説明

位相差膜の製造方法

【目的】 光学的に色ムラの少なく、かつ視野特性の良い位相差膜を提供することにある。その方法として、流延一延伸を一貫で行なう方法で、かつ視野角特性が、優れていると同時に、前処理工程を必要とせず、延伸温度も比較的低温で実施できる方法を提供することにある。
【構成】 高分子溶液として、ポリカーボネートのメチレンクロテライド溶液を18重量%に調製し、支持体上に流延製膜したものを残留溶媒25%以下になるまで乾燥して支持体より剥ぎ取り、これを後半に延伸ゾーンを備えた後乾ゾーンに入れ乾燥させた。延伸ゾーンに入るときの膜中の残留揮発分を7%とし、温度165℃の雰囲気下で、16.6%延伸して、570nmのレタデーションを示す位相差膜を得た。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光学用フィルム特に、位相差膜の製造方法に関する。さらには、視野角特性の優れた位相差膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の位相差膜の製造方法としては■テンター延伸による製造方法(特開平2−12205号公報参照)
■縦一軸延伸でフィルムをネックインさせ、延伸後熱緩和領域を設け、2対のロールで延伸する方法(特願平2−32264)
■延伸時に生じる光学ムラを解消する方法として延伸する時のフィルム中の溶媒量を規定する方法(特願平2−330772)
■一工程で光学的特性を持つ位相差膜の製造方法(特願平3−69438)
■視野角特性の改良に正負の固有複屈折値を持つ2種のフィルムを組合わせる方法(特開平3−24502号公報参照)
等が開示又は出願されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の方法は、■は位相差板の延伸方法として、テンター延伸が光学的ムラの少ない方法として良いと述べられているが、この方法では視野角特性が劣り、液晶用補償板として用いる場合品質上好ましくないことが知られている。また、熱処理及び、余熱等が必要で、かつ延伸温度が170℃前後と高くなっている。
■の縦一軸延伸でフィルムをネックインさせ、延伸後熱緩和領域を設け、2対のロール間で延伸することで、延伸ムラと視野角特性を改良しているが、この場合も延伸前半に約150℃〜160℃の前処理と160〜180℃の延伸域と135〜155℃の熱緩和域が必要とされ高温域が必要である。
■ 延伸時に生じる光学的ムラを解消する方法として、延伸する前のフィルム中の溶媒量を規定している。しかし、ここでは、視野角について言及していない。
■ ここでも、一工程で光学的特性を持つ位相差膜を提供する方法を述べている。しかし、ここでは、工程テンションと温度の規定を述べているだけで、視野角特性に関しては、言及していない。
■ 視野角特性の改良に正負の固有複屈折値を持つ2種のフィルムを組み合わせる方法を述べているが、異種のフィルムを使うことで、コストや製造上問題が残る。
液晶表示を白黒化するための、位相差膜は均一な光学特性を持つことが、重要であることは当然で、■の方法特願平2−330772に示すように流延、搬送設備により均一な膜を作り、溶媒含有量を固形分基準で2〜10%にして均一に延伸し、液晶にマッチングしたレタデーションの位相差膜にすることで、製品は得られるが、今一つ液晶の表示装置として重要な項目に視野角特性がある。一般に、異方性フィルムにおいては、光の入射角によって光路差が変化することで斜から見た場合に補償が適切に行なわれなくなり着色する現象を生じる。これは、垂直方向の屈折率を変えることで対応できるが、この為には、例えば■の方法特開平3−24502号公報に記載してあるように、異種のフィルムを組み合わせる必要がある。しかし、この方法では、製造工程上手間がかかる。
【0004】本発明の目的は従来の問題点を解消し、光学的に色ムラが少なく、かつ視野角特性の良い位相差膜を提供することにある。その方法として、流延一軸延伸を一貫で行なう方法で、かつ視野角特性が優れていると同時に、前処理工程を必要とせず、延伸温度も比較的低温で実施できる方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明の上記目的は、ポリカーボネートのメチレンクロライド溶液を流延製膜した後、延伸によって複屈折性を持たせる位相差膜の製造方法において、流延製膜した膜の溶媒含有量が固形分基準で3〜10%の範囲にある時に、155℃以上175℃以下の雰囲気内においてフィルムの進行方向に延伸することを特徴とする位相差膜の製造方法によって達成される。
【0006】本発明においては流延製膜工程の後半、即ち膜中の残留揮発分が固形分基準で10重量%以下の領域で、好ましくは8重量%以下の領域でかつ、3重量%以上の領域にある時に、延伸ゾーンの温度を155℃以上175℃以下、好ましくは、160℃以上170℃以下の雰囲気下で膜を通過させる。また、この温度域にさらす時間は、特に限定されないが、工程の長さからおのずと限定される。即ち適切な条件としては、10分以下で十分である。一方位相差の発現から少なくとも10秒は、同条件下にあることが望ましい。その条件下で進行方向に延伸させるのである。この場合に、延伸ゾーンを除いては150℃を越すような高温の熱処理や余熱ゾーンは特に必要なく、乾燥ゾーンとしての温度が確保されていればよい。又、残留揮発分を10重量%〜3重量%にして巻き取った後、再び155℃〜175℃の温度の室を通過させてその室内で進行方向に延伸させてもよい。
【0007】
【実施例】
(実施例−1)高分子溶液として、ポリカーボネートのメチレンクロライド溶液を18重量%に調製し、支持体上に流延製膜したものを、残留溶媒約25%以下になるまで乾燥して支持体より剥ぎ取り、これを後半に延伸ゾーンを備えた後乾ゾーンに入れ乾燥させた。延伸ゾーンに入る時の膜中の残留揮発分を7%とし、温度165℃の雰囲気下で、膜の進行方向に16.6%延伸して、570nmのレタデーションを示す位相差膜を得た。
【0008】(比較例−1)延伸ゾーンの温度を150℃にしたほかは、上の実施例と同様である。但し温度が異なるため、若干の延伸率の違いは存在する。上記2つの位相差膜の視野角特性を比較したところ表1のようになり、本発明の効果が分かる。
【0009】
【表1】


【0010】(比較例−2)流延製膜装置で作ったポリカーボネート膜は、残留揮発分が4%であった。この膜を別工程の延伸装置で余熱ゾーン160℃、延伸ゾーン168℃でテンターを用いて約20%横一軸に延伸して580nmのレタデーションを得た。この時のレタデーション変化は25%にもなった。
【0011】(実施例−2)流延機の乾燥工程で温度調整を行ない、巻取で揮発分が8%になるように調整したポリカーボネイトの膜を、別工程の延伸機にて延伸した。予熱ゾーン152℃、延伸ゾーン162℃、緩和ゾーン145℃で、レタデーション変化が9.1%であった。この結果からオフラインにおいても、膜中の揮発分が高い場合は、比較的低温延伸で、視角特性のよい位相差膜が得られることが判る。
【0012】
【発明の効果】ポリカーボネートを用いた位相差膜の製造工程において、流延・乾燥工程の中に縦一軸延伸工程持つ製造方法で、延伸工程中に155℃〜175℃のゾーンを通過させ、かつそのゾーンを通過する膜中の揮発分が3〜10%であることにより、延伸温度を比較的低温に出来、さらに、視野角特性の良い位相差膜が提供できる。この結果、液晶表示用の膜として優れたものが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリカーボネートのメチレンクロライド溶液を流延製膜した後、延伸によって複屈折性を持たせる位相差膜の製造方法において、流延製膜した膜の溶媒含有量が固形分基準で3〜10%の範囲にある時に、155℃以上175℃以下の雰囲気内においてフィルムの進行方向に延伸することを特徴とする位相差膜の製造方法。