説明

低トルクタッピンネジ

【課題】低トルクタッピンネジの提供。
【解決手段】本発明の低トルクタッピンネジは、軸に螺旋状に設けられた各ネジ山が三つの非対称の切削面で構成され、且つそのうちの任意の二つの隣り合う切削面間に切削エッジが設けられ、各該切削面に複数の鋸歯が開設されている。ゆえに、これら切削面が非対称で且つ複数の鋸歯を具備する設計により、これらネジ山でネジ立てと締結を行う時、物品との間に発生する摩擦を減らし、切削効率をアップするほか、大量の切り屑が溜まる現象を形成せず、締めつけトルクを減らして締結速度をアップし、物品に亀裂が発生するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一種のネジの設計に係り、特に一種の、低トルクタッピンネジに関する。
【背景技術】
【0002】
図1、図2を参照されたい。周知のネジ1は、軸11を包含し、該軸11の一端に設けられた頭12、及び、複数の螺旋状に該軸11の周りに設けられたネジ山13を包含する。ネジ締め時には、該頭12に回転トルクを加え、これらのネジ山13により物品2を切削し、それと同時に該軸11を駆動して該物品2中にねじ込み、該ネジ1の締結機能を達成する。
【0003】
ただし、実際に使用すると、周知のネジ1は以下の欠点を有することが分かった。
1.ネジ締め過程中に、該物品2の切り屑が有効に完全に切断されず、該物品2の繊維が該軸11に絡まり、このためこれらネジ山13がいずれも該物品2と緊密な接触状態を呈し、切削速度が遅くなるほか、該ネジ1の切削抵抗を増し、締めつけ過程で比較的大きなトルクが必要となり、使用の不便を増す。
2.前述したことを受け、該ネジ1の締結後に、一旦外在因子(たとえば地震)の振動の影響を受けると、該ネジ1の自動後退を極めて形成しやすく、このため、これらのネジ山13を該物品2に緊密に締めるだけでは十分な締結力が得られず、改善が待たれている。
3.さらに、これらネジ山13は円形に該軸11に環状に設けられ、このため切削時に発生する切り屑は、容易にこれらネジ山13間に溜まり、相互押圧と外向きの圧迫を発生し、このために切削速度が遅くなり、物品2が過大なトルクに耐えきれず亀裂を発生しやすくなり、ゆえにスピーディーな切削が達成できないのみならず、該ネジ1の締結に影響が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これにより、本発明の目的は、低トルクタッピンネジを提供することにあり、それは、ネジ締め過程中の締めつけトルクを減らすことができ、締結速度を高め、且つ有効に物品に亀裂が発生するのを防止するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の低トルクタッピンネジは軸、該軸の両端に設けられた頭とねじ先、及び該軸の周りに螺旋状に設けられた複数のネジ山を包含する。そのうち、各該ネジ山は三つの非対称の切削面で構成され、且つそのうちの任意の二つの隣り合う該切削面間に切削エッジが設けられ、また、各該切削面に複数の鋸歯が開設されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、ネジ立て時に、これら切削面と切削エッジが非対称を呈する設計により、これらネジ山がネジ立てする時に、速やかに切削を実行でき、且つネジ立て過程中にこれらネジ山と該物品が発生する摩擦力を減らし、また締めつけトルクを減らし、有効に該タッピンネジの切削能力をアップして締結速度を増し、該ネジ山に切り屑を収容できる余剰空間を具備させ、切り屑の堆積と押圧による物品の亀裂が発生するのを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】周知のネジの表示図である。
【図2】周知の締結の表示図である。
【図3】本発明の第1実施例の表示図である。
【図4】本発明の好ましい実施例の断面図である。
【図5】本発明の第2実施例の局部部品断面図である。
【図6】本発明の第3実施例の局部部品断面図である。
【図7】本発明の第4実施例の表示図である。
【図8】本発明の好ましい実施例の断面図である。
【図9】本発明の第5実施例の表示図である。
【図10】本発明の好ましい実施例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の技術内容、構造特徴、達成する目的を詳細に説明するため、以下に実施例を挙げ並びに図面を組み合わせて説明する。
【0009】
図3、4を参照されたい。本発明の好ましい実施例によると、本発明は軸31と、該軸31の一端に設けられた頭32、該軸31の別端に設けられたネジ先34、及び、該軸31の周りに環状に設けられた複数のネジ山33を包含する。そのうち、各該ネジ山33は三つの非対称の切削面331で構成され、且つ任意の隣り合う該切削面331の間に切削エッジ332が接続される。該切削面331は実際に製作される時、必要により4個、5個或いはそれ以上の非対称設計(図示せず)とされ得る。本実施例中では、三つを例として説明している。また、任意の同じ位置の切削エッジ332は相互に連結されて仮想線Aを呈し得て(図3のとおり)、該仮想線Aは該軸31の中心Bと平行に設置されるか、或いは、該仮想線Aは該軸31の中心Bと傾斜角度を呈するように設置され得る(図示せず)。本実施例では、該仮想線Aが該軸31の中心Bと平行を呈するように設置された例を以て説明している。
【0010】
図3、図4に示されるように、ネジ立て時には、該軸31の該頭32と反対の一端、すなわちネジ先34が物品4に押し付けられ、並びに回転トルクが加えられて該頭32が回転させられ、これにより、該ネジ山33が駆動されて回転して該物品4に切り込む。この時、各切削エッジ332がまず、該物品4に接触して切削し、さらに各該切削面331の現出する非対称設計の設置が組み合わされることで、これら切削面と該物品が完全な直接接触は発生せず、これにより、ネジ立て過程中に切り屑収容空間が、該ネジ山33と該物品4の間に形成されて切り屑排出を補助し、これにより、これら切削面331の切削過程中の該物品4との相互摩擦力を減らせ、ゆえに、該ネジ山33が速やかにこれら切削面331に絡みつく切り屑を切断でき、これらネジ山33の締めつけトルクを減らせ、これにより切り屑の堆積と押圧による物品4の亀裂状況の発生を防止でき、また、これらネジ山33間にも比較的多くの収容空間があって、切り屑の排出と収容に供され得るため、締結力を発生し、該ネジ3が締結後に、自動後退を発生する欠点を防止できる。これにより、非対称設計の各該切削面331の設置により、有効に該ネジ3の切削能力を向上するほか、締結速度を増し、締めつけ抵抗とトルクを減らし、且つ締結の受力時に物品に亀裂が発生する状況を防止するほか、該物品4と締結力を発生し、該ネジ3が外在因子の影響により自動後退を発生する欠点を免除し、ひいては有効に締結効率をアップする等の効果を達成する。
【0011】
図5を参照されたい。本発明の好ましい第2実施例によると、その記載された要件は第1実施例と同じ要件構造、要件連結関係、達成しようとする目的と作用効果を有するものとされる。本実施例では特に、各一つの該切削面331が内に凹むように設置され、さらに特に記すべきこととして、これら切削面の数量と変化が、上述に列挙された実施例の範囲内に制限されない。すなわち、各該ネジ山33は、図6の第3実施例に示されるように、適時に4辺の該切削面331により構成され、且つこれら切削面331はまた不等長の設計とされ得る(図示せず)。また、任意の同じ位置にある切削エッジ332は相互に連結されて仮想線Aを形成可能で、該仮想線Aは該軸31の中心Bと平行を呈するように設置されるか、或いは、該仮想線Aは該軸31の中心Bと傾斜角度を呈するように設置され得る(図示せず)。これにより、どのような形態であっても、該ネジ3を締めつける時、これら切削エッジを利用して切削して締める以外に、これら切削面の内に凹んだ設計により、大幅に、該ネジ山33と物品の接触面積を減らし、大幅に切り屑の収容空間を増し、すなわち、有効に締めつけトルクと摩擦抵抗を減らし、さらに、切り屑の堆積による押圧により物品に亀裂が発生する欠点を防止できる。
【0012】
さらに、図7、8を参照されたい。本発明の第4実施例は、第1実施例と同様に、軸31、頭32、ネジ先34、及び複数のネジ山33等の構成要件を有する。本実施例では特に、各該切削面331に複数の鋸歯333が開設され、また、任意の同じ位置にある切削エッジ332が相互に連結されて仮想線Aを呈し得て(図8に示されるとおり)、該仮想線Aは該軸31の中心Bと平行に設置されるか、或いは該仮想線Aは該軸31の中心Bと傾斜角度を呈するように設置され得る(図示せず)。本実施例では、該仮想線Aは該軸31の中心Bと平行に設置されたものを例として説明している。ゆえに、締結作業を行う時は、各該切削面上にこれら鋸歯333が設置され、さらに有効に締めつけ時にこれらネジ山33に絡みつく切り屑を切断でき、同時に一部の切り屑を収容及び排出する効果がアップされ、これにより、該ネジ3がさらに容易に該物品4中にねじ込まれる。
【0013】
図9、図10は本発明の第5実施例を示し、それは前の実施例と同様に、軸31、頭32、ネジ先34及び複数のネジ山33等の構成要件を有する。特に、本実施例では、各切削面331の鋸歯333間に別に少なくとも一つの、谷底に至る切り込み334が設置されている。当然、各該切削面331には二つ或いは三つの切り込み334を設置可能である(図示せず)。以下に、各一つの切削面331に一つの該切り込み334が設置された場合を例として説明し、これにより該ネジ3の締めつけ時の屑排出空間を増す。ゆえに、締結時には、まず、各該切削エッジ332によりこれら鋸歯333を駆動してこれら切削面331に絡みつく切り屑を切断し、これにより該ネジ3がスピーディーに該物品4中にねじ込まれるようにし、また、各該切削面331に該切り込み334が設置されて切り屑の収容と外向き排出に供されることで、該ネジ3の切り屑排出効果がさらに良好となり、これにより、有効に締めつけトルク、抵抗が減らされて、締結効率がアップする。
【0014】
総合すると、本発明の低トルクタッピンネジは、各ネジ山が三つの非対称な切削面で構成され、同時に、任意の二つの該切削面間に切削エッジ等が接続され、ゆえに、該ネジを締めつける時に、物品との摩擦を減らして、切削をスピーディーに進めるのに有利であり、また、有効に切り屑を順調に外に排出するのを助け、ひいては締めつけ抵抗、トルクを減らし、有効に締結効率を増すことができ、また物品の亀裂の発生を予防でき、ゆえに、確実に本発明の目的を達成できる。
【0015】
以上述べたことは、本発明の実施例にすぎず、本発明の実施の範囲を限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲に基づきなし得る同等の変化と修飾は、いずれも本発明の権利のカバーする範囲内に属するものとする。
【符号の説明】
【0016】
3 ネジ
31 軸
32 頭
33 ネジ山
34 ネジ先
331 切削面
332 切削エッジ
333 鋸歯
334 切り込み
4 物品
A 仮想線
B 軸の中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、該軸の一端に設けられた頭と、該軸の別端に設けられたネジ先と、該軸の周りに螺旋状に設けられた複数のネジ山とを包含する低トルクタッピンネジにおいて、各該ネジ山は三つの非対称の切削面で構成され、且つ任意の二つの隣り合う該切削面間に切削エッジが接続されたことを特徴とする、低トルクタッピンネジ。
【請求項2】
請求項1記載の低トルクタッピンネジにおいて、該ネジ山は四角形で構成されたことを特徴とする、低トルクタッピンネジ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の低トルクタッピンネジにおいて、該切削面は内に凹むように設置されることを特徴とする、低トルクタッピンネジ。
【請求項4】
請求項1記載の低トルクタッピンネジにおいて、任意の同じ位置にある切削エッジは相互に連結されて一つの仮想線を形成し、且つ該仮想線は該軸の中心と平行に設置されることを特徴とする、低トルクタッピンネジ。
【請求項5】
請求項1記載の低トルクタッピンネジにおいて、任意の同じ位置にある切削エッジは相互に連結されて一つの仮想線を形成し、且つ該仮想線は該軸の中心と傾斜角度を呈するように設置されることを特徴とする、低トルクタッピンネジ。
【請求項6】
請求項1、3、4又は5のいずれかに記載の低トルクタッピンネジにおいて、各該切削面に複数の鋸歯が開設されたことを特徴とする、低トルクタッピンネジ。
【請求項7】
請求項6記載の低トルクタッピンネジにおいて、各該切削面の鋸歯間に少なくとも一つのネジの谷底に至る切り込みが開設されたことを特徴とする、低トルクタッピンネジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−7482(P2013−7482A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−2899(P2012−2899)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【出願人】(511311576)喬亞有限公司 (1)
【出願人】(390034762)株式会社ノグチ (1)