エラー伝播を同期ブロツク内で止め、特殊再生も可能にしたものがある。つまり、可変長符号化が完結する範囲(例えば1フレーム、或いは所定数の画像ブロック)を決め、一定の長さ単位で固定長にする符号化を行い、その単位で復号を行うことでエラーの伝播をその単位で止めるようにしている。つまり、符号化装置が入力信号を符号化する際、一定の長さで固定長にするという特別な符号化処理を実行し、特定の単位データでエラーが発生しても、エラーの伝播を防止している。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開平4−86181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0042】
このように、従来、可変長符号化を含む高能率符号化処理されたデータを符号化装置から復号装置側に伝送する際に、データ欠落などのエラーデータが復号装置に伝送されると、復号装置側では復号しても意味の無い余分なデータを復号し、無駄な画像復元処理をすることがあったという問題点があった。また、特許文献1では、符号化装置が入力信号を符号化する際、一定の長さで固定長にするという特別な符号化処理を実行しなければならず、符号化装置側の負荷が高まるだけでなく、復元される画像の質にも影響を及ぼす。
【0043】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、可変長符号化を含む高能率圧縮符号化処理されたデータを符号化装置から復号装置に伝送する際に、復号装置側にエラーが生じている伝送データを認識させ、復号装置側で自律した復号処理を可能とする伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0044】
本発明の第1の伝送システムは、符号化手段と復号手段との間の伝送中にエラーが生じる可能性のある伝送システムにおいて、前記符号化手段は入力信号に対して可変長符号化を含む高能率圧縮符号化処理を行い、複数の単位データに区分された符号化データを出力し、前記伝送システムは前記符号化手段から出力された符号化データをエラー訂正処理して伝送データとして前記復号手段へ伝送する伝送手段を具備し、前記伝送手段は、前記復号装置へ伝送される伝送データにおいて、エラー訂正することができなかった場合に、その伝送データにエラーフラグを付加する。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、可変長符号化を含む高能率圧縮符号化処理されたデータを符号化装置から復号装置側に伝送する際に、復号装置側にエラーが生じている伝送データを認識させ、復号装置側で自律した復号処理を可能とする伝送システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は本発明に係る伝送システムのコード化側の一実施形態を示すブロック図である。また、図2は本発明に係る伝送システムのデコード化側の一実施形態を示すブロック図である。図1及び図2において図15と同一の構成要素には同一符号を付してある。本実施形態は記録再生装置に適用したものである。
【0047】
図1において、伝送路80を介して入力される受信映像信号は受信復調回路81に入力される。受信映像信号はフレーム単位で順次シーケンシャルに伝送されており、各フレームは水平方向8画素×垂直方向8画素等の小ブロックに分割され、フレームの先頭には先頭フラグが付加されている。なお、各ブロックデータはDCT処理等の符号化が行われている。受信復調回路81は受信映像信号を復調してフォーマット変換回路82及びアドレス作成回路83に出力する。多重回路84はこれらのアドレス作成回路83及びフォーマット変換回路82の出力を多重して出力するようになっている。
【0048】
図3はフォーマット変換回路82、アドレス作成回路83、多重回路84及びエラー訂正エンコーダ62を説明するための説明図である。
【0049】
伝送路80からの1フレームの画像データは、図3(a)に示すように、先頭にフレームの先頭を示す先頭フラグが付加され、以後ブロック1,2,…の複数のブロックデータによって構成されている。アドレス作成回路83は先頭フラグに対して一連のフレーム番号又はヘッダを付し、各ブロック1,2,…に対して夫々Block (B)1,2,…というアドレスデータを作成して多重回路84に出力する。フォーマット変換回路82は各ブロックデータの先頭にアドレスデータが配列されるように、受信画像データのフォーマットを変換して多重回路84に出力する。多重回路84は各ブロックデータの先頭にアドレスデータを付加して、図3(b)に示すデータストリームをエラー訂正エンコーダ62に出力するようになっている。なお、データの再生効率を向上させるために、フォーマット変換回路82は、再生データの順序を入換えることもある。
【0050】
エラー訂正エンコーダ62は多重回路84の出力に記録に適合したパリティ信号Pを付加して加算器63に出力する。同期・ID作成回路64は同期信号及びID信号を作成して加算器63に出力する。加算器63はエラー訂正エンコーダ62の出力に同期信号Sを付加して出力する。結局、加算器63からは、図3(c)に示すように、フレーム番号の先頭に同期信号Sが付加され、データストリームの途中にパリティ信号P及び同期信号Sが付加されたデータストリームが出力される。
【0051】
加算器63の出力は記録変調回路65に与えられる。記録変調回路65は加算器63の出力に対して記録に適合した変調を行って記録アンプ66に出力する。記録アンプ66は記録変調回路65からの変調信号を増幅して磁気ヘッド67に与えて磁気テープ68に記録させるようになっている。
【0052】
一方、デコード化側においては、図2に示すように、磁気テープ68に記録されたデータは磁気ヘッド67によって再生される。磁気ヘッド67からの再生信号は再生アンプ69に供給され、再生アンプ69は再生信号を増幅して波形等化回路70に与える。波形等化回路70は再生信号を波形等化することによって符号間干渉を除去しデータの識別を可能にして同期回路71に出力する。同期回路71は同期信号及びID信号を抽出して再生データを同期信号単位で復調回路72に与える。復調回路72は再生データを復調してエラー訂正回路93に与える。
【0053】
エラー訂正回路93は再生データのエラー訂正を行って遅延回路85に出力すると共に、訂正することができなかったデータにはエラーフラグを付加する。また、エラー訂正回路93はエラーフラグ及びデコードデータのアドレスデータをゼロデータ作成制御回路86に出力する。ゼロデータ作成制御回路86は、エラーフラグ及びアドレスデータから、エラーを有するブロック(エラーブロック)に同期して切替え信号をスイッチ87,88に出力すると共に、遅延回路85を制御する。なお、ゼロデータ作成制御回路86は、エラーフラグによってアドレスデータのエラーが示されている場合には、そのアドレスデータの前後のアドレスデータからアドレスを推定してアドレスデータを作成するようになっている。
【0054】
スイッチ87の端子aにはエラーフラグ付ゼロデータ作成回路89の出力が供給され、端子bにはデータ長調整ビット90が供給される。エラーフラグ付ゼロデータ作成回路89は、ブロック単位で、復号化する過程において無視される冗長ビット又はデータがないことを示すフラグ(F)を付加したゼロデータを作成して出力している。データ長調整ビット90はエラーを有するブロックとエラーを有していないブロックとを連続させるための調整ビットである。スイッチ87はゼロデータ作成制御回路86の出力に制御されて端子a,bを選択してスイッチ88の端子bに供給する。
【0055】
スイッチ88の端子aには遅延回路85の出力が供給される。遅延回路85は、ゼロデータ作成制御回路86に制御されて、エラー訂正回路93の出力を遅延させることにより、スイッチ87出力とのタイミングを調整するようになっている。スイッチ88は、ゼロデータ作成回路86に制御されて端子a,bを選択し、エラーを有していないブロックについては遅延回路85の出力をそのまま出力し、エラーを有しているブロックについては、遅延回路85の出力に代えて、スイッチ87の出力を出力するようになっている。
【0056】
次に、このように構成された実施形態の動作について図4の説明図を参照して説明する。図4(a)は3倍速再生時のヘッドの1スキャン分の合成データを示し、図4(b)はスイッチ88の出力を示し、図4(c)はエラーフラグ付ゼロデータ作成回路89の出力を示している。図中、破線にて示すG1,k1′とG2,k2′との間の部分及びG2,K3′とG3,k4′との間の部分は、再生不能のデータ、エラーが多くて使用不能のデータ又は同期信号が再生されないために使用不能のデータである。
【0057】
記録側において、受信復調回路81は、伝送路80を介して入力されたデータを復調してフォーマット変換回路82及びアドレス作成回路83に出力する。フォーマット変換回路82、アドレス作成回路83及び多重回路84によって、受信データにはフレームデータの先頭にフレーム番号が付加されると共に、各ブロック単位でアドレスデータが付加されてエラー訂正エンコーダ62に供給される。受信データはエラー訂正エンコーダ62によってパリティ信号Pが付加され、加算器63によって同期信号S及びID信号が付加されて記録変調回路65に与えられる。記録変調回路65は加算器63の出力に記録に適合した変調を行って、変調信号を記録アンプ66を介して磁気ヘッド67に与えて磁気テープ68に記録させる。
【0058】
再生側において、3倍速再生を行うことにより、磁気ヘッド67から図4(a)に示す再生データが得られるものとする。再生データは再生アンプ69を介して波形等化回路70に供給されて波形等化され、同期回路71によって同期信号が検出されて、同期信号単位で復調回路72において復調される。復調出力はエラー訂正回路93においてエラー訂正されて遅延回路85に出力される。
【0059】
エラー訂正回路93は図4(a)の破線に示す部分、すなわち、ブロックG1,(k1+1)′乃至G2,(k2-1)′及びブロックG2,(k3+1)′乃至G3,(k4-1)′についてはエラーフラグを付加すると共に、これらのアドレスデータをゼロデータ作成制御回路86に出力する。ゼロデータ作成制御回路86はエラーフラグ及びアドレスデータから、遅延回路85の遅延量を決定すると共に、スイッチ87,88を制御する。スイッチ87はエラーブロックのタイミングで、エラーフラグ付ゼロデータ作成回路89からのブロック単位のゼロデータ(図4(c))をスイッチ88の端子bに出力し、次いで、このゼロデータとエラーを有していないブロックとを連続させるためのデータ長調整ビットをスイッチ88の端子bに出力する。
【0060】
遅延回路85の出力はスイッチ88の端子aに供給され、スイッチ88はゼロデータ作成制御回路86に制御されて端子a,bを選択する。こうして、スイッチ88は、図4(a)のブロックG1,K0′乃至G1,K1′に対応する期間は遅延回路85を選択して再生データの復調出力をそのまま出力し、ブロックG1,k1′に続くブロックG2,k2′までに対応する期間はスイッチ87の出力を選択して、エラーフラグが付加されたゼロデータのブロックG1,(k1+1)′乃至G2,(k2-1)′を出力し、更に、このゼロデータブロックとブロックG2,K2′とを連続させて記録レートを調整するためのデータ長調整ビット(斜線部)を出力する。次いで、スイッチ88はブロックG2,K2′乃至G2,K3′に対応する期間は遅延回路85の出力を選択する。次に、スイッチ88は端子bを選択して、ゼロデータのブロックG2,(K3+1)′乃至G3,(K4-1)′及び斜線に示すデータ長調整ビットを出力する。次のブロックG3,K4′乃至G3,K5′に対応する期間は遅延回路85の出力を選択する。こうして、図4(a)の破線に示す再生されなかった部分にはエラーフラグが付加されたゼロデータが挿入されて、スイッチ88からは連続したシーケンシャルデータが出力される。
【0061】
このように、本実施形態においては、テープ68に記録する前に、データにアドレスを付加し、テープ68から再生した信号を復調後、エラー訂正回路93によってエラーフラグを発生し、そのアドレスデータを求める。データが欠落してデコード側に不連続となったデータが供給される場合、エラーブロックのアドレスデータに基づいて、当該エラーブロックをエラーフラグ付きのゼロデータに置き換えると、入力される画像データ順に順次画像を再現する装置にスイッチ88の出力が供給される。その画像再現装置(復号手段)側では、そのデータに付加されたエラーフラグに基づいて独自のエラー対応処理、例えば復号しても意味の無いデータの余分な復号を何ら行わない、或いは復号はするが画像の復元処理を省略し、次のブロックの先頭アドレスをサーチして正しく復号できるデータを改めて認識し、エラーの伝播から脱するよう制御するなど、復号装置側で自律した独自のエラー制御動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る伝送システムのコード化側の一実施形態を示すブロック図。
【図2】本発明に係る伝送システムのデコード化側の一実施形態を示すブロック図。
【図3】実施形態を説明するための説明図。
【図4】実施形態の動作を説明するための説明図。
【図5】従来例における画面上の位置と記録媒体の記録トラック上の位置との対比を説明するための説明図。
【図6】3倍速再生時のトレースパターンと再生エンベロープの関係を示す説明図。
【図7】記録・再生ヘッドの構成を示す説明図。
【図8】従来例における再生画面の構成を説明するための説明図。
【図9】H.261勧告案の圧縮法を説明するための説明図。
【図10】予測符号化を採用した記録再生装置の記録側を示すブロック図。
【図11】マクロブロックを説明するための説明図。
【図12】図10の装置における記録信号のデータストリームを示す説明図。
【図13】記録再生装置の復号側(再生側)を示すブロック図。
【図14】従来例の問題点を説明するためのブロック図。
【図15】従来例の問題点を説明するためのブロック図。
【図16】従来例の問題点を説明するための説明図。
【符号の説明】
【0063】
82…フォーマット変換回路、83…アドレス作成回路、84…多重回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化手段と復号手段との間の伝送中にエラーが生じる可能性のある伝送システムにおいて、
前記符号化手段は入力信号に対して可変長符号化を含む高能率圧縮符号化処理を行い、複数の単位データに区分された符号化データを出力し、
前記伝送システムは前記符号化手段から出力された符号化データをエラー訂正処理して伝送データとして前記復号手段へ伝送する伝送手段を具備し、
前記伝送手段は、前記復号装置へ伝送される伝送データにおいて、エラー訂正することができなかった場合に、その伝送データにエラーフラグを付加することを特徴とする伝送システム。
【請求項2】
連続性を示すアドレスデータを連続して伝送される前記単位データに付加することを特徴とする請求項1記載の伝送システム。
【請求項3】
前記伝送手段は、再生データの誤り訂正を行い、訂正不能な誤りが発生したかを検出し、前記検出手段により訂正不能な誤りを有する前記単位データにエラーフラグを付加することを特徴とする請求項2記載の伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−115401(P2007−115401A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327292(P2006−327292)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【分割の表示】特願2005−129592(P2005−129592)の分割
【原出願日】平成4年3月25日(1992.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】