説明

位置合わせ調整機構

【課題】位置合わせの微細な調整及び位置合わせの適否の判断が容易で、かつ、部材の変形が発生し難い、位置合わせ調整機構を提供する。
【解決手段】第1部材110の第2部材120と重なる部分に、凸字状に形成された第1部材孔112と、第2部材の第1部材と重なる部分に、第1部材孔に対して向かい合うように、凸字状に形成された第2部材孔122とを有し、第1部材孔及び第2部材孔は、それぞれ、第1部材と第2部材とが重ねて配置された場合に、互いが向かい合わせで重なることにより、第1部材及び第2部材に対して調整用の押圧を付与する調整用部材300が挿入される開口部132を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの部材の位置合わせの調整を行うための位置合わせ調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ある部材(以下、「第1部材」と称する)を他の部材(以下、「第2部材」と称する)に取り付ける場合に、二つの部材の位置合わせの調整は、通常、作業者が手作業で行っている。以下、従来の位置合わせの調整の手法につき、一例として、金融機関等に設置されるATM(自動取引装置)の筐体を対象にして、説明する。
【0003】
ATMの筐体は、大別すると、第1部材としてのパネル部と第2部材としてのキャビネット部とによって構成されている。パネル部は、ATMの上部表面側を覆うカバー部材である。キャビネット部は、内部に、各種のユニット(例えば、紙幣処理機、硬貨処理機、通帳記帳機、カードリーダライタ等)を収容する収容部材である。パネル部とキャビネット部とは、それぞれ、取付位置の形状が互いに嵌め合わされる形状に形成されている。また、パネル部とキャビネット部とは、互いがネジで固定されるように、複数のネジ孔が所定の位置に設けられている。各ネジ孔は、二つの部材の位置合わせのズレがある程度許容できるように、通常、長孔形状に形成されている。
【0004】
作業者は、パネル部をキャビネット部に取り付ける場合に、まず、パネル部を持ち上げて、パネル部をキャビネット部の取付位置に配置し、ネジをネジ孔に挿入して軽く締め付けることによって、二つの部材を一時的に仮留めする。
次に、作業者は、パネル部を持ちながら、ネジを一旦緩め、位置合わせの適否(すなわち、位置合わせが適正か否か)を判断しながら、腕力でもってパネル部全体を前後左右に大まかに動かす。これによって、作業者は、位置合わせの調整を行う。
そして、作業者は、位置合わせが適正になったと判断した時点で、ネジを強く締め付けることによって、二つの部材を強く固定する。
このようにして、パネル部のキャビネット部への取り付けが行われる。
【0005】
なお、位置合わせの調整を行うための機構としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に開示された機構は、二つの部材の一方又は双方に、少なくとも2つの突起又は孔を設け、この突起又は孔を利用してテコの原理で二つの部材を押圧することによって、位置合わせの調整を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−3006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記した従来の位置合わせの調整の手法は、以下に説明する通り、位置合わせの微細な調整を行うことが困難なときがある、という課題があった。
【0008】
具体的には、前記した通り、従来の位置合わせの調整の手法は、作業者が腕力でもって第1部材(パネル部)全体を前後左右に大まかに動かすことによって、行われている。
しかしながら、作業者は、例えば、第1部材が比較的大きい物体である場合や重たい物体である場合に、第1部材を微細に動かすことができないときがあった。すなわち、作業者は、このような場合に、腕力を十分に制御できずに、調整位置に対して第1部材を大きく移動させてしまうときがあった。したがって、従来の位置合わせの調整の手法は、位置合わせの微細な調整を行うことが困難なときがあった。
このようなときに、作業者は、調整位置に対して第1部材を何度も往復移動させることになる。そのため、多大な工数が、位置合わせの調整に必要であった。
【0009】
また、前記した特許文献1に開示された機構は、(1)位置合わせの適否の判断がし難い、(2)強い押圧力がテコの支点となる部分にかかるため、支点となる部分が変形し易い、という課題があった。
【0010】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、位置合わせの微細な調整及び位置合わせの適否の判断が容易で、かつ、部材の変形の発生を低減する位置合わせ調整機構を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、第1部材と第2部材とを重ねて配置する場合に、当該第1部材と当該第2部材との位置合わせの調整を行うための位置合わせ調整機構であって、前記第1部材の前記第2部材と重なる部分に、凸字状に形成された第1部材孔と、前記第2部材の前記第1部材と重なる部分に、前記第1部材孔に対して向かい合うように、凸字状に形成された第2部材孔とを有し、前記第1部材孔及び前記第2部材孔は、それぞれ、前記第1部材と前記第2部材とが重ねて配置された場合に、互いが向かい合わせで重なることにより、前記第1部材と前記第2部材とを互いに摺動させる調整用部材が挿入される開口部を形成する構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、位置合わせの微細な調整及び位置合わせの適否の判断が容易で、かつ、部材の変形が発生し難い、位置合わせ調整機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る位置合わせ調整機構の構成を示す図(1)である。
【図2】実施形態に係る位置合わせ調整機構の構成を示す図(2)である。
【図3】実施形態に係る位置合わせ調整機構の構成を示す図(3)である。
【図4】実施形態に係る位置合わせ調整機構の構成を示す図(4)である。
【図5】実施形態に係る位置合わせ調整機構の動作を示す図(1)である。
【図6】実施形態に係る位置合わせ調整機構の動作を示す図(2)である。
【図7】実施形態に係る位置合わせ調整機構の動作を示す図(3)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0015】
<位置合わせ調整機構の構成>
以下、図1乃至図4を参照して、本実施形態に係る位置合わせ調整機構の構成につき説明する。図1乃至図4は、それぞれ、本実施形態に係る位置合わせ調整機構の構成を示す図である。
【0016】
図1は、本実施形態に係る位置合わせ調整機構100が組み込まれた組込装置200の構成を示している。ここでは、組込装置200が、金融機関等に設置されるATM(自動取引装置)であるものとして説明する。以下、組込装置200を「ATM200」と称する。
【0017】
ATM200の筐体は、大別すると、第1部材としてのパネル部110と第2部材としてのキャビネット部120とによって構成されている。パネル部110は、ATM200の上部表面側を覆うカバー部材である。キャビネット部120は、内部に、各種のユニット(例えば、紙幣処理機、硬貨処理機、通帳記帳機、カードリーダライタ等)を収容する収容部材である。
【0018】
パネル部110は、図2に示すように、キャビネット部120の取付位置と対向する部分に、突き当て面110aが形成されている。一方、キャビネット部120の取付位置は、図3に示すように、突き当て面120aが形成されている。パネル部110の突き当て面110aとキャビネット部120の突き当て面120aは、互いが嵌め合わされる形状に形成されている。なお、図2は、パネル部110の主要部の構成を示しており、図2(a)は、上斜め方向から見たパネル部110の主要部の構成を、また、図2(b)は、A部(図2(a)参照)の構成を拡大して示している。一方、図3は、キャビネット部120の主要部の構成を示しており、図3(a)は、下斜め方向から見たキャビネット部120の主要部の構成を、また、図3(b)は、B部(図3(a)参照)の構成を拡大して示している。
【0019】
パネル部110とキャビネット部120は、取り付け時に、図1乃至図4に示すように、作業者によって、調整方向D1(すなわち、ATM200の前後方向)又は調整方向D2(すなわち、ATM200の左右方向)に沿って、位置合わせの調整が行われる。調整方向D1は、突き当て面110a及び突き当て面120aに対して垂直な方向である。一方、調整方向D2は、突き当て面110a及び突き当て面120aに対して水平な方向である。
【0020】
パネル部110とキャビネット部120は、互いがネジで固定されるように、図示せぬ複数のネジ孔が所定の位置に設けられている。各ネジ孔は、二つの部材の位置合わせのズレがある程度許容できるように、長孔形状に形成されている。
【0021】
また、パネル部110とキャビネット部120は、位置合わせの調整用の孔が、所定の位置に設けられている。以下、パネル部110に設けられた位置合わせ調整用の孔を「第1部材孔112」(図2(b)参照)と称し、キャビネット部120に設けられた位置合わせ調整用の孔を「第2部材孔122」(図3(b)参照)と称する。なお、図示例では、第1部材孔112及び第2部材孔122は、1つずつしか示されていない。しかしながら、第1部材孔112及び第2部材孔122は、複数設けられていてもよい。
【0022】
第1部材孔112は、図2(b)に示すように、凸字状に形成されている。一方、第2部材孔122も、図3(b)に示すように、凸字状に形成されている。第1部材孔112及び第2部材孔122は、サイズが同一(又は、ほぼ同一)で、互いが向かい合うように(すなわち、一方が他方に対して180度回転して配置された形状となるように)、形成されている。
【0023】
なお、第1部材孔112及び第2部材孔122は、向かい合う方向が調整方向D1に対して垂直になるように(すなわち、調整方向D2に対して水平になるように)、又は、向かい合う方向が調整方向D1に対して水平になるように(すなわち、調整方向D2に対して垂直になるように)、形成されている。
【0024】
図4に、第1部材孔112及び第2部材孔122の詳細な構成を示す。図4(a)は、第1部材孔112の詳細な構成を示しており、図4(b)は、第2部材孔122の詳細な構成を示しており、図4(c)は、第1部材孔112と第2部材孔122とが重ねて配置された場合の各部位の位置関係を示している。
【0025】
第1部材孔112は、図4(a)に示すように、大きさの異なる2つの孔112a,112bによって構成されている。以下、小さい方の孔112aを「小型孔112a」と称し、大きい方の孔112bを「大型孔112b」と称する。なお、図示例では、大型孔112bは、突き当て面110aから距離「L」だけ離間した位置に設けられている。
【0026】
小型孔112a及び大型孔112bは、それぞれ、長方形の形状に形成されている。ただし、小型孔112a及び大型孔112bは、それぞれ、正方形の形状に形成されていてもよい。図示例では、小型孔112aは、突き当て面110aに対して垂直な方向(ATM200の前後方向)の長さが「l1」となり、突き当て面110aに対して水平な方向(ATM200の左右方向)の長さが「w1」となるように、形成されている。一方、大型孔112bは、突き当て面110aに対して垂直な方向(ATM200の前後方向)の長さが「l2」となり、突き当て面110aに対して水平な方向(ATM200の左右方向)の長さが「w2」となるように、形成されている。
【0027】
小型孔112a及び大型孔112bは、一辺で重なるように、設けられている。また、小型孔112a及び大型孔112bは、大型孔112bの前端から小型孔112aの前端までの距離が大型孔112bの後端から小型孔112aの後端までの距離と等しくなるように、設けられている。なお、図示例では、大型孔112bの前端から小型孔112aの前端までの距離、及び、大型孔112bの後端から小型孔112aの後端までの距離は、それぞれ、「l3」となっている。その結果、小型孔112a及び大型孔112bは、全体の形状が凸字状になっている。
【0028】
一方、第2部材孔122は、図4(b)に示すように、大きさの異なる2つの孔122a,122bによって構成されている。以下、小さい方の孔122aを「小型孔122a」と称し、大きい方の孔122bを「大型孔122b」と称する。なお、図示例では、大型孔122bは、突き当て面120aから距離「L」だけ離間した位置に設けられている。
【0029】
小型孔122a及び大型孔122bは、それぞれ、長方形の形状に形成されている。なお、小型孔122a及び大型孔122bは、それぞれ、正方形の形状に形成されていてもよい。図示例では、小型孔122aは、突き当て面120aに対して垂直な方向(ATM200の前後方向)の長さが「l1」となり、突き当て面120aに対して水平な方向(ATM200の左右方向)の長さが「w1」となるように、形成されている。一方、大型孔122bは、突き当て面120aに対して垂直な方向(ATM200の前後方向)の長さが「l2」となり、突き当て面120aに対して水平な方向(ATM200の左右方向)の長さが「w2」となるように、形成されている。
【0030】
小型孔122a及び大型孔122bは、第1部材孔112の小型孔112a及び大型孔112bとは逆向きに、一辺で重なるように、設けられている。また、小型孔122a及び大型孔122bは、大型孔122bの前端から小型孔122aの前端までの距離が大型孔122bの後端から小型孔122aの後端までの距離と等しくなるように、設けられている。なお、図示例では、大型孔122bの前端から小型孔122aの前端までの距離、及び、大型孔122bの後端から小型孔122aの後端までの距離は、それぞれ、「l3」となっている。その結果、小型孔122a及び大型孔122bは、全体の形状が凸字状になっている。
【0031】
第1部材孔112及び第2部材孔122は、ATM200の前後方向の位置がほぼ一致する関係となっている。すなわち、第1部材孔112及び第2部材孔122は、第1部材孔112の突き当て面110aからの距離と第2部材孔122の突き当て面120aからの距離とがほぼ一致する関係となっている。
また、第1部材孔112及び第2部材孔122は、ATM200の左右方向の位置がほぼ一致する関係となっている。すなわち、第1部材孔112及び第2部材孔122は、第1部材孔112の小型孔112aと大型孔112bとが重なる辺の位置と第2部材孔122の小型孔122aと大型孔122bとが重なる辺の位置とがほぼ一致する関係となっている。
そのため、第1部材孔112及び第2部材孔122は、第1部材110と第2部材120とが重ねて配置された場合に、図4(c)に示すように、第1部材孔112の小型孔112aと第2部材孔122の小型孔122aとが隣接して配置される関係となっている。
【0032】
<位置合わせ調整機構の動作>
以下、図5乃至図7を参照して、本実施形態に係る位置合わせ調整機構100の動作につき説明する。図5乃至図7は、それぞれ、本実施形態に係る位置合わせ調整機構の動作を示す図である。
【0033】
以下、まず、図5を参照して、調整方向D1に沿って位置合わせの調整を行う場合の動作につき説明する。ここでは、第1部材孔112と第2部材孔122とが、図5に示すように、配置されているものとする。すなわち、第1部材孔112及び第2部材孔122は、向かい合う方向が調整方向D1に対して垂直になるように、また、第1部材孔112の小型孔112aと大型孔112bとが重なる辺と第2部材孔122の小型孔122aと大型孔122bとが重なる辺とが重なるように、配置されているものとする。
【0034】
作業者は、第1部材(パネル部)110を第2部材(キャビネット部)120に取り付ける場合に、まず、第1部材110を持ち上げて、第1部材110を第2部材120の取付位置に配置する。これにより、第1部材110と第2部材120とが、取付位置で上下に重ねて配置される。なお、本実施形態では、位置合わせ調整機構100は、第1部材110が図2に示す形状に形成されており、さらに、第2部材120が図3に示す形状に形成されているため、取付位置において、第1部材110が第2部材120の下に入り込む。
【0035】
作業者は、図示せぬネジを図示せぬネジ孔に挿入して軽く締め付けることによって、第1部材110を第2部材120に一時的に仮留めする。
そして、作業者は、開口部132aの形状を見て、位置合わせの適否(すなわち、位置合わせが適正か否か)を判断する。
【0036】
位置合わせ調整機構100は、第1部材110と第2部材120とが上下に重ねて配置された場合に、図5(a)に示すように、第1部材孔112の小型孔112aの部分と第2部材孔122の小型孔122aの部分だけが開放された状態となり、それ以外の部分が閉鎖された状態となる。その結果、位置合わせ調整機構100は、第1部材孔112の小型孔112aと第2部材孔122の小型孔122aとによって、開口部132を形成する。なお、以下、図示例のように、第1部材孔112の小型孔112aと第2部材孔122の小型孔122aとが接する形状の開口部132を「開口部132a」と称する。
【0037】
開口部132aは、第1部材110及び第2部材120の位置合わせが適正な状態である場合に、図5(a)に示すように、形状が長方形となる。
しかしながら、開口部132aは、第1部材110及び第2部材120の位置合わせが適正な状態でない場合に、図5(b)又は図5(c)に示すように、形状が長方形から崩れた形状となる。
【0038】
開口部132aの形状が長方形(図5(a)参照)となっている場合に、位置合わせの調整が不要なため、作業者は、位置合わせの調整を行うことなく、図示せぬネジを強く締め付けることによって、第1部材110を第2部材120に強く固定する。
【0039】
一方、開口部132aの形状が長方形から崩れた形状(図5(b)及び図5(c)参照)となっている場合に、位置合わせの調整が必要なため、作業者は、第1部材110を持ちながら、ネジを一旦緩める。
次に、作業者は、調整用部材300を、開口部132aに挿入する。なお、調整用部材300は、第1部材110及び第2部材120に対して調整用の押圧を付与して、第1部材110と第2部材120とを互いに摺動させるための部材である。ここでは、調整用部材300として、マイナスドライバを用いるものとして説明するが、マイナスドライバ以外の部材を用いてもよい。なお、調整用部材300は、第1部材110及び第2部材120に対して押圧を付与する必要があるため、押圧で変形しないように、高い強度を有するものがよい。また、調整用部材300は、好ましくは、開口部132aに挿入し易いように、先端が楔形に形成されたものがよい。
【0040】
作業者は、調整用部材300を開口部132aに挿入すると、位置合わせの適否を判断しながら、調整方向D1に応じて、調整用部材300を右(R)方向又は左(L)方向に押圧して回転させる。第1部材110は、調整用部材300がR方向に回転された場合に、手前側に移動する。また、第1部材110は、調整用部材300がL方向に回転された場合に、奥側に移動する。これによって、作業者は、位置合わせの調整を行う。
【0041】
この後、作業者は、第1部材110及び第2部材120の位置合わせが適正になったと判断した時点(すなわち、図5(a)に示すように、開口部132aの形状が長方形になったと判断した時点)で、図示せぬネジを強く締め付けることによって、第1部材110を第2部材120に強く固定する。
このようにして、第1部材110の第2部材120への取り付けが行われる。
【0042】
次に、図6を参照して、調整方向D2に沿って位置合わせの調整を行う場合の動作につき説明する。ここでは、第1部材孔112と第2部材孔122とが、図6に示すように、配置されているものとする。すなわち、第1部材孔112及び第2部材孔122は、向かい合う方向が調整方向D2に対して垂直になるように、また、第1部材孔112の小型孔112aと大型孔112bとが重なる辺と第2部材孔122の小型孔122aと大型孔122bとが重なる辺とが重なるように、配置されているものとする。
【0043】
作業者は、まず、第1部材110を持ち上げて、第1部材110を第2部材120の取付位置に配置し、図示せぬネジを図示せぬネジ孔に挿入して軽く締め付けることによって、第1部材110を第2部材120に一時的に仮留めする。
そして、作業者は、開口部132aの形状を見て、位置合わせの適否を判断する。
【0044】
開口部132aの形状が長方形(図6(a)参照)となっている場合に、位置合わせの調整が不要なため、作業者は、位置合わせの調整を行うことなく、図示せぬネジを強く締め付けることによって、第1部材110を第2部材120に強く固定する。
【0045】
一方、開口部132aの形状が長方形から崩れた形状(図6(b)及び図6(c)参照)となっている場合に、位置合わせの調整が必要なため、作業者は、第1部材110を持ちながら、ネジを一旦緩める。
次に、作業者は、調整用部材300を、開口部132aに挿入する。そして、作業者は、位置合わせの適否を判断しながら、調整方向D2に応じて、調整用部材300をR方向又はL方向に押圧して回転させる。第1部材110は、調整用部材300がR方向に回転された場合に、左側に移動する。また、第1部材110は、調整用部材300がL方向に回転された場合に、右側に移動する。これによって、作業者は、位置合わせの調整を行う。
【0046】
この後、作業者は、第1部材110及び第2部材120の位置合わせが適正になったと判断した時点(すなわち、図6(a)に示すように、開口部132aの形状が長方形になったと判断した時点)で、図示せぬネジを強く締め付けることによって、第1部材110を第2部材120に強く固定する。
このようにして、第1部材110の第2部材120への取り付けが行われる。
【0047】
次に、図7を参照して、調整方向D1及び調整方向D2の一方又は双方に沿って位置合わせの調整を行う場合の動作につき説明する。ここでは、第1部材孔112と第2部材孔122とが、図7に示すように、配置されているものとする。すなわち、第1部材孔112及び第2部材孔122は、向かい合う方向が調整方向D1(又は、調整方向D2)に対して垂直になるように、また、第1部材孔112の小型孔112aと大型孔112bとが重なる辺と第2部材孔122の小型孔122aと大型孔122bとが重なる辺とが離間するように、配置されているものとする。
【0048】
作業者は、まず、第1部材110を持ち上げて、第1部材110を第2部材120の取付位置に配置し、図示せぬネジを図示せぬネジ孔に挿入して軽く締め付けることによって、第1部材110を第2部材120に一時的に仮留めする。
そして、作業者は、開口部132の形状を見て、位置合わせの適否を判断する。
【0049】
位置合わせ調整機構100は、第1部材110と第2部材120とが上下に重ねて配置された場合に、図7(a)に示すように、第1部材孔112の小型孔112aの部分と、第2部材孔122の小型孔122aの部分と、第1部材孔112の大型孔112b及び第2部材孔122の大型孔122bの重なり部分とが開放された状態となり、それ以外の部分が閉鎖された状態となる。その結果、位置合わせ調整機構100は、第1部材孔112の小型孔112a及び大型孔112bと第2部材孔122の小型孔122a及び大型孔122bとによって、開口部132を形成する。なお、以下、図示例のように、第1部材孔112の小型孔112aと第2部材孔122の小型孔122aとが離間する形状の開口部132を「開口部132b」と称する。
【0050】
開口部132bは、第1部材110及び第2部材120の位置合わせが適正な状態である場合に、図7(a)に示すように、形状が幹となる部分の縦幅と横幅との比(以下、「縦横の比」と称する)がほぼ均等な十字形となる。
しかしながら、開口部132bは、第1部材110及び第2部材120の位置合わせが適正な状態でない場合に、図7(b)又は図7(c)に示すように、形状が縦横の比が不均等な十字形となる。
【0051】
開口部132bの形状が縦横の比がほぼ均等な十字形(図7(a)参照)となっている場合に、位置合わせの調整が不要なため、作業者は、位置合わせの調整を行うことなく、図示せぬネジを強く締め付けることによって、第1部材110を第2部材120に強く固定する。
【0052】
一方、開口部132bの形状が縦横の比が不均等な十字形(図7(b)及び図7(c)参照)となっている場合に、位置合わせの調整が必要なため、作業者は、第1部材110を持ちながら、ネジを一旦緩める。
次に、作業者は、調整用部材300を、開口部132bに挿入して、位置合わせの適否を判断しながら、位置合わせの調整を行う。
【0053】
なお、調整方向がD1方向である場合に、作業者は、図7(b)に示すように、調整用部材300を、開口部132bの調整方向D1と垂直な方向の部位に挿入して、調整方向D1に応じて、調整用部材300をR方向又はL方向に押圧して回転させる。第1部材110は、調整用部材300がR方向に回転された場合に、手前側に移動する。また、第1部材110は、調整用部材300がL方向に回転された場合に、奥側に移動する。
一方、調整方向がD2方向である場合に、作業者は、図7(c)に示すように、調整用部材300を、開口部132bの調整方向D2と垂直な方向の部位に挿入して、調整方向D2に応じて、調整用部材300をR方向又はL方向に押圧して回転させる。第1部材110は、調整用部材300がR方向に回転された場合に、左側に移動する。また、第1部材110は、調整用部材300がL方向に回転された場合に、右側に移動する。
このようにして、作業者は、位置合わせの調整を行う。
【0054】
この後、作業者は、第1部材110及び第2部材120の位置合わせが適正になったと判断した時点(すなわち、図7(a)に示すように、開口部132bの形状が縦横の比が均等な十字形になったと判断した時点)で、図示せぬネジを強く締め付けることによって、第1部材110を第2部材120に強く固定する。
このようにして、第1部材110の第2部材120への取り付けが行われる。
【0055】
以上の通り、本実施形態に係る位置合わせ調整機構100によれば、調整用部材300を用いて、位置合わせの調整を行うことができる。このような位置合わせ調整機構100によれば、従来の手法のように、腕力でもって第1部材(パネル部)110全体を動かしながら行う大まかな調整と異なり、手先の制御で調整用部材300の回転を加減することが容易であるため、位置合わせの微細な調整を容易に行うことができる。その結果、位置合わせの調整のための多大な工数を削減することができる。
【0056】
また、位置合わせ調整機構100によれば、開口部132の形状を見ることによって、位置合わせの適否の判断を容易に行うことができる。
さらに、位置合わせ調整機構100によれば、特許文献1と異なり、テコの支点となる部分が存在せず、また、調整用部材300の押圧が第1部材110と第2部材120とに分散してかかるため、第1部材110及び第2部材120の変形の発生を低減することができる。
【0057】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、位置合わせ調整機構100は、ATM(自動取引装置)200に限らず、様々な装置や物品に用いることができる。
また、例えば、位置合わせの調整は、作業者が調整用部材300の後端を図示せぬ木槌等で軽く叩く(すなわち、微小な振動を調整用部材300に与える)ことによっても、行うことができる。
また、例えば、開口部132は、好ましくは、図示せぬパッキン等によって封鎖されるとよい。
また、例えば、十字形に形成された開口部132b(図7(a)参照)の形状は、予め定めた許容範囲内であれば、十字形の縦横の比が相違していてもよい。
【符号の説明】
【0058】
100 位置合わせ調整機構
110 第1部材(パネル部)
110a,120a 突き当て面
112 第1部材孔(凸字状孔)
112a,122a 小型孔
112b,122b 大型孔
120 第2部材(キャビネット部)
122 第2部材孔(凸字状孔)
132 開口部
200 組込装置(ATM等)
300 調整用部材(マイナスドライバ等)
D1,D2 調整方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材とを重ねて配置する場合に、当該第1部材と当該第2部材との位置合わせの調整を行うための位置合わせ調整機構において、
前記第1部材の前記第2部材と重なる部分に、凸字状に形成された第1部材孔と、
前記第2部材の前記第1部材と重なる部分に、前記第1部材孔に対して向かい合うように、凸字状に形成された第2部材孔とを有し、
前記第1部材孔及び前記第2部材孔は、それぞれ、前記第1部材と前記第2部材とが重ねて配置された場合に、互いが向かい合わせで重なることにより、第1部材と前記第2部材とを互いに摺動させる調整用部材が挿入される開口部を形成する
ことを特徴とする位置合わせ調整機構。
【請求項2】
請求項1に記載の位置合わせ調整機構において、
前記第1部材孔及び前記第2部材孔は、向かい合う方向が前記第1部材及び前記第2部材の位置合わせの調整方向に対して垂直又は水平になるように、形成されている
ことを特徴とする位置合わせ調整機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の位置合わせ調整機構において、
前記第1部材孔及び前記第2部材孔は、前記第1部材及び前記第2部材の位置合わせが適正な状態になった場合に、前記開口部の形状が長方形又は十字形になる
ことを特徴とする位置合わせ調整機構。
【請求項4】
請求項3に記載の位置合わせ調整機構において、
前記十字形は、幹となる部分の縦幅と横幅との比が均等である
ことを特徴とする位置合わせ調整機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−8367(P2011−8367A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149311(P2009−149311)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591089556)株式会社 沖情報システムズ (276)
【Fターム(参考)】