説明

位置および配向の磁気測定

【課題】空間における対象の位置および配向を測定する改良された装置および方法、特に、生存している対象の身体内におけるプローブの位置および配向を測定する改良された装置および方法を提供する。
【解決手段】磁気による位置および配向測定系は、検出空間の対向する側部に配置されたヘルムホルツコイル34、36、38からの均一な場と、同じコイルが発生するグラジェント場からなるのが望ましい磁場を使用する。これらの磁場の印加の際にプローブ50において検出される場成分を監視することにより、場におけるプローブ50の位置および配向を推測することができる。プローブ50の表示108を被検体の別に取得された画像に重畳して、被検体に対してプローブ50の位置および配向を示すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場により対象の位置および配向を測定する装置および方法に関するものであり、磁場により医療患者の身体内のプローブの位置を監視する装置および方法を含むものである。
【背景技術】
【0002】
空間内の対象の位置および配向(orientation)を測定するのに種々の方法が利用されている。例えば、患者の身体内の医療器具の位置および配向を測定するのに、例えば、カテーテル、内視鏡その他のプローブの位置および配向を監視することがしばしば必要となる。内部器官を示す画像のような患者の絵に重畳された、対象を示すデータを提供することが所望されている。これを行なう簡単な方法の1つとして、患者と挿入されたプローブの双方を示すX線透視画像のような直接X線画像を得る方法がある。この方法は、プローブが動かされる場合には、患者の画像を得る画像処理操作全体を繰り返さなければならないという欠点がある。X線透視法のようなX線画像処理は、幾つかの外科処置の際に行なうことができるが、患者を望ましくない電離放射線に必ず曝すことになる。MRI画像処理のような幾つかのタイプの画像処理操作があるが、これらの操作は外科その他の治療処置の際に繰り返すことができない。
【0003】
例えば、英国特許出願第2,094,590号および米国特許出願第5,186,174号に記載のように、プローブは、プローブの位置が固定された基準フレーム(frame of reference)に対して連係されるように機械的に連係を受け即ちアームまたはフレームに結合することができる。プローブの画像は、固定基準フレームから得られる位置データを使用して患者の画像に重畳することができる。しかしながら、これらの系は、プローブを柔軟性のないものとするので、医療処置において著しい不利益をもたらすことになる。例えば、かかる系の1つに、プローブを問題の領域まで直線状に進行させなければならないものがある。かかる特性の系は、身体の内部よりもむしろ身体の外部にプローブを配置するのに適している。
【0004】
ブライヤ等の米国特許第4,697,595号およびメディカル・アンド・バイオロジカル・エンジニアリング・アンド・コンピュータ、第22巻、第3号(1984年)、第268−271頁に掲載のブライヤ等の「超音波によるマークが付されたカテーテル/エコグラムカテーテルの位置の確実な識別方法」と題する論文には、いずれも、超音波検出器を備えた心内カテーテルが開示されている。カテーテルの位置は、患者の外部の超音波変換器からカテーテルまでの飛翔時間の測定値から推測され、この推測位置が超音波により得られた画像に重畳される。
【0005】
ファン・ステインバイク等の米国特許第4,173,228号、ファイラ等の米国特許第5,042,486号およびデュムーラン等の米国特許第5,211,165号にはいずれも、身体に挿入された医療カテーテルの先端の1つのアンテナと身体の外部の幾つかのアンテナとの間で電磁信号が伝搬される構成が開示されている。カテーテル先端の位置と配向は、これらのアンテナ間を伝送される信号から測定されるとされている。即ち、相対的な位置と配向が、例えば、一方のアンテナから他方のアンテナへの伝送の際の信号の減衰の程度のような、これらのアンテナ間の信号伝搬路の特性から推定される。バン・ステインバイクの特許においては、磁場とホール効果変換器センサを使用する可能性が認められているが、これを実際の装置においてどのように実施するかについての詳細な説明はされていない。デュムーランの特許には、カテーテルチップの無線周波数由来の位置を、画像処理系により得られる画像に重畳することができると記載されている。
【0006】
磁場を使用して人間の身体の外部に物品を配置する数多くの系が提案されている。即ち、ブラッドの米国特許第4,945,305号、第4,849,692号および第4,613,866号にはいずれも、配置されるべき磁性コイルと固定された基準フレーム内の固定コイルとを使用し、3次元空間における対象の位置および配向を測定する系が開示されている。この種の別の系には、ボアザンの米国特許第5,172,056号および第5,168,222号、コンスタントの米国特許第4,396,885号、カンタローブの米国特許第5,109,194号、ウィード等の米国特許第4,317,078号、ハンセンの米国特許第4,642,786号並びにモーガンスターンの米国特許第5,047,715号が含まれる。これらの系は、一般に、鉄心を中心に直交する軸線に巻回された幾つかのコイルを含む磁場送信機と、受信機として使用される同様の構造体とを採用している。送信機のコイルは逐次および/または異なる周波数で作動され、受信機のコイルにより検出される信号は受信機に対する送信機の位置および配向を測定するために分析される。かかる系においては、ヘルメットの位置と配向を検出するためのコンピュータおよび系の3次元データ入力装置が使用されている。
【0007】
更に、IEEEトランザクションズ・オン・バイオメディカル・エンジニアリング、第BME−34巻、第4号、1984年4月、第388−390頁に掲載の「膜研究コイル技術を使用した安価な眼球運動モニタ」と題するレメルの論文に開示されているように、眼球の回転を追及しようとする研究者は、縫合によりあるいはコイルをコンタクトレンズに組み込むなどして、小型のループ状検出コイルを眼球の表面に取着している。かかるコイルを有する被験者は、2つの異なる周波数を有する高周波交流電流で励磁される対をなした直角配向のヘルムホルツコイル間に配置される。眼球のコイルに誘起される電圧は、双方の周波数の成分を含み、これらの成分の相対的な大きさは目の配向によるものとされ
る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本技術分野における上記したいずれの努力にも拘らず、空間における対象の位置および配向を測定する改良された装置および方法、特に、生存している対象の身体内におけるプローブの位置および配向を測定する改良された装置および方法が依然として待望されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、これらの要望に対処するものである。
本発明の一の観点によれば、プローブの位置と配向を測定する装置および方法が提供されている。本発明の一の観点に係る装置は、複数の異なる磁場を発生するように選択的に動作する磁石手段を有しており、各磁場は「擬線形」即ち検出空間(sensing volume)における基準方向の距離に対して一定、線形または略線形をなす大きさ(magnitude)をもつ少なくとも1つの非ゼロ成分を有する。
【0010】
本発明の装置はまた、所定のシーケンスで異なる場を発生するように磁石手段を作動させる制御手段と、検出空間内の監視されるべき対象とともに動くことができるように対象に接続されたセンサとを有する。センサは、センサに対して少なくとも2つの、好ましくは直交する局部(local)方向の磁場成分を検出するように構成されている。望ましくは、センサは、センサに対して3つの異なる、望ましくは直交する局部方向の磁場成分を検出するように構成されている。局部方向とは、センサの基準フレーム内の方向であり、磁石手段の基準方向とは通常異なる。本発明の装置は更に、磁石手段が種々の磁場を発生するように動作されているときに、センサにより検出される磁場成分から磁石手段に対するセンサの位置および配向を決定する計算手段を備えている。
【0011】
検出空間内の場は、均一のあるいは距離とともに著しく直線的に変化する擬線形成分を有するので、感知可能で、測定可能な場および単位距離当たりの磁場成分の大きさの感知可能な変化率を、最大の場が比較的低い場合においても、比較的大きな検出空間全体に亘って、例えば、約30cm以上の最小寸法を有する検出空間全体に亘って得ることができる。これにより、適宜の感度を有する磁場センサにより配向および位置を精確に監視することができる。従って、これにより、カテーテル、内視鏡その他の医療用プローブのチップ(tip)内に収容することができる著しく小形のセンサ、好ましくはソリッドステートセンサを使用することができる。
【0012】
望ましくは、磁石手段は、検出空間内の第1の基準方向の第1の略均一な磁場を発生するように構成される。磁石はまた、検出空間内の第1の基準方向とは異なる第2の基準方向の第2の略均一な磁場を発生するように選択的に動作自在となっている。好ましくは、第2の基準方向は、第1の基準方向と直交する。磁石手段はまた、検出空間内に第1および第2のグラジェント場(gradient field)を発生するように選択的に動作自在となっており、第1のグラジェント場は検出空間内の第1の基準方向に所定の変化パターンを有している。第2のグラジェント場は、検出空間内に所定の変化パターン、望ましくは、第2の方向に所定の変化パターンを有している。
【0013】
好ましくは、磁石手段はまた、場の成分が第1および第2の基準方向とは異なる、好ましくはこれらの方向と直交する第3の基準方向に所定の変化パターンをもって変化するように作動自在となっており、また計算手段は、第3の方向とともに、第1および第2の方向のプローブの位置を決定するように配設されている。第3の方向に変化する成分は、第1および第2のグラジェント場とは異なりかつ均一な場とは異なる第3のグラジェント場の一部として得ることができる。あるいは、第3の方向に変化する成分は、第1のグラジェント場、第2のグラジェント場あるいはこれらの双方で得ることができる。磁石手段はまた、第3の基準方向に第3の均一な場を発生するように配設ことができる。
【0014】
最も好ましくは、磁石手段は、検出空間の対向側部に配置された一対の場方向づけ(field−directing)素子をそれぞれが有する複数のセットを有する。場方向づけ素子は、互いに同方向に束を向けて検出空間内に略均一な場を形成するとともに、互いに逆方向に束を向けて検出空間内にグラジェント場を提供するように構成することができる。かかる各対をなす場方向づけ素子は、導電性コイルであるのが望ましく、最も好ましくは、各対をなす軸線が1つの基準方向に延びるように互いに略共軸をなして配置されたヘレルムホルツコイルである。
【0015】
本発明の別の観点に係る装置は、少なくとも2対のヘルムホルツコイルを有する磁石構造体を備え、かかる各対のコイルは互いに略共軸をなすとともに、対軸線(pair axis)を画成する。かかる各対のコイルは、種々の対のコイルの軸線と互いに略直交するように、検出空間の対向側部に配置される。装置はまた、対をなす双方のコイルにおいて対軸線を中心とする同方向の電流が流れる均質な場状態において前記各対をなすヘルムホルツコイルを作動させることにより、対軸線と平行をなしかつ検出空間内に略均一な強度を有する磁場を発生する。制御手段はまた、対軸線と平行をなしかつ検出空間に略線形のグラジェントの大きさをもつ成分を有する磁場を発生させるように、対のコイルに逆方向に電流が流れるグラジェント場状態で各対をなすヘルムホルツコイルを作動させるように動作を行なう。
【0016】
制御手段は、対をなすコイルが所定の時間シーケンスに従って異なる状態に作動されるように磁石構造体を作動させるが、一般には、コイルは一対だけが常に1つの状態にだけ作動される。本発明のこの観点に係る装置はまた、検出空間内で可動のセンサを有するのが好ましく、センサは、センサに対して少なくとも2つの、好ましくは3つの、互いに直交する局部方向の磁場成分を測定するように配設される。かくして、センサは、コイル対が上記した均質場状態にあるときには局部方向の均質場局部成分を測定し、更に、センサは、コイル対が上記グラジェント場状態にあるときにはセンサに対して局部方向のグラジェント場局部成分を測定する。
【0017】
本発明のこの観点に係る装置はまた、均質場局部成分から対軸線に対するセンサの配向を決定するとともに、均質場局部成分およびグラジェント場局部成分から検出空間内のセンサの位置を決定する計算手段を備えている。最も好ましくは、制御手段は、磁石手段が検出空間において場を提供しない非動状態に磁石手段を置くように構成され、計算手段は、磁石手段がオフ状態にあるときに検出空間により測定される上記局部方向の磁場成分のベースライン値を登録するように構成される。かくして、計算手段は、磁石手段が他の状態にあるときには、ベースライン値を差し引くなどして、測定された局部成分を補正するように構成される。
【0018】
望ましくは、上記装置において使用されるセンサは、最大寸法が約5mm未満、好ましくは約1mm未満の磁気感知即ち感応素子を有する。最も好ましくは、センサ全体は、長さを約3mm以下、該長さと交差する方向の幅寸法を約0.75mm以下とすることができる。即ち、センサは、3.0mm3 以下、より望ましくは2.0mm3 以下の容積を有する空間に配置することができる。好ましくは、センサは、カテーテル、内視鏡などのような人間の患者の身体内に配置されるようになっているプローブのごときプローブに取着される。例えば、プローブは、基端部と先端部とを有する細長い構造体を組み込むことができ、センサは、先端部が身体に挿入されたときに先端部の位置および配向を測定することができるように先端部に取着することができる。
【0019】
装置は更に、プローブの表示が患者の身体内のプローブの位置に対応する身体の画像上の位置で重畳されるように、患者の身体の画像を重畳されるプローブの表示とともに表示する重畳手段を備えることができる。重畳手段は、磁石手段の基準方向により画成される基準フレームとは異なる身体画像基準フレームの身体画像を表示する身体画像データを受ける手段と、身体画像基準フレームと磁石手段基準フレームとの間の関係を示す関係データを受ける手段と、共通の基準フレームにおいてプローブ位置データおよび身体画像データを得るように磁石手段基準フレームにおけるプローブの位置、身体画像データまたはこれらの双方を変換する手段とを有することができる。装置は、1つ以上の基準マーカと、重畳手段により表示されるべき画像が各基準マーカの画像を含むように患者の身体に前記各基準マーカを取着する手段とを組み込むことができる。本発明の装置はまた、磁石手段基準フレームにおける各基準マーカの位置を決定する手段を含むことができる。特に好ま構成においては、各基準マーカは磁場成分を測定するセンサを含み、計算手段は、基準マーカのセンサにより測定される磁場から各基準マーカの位置と配向を決定するように構成されている。かくして、関係データは、所要の場合には、磁場測定値から得られる各基準マーカの位置および配向と画像データに示されるような基準マーカの位置および配向との差に関するデータを含む。
【0020】
本発明の更に別の観点によれば、検出空間におけるセンサの位置および配向を測定する方法が提供されている。本発明のこの観点に係る方法は、検出空間において複数の磁場を形成する工程を備えており、各磁場は上記したような1つ以上の擬線形成分を有する。所望の場合には、複数の磁場は、検出空間を通じて第1および第2の方向に略均一な大きさの非ゼロ成分を有する第1および第2の均質磁場を含むとともに、所定の変化パターンで変化する第1および第2のグラジェント場を含む。装置に関して上記したように、検出空間に配置されたセンサは、これらの各場の印加の際にセンサに対して少なくとも2つ、好ましくは3つの異なる局部方向の磁場成分を測定する。均質な場の基準方向に対するプローブの配向は、均質場の印加の際にセンサにより測定される均質場局部成分から測定され、グラジェント場の基準方向のプローブの位置は、均質場局部成分と、第1および第2のグラジェント場の印加の際に測定されるグラジェント場局部成分とから決定される。
【0021】
本発明のこの観点に係る方法は、装置に関して上記したのと同様の利点を提供することができる。最も好ましくは、この方法は、装置による全ての場の発生を停止させるとともに、地球の磁場、漂遊磁場などからのような成分を検出するようにセンサを作動させる工程を含む。このベースライン成分データは、センサにより取得される他のデータを補正するのに使用することができる。最も好ましくは、センサは、上記したような小形のセンサであり、生存する被験者に挿入されるプローブに取着される。プローブの画像は、X線、MRIまたはCAT画像のような被験者の画像に重畳することができる。
【0022】
本発明の別の観点によれば、生存している被験者内の監視プローブの位置を表示する方法が提供されている。本発明のこの観点に係る方法は、被験者に対して固定された位置に少なくとも1つの基準マーカを配設する工程と、基準マーカの表示を含む被験者の画像を取得する工程とを含む。この方法は更に、基準マーカおよび監視プローブへ送られまたは基準マーカおよび監視プローブから送られる磁場を測定することにより、共通の基準フレームにおける各基準マーカおよび監視プローブの位置を決定する工程を含み、これにより基準マーカに対する監視プローブの位置を知ることができる。望ましくは、本発明のこの観点に係る方法は、磁場により測定されるような、基準マーカに対する監視プローブの位置に対応する基準マーカの表示に対する位置において、被験者の画像に監視プローブの表示を重畳する工程を含む。これらの方法は更に、磁場における共通の基準フレームにおいて監視プローブと基準マーカの配向を決定する工程と、被験者の画像に重畳された監視プローブの重畳された表示を配向させる工程を含み、従って、重畳された画像における基準プローブの表示に対する監視プローブの表示の配向は、基準プローブに対する監視プローブの実際の配向に対応したものとなる。
【0023】
本発明の更に別の観点によれば、身体部分、手術器具などのような外科または医療処置において存在する要素を表示する方法が提供されている。本発明のこの観点に係る方法は、要素に対して実質上固定された位置にセンサを配設する工程と、要素が第1の配向状態にあるときに要素の画像を取得する工程とを備える。この方法はまた、プローブにまたはプローブから送られる磁場を監視することによりプローブの配向を監視する工程を備え、これにより要素が第1の配向とは異なる被動後の配向状態にあるときの要素の配向を監視することができる。この方法はまた、第1の配向状態にある要素の画像を被動後の配向状態にある要素の画像に変換するとともに、変換された画像を表示する工程を含む。好ましくは、監視、変換および表示工程は、要素が各被動後の配向状態にあるときに各被動後の配向に対応する変換された画像が実質上リアルタイムで表示されるように、要素が所定の範囲の被動後の配向状態を通して動かされるときに繰り返される。
【0024】
この方法は、複数の要素を用いて同時に実施することができる。かくして、別々のセンサを複数の各要素に固着することができるとともに、要素の画像を取得する工程は、それぞれの第1の位置における要素の全ての画像を取得する工程を含むことができる。センサの配向を監視するとともに、要素の配向を決定する工程は、全てのセンサの配向を監視するとともに、各要素に関して別々の被動後の配向を決定する工程を含むことができる。画像を変換する工程は、各要素の画像をそれぞれの被動後の配向状態にあるこの要素の画像に変換する工程を含むことができる。表示工程は、変換された画像の全てを同時に表示するように実施することができるので、変換された画像の互いに対する配向を要素の互いに対する配向に対応させることができる。例えば、要素が骨格の関節において互いに接続された骨である場合には、医師は骨の変換された画像を監視することができ、かくして、骨が動かされたときに、医療処置の際の関節構成要素の相対的な配向を、別のX線処置を行なうことなく監視することができる。
【0025】
好ましくは、この方法は、要素がそれぞれ当初の配向状態にあるときおよび要素がそれぞれの被動後の配向状態にあるときに、固定された基準フレームにおける各センサの位置を決定する工程を含み、従って、画像を変換しかつ表示する工程は、表示され変換された画像の互いに対する位置を調整して、要素の相対的な動きを補償することができる。かくして、表示された画像は、要素の互いに対する位置を正しく表示するものとなる。
【0026】
本発明の更に別の観点によれば、生存している被験者の身体内の生理学的因子をマップ処理する(map)方法が提供されている。本発明のこの観点に係る方法は、プローブを身体内または身体に配置する工程と、プローブの変換器素子により生理学的因子を検出する工程と、プローブの磁場センサへまたは磁場センサから向けられる磁場を監視することによりプローブの位置を決定して、位置に関連する生理学的因子の測定値を得る工程とを含むのが望ましい。最も好ましくは、本発明のこの観点に係る方法は、上記工程を繰り返して複数の位置に関する複数の測定値を得ることにより、複数の位置に亘る生理学的因子のマップを提供する工程を更に含むことができる。この方法は更に、他の画像処理により得られる他の特徴とともに、あるいはかかる特徴とは離れて、可視画像のようなマップを、例えば、一組の輪郭線、異なる色彩の領域またはコントラストが異なる領域として表示する工程を含むことができる。例えば、体温、酸素レベルその他の生理学的因子のマップを、MRI、CATその他の画像に重畳することができる。
【0027】
本発明の更に別の観点によれば、場基準フレームに1つ以上の磁場を発生させて、かかる磁場の少なくとも1つが場基準フレームにおけるある位置からある位置までの距離に対して擬線形をなす少なくとも1つの非ゼロ因子を有するように構成された手段を備える装置が提供されている。本発明のこの観点に係る装置は更に、患者の身体内に配置されるようになっているプローブと、患者の身体にプローブが配置されているときにプローブにおいて作用する磁場を監視するとともに、このように監視されている場の少なくとも1つの因子を示す信号を送るようにプローブに取着されたセンサとを備える。装置は更に、プローブが患者の身体内に配置されているときに場センサ手段により得られる信号から場基準フレームにおけるプローブの位置を決定する計算手段を備えるのが望ましい。この装置はまた、プローブの表示が、計算手段により得られるプローブ位置データに対応する身体画像上の位置において表示された画像に重畳されるように、プローブの表示とともに患者の身体の画像を表示する重畳手段を備えることができる。望ましくは、プローブは、基端部と先端部を有する細長い構造体を備え、磁場センサ手段は細長い構造体の先端部において作用する磁場を監視するように動作する。かかる装置は、例えば、内視鏡外科処置をはじめとする内視鏡処置において使用することができる。本発明の更に別の観点によれば、上記したような装置を操作する方法が提供されている。
【0028】
本発明の更に別の観点によれば、磁気センサ、磁気および生理学組み合わせセンサ、並びに、これらのセンサを製造する方法が提供されている。本発明のこの観点に係るセンサは、シート状支持体と、複数の磁気感応素子とを備えることができ、各素子は所定の感応方向を有し、支持体に配置される。支持体は、磁気感応素子が非共面となるように折り曲げられる。支持体は、矩形または方形の中央パネルを、中央パネルの異なる縁部からいずれも延びて略十字形状を形成する2つの側部パネル、先端パネルおよび細長いストリップとともに有することができる。感応素子は、種々のパネルに取着することができ、パネルは誘電コアに折り重ねることができる。センサは、生理学的因子に感応性を有する生理学因子感応素子を組み込むのが最も好ましく、この感応素子は磁気感応素子と同じ支持体に取着される。装置全体は著しくコンパクトになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の一の実施例に係る装置は、検出即ち患者収容空間を実質上包囲するフレーム構造体30を備えている。フレーム構造体30は、3対のヘルムホルツコイル34、36および38がそれぞれ互いに直交する3つの対軸線X、YおよびZに互いに軸線を共通にして即ち共軸をなして配置されるように、これらのコイルを支持している。かくして、交差するこれらの対軸線は、検出空間の中心に原点39を有し、かつ、X、YおよびZ軸のそれぞれに沿って原点から正および負の方向を有する通常の直角座標を画成している。各対をなすコイルは、検出空間32の対向する側に配置されている。コイルはいずれも円形で、直径が等しく、かつ、同じ巻数を有している。各対をなす2つのコイルは、互いに同じ方向に巻回されている。かくして、X軸に沿って配置された各コイル34は、X軸を中心に、X軸の正の端部から見て右手即ち反時計廻り方向に巻回された巻線を有している。コイル間の間隔は、図1の図示を明確にするように誇張されている。好ましくは、対をなす軸線に沿って測定した対をなすコイル間の間隔は、各コイルの直径の約0.5乃至約1.4倍である。均一な場を提供するとともに、略線形のグラジェントを有する場を提供するヘルムホルツコイルの構成の態様が、アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジックス、第54(7)巻、第666−667頁(1986年)に掲載の「小形双極子を磁気駆動するようにしたヘルムホルツコイルの構成」と題するピー・ルーカスの論文に記載されており、本明細書においては、この論文を引用してその説明に代える。コイルは、フレーム30とともに、生存している患者の身体部分を検出空間32に挿入することができるように構成配置されている。フレームは、種々のコイルと共軸をなす開口40を有しており、患者の身体をかかる開口40の1つを介して検出空間32に挿入することができるとともに、患者が検出空間内に入っているときに医師が他の開口を介して患者にアクセスすることができるようにするのが望ましい。フレームは、剛性材料から実質上構成することができる。誘電材料は磁場が変化したときに渦電流を形成しないので、誘電材料が好ましい。フレームは、種々のコイルとフレーム素子との間にクイックリリースまたは破断自在の接続部を有することができる。これにより、医師は、全く妨害されない患者へのアクセスを必要とする緊急の場合に、コイルおよびフレームを患者から遠ざけることができる。
【0030】
コイルはいずれも、コイルドライバ42に接続され、このドライバは出力インターフェース44を介してコンピュータ46に接続され、コンピュータ46からの出力を受けるようになっている。コンピュータ46は、ワークステーションまたは専用コンピュータと一般に云われているタイプのデジタルコンピュータとすることができる。出力インターフェース44は、コンピュータからの指令を受けるとともに、各指令に応答してコイルドライバ42を駆動するように構成されている。コイルドライバ42は、従来のDC電源47と、インターフェース44を介してコンピュータ46により指令されたときに順配位(forward configuration)または逆配位で各対をなすコイルを電源47に接続する、参照番号48で概略示されている従来の切換装置とを有している。順配位の場合には、コイルは、この対をなすコイルの双方を通る電流が、対軸線を中心に同じ方向に流れるように直列援用(series−aiding)構成で接続されている。例えば
、X軸コイルセットのコイル34が順即ち直列援用配位にあるときには、双方のコイルを通る電流がX軸の正の端部から見てX軸を中心に反時計廻り方向に流れるように直列に接続される。対をなす2つのコイルが逆配位にあるときには、コイルは電流が直列をなす双方のコイルを通るが、対をなす2つのコイルにおいて軸線を中心に反対方向に流れるように、直列対向で接続される。電流は、一方のコイル34においてはX軸を中心に時計廻り方向に流れるが、他方のコイル34においてはX軸を中心に反時計廻り方向に流れる。
【0031】
装置は更に、患者監視プローブ50を有する。監視プローブ50は、基端部54と、患者の身体に挿入されるようになっている先端部56とを有する細長い本体52を有している。図示の特定の実施例においては、プローブ本体52は、従来の内視鏡53の内部に嵌挿されるようになっている細長くて柔軟なシャフトを有しており、シャフトは身体に導入することができるようになっている。内視鏡53は、手術器具、流体などを患者の身体に導入することができるように、これらを案内する1つ以上の孔または通路を有している。かかる孔または通路は、内視用手術器具その他の治療装置または物質を通すのに使用することもできる。あるいはまたは更には、プローブ本体52または内視鏡53は、ビデオカメラおよび繊維光学束のような、端部56を包囲する組織の局部画像を提供する公知の電気、光学または電気光学装置を含むことができる。内視鏡は、流体を導入しおよび/または引き出し、電気または電気光学装置によりチップを包囲する組織を観察し、更に身体に挿入されるプローブを介して広く行なわれる他の従来の医療処置を行なうように従来の医療治療装置58に接続することができる。
【0032】
センサ60は、先端部56に隣接してプローブ本体52に取着されている。図2に明瞭に示すように、センサ60は、複数の平面検出素子62、64および66を有している。素子62は、共通のセンサ軸線X’と直交して配置されている。かくして、センサのX’軸上を延びる図2に示すベクトルX’は、平面検出素子62と直交している。同様に、素子64はセンサのY’方向と直交し、素子66はZ’方向と直交している。方向X’、Y’およびZ’は、互いに直交し、従って、素子62、64および66の面も互いに直交している。各検出素子は、この検出素子が該特定の検出素子の面と直交するセンサに近接する磁場の成分と比例する出力電圧を発生するように、ホ−ル効果を有する材料を内蔵している。かくして、検出素子62は、表面に砒化インジウム、砒化ガリウムなどのような電流磁気材料の薄膜を有するとともに、該膜の2つの対向する縁部に接続された一対の励起リード68と、残りの縁部に接続された一対の出力電圧リード70とを有している。動作においては、電流が縁部68間を通され、かつ、磁場がセンサに近接して存在すると、センサの表面に直交する場の成分に比例する電圧がリード70間に現われる。即ち、Bが局部磁場のベクトルであり、X’が素子62に直交するセンサの軸線に沿ったX’のベクトルである場合には、素子62からの出力電圧V062 は、
062=K(B・X’)+VI62
である。
【0033】
上記式において、V062は出力電圧であり、Kは比例因子であり、VI62 は印加される磁場が零である場合の素子62からの出力電圧である。素子64は、同様のリード(図示せず)を有するとともに、出力電圧
064=K(B・Y’)+VI64
を同様に発生する。
【0034】
上記式において、V064は素子64からの出力電圧であり、Y’はY’方向の単位ベクトルであり、VI64は印加磁場が零である場合の素子64からの出力電圧である。同様に、素子66は出力電圧V066
066=K(B・Z’)+VI66
を発生する。
【0035】
上記式において、Z’はZ’方向の単位ベクトルであり、VI66は印加磁場が零である場合の素子64からの出力電圧である。センサはプローブ本体52の先端チップ56内に配置されているので、センサ60の位置と配向は、フレーム構造体30とコイル34−38のX、YおよびZ基準方向に対して固定されない。かくして、センサの局部軸X’、Y’およびZ’は、コイルとフレーム構造体のX、YおよびZ軸に対して任意に配向することができる。
【0036】
リード68および70並びに他の検出素子(図示せず)に連係する他のリードをはじめとするセンサ60のリードは、プローブの本体52を介して延びるケーブル75を介して駆動および増幅装置72(図1)に接続されている。駆動増幅装置72は、適宜の励起電圧をセンサ60の素子に印加するとともに、種々の検出素子の出力電圧V066、V064、V062を増幅するように配設されている。駆動増幅装置72はアナログ/デジタル変換器に接続され、変換器はコンピュータ46の入力部に接続されている。接続は1つだけが図示されているが、変換器74はマルチチャンネル装置であり、センサ60の検出素子の全てからコンピュータ64への全ての出力信号のデジタル表示を配給する多数の接続部および/または多重化構成体を有している。
【0037】
装置は更に、センサ80とマーカ本体78を組み込んだ基準マーカ76(図1)を備えている。マーカ本体78は、患者の身体部に対して実質上固定された位置において患者の身体部に取着されるようになっている。かくして、マーカ本体78は、該本体を患者の頭部、四肢または胴の外部に固定するためのクランプ、バンド、リングまたはストラップを有することができる。あるいはまたは更には、本体78は、縫合糸、ピン、手術用ステープルその他の留め装置を受ける孔またはノッチを有することができる。基準マーカの本体はまた、従来の手術用接着テープ、包袋などで患者の身体に留めることができる。マーカ本体78のような基準マーカの少なくとも一部、センサ80またはこれらの双方は、X線、磁気共鳴画像形成法(「MRI」)、コンピュータ化体軸断層撮影法(「CAT」)その他の広く利用されている画像処理法のような患者の画像処理技術において検出可能な材料から形成される。基準マーカのセンサ80は、監視プローブ50のセンサ60と実質上同じである。センサ80は、駆動および増幅装置82に接続され、装置82はアナログ・デジタル変換器84を介してコンピュータ46に接続されている。装置82と変換器84は、駆動増幅装置72およびアナログ・デジタル変換器74と同じである。
【0038】
本発明の装置は更に、患者、即ち、患者の身体部分の画像をデジタルの形態で記憶する画像記憶装置86を有している。一般に、画像記憶装置86は、従来のコンピュータメモリ装置を有している。画像入力装置88も設けられている。入力装置88は、X線装置、MRI、CATまたはビデオ装置のような適宜の画像処理装置からデジタル形態で画像を受けるとともに、入力された画像を画像記憶装置86に移送する、ディスクドライブ、データ通信リンクなどのような従来のデジタルデータ入力装置を備えることができる。表示モニタ90がコンピュータ46に結合されている。表示モニタ90には、ノブ92、94および96のような手動入力装置が装備されているとともに、これらのノブの設定をコンピュータに連絡することができるようにコンピュータ46に結合されている。データ入力装置は更に、マウス、トラックボール、ジョイスティックまたはキーボードを有することができる。
【0039】
本発明の一の実施例に係る方法においては、頭部のような患者の身体部分が、MRI、CAT、X線などのような従来の画像処理装置を使用して画像処理されるとともに、基準マーカ76がこの身体部分に取着される。かくして、このようにして知得された画像データは、基準マーカの表示を含む。この場合には、実施例の方法のこの段階では、基準マーカ全体を患者の身体に取着することは重要ではない。かくして、磁気センサ80がマーカ本体78から取り外される場合およびマーカ本体78を使用される画像処理法により視認化することができる場合には、センサ80は、本方法のこの段階でマーカ本体との接続から外すことができる。更に、基準マーカのセンサは、本発明の方法のこの段階で装置の残りの部分から取り外すことができる。実施例の方法のこの段階においては、患者は、フレーム30または画像処理空間32内に配置する必要はなく、一般には、配置されない。多くの場合、患者は全く別の部屋または施設において画像処理を受ける。この画像処理工程の後に、基準マーカは方法の残りの工程全体を通して患者の所定の位置に残される。基準マーカ76の表示を含む患者の身体部分を示す画像データは、入力装置88を介して画像記憶装置86に移送される。画像データは、1つの面の画像、より望ましくは、複数の面の画像即ち身体部分の一部を組み込んだ完全な3次元空間全体に亘って放射線不透過または磁気共鳴活性を有するマップのような完全な3次元画像を含むことができる。画像データは、個々のデータ要素が画像の絵表示に表示されるべき密度または色彩を表示する出力データとして記憶することができる。あるいは、画像は、絵表示を再構成することができる磁気共鳴信号または未処理の断層撮影データの時間領域、あるいは周波数領域表示のような入力データの形態で記憶することができる。
【0040】
本方法の次の段階において、患者の身体は検出空間32内に配置される。プローブ50は、医療技術の分野の通常の技術を使用して患者の身体の中へ挿入される。コンピュータ46は、コイルを所定の繰返しシーケンスで動作させるようにコイルドライバ48を作動させる。シーケンスは、全てのコイルがオフされ、かつ、検出空間32の磁場が地球の磁場、付近の物体からの漂遊磁場などのような外部源により導入される磁場である場合の空(null)状態を含む。更に、シーケンスは、各組のコイルについての順段階即ち均質場段階を含む。各セットのコイルが双方のコイルに同方向の電流が流れる上記した直列援用形態において順段階で駆動されている場合には、このセットはその軸線に沿って配向される実質上均質な単方向の磁場を提供する。例えば、順状態にあるX方向のコイル34は、検出空間の中心位置即ちX、YおよびZ軸の原点即ち交点39に隣接して、X軸と平行する方向をなしかつ検出空間32の中央領域を通して略同等の大きさを有する束から実質上なる場を提供する。多くの場合、場は、原点から延びかつコイル間の距離の約62%を包囲するとともに、コイルの直径の約25%に等しい距離だけ軸線から側部外方へ延びる領域に亘って約1%以内に均質である。これら3つのコイルは、かかるシーケンスにおいて異なる時間に別々に作動されるので、所定の時間では、1つのコイルセットだけが順モードで活動状態にある。
【0041】
シーケンスはまた、各コイルセットのグラジェント形態即ち逆形態の作動モードを含む。逆モード即ちグラジェントモードにおいては、電流が各セットの2つのコイルに逆方向に流れ、各コイルセットが発生する場は、コイル間を軸線に沿って方向づけられ、かつ、この軸線に沿って略線形の均一なグラジェントを有する成分を含む。例えば、X方向のコイル34がグラジェントモードで作動される場合には、場は、図3、4および5に示す形態を有する。図3において、Rは、X方向即ちX軸と平行をなす逆即ちグラジェント磁場の成分である。図3に示すように、この成分は、検出空間の一方の端部に低い負の値を有する。X方向の成分Rは、Xの値の増加とともに単調にかつ直線状に増加し、X=0即ち原点39において0を通過する。X軸に沿った所定の位置におけるX方向の成分の値即ち大きさは、YおよびZの場合と同じである。RはかくしてXだけの関数であり、YおよびZに対して一定である。
【0042】
X軸コイル34が発生する逆即ちグラジェント場はまた、X軸と直交するラジアル(radial)成分を有する。ラジアル成分は、X軸を中心に対称であり、X軸から離れる方向を向いている。ラジアル成分は、Y方向成分およびZ方向成分に分解する。図4に示すように、Xコイル34が発生する逆即ちグラジェント場のY方向成分RはYとともに単純に変化し、Y=0即ちX−Z面で0に達する。Xコイルの逆即ちグラジェント場のZ方向成分Rは、同様の形態を有する(図5)。かくして、RはZに比例する。R対Yの比例定数即ち勾配は、R対Xの比例定数の約3分の1である。同様に、R対Zの比例定数即ち勾配もまた、R対Xの比例定数の約3分の1である。
【0043】
図3、4および5に関する上記説明は、X軸コイル34が発生する1つの逆即ちグラジェント場の種々の成分についてのものである。Y軸コイル36およびZ軸コイル38が発生する逆即ちグラジェント場は、同じ形態を有するが、異なる軸線に沿っている。かくして、Y軸が発生する逆即ちグラジェント場は、Yの値の増加とともに単調に増加する(とともに、+Y方向へY軸に沿って変位が大きくなり)、Yの所定の値においてXまたはZとともに実質上変化しない成分Rを有する。この成分はまた、Y=0点即ち原点39において、かつ、X−Y面に沿って約0の値を有する。同じY軸グラジェント場は、Y軸に直交するラジアル成分を有する。ラジアル成分は、Xに比例するX方向の成分と、Zに比例するZ方向の成分とに分解する。XおよびYの距離を有するXおよびZ成分の比例定数はそれぞれ、Y距離を有するY成分の比例定数の約3分の1である。
【0044】
同様に、Z軸コイル38によって得られる逆即ちグラジェント場は、Zとともに単調に変化し、かつ、原点(Z=0)において約0に達するZ方向成分を有し、この成分は、検出空間32の中央領域内においてXおよびYに関して一定である。コイル38が発生する逆即ちグラジェント場は、Xに比例するX方向成分と、Yに比例するY方向成分とを有し、これらの比例定数はいずれも、Z方向の成分の比例定数よりも小さい。
【0045】
逆即ちグラジェント場の場合にも、個々のコイルセットは、互いに異なる時間に別々に作動されるので、いずれの所定の時間にも1つのコイルセットだけが作動されるとともに、いずれのコイルセットともグラジェント場モードでは作動せず、別の組は均質モードにある。種々の動作がサイクルとして繰り返される。各サイクル内の特定のシーケンスは重要ではない。かくして、各サイクルにおいては、それぞれの均一な場を形成するように各コイルセットを作動させ、次いで、逆即ちグラジェント場を形成するように各コイルセットを作動させ、その後、全てのコイルを非活動状態とする。あるいは、シーケンスは、X方向コイルを作動させて均一な場を形成し、次いで、逆即ちグラジェント場を形成し、更に、YおよびZコイルセットを同様の作動させるとともに、全てのコイルセットの作動を止めるというパターン、あるいはこれらのパターンの任意の組み合わせを含むことができる。しかしながら、コンピュータ46は、シーケンスにおける各時点のコイルの作動を記録するので、センサ60および80からの入力データを特定のコイルセットの作動と連係させることができる。各シーケンスに要する時間が約10乃至約100ミリ秒となるように、シーケンス全体が素早く繰り返される。
場がシーケンスにおいて切り換えられると、コンピュータ46は、各場を示す信号が各切換サイクルの所定の取得時間に取得されるように、センサ60および80からのデータの取得を制御する。かくして、各コイル対が特定のモードでオンに切り換えられると、このコイル対が発生する場の大きさは、式
=M(1−e(−t/tau)
に従って一定値まで指数関数的に上昇する。上記式において、tは時間、Mは時間tにおける瞬時の場の大きさ、Mは定数即ち定常状態の大きさ、tauはコイルセットのインダクタンスに比例しかつ直列抵抗に逆比例する時定数である。取得時間は全ての切換えサイクルについて同じであるので、取得時間における瞬時の場の大きさMi は常に、定常状態の場の大きさMの一定の割合である。例えば、切換えサイクルの開始と取得時間との間の遅れは、時定数tauの1倍に等しく、即ち、実質上定常状態に達するのに必要とされる遅れ時間の約20パーセントである。この構成においては、各サイクルにおける獲得時間における瞬時の場の大きさは、定常状態の値の約63パーセントである。各切換えサイクルは終了させることができ、しかも新しい切換えサイクルは獲得時間の直後に開始されるので、かかる構成は、各コイル対がデータの取得前に定常状態に入ることができる別の構成の場合と比べて、単位時間当たりの測定を一層多くすることができる。このスキームの変形例においては、取得時間はコイルセットを流れる瞬時電流を監視することにより制御することができる。このシステムは、作動状態にある特定のコイルセットの瞬時電流が平衡電流よりも低いのが好ましい所定のトリガ値まで上昇すると、各サイクルにおいてセンサ60および80かデータを取得するように構成されている。かかる構成の場合にも、センサのデータサンプルは、サイクル間で一貫した場の大きさで得られる。コイルは繰り返し作動されるが、信号はセンサ60および80から得られ、増幅され、デジタル化されて、コンピュータ46に供給される。この信号は、X、YおよびZ座標系の検出空間32内において、センサおよび取着プローブの配向および位置を確認するのに使用される。各サイクルの各段階において、コンピュータはセンサ60のX’、Y’およびZ’方向の場の成分を示すデータを取得するので、各コイルの作動の際にこのような各局部方向の場の別のデータエントリがある。各データエントリは、同じサイクルにおけるコイルがオフの状態即ち空場状態の対応するデータエントリを差し引くことにとり補正される。例えば、X’方向の場を与える素子62の読みは全て、空場状態にあるときに取得されるX’方向の場成分の値を差し引くことにより補正される。これにより、コイルにより印加される場以外の場の影響が取り除かれる。センサの読みの「空補正」(”null−corrected”)値についての以下の説明は、このようにして補正される値について云うものである。均質場の発生の際に取得されるセンサの読みの空補正値は、「Hm,n」とされ、mはどの検出素子が値を取得したかを示し、nは値の取得の際にどのコイル対が均質場を発生させたかを示す。表示を下記の表Iに示す。
【0046】
表I
均質な場に関する検出素子の読み
X Y Z
検出素子 コイル対 コイル対 コイル対
X’−62 Hx’x’,y Hx’,z
Y’−64 Hy’y’,y Hy’,z
Z’−66 Hz’z’,y Hz’,z
【0047】
かくして、均質場の全てにおいて取得される値は、3x3マトリックスを形成する。これらの値は、各値を、特定の対が発生する束の大きさ、即ち、コイル対により印加される全束ベクトルの大きさで割ることにより正規化される(normalized)。この大きさは、個々のセンサの読みの二乗の合計の平方根である。
【0048】
Hx=sqrt[(Hx’,x2+(Hy’,x2+(Hz’,x2]
Hy=sqrt[(Hx’,y2+(Hy’,y2+(Hz’,y2]
Hz=sqrt[(Hx’,z2+(Hy’,z2+(Hz’,z2]
【0049】
上記式において、Hは、均一な場の作動の際にX軸のコイルセット34により印加される磁束の大きさであり、Hy2およびHz3は、Y軸のセット36およびZ軸のセット38によりそれぞれ印加される束の同様の大きさである。上記式において、「sqrt]は括弧内の値の「平方根」を意味し、2は先行する値の二乗を意味する。これらの大きさは、正規化された値をコンピュータ処理するのに使用される。即ち、所定の均質場作動の際に得られる各センサの読みは、かかる作動の際に発生される束の大きさにより除される。
【0050】
H’x’,x=Hx’,x/HH’x’,y=Hx’,y/HH’x’,z=Hx’,z/H
H’y’,x=Hy’,x/HH’y’,y=Hy’,y/HH’y’,z=Hy’,z/HH’z’,x=Hz’,x/HH’z’,y=Hz’,y/HH’z’,z=Hz’,z/H
【0051】
センサの配向、即ち、フレーム30とコイルセットのX、YおよびZ軸に対するセンサのX’、Y’およびZ’軸の角度は、正規化された値から直接定めることができる。これらの値のいずれよりも小さい値が、均質な場の全てから配向を算出するのに必要とされる。この系は、算出に使用される最大の大きさを有する値の組、従って、最大の信号対ノイズ比を選択する。
【0052】
コイルのX、YおよびZ座標系に対するセンサの配向は、数多くの態様で表わすことができる。しかしながら、この配向は、ピッチ(pitch)、ロール(roll)およびヨー(yaw)と呼ばれる3つの角度で表わすのが好ましい。これらはいずれも、センサのX’、Y’およびZ’局部方向が、コイル系のX、YおよびZの基準方向と整合する、仮想の「ホーム」即ち零位置を云うものである。ピッチは、センサのZ’局部方向とZ基準方向との間の角度93(図2)である。これは、
ピッチ=arccos(H’z’,z
として算出される。ヨーは、X−Y面におけるセンサのZ’軸の投影とY基準方向との間の角度94である。これは、
ヨー=arctan(H’z’,x/H’z’,y
として算出される。この表示において、ヨーは零ピッチ状態に関しては不確定である。ロールは、センサの局部方向X’と系の基準Z方向との間の角度95として定義される。これは、
ロール=arctan(H’y’,z/H’x’,z
として算出することができる。任意の他の内部的に一致した角度の組を使用して、配向を特定することができる。更に、センサの配向は、X、YおよびZ基準座標系に基づいてセンサの局部座標系のいずれか2つのベクトルを特定することにより十分に特定することができる。単なる一例として、
X’=i(Hx’,x)+j(H’x’,y)+k(H’x’,z
があり、該式において、X’はX’方向の単位ベクトルであり、i、jおよびkは、X、YおよびZ基準方向の単位ベクトルである。
【0053】
系はまた、グラジェント場の印加の際に取得されるセンサの読みを表わすデータを取得する。上記した均質な場の発生の際に取得されるデータの場合と同様に、グラジェント場のデータは、各センサの空場の値を差し引くことにより補正される。補正された値は、センサの読みを表わすデータ、従って、異なるコイルセットによりグラジェント場の印加の際の特定のX’、Y’およびZ’方向の場成分として捉えられる。かくして、下記の表IIに示すように、Rx’,xはX’センサの読み、従って、X軸コイルが逆即ちグラジェント場モードで作動しているときのセンサ60のX’局部方向の場成分を示し、Rx’,yはY軸コイル対のグラジェント場作動の際のX’局部方向の同様の成分を示す。以下同様である。
【0054】
表II
X Y Z
検出素子 コイル対 コイル対 コイル対
X’−62 Rx’,x x’,y x’,z
Y’−64 Ry’,x y’,y y’,z
Z’−66 Rz’,x z’,y z’,z
【0055】
グラジェントモードでの各コイルセットの作動の際にセンサ60の全束ベクトルの大きさは、コンピュータ46により次の通り算出される。
|Bx|=sqrt[(Rx’,x2+(Ry’,x2+(Rz’,x2]
|By|=sqrt[(Rx’,y2+(Ry’,y2+(Rz’,y2]
|Bz|=sqrt[(Rx’,z2+(Ry’,z2+(Rz’,z2]
【0056】
上記式において、|Bx|は、グラジェント即ち逆モードにおけるX軸コイルセット34の動作の際のセンサの束の大きさであり、|By|はY方向コイルセット36のグラジェント場作動の際のセンサ60の束ベクトルの大きさであり、|Bz|はZ方向コイルセット36の作動の際のセンサの束ベクトルの大きさである。
【0057】
各グラジェント場の全束ベクトルの大きさは、グラジェント場のセンサの読みRx’,x・・・Rz’,zから上記のように容易に算出することができるが、コイルにより画成されるXYZ基準座標系におけるグラジェント場束ベクトルの方向は、これらの値だけからは確認することができない。かくして、Rx’,x・・・Rz’,zの値は、センサのX’、Y’およびZ’局部方向の成分を表わす。正規化された均質場の値H’11・・・H’33は、各コイルセットのグラジェント場成分の値に関して使用されて、各コイルセットの軸線に対するこのコイルの全グラジェント場ベクトルの投影を導き出し、かくして、このグラジェント場を形成するように作動されたコイルセットの軸線のグラジェント場ベクトルの成分を引き出す。
【0058】
先づ、系は、全グラジェント場ベクトルと同じコイル対が発生する正規化された単位大きさの均質場ベクトルとの間の差ベクトルの大きさをコンピュータ処理する。例えば、図6に示すように、系は、グラジェントモードにあるX軸コイルセットの作動の際の全束Bx と均質場モードにあるX軸コイルセットの作動の際の束の方向の単位ベクトルを示す正規化された単位長ベクトルH’xとの間のベクトル差を示す差ベクトルdxの大きさをコンピュータ処理する。後者の方向がコイルセットのX軸に沿っているのは当然である。センサのX’、Y’およびZ’座標系の差ベクトルの成分は、グラジェントモードにあるXコイルセットの作動の際に取得されるグラジェント場センサの値Rx’,x、Ry’,x、Rz’,xおよび均質場モードにある同じコイルセットの作動の際に取得される正規化された均質場センサ値H’x’,x、H’y’,x、H’z’,xから直接算出することができる。かくして、
|dx|=sqrt[(Rx’,x−H’x’,x2+(Ry’,x−H’y’,x2+(Rz’,x−H’z’,x2]
となる。
【0059】
上記式において、|dx|は、差ベクトの大きさである。グラジェント場全束ベクトルBxの単位ベクトルH’xの大きさと差ベクトルdxの大きさがいずれも既知である場合には、これらのベクトル間の角度は、余弦則を適用することにより算出することができる。特に、グラジェントモードにあるH方向のコイルセットの作動の際のセンサの全グラジェント場ベクトルBxと単位ベクトルH’xとの間の角度Txは、
Tx =arccos[(1+|Bx|2−|dx|2)/(2*|Bx|)]
として算出することができる。
【0060】
X軸コイルセットが発生する均質場は磁束がX軸に沿って方向づけられているので、角度Txはグラジェント場全束ベクトルBxとX軸との間の角度を表わす。X軸基準方向のグラジェント場全束ベクトルの成分は単に、
=(|B|)cos(T
となる。これは、逆場モードにおけるX軸コイルセット34の作動の際のセンサ60におけるX方向の束の成分を表わす。上記したように、X方向コイルセットのこの動作の際の束の成分は、X方向の位置に実質上比例する(図3)。かくして、
X位置(mm)=(M)(R
となる。
【0061】
上記式において、Mは変換因子である。変換因子は、束RのX成分をX方向の距離に関連させる関数の勾配を示す。Mはまた、センサの種々の素子の感度と、種々の増幅チャンネルのゲインとが全てのセンサに関して同等であるとした場合に、これらの因子を考慮するように設定する(scale)ことができる。あるいは、別の感度設定因子を適用して、各検出素子から得られる電圧V062、V064、V066を磁束成分の実際の数値に変換することにより、別の設定因子を、異なる検出素子からの読みに適用することができる。
【0062】
差ベクトルおよび角度は、グラジェントモードにおけるY方向コイルセットの動作の際のセンサ60において検出される束ベクトルByのY軸成分Ryを引き出すとともに、Z軸コイルのグラジェント動作の際のZ方向のZ軸成分Rzを引き出すように、著しく類似した態様でコンピュータ処理される。差ベクトルの大きさは、
|dy|=sqrt[(Rx’,y−H’x’,y2+(Ry’,y−H’y’,y2+(Rz’,y−H’z’,y2]
および
|dz|=sqrt[(Rx’,z−H’x’,z2+(Ry’,z−H’y’,z2+(Rz’,z−H’z’,z2]
として算出される。
【0063】
上記式において、|dy|および|dz|は、Y軸およびZ軸コイルに関する差ベクトルの大きさであり、上記|dx|と同じ態様で算出される。角度TyおよびTzは、余弦則を使用して、Txと同じ態様で、
=arccos[(1+|By|2−|dy|2)/(2*|By|)]
および
=arccos[(1+|Bz|2−|dz|2)/(2*|Bz|)]
として算出される。Y方向およびZ方向の位置は、X方向の位置と全く同じ態様で、これらの成分および角度から算出される。かくして、
Ry=(|By|)cos T
Rz=(|Bz|)cos T
Y位置=(M)(R
Z位置=(M)(R
かくして、コイルが空、均質およびグラジェント状態を循環するたびに、コンピュータ46は、センサ60の位置と配向を再計算する。センサ60がプローブ本体52の先端チップ(tip)56に取着されているので、これらの計算により、プローブ本体の先端チップの位置および配向がわかる。
【0064】
上記説明においては、X方向の位置をX方向成分Rxの大きさに関連させる変換因子Mxは、YおよびZの全ての値について完全に一定でありかつ完全に均一であると想定されている。同様に、Y方向の位置をY方向磁束成分の大きさに関連させかつZ方向の位置をZ方向磁束成分の大きさに関連させる対応する変換因子も一定であるとされている。位置決定の精度は、検出空間における種々の位置の実際の変換因子のマップを得るように装置を較正することにより高められる。較正工程においては、各軸線方向の場の成分の実際の大きさは、該軸線に連係するコイルセットの逆即ちグラジェント場動作の際に、種々の既知の値のX、YおよびZで測定される。例えば、Y軸成分は、Y軸コイルセットのグラジェント場動作の際の既知の場所で測定される。各グラジェント場は、連係するコイルセットの軸線を中心に略対称をなしている。従って、較正測定値は、コイルセットの軸線を含む1つの面上の位置で得られ、同じ値がコイルセットの軸線を中心とする実際の測定位置の回転に対応する位置に適用されると想定することができる。測定された大きさは、既知の各位置において適用することができる実際の変換因子を得るのに使用される。同じデータが、較正において取得されるデータの全てに最もよく適合する所定の方向の1つの因子を見出すことにより、検出空間に全体として適用することができる各方向の平均変換因子を得るのに使用される。
【0065】
動作においては、センサのX、YおよびZ座標が、平均変換因子と、グラジェント場成分Rx、RyおよびRzの測定値とを使用して、第1の近似値として定められる。これらの第1の近似座標は、次に、方法の較正工程の際に測定値を得る最接近した位置の実際の変換因子間で補間を行なうことにより実際の変換因子を定めるのに使用される。得られた変換因子は、第2の近似座標を定めるのにグラジェント場成分Rx、RyおよびRzの測定値とともに使用され、第2の近似座標は較正データにおける補間による実際の変換因子の新たな値を定めるのに使用される。これらの工程は、近似値が、位置の最良の近似値を示す、種々の座標の一定値に収斂するまで繰り返される。
【0066】
全く同様にして、コンピュータは、基準マーカ76のセンサ80の検出素子から束成分の値を取得する。コイルの各サイクルにおいて、コンピュータは基準マーカの位置および配向も駆動する。
【0067】
コンピュータ46は、記憶装置86から患者の身体部分の画像を画成するデータを得る。先行する画像処理工程の際に得られた患者の身体部分の画像は、基準マーカ76の表示を含んでいるので、表示される画像Iは、基準マーカ76の絵表示102を含んでいる。コンピュータはまた、モニタースクリーン上の所定の場所に基準マーカ76の絵表示104を表示するようにモニター90を作動させる。表示104は、XYZ基準フレーム内の位置即ち磁場測定値から得られる基準マーカの位置に対応する位置に表示される。表示104の配向は、磁場測定値から定められる基準マーカの配向に対応するように設定される。基準マーカの表示104がモニタースクリーン上の同じマーカの表示102と整合する場合には、これは、患者の身体部分の画像が、XYZ基準座標系内の身体部分の位置および配向に対応するモニタースクリーン上の位置および配向で表示されていることを示すものである。
【0068】
表示工程の開始時には、患者の身体部分の画像Iは、多くの場合、不整合即ち位置ずれを生じている。かくして、画像に組み込まれている基準マーカの表示102は、位置および配向の磁気データから得られる基準マーカの表示104との整合から外れている。使用者は、適宜の入力を手動入力装置92、94および96に加え、表示102が表示104に重なるまで、かつ、これら2つの絵要素が互いに精確に整合するように、画像を変位させかつ回転させることにより画像を再配向させるように、コンピュータに手動で指示を与える。記憶された画像が身体部分を通る複数の面の画像即ち「スライス」を含む場合には、画像処理面がセンサを介して切断している基準センサの表示102を実際のサイズで示すように、正しい面内において画像を選択するように画像に対する手動調整行なわれる。これらの手動制御入力により、使用者は、画像の初期の基準フレームと系のX−Y−Z基準フレームとの間の関係を系に知らせるように、系に関係データを入力し、系は、この画像をX−Y−Z基準フレームの画像に変換する。
【0069】
基準マーカの表示104と表示102とが互いに重なるように手動制御体を作動させると、別の「ロック」信号がキーボード106のような従来のデータ入力装置を介してコンピュータに送られ、かかる整合が行なわれたことを指示する。コンピュータは、「ロック」信号を受信すると、画像内の基準マーカの表示102を基準マーカの磁気データ誘導表示104と継続して整合保持する。かくして、磁場測定により得られた基準マーカ76の位置および配向データが、基準マーカ76の位置、配向またはこれら双方の変更を示すときには、コンピュータはモニター90の基準マーカの磁場誘導表示104を変位させ、従って、基準マーカの表示102を含む画像Iを同じようにして変換させる。かくして、患者を、処置の際に固定状態に保持する必要はなくなる。
【0070】
例えば、図1に示す特定の画像Iは、Y−Z軸と平行する切断面で得られる。磁場測定値から得られる基準マーカ76の位置および配向データは、画像が最初に整合されているので、患者の身体部分が+Y方向に移動しかつ+X軸を中心に時計廻り方向へ回転したことを示し、次いで、コンピュータ46は画像を変換しかつモニター90を作動させて、対応する方向へ変位されかつ回転された画像をモニタースクリーン上に示す。変位および回転を2次元および3次元で示すように記憶画像を変換させる方法は、本技術分野において周知であるので、本明細書において詳細に説明する必要はない。しかしながら、かかる方法は、任意に入力される変位および位置に応答して変換される画像を示すのに広く使用されている。本明細書においては、変換技術は、磁場監視系により測定される身体部分の実際の変位と回転に応答して適用される。
【0071】
この時点では、患者の身体部分の画像Iは、フレームとコイルのXYZ基準座標内の実際の位置および配向に応答する位置においてモニター90のスクリーンに表示される。コンピュータは、プローブ50の少なくとも先端部56の表示108を示すように表示装置90を作動させる。表示108の位置と配向は、センサ60による磁場測定値から得られる先端チップ56の位置および配向に対応する。表示108と画像Iの双方がX、Y、Z基準方向座標系においてプローブと患者の身体部分の実際の位置および配向に対応する位置および配向でモニター90に表示されるので、モニタースクリーン上の組み合わされた表示108と画像Iは、患者の身体の部分に対するプローブ先端チップの位置を精確に示す。更に、プローブ先端チップ56の位置と配向が変化すると、コンピュータはモニタースクリーン上のプローブの表示108の位置および配向を変える。監視プローブのチップ56と基準マーカ76の表示は、絵表示とすることができ、あるいは線、矢印などのような概略表示とすることもできる。
【0072】
かくして、系は、プローブのチップと患者の身体部分との本当の即ち実際の関係を継続して示す。実際には、系は、X線、CATまたはMRI画像を継続して得ることによりプローブチップを表示するなどして、医療処置の際に患者を継続して画像処理することにより得られる結果と同様の結果を提供する。しかしながら、本発明のこの実施例に係る磁場監視工程は、進行中の医療処置を妨害するものではない。電離放射線は全く使用されない。更にまた、使用される磁場は著しく小さいので、検出領域において有意の感知可能な力あるいは磁性物質を用いることはない。系は、検出空間において磁性材料および/または漂遊電磁界の存在に実質上不感受性である。コイルは、多くの場合、医師が開口40を介して患者に到達することができるように検出空間に満足なアクセスを提供するので、医者は所要の処置を行なうことができる。更に、コイルと支持構造体は、素早く取り外すことができるので、処置の際の緊急な危機に一層容易に対処することができる。
【0073】
本発明は、精確な位置情報を提供することができるとともに、患者の身体の画像にプローブの表示を重畳することができるので、多くの医療処置において有用であるが、内視鏡装置を脳において使用しようとする処置において特に有効である。内視鏡装置は、多くの場合、内視鏡の先端チップを直接包囲する組織の画像を提供する小型ビデオカメラ、繊維光学装置などを装備しているが、脳の多くの領域は同じ内視鏡外観を呈するので、かかる画像では、医師は脳内のチップの場所を確認することができない。上記した本発明によれば、医師は、脳の画像に対するプローブの先端チップの表示を見ることにより装置の位置および配向を監視することができる。かくして、プローブを備えた内視鏡装置は、プローブを使用して位置決めし、プローブを内視鏡本体53の孔から取り出し、次いで、内視鏡の孔に従来の内視鏡手術器具を通すようにして、脳の外科手術その他の処置を行なうのに使用することができる。あるいは、内視鏡は、2つの孔または1つの大きな孔を有するようにすることができ、これにより、プローブを所定の場所に配置したまま、装置を挿入することができる。更に、センサ60は、内視鏡本体53がプローブ本体として作用するように、内視鏡自体の先端チップに取着することができる。上記した方法および装置はまた、例えば、脊髄柱、心臓、耳喉頭管、尿路管および尿路器官、腹部並びに肺のような身体の他の全ての領域において使用することができる。本発明の別の実施例によれば、フレームのない立体方式系が提供されている。従来の立体方式系においては、剛性のプローブが患者の身体の外側に取着され、身体部分に固定されたフレームにより案内されることにより、プローブのチップを身体内の正しい場所に配置することができる。かくして、フレームは頭蓋に固定することができ、プローブはフレームにより設定された所定のラインに沿って前進される。上記した系を使用すれば、フレームは必要ではなく、患者に対するプローブの位置は、プローブおよび患者の基準マークにおける測定磁気成分から定めされる。プローブが剛性を有する場合には、プローブの磁気センサはプローブの基端部に配置することができ、処置の際には患者の身体の外部に保持される。この場合には、コンピュータ系は、センサの位置および配向からプローブのチップの位置を算出するように構成される。
【0074】
本発明に係る別の方法においては、共通の関節177において接合されている患者の体肢の部分174および175(図7)のような複数の身体部分にプローブ176Aおよび176Bがそれぞれ配設される。各プローブは図1に関して上記した基準マーカ76と同様のものである。プローブ176Aは、体肢の部分174内の骨182に対して実質上固定された位置に保持されるように、体肢174にバンド180により固定される。精度をより一層高めるために、プローブ176は、プローブを体肢内に外科的に挿入し、あるいは体肢の軟組織を介して骨まで延びるピン(図示せず)にプローブを接続するようにして、骨に直接取着することができる。同様に、プローブ176Aは、プローブが骨183に対して固定位置に保持されるように体肢の部分175に取着される。この場合にも、身体部分の画像は、X線、CAT、MRTその他の画像処理方法により取得される。この画像は、プローブ176Aおよび176Bの画像とともに、骨182および183の画像を含んでおり、更に、周囲の軟組織のような他の身体部分の画像も含むことができる。
【0075】
図1乃至6に関して上記した態様と同様に、画像はコンピュータ46に連係する画像記憶装置に入力されて、記憶される。次に、体肢が、装置の検出空間32内に配置される。プローブ176Aおよび176Bに組み込まれているセンサは、装置の駆動および増幅装置72および82に接続されている。これらのプローブの位置および配向は、図1乃至図6に関して上記した態様と同様にして磁気測定値から装置により取得される。2つのセンサの位置と配位は、同時に監視される。図8に示すように、2本の骨182および183を示す画像I182およびI183は、コンピュータによりモニタースクリーンに表示される。表示された画像は、プローブ176Aの表示186Aと、プローブ176Bの表示186Bを有する。コンピュータはまた、上記と同じ態様で、磁気測定値により定められるプローブの位置に対応する位置においてプローブ176Aおよび176Bの表示188Aおよび188Bを表示する。使用者は、コンピュータに連係する手動入力制御体を利用することにより、画像のプローブ176Aの表示186Aが磁気に基づく表示188Aに重畳しかつこれに整合するまで、画像I182の位置を変えるようにコンピュータを作動させ、これにより使用者はロック信号を入力する。使用者は、プローブ176Bの表示186Bが磁気データから得られた表示188Bに重畳されて正しく整合されるまで、画像I183の位置を別個に手動で調整する。この時点で、使用者は、別のロック信号を入力する。
【0076】
双方の画像がこのようにして磁気基準フレームと整合配置されると、双方の身体部分は当初の基準位置に位置する。磁場測定値により検出されたプローブ176Aまたは176Bのその後の動きは、関連する身体部分174または175の動きを示すものとして捉えられる。かくして、プローブ176Aが図7に破線で示されている移動位置176A’へ移動すると、コンピュータが関連する骨182の画像I182を画像I’182に変換する(図8)。画像I182に加えられてこれを変換画像I’182に変換する回転および/または並進運動は、出発位置176Aから移動位置176A’へのプローブの回転および並進に対応する。
【0077】
各身体部分の画像は、関連するプローブから誘導される位置および配向データに従って独立して処理される。系は、骨が互いに相対的に動くときに、実際の相対的位置と配向状態とにある身体部分、特に、骨182および183の画像を示す。実際に、系は、透視診断画像形成系のような連続画像形成系と同等の画像を、この画像形成系が有する欠点を生ずることなく提供する。同じ系はまた、図1のプローブ50について上記したようなセンサを備えた1つ以上のプローブのごとき1つ以上の医療器具の配向および位置を示すことができる。双方の身体部分の画像が互いに対してかつフレームおよびコイルのXYZ基準方向座標系に対して実際の位置と配向とで示され、しかも器具の表示が同様に実際の位置と配向とで示されると、器具は双方の身体部分に対して適正な位置と配向で示される。
【0078】
図8の例では、画像I182およびI183は、プローブの表示186Aおよび186Bを含むように図示されている。しかしながら、画像が、プローブの表示を磁場に基づく表示188Aおよび188Bと整合させることによりXYZ座標系と整合されると、プローブ表示186またはプローブ表示188を更に視認表示させる必要はない。この段階では、表示装置は、関節177のような問題の領域だけを示すことができる。
【0079】
上記した各系においては、患者の画像は、プローブの磁場誘導表示またはマーカを画像内のプローブまたはマーカの表示と手動で整合させることにより、XYZ座標系と整合される。しかしながら、この工程は、自動パターン認識装置を使用して患者の画像内の基準マーカの表示を検出ことによるなどして、自動化することができる。このように自動化すると、基準マークまたはプローブの視認表示を行なう必要性がなくなる。図1に関して上記した系においては、患者の身体には基準マーカが1つだけ配設されている。かくして、画像データと座標系との整合は、この単独マーカの位置および配向データにより左右される。精度と融通性を一層高めるため、複数の基準マーカ、好ましくは、3つの基準マーカを使用し、患者の身体部分の互いに離隔しかつ非共直線(non−colinear)位置に配置する。図7および図8の実施例のように、複数の独立して動くことができる身体部分に適用しようとする場合には、複数のプローブをそれぞれの部分に取着することができる。
【0080】
あるいはまたは更に、患者の身体部分は、基準マーカ以外の手段により、XYZ基準座標系と整合させることができる。最も簡単な構成においては、患者の身体部分は、既知の場所と配向とでフレーム30に固定され、身体部分の画像Iはこの既知の場所に対応する位置においてモニター90に表示される。あるいは、図1に示す頭部のような、患者の身体部分の位置と配向は、機械的その他の非磁気測定装置により測定され、このデータはスクリーン90の画像Iの適正な位置と配向を定めるのに使用される。
【0081】
本発明の更に別の実施例において使用されるセンサは、半導体チップ(chip)250の形態をなす3つの場検出素子を備えている(図9)。各チップは、磁気抵抗材料の1つ以上の細長いバー252を有する。各チップは、バーの方向の磁場成分に感応性がある。センサは更に、誘電体層と、該誘電体層に設けられた導体256を有する折り曲げ自在のシート状支持体254を備えている。支持体254は、柔軟なテープ状電子回路に広く使用されるタイプのポリイミド材料から形成するのが望ましい。支持体254は当初は、図9に示すように略十字形をなしている、支持体は、矩形または方形の中央パネル262と、中央パネル262の一方の縁部から突出する先端パネル264と、中央パネルの対向する縁部から突出する一対の側部パネル266および268とを有している。支持体は更に、先端パネル264とは反対側の中央パネル262の縁部から突出する細長いストリップ266を有している。
【0082】
チップ250が1つ中央パネル262に取着され、別のチップが先端パネル264に取着され、第3のチップ250が側部パネル266に取着される。側部パネル266に取着されたチップの磁気抵抗バー252は、先端パネル264に取着されたチップのバー252と平行をなしているが、双方は中央パネル262に取着されたチップのバーとは直角をなしている。1つ以上のサーミスタ、熱抵抗素子その他の温度感知装置を組み込むことができる温度感知チップ258が、支持体の他方の側部パネル268に取着されている。増幅チップ260が、中央パネル262との接合部に隣接する支持体の細長いストリップ266に取着されている。これらの素子は、平面回路パネルに対して適用される従来の半導体取着および接続技術を使用して支持体に取着することができる。素子を支持体に取着してから、支持体をコア270の上で折り曲げる。コア270は、実質上、矩形の中実体または立方体の形態をなしており、誘電材料から形成するのが好ましい。中央パネル262は、支持体の一方の面272に配置される。先端パネル264と、側部パネル266および268と、ストリップ266は、面272に隣接するコアの面にこれらが配置されるようにコアの縁部で折り曲げられる。パネルとストリップは、コアの所定の位置に固定される。
【0083】
この状態では、仕上げられたセンサは、立方体の3つの直交面に磁気抵抗検出素子250を有しており、3つの素子のバーは直交する3方向に延びる。磁気抵抗素子、温度センサ258および増幅器260を含むセンサ全体は、幅と厚みが望ましくは約5mm未満、より好ましくは約1mm未満である。
【0084】
この実施例に係るセンサは、検出素子がプローブ本体の先端チップにまたはこれに近接して配置され、かつ、センサの細長いストリップ266およびその導体256が外部導体(図示せず)に接続のためにプローブ本体の基端部へ向けて延びるように、細長いプローブ本体280に取着することができる。センサのこのようなコンパクトな構成により、望ましくは約0.8mm以下という著しく小さい直径を有するプローブ本体を使用することができる。この実施例に係るプローブは、上記したような方法において使用することができる。このセンサにおいては、各検出素子は、上記したセンサの場合のようにセンサの面に直交するのではなく、センサの面と平行する一の方向の場成分に感応性を有する。更に、センサの組込み増幅器が、信号対ノイズ比を高める。その他の点においては、プローブは上記したのと同じ態様で使用される。
【0085】
本発明の更に別の観点に係る方法においては、図9および図10のプローブは、患者の身体内の生理学的な温度測定値を得るのに使用される。上記したように、プローブは患者の身体に挿入され、プローブの先端チップは体内の種々の場所に亘って動かされる。プローブが動くと、磁場監視系はフレームのXYZ基準方向座標系内で先端チップの場所の追跡を行なうので、各温度測定値はこの座標系における位置と連係する。かくして、温度対位置のマップがコンピュータ46のメモリに記憶される。好ましくは、かかるマップは、患者の関連する身体部分の画像に連係して表示されまたは記憶される。上記したように、かかる画像は、基準マーカを使用しあるいは他の手段を介して磁場装置の基準方向座標系と整合される。かくして、プローブにより測定される温度は、例えば、異なる温度に対応するように画像の種々の部分に影をつけまたは色を付し、あるいは図11に示すように身体の画像に重畳される輪郭線を示すことによるなどして、身体部分の特徴にマップ処理を行なうことができる。
【0086】
図9−11に関して説明したプローブおよび方法は、例えば、プローブを身体内に自然の身体オリフィスを介して挿入し、腸管、尿管および呼吸管のような腔を探査しかつ局部的な高温部分を検出するのに利用することができる。かかる部分は、悪性腫瘍のような病理学的状態と関連することがしばしばある。更に、このような部分が位置的に定められ、精確にマップ処理されると、医師は、この部分を視認検査しおよび/または試験切除、手術、切除その他の処置を行なうことができる。
温度感応素子258は、pH、イオン濃度などのような他の生理学的可変因子に対して感応する1つ以上の素子で置き換えあるいはこれらの素子で補充することができる。更に、温度その他の生理学的可変因子に感応する素子を、磁気センサとは別に形成することもできる。
【0087】
身体部分の画像に重畳されるマップ処理された生理学的データの表示の変形例として、マップ処理されたデータを絵の形態などで単独で表示することができる構成がある。例えば、高温部分を示す絵表示により、重畳することなく、腫瘍のサイズおよび形状を示すことができる。生理学的データのマップは、リアルタイムで得られ、表示されるので、(重畳された身体部分の画像のある、またはかかる画像を持たない)表示マップを利用して、医者は更にマップ処理を行なうことができる。かくして、医者は先づ、問題の部分の一定数の広く離れた場所でプローブを動かして、粗のマップを得ることができる。この粗のマップは、接近した距離の位置のマップ処理により、精密検査を要する部分の位置決めに使用することができる。
【0088】
上記した装置および方法の別の変形例においては、Z軸コイルおよびこれに対応する均一な場およびグラジェント場が削除される。かくして、系は、わずか2つのコイルセットからのわずか2つの直交する方向の均一な場とグラジェント場とを使用するだけである。しかしながら、この系は依然として、プローブの位置と配向を3次元で得ることができる。均一なX、YおよびZ場の束ベクトルX、YおよびZ場は互いに直交しているので、いずれか1つの均一な場の束ベクトルは、残りの2つのクロス乗積を算出することにより算出することができる。即ち、仮想の第3の均一な場の束ベクトルがセンサのX’、Y’およびZ’座標系において有する成分は、同じ座標系における残りの2つの均一場束ベクトルの実際の成分から算出することができる。かくして、仮想のZ方向均一場束ベクトルの正規化された成分H’m’,nは、X方向およびY方向の場について測定された実際の正規化された成分から算出することができる。
【0089】
H’x’,z=(H’y’,x*H’z’,y−H’y’,y*H’z’,x)
H’y’,z=(H’z’,x*H’x’,y−H’z’,y*H’x’,x)
H’z’,z=(H’x’,x*H’y’,y−H’x’,y*H’y’,x)
かくして、成分H’m’,nはいずれも、XおよびYコイルセットだけを均一場モードで動作させることにより取得することができる。
【0090】
3つの実際のコイルセットを使用する上記方法においては、系は各コイルセットの軸線に対するそのコイルセットの逆場またはグラジェント束ベクトルの投影(projection)の大きさを算出する。しかしながら、一のコイルセットからの逆場束ベクトルの測定値は、削除することができる。削除したコイルセットに対応する軸線の位置を見出すために、系は、残りの2つのコイルセットの一方から第3の軸線およびそのコイルセット自身の軸線に対する束ベクトルの一方の投影を算出する。これは、一のコイル対の値(表IIの一のカラム)を第3のコイル対の値に単にコピーすることにより計算で行なわれる。かくして、Z方向のコイルが削除される場合には、系は、
x’,z=x’,y
y’,z=y’,y
z’,z=z’,y
を設定し、あるいは上記と同じ態様で計算を行なう。しかしながら、Y方向の場はX軸に沿った主要成分と、Z軸に沿ったラジアル成分だけとを有するので、原点からZ方向へ所定の距離の部分のZ軸成分の大きさRは、Y方向の等距離の場所のY方向成分の大きさRの約−0.36倍となる。かくして、Z方向グラジェントdRz/dZはY方向グラジェントdRy/dYの約−0.36倍であり、Z軸束成分をZ軸距離に変換するのに使用される変換因子Mはこれに応じて調整される。上記した較正工程が使用される場合には、Z軸変換因子は、Y軸コイルセットの作動の際に測定される。
【0091】
この変形例に係る系は、2つの直交するコイルセットだけが必要であり、かくして、医師は患者に一層容易にアクセスすることができる。
【0092】
上記した装置および方法においては、種々のコイルセットは交互に作動されるので、いずれの所定の時点でも一のコイルセットだけが作動していることになる。しかしながら、本発明の別の実施例において使用される磁場の所定の時間シーケンスは、同時に印加される2つ以上の場を含むことができる。同時印加の場は、異なる周波数で変化される。この場合には、磁場を示すセンサからの信号は、これらの異なる周波数で変化する別の成分を有する。各かかる成分は、一の場のセンサの読みを示す。これらの成分は、従来のフィルタ処理技術によりセグメント化され、次いで、別の場に別の読みを提供するように別々に評価される。例えば、各周波数におけるAC波形の大きさは、別々に評価することができる。上記した各変形例においては、磁場は共軸をなして配置されたヘルムホルツコイルにより印加される。しかしながら、永久磁石その他のコイル構成のような他の磁場発生装置を使用することができる。更に、上記したような、均一な場および成分が距離とともに直線状に変化する(均一グラジェント)場を使用するのが特に望ましい。しかしながら、磁場の他の組み合わせを使用することができる。場は、均一な場を含むことは必ずしも必要ではないが、種々の場において取得されるセンサの読みから位置および配向を数学的に脱コンボリュート(deconvolute)させることが可能である場合には、異なる既知のグラジェントを有する複数の異なる場を含むことができる。更に、不均一なグラジェントを有するとともに、1つ以上の成分が距離とともに非線形に変化する場を使用することもできる。かかる場は、好ましさが低い。更にまた、本発明において測定される各場成分の大きさは、検出空間内の方向の距離に対して擬線形であるのが望ましい。本明細書において説明されているように、成分の大きさは、特定の方向の位置に関して、
+a+a+a・・・・a
の形態の多項関数により記載することができる場合には、かかる方向の距離に対して「擬線形」(”quasilinear”)となる。上記式において、qは位置であり、定数(ゼロ乗)項、1乗項またはこれらの項の和は他の項よりも優位を占める。即ち、検出空間内の距離qについて述べると、和(a+a)は、和(a+a・・・・ann)の少なくと2倍にすべきである。好ましくは、(a00+a)は、和(a22+a33・・・・a)の少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍である。上記した最も好ましい構成においては、均一な場ではaが優位を占め、他の項は零に限りなく近づき、一方、グラジェント場では、aが優位を占め、他の項はいずれも零に限りなく近づく。特定の場が位置または配向を定める場合に測定されない成分を含む場合には、他の成分は擬線形である必要はない。
【0093】
上記構成のこれらおよび他の変形例および組み合わせは、請求の範囲に記載の本発明から逸脱することなく利用することができるので、好ましい実施例についての上記説明は、本発明を限定するものではなく、例示するものとして解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
内科学、外科学、獣医学および同様な処置。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の一の実施例に係る装置の概略部分斜視図である。
【図2】図1に示す装置の一部を示す概略図である。
【図3】図1および図2の装置において生ずる磁場を示すグラフ図である。
【図4】図1および図2の装置において生ずる磁場を示すグラフ図である。
【図5】図1および図2の装置において生ずる磁場を示すグラフ図である。
【図6】図1および図2の装置の動作に関連するベクトル図である。
【図7】本発明の別の実施例に係る装置の一部を示す部分斜視図である。
【図8】本発明の別の実施例に係る装置の一部を示す部分斜視図である。
【図9】本発明の更に別の実施例に係る装置の一部を示す部分斜視図である。
【図10】図9の装置の別の部分を示す部分正面図である。
【図11】患者の身体部分の画像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)検出空間において複数の異なる磁場を発生する磁石手段を備え、前記各場は前記検出空間内の基準方向の距離に対して準線形の大きさを有する少なくとも1つの成分を有し、前記大きさは前記検出空間内の少なくとも幾つかの位置において非ゼロであり、更に、
(b)前記場を所定のシーケンスで発生するように前記磁石手段を作動させる制御手段と、
(c)対象に接続されかつ前記検出空間内で可動のセンサとを備え、該センサはセンサに対して少なくとも2つの異なる局部方向の磁場成分を検出して前記各成分を表すそれぞれのデータを提供するようになっており、更に
(d)前記場の発生の際に検出される前記磁場成分を表す前記データから前記センサの位置を定める計算手段を備えることを特徴とする対象の位置を測定する装置。
【請求項2】
前記磁石手段は、前記検出空間内で第1の基準方向の第1の略均一な磁場と、前記検出空間内で前記第1の方向とは異なる第2の方向の第2の略均一な磁場と、前記検出空間内で第1および第2の勾配を有する(gradient)場とを発生する手段を備え、前記各勾配を有する(gradient)場は前記検出空間内で所定の変化パターンを有し、前記制御手段は前記磁石手段を作動させて前記均一な場と連続する前記勾配を有する(gradient)場を発生させるように構成され、前記計算手段は前記勾配を有する(gradient)場と前記均一な場の発生の際に検出される前記磁場成分から前記検出空間内の前記第1および第2の基準方向の前記センサの位置を決定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記磁石手段は前記検出空間内で前記第1および第2の基準方向とは異なる第3の基準方向の第3の略均一な場を発生するとともに前記検出空間内で所定の変化パターンを有する第3のグラジェント場を発生する手段を有し、前記制御手段は前記第3の磁石手段を作動させて前記第1および第2の均一な場およびグラジェント場と連続する前記第3の均一な場およびグラジェント場を発生するように構成され、前記センサは前記センサに対する3つの異なる局部方向の磁場成分を検出するように構成され、前記計算手段は前記3つの基準方向の前記検出空間内の前記センサの位置を決定するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記センサは最大寸法が約5mm未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記最大寸法は約1mm未満であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記センサは人間の患者の身体内に配置されるようになっていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記検出空間は最小寸法が少なくとも約30cmであることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記センサは異なる方向に配向された複数の面と、該面に配置された磁気感応層とを有する検出本体を備えることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項9】
前記磁石手段は前記各勾配を有する(gradient)場が前記検出空間内の一の前記基準方向の略線形の単調なグラジェントに従って変わる大きさを有する成分を有するように前記グラジェント場を発生するようになっていることを特徴とする請求項2または3に記載の装置。
【請求項10】
前記磁石手段は複数の対をなすコイルを備え、各対をなすコイルは前記検出空間の対向側部に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項11】
前記各対の前記コイルは前記各対の軸線が一の前記基準方向に延びるように互いに略共軸をなして配置されたヘルムホルツコイルであることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記制御手段は前記磁石手段をオフ状態にするように動作し、前記磁石手段は前記検出空間において場を提供せず、前記計算手段は前記磁石手段が前記オフ状態にあるときに前記センサが測定する前記局部方向の磁場成分のベースライン値を登録するとともに、前記磁石手段がオフ状態とは別の状態にあるときに測定される成分を前記ベースライン値に従って補正する手段からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記計算手段は前記センサにより検出された磁場成分に基づき前記検出空間内の前記センサの配向を決定する手段を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
(a)少なくとも2対のヘルムホルツコイルを有する磁気構造体を備え、前記各対をなすコイルは互いに共軸をなすとともに対軸線を画成し、しかも検出空間の対向側部に配置され、前記対の軸線は互いに略直交しており、更に
(b)前記各対をなすヘルムホルツコイルの双方に同方向に電流が流れる均質な場状態で該対をなすコイルを選択的に作動させることにより前記検出空間内に略均一の強度の対軸線と平行な方向の磁場を発生させる制御手段を備え、該制御手段はまた前記各対をなすヘルムホルツコイルに逆方向に電流が流れるグラジェント場状態で前記各対をなすコイルを作動させることにより対の軸線と平行する方向成分を有する磁場を発生するように動作を行ない、かかる成分は前記検出空間にほぼ線形の勾配(gradient)の大きさを有し、前記制御手段は一対のコイルだけが常に一方の状態にだけ作動されるように前記磁石構造体を作動させるように動作し、更に
(c)前記検出空間内で動くことができるプローブを備え、該プローブにはプローブに対して少なくとも2つの異なる局部方向の磁場成分を測定し前記各成分を表すそれぞれのデータを提供するセンサ手段が取着されて、コイル対が前記均質な場状態にあるときに前記センサ手段が前記局部方向の均質場成分を測定するとともに、前記コイル対が前記グラジェント場状態にあるときに前記局部方向のグラジェント場成分を測定し、更に
(d)前記均質場成分を表すデータから前記対軸線に対する前記プローブの配向を決定するとともに、前記均質場成分および前記グラジェント場成分を表すデータから前記検出空間における前記プローブの位置を定める計算手段を備えることを特徴とする配向および位置測定方法。
【請求項15】
前記磁石構造体は3対の前記ヘルムホルツコイルを含み、前記センサ手段は互いに直交する3つの前記局部方向の磁場成分を測定する手段を有することを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記プローブは人間の患者の身体内に配置されるようになっていることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記プローブは基端部と先端部とを有する細長い柔軟な素子であり、前記センサ手段は前記先端部に隣接して配置されることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記対をなすヘルムホルツコイルは少なくとも約30cmの距離をもって互いに離隔配置されていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項19】
検出空間内の対象の位置を測定する方法であって、
(a)検出空間内の基準方向の距離に対して擬線形の大きさを有する少なくとも1つの成分をそれぞれが有する複数の異なる磁場を前記検出空間において発生させる工程と、
(b)前記場の発生の間に、対象に接続され前記各磁場成分を表すそれぞれのデータを提供するセンサに対して少なくとも2つの異なる局部方向の磁場成分を測定する工程と、
(c)前記測定された磁場成分を表すデータから前記検出空間内の前記プローブの位置を決定する工程とを備えることを特徴とする位置測定方法。
【請求項20】
前記磁場発生工程は前記検出空間内で第1および第2の基準方向の第1および第2の略均一な磁場を発生させるとともに、前記検出空間内で第1および第2のグラジェント場を発生させる工程からなり、前記各グラジェント場は前記検出空間内で一の前記基準方向の所定の変化パターンを有しており、前記磁場成分測定工程は前記均一な場の印加の際に均質場成分を測定するとともに前記グラジェント場の発生の際に前記局部方向のグラジェント場成分を測定する工程からなり、前記決定工程は前記測定された均質場およびグラジェント場成分から前記検出空間内における前記前記基準方向の前記センサの位置を計算する工程からなることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1および第2の基準方向とは異なる第3の基準方向の第3の略均一な場を前記検出空間内で発生させるとともに、前記第3の基準方向の所定の変化パターンを有する第3のグラジェント場を前記検出空間内で発生させる工程を更に備え、前記均質場成分を測定する前記工程は前記第1、第2および第3の均一な場の発生の際に前記プローブに対する3つの異なる局部方向の均質場成分を測定する工程からなり、前記グラジェント場成分を測定する前記工程は前記第1、第2および第3のグラジェント場の発生の際に前記3つの局部方向のグラジェント成分を測定する工程からなることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
(a)前記場の少なくとも1つの因子が場基準フレーム内の所定の位置から別の所定の位置までの距離に対して擬線形であるように前記場基準フレーム内に磁場を発生させる手段と、
(b)患者身体内に配置されるようになっているプローブと、
(c)前記プローブが患者の身体に配置されているときに、前記センサにおいて作用する、前記センサに対して少なくとも2つの異なる局部方向の磁場成分を監視するとともに、該成分を表す1つ以上のセンサの信号を送り、前記1つ以上のセンサの信号が前記各成分を表すそれぞれのデータを含むように、前記プローブに取着されたセンサと、
(d)前記プローブが患者の身体に配置されているときに前記センサの信号から前記基準フレームにおける前記プローブの位置を決定するとともに、前記センサの信号に基づいて前記場基準フレーム内の前記プローブの位置を示すプローブ位置データを提供する計算手段とを備えることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項23】
前記プローブを示す画像が前記決定手段により提供される前記プローブ位置データに基づいて前記身体の画像上の位置において重畳されるように、患者身体の画像を該画像に重畳される前記プローブを示す画像とともに表示する重畳手段を更に備えることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記プローブは基端部と先端部とを有する細長い構造体を備え、前記センサは前記先端部に取着されていることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記プローブは前記先端部を包囲する身体部分の画像を取得するように前記構造体の前記先端部に隣接して取着された局部画像処理手段を更に備えることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項26】
前記重畳手段は前記場基準フレームとは異なる身体画像基準フレーム内の前記身体の画像を表す身体画像データを受ける手段と、前記身体画像基準フレームと前記場基準フレームとの間の関係を表す関係データを受ける手段と、前記プローブ位置データと前記身体画像データを共通の基準フレームにおいて提供するように前記プローブ位置データと前記身体画像データの少なくとも一方を変換する手段とを備えることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項27】
前記決定手段は前記場基準フレーム内の前記プローブの配向を決定する手段を更に備えることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
磁場を発生する前記手段は前記少なくとも1つの因子が所定のパターンシーケンスにおける異なる時点での複数の異なるパターンに従って変化するように前記場を発生する手段を備えることを特徴とする請求項23に記載の装置。
【請求項29】
磁場を発生する前記手段は所定の検出領域を通じて実質上方向と強度を有する少なくとも1つの均質な場を発生するとともに、前記検出領域内の距離とともに実質上線形をなして変化する少なくとも1つの因子をそれぞれが有する1つ以上のグラジェント場を発生するように動作することを特徴とする請求項28に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−142660(P2009−142660A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335130(P2008−335130)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【分割の表示】特願2003−286318(P2003−286318)の分割
【原出願日】平成6年10月6日(1994.10.6)
【出願人】(503281186)バイオセンス,インコーポレイテッド (1)