説明

低イオウ着臭剤による燃料ガスの着臭

本発明は、A) 少なくとも2種の異なるC1〜C6アルキルアクリレートエステル類;B) C1〜C8メルカプタン類、C4〜C12チオフェン類、C2〜C8スルフィド類またはC2〜C8ジスルフィド類の群の少なくとも1種の化合物;C) ノルボルネン類、C1〜C6カルボン酸類、C1〜C8アルデヒド類、C6〜C14フェノール類、C7〜C14アニソール類またはC4〜C14ピラジン類の群からの少なくとも1種の化合物;および、D) 任意成分としての酸化防止剤を含む混合物の、少なくとも60質量%のメタン含有量を有する燃料ガスの着臭における使用に関する。本発明は、さらに、相応する燃料ガスおよび燃料ガスの着臭方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、小割合のイオウ含有化合物およびさらなる成分を含有するアクリル酸アルキルエステル混合物の燃料ガスの着臭における使用、燃料ガスの着臭方法並びにこの混合物を含有する燃料ガスに関する。
(技術背景)
ガスの公共的供給に以前に使用されていた都市ガスおよびコークス炉ガスは、強い臭気成分を含有し、従って、強い特徴のある臭気を有し、それによってガス漏れを容易に検知し得ていた。
ガスの着臭は、有意の特徴的な臭気を有さないガスに、即ち、そうしなければ実質的にまたは全く無臭であるガスに、警告または警報物質として機能する強い臭気物質(着臭剤)を添加することと理解されている。
天然ガスは、主としてメタンからなり(典型的なメタン含有量は、50〜99質量%、主として60〜99質量%、通常は80〜99質量%範囲である)、その起源によって、種々の割合のエタン、プロパンおよびより高分子量の炭化水素類もまた含有し得る。天然ガスH (H = 高いの意味)は、87〜99.1容量%のメタン含有量を有し、一方、天然ガスL (L = 低いの意味)は、一般に79.8〜87容量%のメタンを含有する。
高純度故に、天然ガスから通常得られ、公共的供給ネットワークにおいて現在使用されるガスは、本来的に実質上無臭である。
漏出が迅速に発見されない場合、爆発性のガス/空気混合物が、高リスク潜在性を伴って急速に生成する。
【0002】
従って、安全性を理由として、ガスは、強い臭気物質の添加により着臭されている。この点ドイツにおいては、例えば、適切な特有の臭気を有さず且つ公共的ガス供給システムに配給される全てのガスが、DVGWワークシートG 280 (DVGW = Deutscher Verein des Gas- und Wasserfaches e.V.)に従って着臭することを求められている。これらの着臭剤は、高度に希釈した場合でさえ感知可能であり、その異常に不快な臭気のために、これらの着臭剤は、所望の形で人々につながる警報を誘発する。着臭剤は、不快で間違いのない臭気を有するだけではなく、何にもまして警告臭を明確に構成しなければならない。従って、臭気付けしたガスの臭いは、日常生活、例えば、台所または家庭の人々にとって馴染みのないものでなければならない。ドイツにおいては、約90%の公共ガスが、テトラヒドロチオフェン(THT) (12~25mg/m3)によって着臭されている;メルカプタンによる着臭も一般的である。
大量の着臭剤を長期間に亘ってガスに添加することは理にかない得る。この濃厚着臭においては、通常の着臭と比較して、3倍までの量の着臭剤を添加する。濃厚着臭は、例えば、新たなネットワークまたはライン区域が使用に供されるときに、最低着臭剤濃度をより迅速に達成するためまたはガス施設における微量の漏れを特定するために使用される。
THTは、それ自体で、信頼し得るガス着臭に極めて適している。しかしながら、環境に対する感受性の高い方法の1つとして、この方法で着臭したガスの燃焼は、燃焼生成物として比較的高レベルのイオウ酸化物を発生させることを念頭におくべきである。
目的はイオウ化合物を削減または回避することであるので、低イオウまたは無イオウ着臭剤を開発する試みが既になされている。
【0003】
JP-B-51-007481号は、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびブチルアクリレートのようなアクリル酸アルキルエステル類は、燃料ガスに対して乏しい着臭特性しか有さず、この点で実用的に重要性を有していないことが知られていると説明している。該文献は、アリルアクリレートを有効な着臭成分として開示し、特許請求している。
JP-A-55-104393号には、アルキン;メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、アリルメタクリレート、エチルプロピオネート、メチルn-ブチレート、メチルイソブチレートおよびフェニルアクリレートを含む群から選ばれた少なくとも2種の化合物;および任意成分としてのtert-ブチルメルカプタンを含有する着臭剤が、燃料ガスの着臭に適すると説明している。臭気剤量は、質量基準で、50ppm (mg/kgガス)、好ましくは100ppm以上である。LPG(液体ガス)における最良の結果は、TBMを含む混合物によって得られている。良好な着臭効果は、2-ブチン(50ppm)をメチルアクリレート(50ppm)、アリルアクリレート(100ppm)およびTBM(5ppm)の混合物に添加することによって得られている。2-ブチン(50ppm)、アリルメタクリレート(20ppm)、メチルアクリレート(20ppm)、メチルn-ブチレート(20ppm)、メチルイソブチレート(20ppm)、エチルプロピオネート(20ppm)およびTBM(5ppm)を含む混合物は、最良の結果を有している。
JP-B-51-034841号においては、“臭気閾値”を、低嗅覚“臭気閾値”を有する種々の物質、即ち、n-吉草酸、n-酪酸、イソブチルアルデヒドおよび各種メチルアミン類について算出している。それらの嗅覚特性によれば、単独で使用するエチルアクリレートまたはn-吉草酸は、適切な着臭効果を有していない。最適化混合物は、50〜90質量%のエチルアクリレート、10〜50質量%のn-吉草酸および任意成分としてのトリエチルアミンを含む。最適化混合物は、エチルアクリレート、n-吉草酸およびトリエチルアミンを含み、この混合物は、等質量部のn-吉草酸およびトリエチルアミンと、30〜80質量%のエチルアクリレートを含有する。60質量%のエチルアクリレートと各々20質量%のn-吉草酸およびトリエチルアミンとから成る混合物を、気体燃料ガスに10mg/m3の量で添加している。
【0004】
エチルアクリレート(70質量%)およびtert-ブチルメルカプタン(30質量%)から成る燃料ガス用の着臭剤は、JP-B-51-021402号から公知である。この混合物を、気体燃料ガスに5mg/m3の量で添加している。
a) 30〜70質量%のC1~C4アルキルメルカプタン;b) 10〜30質量%のn-バレルアルデヒドおよび/またはイソバレルアルデヒド、n-酪酸および/またはイソ酪酸;および、任意成分としてのc) 60質量%までのテトラヒドロチオフェンから成る加熱用ガスの着臭用の着臭剤は、DE-A-31 51 215号に記載されている。これらの着臭剤を、加熱用ガスに5〜40mg/m3の量で添加している。
燃料ガスの着臭用の、a) 1質量%の硫化ジメチル、b) 0.8〜3質量%のtert-ブチルメルカプタンおよびc) 0.1〜0.2質量%のtert-ヘプチルメルカプタンまたは0.05〜0.3質量%のtert-ヘキシルメルカプタンを含有する混合物は、JP-A-61-223094号から公知である。これらの混合物は、都市ガス臭気に関連するtert-ブチルメルカプタンの臭気を有する。
燃料ガス着臭用のノルボルネン誘導体の使用は、JP-A-55-056190号から公知である。等量の5-エチリデン-2-ノルボルネンと5-ビニル-2-ノルボルネンの40mg/kg混合物または80質量%の5-エチリデン-2-ノルボルネンと20質量%のエチルアクリレートの50mg/kg混合物をLPGに添加している。
ノルボルネンまたはノルボルネン誘導体を含有する混合物および都市ガス着臭の希釈剤は、DE-A 100 58 805号に記載されている。
【0005】
C4〜C7-アルデヒドと硫黄化合物の混合物は、JP-A-50-126004号に着臭剤として記載されている。1kgプロパンの着臭を、60質量%のバレルアルデヒドと40質量%のn-ブチルメルカプタンの混合物50mgによって実施している。バレルアルデヒドは、この場合、n-ブチルメルカプタンの臭気を増強している。2-メチルバレルアルデヒドも同様な形で使用されている。
DE-A 198 37 066号においては、無イオウガス着臭の問題を、少なくとも1種のアクリル酸C1〜C12アルキルエステルと90〜210℃範囲の沸点および80〜160の分子量を有する窒素化合物とを含有する混合物により解決しており、少なくとも2種の異なるアクリル酸アルキルエステルを含有する混合物が好ましいとしている。アルキル置換1,4-ピラジン類を、とりわけ適する窒素化合物として説明している。
酸化防止剤、とりわけフェノール誘導体が、メルカプタンまたはアルキルアクリレート類を含有するガス着臭剤を安定させるのに適していることは、米国特許第2,430,050号およびDE-A 198 37 066号から公知である。
好ましくは、とりわけ警告臭の点で従来公知の着臭剤よりもその性質において優れ、警告用臭気の品質以外にも、着臭剤の貯蔵安定性も重要であって警告用臭気の品質を長期の(貯蔵)期間に亘って確保し得るような、主としてメタンからなる天然ガスまたは燃料ガス類の着臭用の別の低イオウ着臭剤が求められている。
【0006】
(発明の開示)
本発明は、少なくとも60質量%のメタン含有量を有する燃料ガスの着臭における、下記の成分を含有する混合物の使用を提供する:
A) 少なくとも2種の異なるアクリル酸C1〜C6アルキルエステル類;
B) C1〜C8メルカプタン類、C4〜C12チオフェン類、C2〜C8スルフィド類またはC2〜C8ジスルフィド類を含む群からの少なくとも1種の化合物;
C) ノルボルネン類、C1〜C6カルボン酸類、C1〜C8アルデヒド類、C6〜C14フェノール類、C7〜C14アニソール類またはC4〜C14ピラジン類を含む群からの少なくとも1種の化合物;
D) 任意成分としての酸化防止剤。
さらに、本発明は、少なくとも60質量%のメタン含有量を有する燃料ガスの、本発明に従って使用する混合物による相応する着臭方法にも関する。本発明に従って使用する混合物は、この方法において上記燃料ガスに添加する。好ましい実施態様に関しては、それ相応に該当する好ましい使用の詳細を参照されたい。
また、本発明は、本発明に従い使用する混合物を含有する、少なくとも60質量%のメタン含有量を有する燃料ガスも提供する。
着臭すべき燃料ガスは、少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも70質量%、とりわけ好ましくは少なくとも75質量%のメタン含有量を有する。
【0007】
(発明を実施するための最良の形態)
上記アクリル酸C1〜C6アルキルエステル類は、有利には、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸n-プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸n-ブチルエステル、アクリル酸イソブチルエステル、アクリル酸tert-ブチルエステル、アクリル酸n-ペンチルエステル、アクリル酸イソペンチルエステルおよびアクリル酸n-ヘキシルエステルを含む群から選択する。
アクリル酸C1〜C4アルキルエステル類、とりわけ、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸n-プロピルエステル、アクリル酸イソプロピルエステル、アクリル酸n-ブチルエステルおよびアクリル酸イソブチルエステルが好ましい。最も特段に好ましいアクリル酸C1〜C4アルキルエステル類は、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステルおよびアクリル酸n-ブチルエステルである。
本発明に従って使用する混合物が、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステルおよびアクリル酸n-ブチルエステルを含む群からの2種のアクリル酸C1〜C4アルキルエステル類を含有する場合、低い分子量のアクリル酸アルキルエステル対高い方の分子量のアクリル酸アルキルエステルの好ましい質量比は、9:1〜1:9の範囲、好ましくは7:3〜3:7の範囲、とりわけ3:1〜1:4の範囲内である。該低い分子量のアクリル酸アルキルエステル対高い方の分子量のアクリル酸アルキルエステルの質量比は、最も好ましくは、1:1〜1:3の範囲内である。
群A)からの化合物は、本発明に従って使用する混合物中に、有利には60〜97質量%、好ましくは70〜95質量%、とりわけ好ましくは80〜95質量%の割合で含有させる。
【0008】
上記メルカプタン類は、例えば、エチルメルカプタン、n-プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、sec-ブチルメルカプタン、イソブチルメルカプタン、tert- ブチルメルカプタン、n-ペンチルメルカプタン、イソペンチルメルカプタン、ネオペンチルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン、イソヘキシルメルカプタン、sec-ヘキシルメルカプタン、ネオヘキシルメルカプタン、tert-ヘキシルメルカプタン、n-ヘプチルメルカプタン、イソヘプチルメルカプタン、sec-ヘプチルメルカプタン、tert-ヘプチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、イソオクチルメルカプタン、sec-オクチルメルカプタンまたはtert-オクチルメルカプタンであり得る。
上記チオフェン類は、有利には、1〜4個、好ましくは1個または2個のC1〜C4アルキルおよび/またはアルコキシ基で置換したチオフェン類である。また、上記チオフェン類は水素化チオフェン類であってもよく、テトラヒドロチオフェンが好ましい。
上記スルフィド類は、例えば、硫化ジメチル、硫化ジエチル、硫化ジ-n-プロピル、硫化ジイソプロピル、硫化ジ-n-ブチル、硫化ジイソブチル、硫化エチルメチル、硫化メチル-n-プロピル、硫化メチルイソプロピル、硫化メチルイソブチル、硫化エチルイソプロピルまたは硫化イソブチルイソプロピルであり得る。硫化ジメチル、硫化ジエチル、硫化ジ-n-プロピル、硫化ジイソプロピル、硫化ジ-n-ブチルおよび硫化ジイソブチルが好ましい。
上記ジスルフィド類は、例えば、二硫化ジメチル、二硫化ジエチル、二硫化ジ-n-プロピル、二硫化ジイソプロピル、二硫化ジ-n-ブチル、二硫化ジイソブチル、二硫化エチルメチル、二硫化メチル-n-プロピル、二硫化メチルイソプロピル、二硫化メチルイソブチル、二硫化エチルイソプロピルまたは二硫化イソブチルイソプロピルであり得る。二硫化ジメチル、二硫化ジエチル、二硫化ジ-n-プロピル、二硫化ジイソプロピル、二硫化ジ-n-ブチルおよび二硫化ジイソブチルが好ましい。
群B)からの化合物は、典型的には、本発明に従って使用する混合物中に、1~30質量%、有利には2〜25質量%、好ましくは3〜15質量%、とりわけ好ましくは5〜10質量%の割合で含有させる。
【0009】
ノルボルネン類は、有利には、例として130以下の分子量を有するものであり、ノルボルネン、2,5-ノルボルナジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネンおよび5-ビニル-2-ノルボルネンが好ましい。
上記カルボン酸類は、有利には、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ酪酸、n-吉草酸、イソ吉草酸、n-カプロン酸、イソカプロン酸または2-メチル吉草酸である。
上記アルデヒド類は、有利には、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、n-カプロンアルデヒド、イソカプロンアルデヒドまたは2-メチルバレルアルデヒドである。
上記フェノール類は、有利には、総計で1個または2個のC1〜C4アルキルおよび/またはC1〜C4アルコキシ基を有する置換フェノール類である。好ましいフェノール類は、3-メチルフェノール、2-エチルフェノール、4-エチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-メトキシフェノール、2-メトキシ-4-メチルフェノールおよび2-メチル-5-イソプロピルフェノールである。C1〜C4モノアルキル化フェノール類がとりわけ好ましい。
有利なアニソール類は、アニソール、2-メチルアニソール、4-アリルアニソールまたは4-メチルアニソールである。
上記ピラジン類は、有利には、アルキル化および/またはアシル化ピラジン類である。有利なピラジン類は、例えば、2-メチルピラジン、2-エチルピラジン、2,3-ジメチルピラジン、2,3-ジエチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2,3-メチルエチルピラジン、5,2-メチルエチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、3,5,2-ジメチルエチルピラジン、3,6,2-ジメチルエチルピラジン、5,2,3-メチルジエチルピラジン、テトラメチルピラジン、2,3-メチルアセチルピラジンまたは2-アセチルピラジンである。総計で1〜3個の、とりわけ好ましくは総計で1個または2個のC1〜C4アルキル基および/またはC1〜C4アシル基を有するピラジン類が好ましい。
アシル化ピラジン類は、好ましくはモノアシル化されており、とりわけ好ましくはアセチルまたはプロピオニル基を有し、モノアシル化ピラジン類、とりわけ2-アセチルピラジンが好ましい。
群C)からの化合物は、典型的には、本発明に従って使用する混合物中に、0.5~20質量%、有利には1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%の比率で含有する。
6:1〜1:3の範囲内、好ましくは5:1〜1:2の範囲内、とりわけ好ましくは4:1〜1:1の成分B)対成分C)の質量比が有利である。
【0010】
一般的な酸化防止剤を、成分D)として、本発明に従って使用する着臭剤に添加して、例えば、安定性を増大させ得る。挙げ得る例としては、ビタミンCおよび誘導体(例えば、アスコルビルパルミテート、アスコルビルアセテート)、トコフェノールおよび誘導体(例えば、ビタミンE、ビタミンEアセテート)、ビタミンAおよび誘導体類(ビタミンAパルミテート)、フェノールベンジルアミン類、フマル酸、酢酸、安息香酸、ソルビン酸、ヘキサメチレンテトラミン、tert-ブチルヒドロキシトルエン、tert-ブチルヒドロキシアニソール、α-ヒドロキシ酸類(例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸)、ヒドロキノンモノメチルエーテルがある。好ましい酸化防止剤は、tert-ブチルヒドロキシトルエン(BHT、イオノール)、tert-ブチルヒドロキシアニソールおよびヒドロキノンモノメチルエーテルである。
酸化防止剤の添加により、とりわけ高貯蔵安定性が、本発明に従って使用する混合物および着臭天然ガスにおいて達成される。貯蔵安定性試験により、本発明に従って使用する混合物の警告臭は、40℃(インキュベーター)で5ヶ月よりも長い期間に亘って概して変化しないままであったことが証明されている。本発明に従う着臭剤においては、tert-ブチルヒドロキシトルエンおよびヒドロキノンモノメチルエーテルが、とりわけ有効であり且つ良好な安定化効果を有することが証明されている。
また、2種以上の酸化防止剤も着臭剤に添加し得る。上記着臭剤は、有利には、1種、2種または3種の酸化防止剤を含有するが、1種または2種の酸化防止剤が好ましい。
着臭剤中の酸化防止剤(成分D)の総量は、通常0.01〜2質量%の範囲内、好ましくは0.02〜1質量%の範囲内、とりわけ好ましくは0.03〜0.6質量%の範囲内である。
【0011】
着臭すべき燃料ガス基準での着臭剤の量は、典型的には5〜100mg/m3、好ましくは5〜50mg/m3、とりわけ好ましくは10〜40mg/m3、最も好ましくは12〜30mg/m3の範囲内である。
本発明に従って着臭した天然ガスの警告臭は、試験者群により、1:200〜1:2000範囲内の空気中天然ガスの希釈物においてさえも明白であると感知された。
本発明に従って使用する混合物中の成分C)の存在により、より良好な警告臭が、成分A)およびB)のみを含有する混合物と比較して達成されていた;この点に関しては、下記の実施例も参照されたい。
本発明に従って好ましいのは、下記の成分を含有する混合物の使用である:
A) 少なくとも2種の異なるアクリル酸C1〜C4アルキルエステル類;
B) C1〜C8メルカプタン類、C4〜C8チオフェン類、C2〜C8スルフィド類またはC2〜C8ジスルフィド類を含む群からの少なくとも1種の化合物;
C) ノルボルネン類、C2〜C5カルボン酸類、C2〜C5アルデヒド類、C6〜C10フェノール類、C7〜C10アニソール類またはC4〜C10ピラジン類を含む群からの少なくとも1種の化合物;および、
D) 少なくとも1種の酸化防止剤。
【0012】
本発明に従ってとりわけ好ましいのは、下記の成分を含有する混合物の使用である:
A) アクリル酸メチルエステルおよびアクリル酸エチルエステル;
B) チオフェン、テトラヒドロチオフェン、硫化ジメチル、硫化ジエチル、硫化ジ-n-プロピル、硫化ジイソプロピル、二硫化ジメチル、二硫化ジエチル、二硫化ジ-n-プロピル、二硫化ジイソプロピル、または下記の式(I)を有するメルカプタン類を含む群からの少なくとも1種の化合物:
【化1】

(式中、R1は、水素、メチルまたはエチル、好ましくはメチルを示し;R2は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、イソブチルまたはtert-ブチルを示す);
C) C2〜C5カルボン酸類、C3〜C5アルデヒド類、C1〜C4モノアルキル化フェノール類を含む群からの少なくとも1種の化合物;
D) 少なくとも1種の酸化防止剤。
この場合の好ましい成分B)は、上記式(I)を有するメルカプタン類である。
最も好ましいのは、下記の成分を含有するまたは下記の成分からなる混合物の使用である:
A) アクリル酸メチルエステルおよびアクリル酸エチルエステル;
B) tert-ブチルメルカプタン;
C) プロピオンアルデヒド、イソバレルアルデヒド、イソ吉草酸、2-エチルフェノール、4-エチルフェノールを含む群からの少なくとも1種の化合物;
D) 1種または2種の酸化防止剤。
ガスの最良の着臭はこれらの混合物によって達成され、警告臭は、最も強くて顕著であり、明白であると感知された。
群C)からの最も好ましい化合物はイソ吉草酸であり、群D)からの最も好ましい酸化防止剤はヒドロキシキノンモノメチルエーテルおよびtert-ブチルヒドロキシトルエンである。
【0013】
本発明に従う方法は、とりわけ好ましい実施態様に関しての本発明に従う使用に相応する。本発明のさらなる局面は、特許請求の範囲に従う。
【0014】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。
特に断らない限り、全ての数量は、質量に関する。
略記:
MeAc = メチルアクリレート;EtAc = エチルアクリレート;TBM = tert-ブチルメルカプタン;IVA = イソ吉草酸;BHT = tert-ブチルヒドロキシトルエン。
実施例1
本発明に従って使用する着臭剤の成分A)、B)およびC)を、天然ガス(天然ガスL;メタン含有量:約85容量%)の10、25および50mg/m3濃度の個々の物質として、それら成分の警告臭およびそれら成分の警告強度に関する臭覚の点で非着臭天然ガス(ブランク値)と比較して評価した。これらの濃度は、通常の条件におけるまたは濃厚着臭の場合における天然ガス中の着臭剤の典型的な濃度に相当する。同じ濃度のTHTを含有する着臭天然ガスを参照として使用した。
試験は、着臭剤をパイプ内のガス流中に計り入れることにより、室温(約20℃)で実施した。この2mパイプの末端において(均質化はパイプ内部で生じている)、出て来る着臭ガスの臭気を1群の熟練試験者(8~12名)により評価した。評価は、1(極めて弱い/無視し得る警告効果)から10(極めて強い/強力な警告効果)までの尺度で行った;示した値は、平均値である。工業的標準のTHTは、値10を示していた。
結果は、試験した3通りの濃度(10、25および50mg/m3ガス)において実質的に同じであった。下記の表1は、THTと、個々の物質(即ち、本発明に従って使用する混合物の形ではない)としての本発明に従って使用する成分A)、B)またはC)とを比較している。
【0015】
表1

表1からは、個々の成分A)、B)またはC)が良好な着臭効果を有していないことを理解し得る。
【0016】
実施例2
下記の表2は、成分タイプA)の2種の化合物を成分B)としてのTBM = tert-ブチルメルカプタン(メチルプロパンチオール-2,2)と一緒に含む混合物についての格付けを示す;手順は、実施例1で説明した手順と同じであった。

表2


表2からは、TBMの添加が改良された着臭性能をもたらしたが、極めて良好な着臭は依然として可能ではなかったことを理解し得る。
【0017】
実施例3
下記の表3は、成分タイプA)の2種の化合物を成分C)としてのIVA = 吉草酸と一緒に含む混合物についての格付けを示す;手順は、実施例1で説明した手順と同じであった。








表3


表3からは、IVAの添加が改良された着臭性能をもたらしたが、極めて良好な着臭は依然として可能ではなかったことを理解し得る。
【0018】
実施例4
下記の表4は、成分タイプA)の2成分を成分B)としてTBM = tert-ブチルメルカプタンおよび成分C)としてIVA = イソ吉草酸と一緒に含む混合物についての格付けを示す;手順は、実施例1で説明した手順と同じであった。































表4

表4は、成分A)、B)およびC)を含む混合物の使用が、卓越した着臭性能をもたらしていることを示している。
【0019】
実施例5
貯蔵安定性を試験するために、各種の酸化防止剤を含む着臭剤を天然ガスLに添加し、着臭天然ガスを、40℃での特定の貯蔵期間後に、実施例1で説明したような嗅覚の点で試験した。貯蔵安定性の基準は、貯蔵した着臭剤または貯蔵した着臭ガスの当初の警告臭との有意な臭覚一致であった。
天然ガスに添加した着臭剤の量は、20mg/m3であった。着臭剤は、酸化防止剤のy%分少ない60%のEtAc、31%のMeAc、7%のTBM、2%のIVAおよびy%の酸化防止剤からなっていた。下記の表5は、結果の比較を示す。
貯蔵安定性の分類:a = 6週間未満;b = 最高3ヶ月;c = 最高5ヶ月;d = 5ヶ月よりも長い。

表5


酸化防止剤の適切な選択および添加量により、貯蔵着臭剤自体および着臭天然ガス双方の警告臭は、40℃で5ヶ月を超える貯蔵期間後においてさえも依然として極めて顕著であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも60質量%のメタン含有量を有する燃料ガスの着臭における下記の成分を含有する混合物の使用:
A) 少なくとも2種の異なるアクリル酸C1〜C6アルキルエステル類;
B) C1〜C8メルカプタン類、C4〜C12チオフェン類、C2〜C8スルフィド類またはC2〜C8ジスルフィド類を含む群からの少なくとも1種の化合物;
C) ノルボルネン類、C1〜C6カルボン酸類、C1〜C8アルデヒド類、C6〜C14フェノール類、C7〜C14アニソール類またはC4〜C14ピラジン類を含む群からの少なくとも1種の化合物;
D) 任意成分としての酸化防止剤。
【請求項2】
前記混合物が下記の成分を含有する、請求項1記載の使用:
A) 少なくとも2種の異なるアクリル酸C1〜C4アルキルエステル類;
B) C1〜C8メルカプタン類、C4〜C8チオフェン類、C2〜C8スルフィド類またはC2〜C8ジスルフィド類を含む群からの少なくとも1種の化合物;
C) ノルボルネン類、C2〜C5カルボン酸類、C2〜C5アルデヒド類、C6〜C10フェノール類、C7〜C10アニソール類またはC4〜C10ピラジン類を含む群からの少なくとも1種の化合物;および、
D) 少なくとも1種の酸化防止剤。
【請求項3】
前記混合物が下記の成分を含有する、請求項1記載の使用:
A) アクリル酸メチルエステルおよびアクリル酸エチルエステル;
B) チオフェン、テトラヒドロチオフェン、硫化ジメチル、硫化ジエチル、硫化ジ-n-プロピル、硫化ジイソプロピル、二硫化ジメチル、二硫化ジエチル、二硫化ジ-n-プロピル、二硫化ジイソプロピル、または下記の式(I)を有するメルカプタン類を含む群からの少なくとも1種の化合物:
【化1】

(式中、R1は、水素、メチルまたはエチル、好ましくはメチルを示し;R2は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、イソブチルまたはtert-ブチルを示す);
C) C2〜C5カルボン酸類、C3〜C5アルデヒド類、C1〜C4モノアルキル化フェノール類を含む群からの少なくとも1種の化合物;および、
D) 少なくとも1種の酸化防止剤。
【請求項4】
前記混合物が下記成分を含むかまたは下記の成分からなる、請求項1記載の使用:
A) アクリル酸メチルエステルおよびアクリル酸エチルエステル;
B) tert-ブチルメルカプタン;
C) プロピオンアルデヒド、イソバレルアルデヒド、イソ吉草酸、2-エチルフェノール、4-エチルフェノールを含む群からの少なくとも1種の化合物;および、
D) 1種または2種の酸化防止剤。
【請求項5】
前記混合物が、酸化防止剤として、tert-ブチルヒドロキシトルエンまたはヒドロキノンモノメチルエーテルを含有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
前記混合物が、60〜97質量%の成分A)、および/または1〜30質量%の成分B)、および/または0.5〜20質量%の成分C)、および/または0.01〜2質量%の成分D)を含有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
前記混合物が、70〜95質量%の成分A)、および/または2〜25質量%の成分B)、および/または1〜10質量%の成分C)、および/または0.02〜1質量%の成分D)を含有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
成分B)対成分C)の質量比が、6:1〜1:3の範囲内である、請求項1〜7の少なくとも1項記載の使用。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の混合物を含有する、少なくとも60質量%のメタン含有量を有する燃料ガス。
【請求項10】
前記燃料ガスが、天然ガスである、請求項9記載の燃料ガス。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の混合物を、少なくとも60質量のメタン含有量を有する燃料ガスに添加することを特徴とする燃料ガスの着臭方法。
【請求項12】
前記混合物を、前記燃料ガスに、ガスm3当り5〜100mgの量で添加する、請求項11記載の方法。

【公表番号】特表2007−515520(P2007−515520A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544413(P2006−544413)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/053202
【国際公開番号】WO2005/061680
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(591278585)ジムリス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディットゲゼルシャフト (14)