説明

伸縮性フィルム、伸縮性部材及び衛生用品

【課題】 非伸縮性材料を配合しなくとも異方性があり、かつ、柔軟性を有する伸縮性フィルムを提供すること。
【解決手段】 (a)特定の芳香族ビニル重合体ブロックを2つ以上有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体35〜95重量%、(b)芳香族ビニル−共役ジエンジブロック共重合体0〜60重量%、及び(c)その重量平均分子量が特定範囲であるポリイソプレン2〜50重量%を含有し、(a)成分及び(b)成分の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量が22〜45重量%である芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物を押出成形して得られる、特定の特性を有する伸縮性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙オムツ、生理用品などの衛生用品の伸縮性部材に好適に使用され得る伸縮性フィルムに関する。詳しくは、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体からなり、非伸縮性材料を配合しなくても異方性があって、かつ、良好な柔軟性を有する伸縮性フィルム、同フィルムからなる伸縮性部材及び同部材を含有してなる衛生用品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙オムツ、生理用品等の各種の衛生用品は、装着者の動きに対する追従性やフィット性が求められるため各部に伸縮性部材が用いられている。例えば、紙オムツの一種であるパンツ型オムツでは、両脚周り開口部、ウェスト周り開口部、さらに両側腰部等に該部材が使用されている。
このような伸縮性部材として、これまで種々の合成ゴムや天然ゴム等のゴムの他、熱可塑性エラストマーからなる伸縮性材料がフィルムの形で使用されている。熱可塑性エラストマーはゴムに比べ加硫操作を要しない点で衛生用品の成形加工において有利であり、また、再利用可能の衛生的なポリマーである。熱可塑性エラストマーからなる伸縮性材料は、一般に、全ての方向に同等の引張応力(モジュラス)を示す。しかしながら、パンツ型オムツのウェスト周り開口部などの特定の用途には、装着者の利便性及びフィット性から、方向の相違により引張弾性率(モジュラス)が異なる性質(異方性)と柔軟性とを合わせ持つ伸縮性材料が好適である。
【0003】
異方性を有する伸縮性部材の一般的な製法としては、これまで、熱可塑性エラストマー等からなる伸縮性材料とポリオレフィン等からなる非伸縮性材料とをラミネート加工して積層体とすることが知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、ラミネート加工した積層体は柔軟性という点で劣り、また、積層体とするため製造工程が煩雑であった。
単一層で異方性を有する伸縮性材料としては、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックと共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックとからなるブロック共重合体及び/又は該ブロック共重合体の水素添加物50〜99重量%と、芳香族ビニル系重合体50〜1重量%とからなる異方性フィルム(特許文献2)や、ブロックコポリマーエラストマー成分(A)及びポリオレフィンポリマー成分(B)が、A:B=10:1〜0.4:1の比でブレンドされた異方性弾性ウェブ(特許文献3)が提案されている。しかしながら、特許文献2及び3のいずれの異方性材料も、全方向に伸縮性を有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体に非伸縮性の芳香族ビニル系重合体やポリオレフィンなどを配合することにより異方性を発現している。そのため全体的に柔軟性に欠けるものである。
【0004】
【特許文献1】WO96/ 10481
【特許文献2】特開平5−186611号公報
【特許文献3】特表2001−520244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、異方性を有し、かつ、柔軟性のある伸縮性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、少なくとも特定の重量平均分子量の芳香族ビニル重合体ブロックを2つ以上有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体と、特定の重量平均分子量のポリイソプレンとを所定量含み、かつ芳香族ビニル単量体単位の含有量が特定割合であれば、非伸縮性材料を配合しなくとも異方性を有し、かつ、顕著に柔軟性のある伸縮性フィルムが得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
かくして、本第一発明によれば、(a)重量平均分子量6,000〜100,000の芳香族ビニル重合体ブロックを2つ以上有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体35〜95重量%、(b)芳香族ビニル−共役ジエンジブロック共重合体0〜60重量%、及び(c)重量平均分子量5,000〜300,000のポリイソプレン2〜50重量%を含有し、(a)成分及び(b)成分の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量が22〜45重量%である芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物を押出成形して得られる伸縮性フィルムであって、
押出成形における溶融流れ方向(MD)の100%モジュラスと該溶融流れに直角の方向(TD)の100%モジュラスとの比(MD/TD)が1.5〜10であり、かつ該溶融流れに直角の方向(TD)の100%モジュラスが0.1〜0.5MPaであることを特徴とする伸縮性フィルム。が提供される。
また、本第二発明によれば、前記伸縮性フィルムからなる伸縮性部材が提供される。
さらに、本第三発明によれば、前記伸縮性部材を含有してなる衛生用品が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、非伸縮性材料を配合しなくとも異方性があって、かつ、柔軟性を有する伸縮性フィルムが得られる。当該伸縮性フィルムは、紙おむつ、生理用品等の各種の衛生用品の伸縮性部材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の伸縮性フィルムは、(a)重量平均分子量6,000〜100,000の芳香族ビニル重合体ブロックを2つ以上有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体35〜95重量%、(b)芳香族ビニル−共役ジエンジブロック共重合体0〜60重量%、及び(c)重量平均分子量5,000〜300,000のポリイソプレン2〜50重量%を含有し、(a)成分及び(b)成分の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量が22〜45重量%である芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物を押出成形して得られる伸縮性フィルムであって、
押出成形における溶融流れ方向(MD)の100%モジュラスと該溶融流れに直角の方向(TD)の100%モジュラスとの比(MD/TD)が1.5〜10であり、かつ該溶融流れに直角の方向(TD)の100%モジュラスが0.1〜0.5MPaであることを特徴とするものである。
【0009】
本発明で使用する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(a)〔単に「(a)成分」ということがある。〕は、少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックと芳香族ビニル重合体ブロック2つ以上とを有するものである。なお、芳香族ビニル重合体ブロック数の上限としては、通常、4程度である。なかでも芳香族ビニル−共役ジエン−芳香族ビニルトリブロック共重合体が好ましく使用できる。
【0010】
(a)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックは、重合体の芳香族ビニル単量体単位を主たる構成単位として含有する部分を言い、芳香族ビニル単量体のみを重合したものであっても、芳香族ビニル単量体とこれと共重合可能な単量体とを共重合したものであってもよい。
【0011】
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレンなどが挙げられる。中でも、スチレンが好ましい。これらは単独で使用しても、または2種以上を併用してもよい。
【0012】
芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体としては、好ましくは共役ジエン単量体であり、より好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン及び1,3−ペンタジエンが挙げられる。(a)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体の単量体単位の割合は20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0013】
(a)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)は、6,000〜100,000、好ましくは7,000〜70,000、より好ましくは8,000〜50,000である。Mwが小さいと伸縮性フィルムの強度が不足し、逆に、Mwが大きいと芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の成形加工性が低下し、押出成形しにくくなる。
【0014】
また、芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.5以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。
【0015】
(a)成分中の共役ジエン重合体ブロックは、重合体の共役ジエン単量体単位を主たる構成単位として含有する部分を言い、共役ジエン単量体のみを重合したものであっても、共役ジエン単量体とこれと共重合可能な単量体とを共重合したものであってもよい。
【0016】
共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。中でも、1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましく、イソプレンがより好ましい。これらは単独で使用しても、または2種以上を併用してもよい。
【0017】
共役ジエン単量体と共重合可能な単量体としては、前記の芳香族ビニル単量体が好適である。伸縮性フィルムの強度と柔軟性が良好であるためには、(a)成分中の共役ジエン重合体ブロックにおける共役ジエン単量体と共重合可能な単量体の単量体単位の割合は20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0018】
(a)成分の芳香族ビニル単量体単位含有量は、好ましくは22〜45重量%、より好ましくは22〜40重量%、特に好ましくは22〜35重量%である。当該含有量が上記範囲にあれば、異方性を示す柔軟性に優れる伸縮性フィルムが得られる。
【0019】
(a)成分における全共役ジエン単量体単位に対するビニル結合単位の割合(ビニル含量)は、伸縮性フィルムの柔軟性を向上させる観点から、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは5〜10重量%である。
【0020】
(a)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは40,000〜1,000,000、より好ましくは60,000〜700,000、特に好ましくは80,000〜400,000である。Mwが小さすぎると伸縮性フィルムの強度が不足するおそれがあり、逆に、大きすぎると芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の成形加工性が低下する可能性がある。
【0021】
また、(a)成分の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.5以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。
【0022】
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の(a)成分の含有量は、35〜95重量%、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは45〜85重量%である。(a)成分含有量が少ないと伸縮性フィルムの強度が不足し、逆に、多いと伸縮性フィルムの柔軟性が低下する。
【0023】
本発明における(a)成分としては、伸縮性フィルムの柔軟性と伸縮性が良好となることから、スチレン−イソプレンブロック共重合体及びスチレン−ブタジエンブロック共重合体が好ましく、スチレン−イソプレンブロック共重合体がより好ましい。
【0024】
(a)成分の製造方法は特に限定されず、公知の製造方法が採用でき、例えば、アニオンリビング重合法により、芳香族ビニル重合体ブロック、共役ジエンブロック及び芳香族ビニル重合体ブロックを、それぞれ逐次的に重合する方法や、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエンブロックとからなるリビング性の活性末端を有するブロック共重合体を製造した後、それとカップリング剤とを反応させてカップリングする方法が採用できる。
【0025】
カップリング剤を使用する場合、その使用量は、所望の重量平均分子量、カップリング剤の反応性などに応じて適宜選択すればよい。カップリング剤の官能基数としては、好ましくは2〜4である。カップリング反応は、常法に従い、所定の重合体溶液中にカップリング剤を添加し、通常、30〜80℃の温度で1分間〜24時間程度行えばよい。
【0026】
カップリング剤の例としては、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等の2官能性ハロゲン化シラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタン等の2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズ等の2官能性ハロゲン化スズ;トリクロロエタン、トリクロロプロパン等の3官能性ハロゲン化アルカン;テトラクロロシラン、テトラブロモシラン等の4官能性ハロゲン化シラン;テトラクロロスズ、テトラブロモスズ等の4官能性スズ化合物;等や、テトラメトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトラブトキシスズ等の有機スズ化合物;ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、アルキルトリフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)エタン等の有機珪素化合物;エチルアクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、トリメチル酢酸エチル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル等のカルボン酸エステル類;トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト等の有機リン系化合物;ジビニルベンゼン等が挙げられる。中でも、有機珪素化合物が好ましく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン及びテトラブトキシシランがより好ましい。これらは単独で使用しても、または2種以上を併用してもよい。
【0027】
以上の製造方法により得られる芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体(a)としては、特に限定するものではないが、例えば、A−B−A、A−B−A’及び(A−B)Xの構造を有するブロック共重合体から構成される。芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物がそのような(a)成分を含むと成形加工性が良好で、また、伸縮性フィルムの伸縮性が向上する。なお、式中、A及びA’は芳香族ビニル重合体ブロックを、Bは共役ジエン重合体ブロックを、Xはカップリング剤の残基を表し、nは2〜4の整数を表す。
【0028】
また(a)成分は、その共役ジエン単量体単位中の二重結合の一部を水素添加したものであっても良い。水素添加方法は特に限定されるものではなく、例えば、水素未添加の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体を、水素雰囲気下、パラジウム触媒と接触させる等の、公知の方法を挙げることができる。
【0029】
芳香族ビニル−共役ジエンジブロック共重合体(b)〔単に「(b)成分」ということがある。〕は、ただ1つの芳香族ビニル重合体ブロックとただ1つの共役ジエン重合体ブロックとからなるブロック共重合体である。
【0030】
(b)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体単位を主たる構成単位として含有する部分をいう。
【0031】
芳香族ビニル単量体としては、(a)成分について記載したのと同様のものが挙げられる。中でも、スチレンが好ましい。これらは単独で使用しても、または2種以上を併用してもよい。
【0032】
(b)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体のみを重合したものであっても、芳香族ビニル単量体と、これと共重合可能な単量体とを共重合したものであってもよい。芳香族ビニル単量体と共重合可能な単量体としては、好ましくは共役ジエン単量体であり、より好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン及び1,3−ペンタジエンが挙げられる。(b)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体単位の割合は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましい。
【0033】
(b)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックの重量平均分子量(Mw)、及び該重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、(a)成分中の芳香族ビニル重合体ブロックと同様の範囲であるのが好ましい。
【0034】
(b)成分中の共役ジエン重合体ブロックは、共役ジエン単量体単位を主たる構成単位として含有する部分をいう。
【0035】
共役ジエン単量体としては、(a)成分について記載したのと同様のものが挙げられる。中でも、1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましく、イソプレンがより好ましい。これらは単独で使用しても、または2種以上を併用してもよい。
【0036】
(b)成分中の共役ジエン重合体ブロックは、共役ジエン単量体のみを重合したものであっても、共役ジエン単量体と、これと共重合可能な単量体とを共重合したものであってもよい。共役ジエン単量体と共重合可能な単量体としては、前記の芳香族ビニル単量体が好適である。伸縮性フィルムの強度と柔軟性が良好であるためには,(b)成分中の共役ジエン重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位の割合は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましい。
【0037】
(b)成分の芳香族ビニル単量体単位含有量及び全共役ジエン単量体単位に対するビニル結合含有量は、いずれも(a)成分の場合と同様であるのが好ましい。
【0038】
(b)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20,000〜500,000、より好ましくは30,000〜350,000、特に好ましくは40,000〜200,000である。Mwが小さすぎると伸縮性フィルムの強度が不足するおそれがあり、逆に、大きすぎると芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の成形加工性が低下する可能性がある。
【0039】
また、(b)成分のMwとMnとの比(Mw/Mn)は、(a)成分の場合と同様であるのが好ましい。
【0040】
本発明で使用する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の(b)成分含有量は、0〜60重量%、好ましくは3〜50重量%、より好ましくは5〜45重量%である。伸縮性フィルムをより柔軟にできる点から、(b)成分を含有させることが好ましい。また(b)成分の含有量が多いと伸縮性フィルムの強度が不足する。
【0041】
(b)成分としては、伸縮性フィルムの柔軟性が良好になることから、スチレン−イソプレンジブロック共重合体及び/又はスチレン−ブタジエンジブロック共重合体が好ましく、スチレン−イソプレンジブロック共重合体がより好ましい。
【0042】
(b)成分の製造方法は特に限定されず、公知の製造方法が採用でき、例えば、アニオンリビング重合法により、芳香族ビニル重合体ブロック及び共役ジエンブロックを、逐次的に重合する方法が採用できる。
【0043】
また(b)成分は、その共役ジエン単量体単位中の二重結合の一部を水素添加したものであっても良い。水素添加方法は特に限定されない。
【0044】
(a)成分及び(b)成分はそれぞれ別々に製造して用いてもよいが、例えば、WO2004/011551号公報に記載の方法に準じて、一連の重合操作により(a)成分と(b)成分の混合物として製造して用いることもできる。
【0045】
(a)成分及び(b)成分の合計量に対する、(a)成分及び(b)成分中の全芳香族ビニル単量体単位の含有量は22〜45重量%、好ましくは22〜40重量%、より好ましくは22〜35重量%である。当該芳香族ビニル単量体単位含有量が少ないと伸縮性フィルムの異方性を示さず、逆に多いと伸縮性フィルムの柔軟性が低下する。
【0046】
(a)成分と(b)成分の混合物の重量平均分子量としては、特に限定はないが、好ましくは50,000〜950,000、より好ましくは50,000〜600,000、特に好ましくは60,000〜400,000である。
【0047】
また、本発明で使用する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物において、(a)成分と(b)成分との合計量中の(a)成分の割合{[(a)成分/〔(a)成分+(b)成分〕}としては、良好なフィルムの加工性を確保する観点から、好ましくは40〜100重量%、より好ましくは50〜90重量%である。
【0048】
ポリイソプレン(c)〔単に「(c)成分」と言うことがある。〕の重量平均分子量は5,000〜300,000、好ましくは10,000〜200,000、より好ましくは30,000〜100,000である。当該重量平均分子量が低いと伸縮性フィルムからブリードする不具合が生じ、逆に高いと伸縮性フィルムの柔軟性が低下する。
【0049】
また、(c)成分の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1.5以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。
【0050】
(c)成分は、イソプレン単位を主たる構成単位として含有する重合体であり、イソプレン単独を重合したものであっても、イソプレンとこれと共重合可能なその他の単量体とを共重合したものであってもよいが、イソプレン単独を重合したものが特に好ましい。(c)成分の、イソプレン単位の割合は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましい。なお、イソプレンと共重合可能な単量体としては、前記の芳香族ビニル単量体及びイソプレン以外の共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエン及びスチレンがより好ましい。これらは単独で使用しても、または2種以上を併用してもよい。
【0051】
(c)成分の全イソプレン単位中のビニル結合含有量は、伸縮性フィルムの柔軟性を向上させる観点から、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは5〜10重量%である。
【0052】
(c)成分の製造方法は特に限定されず、公知の製造方法が採用でき、例えば、重合溶媒中、公知のアニオン重合開始剤を用いてイソプレンを重合する方法が採用できる。
また(c)成分は、そのイソプレン単位中の二重結合の一部を水素添加したものであっても良い。
【0053】
本発明で使用する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の(c)成分の含有量は、2〜50重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜35重量%である。(c)成分の含有量が少ないと伸縮性フィルムの柔軟性が低下し、逆に、多いと伸縮性フィルムの強度が不足する。
【0054】
本発明で使用する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の調製方法は特に限定されない。別個に製造した(a)成分、(b)成分及び(c)成分を混合して調製してもよく、また、例えば、WO2004/011551号公報に記載の方法に準じて、一連の重合操作により(a)成分と(b)成分の混合物を製造し、これに別途製造された(c)成分を混合して調製してもよい。さらに、例えば特開2003−261740号公報に記載の方法に準じて、一連の重合操作により(a)成分、(b)成分及び(c)成分の混合物を製造して用いることもできる。
【0055】
本発明で使用する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の調製に際して、混合する手段は限定されない。例えば、ニーダー、ロールミル、バンバリー型ミキサー、単軸又は多軸の押出機などを用いて、所定の成分を混練する方法が挙げられる。混合温度は特に限定はないが、180〜230℃程度が好適である。
【0056】
他の混合方法の例として、所定の成分を、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素溶剤、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶剤;、ジエチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶剤;等の溶剤に溶解して溶液状態で混合し、得られた溶液から溶剤を蒸発させる方法が挙げられる。
【0057】
本発明で使用する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物には、所望により、(a)成分、(b)成分及び(c)成分以外の公知のエラストマーを添加してもよい。そのようなエラストマーの具体例として、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーブロック共重合体、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
また、本発明で使用する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物には公知の熱可塑性樹脂を添加してもよい。そのような熱可塑性樹脂の具体例として、ポリエチレン及びその変性物、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
また、本発明で使用する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物には各種配合剤を添加してもよい。そのような配合剤の具体例として、軟化剤、酸化防止剤、抗菌剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、滑剤、架橋剤、架橋促進剤等が挙げられる。
【0058】
本発明の伸縮性フィルムは、上記の芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物を、押出成形、好ましくは多軸押出成形して得られる。特に、二軸の押出機を用いると、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の調製とフィルム成形とを同時に行うことも可能である。
【0059】
本発明の伸縮性フィルムを押出成形により製造する場合、T−ダイを用いる押出成形によると平坦なフィルムを成形しやすいので好適である。すなわち、通常の単軸押出機や二軸押出機を用い、それに装着したT−ダイから、温度150〜250℃で溶融した芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物を押出し、引き取りロールで冷却しながら(同時に延伸しても良い)巻き取る方法が好ましく挙げられる。フィルムを巻き取る際、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、不織布又は離型紙からなる基材の上に芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の溶融物をコーティングしながらフィルム化しても良い。そのようにして得られたフィルムは、基材にコーティングしたままの形で使用しても、基材から剥がして使用してもよい。
【0060】
本発明の伸縮性フィルムの厚さは、用途により異なるが、伸びやすさ及びフィット性が良好であることから、好ましくは0.01〜50mm、より好ましくは0.03〜1mm、特に好ましくは0.05〜0.5mmである。
【0061】
本発明の伸縮性フィルムは異方性を有するので、押出成形における溶融流れ方向(MD)の100%モジュラスと該溶融流れに直角の方向(TD)の100%モジュラスとの比(MD/TD)が1.5〜10、好ましくは2〜9、より好ましくは3〜7である。
また、本発明の伸縮性フィルムは柔軟性に優れているので、押出成形における溶融流れに直角の方向(TD)の100%モジュラスは、0.1〜0.5MPa、好ましくは0.15〜0.45MPa、より好ましくは0.15〜0.4MPaである。
【0062】
本発明の伸縮性フィルムが異方性を有するのは、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物がシリンダ状の相分離構造を有し、そのシリンダ構造が一斉に一定方向に、すなわち、押出成形時の溶融流れの方向(MD)に配向するためと考えられる。該フィルムの超薄切片をオスミウム蒸気染色して透過型電子顕微鏡により観察して得られるシリンダ構造の長径と短径の平均径の比率(長径/短径)は、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3以上である。
【0063】
本発明の伸縮性フィルムは、少なくとも一方向へのフィルムの伸びが好ましくは1000%以上、より好ましくは1100%以上、特に好ましくは1200%以上である。また、少なくとも一方向へのフィルムの永久伸びが好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下、特に好ましくは4%以下である。
【0064】
本発明の伸縮性部材は、上記伸縮性フィルムよりなるものである。上記伸縮性フィルムは、異方性があって、柔軟性及び伸縮性に優れたものであることから、異方性と柔軟性を必要とする伸縮性部材に使用される。
【0065】
伸縮性フィルムを伸縮性部材として用いる場合、そのもの単独で、又は他の部材と積層して使用することができる。例えば、伸縮性フィルムをスリット加工した後、これにホットメルト接着剤等を塗布してテープとし、このテープを縮めた状態で不織布、織布、プラスティックフィルム又はシート、及びこれらの積層体に接着し、テープの縮みを緩和することにより、例えば、異方性のある伸縮性のギャザー部材を形成することができる。さらに、その他用途に応じ、公知の方法に従って適宜加工し、例えば、伸縮性シップ用基材、手袋、手術用手袋、指サック、止血バンド、避妊具、ヘッドバンド、ゴーグルバンド、輪ゴム等の伸縮性部材として用いることができる。
【0066】
本発明の衛生用品は、上記伸縮性部材を含有してなるものである。例えば、異方性のある伸縮性のある伸縮性のギャザー部材を設けた紙オムツ、生理用品等の衛生用品が挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例、比較例及び参考例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。「含有量」は特記ない限り重量基準である。測定、評価は以下のようにして行った。
(重量平均分子量の測定)
テトラヒドロフランをキャリアとする高速液体クロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めた。カラムは東ソー社製HLC8220を用い、分子量の較正はポリマーラボラトリー社製の標準ポリスチレン(500から300万)の12点で実施した。
【0068】
(各ブロック共重合体の組成)
高速液体クロマトグラフィにより、得られた各ブロック共重合体のピーク面積比率から求めた。
(共重合体中の芳香族ビニル単量体単位含有量)
プロトンNMRにより、測定した。
【0069】
(フィルム作製法)
二軸押出機の先にT−ダイを装着し、T−ダイから200℃で加熱溶融した芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物を押出して20分間連続して厚さ0.2mmのフィルムの成形を行った。フィルム成形条件は以下の通りとした。
組成物処理速度 :15kg/hr
フィルム引き取り速度 :10m/min
押出機温度 :投入口140℃、T−ダイ160℃に調整
スクリュー :フルフライト
押出機L/D :42
T−ダイ :幅300mm、リップ1mm
【0070】
(フィルムの引張弾性率)
溶融流れ方向(MD)及び溶融流れに直角の方向(TD)について、フィルムの引張弾性率をORIENTEC社製のテンシロン万能試験機RTC−1210を用いて引張速度500mm/minで測定した。100%伸張時の引張弾性率(モジュラス)の単位は「MPa」。
(フィルムの伸び)
溶融流れ方向(MD)及び溶融流れに直角の方向(TD)について、フィルムの伸びをJIS K6301に準拠して上記テンシロン万能試験機を用いて測定した(伸びの単位:%)。
(フィルムの永久伸び)
溶融流れ方向(MD)及び溶融流れに直角の方向(TD)について、フィルムの永久伸びをJIS K6301に準拠して上記テンシロン万能試験機を用いて測定した。永久伸びの測定では、フィルムを伸び率100%で伸張させ、そのままの状態で10分間保持した後、跳ね返ることなく急に収縮させて10分後、標線間距離を測定した。
永久伸び(%)=(L1−L0)/L0×100
L0:伸張前の標線間距離(mm)
L1:収縮させて規定時間放置後の標線間距離(mm)
【0071】
(ミクロ相分離構造の観察)
作製したフィルムから幅5mm、長さ10mmの試料片を切り出し、クライオウルトラミクロトームを用いて−80℃で超薄切片作成後、オスミウム蒸気染色を30分実施した。透過型電子顕微鏡(日立製作所社製、商品名「H−7500」)で加速電圧を80kVとして明視野像を観察し、画像解析により相分離構造を決定した。シリンダ構造の配向方向、長径と短径の平均径及び長径/短径の比を調べ、配向方向が溶融流れ方向の場合「MD」、不特定に乱れている場合「ランダム」と記す。
【0072】
(参考例1)
耐圧反応器に、シクロヘキサン31.3Kg、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以降TMEDAと称する。)187.6ミリモル及びスチレン2.6Kgを添加し、40℃で攪拌しているところにn−ブチルリチウム187.6Kgを添加し、50℃に重合温度を上げながら1時間重合した。この時点でのスチレンの重合転化率は100重量%、ポリスチレンブロックの重量平均分子量は16,700であった。
【0073】
引き続き、重合温度は50〜60℃を維持するように温度制御しつつイソプレン7.4Kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。重合転化率は100%であった。スチレン−イソプレンジブロック共重合体〔(b)成分に相当〕。重量平均分子量は80,000であった。
【0074】
次いで、カップリング剤としてジメチルジクロロシラン84.4ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行い、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック共重合体〔(a)成分に相当〕を形成させた。この後、重合停止剤としてメタノール281.4ミリモルを添加してよく混合し反応を停止した。
以上により、スチレン−イソプレンブロック共重合体混合物{以下、「〔(a)+(b)〕成分」と記すことがある。}を含む反応液を得た。〔(a)+(b)〕成分の重量平均分子量は150,000であった。
【0075】
得られた反応液に固形分濃度で30重量%となるようにシクロヘキサンを加えて調製した溶液100部に、酸化防止剤2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させた。得られた析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥した。
上記粉砕物を、押出機の先端部に水中ホットカット装置を備えた単軸押出機に供給し、平均直径5mmで平均長さが5mm程度の円筒状のペレットを得た。
【0076】
(参考例2〜6)
参考例1において、スチレン、n−ブチルリチウム、TMEDA、イソプレン、ジメチルジクロロシラン及びメタノールの量を表1に示すように変更した以外は参考例1と同様に行ってペレットを得た。(a)成分、(b)成分の特性は表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
(参考例7)
耐圧反応器に、シクロヘキサン16.7Kg、TMEDA 6.41ミリモル及びn−ブチルリチウム213.7ミリモルを入れ、40℃で撹拌しながらイソプレン5.0Kgを60℃に重合温度を上げつつ1時間かけて添加し、イソプレン添加終了後さらに60℃で1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。この後、反応器に重合停止剤としてメタノール0.2部を添加し、よく混合して反応を停止し、ポリイソプレン〔(c)成分に相当〕を得た。ポリイソプレンの重量平均分子量を測定したところ、40,000であった。
【0079】
(実施例1)
参考例1で得たペレット(スチレン−イソプレンブロック共重合体混合物)の30重量%シクロヘキサン溶液100部に、参考例7で得たポリイソプレンの30重量%シクロヘキサン溶液43部を加え、さらに酸化防止剤2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85〜95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させた。得られた析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥し、芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物を得た。当該組成物の〔(a)+(b)〕成分のスチレン単量体単位含有量、並びに(a)、(b)、及び(c)各成分の含有量(重量%)を測定した結果を表2に示す。
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物を用いて、前記フィルム作製法によってフィルムを成形した。フィルムの100%モジュラス、モジュラス比、伸び及び永久伸びを測定し、また電子顕微鏡によるシリンダ状相分離構造を観察した。その結果を表2に記す。
【0080】
(実施例2)
実施例1において、参考例1で得たペレットを参考例2で得たものに変更したこと以外は実施例1と同様に行ってフィルムを作製した。
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の(a)成分、(b)成分および(c)成分の含有量等を表2に示す。作製したフィルムの特性につき実施例1と同様に測定した。その結果を表2に記す。
【0081】
(実施例3)
実施例1において、ペレットを参考例1で得たものから参考例3で得たものに変更し、また、参考例7で得たポリイソプレンの量を表2に記載した量に変更したこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の(a)成分、(b)成分および(c)成分の含有量等を表2に示す。作製したフィルムの特性につき実施例1と同様に測定した。その結果を表2に記す。
【0082】
(実施例4)
実施例1において、ペレットを参考例1で得たものから参考例4で得たものに変更し、また、参考例7で得たポリイソプレンの量を表2に記載した量に変更したこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の(a)成分、(b)成分および(c)成分の含有量等を表2に示す。作製したフィルムの特性につき実施例1と同様に測定した。その結果を表2に記す。
【0083】
(比較例1)
実施例1において、ペレットを参考例1で得たものから参考例5で得たものに変更し、参考例7で得たポリイソプレンを加えなかった以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の(a)成分および(b)成分の含有量等表2に示す。作製したフィルムの特性につき実施例1と同様に測定した。その結果を表2に記す。
【0084】
(比較例2)
実施例1において、ペレットを参考例1で得たものから参考例6で得たものに変更し、参考例7で得たポリイソプレンの量を表2に記載した量に変更したこと以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製した。
芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物の(a)成分、(b)成分および(c)成分の含有量等を表2に示す。作製したフィルムの特性につき実施例1と同様に測定した。その結果を表2に記す。
【0085】
【表2】

【0086】
表2が示すように、実施例1〜4で得られたフィルムはいずれも、100%モジュラスのTD/MD比が3.5〜6.7と十分に大きくて異方性があり、TD方向の100%モジュラスが顕著に低いことから柔軟性に優れており、MD及びTDの伸びが共に1200%以上と大きいことから伸縮性に優れている。また、シリンダ状ミクロ相分離構造が形成されていて、それらが一斉に溶融流れ方向(MD)に配向していることが透過型電子顕微鏡により観察された。
一方、比較例1のポリイソプレンを含まないフィルムは、異方性を有するものの、TD方向の100%モジュラスが高いことから柔軟性に欠ける。
また、比較例2の(a)成分及び(b)成分の合計量に対するスチレン単位含有量が本発明で規定する値未満であるフィルムは、100%モジュラスがMD、TD共に小さくて柔軟性に優れるものの、異方性をほとんど示さない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重量平均分子量6,000〜100,000の芳香族ビニル重合体ブロックを2つ以上有する芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体35〜95重量%、(b)芳香族ビニル−共役ジエンジブロック共重合体0〜60重量%、及び(c)重量平均分子量5,000〜300,000のポリイソプレン2〜50重量%を含有し、(a)成分及び(b)成分の合計量に対する芳香族ビニル単量体単位の含有量が22〜45重量%である芳香族ビニル−共役ジエンブロック共重合体組成物を押出成形して得られる伸縮性フィルムであって、
押出成形における溶融流れ方向(MD)の100%モジュラスと該溶融流れに直角の方向(TD)の100%モジュラスとの比(MD/TD)が1.5〜10であり、かつ該溶融流れに直角の方向(TD)の100%モジュラスが0.1〜0.5MPaであることを特徴とする伸縮性フィルム。
【請求項2】
請求項1記載の伸縮性フィルムからなる伸縮性部材。
【請求項3】
請求項2に記載の伸縮性部材を含有してなる衛生用品。



【公開番号】特開2008−7654(P2008−7654A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180521(P2006−180521)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】