説明

位相弁別器

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、FM信号をディジタル信号に変換して復調する場合等に使用される位相弁別器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えばFM信号をディジタル信号に変換して復調する場合に使用される位相弁別器として、従来から図4に示すような回路が知られている。すなわち図において、41は例えばFM信号の供給される入力端子である。この入力端子41からの信号がA/D変換器42に供給され、ディジタル化された信号が90度移相器43に供給される。
【0003】この移相器43からの信号と変換器42からの信号とがレベル検出器44に供給されて、FM信号の振幅の変動成分が検出される。この検出信号が乗算器45に供給され、この乗算器45に変換器42からの信号が供給されて、信号の振幅成分が正規化される。さらにこの乗算器45からの正規化された信号が、アークサインの関数の記憶されたROM46に供給される。
【0004】これによってこのROM46からは、入力端子41に供給された例えばFM信号の位相弁別された信号が取り出される。さらにこの位相弁別された信号が微分器47に供給されて、FM復調された信号が出力端子48に取り出される。このようにして例えばFM信号をディジタル信号に変換して復調することができる。
【0005】ところがこの回路において、ROM46にはアークサインまたはアークコサインの関数が記憶される。すなわちROM46には三角関数そのものが記憶されなければならず、極めて大きな記憶容量が必要とされる。このため回路の規模が大きくなり、回路の製造コストが増大するなどの問題を生じていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】解決しようとする問題点は、従来の回路では、ROMには三角関数そのものが記憶されるために極めて大きな記憶容量が必要とされ、回路の規模が大きくなり、回路の製造コストが増大するなどの問題を生じていたというものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明による第1の手段は、入力信号(端子1)の振幅を正規化すると共に、上記入力信号を90度移相(器3)した信号の振幅を正規化し、これらの正規化された信号を比較してその大きい方または小さい方を取り出す論理手段(回路7)を有し、この取り出された信号をアークサインまたはアークコサインの関数の必要部分のみが記憶されたROM8に供給し、このROMの出力を上記論理手段で取り出されている信号に応じて補正(器9)して出力信号を得るようにした位相弁別器である。
【0008】本発明による第2の手段は、入力信号(端子1)の振幅を正規化すると共に、上記入力信号を90度移相(器3)した信号の振幅を正規化し、これらの正規化された信号を比較してその大きい方または小さい方を取り出す論理手段(回路7)を有し、この取り出された信号をアークサインまたはアークコサインの関数の必要部分を近似する演算回路8′に供給し、この演算回路の出力を上記論理手段で取り出されている信号に応じて補正(器9)して出力信号を得るようにした位相弁別器である。
【0009】
【作用】これによれば、三角関数そのものを記憶したROMが不要になり、回路の規模を縮小し、回路の製造コストを削減することができる。
【0010】
【実施例】図1において、1は例えばFM信号の供給される入力端子である。この入力端子1からの信号がA/D変換器2に供給され、ディジタル化された信号が90度移相器3に供給される。この移相器3からの信号と変換器2からの信号とがレベル検出器4に供給されて、FM信号の振幅の変動成分が検出される。
【0011】ここでレベル検出器4では、変換器2からの信号をx、移相器3からの信号をyとして、
【数1】1/√(x2 +y2
の演算を行う。すなわち信号x=Acosθとすると、この信号が90度移相された信号y=Asinθとなる。従ってx2 +y2 =(Acosθ)2 +y(Asinθ)2=A2から、数1はAとなり、入力FM信号の振幅の変動成分が検出される。
【0012】この検出信号が乗算器5に供給され、この乗算器5に変換器2からの信号が供給されて、信号の振幅成分が正規化される。また検出信号が乗算器6に供給され、この乗算器6に移相器3からの信号が供給されて、信号の振幅成分が正規化される。さらにこれらの乗算器5、6からのそれぞれ正規化された信号が、信号を比較してその小さい方(MIN)を取り出す論理回路7に供給され、この論理回路7からの信号がアークサインの関数の必要部分のみが記憶されたROM8に供給される。
【0013】さらにこのROM8からの信号が90度位相補正器9に供給され、また論理回路7からの信号が補正器9に供給されて論理回路7で取り出されている信号に応じた位相補正が行われる。これによって補正器9からは、入力端子1に供給された例えばFM信号の位相弁別された信号が取り出される。さらにこの位相弁別された信号が微分器10に供給されて、FM復調された信号が出力端子11に取り出される。このようにして例えばFM信号をディジタル信号に変換して復調することができる。
【0014】そしてこの回路において、変換器2からの正規化された信号をX=cosθ、移相器3からの正規化された信号をY=sinθとすると、これらの波形は例えば図2に示すようになる。このため論理回路7からは例えば図中に太い線で示すような信号が取り出される。従ってこの回路において、ROM8にはこの太い線を含むaの範囲のアークサインの関数のみが記憶されていればよく、これ以外のbの範囲の記憶容量を削減することができる。
【0015】さらにこのaの範囲の関数が図示のように略直線に変化され、これを直線で近似すれば、例えば論理回路7からの信号をSとして、ROM8の出力信号Qは、
【数2】Q=KSとなる。すなわち極めて簡単な関数となるので、ROM8は極めて簡単なメモリで構成できる。
【0016】こうして上述の装置によれば、三角関数そのものを記憶したROMが不要になり、回路の規模を縮小し、回路の製造コストを削減することができるものである。
【0017】なお上述の装置において、ROM8での信号処理は上述のように極めて簡単な関数となるので、例えばこのROM8に代えて、図3に示すように簡単な論理回路からなる演算回路8′を設けるようにしてもよい。またROM8または演算回路8′に設けられる近似式は、上述の数2の直線近似に限らず折れ線近似で行うようにしてもよい。
【0018】さらに上述の装置において、論理回路7は大きい方(MAX)を取り出すようにしてもよい。その場合には、ROM8には上述の図2のbの範囲のアークサインの関数のみが記憶されていればよく、記憶容量をさらに大幅に削減することができる。しかし信号の精度を高める必要があり、信号を正規化するためのレベル検出器4等の精度を高める必要が生じる。
【0019】
【発明の効果】この発明によれば、三角関数そのものを記憶したROMが不要になり、回路の規模を縮小し、回路の製造コストを削減することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による位相弁別器の一例の構成図である。
【図2】その説明のための図である。
【図3】本発明による位相弁別器の他の例の構成図である。
【図4】従来の位相弁別器の構成図である。
【符号の説明】
1 入力端子
2 A/D変換器
3 90度移相器
4 レベル検出器
5、6 乗算器
7 論理回路
8 アークサインの関数の必要部分のみが記憶されたROM
9 90度位相補正器
10 微分器
11 出力端子11
8′ アークサインの関数の必要部分を近似する演算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 入力信号の振幅を正規化すると共に、上記入力信号を90度移相した信号の振幅を正規化し、これらの正規化された信号を比較してその大きい方または小さい方を取り出す論理手段を有し、この取り出された信号をアークサインまたはアークコサインの関数の必要部分のみが記憶されたROMに供給し、このROMの出力を上記論理手段で取り出されている信号に応じて補正して出力信号を得るようにした位相弁別器。
【請求項2】 入力信号の振幅を正規化すると共に、上記入力信号を90度移相した信号の振幅を正規化し、これらの正規化された信号を比較してその大きい方または小さい方を取り出す論理手段を有し、この取り出された信号をアークサインまたはアークコサインの関数の必要部分を近似する演算回路に供給し、この演算回路の出力を上記論理手段で取り出されている信号に応じて補正して出力信号を得るようにした位相弁別器。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3271191号(P3271191)
【登録日】平成14年1月25日(2002.1.25)
【発行日】平成14年4月2日(2002.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−71535
【出願日】平成4年3月27日(1992.3.27)
【公開番号】特開平5−276201
【公開日】平成5年10月22日(1993.10.22)
【審査請求日】平成11年2月12日(1999.2.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【参考文献】
【文献】特開 昭60−196050(JP,A)
【文献】特開 昭47−19706(JP,A)
【文献】特開 昭55−86250(JP,A)
【文献】特開 昭63−280547(JP,A)
【文献】特開 昭64−12646(JP,A)
【文献】特開 昭63−48558(JP,A)
【文献】特開 平5−103025(JP,A)