説明

位置調整台装置

【課題】重量物を搭載して位置や方向を容易にかつ高精度で微調整可能な位置調整台装置を提供すること。
【解決手段】位置調整台装置は、第1の摺動装置44上に搭載された第1の移動板40と、第2の摺動装置43,39上に搭載された第2の移動板41と、第1の移動板上に固着された第1のジャッキ装置31と、第2の移動板上に固着された第2、第3のジャッキ装置21,26と、各ジャッキ装置の上部に固着された球面軸受33,23と、第2、第3のジャッキ装置の球面軸受の他端に装着された第3、第4の摺動装置25と、第1のジャッキ装置の球面軸受の他端および第3、第4の摺動装置によって支持された搭載台20とを備える。平行移動する2つの移動板の位置ををそれぞれ独立して調整することにより、搭載物の平行移動および回転が可能であり、調整が容易となる。構造が非常に簡単で、高精度な調整、維持が可能であり、重量物でも安定して支持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は位置調整台装置に関し、特に、重量物を搭載して位置や方向を容易に微調整可能な位置調整台装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重量物を支持し、かつ位置を微調整する必要がある場合には、例えばボルトおよびナットにより長さが調整可能な支持脚を3本使用して支持台を支える構造が採用されていた。例えば下記に示す特許文献1にはこのような脚として利用可能なジャッキの位置調整具が開示されている。このジャッキ装置は、ジャッキと、ジャッキを一方向に移動可能に支持するジャッキ支持台と、ジャッキ支持台を一方向と直角な他方向に移動可能に支持する基台とを備えている。
【0003】
そして、ジャッキ支持台に、ジャッキの一方向の位置を固定するロック機構と、ジャッキの一方向の位置を微調整する微調整機構とを設け、基台に、ジャッキ支持台の他方向の位置を固定するロック機構と、ジャッキ支持台の他方向の位置を微調整する微調整機構とが設けられている。ジャッキ支持台及び基台のロック機構と微調整機構により、ジャッキを高さ方向だけでなく、前後方向及び左右方向にも移動させることができ、ジャッキの3方向の位置を調整できる。
【特許文献1】特開2004−256269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シンクロトロンなどの素粒子の加速装置においては、内部を真空にして実験を行うパイプの周囲に大型の電磁石装置を設置した実験装置ユニットを多数連結して加速装置が構成されている。この大型の電磁石装置は正確な位置に設置する必要がある。そこで、この電磁石装置を搭載する支持台を例えば上記したような長さおよび位置を調整可能な3本の脚で支持する構成を採用していた。
【0005】
しかし、工具を使用して3本の脚の位置や長さをそれぞれ個別に調整する必要があり、調整に手間と時間がかかると共に調整および維持の精度が悪いという問題点があった。
この発明の目的は、上記したような従来技術の問題点を解決し、重量物を搭載して位置や方向を容易にかつ高精度で微調整可能な位置調整台装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の位置調整台装置は、基台と、前記基台上に設置された第1の摺動装置と、前記第1の摺動装置上に搭載された第1の移動板と、前記第1の移動板の前記基台に対する位置を規制する第1の位置規制装置と、前記基台上に設置された第2の摺動装置と、前記第2の摺動装置上に搭載された第2の移動板と、前記第2の移動板の前記基台に対する位置を規制する第2の位置規制装置と、前記第1の移動板上に固着された、高さを調整可能な第1のジャッキ装置と、前記第2の移動板上に固着された、高さを調整可能な第2のジャッキ装置と、前記第2の移動板上に固着された、高さを調整可能な第3のジャッキ装置と、一端が前記第1のジャッキ装置の上部に固着された第1の球面軸受と、一端が前記第2のジャッキ装置の上部に固着された第2の球面軸受と、一端が前記第3のジャッキ装置の上部に固着された第3の球面軸受と、第2の球面軸受の他端に装着された第3の摺動装置と、第3の球面軸受の他端に装着された第4の摺動装置と、前記第1球面軸受の他端および前記第3、第4の摺動装置によって支持された搭載台とを備えたことを主要な特徴とする。
【0007】
また、上記した位置調整台装置において、前記第1および第2の摺動装置は、前記基台上に平行に固着された、前記第1および第2の摺動装置が共用する第1のレールおよび第2のレールを備え、前記第1の摺動装置は、前記第1のレールに嵌合する1個のリニアガイド装置および前記第2のレールに嵌合する2個のリニアガイド装置を備え、前記第2の摺動装置は、前記第1のレールに嵌合する2個のリニアガイド装置および前記第2のレールに嵌合する1個のリニアガイド装置を備え、前記第1および第2の移動板はそれぞれ形状が略5角形であり、一部が重なるように配置されており、それぞれ前記3個のリニアガイド装置によって独立して支持される点にも特徴がある。
【0008】
また、上記した位置調整台装置において、前記ジャッキ装置は、底部が閉じた外筒および前記外筒と摺動可能に係合している内筒からなり、外筒の底部にはボルトが固着されており、前記ボルトと嵌合するためのネジ溝が内筒の内側に設けられている点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の位置調整台装置によれば、以下のような効果がある。
(1)平行移動する2つの移動板の位置ををそれぞれ独立して調整することにより、搭載物の平行移動および回転が可能であり、調整の自由度が増すので調整が容易となる。また、調整に工具等を使用せず、ハンドルやレバーを手動操作するのみで調整が可能である。
【0010】
(2)移動板の構成を採用することにより、構造が非常に簡単で、高精度な調整、維持が可能である。また、重量物でも安定して支持可能である。
(3)移動板の構成を採用することにより、ジャッキ装置の高さ方向のストロークを大きく取ることができ、調整範囲が拡大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。なお、実施例としてはシンクロトロンなどの素粒子の加速装置に使用される大型の電磁石装置の支持台に本発明を適用する実施例を開示するが、本発明の位置調整台装置は任意の装置に適用可能である。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の位置調整台装置の構成を示す正面図(上段)およびA−A平面における断面図(下段)である。なお断面図においては円形のジャッキ装置の内部構造は省略してある。また、図2は、本発明の位置調整台装置の構成を示す側面図である。図2においては、一方の位置調整ハンドル54関連の部材は省略してある。また、図3は、第2、第3のジャッキ装置の部分の構造を示す断面図である。
【0013】
本発明の位置調整台装置に搭載する装置の一例である電磁石装置10は内部にパイプ11を備え、その周囲に電磁石が配置されている。重量は1トン程度有り、人が直接移動させることは不可能である。そして加速器の中心軸と電磁石装置10の中心軸13を合わせて設置する必要がある。従って、例えばパイプ11の両端において、中心軸13の高さ、水平面内の位置および方向を調整する必要がある。
【0014】
本発明の位置調整台装置は大きく分けて、搭載台20、3本のボルトナット式ジャッキ装置21、26、31、上移動板40および下移動板41、基台50からなる。長方形の基台50上には基台の短辺と平行に2本のレール51、52が固着されている。このレール51、52にはそれぞれ3個のリニアガイドキャリッジ(43、46、39および44、47、49)が係合している。
【0015】
リニアガイド装置は、図3の下部に断面図が示されているごとく、リニアガイドキャリッジ内に循環する多数の鋼製ボールを内蔵し、レール上を直線状に移動可能なガイド装置である。レール51の断面は例えば図示されているような逆台形であり、リニアガイドキャリッジ43内部のボール65がレール51の2つの鋭角の帯状突起をそれぞれ挟むように係合している。従って、リニアガイドキャリッジ43はレール51と平行にのみ移動可能であり、レール51から外れることはない。なお、このようなレールおよびリニアガイドキャリッジは市販されている。
【0016】
3個のリニアガイドキャリッジ43、39、47は下移動板41に固着されており、3個のリニアガイドキャリッジ44、46、49はスペーサ38、45、48を介して上移動板40に固着されている。上移動板40および下移動板41はほぼ同型の略5角形の鋼板である。下移動板41の中央部には長方形の孔42が設けられている。上移動板40および下移動板41はそれぞれ2本のレール51、52上を独立して所定の距離だけ移動可能に構成されている。
【0017】
位置調整ハンドル53、54はそれぞれ基台50に固着された支持板55、56に回転可能に保持されている。位置調整ハンドル53、54のネジを切った軸57、58はそれぞれ下移動板41、上移動板40に固着され、ネジ孔を有するステーと嵌合している。従って、ハンドル53あるいはハンドル54を回転させることによって、基台50に対する下移動板41、上移動板40の短辺方向の位置を独立して調整可能である。
【0018】
上移動板40には第1のジャッキ装置である1本のボルトナット式ジャッキ装置31が、下移動板41には第2、第3のジャッキ装置である2本のボルトナット式ジャッキ装置21、26がボルト(66)により固着されている。ジャッキ装置21、26、31は、外筒21および外筒21と摺動可能に係合している内筒63からなる。外筒21の底部にはボルト62が固着されており、内筒63の内側に設けられたネジ溝(ナット)がボルト62と嵌合している。従って、レバー22を使用して内筒63を回転させることにより、外筒21に対して内筒63を伸縮可能である。
【0019】
ジャッキ装置21、26、31の内筒63の上部は球面軸受23の球面部材61の底部と固着されている。球面軸受23は表面の一部が球面である球面部材61および球面部材61を任意の方向に回動可能に包み込む内面が球面の一部であるケース(23)からなる。球面部材61およびケース(23)の僅かな隙間には潤滑油が満たされている。内部の球面部材61はケース(23)に対して球面部材61を構成する球の中心を中心として所定の角度範囲内で任意の方向に傾斜および回転が可能である。なお、このような球面軸受は市販されている。
【0020】
下移動台41に固着された2本のジャッキ装置21、26の上部の球面軸受23、27のケースはレール24、28にそれぞれ固着されており、レール24、28には、搭載台20に固着されたリニアガイドキャリッジ25、29がそれぞれ係合している。レール24、28およびリニアガイドキャリッジ25、29の構成は下部のレール65およびリニアガイドキャリッジ43と同一であり、基台50の長辺と平行に装着されている。上移動台40に固着された1本のジャッキ装置31の上部の球面軸受33のケースはスペーサ34を介して搭載台20に固着されている。
【0021】
次に、位置調整台装置10の調整方法ついて説明する。搭載台20を所定の高さに調整するためには、3本のジャッキ装置のレバー22、32を同時に同じ方向に同じ角度だけ回転させることにより調整可能である。基台50が水平でない場合など、搭載台20を基台50に対して傾斜させる必要がある場合には、3本のジャッキ装置のレバー22、32を個別に回転させることにより調整する。
【0022】
この場合、3本のジャッキ装置のそれぞれに球面軸受23、27、33が装着されており、更に2本のジャッキ21、26と搭載台20の当接部にはそれぞれリニアガイドキャリッジ25、29が装着されているので、ジャッキ装置等に無理な力がかかることは無く、レバーの回転も容易となる。
【0023】
搭載台20を短辺方向に移動させる場合には、2つの位置調整ハンドル53、54を同時に同じ方向に同じ角度だけ回転させる。また、搭載台20を基台50に対して水平面内で回転させる場合には、位置調整ハンドル53または位置調整ハンドル54の一方を所定の角度だけ回転させることにより、搭載台20の一端が他端よりも大きく移動するように回転する。また、双方のハンドルを同時に反対方向に回転させることにより、ほぼ搭載台20の中央を中心として回転する。
【0024】
これらの場合においても、3本のジャッキ装置のそれぞれに球面軸受23、27、33が装着されており、更に2本のジャッキ21、26と搭載台20の当接部にはそれぞれリニアガイドキャリッジ25、29が装着されているので、ジャッキ装置等に無理な力がかかることは無く、ハンドルの回転も容易となる。
【0025】
以上、実施例を開示したが、本発明の位置調整台装置には以下のような変形例も考えられる。実施例においては、ハンドルやレバーを手動で操作して調整する例を開示したが、調整ハンドルやレバーの代わりにモータを装着し、モータによって回動させるようにしてもよい。
【0026】
2枚の移動板が重なって配置される例を開示したが、重ならずに同じ高さに配置することも可能である。この場合、レールもそれぞれ2本ずつ使用してもよいし、中央の2本は共用して合計3本を使用しても実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の位置調整台装置は、電磁石装置に限らず、位置の調整が必要な任意の装置を搭載する台として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の位置調整台装置の構成を示す正面図(上段)およびA−A平面における断面図(下段)である。
【図2】本発明の位置調整台装置の構成を示す側面図である。
【図3】ジャッキ装置の部分の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10…電磁石装置(搭載装置)
20…搭載台
21、31…ボルト式ジャッキ装置
22、32…レバー
23、27、33…球面軸受
24、28、51、52…レール
25、29、39、43、44、46、47、49…リニアガイドキャリッジ
40…上移動板
41…下移動板
50…基台
53、54…位置調整ハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台上に設置された第1の摺動装置と、
前記第1の摺動装置上に搭載された第1の移動板と、
前記第1の移動板の前記基台に対する位置を規制する第1の位置規制装置と、
前記基台上に設置された第2の摺動装置と、
前記第2の摺動装置上に搭載された第2の移動板と、
前記第2の移動板の前記基台に対する位置を規制する第2の位置規制装置と、
前記第1の移動板上に固着された、高さを調整可能な第1のジャッキ装置と、
前記第2の移動板上に固着された、高さを調整可能な第2のジャッキ装置と、
前記第2の移動板上に固着された、高さを調整可能な第3のジャッキ装置と、
一端が前記第1のジャッキ装置の上部に固着された第1の球面軸受と、
一端が前記第2のジャッキ装置の上部に固着された第2の球面軸受と、
一端が前記第3のジャッキ装置の上部に固着された第3の球面軸受と、
第2の球面軸受の他端に装着された第3の摺動装置と、
第3の球面軸受の他端に装着された第4の摺動装置と、
前記第1球面軸受の他端および前記第3、第4の摺動装置によって支持された搭載台と
を備えたことを特徴とする位置調整台装置。
【請求項2】
前記第1および第2の摺動装置は、前記基台上に平行に固着された、前記第1および第2の摺動装置が共用する第1のレールおよび第2のレールを備え、
前記第1の摺動装置は、前記第1のレールに嵌合する1個のリニアガイド装置および前記第2のレールに嵌合する2個のリニアガイド装置を備え、前記第2の摺動装置は、前記第1のレールに嵌合する2個のリニアガイド装置および前記第2のレールに嵌合する1個のリニアガイド装置を備え、
前記第1および第2の移動板はそれぞれ形状が略5角形であり、一部が重なるように配置されており、それぞれ前記3個のリニアガイド装置によって独立して支持される
ことを特徴とする請求項1に記載の位置調整台装置。
【請求項3】
前記ジャッキ装置は、底部が閉じた外筒および前記外筒と摺動可能に係合している内筒からなり、外筒の底部にはボルトが固着されており、前記ボルトと嵌合するためのネジ溝が内筒の内側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の位置調整台装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−56414(P2008−56414A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234724(P2006−234724)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(503221861)有限会社マイテック (6)