説明

位置検出システム

【課題】複数の信号発信機から送信される信号のいずれかを受信機で受信し、その受信信号に基づいて受信機の位置を検出する位置検出システムにおいて、位置検出の分解能を高くする。
【解決手段】隣り合う信号発信機(照明機器1)からの信号の照射領域の一部が重なる重複領域A0b、A0dを積極的に利用し、複数の信号発信機の信号送信タイミング及び受信信号の信号処理を工夫して、上記重複領域A0b,A0dの位置検出を可能にする。このように重複領域A0b,A0dの位置検出が可能になることによって、移動体の位置検出を行う領域を、各信号発信機(照明機器1)からの信号の照射領域A00,A01,A02よりも細かく分解して位置検出を行うことができるので、高い分解能で位置検出を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体等の移動体の位置を検出する位置検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
店舗、オフィス、ホテルなどの室内を移動する人体等の移動体の位置を検出するシステムとして、例えば、複数の信号発信機と受信機とを備え、その複数の信号発信機を室内の所定位置に配置しておき、それら複数の信号発信機から送信される信号のいずれかを受信機で受信し、その受信信号に基づいて受信機の位置つまり移動体の位置を検出する位置検出システムが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−261896号公報
【特許文献2】特開2009−222417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の位置検出システムでは、複数の信号発信機からの信号の照射領域のうち、いずれかの領域内に移動体(受信機)が移動または停止したときに、その照射領域内に移動体が位置したことを検出することは可能であるが、各信号発信機からの信号の照射領域よりも細かい分解能で移動体の位置を検出することはできない。
【0005】
本発明はそのような実情を考慮してなされたもので、複数の信号発信機から送信される信号のいずれかを受信機で受信し、その受信信号に基づいて受信機の位置を検出する位置検出システムにおいて、位置検出の分解能を高めることが可能なシステムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の信号発信機と、受信機とを備え、前記複数の信号発信機から各々の識別情報(各信号発信機自体のエリアID情報)を含む信号を送信し、これら複数の信号発信機から送信される信号のいずれかを前記受信機で受信し、その受信信号に基づいて受信機の位置を検出する位置検出システムを前提としており、このような位置検出システムにおいて、前記複数の信号発信機が、隣り合う信号発信機から送信される信号の照射領域の一部が重複するように配置されているとともに、送信制御手段と、信号処理手段とを備えている。そして、その送信制御手段は、前記複数の信号発信機の信号送信を1信号発信機毎に一定時間ずつ送信タイミングをずらして行う。また、信号処理手段は、前記受信機で受信した信号に基づいて、その受信信号の受信形態が、隣り合う信号発信機からの信号を前記送信タイミングの時間差に対応する時間間隔で受信した形態である場合には、その隣り合う信号発信機からの信号の照射領域の重複領域に受信機が位置したことを認識するように構成されていることを技術的特徴としている。
【0007】
本発明によれば、各信号発信機からの信号の照射領域に加えて、隣り合う信号発信機から送信される信号の照射領域の一部が重なる重複領域の位置検出を可能としているので、位置検出の分解能を高めることができる。この点について以下に説明する。
【0008】
まず、複数の信号発信機と受信機とを備えた位置検出システムでは、隣り合う信号発信機からの信号の照射領域の一部が重なる場合がある。このように照射領域の一部が重複すると、その重複領域では2台以上の照明機器からの可視光信号が重なってしまうため(複数の信号が相互干渉するため)、信号受信が不安定になり受信機で信号を受信できなくなる場合がある。このため、従来では、信号発信機側の指向角等を調整して照射領域の重複領域を可能な限り小さくしている。
【0009】
これに対し、本発明では、そのような照射領域の重複領域を積極的に利用し、複数の信号発信機の信号送信タイミング及び受信信号の信号処理を工夫して、上記重複領域の位置検出を可能にすることで、位置検出の分解能を高めている点に特徴がある。
【0010】
具体的には、上記したように、複数の信号発信機の信号送信を1信号発信機毎に一定時間ずつ送信タイミングをずらして行い、受信機で受信した受信信号の受信形態が、隣り合う信号発信機からの信号を上記送信タイミングの時間差に対応する時間間隔で受信した形態である場合には、その隣り合う信号発信機からの信号の照射領域の重複領域に受信機が位置したと認識するようにしている。このような構成を採用することにより、各信号発信機からの信号の照射領域に加えて、照射領域の重複領域の位置検出を行うことが可能となり、これによって、移動体の位置検出を行う領域を、各信号発信機からの信号の照射領域よりも細かく分解して位置検出を行うことができるので、位置検出の分解能を高めることができる。
【0011】
本発明において、信号発信機の信号送信方式の一例として可視光通信方式を挙げることができる。この場合の具体的な例として、複数の信号発信機として、可視光を放射する光源を有する複数の照明機器を用い、それら複数の照明機器の光源を点灯制御して各照明機器の識別情報(各機器自体のエリアID情報)を含む情報を可視光信号として送信し、これら複数の信号発信機から送信される可視光信号のいずれかを受信機で受信するというシステムを挙げることができる。
【0012】
このようなシステムにおいても、複数の照明機器の可視光信号の送信を1照明機器毎に一定時間ずつ送信タイミングをずらして行い、受信機で受信した受信信号の受信形態が、隣り合う照明機器からの可視光信号を上記送信タイミングの時間差に対応する時間間隔で受信した形態である場合には、その隣り合う照明機器からの信号の照射領域の重複領域に受信機が位置したと認識するようにすればよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の信号発信機から送信される信号のいずれかを受信機で受信し、その受信信号に基づいて受信機の位置を検出する位置検出システムにおいて、移動体の位置検出を行う領域を、各信号発信機からの信号の照射領域よりも細かく分解して位置検出を行うことができるので、高い分解能での位置検出を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の位置検出システムを構成する照明機器及び送信制御装置の一例の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の位置検出システムを構成する受信機の一例の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の位置検出システムを構成するデータ処理装置の一例の構成を示すブロック図である。
【図4】照明機器の信号送信制御の一例を示すタイミングチャートである。
【図5】照明機器からの信号の照射領域(a)、送信IDデータ(b)、受信IDデータ(c)、受信データ(d)、及び、位置検出情報(e)の一例を示す図である。
【図6】本発明を適用する位置検出システムの他の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
[実施形態1]
この例の位置検出システムは、図1〜図5に示すように、複数の照明機器1・・1、送信制御装置1A、受信機2、及び、データ処理装置3などを備えている。これらの各機器について以下に説明する。
【0017】
−照明機器−
この例では、3台の照明機器1・・1が店舗内等の室内の天井に配置されている場合について説明する。それら3台の照明機器1・・1は、その各照射領域(エリア)が、図5(a)に示す[領域A00]、[領域A01]、[領域A02]となるように配置されている。なお、以下の説明において、照射領域がA00の照明機器1を「A00照明機器1」、照射領域がA01の照明機器1を「A01照明機器1」、照射領域がA02の照明機器1を「A02照明機器1」という場合もある。
【0018】
そして、この例では、図5(a)に示すように、3台の照明機器1・・1を、隣り合う照明機器1からの信号の照射領域の一部が重複するように配置している。具体的には、A00照明機器1の照射領域[領域A00]とA01照明機器1の照射領域[領域A01]との一部が重複し、A01照明機器1の照射領域[領域A01]とA02照明機器1の照射領域[領域A02]との一部が重複するように、各照明機器1が配置されている。これら照射領域の[重複領域A0b]及び[重複領域A0d]は、後述するように、位置検出の分解能を高めるための領域として利用するため、その各重複領域A0b,A0dの面積は、比較的大きな面積としている。
【0019】
各照明機器1は、それぞれ、可視光を放射する光源11及び駆動回路12などを備えている。光源11は、例えばLED(発光ダイオード)である。この光源11は駆動回路12によって点滅駆動される。駆動回路12は、後述する送信制御装置1Aの変調データ生成部103からの4PPMデータ(波形成形後のデータ)に基づいて、光源11を高速点滅することによってパルス化した可視光信号を出力(データ送信)する。
【0020】
なお、この例では、全ての照明機器1の光源11について、可視光信号の送信(データ送信)を同時に行うのではなく、後述するように、可視光信号の送信を行う光源11を選択して、所定の順番で可視光信号の送信を行うようにしている。
【0021】
−送信制御装置−
送信制御装置1Aは、ID設定部101、制御部102、変調データ生成部103、波形成形部104、通信許可セレクタ105などを備えている。
【0022】
ID設定部101は、各照明機器1(光源11)に割り当てるエリアID情報を設定する。この例では、A00照明機器1のエリアID情報を[ID00]、A01照明機器1のエリアID情報を[ID01]、A02照明機器1のエリアID情報を[ID02]と設定する。このID設定部101で設定されたエリアID情報は制御部102に入力される。
【0023】
制御部102は、ID設定部101で設定されたエリアID情報に基づいて光通信情報を作成し、その作成した光通信情報を変調データ生成部103に出力する。また、制御部102は、可視光信号の送信タイミングを後述する動作で制御する。なお、上記光通信情報には、エリアID情報以外の情報を含ませておいてもよい。
【0024】
変調データ生成部103は、制御部102で作成された光通信情報(エリアID情報)を、4PPM方式のデータ(以下、4PPMデータともいう)に変換する。4PPM方式(Pulse Position Modulation:パルス位置変調)は、副搬送波を変調する公知の変調方式であるので、その詳細な説明は省略する。
【0025】
波形成形部104は、上記変調データ生成部103で生成された4PPMデータを副搬送波のタイミングに合わせて波形成形する。この波形成形部104には、上記した照明機器1・・1の各駆動回路12がそれぞれ接続されている。
【0026】
制御部102は、通信許可セレクタ105に送信タイミング用のセレクト信号を出力する。通信許可セレクタ105は、制御部102からのセレクト信号に応じて、複数の照明機器1・・1の光源11・・11のうち、可視光信号を送信すべき光源11の駆動回路12に送信指令信号を出力する。これによって各照明機器1から可視光信号が送信される。その可視光信号の送信制御の一例について以下に具体的に説明する。
【0027】
まず、送信制御装置1Aの制御部102は、A00照明機器1を選択するセレクト信号を通信許可セレクタ105に、所定のデータ送信時間td(例えば、数十msec〜数百msec程度)の間だけ出力する。また、そのセレクト信号を出力している間、A00照明機器1のエリアID情報[ID00]を変調データ生成部103に出力する。このような処理により、図4に示すように、上記データ送信時間tdの間だけ、A01照明機器1の駆動回路12に4PPMデータ(エリアID情報データ[ID00])が送られるとともに、この駆動回路12が駆動状態になる。これによって、図5(a)に示す[領域A00]に、A00照明機器1の光源11からの信号(ID00)が一定時間tdだけ送信される。
【0028】
また、送信制御装置1Aの制御部102は、上記と同様な処理により、A01照明機器1及びA02照明機器1の信号送信を行う。つまり、図4に示すように、A00照明機器1の送信タイミングに対して一定時間tp(tpは、上記データ送信時間tdと同じ値)だけすらしてA01照明機器1の信号送信を行って、図5(a)に示す[領域A01]に信号(ID01)を一定時間tdだけ送信する。さらに、そのA01照明機器1の送信タイミングに対して一定時間tpだけすらしてA02照明機器1の信号送信を行って、図5(a)に示す[領域A02]に信号(ID02)を一定時間tdだけ送信する。
【0029】
このような信号送信制御により、図4に示すように、各照明機器1の可視光信号の送信(データ送信)を、1照明機器毎に一定時間tpずつ送信タイミングをずらして、[A00照明機器1]→[A01照明機器1]→[A02照明機器1]→[A00照明機器1]→[A01照明機器1]・・の順番で行うことができる。
【0030】
ここで、この例では、位置検出の分解能を高くするために、図5(a)に示す重複領域A0b及び重複領域A0dについても位置を検出する領域として利用するので、移動体の位置検出を行う領域を、図5(a)に示すように、A00照明機器1の[領域A00]から[重複領域A0b]を除いた[領域A0a]、[重複領域A0b]、A01照明機器1の[領域A01]から[重複領域A0b]及び[重複領域A0d]を除いた[領域A0c]、[重複領域A0d]、A02照明機器1の[領域A02]から[重複領域A0d]を除いた[領域A0e]に分割している。
【0031】
そして、その各領域の受信IDデータは図5(c)に示すような形態となる。つまり、[領域A0a]で受信できる受信IDデータは[ID00]となり、[重複領域A0b]で受信できる受信IDデータは[ID00]または[ID01]となる。また、[領域A0c]で受信できる受信IDデータは[ID01]となり、[重複領域A0d]で受信できる受信IDデータは[ID01]または[ID02]となる。さらに、[領域A0e]で受信できる受信データは[ID02]となる。
【0032】
−受信機−
次に、受信機2について図2を参照して説明する。
【0033】
受信機2は、上記した照明機器1・・1のいずれかが送信する可視光信号を受信する受信機であって、受光部201、受信処理部202、波形成形部203、復調部204、データ蓄積部205、変調部206、通信セレクタ207、駆動回路208、光源211、タイマ209、及び、制御部210などを備えている。
【0034】
受光部201は、受光素子(例えばフォトダイオード)201aを有し、受光した可視光信号(上記した照明機器1からの4PPMデータ)を電気信号に変換して受信処理部202に出力する。受信処理部202は、受光部201で受信した可視光信号(受信データ)にフィルタ処理を施して外乱雑音を除去する処理、及び、受信データのゲインを調整する(増幅する)処理などを行う。
【0035】
波形成形部203は、受光部201で受信され受信処理部202で処理された受信データの波形歪みの補正などを行って、受信データを復調しやすいデータに加工して復調部204に出力する。復調部204は、波形成形後の受信データ(4PPMデータ)を復調する。その復調された受信データは上記制御部210に入力される。タイマ209は、受信機2動作中の経過時間を計時する。例えば、受信機2がON操作された時点からの経過時間を計時する。
【0036】
制御部210は、復調部204で復調された復調データを、タイマ209にて計時される時間(例えば、スイッチONからの経過時間)と関連付けて上記データ蓄積部205に蓄積する。このデータ蓄積は、受信機2が作動状態(スイッチONからスイッチOFFまでの間)であって、受信機2を人が携帯して室内を移動・停止中においてに刻々と行われる。このようにしてデータ蓄積部205に蓄積された受信データは、受信機2の移動位置を示す位置データ、つまり、室内において移動した人の位置を示す位置データとなる。
【0037】
また、制御部210は、操作入力部(図示せず)の操作によりデータ転送要求があったときに、そのデータ転送要求に応じてデータ蓄積部205に蓄積の受信データを読み出して変調部206に出力する。さらに、制御部210は、データ転送要求に応じて光通信指令信号を通信セレクタ207に出力し、また、上記データ蓄積部205に蓄積された受信データのデータ出力が終了したときに光通信指令信号をOFF(通信セレクタ207の光通信指令信号の出力停止)とする。
【0038】
変調部206は、データ蓄積部205から読み出された受信データを、OOK(On−Off Keying)変調方式のデータ(以下、OOK変調データともいう)に変換する。OOK変調方式は、一般に用いられる変調方式であるので、その詳細な説明は省略する。
【0039】
通信セレクタ207は、制御部210が光通信指令信号を出力している間、変調部206で変調されたデータ(OOK変調データ)を駆動回路208に供給する。駆動回路208は、変調部206からのOOK変調データに基づいて光源211を高速点滅することによってパルス化した可視光信号を出力(データ送信)する。この可視光信号は、後述するデータ処理装置3の受光部301(図3参照)にて受信することができる。
【0040】
−データ処理装置−
次に、データ処理装置3について図3を参照して説明する。
【0041】
データ処理装置3は、上記受信機2から送信されたデータ(受信データ)のデータ処理を行う装置であって、受光部301、受信処理部302、波形成形部303、復調部304、データ蓄積部305、データ処理制御部306、及び、液晶ディスプレイ等の表示部307などを備えている。
【0042】
受光部301は、受光素子(例えばフォトダイオード)301aを有し、受光した可視光信号(上記した受信機2からのOOK変調データ)を電気信号に変換して受信処理部302に出力する。
【0043】
受信処理部302は、受光部301で受信した受信データ(OOK変調データ)にフィルタ処理を施して外乱雑音を除去する処理、及び、受信データのゲインを調整する(増幅する)処理などを行う。波形成形部303は、受光部301で受信され受信処理部302で処理された受信データの波形歪みの補正などを行って、受信データを復調しやすいデータに加工して復調部304に出力する。復調部304は、波形成形後の受信データ(OOK変調データ)を復調する。
【0044】
データ処理制御部306は、復調部304で復調された受信データをデータ蓄積部305に蓄積する。また、データ処理制御部306は、データ蓄積部305に蓄積した受信データ(受信機2が受信した位置データ)の受信形態(図5(d)参照)を認識し、その受信信号の受信形態に基づいて、図5(a)に示す[領域A0a]、[重複領域A0b]、[領域A0c]、[重複領域A0d]、[領域A0e]の各領域のうち、どの領域に受信機2(人)が位置したのかを認識する。そのデータ処理について以下に説明する。
【0045】
まず、各照明機器1の信号送信を図4に示す送信タイミングで行うと、例えば、図5(a)の重複領域A0bに受信機2が位置したときには、A00照明機器1からの信号(ID00)とA01照明機器1からの信号(ID01)とが、上記した送信タイミングの時間差tpに対応する時間間隔で交互に受信されるので、このような受信形態のときには重複領域A0bに位置したことになる。このような点を利用して、以下の判定基準(S1)〜(S3)に基づいて受信機2が位置した領域を認識する。
【0046】
(S1)A00照明機器1からの信号(ID00)とA01照明機器1からの信号(ID01)とを受信機2が受信したことを示す受信データ(信号形態)であり、かつ、それら2つの受信信号の受信間隔が、A00照明機器1とA01照明機器1との送信タイミングの時間差tpに対応する時間間隔である場合には、受信機2が図5(a)に示す[重複領域A0b]に位置したと認識する。
【0047】
(S2)A01照明機器1からの信号(ID01)とA02照明機器1からの信号(ID02)とを受信機2が受信したことを示す受信データ(信号形態)であり、かつ、それら2つの受信信号の受信間隔が、A01照明機器1とA02照明機器1との送信タイミングの時間差tpに対応する時間間隔である場合には、受信機2が図5(a)に示す[重複領域A0d]に位置したと認識する。
【0048】
(S3)上記(S1)及び(S2)以外の場合には、受信機2が受信した受信信号のエリアID情報(ID00,ID01,または,ID02)に基づいて、受信機2が位置した領域(A0a,A0c,または,A0e)を認識する。
【0049】
なお、上記「受信信号の時間間隔が送信タイミングの時間差tpに対応する時間間隔」には、受信信号の時間間隔が送信タイミングの時間差tpに等しい場合に加えて、[受信信号の時間間隔=送信タイミングの時間差tp±受信ずれ時間]の場合も含まれる。
【0050】
そして、データ処理制御部306は、以上の検出処理結果に所定の処理(例えば、画像データへの変換処理等)を施して表示部307の画面上に表示する。
【0051】
<動作説明>
(信号受信)
まず、上記照明機器1が送信する可視光信号を受信機2で受信する際の例について図1〜図5を参照して説明する。
【0052】
まず、この例においては、図4に示すように、照明機器1・・1の可視光信号の送信(データ送信)を、1照明機器毎に一定時間tpずつ送信タイミングをずらして、[A00照明機器]→[A01照明機器]→[A02照明機器]→[A00照明機器]→[A01照明機器]・・の順番で行っているものとする。
【0053】
図5(a)に示すように、人が受信機2を携帯して図中矢印の方向に移動し、A00照明機器1の照射領域A0aに入った後に、A00照明機器1の照射領域A00とA01照明機器1の照射領域A01とが重なる重複領域A0bに入り、次に、A01照明機器1の照明領域A0cを短時間で通過(A01照明機器1の送信信号を受信しない状態で通過)した後に、A01照明機器1の照射領域A01とA02照明機器1の照射領域A02とが重なる重複領域A0dに入り、その後に、A02照明機器1の照射領域A0eに入った場合、受信機2のデータ蓄積部205には、図5(d)に示すような受信データ(位置データ)が蓄積される。
【0054】
このような受信機2へのデータ蓄積を行った後、受信機2の操作入力部(図示せず)を操作して、データ蓄積部205に蓄積の受信データをデータ処理装置3に可視光通信にて送信する。データ処理装置3では、受信機2からの受信データをデータ蓄積部305に蓄積してデータ処理を行う。
【0055】
(データ処理)
データ処理装置3が実行する受信データのデータ処理について説明する。
【0056】
まず、上記図5(d)の受信データは、受信機2が、A00照明機器1からの信号(ID00)を一度受信した後、[重複領域A0b]でA00照明機器1からの信号(ID00)とA01照明機器1からの信号(ID01)とを上記送信タイミングの時間差tpに対応する時間間隔で受信したことを示している。さらに、[重複領域A0d]でA01照明機器1からの信号(ID01)とA02照明機器1からの信号(ID02)とを上記送信タイミングの時間差tpで受信した後に、A02照明機器1からの信号(ID02)を一度受信したことを示している。
【0057】
ここで、上述したように、データ処理装置3は、上記判定基準(S1)〜(S3)に従ってデータ処理(領域判定)を行って受信機2(人)が位置した領域を認識するように構成されており、その判定基準(S1)〜(S3)に従って図5(d)の受信データ(位置データ)についてデータ処理を行うと、その処理結果は図5(e)に示す形態となる。つまり、[領域A0a:位置検出有]→[重複領域A0b:位置検出有]→[領域A0c:位置検出無]→[重複領域A0d:位置検出有]→[重複領域A0e:位置検出有]という位置検出情報(動線情報)となる。
【0058】
そして、このようにしてデータ処理装置3によって処理された位置検出情報(図5(e)に示す位置検出情報)が表示部307に出力され、その表示部307に位置検出情報がグラフィック表示等によって表示される。なお、データ処理装置3にて処理を行った位置検出情報を外部機器(パーソナルコンピュータ等)に出力するようにしてもよい。
【0059】
以上説明したように、この例の位置検出システムによれば、図5に示すように、移動体(人)の位置検出を行う領域を、[領域A0a]、[重複領域A0b]、[領域A0c]、[重複領域A0d]、[領域A0e]に分割するとともに、[重複領域A0b]及び[重複領域A0d]の位置検出を可能としているので、各照明機器1からの可視光信号の照射領域(A00,A01,A02)よりも細かい分解能で位置検出を行うことができる。
【0060】
[実施形態2]
本発明の位置検出システムの他の例について図6を参照して説明する。
【0061】
この例では、店舗等に配置された上・中・下の3段の棚C00,C01,C02の各空間領域D00、D01,D02の位置検出に本発明を適用した例を示している。
【0062】
各棚C00,C01,C02には、それぞれ、A00照明機器1、A01照明機器1、A02照明機器1が設置されている。これらの各照明機器1の構造及び可視光信号の送信タイミングなどは上記した[実施形態1]と基本的に同じである。また、この例においても、受信機2及びデータ処理装置3を備えており、それら受信機2及びデータ処理装置3の構成・動作についても上記した[実施形態1]と基本的に同じである。
【0063】
この例において、上段の棚C00に設置のA00照明機器1からの可視光信号(ID00)は空間領域D00に照射され、中段の棚C01に設置のA01照明機器1からの可視光信号(ID01)は空間領域D01に照射される。さらに、下段の棚C02に設置のA02照明機器1からの可視光信号(ID02)は空間領域D02に照射させる。
【0064】
また、この例では、A00照明機器1からの可視光信号(ID00)の照射領域とA01照明機器1からの可視光信号(ID01)の照射領域との一部が重なる空間重複領域D0aが存在している。また、A01照明機器1からの可視光信号(ID01)の照射領域とA02照明機器1からの可視光信号(ID02)の照射領域との一部が重なる空間重複領域D0bが存在している。さらに、3台の照明機器1・・1からの可視光信号の照射領域の一部が重なる空間重複領域D0cが存在している。
【0065】
そして、この例では、受信機2を携帯したユーザが棚C00〜C02の前に位置したときに、受信機2が受信した受信信号(位置データ)の受信形態に基づいて、上記した[空間領域DA00]、[空間重複領域D0a]、[空間領域D01]、[空間重複領域D0b]、[空間領域D02]、[空間重複領域D0c]の各領域のうち、どの領域に受信機2が位置したのかを検出することができる。
【0066】
例えば、受信機2が受信した受信信号のエリアID情報が[ID00]である場合、受信機2が[空間領域D00]に位置したことを検出することができる。この場合、ユーザが立ったままの姿勢で、上段の棚C00に陳列の商品を購入・物色したことを認識することができる。
【0067】
また、受信機2が受信した受信信号のエリアID情報が[ID00]と[ID01]とである場合は、受信機2が[空間重複領域D0a]に位置したことを検出することができる。この場合、ユーザが少しかがんだ状態で、中段の棚C01に陳列の商品を購入・物色したことを認識することができる。
【0068】
また、受信機2が受信した受信信号のエリアID情報が[ID01]と[ID02]とである場合は、受信機2が[空間重複領域D0b]に位置したことを検出することができる。この場合、ユーザがしゃがんだ状態で、下段の棚C02に陳列の商品を購入・物色したことを認識することができる。
【0069】
なお、この例においても、各空間領域D00、D01、D0a、D02、D0b,D0cの位置検出処理は、上記した[実施形態1]と同様な判定基準に基づいて行えばよい。
【0070】
−他の実施形態−
以上の例では、3台の信号発信機を用いた位置検出システムについて説明したが、本発明はこれに限られることなく、2台もしくは4台以上の複数の信号発信機を用いて位置検出システムを構築する場合にも適用可能である。また、信号発信機からの信号の照射領域の一部が重なる重複領域については、3台以上の信号発信機からの信号の照射領域の一部が重なる重複領域であってもよい。
【0071】
以上の例では、照明機器の光源をLEDとしているが、本発明はこれに限られることなく、例えば、蛍光灯などの放電灯、有機EL、無機ELなど、可視光を放射できるものであれば、他の各種の光源を照明機の光源に用いてもよい。また、受信機の光源についても、有機ELや無機EL等の他の光源であってもよい。
【0072】
以上の例では、信号発信機として照明機器を用い、可視光通信による位置検出システムに本発明を適用した例について説明したが、本発明はこれに限られることなく、例えば、赤外線通信方式や無線通信方式を採用した位置検出システムに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、人体等の移動体の位置を検出する位置検出システムに利用可能であり、さらに詳しくは、複数の信号発信機から送信される信号のいずれかを受信機で受信し、その受信信号に基づいて受信機の位置を検出する位置検出システムに有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 照明機器
11 光源
12 駆動回路
1A 送信制御装置(送信制御手段)
101 ID設定部
102 制御部
103 変調データ生成部
105 通信許可セレクタ
2 受信機
201 受光部
204 復調部
205 データ蓄積部
206 変調部
208 駆動回路
210 制御部
211 光源
3 データ処理装置(信号処理手段)
301 受光部
304 復調部
305 データ蓄積部
306 データ処理制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号発信機と、受信機とを備え、前記複数の信号発信機から各々の識別情報を含む信号を送信し、これら複数の信号発信機から送信される信号のいずれかを前記受信機で受信し、その受信信号に基づいて受信機の位置を検出する位置検出システムにおいて、
前記複数の信号発信機は、隣り合う信号発信機から送信される信号の照射領域の一部が重複するように配置されているとともに、
前記複数の信号発信機の信号送信を、1信号発信機毎に一定時間ずつ送信タイミングをずらして行う送信制御手段と、
前記受信機で受信した信号に基づいて、その受信信号の受信形態が、隣り合う信号発信機からの信号を前記送信タイミングの時間差に対応する時間間隔で受信した形態である場合には、その隣り合う信号発信機からの信号の照射領域の重複領域に受信機が位置したことを認識する信号処理手段とを備えていることを特徴とする位置検出システム。
【請求項2】
請求項1記載の位置検出システムにおいて、
前記複数の信号発信機が、可視光を放射する光源を有する複数の照明機器であって、前記複数の照明機器の光源を点灯制御して各照明機器の識別情報を含む情報を可視光信号として送信し、これら複数の照明機器から送信される可視光信号のいずれかを受信機で受信するように構成されており、
前記複数の照明機器の可視光信号を1照明機器毎に一定の時間間隔で順番に行い、前記受信機で受信した受信信号の受信形態が、隣り合う照明機器からの可視光信号を前記送信タイミングの時間差に対応する時間間隔で受信した形態である場合には、その隣り合う照明機器からの信号の照射領域の重複領域に受信機が位置したと認識することを特徴とする位置検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−202853(P2012−202853A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68298(P2011−68298)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000195029)星和電機株式会社 (143)